説明

ボツリヌス神経毒を含む医薬組成物

【課題】ボツリヌス神経毒を含む医薬組成物の提供。
【解決手段】本発明は、ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)及び界面活性剤を含む、固体または液体医薬組成物に関する。特に、本発明は、結晶性作用物質を含む、固体または液体医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボツリヌス神経毒を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、最も使われているボツリヌス神経毒はボツリヌス神経毒A型である。この神経毒は、クロストリジウム・ボツリヌス菌株の存在下、発酵中に産生される。(ボツリヌス神経毒A型及び少なくとも1つの他の無毒性タンパク質を含む)ボツリヌス神経毒A型複合体は、現代の医薬において広く使用される活性要素である。かかる複合体に基づく医薬組成物の例は、出願人である会社によって現在販売されている製品Dysport(登録商標)である。ボツリヌス神経毒A型複合体が使用可能である最も一般的な医学的適応症のなかで、多数の(眼瞼痙攣、半側顔面痙攣、斜頸、痙縮、緊張型頭痛、背痛またはシワなどの)筋肉障害、並びに偏頭痛などの他の障害の治療が挙げられる。或いは、高純度のボツリヌス毒素(すなわち、それと複合体化する無毒性タンパク質を含まないボツリヌス神経毒)は、PCT国際特許出願公開第WO96/11699号または同第WO97/35604号に開示された対応するボツリヌス毒素複合体にとって代わることができる。
【0003】
現在、市販のボツリヌス神経毒組成物はヒト血清アルブミンを含む。しかしながら、アルブミンについてはいくつかの心配が表明されている(例えば、PCT国際出願公開第WO01/58472号を参照のこと)。この理由により、医薬産業は、現在、医薬組成物中のアルブミンにかわる他の安定化剤を発見することを考慮している。
【0004】
可能性のある溶液がPCT国際特許出願公開第WO01/58472号に開示されている。この文献において、アルブミンはポリサッカライド、すなわち、2つ以上の糖分子モノマーのポリマー、によって置換されており、これは、ボツリヌス神経毒組成物中の安定化剤の役割を果たす。
【0005】
別の溶液は、PCT国際特許出願公開第WO97/35604号または米国特許第5,512,547号及び同第5,756,468号に記載されたものである。これらの文献において、純粋なボツリヌス神経毒(すなわち、それと複合体化する無毒性タンパク質を含まないボツリヌス神経毒)はトレハロースによって安定化されることができる。
【発明の概要】
【0006】
出願人は、界面活性剤が、ボツリヌス神経毒組成物において、アルブミン、PCT国際特許出願公開第WO01/58472号のポリサッカライドまたはPCT国際特許出願公開第WO97/35604号のトレハロースにとって代わるのに十分な安定化効果を有することを予想外に発見した。
【0007】
したがって、本発明は、活性要素としてボツリヌス毒素を含む固体または液体医薬組成物を安定化するための界面活性剤の使用に関する。
【0008】
ボツリヌス毒素は、天然のボツリヌス毒素または組換えにより産生された任意のボツリヌス毒素であると理解されるべきである。
【0009】
天然のボツリヌス毒素は、クロストリジウム種に由来する高純度のボツリヌス神経毒またはクロストリジウム種に由来するボツリヌス神経毒複合体であると理解されるべきである。
【0010】
本出願においては、高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)により、少なくとも1つの他のタンパク質を含む複合体以外のボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)が意味される。言い換えれば、高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)は、ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)以外のいかなる他のクロストリジウム種由来のタンパク質も有意な量で含まない。
【0011】
本発明によれば、ボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒は、A型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒、B型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒、並びにF型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒から選ばれることが好ましい。より好ましくは、ボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒は、A型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒並びにF型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒から選ばれる。より特別には、ボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒は、A型のボツリヌス神経毒複合体及び高純度ボツリヌス神経毒である。
【0012】
A型ボツリヌス神経毒は、任意のA型のボツリヌス毒素及び特にA1、A2またはA3型のボツリヌス神経毒であると理解されるべきである。他の血清型の毒素にも必要な修正をして同じことが当てはまる。
【0013】
本発明により使用されるか又は上記の医薬組成物に含まれる高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、F又はG型)は、例えば、Current Topics in Microbiology and Immunology (1995), 195, p.151-154中で説明されているような、対応するボツリヌス神経毒複合体から容易に得ることができる。高純度クロストリジウム・ボツリヌス毒素(A、B、C、D、E、F又はG型)は、例えば、(発酵のために放置したクロストリジウム・ボツリヌス菌を含む富栄養化肉汁ブイヨン培地であって−このブロスは例えば、Current Topics in Microbiology and Immunology(1995), 195, p.150及びDasGupta, “Microbial food Toxications. Clostridium Botulinum toxins. CRC handbook of foodborne diseases of biological origin”, CRC Boca Raton, p.25-56に記載されたものであってよい)適切な発酵培地の精製によって得られる。高純度ボツリヌス神経毒が本発明の組成物に含まれる場合、毒素の純度の程度は、好ましくは80%超、より好ましくは90又は95%超であり、より特別に好ましくは、98%又は99%超でなければならない。それは、本出願中に記載された純度アッセイを用いるなどして評価されることができる。
【0014】
本発明はまた、以下の:
(a)ボツリヌス毒素、及び
(b)界面活性剤
を含む、固体又は液体医薬組成物にも関する。
【0015】
本発明の特別な変形によれば、医薬組成物は固体医薬組成物であり、かつ本質的に以下の:
(a)ボツリヌス毒素、及び
(b)界面活性剤
から成る。
【0016】
本発明の他の当別な変形によれば、医薬組成物は液体医薬組成物であり、本質的に以下の:
(a)ボツリヌス毒素、
(b)界面活性剤、及び
(c)水
から成る。
【0017】
上記の医薬組成物においては、界面活性剤は、ボツリヌス毒素を安定化させるようなものである。
【0018】
本発明による固体医薬組成物は、例えば、先に示した成分(a)及び(b)を含む滅菌水溶液を凍結乾燥することによって得ることができる。本発明による液体医薬組成物は、成分(a)及び(b)の(例えば、凍結乾燥された)固体混合物を滅菌水と混合することによって得ることができる。
【0019】
本発明によれば、凍結乾燥されるべき溶液または液体医薬組成物中の上記成分(a)及び(b)の濃度は、好ましくは、以下のようなものである:
該溶液は、溶液1mlあたり、50〜10,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、好ましくは、溶液1mlあたり、50〜3,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、より好ましくは、溶液1mlあたり、100〜2,500LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、そして最も好ましくは、溶液1mlあたり、100〜2,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)を含み;
界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度〜1%v/vの濃度、特にポリソルベート80の場合には、約0.005%〜0.02%v/vである。
【0020】
好ましくは、界面活性剤は、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤は、特に、ポリソルベート及びポロキサマー(すなわち、ポリエチレン及びプロピレングリコールのコポリマー)のようなブロックコポリマーを含む。本発明の好ましい変形によれば、界面活性剤はポリソルベートである。より好ましくは、本発明の組成物中に含まれるポリソルベートは、20〜100(好ましくは約80)モノマー単位の平均重合度を有し、例えば、ポリソルベート80であってよい。また好ましくは、ポリソルベートは植物由来でなければならない。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、固体または液体の医薬組成物は結晶性の作用物質を含む。
【0022】
結晶性の作用物質は、中でも、凍結乾燥ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)に力学的に強固なケーキ構造を維持させる作用物質を意味する。固体製剤中に含まれた場合、結晶性作用物質はバルク効果も有する。結晶性作用物質は、特に、塩化ナトリウムを含む。従来技術(例えば、Goodnough, M.C. and Johnson, E.A., Applied and Environmental Microbiology (1992), 58(10), 3426-3428を参照のこと)において教示されたのとは反対に、このタイプの組成物のための塩化ナトリウムの使用は、ボツリヌス毒素組成物の安定性をさらに改善する。
【0023】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、固体または液体の組成物は、pHを5.5〜7.5に維持するための緩衝剤も含むであろう。
【0024】
緩衝剤は、適切なpHを維持することのできる任意の緩衝剤であることができる。好ましくは、本発明の組成物のための緩衝剤は、コハク酸及びヒスチジンのようなアミノ酸から成る群から選ばれる。特に、緩衝剤はヒスチジンである。好ましくは、pHは少なくとも5.5または5.8に等しく、そして最も好ましくは少なくとも6.0または6.5に等しい。また、好ましくは、pHは7.5または7.0以下、より好ましくは6.8以下である。
【0025】
好ましくは、本発明の固体または液体医薬組成物はジサッカライドも含む。
【0026】
本発明による組成物中で使用されるジサッカライドは、シュークロース、トレハロース、マンニトール及びラクトースからなる群から選ばれることが好ましい。本発明による組成物中で使用されるジサッカライドは、シュークロース及びトレハロースからなる群から選ばれることがより好ましい。特に、本発明による組成物中で使用されるジサッカライドはシュークロースである。特に該組成物が固体である場合、該ジサッカライドは本発明の医薬組成物中に存在することが好ましい。
【0027】
したがって、本発明は、特に、以下の:
(a)ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、
(b)界面活性剤、
(c)結晶性作用物質、
(d)pHを5.5〜7.5に維持するための緩衝剤
を含む固体又は液体医薬組成物に関する。
【0028】
好ましくは、本発明による医薬組成物には、特にそれらが固体である場合、ジサッカライドも含まれる。
【0029】
本発明のこの変形によれば、固体医薬組成物は、先に示した成分(a)〜(d)を含む滅菌水溶液を凍結乾燥することによって得ることができる。本発明による液体医薬組成物は、前記成分(a)〜(d)の(凍結乾燥等された)固体混合物を滅菌水と混合することによって得られる。
【0030】
本発明によれば、凍結乾燥されるべき溶液または液体医薬組成物中の前記成分(a)〜(d)の濃度は、以下のようなものであることが好ましい:
該溶液は、溶液1mlあたり、50〜10,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、好ましくは、溶液1mlあたり、50〜3,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)[を該溶液は含み]、より好ましくは、溶液1mlあたり、100〜2,500LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、そして最も好ましくは、溶液1mlあたり、100〜2,000LD50単位のボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)を含み;
界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度〜1%v/v、そして特にポリソルベート80の場合、約0.005%〜0.02%v/vであり;
結晶性作用物質の濃度は、0.1〜0.5M、より好ましくは0.1〜0.4M、特に、約0.15〜0.3Mであり;そして、
緩衝剤の濃度は、1〜50mM、より好ましくは5〜20mM、特に約10mMである。
【0031】
先に示したとおり、本発明による固体または液体医薬組成物は、ジサッカライドを含んでよい。その場合、凍結乾燥されるべき溶液/液体医薬組成物中のジサッカライドの濃度は、例えば、5〜50mM、好ましくは5〜25mM、より好ましくは10〜20mM、そして特に、11.7mMである。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によれば、医薬組成物の異なる成分(すなわち、ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、界面活性剤、および結晶性作用物質、緩衝剤またはジサッカライドなどの任意の賦形剤)の混合物が凍結乾燥される。こうして固体組成物が得られ、これも本発明の一部であり、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも18ヶ月、より特に好ましくは少なくとも24またはさらに36ヶ月の間安定でなければならない。
【0033】
本発明の組成物は、マウスにおけるLD50を評価することによって、またはLD50マウスアッセイに関して確認された任意の方法(すなわち、その結果をLD50単位に変換することの可能な方法)によって評価されて、最初の毒性の少なくとも70%が一定期間維持される場合、その期間安定であると考えられる(LD50マウスアッセイについての「マウス毒性アッセイ」と題した部分を参照せよ)。本発明による医薬組成物は、以下の:
【0034】
・以下の:眼瞼痙攣、(拘束性または筋性斜視を含む)斜視、弱視、動揺視、保護性眼瞼下垂、角膜保護のための治療的眼瞼下垂、眼振、内斜視、二重視、睫毛内反症、眼瞼退縮、眼窩ミオパチー、眼球斜位、随伴性誤整列、非随伴性誤整列、原発性または二次性内斜視または外斜視、核間性眼筋麻痺、斜偏位、デュアン症候群及び上部眼瞼退縮から成る群から選ばれる、眼科の障害;
【0035】
・以下の:半側顔面痙攣、斜頸、(脳性まひ、脳卒中後、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または脊髄損傷の患者などにおける)子供及び成人の痙縮、特発性限局性ジストニア、筋硬直、書痙、手のジストニア、第VI脳神経麻痺、口顎ジストニア、頭の振戦、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、(音楽家の痙攣を含む)職業性痙攣、顔面神経麻痺、下顎閉鎖痙攣、顔面痙攣、共同運動、振戦、原発性の書字振戦(primary writing tremor)、ミオクローヌス、全身強直性症候群、足のジストニア、顔面麻痺、腱鞘炎及びばね指症候群、チック障害、ジストニア性のチック、トゥーレット症候群、神経性筋硬直症、顎の震え、外直筋麻痺、ジストニア性の内転足、下顎ジストニア、ラビット症候群、小脳性振戦、第III脳神経麻痺、軟口蓋ミオクローヌス、アカステシア(akasthesia)、筋痙攣、第IV脳神経麻痺、すくみ足歩行、伸筋躯幹ジストニア、顔面神経麻痺後共同運動、二次性ジストニア、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、てんかん、オフピリオドジストニア(off period dystonia)、頭部破傷風、筋波動症及び良性の腹痛束状化症候群を含む、運動障害;
【0036】
・以下の:痙攣性発声障害、流えん(hypersalivation)、流えん(sialorrhoea)、耳の障害、聴覚障害、イヤークリック、耳鳴、めまい、メニエール病、蝸牛神経不全、吃音、輪状咽頭嚥下障害、歯軋り、慢性的な吸引における咽頭閉鎖、声帯ひだ肉芽種、喉室ジストニア、喉室の発声障害、変性による発声障害、開口障害、いびき、声のふるえ、吸引、舌突出ジストニア、口蓋のふるえ、唇の過蓋咬合及び咽頭のジストニアを含む、耳鼻咽喉科の障害;
【0037】
・以下の:噴門痙攣、裂肛、便秘、顎関節機能不全、オディ括約筋機能不全、持続性のオディ括約筋の緊張、腸管の筋肉障害、恥骨直腸筋症候群、アニスムス、幽門痙攣、胆嚢機能不全、胃腸管または食道の運動機能不全、びまん性食道痙攣、及び胃不全麻痺を含む、胃腸障害;
【0038】
・以下の:排尿筋括約協調不全、排尿筋反射亢進、(パーキンソン病、脊髄損傷、脳卒中、又は多発性硬化症患者などにおける)神経原性膀胱機能不全、膀胱痙攣、尿失禁、尿閉、膀胱頚部肥大、排尿障害、間質性膀胱炎、膣痙攣、エンドメトリオーシス、骨盤痛、前立腺の拡大(良性の前立腺肥大症)、前立腺痛、前立腺癌、陰茎持続勃起症を含む、泌尿生殖器障害;
【0039】
・以下の:(腋窩多汗症、手掌多汗症及びフレイ症候群を含む)多汗症、臭汗症、(乾癬を含む)皮膚細胞増殖障害、皮膚創傷及びにきびを含む、皮膚の障害;
【0040】
・以下の:筋筋膜痛、緊張型頭痛、線維筋痛症、疼痛症候群、筋痛症、偏頭痛、むち打ち症、関節痛、術後痛、筋肉の痙攣に関係のない疼痛及び平滑筋の障害に関連した疼痛を含む、疼痛障害;
【0041】
・膵炎、(痛風、腱鞘炎、滑液包炎、皮膚筋炎、及び強直性脊椎炎を含む)神経因性炎症性障害を含む、炎症性障害;
【0042】
・過剰な腺分泌、粘液過分泌及び過剰な流涙、ホロクリン腺機能不全などの分泌障害;
【0043】
・(アレルギー性鼻炎を含む)鼻炎、COPD、喘息、及び結核を含む呼吸器障害;
【0044】
・筋肉拡大、咬筋肥大、末端肥大症及び筋痛症に伴う神経因性前脛骨筋肥大を含む、肥大性障害;
【0045】
・テニスひじ(又はひじの上顆炎)、関節の炎症、股関節炎、変形性股関節症、肩の回転筋帽の病理、リューマチ関節炎、及び手根管症候群を含む、関節の障害;
【0046】
・II型糖尿病、高グルカゴン血症、高インスリン血症、低インスリン血症、高カルシウム血症、低カルシウム血症、(グレイブ病、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症及び甲状腺機能低下症を含む)甲状腺障害、(副甲状腺機能亢進症及び副甲状腺機能低下症を含む)副甲状腺障害、クッシング症候群および肥満などの内分泌障害;
【0047】
・全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患;
【0048】
傍神経節腫瘍、前立腺癌及び骨腫瘍を含む増殖性疾患;
【0049】
・スポーツ傷害、筋肉傷害、腱の創傷、及び骨折を含む、外傷性傷害;並びに
【0050】
(哺乳動物の固定化、ウマの疝痛、動物の噴門痙攣または動物の筋痙攣などの)獣医学的用途;
から選ばれる病気/状態/症候群を治療することを目的とする医薬を製造するために使用されることができる。
【0051】
本発明の医薬組成物は、以下の美容的障害の美容的処置を含む美容的処置にも使用可能である。
・皮膚の欠陥;
・顔面非対称;
・眉間のしわ及び顔面のしわを含むしわ;
・下向きに曲がった口;
・脱毛;及び
・体臭
【0052】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、以下の:
・以下の:眼瞼痙攣、(拘束性または筋性斜視を含む)斜視、弱視、動揺視、保護性眼瞼下垂、角膜保護のための治療的眼瞼下垂、及び上部眼瞼退縮から成る群から選ばれる、眼科の障害;
【0053】
・以下の:半側顔面痙攣、斜頸、子供の脳性まひにおける痙縮、成人の脳卒中後、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または脊髄損傷の患者における痙縮、特発性限局性ジストニア、筋硬直、書痙、手のジストニア、第VI脳神経麻痺、口顎ジストニア、頭の振戦、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、(音楽家の痙攣を含む)職業性痙攣、顔面神経麻痺、下顎閉鎖痙攣、顔面痙攣、共同運動、振戦、原発性の書字振戦、ミオクローヌス、全身強直性症候群、足のジストニア、顔面麻痺、腱鞘炎及びばね指症候群、チック障害、ジストニア性のチック、トゥーレット症候群、神経性筋硬直症、顎の震え、外直筋麻痺、ジストニア性の内転足、下顎ジストニア、ラビット症候群、小脳性振戦、第III脳神経麻痺、軟口蓋ミオクローヌス、アカステシア、筋痙攣、第IV脳神経麻痺、すくみ足歩行、伸筋躯幹ジストニア、顔面神経麻痺後共同運動、二次性ジストニア、オフピリオドジストニア、頭部破傷風、筋波動症及び良性の腹痛束状化症候群から成る群から選ばれる、運動障害;
【0054】
・以下の:痙攣性発声障害、流えん(hypersalivation)、流えん(sialorrhoea)、イヤークリック、耳鳴、めまい、メニエール病、蝸牛神経不全、吃音、輪状咽頭嚥下障害、歯軋り、慢性的な吸引における咽頭閉鎖、声帯ひだ肉芽種、喉室ジストニア、喉室の発声障害、変性による発声障害、開口障害、いびき、声のふるえ、吸引、舌突出ジストニア、口蓋のふるえ、及び咽頭のジストニアから成る群から選ばれる、耳鼻咽喉科の障害;
【0055】
・以下の:噴門痙攣、裂肛、便秘、顎関節機能不全、オディ括約筋機能不全、持続性のオディ括約筋の緊張、腸管の筋肉障害、恥骨直腸筋症候群、アニスムス、幽門痙攣、胆嚢機能不全、胃腸管または食道の運動機能不全、びまん性食道痙攣、食道憩室症及び胃不全麻痺から成る群から選ばれる、胃腸障害;
【0056】
・以下の:排尿筋括約協調不全、排尿筋反射亢進、パーキンソン病、脊髄損傷、脳卒中、又は多発性硬化症患者における神経原性膀胱機能不全、膀胱痙攣、尿失禁、尿閉、膀胱頚部肥大、排尿障害、間質性膀胱炎、膣痙攣、エンドメトリオーシス、骨盤痛、前立腺の拡大(良性の前立腺肥大症)、前立腺痛、前立腺癌、陰茎持続勃起症から成る群から選ばれる、泌尿生殖器障害;
【0057】
・以下の:腋窩多汗症、手掌多汗症、フレイ症候群、臭汗症、乾癬、皮膚創傷及びにきびから成る群から選ばれる、皮膚の障害;
【0058】
・以下の:上部背痛、下部背痛、筋筋膜痛、緊張型頭痛、線維筋痛症、筋痛症、偏頭痛、むち打ち症、関節痛、術後痛、及び平滑筋の障害に関連した疼痛から成る群から選ばれる、疼痛障害;
【0059】
・膵炎、痛風、腱鞘炎、滑液包炎、皮膚筋炎、及び強直性脊椎炎からなる群から選ばれる、炎症性障害;
【0060】
・過剰な腺分泌、粘液過分泌及び過剰な流涙、ホロクリン腺機能不全からなる群から選ばれる、分泌障害;
【0061】
・非アレルギー性鼻炎、アレルギー性鼻炎、COPD、及び喘息から成る群から選ばれる、呼吸器障害;
【0062】
・筋肉拡大、咬筋肥大、末端肥大症及び筋痛症に伴う神経因性前脛骨筋肥大から成る群から選ばれる、肥大性障害;
【0063】
・テニスひじ(又はひじの上顆炎)、関節の炎症、股関節炎、変形性股関節症、肩の回転筋帽の病理、リューマチ関節炎、及び手根管症候群から成る群から選ばれる、関節の障害;
【0064】
・II型糖尿病、高カルシウム血症、低カルシウム血症、甲状腺障害、クッシング症候群および肥満からなる群から選ばれる、内分泌障害;
【0065】
・スポーツ傷害、筋肉傷害、腱の創傷、及び骨折からなる群から選ばれる、外傷性傷害;
から成る群から選ばれる病気/状態/症候群を治療することを目的とする医薬の製造のために使用されるかまたは美容的処置を実施するために使用され、ここで、処置される美容的障害は以下の:
【0066】
・皮膚の欠陥;
・顔面非対称;
・眉間のしわ及び顔面のしわを含むしわ;
・下向きに曲がった口;及び
・脱毛;
から成る群から選ばれる。
【0067】
より好ましくは、本発明の医薬組成物は、以下の:
・以下の:眼瞼痙攣、及び斜視から成る群から選ばれる、眼科の障害;
【0068】
・以下の:半側顔面痙攣、斜頸、子供の脳性まひにおける痙縮、成人の脳卒中後、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または脊髄損傷の患者における痙縮から成る群から選ばれる、運動障害;
【0069】
・以下の:痙攣性発声障害、流え(hypersalivation)、流えん(sialorrhoea)、輪状咽頭嚥下障害、歯軋り、慢性的な吸引における咽頭閉鎖、声帯ひだ肉芽種、喉室ジストニア、喉室の発声障害、変性による発声障害、開口障害、いびき、声のふるえ、舌突出ジストニア、口蓋のふるえ、及び咽頭のジストニアから成る群から選ばれる、耳鼻咽喉科の障害;
【0070】
・以下の:噴門痙攣、裂肛、便秘、顎関節機能不全、オディ括約筋機能不全、持続性のオディ括約筋の緊張、腸管の筋肉障害、アニスムス、幽門痙攣、胆嚢機能不全、胃腸管または食道の運動機能不全及び胃不全麻痺をから成る群から選ばれる、胃腸障害;
【0071】
・以下の:排尿括約筋協調不全、排尿筋反射亢進、パーキンソン病、脊髄損傷、脳卒中、又は多発性硬化症患者における神経原性膀胱機能不全、膀胱痙攣、尿失禁、尿閉、膀胱頚部肥大、排尿障害、間質性膀胱炎、膣痙攣、エンドメトリオーシス、骨盤痛、前立腺の拡大(良性の前立腺肥大症)、前立腺痛、前立腺癌、陰茎持続勃起症から成る群から選ばれる、泌尿生殖器障害;
【0072】
・以下の:腋窩多汗症、手掌多汗症、フレイ症候群、臭汗症、乾癬、皮膚創傷およびにきびから成る群から選ばれる、皮膚の障害;
【0073】
・以下の:上部背痛、下部背痛、筋筋膜痛、緊張型頭痛、線維筋痛症、筋痛症、偏頭痛、むち打ち症、関節痛、術後痛、及び平滑筋の障害に関連した疼痛から成る群から選ばれる、疼痛障害;
【0074】
・膵炎及び痛風からなる群から選ばれる、炎症性障害;
【0075】
・過剰な流涙;
【0076】
・非アレルギー性鼻炎、アレルギー性鼻炎、COPD、及び喘息から成る群から選ばれる、呼吸器障害;
【0077】
・咬筋肥大;
【0078】
・テニスひじ(又はひじの上顆炎)、関節の炎症、股関節炎、変形性股関節症、肩の回転筋帽の病理、リューマチ関節炎、及び手根管症候群から成る群から選ばれる、関節の障害;
【0079】
・肥満;
【0080】
・筋肉傷害、腱の創傷、及び骨折からなる群から選ばれる、外傷性傷害;
から選ばれる病気/状態/症候群を治療することを目的とする医薬を製造するために使用されるか、または以下の:
【0081】
・皮膚の欠陥;
・顔面非対称;
・眉間のしわ及び顔面のしわを含むしわ;
・下向きに曲がった口;及び
・脱毛;
から成る群から選ばれる美容的障害の美容的処置を実施するために使用される。
【0082】
特別に好ましい方法においては、本発明の医薬組成物は、以下の:眼瞼痙攣、半側顔面痙攣、斜頸、子供の脳性まひにおける痙縮および脳卒中後、多発性硬化症、外傷性脳傷害または脊髄損傷の成人の腕または足の痙縮、腋窩多汗症、手掌多汗症、フレイ症候群、皮膚の創傷、にきび、上部背痛、下部背痛、筋筋膜痛、偏頭痛、緊張型頭痛、関節痛、テニスひじ(又はひじの上顆炎)、関節の炎症、股関節炎、変形性股関節症、肩の回転帽の病理、筋肉の傷害、腱の創傷及び骨折、から選ばれる病気/状態/症候群を治療することを目的とする医薬を製造するため;あるいは、
【0083】
以下の:皮膚の障害、顔面非対称及び眉間のしわ及び顔面のしわから選ばれるしわから成る群から選ばれる美容的障害の美容的処置を実施するために使用される。
【0084】
上記の病気/障害の治療のために必要とされるボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)の用量は、治療されるべき病気/障害、投与様式、治療される患者の年齢及び後者の健康状態に依存し、そして、最終的に決定するのは治療する医師または獣医である。治療する医師または獣医によって決定された量は、本明細書中で「治療的有効量」と呼ばれる。
【0085】
ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)については、この治療的有効量は、しばしば対応するLD50の関数として表される。本出願においては、LD50は、ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)を注射されたマウスにおいて、96時間以内に該マウスの半分の死をもたらす腹腔内投与量の中央値であると理解されなければならない。
【0086】
「約」という用語は、考慮される値の周辺の区間をさす。本特許出願において使用される「約X」は、XマイナスXの10%〜XプラスXの10%の区間、より好ましくは、XマイナスXの5%〜XプラスXの5%の区間を意味する。
【0087】
異なるように定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野における通常の専門家によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。同様に、本明細書に示されるすべての刊行物、特許出願、すべての特許及びすべての他の参考文献は、参考文献として援用される。
【0088】
以下の実施例は、例示として表され、発明の範囲を制限するものと解してはならない。
【実施例】
【0089】
実施例1:以下の成分を含む液体医薬組成物を調製する:
【0090】
【表1】

【0091】
1mlあたり、名目上の2,000LD50単位のボツリヌス毒素を含む混合物を滅菌バイアル中で凍結乾燥し、そしてこれを密封する。得られた固体組成物は、2及び8℃の間の温度で保存した場合には少なくとも18ヶ月、そして23〜27℃では少なくとも6ヶ月安定である。
【0092】
実施例2:以下の成分を含む液体医薬組成物を調製する:
【0093】
【表2】

【0094】
こうして製造した液体組成物を、液体/気体接触面のないシリンジ型の装置中に密封する。これらの条件で保存すると、23〜27℃では少なくとも6ヶ月、そして2〜8℃では少なくとも12ヶ月安定である。
【0095】
実施例3:以下の成分を含む液体医薬組成物を調製する:
【0096】
【表3】

【0097】
こうして調製した液体組成物を液体/気体接触面のないシリンジ型の装置中に密封する。これらの条件で保存すると、23〜27℃では少なくとも6ヶ月、そして2〜8℃では少なくとも12ヶ月安定である。
【0098】
分析方法
マウス毒性アッセイ
マウス毒性アッセイは、ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)の毒性を測定するために使用可能である。該アッセイにおいては、推定のLD50値または約推定のLD50値の範囲の希釈液を調製するために標準希釈液が使用される。希釈液の範囲及び規模は、正確なLD50値を確立するように用意する。
【0099】
既知の標準化された体積の希釈毒素をマウスに腹腔内注射する。96時間後、各希釈液群における死亡及び生存数を記録する。LD50値は、注射した動物の半数を96時間以内に殺す用量の中央値である。
【0100】
本発明の組成物は、参照調製物に比較した最初の毒性が少なくとも70%、一定期間にわたって維持される場合、該期間にわたって安定であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(a)ボツリヌス神経毒複合体(A、B、C、D、E、FまたはG型)または高純度ボツリヌス神経毒(A、B、C、D、E、FまたはG型)、及び
(b)界面活性剤、
を含む、固体または液体医薬組成物。
【請求項2】
さらに、結晶性作用物質を含む、請求項1に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項3】
上記結晶性作用物質が塩化ナトリウムである、請求項2に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項4】
pHを5.5〜7.5に維持するために、さらに緩衝剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項5】
上記緩衝剤がpHを5.8〜7.0に維持する、請求項4に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項6】
さらにジサッカライドを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項7】
上記ジサッカライドが、シュークロース、トレハロース、ラクトース及びマンニトールから成る群から選ばれる、請求項6に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項8】
ボツリヌス神経毒複合体A型を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項9】
高純度ボツリヌス神経毒A型を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体または液体医薬組成物。
【請求項10】
上記界面活性剤がポリソルベート80である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
実質的に本明細書中に記載された、固体または液体医薬組成物。

【公開番号】特開2012−211150(P2012−211150A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−128597(P2012−128597)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2007−520876(P2007−520876)の分割
【原出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(510186018)イプセン バイオファーム リミティド (2)
【Fターム(参考)】