説明

ボツリヌス菌ナノエマルジョン

本明細書に記載された態様は、ボツリヌス毒素を含むナノエマルジョンに関する。一つの態様において、ナノエマルジョンは、高圧マイクロ流動化により調製され、10〜300nmの間のみの粒子サイズ分布を含む。本発明ににより企図されるナノエマルジョンは、筋拘縮状態の美容的および医学的処置に有用である。例えば、ボツリヌス毒素は、皮膚のしわがよりなめらかで、あまり目立たなくなるように顔面筋を弛緩させうる。さらに、本発明は、例えば、自宅で個人的に、かつ医学的管理なしに、自己投与されうる化粧品製剤を企図する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月1日に出願された米国特許出願第60/741,139号('139出願)に関連し、35 USC 119(e)によりその優先権を主張する;'139出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景
ボツリヌス毒素は、様々な皮膚状態および障害を処置するために化粧品の皮膚科学において用いられている。例えば、ボツリヌス毒素は、しわ(例えば、運動過剰性の顔のしわの線)、広頚筋帯、デコルテ帯、多汗症、および特定の神経筋障害を処置するために用いられている。典型的には、ボツリヌス毒素は、対象となる部位へ(すなわち、しわまたは帯形成の原因である関連筋群へ、汗腺を含む皮膚へなど)の注射により送達される。
【0003】
残念なことに、ボツリヌス毒素を送達するための現行のストラテジーは、多数の有害効果を生じる。例えば、誤った注射技術は組織を損傷しうる、ならびに/またはボツリヌス毒素を意図しないおよび/もしくは望ましくない場所へ送達しうる。眼周囲領域において、まぶたおよび眉毛下垂は、重大な有害効果である。疼痛、血腫、斑状出血、および挫傷も起こりうる。
【0004】
特定の副作用を最小限にしうる技術(例えば、疼痛、血腫、斑状出血、および挫傷を低減するために注射前に皮膚を冷却すること)は開発されているが、ボツリヌス毒素を送達するための改善された系および/または製剤の開発の必要性は依然としてある。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、ボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物(例えば、ナノエマルジョン)を提供する。そのような組成物は、例えば、様々な化粧品および医療の適用に、有用である。本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、しわを伸ばすために利用される。本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、多汗症を処置するために利用される。本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、筋拘縮症および/または活動亢進を処置するために利用される。本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物の他の使用は、本明細書に記載されている、および/または当業者にとって明らかであると思われる。
【0006】
本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、高剪断力により調製される;いくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、マイクロ流動化により調製される;いくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、高圧ホモジナイゼーションにより調製される。
【0007】
本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、限定されるわけではないが、経皮的および注射(例えば、静脈、皮下、または筋内注射)によることを含む任意の利用可能な手段により投与されうる。本発明は、特定のボツリヌス菌ナノ粒子組成物が、皮膚の構造を変化させる、または変更することなく、経皮的に送達されうるという所見を含む。例えば、研磨剤、または皮膚の表層を腐食するもしくは崩壊させる作用物質は、本発明によるボツリヌス毒素の経皮的送達を達成するのに必要とされない。従って、多くの態様において、ボツリヌス毒素の経皮的送達は、皮膚への有意な刺激なしに達成される。
【0008】
本発明により、経皮的送達は、様々な形式のいずれかで達成されうる。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、クリーム内に組み入れられ、ボツリヌス毒素は、クリームの皮膚への塗布により被験体に投与される。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、経皮パッチ内に組み入れられ、ボツリヌス毒素はパッチから被験体へ投与される。
【0009】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、最大直径および最小直径を有する粒子の集団を含むエマルジョンであり、最大直径と最小直径の差は、約600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50nm、またはそれ未満を超えない。
【0010】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、130、120、115、110、100、90、80nm、またはそれ未満より小さい直径を有する。
【0011】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約10ナノメートル〜約600ナノメートルの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子は、約10〜300、10〜200、10〜150、10〜130、10〜120、10〜115、10〜110、10〜100、または10〜90nmの範囲内の直径を有する。
【0012】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約300、250、200、150、130、120、または115、110、100、または90nm未満である平均粒子サイズを有する。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約10〜300、50〜250、60〜200、65〜150、70〜130nmの範囲内である。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約80〜110nmである。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約90〜100nmである。
【0013】
いくつかの態様において、本発明の組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)の大部分は、特定されたサイズ未満、または特定された範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、大部分は、組成物中の粒子の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上より多い。
【0014】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、約120ナノメートルより大きい直径を有する粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)を実質的に含まない。本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約30ナノメートル〜約115ナノメートルの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)の大部分は、この範囲内の直径を有する;いくつかの態様において、そのような組成物は、約115ナノメートルより大きい直径を有する粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)を実質的に含まない。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約30ナノメートル〜約70ナノメートルの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、そのような組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)の大部分は、この範囲内の直径を有する;いくつかの態様において、組成物は、約70ナノメートルより大きい直径を有する粒子を実質的に含まない。
【0015】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、粒子の少なくとも2つの別個の集団を有する。例えば、いくつかのそのような態様において、本発明のナノ粒子組成物における粒子の大部分は、約30〜70nmの範囲内の直径を有するが、粒子の第二集団は、70〜120nmの範囲内の直径を有する。いくつかのそのような態様において、組成物は、直径が120nmより大きい粒子を混入していない。
【0016】
いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物における粒子内に部分的に、または全体に、存在する;いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、本発明のボツリヌス菌組成物におけるナノ粒子の表面上に吸着されている;いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、ナノ粒子と分散媒との間の界面に会合している。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、ナノ粒子組成物内のこれらの場所の2つまたはそれ以上に見出される。
【0017】
本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、A型、B型、C1型、C2型、D型、F型、およびG型からなる群より選択される。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、単離されたタンパク質として存在する;いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、タンパク質複合体の一部として存在する。
【0018】
本出願は、様々な特許刊行物に言及するが、それらのすべては参照として本明細書に組み入れられている。
【0019】
定義
表皮剥脱:
本明細書に用いられる場合、「表皮剥脱」という用語は、皮膚の最上層を変化させること、崩壊させること、除去すること、または破壊することの任意の手段を指す。いくつかの態様において、表皮剥脱は、皮膚の最上層を変化させること、崩壊させること、除去すること、または破壊することの機械的手段を指す。いくつかの態様において、表皮剥脱は、皮膚の最上層を変化させること、崩壊させること、除去すること、または破壊することの化学的手段を指す。ほんの数例を挙げれば、皮膚摩擦材、微粒子(例えば、マグネシウムまたはアルミニウム粒子)、酸(例えば、α-ヒドロキシ酸またはβ-ヒドロキシ酸)、アルコールなどの作用物質は、表皮剥脱を引き起こしうる。一般的に、例えば、Donovan(例えば、米国特許出願公開第2004/009180号および第2005/175636号、ならびにPCT出願公開第WO 04/06954号)およびGraham(例えば、米国特許第6,939,852号および米国特許出願公開第2006/093624号)などにより記載されたものなどの透過促進剤は、表皮剥脱を引き起こすことが予想される。もちろん、当業者は、特定の作用物質が、ある濃度で存在する場合、または1つもしくは複数の他の作用物質と共同して、表皮剥脱を引き起こしうるが、異なる環境下では表皮剥脱を引き起こさない可能性があることを認識していると思われる。従って、特定の物質が「研磨剤」であるかどうかは、状況に依る。表皮剥脱は、例えば、皮膚の赤みもしくは刺激の観察、および/または解質層の変化、崩壊、除去、もしくは腐食を示す皮膚の組織学的検査によって、当業者により容易に評価されうる。
【0020】
投与:
本明細書に用いられる場合、「投与」という用語は、本発明のナノ粒子組成物の被験体への送達を指し、何か特定の経路に限定されないが、どちらかと言えば、医学界により適切として認められている任意の経路を指す。例えば、本発明は、限定されるわけではないが、経皮的、筋肉内、もしくは皮下を含む送達または投与の経路を企図する。本発明の特定の態様において、投与は経皮的である。
【0021】
生物活性物質:
本明細書に用いられる場合、「生物活性物質」という用語は、生体系および/または生物体において活性を有する任意の物質を指す。例えば、生物体に投与された場合、その生物体に生物活性を生じる物質は、生物活性があるとみなされる。タンパク質またはポリペプチドが生物活性がある、特定の態様において、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、典型的には、「生物活性」部分と呼ばれる。ボツリヌス毒素は、本発明による生物活性物質である。
【0022】
ボツリヌス菌ナノ粒子組成物:
本明細書に用いられる場合、「ボツリヌス菌ナノ粒子組成物」という用語は、少なくとも1つのナノ粒子がボツリヌス毒素を含む任意のナノ粒子組成物を指す。ボツリヌス毒素は、ナノ粒子内に、ナノ粒子表面上に、および/またはナノ粒子の境界を画定するミセル膜内に、存在しうる。
【0023】
ボツリヌス毒素:
本明細書に用いられる場合、「ボツリヌス毒素」という句は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)により産生される任意の神経毒を指す。他に規定がある場合を除き、その用語は、適切な活性(例えば、筋弛緩活性)を保持するそのような神経毒の断片または部分(例えば、軽鎖および/または重鎖)を含む。本明細書に用いられる場合、「ボツリヌス毒素」という句は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F、およびGを含む。本明細書に用いられる場合、ボツリヌス毒素はまた、ボツリヌス毒素複合体(すなわち、例えば、300、600、および900kDの複合体)および精製された(すなわち、例えば、単離された)ボツリヌス毒素(すなわち、例えば、約150kD)の両方を含む。「精製されたボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素複合体についてのタンパク質を含む他のタンパク質から単離されている、または実質的に単離されている、ボツリヌス毒素と定義される。精製された毒素は、95%より高く純粋でありうるが、好ましくは、99%より高く純粋である。当業者は、本発明がボツリヌス毒素の何か特定の供給源に限定されないことを認識していると思われる。例えば、本発明に従って用いるボツリヌス毒素は、クロストリジウム・ボツリヌムから単離されうる、化学合成されうる、組換え技術などにより(すなわち、クロストリジウム・ボツリヌム以外の宿主細胞または生物体において)産生されうる。
【0024】
薬用化粧品:
本明細書に用いられる場合、「薬用化粧品」という用語は、美容的および薬学的性質の両方を有する任意の作用物質(例えば、例として、過酸化ベンゾイルまたはレチノール)を指す。薬用化粧品は、一般的に、肌色または全体の肉体的外観を向上させるための外用に有用である。薬用化粧品は、限定されるわけではないが、クリーム、油、泡、スプレー、液体などを含む組成物として適用されうる。ほんの数例を挙げれば、カロテノイド、フェノール類化合物、および/または水溶性酸化防止剤が薬用化粧品として作用しうる。
【0025】
化粧品製剤:
「化粧品製剤」という用語は、美容的性質を有する1つまたは複数の作用物質を含む、局所的に適用される組成物を指すために用いられる。ほんの数例を挙げれば、化粧品製剤は、皮膚軟化剤、栄養ローション型エマルジョン、クレンジングローション、クレンジングクリーム、乳液、皮膚軟化ローション、マッサージクリーム、皮膚軟化クリーム、化粧下地、口紅、美顔パックもしくは美顔ジェル、シャンプー、リンス、ボディクレンザー、ヘアトニック、もしくは石鹸などの洗浄製剤、ならびに/またはローション、軟膏、ジェル、クリーム、パッチ、および/もしくはスプレーなどの皮膚科学的組成物でありうる。
【0026】
クリーム:
「クリーム」という用語は、皮膚への塗布のために典型的に製剤化された広げられる組成物を指す。クリームは、典型的には、油および/または脂肪酸を主成分とする基材を含む。本発明により製剤化されたクリームはナノ粒子を含むことができ、局所投与により皮膚を通っての実質的に完全な透過(例えば、そのようなナノ粒子の)の能力がありうる。そのようなクリームはまた、組み入れられた物質のための(例えば、例として、ボツリヌス毒素のための)担体として働きうる。
【0027】
分散媒:
本明細書に用いられる場合、「分散媒」という用語は、粒子(例えば、ナノ粒子)が分散している液体媒体を指す。一般的に、分散液は、少なくとも2つの不混和性物質が組み合わされる場合、形成される。「水中油」分散液は、油性粒子が水性分散媒内に分散しているものである。「油中水」分散液は、水性粒子が油性分散媒内に分散しているものである。当業者は、分散液が任意の2つの不混和性媒体から形成することができ、水性および油性媒体の組み合わせに厳密に限定されるのではないことを認識していると思われる。それゆえに、「分散媒」という用語は、「水性」および「油性」カテゴリーを指すことが一般的であるにもかかわらず、任意の分散媒に広くあてはまる。
【0028】
カプセル化された:
「カプセル化された」(「カプセル化する」または「カプセル化すること」も)という用語は、カプセル化された実体が別の物質に完全に囲まれていることを意味するために本明細書で用いられる。ほんの一例を挙げれば、生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)は本発明のエマルジョンにおけるナノ粒子内にカプセル化されうる。そのようなカプセル化は、例えば、ナノ粒子組成物(例えば、ナノエマルジョン)の形成中、例えば、マイクロ流動化中に、達成されうる。
【0029】
と共に:
本明細書に用いられる場合、「と共に」送達されるという句は、2つまたはそれ以上のものの同時送達を指す。特に、本発明により、その句は、生物活性物質の本発明のナノ粒子および/またはナノ粒子組成物との送達に関して本明細書に用いられる。物質または作用物質は、物質または作用物質がナノ粒子および/もしくはナノ粒子組成物と組み合わされる場合、ナノ粒子と共に送達される;ナノ粒子によりカプセル化される、もしくは完全に囲まれる;ナノ粒子界面と会合する;ならびに/またはナノ粒子の外面へ吸着される。ナノ粒子および/またはナノ粒子組成物と共に送達されうる物質または作用物質は、ナノ粒子および/またはナノ粒子組成物に共有結合していてもよいし、共有結合していなくてもよい。ナノ粒子および/またはナノ粒子組成物と共に送達されうる物質または作用物質は、ナノ粒子および/またはナノ粒子組成物に吸着力により付着していてもよいし、していなくてもよい。本発明の多くの態様において、ナノ粒子またはナノ粒子組成物と共に送達される生物活性物質は、ボツリヌス毒素である。
【0030】
マイクロ流動化された:
「マイクロ流動化された」という用語は、一般的に、高剪断力に曝された組成物を記載するために本明細書で用いられる。本発明のいくつかの態様において、組成物は、機器または「マイクロフルイダイザー(microfluidizer)」として知られた装置により処理されている。しかしながら、最も広い意味において、その用語は、任意の手段による高剪断力に曝された任意の組成物を含む。例えば、高剪断力は、キャビテーションにより、または高圧ホモジナイゼーションにより与えられうる。代替としてまたは追加として、高剪断力は、高圧、例えば、約15,000psi、への曝露により与えられうる。いくつかの態様において、そのような高圧は、約18,000〜約26,000psiの範囲内である;いくつかの態様において、それは、約20,000〜約25,000psiの範囲内である。示されているように、高剪断力は、例えば、Microfluidizer(登録商標)プロセッサ(Microfluidics Corporation/MFIC Corporation)または他の同様の装置などの機器への通過により与えられうる。Microfluidizer(登録商標)プロセッサは、ナノスケール範囲へのサイズ低減のために、高圧、および生成物をマイクロチャネルを通して高速へ加速することにより結果として生じる高剪断速度を提供する。流体は2つに分けられ、ほぼ75ミクロン程度の典型的な寸法をもつマイクロチャネルを高速で(50〜300m/sの範囲で)押し通される。流体がマイクロチャネルから出る時、それは、反対側のマイクロチャネルからのジェットと衝突するジェットを形成する。チャネルにおいて、流体は、通常のテクノロジーのものより数桁高い高剪断(最高107l/s)を受ける。ジェット衝突は、結果として、サブミクロンレベルでの混合を生じる。それゆえに、高剪断および衝撃が、Microfluidizer(登録商標)テクノロジーにおける、粒子サイズ低減および多相流体の混合の原因である。本発明のいくつかの態様において、試料は、約10分未満の時間での高剪断力への曝露を通して「マイクロ流動化される」。いくつかの態様において、時間は、約9、8、7、6、5、4、3、2、または1分未満である。いくつかの態様において、時間は、約1〜2分間またはそれ未満の範囲内である;いくつかの態様において、時間は、約30秒間である。本発明のいくつかの態様において、試料は、高剪断力への1回の曝露を通して「マイクロ流動化される」;そのような態様は、「単一パス」マイクロ流動化と本明細書で呼ばれる。
【0031】
ナノエマルジョン:
エマルジョンは、当技術分野において、「通常、コロイドサイズより大きい液滴として非混和液中に、乳化剤の有無にかかわらず、分散した液体からなる...系と」(Medline Plus Online Medical Dictionary, Merriam Webster (2005))伝統的に定義される。本明細書に用いられる場合、「ナノエマルジョン」という用語は、液滴(または粒子)の少なくとも一部がナノメートルサイズ範囲の直径を有するエマルジョンを指す。当業者により理解されているように、ナノエマルジョンは、マイクロエマルジョン液滴または粒子より1千倍小さい液滴または粒子により特徴付けられる。
【0032】
ナノ粒子:
「ナノ粒子」という用語は、1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。いくつかの態様において、ナノ粒子は、National Science Foundationにより定義されているように、300nm未満の直径を有する。いくつかの態様において、National Institutes of Healthにより定義されているように、100nm未満の直径を有する。当業者は、本明細書に用いられる場合、「ナノ粒子」という用語は、分散液またはエマルジョンにおける分散相を記載することは認識していると思われる。
【0033】
ナノ粒子組成物:
本明細書に用いられる場合、「ナノ粒子組成物」という用語は、少なくとも1個のナノ粒子を含む任意の組成物を指す。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、ナノ粒子の均一な収集物である。本明細書に記載されたナノ粒子組成物は、典型的には、エマルジョンまたは分散液である。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は安定である。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、ナノ粒子と共に送達されうる1つまたは複数の生物活性物質を含む。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、ナノエマルジョンである。ナノ粒子組成物は、例えば、化学的または機械的手段を含む任意の利用可能な手段により調製されうることは当業者により認識されていると思われる。本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、試料をマイクロ流動化に供することにより調製される。本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、毒性溶媒の使用なしに調製されうる、および/または毒性溶媒を実質的に含まない。
【0034】
を混入していない:
ナノ粒子組成物に言及するために本明細書で用いられる場合、「を混入していない」という句は、「を実質的に含まない」という句と同義であり、約50%以下の列挙された物質を含むナノ粒子組成物を記載する。例えば、ナノ粒子組成物は、直径が規定された範囲外である粒子「を実質的に含まない」と言われる場合には、その組成物における粒子の約50%以下が範囲外の直径を有する。いくつかの態様において、25%以下の粒子は範囲外である。いくつかの態様において、粒子の20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、またはそれ未満が規定された範囲外の直径を有する。
【0035】
薬学的に許容される:
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症が無く、妥当な利益/リスク比に見合って、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適している作用物質を指す。
【0036】
プレミックス:
本明細書に用いられる場合、「プレミックス」という用語は、実質的には本発明によるナノ粒子組成物を作製するために用いられる、成分の任意の組み合わせを指す。例えば、プレミックスは、高剪断力をかけられた場合、本発明によるナノ粒子を生じる任意の成分収集物である。いくつかの態様において、プレミックスは、高剪断力をかけられた場合、均一なナノ粒子組成物などのナノ粒子組成物を生じる成分収集物である。プレミックスは、しばしば、分散媒内のナノ粒子を生じるのに十分な液体分散媒および他の成分を含む。本発明により、ボツリヌス毒素もまた、プレミックスに含まれうる。プレミックスはまた、1つもしくは複数の界面活性剤および/または他の作用物質を含みうる。いくつかの態様において、プレミックスは、溶液を構成する。プレミックスがボツリヌス毒素および/またはもう一つの生物活性物質を含むいくつかの特定の態様において、ボツリヌス毒素(および/または他の生物活性物質)は、高剪断力がプレミックスに適用される前は、溶液中である。
【0037】
不応性の:
本明細書に用いられる場合、「不応性の」という用語は、開業の医療関係者により普通は観察される、生物活性物質または薬学的組成物の送達後の予想された臨床効果で応答しない任意の被験体を指す。
【0038】
自己投与:
本明細書に用いられる場合、「自己投与」という用語は、被験体が、医学的管理を必要とすることなく、彼自身または彼女自身へ組成物を投与する能力を有する状況を指す。本発明のいくつかの態様において、自己投与は、臨床設定外で行われうる。ほんの一例を挙げれば、本発明のいくつかの態様において、美顔化粧クリームは、被験体により自分自身の家で投与されうる。
【0039】
小分子:
一般的に、「小分子」は、サイズが約5キロダルトン(Kd)未満である有機分子であると当技術分野において理解されている。いくつかの態様において、小分子は、約3Kd、2Kd、または1Kd未満である。いくつかの態様において、小分子は、約800ダルトン(D)、600D、500D、400D、300D、200D、または100D未満である。いくつかの態様において、小分子は、非重合体である。いくつかの態様において、小分子は、タンパク質、ペプチド、またはアミノ酸ではない。いくつかの態様において、小分子は、核酸またはヌクレオチドではない。いくつかの態様において、小分子は、糖類または多糖ではない。
【0040】
安定な:
本明細書でナノ粒子組成物に適用される場合の「安定な」という用語は、組成物が、ある期間に渡って、それらの物理的構造(例えば、粒子のサイズ範囲および/または分布)の1つまたは複数の局面を維持することを意味する。本発明のいくつかの態様において、安定なナノ粒子組成物は、平均粒子サイズ、最大粒子サイズ、粒子サイズの範囲、および/または粒子サイズの分布(すなわち、指定されたサイズより上の、および/または指定されたサイズ範囲外の粒子のパーセンテージ)がある期間、維持されるものである。いくつかの態様において、その期間は、少なくとも約1時間である;いくつかの態様において、その期間は、約5時間、10時間、1日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上である。いくつかの態様において、その期間は、約1日〜24ヶ月、2週間〜12ヶ月、2ヶ月〜5ヶ月などの範囲内である。例えば、ナノエマルジョン粒子の集団が、長期間保存、温度変化、および/またはpH変化にかけられ、かつ集団におけるナノ粒子の大部分が規定された範囲内(すなわち、例えば、約10〜120nm)の直径を維持する場合には、そのナノエマルジョンは安定である。いくつかのそのような集団について、大部分は、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上より多い。本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子組成物がボツリヌス毒素および/または少なくとも1つの他の生物活性物質を含む場合、生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)の濃度が、指定された一連の条件下で指定された期間に渡って組成物において維持される場合には、ナノ粒子組成物は安定とみなされる。
【0041】
被験体:
本明細書に用いられる場合、「被験体」という用語は、本発明のナノ粒子組成物が送達または投与されうる任意の動物を指す。例えば、被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、アレチネズミ、ハムスターなどでありうる。本発明の多くの態様において、被験体はヒトである。
【0042】
症状が低減する:
本発明により、特定の疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状の大きさ(例えば、強度)または頻度が低減した場合、「症状が低減している」。明確さを期すために、特定の症状の発生の遅れは、その症状の頻度を低減させることの一つの形とみなされる。ほんの数例を挙げれば、問題の状態が顔のしわである場合、選択された領域における1つまたは複数のしわの深さおよび/または重症度が低減した時、その状態の症状は低減している。問題の状態が筋拘縮症である場合、筋肉の緊張がより弱まりかつ筋肉がより弛緩するようになった時、症状は低減している。本発明は症状が取り除かれる場合のみに限定されることは、意図されない。本発明は、具体的には、たとえ完全には除去されないとしても、1つまたは複数の症状が低減する(かつ、被験体の状態がそれにより「改善される」)ような処置を企図する。
【0043】
治療的有効量:
本明細書に用いられる場合、「治療的有効量」という用語は、疾患、障害、および/もしくは状態を患っている、または受けやすい個体へ投与された場合、その疾患、障害、および/または状態を処置するのに十分である量を意味する。当業者は、「治療的有効量」という用語が、特定の個体において処置の成功が達成されることを実際、必要としないことは認識していると思われる。むしろ、治療的有効量は、そのような処置を必要としているかなりの数の被験体に投与または送達される場合、特定の所望の薬理学的応答を与える量でありうる。特定の被験体は、実際、「治療的有効量」に対して「不応性」である可能性があることは明確に理解される。ほんの一例を挙げれば、不応性被験体は、臨床効果が得られないような、生物学的利用能が低い可能性がある。いくつかの態様において、治療的有効量への言及は、1つまたは複数の特定の組織において測定された量への言及でありうる。
【0044】
毒性溶媒:
本明細書に用いられる場合、「毒性溶媒」という用語は、動物の組織を変化させうる、崩壊させうる、除去しうる、または破壊しうる任意の物質を指す。当業者により理解されているように、動物の組織は、生細胞、死細胞、細胞外マトリックス、細胞接合部、生体分子などを含みうる。ほんの数例を挙げれば、毒性溶媒には、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセチミド、ジメチルホルアミド、クロロホルム、テトラメチルホルアミド、アセトン、アセテート、およびアルカンが挙げられる。
【0045】
処置:
本明細書に用いられる場合、「処置」(「処置する」または「処置すること」も)という用語は、特定の疾患、障害、および/または状態(例えば、顔のしわ)の1つまたは複数の症状を、部分的にまたは完全に、緩和する、緩解させる、軽減する、阻害する、症状の発生を遅らせる、症状の重症度を低減させる、および/または発生率を低減させる、生物活性物質の任意の投与を指す。そのような処置は、関連疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を示していない被験体、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは状態の初期徴候のみを示している被験体についてでありうる。代替として、または追加として、そのような処置は、関連疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の確立した徴候を示す被験体についてでありうる。
【0046】
均一な:
ナノ粒子組成物に関して本明細書に用いられる場合、「均一な」という用語は、個々のナノ粒子が特定された範囲の粒子直径サイズを有するナノ粒子組成物を指す。例えば、いくつかの態様において、均一なナノ粒子組成物は、最小直径と最大直径の差がおよそ600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50nm、またはそれ未満を超えないものである。いくつかの態様において、本発明の均一なボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、130、120、115、110、100、90、80nm、またはそれ未満より小さい直径を有する。いくつかの態様において、本発明の均一なボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約10ナノメートル〜約600ナノメートルの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、本発明の均一なボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子は、約10〜300、10〜200、10〜150、10〜130、10〜120、10〜115、10〜110、10〜100、または10〜90nmの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約300、250、200、150、130、120、または115、110、100、または90nm未満である平均粒子サイズを有する。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約10〜300、50〜250、60〜200、65〜150、70〜130nmの範囲内である。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約80〜110nmである。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約90〜100nmである。いくつかの態様において、本発明の均一な組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)の大部分は、特定されたサイズ未満、または特定された範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、大部分は、組成物中の粒子の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上より多い。本発明のいくつかの態様において、均一なナノ粒子組成物は、試料のマイクロ流動化により達成される。
【0047】
特定の好ましい態様の説明
本発明は、美容的および医学的処置に有用なボツリヌス毒素ナノエマルジョン組成物に関する。とりわけ、本発明は、ボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物を作製するための系を提供し、さらに、様々な状況でそのような組成物を用いる方法を提供する。一つの態様において、医学的処置は、筋拘縮症および/または活動亢進を軽減する;もう一つの態様において、医学的処置は、多汗症を軽減する。一つの態様において、美容的処置は、皮膚のしわを伸ばす。一つの態様において、ボツリヌス毒素ナノエマルジョンは、マイクロ流動化により調製される。ボツリヌス毒素ナノエマルジョンの投与は、限定されるわけではないが、筋内注射または経皮的局所適用を含む方法により行われうる。
【0048】
ボツリヌス毒素生物学
ボツリヌス毒素(BTX)、BTXは、天然において、嫌気性グラム陽性細菌クロストリジウム・ボツリヌムにより産生され、強力なポリペプチド神経毒である。最も顕著には、BTXは、ボツリヌス中毒と呼ばれる、ヒトおよび動物において神経麻痺性病気を引き起こす。BTXは、明らかに、借用されずに腸の内層を通過して、末梢運動ニューロンを攻撃することができる。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行困難、嚥下困難、および発話困難から呼吸筋の麻痺および死まで進行しうる。
【0049】
BTX-Aは、人間に対して知られている最も致死的な天然生物学的作用物質である。市販されているBTX-Aについての雌Swiss Websterマウス(18〜20g)におけるLD50は、約50ピコグラムである;この量はBTX-Aの1ユニットとして定義される。モルを基準にして、BTX-Aは、ジフテリアの約18億倍の致死性、シアン化ナトリウムの約6億倍の致死性、コブラ毒素の約3千万倍の致死性、およびコレラの約1200万倍の致死性である(Singh, et al., ed., 「Critical Aspects of Bacterial Protein Toxins」 Natural Toxins II, pp. 63-84, Plenum Press, New York, 1996)。
【0050】
ボツリヌス毒素の異なる血清型は、それらが冒す動物種、ならびにそれらが誘起する麻痺の重症度および持続時間が異なる。例えば、BTX-Aは、ラットにおいて生じる麻痺の速度により測定される場合、BTX-Bより500倍強力であることが測定されている。さらに、BTX-Bは、BTX-Aについての霊長類LD50の約12倍である、480U/kgの用量で霊長類において非毒性であることが測定されている。さらになお、ボツリヌス毒素B型は、筋内注射において、活性持続時間がより短く、同じ用量レベルでBTX-Aより効力も弱いことが知られている。
【0051】
ボツリヌス毒素は、明らかに、コリン作動性運動ニューロンに高親和性で結合し、ニューロンへと転位置し、アセチルコリンの放出をブロックする。
【0052】
ボツリヌス毒素は、特定の神経筋障害の処置のために臨床設定で用いられている。特に、BTX-Aは、眼瞼痙攣、斜視、および片側顔面痙攣の処置について米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)により認可されている。非A型ボツリヌス毒素血清型は、明らかに、BTX-Aと比較して、より低い効力および/またはより短い活性持続時間をもつ。末梢筋肉内BTX-Aの臨床効果は、通常、注射から1週間以内に見られる。BTX-Aの1回の筋内注射からの症状軽減の典型的持続期間は平均して、約3ヶ月間である。
【0053】
すべてのボツリヌス毒素血清型は明らかに、神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するが、それらは、異なる神経分泌性タンパク質に影響を及ぼすこと、および/またはこれらのタンパク質を異なる部位で切断することにより、そのように行う。例えば、ボツリヌス毒素A型およびE型は、両方とも、25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)を切断するが、それらは、このタンパク質内の異なるアミノ酸配列をターゲットする。ボツリヌス毒素B型、D型、F型、およびG型は、小胞関連タンパク質(VAMP、シナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、各血清型はそのタンパク質を異なる部位で切断する。最後に、ボツリヌス毒素C1型は、シンタキシンおよびSNAP-25の両方を切断することが示されている。作用機構におけるこれらの違いは、様々なボツリヌス毒素血清型の相対的効力および/または作用持続時間に影響を及ぼしうる。意味ありげには、膵島B細胞のサイトゾルは少なくともSNAP-25(Bochem J 1;339(pt 1):159-65 (April 1999))およびシナプトブレビン(Mov Disord 1995 May; 10(3):376)を含むことが知られている。
【0054】
既知のボツリヌス毒素血清型のすべての7つについてのボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、約150kDである。興味深いことに、ボツリヌス毒素は、150kDボツリヌス毒素タンパク質分子を関連した非毒素タンパク質と共に含む複合体としてクロストリジウム属細菌により放出される。従って、BTX-A複合体は、900kD、500kD、および360kD型としてクロストリジウム属細菌により産生されうる。ボツリヌス毒素B型およびC1型は、明らかに、500kD複合体としてのみ産生される。ボツリヌス毒素D型は、300kD複合体および500kD複合体の両方として産生される。最後に、ボツリヌス毒素E型およびF型は、約300kD複合体としてのみ産生される。
【0055】
BTX複合体(すなわち、約150kDより大きい分子量をもつそれらの組成物)は、非毒性赤血球凝集素タンパク質ならびに非毒素および非毒性非赤血球凝集素タンパク質を含むと考えられている。これらの2つの非毒素タンパク質(ボツリヌス毒素分子と同様に、関連した神経毒複合体を構成する)は、ボツリヌス毒素分子への変性に対する安定性、および毒素が経口摂取された場合、消化性酸からの保護を与えるように作用しうる。さらに、より大きい(約150kD分子量より大きい)ボツリヌス毒素複合体は、結果として、ボツリヌス毒素複合体の筋内注射の部位から離れるボツリヌス毒素のより遅い拡散速度を生じることはありえる。
【0056】
BTXタンパク質かまたはBTX複合体のいずれかが、本発明に従って利用されうる。実際、適切な活性を保持するBTXタンパク質もしくは複合体の任意の部分または断片が本明細書に記載されているように利用されうることは当業者により認識されていると思われる。
【0057】
インビトロ研究により、ボツリヌス毒素が、脳幹組織の初代細胞培養物からのアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方のカリウム陽イオン誘導性放出を阻害することが示されている。さらに、ボツリヌス毒素が、脊髄ニューロンの初代培養物におけるグリシンおよびグルタミン酸の両方の誘発性放出を阻害すること、ならびに脳シナプトソーム調製物において、ボツリヌス毒素が、神経伝達物質、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRP、およびグルタミン酸のそれぞれの放出を阻害することが報告されている。
【0058】
上記のように、ボツリヌス毒素の供給源は本発明にとって重大な意味をもたない。しかしながら、完全を期すために、本発明者らは、特定のボツリヌス毒素調製物についての、市販の供給源を含む様々な供給源が容易に利用できることを言及しておく。
【0059】
例えば、BTXまたはBTX複合体は、発酵槽においてクロストリジウム・ボツリヌムの培養物を樹立し、増殖させ、その後、公知の手順に従って、発酵混合物を収集し、精製することにより、得られうる。すべてのボツリヌス毒素血清型は、神経活性になるためにプロテアーゼで切断またはニッキングされなければならない、不活性一本鎖タンパク質として最初は合成される。ボツリヌス毒素血清型AおよびGを生成する細菌株は、内因性プロテアーゼを有し、血清型AおよびGは、それゆえに、細菌培養物から主にそれらの活性型で回収されうる。対照的に、ボツリヌス毒素血清型C1、D、およびEは、タンパク非分解性菌株により合成され、それゆえに、培養から回収された時、典型的には活性化していない。血清型BおよびFは、タンパク分解性菌株およびタンパク非分解性菌株の両方により産生され、それゆえに、活性型または不活性型のいずれかで回収されうる。しかしながら、例えば、BTX-A血清型、を産生するタンパク分解性菌株でさえ、典型的には、産生された毒素の一部を切断するだけである。ニッキングされていない分子に対するニッキングされた分子の正確な比率は、インキュベーションの長さおよび培養の温度に依存しうる。それゆえに、例えば、BTX-A毒素の、任意の調製物のあるパーセンテージは不活性である可能性が高い。臨床調製物における不活性ボツリヌス毒素分子の存在は、その臨床効果に寄与することなく、調製物の総タンパク質負荷に寄与し、それは、一部の市販されているボツリヌス毒素調製物において抗原性の増加に結びつけられている。
【0060】
高品質結晶性ボツリヌス毒素A型は、クロストリジウム・ボツリヌムのHall A株から産生されることができ、≧3x107U/mg、0.60未満のA260/A278、およびゲル電気泳動上の明確なバンド形成パターンの特徴をもつ。公知のSchantz方法がA型を含む結晶性ボツリヌス毒素を得るために用いられうる(Shantz et al., 1992, Microbiol. Rev., 56:80)。
【0061】
一般的に、ボツリヌス毒素複合体は、クロストリジウム・ボツリヌム(例えば、A型)を適した培地で培養することによる嫌気的発酵から単離および精製されうる。例えば、以下のような純粋なボツリヌス毒素を得るために、非毒素タンパク質からの分離において、公知の方法が用いられうる:約150kD分子量、1〜2x108 LD50 U/mgまたはそれ以上の特定抗力を有する精製ボツリヌス毒素A型;約156kD分子量、1〜2x108 LD50 U/mgまたはそれ以上の特定抗力を有する精製ボツリヌス毒素B型、および;約155kD分子量、1〜2x107 LD50 U/mgまたはそれ以上の特定の抗力を有する精製ボツリヌス毒素F型。
【0062】
代替としてまたは追加として、すでに調製および精製されたボツリヌス毒素および毒素複合体は、例えば、List Biological Laboratories, Inc., Campbell, Calif; the Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, U.K.; Wako (Osaka, Japan)から、およびSt Louis, MoのSigma Chemicalsから入手されうる。
【0063】
自由溶液として投与される場合の精製ボツリヌス毒素は、それが一般的に薬学的組成物を調製するのに用いられないほど不安定である。さらに、毒素A型複合体などのボツリヌス毒素複合体もまた、表面変性、熱、およびアルカリ条件による変性を受けやすくありうる。場合によっては、不活性化毒素型は、免疫原性でありうるトキソイドタンパク質を形成する。結果として生じた抗体は、患者を毒素注射に対して不応性にしうる。
【0064】
いくつかの態様において、本発明は、現在投与されている自由溶液と比較した場合、ボツリヌス毒素が改善された安定性を有する、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物(例えば、ナノエマルジョン)を提供する。すなわち、いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物に存在するボツリヌス毒素は、熱、アルカリ条件、酸性条件、分解酵素、宿主生物体抗体などの少なくとも1つの有害な条件から、少なくとも一部、保護される。代替としてまたは追加として、本発明のナノ粒子組成物に存在するボツリヌス毒素は、他の点では類似の、自由溶液におけるボツリヌス毒素の調製物より表面変性が少なくありうる。ほんの一つの特定の例を挙げれば、本発明によるマイクロ流動化ナノエマルジョン内の50ピコグラムのボツリヌス毒素は、表面変性を結果として生じうる特定の有害条件などから保護されうる。
【0065】
実際、本発明の一つの局面は、ボツリヌス毒素がナノ粒子組成物への組み入れにより安定化されうるという認識を含む。当業者は、本発明のこの局面によるナノ粒子組成物が任意の利用可能な手段により調製されうることを容易に理解すると思われる。
【0066】
本発明はさらに、ボツリヌス毒素が、現在投与されている自由溶液と比較した場合、皮膚を透過する能力が改善している、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物(例えば、ナノエマルジョン)を提供する。例えば、本発明によるマイクロ流動化ナノエマルジョン内に組み入れられたボツリヌス毒素は、そのような自由溶液と比較した場合、膜透過性が改善している。一つの態様において、投与と細胞内蓄積の間の最小時間は、結果として、効力の向上および副作用の減少を示す投与方法を生じる。
【0067】
さらに、本明細書に実証されているように、本発明は、ボツリヌス毒素が、皮膚構造の変化または崩壊を必要とすることなく皮膚を渡ることができる、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物を提供する。例えば、生物活性物質の経皮投与のための市販されているテクノロジーは、伝統的に、皮膚の少なくとも外層の化学的、物理的、電気的、または他の崩壊を必要とする。そのような崩壊は、刺激、望ましくない医学的副作用、および/または好ましくない審美的結果を引き起こしうる。本発明は、皮膚に投与された場合、有意もしくは顕著には、皮膚を刺激しない、および/または角質層を腐食しない、かつそれにもかかわらず、ボツリヌス毒素が皮膚を透過してその生物学的効果を生じるのを可能にする、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物を提供する。
【0068】
タンパク質が一般的にそうであるように、ボツリヌス毒素の生物活性(細胞内ペプチダーゼである)は、三次元立体構造における変化により影響を及ぼされうる。従って、ボツリヌス毒素A型は、熱、様々な化学物質、表面引張り、および表面乾燥により解毒されうる。さらに、公知の培養、発酵、および精製により得られた毒素複合体の、薬学的組成物製剤に用いられるずっと、ずっと低い毒素濃度への希釈は、結果として、適した安定化剤が存在しない限り、毒素の急速な解毒を生じる。毒素のミリグラム量から1ミリリットルあたりナノグラムを含む溶液への希釈は、そのような大きい希釈での特定の毒性の急速な損失のため、重大な困難を示す。毒素は、毒素含有薬学的組成物が製剤化されてから数ヶ月または数年後に用いられうるため、毒素の溶液調製物は、アルブミンなどの安定化剤と共に製剤化されなければならない。
【0069】
上記のように、本発明は、ボツリヌス毒素の安定化された調製物を提供する。本発明の製剤自身により与えられうる追加の安定性にもかかわらず、本発明のいくつかの態様において、追加の安定化剤の使用が企図される。例えば、いくつかの態様において、少なくとも1つの追加のタンパク質が、ボツリヌス毒素と共に用いられる。いくつかの態様において、この追加のタンパク質はアルブミンを含む。いくつかの態様において、この追加のタンパク質は、ボツリヌス毒素複合体に天然で見出されるタンパク質の1つまたは複数を含む。実際、本発明のいくつかの態様において、完全なボツリヌス毒素複合体が用いられる。いくつかのそのような態様において、アルブミンもまた利用される。従って、いくつかの態様において、本発明は、アルブミンを含むボツリヌス菌マイクロ流動化ナノエマルジョンを提供する。
【0070】
本発明のいくつかの態様において、利用されるボツリヌス毒素は、BOTOX(登録商標)である。BOTOX(登録商標)は、滅菌真空乾燥した形でパッケージされた、精製ボツリヌス毒素A型複合体、アルブミン、および塩化ナトリウムからなる。
【0071】
BOTOX(登録商標)に存在するボツリヌス毒素A型は、N-Zアミンおよび酵母抽出物を含む培地で増殖したクロストリジウム・ボツリヌムのHall株の培養物から作製される。ボツリヌス毒素A型複合体は、一連の酸沈殿により培養溶液から、活性高分子量毒素タンパク質および結合した赤血球凝集素タンパク質からなる結晶性複合体へと精製される。結晶性複合体は、塩類溶液およびアルブミンを含む溶液に再溶解され、真空乾燥の前に滅菌濾過(0.2ミクロン)される。BOTOX(登録商標)は、筋内注射の前に、滅菌した非保存塩類溶液で再構成されうる。BOTOX(登録商標)の各バイアルは、約100ユニット(U)のクロストリジウム・ボツリヌム毒素A型精製神経毒複合体、0.5ミリグラムのヒト血清アルブミン、および0.9ミリグラムの塩化ナトリウムを、保存剤無しの滅菌した真空乾燥の形で含む。
【0072】
現在、BOTOX(登録商標)は、通常、注射による投与のために0.9%塩化ナトリウムで再構成される。BOTOX(登録商標)は、泡立ちまたは類似した激しい撹拌により変性しうるため、希釈剤は、穏やかにバイアルへ注入される。自由溶液のように、BOTOX(登録商標)は、再構成後4時間以内に投与されることが推奨される。さらに、再構成と注射の間、再構成されたBOTOX(登録商標)は冷蔵庫に(すなわち、例えば、2〜8℃に)保存されることもさらに推奨される。再構成されたBOTOX(登録商標)は、無色透明で、粒子状物質を含まない。
【0073】
BOTOX(登録商標)は以下のとおり臨床設定において用いられていることが報告されている:
(1)頸部ジストニアを処置するための筋内注射(複数筋肉)あたり約75〜125ユニットのBOTOX(登録商標);
(2)眉間のしわ(額の深いしわ)を処置するための筋内注射あたり5〜10ユニットのBOTOX(登録商標)(5ユニットは鼻根筋へ筋内注射される、および10ユニットは各皺眉筋へ筋内注射される);
(3)恥骨直腸筋の括約筋内注射による便秘を処置するための約30〜80ユニットのBOTOX(登録商標);
(4)上まぶたの側面瞼板前部眼輪筋および下まぶたの側面瞼板前部眼輪筋に注射することにより眼瞼痙攣を処置するための筋内注射されるBOTOX(登録商標)の筋肉あたり約1〜5ユニット;
(5)斜視を処置するために、外眼筋は、約1〜5ユニットのBOTOX(登録商標)を筋内に注射されており、注射される量は、注射されるべき筋肉のサイズおよび望まれる筋麻痺の程度(すなわち、望まれるジオプター矯正の量)の両方に基づいて変化する;
(6)以下のとおり、5つの異なる上肢屈筋へのBOTOX(登録商標)の筋内注射による、卒中後の上肢痙直を処置するため:
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)浅指屈筋:7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)橈側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50U〜200U
5つの示された筋肉のそれぞれは、同じ処置セッションで注射されているので、患者は、各処置セッションでの筋内注射により上肢屈筋BOTOX(登録商標)の90Uから360Uまでを受ける;
(7)片頭痛を処置するために、25UのBOTOX(登録商標)の頭蓋周囲に注射された(眉間、前頭、および側頭筋へ対称的に注射された)注射は、25U注射後3ヶ月間に渡っての、片頭痛頻度、最大重症度、付随した嘔吐、および急性投薬使用の測度の減少により測定される、媒体と比較して片頭痛の予防的処置として有意な恩恵を示している。
【0074】
本発明は、BOTOX(登録商標)を含む本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物が、毒素の経皮送達のために皮膚へ塗布されるクリームへ組み入れられた場合、BOTOX(登録商標)のおよそ同じ量を含むボツリヌス毒素溶液の注射で歴史的に観察されたものと匹敵する生物学的結果(すなわち、しわの低減)を達成することを実証している(例えば、実施例4および5参照)。
【0075】
ボツリヌス毒素A型の肯定的な臨床応答は、他のボツリヌス毒素血清型への関心へ導いている。2つの市販されているボツリヌス毒素A型調製物(BOTOX(登録商標)およびDYSPORT(登録商標))ならびにボツリヌス毒素B型およびF型の調製物(両方ともWako Chemicals, Japanから入手された)の研究は、局所的筋脱力効力、安全性、および抗原性の可能性を測定するために行われている。ボツリヌス毒素調製物を、右腓腹筋の頭部へ注射し(0.5〜200.0ユニット/kg)、筋脱力を、マウス指外転スコアリングアッセイ(DAS)を用いて評価した。ED50は、用量応答曲線から計算された。
【0076】
追加のマウスに、LD50用量を測定するために筋内注射を与えた。治療指数は、LD50/ED50として計算された。マウスの別々の群は、BOTOX(登録商標)(5.0〜10.0ユニット/kg)またはボツリヌス毒素B型(50.0〜400.0ユニット/kg)の後肢注射を受け、筋脱力および水消費量の増加について試験され、後者は口内乾燥症の推定モデルであった。抗原性の可能性は、ウサギにおける毎月の筋内注射(ボツリヌス毒素B型について1.5もしくは6.5ng/kg、またはBOTOX(登録商標)について0.15ng/kg)により評価された。ピーク筋脱力および持続時間は、全血清型について用量依存性であった。
【0077】
DAS ED50値(ユニット/kg)は以下のとおりであった:BOTOX(登録商標):6.7、DYSPORT(登録商標):24.7、ボツリヌス毒素B型:27.0〜244.0、ボツリヌス毒素F型:4.3。BOTOX(登録商標)は、ボツリヌス毒素B型またはボツリヌス毒素F型より作用持続時間がより長かった。治療指数値は、以下のとおりであった:BOTOX(登録商標):10.5、DYSPORT(登録商標):6.3、ボツリヌス毒素B型:3.2。水消費量は、ボツリヌス毒素B型を注射されたマウスにおいてBOTOX(登録商標)より多かったが、ボツリヌス毒素B型は筋肉を弱める効果がより少なかった。注射から4ヶ月後、4匹(1.5ng/kgで処理された場合)のうちの2匹、および4匹(6.5ng/kgで処理された場合)のうちの4匹のウサギが、ボツリヌス毒素B型に対して抗体を発生した。別の研究において、9匹のBOTOX(登録商標)処理されたウサギのうち、ボツリヌス毒素A型に対する抗体を生じた個体は0であった。DAS結果は、ボツリヌス毒素A型の相対的ピーク効力がボツリヌス毒素F型と等しく、かつボツリヌス毒素F型がボツリヌス毒素B型より大きいことを示している。効果持続時間に関して、ボツリヌス毒素A型は、ボツリヌス毒素B型より長く、かつボツリヌス毒素B型効果持続時間はボツリヌス毒素F型より長かった。治療指数値により示されているように、2つの市販のボツリヌス毒素A型の調製物(BOTOX(登録商標)およびDYSPORT(登録商標))は異なる。ボツリヌス毒素B型の後肢注射後に観察された水消費行動の増加は、この血清型の臨床的に有意な量がマウス全身循環に入ったことを示す。結果はまた、ボツリヌス毒素A型に匹敵する効力を達成するために、調べられた他の血清型の用量を増加させる必要があることを示している。しかしながら、用量の増加は安全性を損ないうる。さらに、ウサギにおいて、B型は、BOTOX(登録商標)より抗原性が高かったが、おそらく、ボツリヌス毒素B型の有効量に達するために注射されたより高いタンパク質負荷のためと思われる。Eur J Neurol 6(Suppl 4):S3-S10 (1999)。
【0078】
本明細書に示されているように、本発明は任意の血清型のボツリヌス毒素の使用を企図する。当業者は、特定の使用のための特定の血清型の適切性を評価することが容易にでき、かつ本明細書の教示に従って、そのようなボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物を調製することができると思われる。従って、本発明は、ボツリヌス毒素タンパク質のみを含む組成物、およびボツリヌス毒素タンパク質または他のタンパク質を含む組成物を含む、任意の血清型のボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物を提供する。いくつかの態様において、そのような他のタンパク質は、アルブミンを含む、またはアルブミンからなる;いくつかの態様において、ボツリヌス毒素複合体が用いられる。
【0079】
本発明に従って利用されうる市販されているボツリヌス毒素の供給源には、限定されるわけではないが、BOTOX(登録商標)、DYSPORT(登録商標)(ヒト血清アルブミンおよびラクトースを含むクロストリジウム・ボツリヌムA型毒素赤血球凝集素複合体;Ispen Limted, Berkshire U.K.)、および/またはMYOBLOC(登録商標)(ボツリヌス毒素B型、ヒト血清アルブミン、コハク酸ナトリウム、および塩化ナトリウムからなる注射用溶液、pH5.6、Elan Pharmaceuticals, Dublin, Ireland)などが挙げられる。
【0080】
ナノ粒子組成物
本明細書に記載されているように、本発明は、とりわけ、ボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物を含む、ナノ粒子組成物を提供する。
【0081】
一般的に、ナノ粒子組成物は、少なくとも1つのナノ粒子を含む任意の組成物である。ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、ボツリヌス毒素を含むナノ粒子組成物である。ボツリヌス毒素は、1つもしくは複数のナノ粒子によりカプセル化されうる、また完全に囲まれうる;ナノ粒子界面と会合しうる;および/または1つもしくは複数のナノ粒子の外面に吸着されうる。ボツリヌス毒素は、ナノ粒子および/またはナノ粒子組成物に共有結合していてもよいし、共有結合していなくてもよい;ボツリヌス毒素は、吸着力によりナノ粒子および/またはナノ粒子組成物に付着していてもよいし、していなくてもよい。
【0082】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、ナノ粒子の均一な収集物を有する。例えば、いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物におけるナノ粒子の最小直径と最大直径の差は、約600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50nm、またはそれ未満を超えない。
【0083】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、130、120、115、110、100、90、80nm、またはそれ未満より小さい直径を有する。
【0084】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約10ナノメートル〜約600ナノメートルの範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子は、約10〜300、10〜200、10〜150、10〜130、10〜120、10〜115、10〜110、10〜100、または10〜90nmの範囲内の直径を有する。
【0085】
いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)は、約300、250、200、150、130、120、または115、110、100、または90nm未満である平均粒子サイズを有する。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約10〜300、50〜250、60〜200、65〜150、70〜130nmの範囲内である。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約80〜110nmである。いくつかの態様において、平均粒子サイズは、約90〜100nmである。
【0086】
いくつかの態様において、本発明の組成物内の粒子(例えば、ボツリヌス毒素含有粒子)の大部分は、特定されたサイズ未満、または特定された範囲内の直径を有する。いくつかの態様において、大部分は、組成物中の粒子の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上より多い。
【0087】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、120nmを超える直径を有する粒子を実質的に含まない。具体的には、いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物におけるナノ粒子の50%未満が、120nmを超える直径を有する。いくつかの態様において、25%未満の粒子が120nmを超える直径を有する。20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、またはそれ未満より少ない粒子が120nmを超える直径を有する。さらに、いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物におけるナノ粒子は、10〜120nmの範囲内の直径を有する。
【0088】
ゼータ電位は、剪断面での電位の測定値である。剪断面は、固体表面(例えば、本発明のナノ粒子の表面)に結合し、かつ弾性的挙動を示す液体の薄層を正常な粘性挙動を示す残りの液体(例えば、液体分散媒)から分離する仮想表面である。いくつかの態様において、本発明のナノ粒子は、-50mV〜+50mVの範囲のゼータ電位を有する。いくつかの態様において、本発明のナノ粒子は、-25mV〜+25mVの範囲のゼータ電位を有する。いくつかの態様において、本発明のナノ粒子は、-10mV〜+10mVの範囲のゼータ電位を有する。
【0089】
本発明のナノ粒子組成物は、典型的には、エマルジョンまたは分散液である。いくつかの態様において、組成物は、「水中油」分散液(すなわち、油性粒子が水性分散媒内に分散している分散液)である;いくつかの態様において、組成物は、「油中水」分散液(すなわち、水性粒子が油性分散媒内に分散している分散液)である。
【0090】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、毒性溶媒を必要としない。対照的に、組成物においてナノ粒子の形成を含むための多くの通常のストラテジーは毒性(典型的には、有機)溶媒を利用する。いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、重合体を必要としない。対照的に、ナノ粒子構造を含む組成物を調製するための多くの通常のストラテジーは、重合体を必要とする。
【0091】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、他のナノ粒子組成物より良い組織吸収および/または良い生体適合性を有する。例えば、いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、均一でない、1つもしくは複数の毒性(例えば、有機)溶媒を利用する、および/または1つもしくは複数の重合体を利用するナノ粒子組成物より、良い吸収および/または良い生体適合性を有する。
【0092】
いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物(例えば、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物)は安定である。本発明のいくつかの態様において、安定なナノ粒子組成物は、平均粒子サイズ、最大粒子サイズ、粒子サイズの範囲、および/または粒子サイズの分布(すなわち、指定されたサイズより上の、および/または指定されたサイズ範囲外の粒子のパーセンテージ)はある期間、維持されるものである。いくつかの態様において、その期間は、少なくとも約1時間である;いくつかの態様において、その期間は、約5時間、10時間、1日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上である。いくつかの態様において、その期間は、約1日〜24ヶ月、2週間〜12ヶ月、2ヶ月〜5ヶ月などの範囲内である。例えば、ナノエマルジョン粒子の集団が、長期間保存、温度変化、および/またはpH変化にかけられ、かつ集団におけるナノ粒子の大部分が規定された範囲内(すなわち、例えば、約10〜120nm)の直径を維持する場合には、そのナノ粒子組成物は安定である。いくつかのそのような集団について、大部分は、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上より多い。本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子組成物がボツリヌス毒素および/または少なくとも1つの他の生物活性物質を含む場合、生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)の濃度が、指定された一連の条件下で指定された期間に渡って組成物において維持される場合には、ナノ粒子組成物は安定とみなされる。
【0093】
本明細書に記載されているように、本発明のナノ粒子組成物は、様々な医療、化粧品、および栄養補助食品の適用に有用である。そのような組成物は、限定されるわけではないが、注射、経口送達、経皮送達などを含む任意の利用可能な経路により被験体に送達されうる。特定の態様において、組成物は、注射により送達される。特定の態様において、組成物は経皮的に送達される。
【0094】
本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、記載されている他のボツリヌス毒素含有組成物から容易に区別可能であることは留意されるべきである。例えば、Donovanは、ボツリヌス毒素が経皮送達のために脂質小胞へ組み入れられている調製物を記載している(米国特許出願公開第2004/0009180号)。そのような小胞はまた、ボツリヌス毒素の皮膚を通しての吸収を促進するために、アルコールなどの促進剤の組み入れを必要とする。Donovanもまた、脂質および膜軟化剤を含む変形可能な担体であるトランスフェルソーム(trasfersome)へ組み入れられる神経毒を記載する(Hofer et al., 2000, World J. Surg., 24:1187;および米国特許第6,165,500号)。Donovanは、具体的には、ボツリヌス毒素を組み入れた、ホスファチジルコリン+コール酸ナトリウムリポソームの調製を記載する。
【0095】
Suvanprakornらもまた、別々のマクロビーズにおけるリポソームカプセル化物質の懸濁を記載している;カプセル化に修正できると言われている、文字通り数百個の化合物のうちの1個が「BOTOX(登録商標)」である(米国特許出願公開第2004/0224012号)。これらの多重膜小胞リポソームを作製する企図された方法に含まれるのは、凍結乾燥/再水和および有機溶液脱水/水性再水和である。リポソームを作製するこれらの通常の方法は、微小粒子サイズの小胞を生じることが予想される。
【0096】
ナノ粒子組成物を作製する方法
一般的に、本発明のナノ粒子組成物(例えば、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物)は、任意の利用可能な方法により調製されうる。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、化学的手段により調製される。しかしながら、化学的手段は、しばしば、毒性(典型的には、有機)溶媒を意味する;いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、そのような溶媒を利用することなく、本発明に従って調製される。
【0097】
本発明の特定の態様において、ナノ粒子組成物は、プレミックスを調製し、プレミックスを高剪断力に供することにより調製される。本明細書に用いられる場合、「剪断力」という用語は、物質の表面に対して直角をなす力に対立するものとして、物質の表面と平行である力を指す。
【0098】
当技術分野において公知の任意の方法が高剪断力を生み出すために用いられうる。いくつかの態様において、キャビテーションは高剪断力を生み出すために用いられる。本発明により、機械的エネルギー(すなわち、高剪断力)の使用は、高価および/または毒性の化学溶媒を用いるいかなる必要性にも取って代わりうる、またはいかなる必要性をも最小限にしうる;ナノ粒子が集合する速度を増加させうる、特定の成分混合物において生じるナノ粒子の収率を増加させうる、および/またはナノエマルジョン組成物を調製する総費用を大幅に低下させうる。さらに、生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)などの作用物質が本発明のナノ粒子組成物へ組み入れられている態様において、高剪断力は、ナノ粒子を形成する伝統的な方法と比較してナノ粒子の荷重能力を増加させることができる。伝統的な方法において、ナノ粒子の表面内または上の作用物質の荷重は、典型的には、ナノ粒子の内部および/または表面への作用物質の拡散に頼る。本発明により、高剪断力の使用は、より小さい粒子(例えば、平均して)の製造および/またはナノ粒子組成物におけるより狭い粒子サイズの分布を可能にできる。
【0099】
いくつかの態様において、高剪断力は、高圧、例えば約15,000psi、への曝露により、例えば、高圧における連続的乱流により、達成される。いくつかの態様において、そのような高圧は、約18,000〜約26,000psiの範囲内である;いくつかの態様において、それは、約20,000〜25,000psiの範囲内である。
【0100】
いくつかの態様において、高剪断力または高圧は、キャビテーションまたは高圧ホモジナイゼーションにより投与されうる。
【0101】
いくつかの態様において、高剪断力は、Microfluidizer(登録商標)プロセッサ(Microfluidics Corporation/MFIC Corporation)または他の同様の装置などの機器への通過により与えられうる。Microfluidizer(登録商標)プロセッサは、ナノスケール範囲へのサイズ低減のために、高圧、および生成物をマイクロチャネルを通して高速へ加速することによる結果として生じる高剪断速度を提供する。流体は2つに分けられ、約75ミクロン程度の典型的な寸法をもつマイクロチャネルを高速で(50〜300m/sの範囲で)押し通される。流体がマイクロチャネルから出る時、それは、反対側のマイクロチャネルからのジェットと衝突するジェットを形成する。チャネルにおいて、流体は、通常のテクノロジーのものより数桁高い高剪断(最高107l/s)を受ける。ジェット衝突は、結果として、サブミクロンレベルでの混合を生じる。それゆえに、高剪断および衝撃が、Microfluidizer(登録商標)テクノロジーにおける、粒子サイズ低減および多相流体の混合の原因である。
【0102】
より一般的には、マイクロフルイダイザーは、単動増圧ポンプを動かす任意の装置でありうる。増圧ポンプは、油圧を選択されたレベルまで増幅し、それが、次に、その圧力を生成物の流れへ与える。ポンプがその圧力ストロークを移動する時、それは、相互作用チャンバーを通して生成物を一定の圧力で操縦する。相互作用チャンバー内には、特別に設計された固定形状マイクロチャネルがあり、それを通って、生成物の流れは高速へ加速し、高剪断力および衝撃力を生み出し、高速生成物の流れがそれ自身および耐摩耗表面に衝突する時、均一なナノ粒子組成物(例えば、ナノエマルジョン)を生じうる。
【0103】
増圧ポンプがその圧力ストロークを完了した時、それは方向を逆転させ、新しい容量の生成物を引き込む。吸い込みストロークの終わりに、それは再び、方向を逆転させ、生成物を一定圧力で操縦し、それによりその過程を繰り返す。
【0104】
相互作用チャンバーから出る時、生成物は、生成物を所望の温度に制御する搭載熱交換器の中を流れる。この時点において、生成物は、さらなる処理のためにシステムを再循環しうる、または過程における次の段階へと外部へ向けられうる(米国特許第4,533,254号;および第4.908,154号)。
【0105】
本発明のいくつかの態様において、試料は、約10分未満の時間での高剪断力への曝露を通して「マイクロ流動化」される。いくつかの態様において、時間は、約9、8、7、6、5、4、3、2、または1分未満である。いくつかの態様において、時間は、約1〜2分間またはそれ未満の範囲内である;いくつかの態様において、時間は、約30秒間である。
【0106】
本発明のいくつかの態様において、試料は、高剪断力への1回の曝露を通して「マイクロ流動化される」;そのような態様は、「単一パス」マイクロ流動化と本明細書で呼ばれる。
【0107】
本発明は、プレミックスを高剪断力に供することがナノ粒子組成物を生じうる、および特に、均一なナノ粒子組成物を生じうるという認識を含む。
【0108】
一般的に、本発明のナノ粒子組成物が高剪断力の適用を通して調製されるプレミックスは、少なくとも2つの不混和性物質を含むことが予想され、それらのうちの1つが分散媒(すなわち、粒子(例えば、ナノ粒子)が最終的なナノ粒子組成物に分散している液体媒体)を構成する。「水中油」分散液は、油性粒子が水性分散媒内に分散しているものである。「油中水」分散液は、水性粒子が油性分散媒内に分散しているものである。当業者は、分散液が任意の2つの不混和性媒体から形成されることができ、水性および油性媒体の組み合わせに厳密に限定されるのではないことを認識していると思われる。それゆえに、「分散媒」という用語は、「水性」および「油性」カテゴリーを指すことが一般的であるにもかかわらず、任意の分散媒に広くあてはまる。
【0109】
従って、本発明のいくつかの態様において、プレミックスは、水性分散媒、および分散媒においてナノ粒子の形で分散するようになる油性媒体を含む;本発明のいくつかの態様において、プレミックスは、油性分散媒、および油性分散媒においてナノ粒子の形をとって分散するようになる水性媒体を含む。
【0110】
当業者は、分散媒として、または本発明に従って分散しうる媒体として、用いられうる適切な水性媒体を良く知っていると思われる。代表的なそのような媒体には、例えば、水、塩類溶液(リン酸緩衝生理食塩水を含む)、注射用蒸留水、短鎖アルコール、5%デキストロース、リンガー液(乳酸加リンガー注射液、乳酸加リンガー液プラス5%デキストロース注射液、アシル化リンガー注射液)、Normosol-M、Isolyte-Eなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
当業者はまた、分散媒として、または本発明に従って分散しうる媒体として、用いられうる適切な油性媒体を良く知っていると思われる。代表的なそのような媒体には、例えば、飽和および不飽和の、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種、ルリヂサ、ジュニパータール(cade)、カモミール、カノーラ、キャラウェー、カルナバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ゴード(gourd)、ブドウの種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ホホバ、ククイノキの堅果(kukui nut)、ラバンジン(lavandin)、ラベンダー、レモン、リトシー・キュービバ、マカデミアナッツ、アオイ(mallow)、マンゴー種、メドウフォーム(meadowfoam)種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジ・ラッフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー(savoury)、シーバックソーン(sea buckthorn)、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油;ステアリン酸ブチル;カプリル酸トリグリセリド;カプリン酸トリグリセリド;シクロメチコン;セバシン酸ジエチル;ジメチコン360;ミリスチン酸イソプロピル;ミネラルオイル;オクチルドデカノール;オレイルアルコール;シリコンオイル;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0112】
2つの不混和性媒体に加えて、本発明によるプレミックスには、例えば、1つもしくは複数の生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)および/または1つもしくは複数の界面活性剤もしくは乳化剤を含みうる。適切なそのような界面活性剤または乳化剤には、限定されるわけではないが、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span 85);グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Sapn 20);ポリソルベート20(Tween-20);ポリソルベート60(Tween-60);ポリソルベート65(Tween-65);ポリソルベート80(Tween-80);ポリソルベート85(Tween-85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン:ポロキソマー;ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル-アミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高界面活性剤特性を有する合成および/または天然界面活性剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらの界面活性剤は、天然源から抽出および精製されうる、または実験室で合成的に調製されうる。好ましい態様において、界面活性剤は市販されている。
【0113】
本発明のいくつかの態様において、最終ナノ粒子組成物に存在する成分のすべては、プレミックスに存在し、高剪断力にかけられて、ナノ粒子組成物を生じる。本発明のいくつかの態様において、最終ナノ粒子組成物に存在する成分の1つまたは複数は、プレミックスから欠けている、または最終ナノ粒子組成物においてより少量でプレミックスに存在する。すなわち、本発明のいくつかの態様において、1つまたは複数の物質は、プレミックスが高剪断力にかけられた後に、ナノ粒子組成物に加えられる。
【0114】
本発明の特定の態様において、プレミックスは、高剪断力の適用前に溶液として調製される。特に、少なくとも1つの生物活性物質(例えば、ボツリヌス毒素)を含むナノ粒子組成物について、生物活性物質が、高剪断力が適用される前にプレミックスに溶解されることがしばしば、望ましい。従って、多くの態様において、生物活性物質は、媒体の少なくとも1つに(またはプレミックスに利用される媒体の組み合わせに)可溶性である。本発明のいくつかの態様において、そのような溶解は、加熱を必要とする;他の態様において、それは必要としない。
【0115】
本発明のいくつかの態様において、プレミックス成分は、高剪断力の適用前に、集合して粒子を構築しうる。そのような粒子の少なくとも一部は、マイクロ粒子またはナノ粒子までもありうる。いくつかの態様において、本発明のナノ粒子組成物は、プレミックスから調製され、プレミックスは、懸濁液またはマイクロエマルジョンを含む群から選択される。しかしながら、いくつかの態様において、粒子構造は、高剪断力の適用前にプレミックスにおいて生じていない。
【0116】
本発明の特定の態様において、プレミックス成分の相対量は、所望の特性を有するナノ粒子を生じるように選択または調整される。いくつかの態様において、プレミックスは、0.5〜10の範囲の比率で油および界面活性剤を含む。いくつかの態様において、油対界面活性剤の比は、約0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1である。いくつかの態様において、界面活性剤対油の比は、約0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1である。いくつかの態様において、プレミックスは、0.5〜2の範囲の比率で油および界面活性剤を含む。いくつかの態様において、油対界面活性剤の比は、約0.5:1、1:1、または2:1である。いくつかの態様において、界面活性剤対油の比は、約0.5:1、1:1、または2:1である。特定の態様において、油対界面活性剤の比は、約1:1である。
【0117】
いくつかの態様において、プレミックスにおける油のパーセントは、0%〜30%の範囲である。いくつかの態様において、プレミックスにおける油のパーセントは、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%である。いくつかの態様において、油のパーセントは約8%である。いくつかの態様において、油のパーセントは約5%である。
【0118】
いくつかの態様において、プレミックスにおける界面活性剤のパーセントは、0%〜30%の範囲である。いくつかの態様において、プレミックスにおける界面活性剤のパーセントは、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%である。いくつかの態様において、界面活性剤のパーセントは約8%である。いくつかの態様において、界面活性剤のパーセントは約5%である。
【0119】
いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、1つより多い油を含まない。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、2つまたはそれ以上の油を含みうる。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、1つより多い界面活性剤を含まない。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、2つまたはそれ以上の界面活性剤を含みうる。
【0120】
いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、本質的に、水、油、界面活性剤、およびボツリヌス毒素からなる。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、本質的に、水、油、界面活性剤、少なくとも1つのボツリヌス毒素、ならびにナノ粒子組成物を生成および/または保存するために用いられる少なくとも1つの物質(例えば、タンパク質、塩など)からなる。
【0121】
いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、水、油、界面活性剤、およびボツリヌス毒素からなる。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物は、本質的に、水、油、界面活性剤、少なくとも1つのボツリヌス毒素、ならびにナノ粒子組成物を生成および/または保存するために用いられる少なくとも1つの物質(例えば、タンパク質、塩など)からなる。
【0122】
ナノ粒子組成物を投与する方法
本発明は、例えば、化粧品、栄養補助食品、および医療の適用を含む様々な適用のためにナノ粒子組成物(例えば、ボツリヌスナノ粒子組成物)を送達する方法を提供する。そのようなナノ粒子組成物は、1つまたは複数の生物活性物質を含みうる。多くの態様において、ナノ粒子組成物は、ボツリヌス毒素を含む。
【0123】
いくつかの態様において、本発明は、限定されるわけではないが、経皮、筋内、または皮下の投与経路を含む、本発明のナノ粒子組成物を送達する方法を企図する。これらの投与経路は、局在性効果を生じることを意図される製剤(例えば、特定のボツリヌス毒素ナノ粒子組成物)について特に好まれる。しかしながら、製剤の成分のその後の組織吸収は必ずしも予想できるとは限らない。
【0124】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は、例えば、細胞への侵入を促進するために、例えば、脂質に基づいた担体を用いて、カプセル化されうる。しかしながら、脂質に基づいた担体効力は、以下に依存しうる:i)脂質組成(すなわち、例えば、分子サイズおよび電荷);ii)組成物に含まれる任意の生物活性物質または他の実体の構造(例えば、分子サイズおよびpHイオン化);およびiii)被験体の健康全般。本発明は、いずれかの脂質に基づいた担体を含み、それにより薬用化粧品(例えば、ボツリヌス毒素)の生物学的利用能を改善する、均一なマイクロ流動化ナノエマルジョンに関連した組成物および方法を企図する。
【0125】
本発明は、具体的には、様々な障害、疾患、または状態の処置のための、ボツリヌス毒素を投与する、および特に、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物を投与する方法を提供する。ボツリヌス毒素の末梢注射(すなわち、筋内または皮下)または局所適用される経皮投与の臨床効果は、通常、1週間以内に見られる。ボツリヌス毒素A型の1回の筋内注射からの症状軽減(すなわち、例えば、弛緩性筋肉麻痺)の典型的持続期間は、最高4ヶ月間またはそれ以上、存在しうる;本発明によるボツリヌス毒素の経皮投与後の臨床効果の持続期間は、最高4ヶ月間またはそれ以上、存在しうるが、個々の被験体の特徴に、および/または本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物の特定の製剤に依存する。
【0126】
ボツリヌス毒素は、現在、注射により、および特に、通常凍結乾燥された調製物から再構成された、液体塩類溶液の注射により、ほとんど独占的に投与されていることは、当業者により認識されていると思われる。本明細書ですでに考察されているように、そのような調製物との関連におけるボツリヌス毒素は、結果としてタンパク質の損失および/またはタンパク質活性の損失を生じる不安定に特になりやすい。そのような不安定は、タンパク質変性、分解、二量体化、および/または重合の結果と思われる。ボツリヌス菌安定化効果を生じることが知られた最も一般的な製剤は、ヒトアルブミンである。ヒト由来アルブミンの免疫学的重要性の可能性は、最近、考察されている(米国特許出願公開第2005/0238667号)。この刊行物は、組換えアルブミンの糖類ベースの安定剤、および抗酸化アミノ酸が、結果として、天然アルブミン調製物と比較して改善された効力を生じるボツリヌス毒素を生じうることを提案している。
【0127】
またすでに考察されているように、BOTOX(登録商標)(滅菌真空乾燥された形でパッケージされた、精製クロストリジウム・ボツリヌム毒素A型複合体、ヒト血清アルブミン、および塩化ナトリウム)は、現在、保存剤を含まない滅菌塩類溶液(0.9%塩化ナトリウム、注射グレード)を用いて注射用に再構成される。特に、標準注射プロトコールは、適切なサイズ注射器に正しい量の希釈液を引き上げる段階を含む。BOTOX(登録商標)は、泡立ちまたは類似した激しい撹拌により変性するため、希釈剤は、指定量の凍結乾燥されたBOTOX(登録商標)を含むバイアルへ穏やかに注入される。滅菌性を理由として、標準注射プロトコールは、BOTOX(登録商標)水溶液を再構成後4時間以内に投与する段階を含む。
【0128】
入手できるボツリヌス毒素調製物に関する問題(安定性問題、滅菌性問題などを含む)は十分知られているが、改善された製剤はほとんど開発されていない。さらに、注射は、一般的に侵襲的技術の不快、患者の苦痛などにもかかわらず、ボツリヌス毒素を送達するための標準アプローチのままである。
【0129】
本発明は、改善されたボツリヌス毒素組成物(例えば、ボツリヌス毒素ナノ粒子組成物)を提供し、さらに、ボツリヌス毒素を送達する改善された方法を提供する。特に、本発明は、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物を送達する(任意の利用可能な経路により)方法を提供し、さらに、注射以外の経路によりボツリヌス毒素を送達する方法を提供する。
【0130】
一般的に、本発明のボツリヌス菌ナノエマルジョン組成物は、非限定的に、非経口、経口、経皮、頬に、眼に、膣に、直腸に、などを含む任意の利用可能な手段により投与されうる。しかしながら、特定の態様において、組成物は、注射により投与される;いくつかの態様において、皮下注射により、いくつかの態様において、筋内注射により、いくつかの態様において、静脈注射により、など。特定の態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は経皮的に投与される。
【0131】
特定の態様において、本発明は、ボツリヌス毒素を経皮的に投与する方法を提供する。ヒト皮膚は、真皮および表皮を含む。表皮は、数層の組織、すなわち、角質層、透明層、顆粒層、有棘層、および基底層(外皮から内側への順番に識別された)、を有する。
【0132】
角質層は、一般的に薬物の、およびおそらく、特にボツリヌス毒素の、経皮送達における最も有意な障害物を呈する。角質層は、典型的には、厚さ約10〜15μmであり、それは、数層に並べられた扁平な角化細胞(角質細胞)からなる。角質細胞間の細胞間隙は、脂質構造で満たされ、物質の皮膚を通しての透過に重要な役割を果たしている可能性がある(Bauerova et al., 2001, European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 26:85)。
【0133】
角質層より下の表皮の残りは、厚さ約150μmである。真皮は、厚さ約1〜2mmであり、表皮より下に位置している。真皮は、様々な毛細血管および神経突起により神経支配されている。
【0134】
薬剤の経皮投与は、一般的に、注射および経口送達に伴う望ましくない結果なしの薬物の投与の代替経路を提供しようとする試みにおける研究対象である。例えば、針は、しばしば、限局痛を引き起こし、注射を受けた患者を血液によって感染する病気に曝す可能性がある。経口投与は、しばしば、患者の胃の極酸性環境による薬物の不十分な生物学的利用能を被る。
【0135】
非侵襲的投与を提供することによりこれらの欠点を克服しようとする試みにおいて、特定の薬剤について経皮投与技術を開発する努力がなされてきた。患者の皮膚への損傷を低減させることは、経皮投与に関して一般的に望ましい。従って、薬物の経皮投与は、注射に伴う痛みを低減または排除しうる、血液汚染の可能性を低減させうる、およびいったん薬物が全身的に取り込まれたならば、薬物の生物学的利用能を向上させうる。
【0136】
伝統的に、薬物の経皮投与における試みは、角質層の透過性を増加させることに集中していた。いくつかの試みは、分子の皮膚を通しての透過性を増加させる化学的促進剤を用いることを含んでいる。いくつかの試みは、角質層の部分を迂回または除去するために機械的装置を用いることを含んでいる。加えて、試みは、薬剤の皮膚を通しての透過を促進するために超音波またはイオン導入法の使用を含んでいる。たいていの場合、目標は、典型的には、作用物質が真皮における毛細血管床に移動し、そこで作用物質が被験体へ全身性に取り込まれ、治療効果を達成するように、皮膚を通過する薬学的作用物質、典型的には小分子、へ向かっている。
【0137】
小分子が経皮投与技術の主要な焦点であったが、ポリペプチドおよびタンパク質複合体などの巨大分子もまた経皮投与を受け入れられると思われることに留意することは重要である。約48kDであるエリスロポエチンもまた、超音波の助けを借りて経皮投与することに成功している(Mitragotri et al., 1995, Science, 269:850;および米国特許第5,814,599号および第6,002,961号)。
【0138】
本発明は、とりわけ、研磨剤または他の破壊剤(化学的、機械的、電気的、磁気的などにかかわらず)の使用を必要としないボツリヌス毒素を経皮的に投与する方法を提供する。それどころか、本発明者らは、驚くべきことに、本発明のナノ粒子組成物へ組み入れられたボツリヌス毒素が、角質層を透過処理する、または崩壊させるためのさらなる段階なしに、効果的に経皮送達されることを見出している。そのような作用物質または段階の、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物との使用は、必ずしも本発明の全態様において排除されるわけではないが、必要とはされない。
【0139】
本発明は、それゆえに、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物の局所適用を通してボツリヌス毒素を投与する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、皮膚へ直接、かつ表皮層を通しての吸収のために、適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物は、化学的もしくは機械的皮膚透過促進剤または表皮剥脱を引き起こす他の作用物質の使用なしに、角質層、皮層小孔、および/または皮腺を含む皮膚の最上層を透過することができる。
【0140】
局所投与のための本発明の組成物は、皮膚軟化剤、栄養ローション型エマルジョン、クレンジングローション、クレンジングクリーム、乳液、皮膚軟化ローション、マッサージクリーム、皮膚軟化クリーム、化粧下地、口紅、美顔パックもしくは美顔ジェル、シャンプー、リンス、ボディクレンザー、ヘアトニック、もしくは石鹸などの洗浄製剤、またはローション、軟膏、ジェル、クリーム、パッチ、もしくはスプレーなどの皮膚科学的組成物などの化粧品製剤を有しうることは、当業者により認識されていると思われる。
【0141】
局所投与のための本発明の組成物は、約10-3U/kgと10U/kgの間のボツリヌス毒素量が患者の皮膚を通過するように製剤化および/または投与されうる。いくつかの態様において、組成物は、約10-2U/kg〜約1U/kgが経皮的に患者の皮膚を通過するように製剤化および/または投与される。いくつかの態様において、組成物は、約10-1U/kg〜約1U/kgが患者の皮膚を通過するように製剤化および/または投与される。いくつかの態様において、組成物は、約0.1ユニット〜約5ユニットが患者の皮膚を通って皮下標的へ行くように製剤化および/または投与される。
【0142】
当業者は、本明細書におけるユニットは、ボツリヌス毒素の商業的製造会社により定義されるユニットと生物学的に等価または生物活性的に等価であるユニットに関することを認識していると思われる。
【0143】
本発明により投与されるボツリヌス毒素の治療効果は、注射された溶液の効果を持続するのと同じくらい長く持続しうる。そのような注射された溶液の効果は、最高約4ヶ月間、持続できる。さらに、ゆっくり放出されるようにボツリヌス毒素を保持することができる合成ポリマー担体の使用は、最高約5年間、効果を延長しうる(米国特許第6,312,708号)。
【0144】
一つの態様において、本発明は、限定されるわけではないが、全身毒性またはボツリヌス中毒症を含む可能性のある合併症を避けるボツリヌス毒素の局所製剤を提供する。一つの態様において、ボツリヌス毒素(A型、B型、C型、D型、E型、F型、またはG型を含む)の用量は、有害な副作用のリスクを最小限にとどめて、低くも約1ユニットから高くも約20,000ユニットまでの範囲でありうる。特定の用量は、処置されることになっている状態および利用されることになっている治療規制に依存して変化しうる。例えば、皮下の活動亢進性筋肉の処置は、ボツリヌス毒素の高い経皮用量(例えば、1000ユニット〜20,000ユニット)を必要としうる。比較すれば、神経性炎症または活動亢進性汗腺の処置は、ボツリヌス毒素の相対的に少量の経皮用量(例えば、約1ユニット〜約1,000ユニット)を必要としうる。
【0145】
本発明の一つの態様は、ヒト患者への経皮送達のための安定化ボツリヌス毒素を含む薬学的組成物を企図する。ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素A型、B型、C1型、D型、E型、F型、およびG型、単離および/または精製された(すなわち、約150kD)ボツリヌス毒素、加えて、天然の、または組換え技術で作製されたボツリヌス毒素からなる群より選択されうる。組成物は、約1ユニット〜約20,000ユニットのボツリヌス毒素を含みうる、および組成物は、1ヶ月間と5年間の間、持続する治療効果を達成するのに十分なボツリヌス毒素の量を含みうる。
【0146】
いくつかの態様において、本発明は、ボツリヌス毒素が、有意な量で血管を透過することなく、被験体の皮膚を透過することを可能にするボツリヌス毒素の(例えば、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物の)局所製剤を提供する。例えば、本発明のいくつかの態様において、薬学的組成物に存在するボツリヌス毒素の約25%未満、または約5%未満までも、本発明の局所および/または経皮調製物の適用により、血管へ透過する。
【0147】
当業者は、ボツリヌス毒素の経皮投与を達成する本発明の組成物が、例えば、パッチなどの道具へ組み入れられうることを認識していると思われる。
【0148】
様々な経皮パッチ構造は当技術分野において公知である;当業者は、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物が、様々なそのような構造のいずれかへ容易に組み入れられうることを認識していると思われる。いくつかの態様において、経皮パッチはさらに、皮膚にあてがわれるパッチの片側から伸びる複数の針を含みうるが、針は、パッチから伸びて皮膚の角質層まで突出する。いくつかの態様において、針は血管を破裂させない。
【0149】
本発明のいくつかの態様において、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス菌ナノ粒子組成物)は、パッチへ加えられる圧力が、ボツリヌス毒素がパッチから出て(任意で針を通って)角質層へ向けさせるように、パッチ内の貯留槽において提供されうる。
【0150】
本発明のいくつかの態様において、経皮パッチは接着剤を含む。接着性パッチのいくつかの例は周知である(例えば、米国特許意匠第296,006号;第6,010,715号;第5,591,767号;第5,008,110号;第5,683,712号;第5,948,433号;および第5,965,154号参照)。接着性パッチは、一般的に、人の皮膚にあてがわれる接着剤層、薬剤を保持するための貯留槽または貯蔵所、および貯留槽からの薬剤の漏出を防ぐ外面を有することを特徴とする。パッチの外面は典型的には非接着性である。
【0151】
本発明に従って、神経毒は、神経毒が長期間、安定したままであるようにパッチへ組み入れられる。例えば、神経毒は、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物に存在しうる。代替としてまたは追加として、神経毒は、神経毒を安定化させ、かつ神経毒がマトリックスおよびパッチから拡散するのを可能にするポリマーマトリックスへ組み入れられうる。神経毒はまた、いったんパッチが皮膚にあてがわれたならば、神経毒が皮膚を通って拡散しうるように、パッチの接着剤層へ組み入れられうる。一つの態様において、接着剤層は熱活性化されうるが、約37℃の温度が接着剤を、神経毒が皮膚を通って拡散するようにゆっくり液化させる。接着剤は、37℃未満で保存される場合、粘着性のままでありうるが、いったん皮膚にあてがわれたならば、接着剤は液化するにつれてその粘着性を失う。毒素の投与は、いったんパッチがもはや皮膚に接着しなくなったならば、完了である。
【0152】
当業者は、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物が投与されうる装置の一例にすぎないことを認識していると思われる。ほんの数例の他の例を挙げると、指の望ましくない麻痺へ導きうる最初の組成物の人の指への接触無しに、組成物が塗布されるのを可能にする装置が用いられうる。適した装置には、スパチュラ、スワブ、針無しの注射器、および接着性パッチが挙げられる。スパチュラまたはスワブなどの使用は、その装置が組成物を含む容器へ挿入されることを必要としうる。注射器の使用は、注射器を組成物で満たすことにより達成されうる。その後、組成物は、スパチュラもしくはスワブにより局所的に広げられうる、または注射器から人の皮膚上へ噴出されうる。
【0153】
本発明の多くの態様において、ボツリヌス毒素の意図された送達領域のみへの送達に限定することが望ましくありうる。いくつかの態様において、そのような限定された送達は、組成物を皮膚の非標的部位領域に塗布することなく、組成物の皮膚上標的部位への塗布を可能にする塗布装置における本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物を利用することにより達成されうる。明らかに、経皮パッチはこの目的のために利用されうる。代替としてまたは追加として、ボツリヌス毒素は選択された領域のみに局所的に塗布されることになっている場合には、他の領域は、覆われうる、もしくは前処理されうる、または別の方法で曝露から保護されうる。
【0154】
ボツリヌス毒素の処置適用
本明細書に記載されているように、本発明の多くの態様は、ナノ粒子組成物との関連においてボツリヌス毒素の被験体への送達を含む。そのような送達は、特に特定の化粧品および医療の適用を含む、様々な関連において有用である。特定のそのような適用は、下でより詳細に考察されている。
【0155】
化粧品適用
ボツリヌス毒素A型(BTXA)は、化粧品の皮膚科学において広く用いられる薬物になっていきている。化粧品使用に関して観察されるBTXAの有害効果は、患者の薬剤服用順守へ重大な影響を及ぼす。現在、BTXAは、BTXAが訓練された人材を必要とする注射により投与されるため、およびBTXAからの有害効果を防ぐための主要なツールが知識および特殊技術であるための両方から、医療関係者によりかつ臨床設定において、投与されている。正しい注射技術の使用は、たいていの望ましくない効果は間違った技術により引き起こされるため、必須である。人体解剖学的構造(すなわち、例えば、顔面および顔面外の筋肉)の知識は、医師が最適な用量、時期、および技術を選択するのに重要である。
【0156】
BTXAを投与するための現行手順の最も一般的な有害効果は疼痛および血腫である。例えば、BTXA溶液が眼周囲領域への注射により投与される場合、まぶたおよび眉下垂は一般的な有害効果である。疼痛、血腫、斑状出血、および挫傷などの有害効果はまた、上顔面および下顔面内に、ならびに顔面外部位に起こりうる。他の可能性のある有害効果には、限定されるわけではないが、頭痛および併用薬との可能性のある相互作用が挙げられる。希釈、保存、および注射の適切な技術、加えていかなる禁忌をもつ患者もの注意深い排除を履行することによる最も望ましくない有害効果を避けるための提案はなされてきた。疼痛、血腫、斑状出血、および挫傷は、BTXA注射の前および後で皮膚を冷やすことにより防ぎうる。上まぶた下垂は、アプラクロニジンまたはフェニレフリン点眼剤を用いて部分的に矯正されうる(Wollina et al., 2005, Am. J. Clin. Dermatol., 6:141)。しかしながら、有意な有害効果が現行ストラテジーに残っている。
【0157】
対照的に、本発明は、有害な副作用を最小限にする様式でボツリヌス毒素を安全かつ効果的に投与するための方法および組成物を提供する。一つの態様において、本発明は、マイクロ流動化されたナノエマルジョンなどのナノ粒子組成物を含む局所的および/または局在的に送達される組成物としてボツリヌス菌投与の方法を企図する。一つの態様において、組成物は、クリーム、軟膏、油、泡、スプレー、またはジェルとして製剤化される。
【0158】
当業者は、本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物が、液体、クリーム、エマルジョン、ジェル、濃厚ローション、または粉末などの化粧品調製物において様々な化粧品的に許容される媒体のいずれかと共に製剤化されうることを認識していると思われる;それらは、単独でまたは混合物において用いられる、水、およびまた任意の化粧品的に許容される溶媒、特に、1〜8個の炭素原子を有するアルカノールなどのモノアルコール(エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、およびフェニルエチルアルコールのような)、アルキレングリコールなどのポリアルコール(グリセリン、エチレングリコール、およびプロピレングリコールのような)、ならびにモノ-、ジ-、およびトリ-エチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテル、などのグリコールエーテル、を含みうる。そのような成分は、例えば、組成物全体の重量に対して重量で最高70%程度までの割合で存在しうる。
【0159】
本発明のボツリヌス菌ナノ粒子組成物を含む化粧品調製物は、特に、脂性皮膚をもつ個体にとって特に望まれる、光沢のない生成物を得るために、少なくとも1つの増量剤を含みうる。「増量剤」という用語は、単独または組み合わせて用いられる、室温および大気圧で固体である任意の粒子であって、組成物の様々な成分と化学的に反応せず、かつこれらの成分が室温より上の温度に、および特に、それらの軟化点またはそれらの融点に曝された時でさえ、これらの成分に不溶性である、粒子を意味する。そのような不活性増量剤は、典型的には、少なくとも170℃より高い、およびよりいっそう有利には200℃より高い、融点を有する。
【0160】
増量剤は、吸収性でも非吸収性でもよい、すなわち、特に組成物の油および皮膚により分泌される生物学的物質も吸収する能力があってもなくてもよい。いくつかの態様において、増量剤は、粒状であり、0.01から150μmまで、好ましくは0.5から120μmまでの範囲、およびよりいっそう有利には1から80μmまでの範囲の見かけの直径を有する。見かけの直径は、基本粒子がその最小寸法(薄層の厚さ)に沿って内接している円の直径に対応する。
【0161】
しわの処置
額、眉間、皺(rhytids)、および/または眼窩周囲の領域を含む顔のしわは、一般的な審美的問題であり、下層にある顔面筋系活動亢進に関連すると考えられている。例えば、眉間のしわの発生は、下層にある鼻根筋、皺眉筋、および眼輪筋の動力学に、少なくとも一部、関連している。顔のしわの線は、それらが老化の外観を生じるため、問題があるとみなされる。場合によっては、それらはまた、否定的情動(例えば、怒り、不安、悲しみ)、疲労、またはストレスの徴候として誤解されうる。
【0162】
ここ数年、ボツリヌス毒素溶液の注射が機能亢進性の顔のしわの線の処置のための最も人気のある治療法の一つになってきている。注射後、毒素は、顔面表情筋を麻痺させるまたは弱めるように作用する。これは、明らかに、しわの出現を低減または排除する。Sadick NS., 「The cosmetic use of botulinum toxin type B in the upper face」Clin Dermatol. 22(1):29-33 (2004)。
【0163】
ボツリヌス毒素溶液の最初の化粧品使用は、額眉間のしわの線の処置のためであった(Carruthers et al., 1992, J. Dermatol. Surg Oncol., 18:17)。BTX溶液の広頚筋への注射が口の持ち上げを生じることもまた言及されている(Brandt et al., 1998, Dermatol. Surg., 24:1232)。BTX溶液の顎先への注射は、顕著な精神的しわの処置のために行われている(Carruthers et al., 「Cosmetic Uses of Botulinum A Exotoxin」 pp. 325-48, Advances in Dermatology, James, et al., eds., Mosby-Yearbook, Chicago, 1997)。
【0164】
本発明は、顔のしわおよび/または見端の悪い顔の表情(例えば、下層にある顔面筋系の活動亢進による)の処置のためのナノ粒子組成物を提供する。もちろん、顔のしわおよび/もしくは表情の処置に関連した原理ならびに/または組成物は、身体の他の場所での筋肉活動により引き起こされる望ましくない線またはしわ(例えば、首の線など)に等しく適用されうる。いくつかの態様において、しわを処置するのに用いる本発明のナノ粒子組成物は、1つまたは複数の神経麻痺性毒素を含む;いくつかの態様において、そのような毒素は顔面筋活動をブロックする能力がある;いくつかの態様において、そのような毒素はボツリヌス毒素(BTX)を含む。いくつかの態様において、本発明は、マイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンの顔のしわへの投与を企図する。
【0165】
顔のしわおよび/または線の発生は、反復注射によるボツリヌス菌A型毒素処置の長期使用によって遅延されうることが最近、示唆されている(Binder, 2006, Arch. Facial Plast. Surg., 8:426)。しかしながら、反復注射は患者にとって苦痛であり、意図されない筋群を注射するリスクがあり、有害な副作用(例えば、下垂)を引き起こす可能性がある。いくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノエマルジョンは、顔(または首)の線またはしわの発生を遅らせるために、長期間に渡って顔および/または首に適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス菌ナノエマルジョンは、顔の線またはしわの発生を遅らせるために、長期間に渡って顔および/または首に定期的に適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、顔の線またはしわの発生を遅らせるために、6ヶ月間より長い期間に渡って顔および/または首に定期的に適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、顔の線またはしわの発生を遅らせるために、1年間より長い期間に渡って顔および/または首に定期的に適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、顔の線またはしわの発生を遅らせるために、5年間より長い期間に渡って顔および/または首に定期的に適用される。いくつかの態様において、ボツリヌス毒素は、顔の線またはしわの発生を遅らせるために、10年間より長い期間に渡って顔および/または首に定期的に適用される。
【0166】
運動過剰性顔の線
ボツリヌス毒素B型(BTX-B)の注射は、機能亢進性顔の線の管理において評価されている。例えば、24人の患者は、皺眉筋、眼輪筋、または前頭筋における400〜800ユニットBTX-Bで処置された。顔の線の改善は、しわ改善スコア(Wrinkle Improvement Score)(WIS)およびランク付け数値動力学線スケール(Rated Numeric Kinetic Line Scale)(RNKLS)を用いて評価されうる。一つの研究は、効果の発現が72時間以内であったことを報告した。全部位についてのWISおよびRNKLSは、処置後、統計学的に良くなり、効果は8週間続いた。一般的に、患者は、WISに関して中位の改善(グレード2)、およびRNKLSに関して2ポイントの改善を示した(Ramirez et al., 2002, Otolaryngol. Head Neck Surg., 126:459)。
【0167】
いくつかの態様において、本発明は、運動過剰性顔の線へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。いくつかの態様において、本発明は、しわ形成前の典型的にしわを発生する顔の領域へのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。反復されるそのような投与は、最終的に発生する可能性があるしわの発生を遅らせうる、および/またはしわの強度もしくは重症度を低減しうることが予想される(Binder, 2006, Arch. Facila Plast. Surg., 8:426)。
【0168】
広頚筋帯
広頚筋は、顔面筋群に属する表在筋膜のすぐ下の首の各側に位置する筋肉の広い薄層であり、顔面神経により神経支配され、かつ下唇および口角を側面および下へ引っ張り、強力に動かされた場合、首を伸ばし、その皮膚を上の方へ引っ張る。
【0169】
ボツリヌス毒素Zの注射は、たるみ肥大性広頚筋帯(すなわち、典型的には、老化首と呼ばれる)を処置することが報告されている。水平的首のしわ、広頚筋帯、および皮膚弛緩に基づいた分類系(I〜IV)は、変形の程度を分類し、ボツリヌス菌の推奨用量のガイドラインとしての役割を果たしうる。例えば:II型は、軽い水平的首のしわ;弱く、軽い広頚筋弛緩性;および軽い皮膚弛緩にあてはまる;III型は、中位の水平的首のしわ;弱く、中位の広頚筋弛緩性;および中位の皮膚弛緩にあてはまる(Matarasso et al., 1999, Plast, Reconstr. Surg., 103:645)。
【0170】
一つの態様において、本発明は、広頚筋帯へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0171】
医療の適用
神経筋障害
クロストリジウム・ボツリヌムにより産生されたBTXは、致死未満量で投与された場合、横紋筋を可逆的に麻痺させる。BTXは、麻痺、顔面拘縮、ジストニア、片側顔面痙攣、振戦、痙縮(例えば、多発性硬化症に起因する)の様々な形を含む筋肉痙攣および/または拘縮を含むいくつかの神経筋障害および状態、眼窩後筋および様々な他の眼科的状態における処置に用いられている(Carruthers et al., 1996, J. Am. Acad. Dermatol., 34:788)。
【0172】
顔面神経麻痺
患者の顔の片側の筋群へのBTXの注射は、顔面神経麻痺により引き起こされる顔面共同運動および垂直性非対称を処置するために用いられていることが報告されている(Armstrong et al., 1996, Clin. Otolaryngol., 21:15)。後者の手順において、患者の顔の正常な側の眼に関連した様々な筋肉と共に口に関連した口角挙筋、大頬骨筋、笑筋、および口角下制筋はすべて、顔の未処置側への神経麻痺の効果を相殺するように患者の顔の全体の垂直対称に影響を及ぼすために群として処置された。
【0173】
一つの態様において、本発明は、痙攣性顔面筋へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0174】
眼瞼痙攣
眼瞼痙攣は、まぶたの筋肉の反復性および律動性収縮(すなわち、まぶた痙攣としても知られている)を見て診断される。場合によっては、まぶたは、閉じる(またはほぼ閉じる)および再び開くを繰り返しうる。この状態の始まりは、一般的には、疲労、ストレス、および/またはカフェインに起因する。しかしながら、いったん痙攣が始まると、それらは数日間、間欠的に続きうる。
【0175】
まぶたが完全に閉じる場合のより重度の収縮が起こりうる。この悪化した状態は、眼の表面(角膜)またはまぶたを裏打ちする膜(結膜)の刺激により引き起こされうる。この型のまぶたの攣縮はずっと長く続き、しばしば、非常に不快であり、また、まぶたを完全に閉じさせうる。
【0176】
眼瞼痙攣の症状には、限定されるわけではないが、まぶた(通常、上まぶた)の反復性の不快な攣縮もしくは痙攣、光感受性、または視界不良が挙げられる。
【0177】
いくつかの態様において、本発明は、まぶたの筋肉へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0178】
脳性麻痺
脳性麻痺は、運動の喪失、または他の神経機能の喪失により特徴付けられる一群の障害を含む。これらの障害は、胎児発育中または出生時近くで起こる脳の傷害により引き起こされる。脳性麻痺は、大脳(高次心的能力、感覚、および随意筋活動と関係をもっている、脳の最大部分)の傷害により引き起こされうる。
【0179】
大脳の傷害は、結果として、幅広く異なる領域における神経機能の喪失を生じうる。CPの古典的所見は、単一の肢、身体の片側(痙性片麻痺)、両方の脚(痙性両麻痺)、または両方の腕と脚(痙性四肢麻痺)を冒しうる痙直(筋緊張の増加)である。加えて、運動の部分的または完全喪失(麻痺)、感覚異常、ならびに聴覚および視覚の欠陥がありうる。発話異常は一般的であり、発作が起こりうる。
【0180】
CP患者における知的機能は、極めて聡明な正常から重度の知的障害までの範囲でありうる。症状は、通常、2歳前に明らかであり、重度の場合、早くも3ヶ月ほどで現れうる。脳性麻痺は、脳障害(脳の傷害)の非進行性型であり、疾患に直接的に起因する症状は悪化しない。
【0181】
脳性麻痺の分類には、痙攣性、運動障害性、運動失調性、および混合型が挙げられる。痙攣性脳性麻痺は、約50%の症例を含む。運動障害性(アテトーシス様)脳性麻痺は約20%を冒す。それは、異常な動作(ねじり、痙動、または他の動作)の発生を含む。運動失調性脳性麻痺は、振戦、不安定歩行、協調運動障害、および異常な動作を含む。それは約10%を冒す。残りの20%は、混合型として分類され、上記症状の任意の組み合わせを有する。
【0182】
脳性麻痺の症状には、限定されるわけではないが、発作、筋肉収縮、吸乳または摂食困難、不規則な呼吸、リーチング、座ること、転がること、ハイハイすること、歩くことなどの運動技能の発達遅延、運動精神遅滞、精神遅滞、発話異常(構語障害)、視覚異常、聴覚異常、痙直、進行性関節性拘縮、限られた範囲の動作、洋梨状歯が挙げられる。
【0183】
ボツリヌス毒素は、脳性麻痺および他の筋緊張亢進をもつ子どもを、変形を減少させる、機能を促進する、運動制御を改善する、短縮した筋肉の伸長により処置するのに効果的である。局所性筋緊張亢進をもつ子どもについて、ボツリヌス毒素は、リハビリテーションに影響を及ぼす、劇的だが、一時的反復可能な変化を与える。研究は、毒素の機能障害および機能的制限へのプラス効果を迅速に捕らえている。ボツリヌス毒素の長期使用、および毒素が小児筋緊張亢進性障害をもつ人の生涯を通じて果たす役割はまだ決定されていない(Gaebler-Spira et al., 2003, Phys. Med. Rehabil. Clin. N. Am., 14:703)。
【0184】
一つの態様において、本発明は、筋緊張亢進の症状を示す患者へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。一つの態様において、筋緊張亢進は、脳性麻痺を含む。一つの態様において、患者は子どもである。
【0185】
斜視
斜視は、一方の眼の他方に関しての整合の偏位を含み、寄り眼、内斜視、外斜視、横目、または白目がちに見える目(walleye)とも呼ばれる。斜視は、眼の間での協調の欠如により引き起こされると考えられている。結果として、それらの眼は異なる方向を見て、一点へ同時に焦点を合わせない。
【0186】
子どもにおける斜視のたいていの症例では、原因は不明である。これらの症例の半分より多くにおいて、問題は、出生時または出生後まもなく、存在している(先天性斜視)。2つの眼が同じ像に焦点を合わせることができない場合、脳は片方の眼からの入力を無視することを習得しうる。これを続けさせるならば、脳が無視する眼は決して良く見ようとはしないだろう。この視力損失は、弱視と呼ばれ、しばしば、斜視と付随している。
【0187】
成人における後天性斜視は、眼の眼窩の傷害、または閉鎖性頭部外傷および卒中を含む脳の傷害により引き起こされうる。糖尿病をもつ人は、しばしば、後天性麻痺性斜視を引き起こす循環喪失をもつ。任意の原因からの片方の眼における視力の損失は、通常、眼を徐々に外へ向かわせる(外斜視)。成人の脳はすでに視覚について発達しているため、脳が片方の眼からの入力を無視するという弱視に関連した問題は、成人性斜視に関しては起こらない。
【0188】
斜視の症状には、限定されるわけではないが、交差したように見える眼、同じ方向に整合しない眼、協調性のない眼球運動、複視、または奥行知覚の喪失をもつ片方の眼のみでの視覚が挙げられる。
【0189】
後天性内斜視を有する患者におけるボツリヌス菌治療の長期結果が報告されている。後天性内斜視を有する68人の子ども(8〜64ヶ月の月齢範囲)が前向き研究に登録された。ボツリヌス毒素Aは、2つの内直筋に注射された。運動および感覚状態は、最後の注射後1週間目および2週間目;3ヶ月目、6ヶ月目、および12ヶ月目;ならびに毎年、評価された。
【0190】
最後の注射から平均4.8年間の追跡調査後、運動の成功は、1回の注射で36人の子ども(52.9%)に得られ、2回の注射および3回の注射後、それぞれ、48人(70.6%)および60人(88.2%)の子どもへと増加した。48人(70.6%)の患者は、少なくとも周辺融像を有し(カテゴリー1両眼視力)、32人(47.1%)は、少なくとも400秒の弧の立体認知視力を有した(カテゴリー2両眼視力)。より強い遠視、重症度の低い弱視、および内斜視のより小さい角度は、運動成功の最良の予測因子であった。最小の弱視および好ましい運動整合は、より良い両眼視力結果と関連していた。
【0191】
ボツリヌス毒素は、後天性内斜視の効果的な長期処置でありうる。強い遠視、最小弱視、および小さい内斜視偏位をもつ子どもにおいて特に有用である(Tejedor et al., 2001, Investigative Ophthalmology and Visual Science, 42:2542)。
【0192】
一つの態様において、本発明は、斜視の症状を示す患者へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。一つの態様において、患者は子どもである。
【0193】
ジストニア
ジストニアは、不随意性のゆっくりしたねじれ運動を含む病状である。制御されていない、またはゆっくりした運動は、筋緊張(通常、大きな筋群における)の機能障害として定義され、頭、肢、胴体、または首(すなわち、頸部ジストニア)のゆっくりした不随意収縮を引き起こす。筋肉のゆっくりした曲がりくねったねじれ運動(アテトーシス)または持続的筋収縮(ジストニア)は、脳性麻痺、脳炎、薬物副作用、肝性脳症、およびハンチントン舞踏病を含むいくつかの状態により引き起こされうる。異常な運動は、睡眠中、低下しうる、または消失しうるが、感情的ストレスにより悪化する。異常な、および時々奇怪な姿勢は、これらの運動の発現でありうる。
【0194】
一つの態様において、本発明は、ジストニアの症状を示す患者へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0195】
前立腺肥大
ボツリヌス毒素注射は、良性前立腺肥大をもつ男性に効果的でありうる。良性前立腺肥大をもつ30人の男性が、無作為化プラセボ対照試験に登録された。ベースライン評価後、各参加者は4mLの溶液の前立腺への注射を受けた。対照群における患者は、塩類溶液を受け、処置群における患者は、200Uのボツリヌス毒素Aを受けた。各群の結果は、症状スコア、血清中前立腺特異的抗原濃度、前立腺体積、排尿後残尿量、およびピーク尿流速を比較することにより評価された。
【0196】
2ヶ月後、処置群の13人の患者および対照群の3人は、自覚的な症状軽減があった(P=0.0007)。ボツリヌス毒素を受けた患者において、症状スコアは、ベースライン値と比較して65%、低下し、血清中前立腺特異的抗原濃度はベースラインから51%、低下した。塩類溶液を受けた患者において、症状スコアおよび血清中前立腺特異的抗原濃度は、ベースライン値および1ヶ月目の値と比較して有意には変化しなかった。追跡調査は平均して19.6+/-3.8ヶ月であった(Maria et al., 2003, Urology 62:259)。
【0197】
一つの態様において、本発明は、前立腺肥大の症状を示す患者へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0198】
多汗症
多汗症は、人が過剰に、かつ予想できないほど、汗をかく病状である。多汗症をもつ人は、温度が涼しい時、および彼らが休息している時でさえ、汗をかきうる。発汗は、身体が涼しさを保つのを助け、ごく自然なことである。人は、暖かい温度で、彼らが運動している時、または彼らを神経質、怒り、恥ずかしい、または恐れの状態にさせる状況に応答して、より多く汗をかく。
【0199】
しかしながら、過剰な発汗はそのような誘因なしに起こる。多汗症をもつ人は、過活動汗腺を有するように思われる。制御できない発汗は、肉体的および感情的の両方の有意な不快感へ導きうる。過剰な発汗が手、足、および腋窩に作用する時、それは、原発性または限局性多汗症と呼ばれる。原発性多汗症は、人口の2%〜3%を冒し、さらに、この状態をもつ患者の40%未満は医師の診察を受けている。原発性多汗症症例の大部分において、原因を見出すことができない。遺伝であるように思われる。発汗は別の病状の結果として起こる場合には、それは二次多汗症と呼ばれる。発汗は身体中全体でありうる、またはそれは一つの領域に限局されうる。二次多汗症を引き起こす状態には、限定されるわけではないが、末端肥大症、甲状腺機能亢進症、グルコース調節障害、褐色細胞腫、カルチノイド症候群、癌、結核、感染症、更年期障害、脊髄損傷、卒中、パーキンソン病、心臓または肺疾患、薬剤、物質乱用、または不安状態が挙げられる。多汗症の一次症状は湿りである。
【0200】
ボツリヌス毒素A型(BOTOX(登録商標))は、著しい脇の下発汗、原発性腋窩多汗症と呼ばれる状態の処置として2004年にFDAにより認可された。脇の下へ注射される少量の精製ボツリヌス毒素は、発汗を刺激する神経を一時的にブロックする。副作用は、注射部位の疼痛、およびインフルエンザに似た症状を含む。手のひらの発汗に用いられるBOTOX(登録商標)は、軽いが、一時的脱力および激痛を引き起こしうる。
【0201】
一つの態様において、本発明は、多汗症の症状を示す患者へのマイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンなどのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与を企図する。
【0202】
例示
以下の実施例は、本発明により企図された特定の態様の例証を提供することをのみ意図される。実施例は決して限定することを意図するものではない。
【0203】
実施例1:ボツリヌス菌ナノ粒子製剤
この実施例は、ボツリヌス毒素(すなわち、例えば、BOTOX(登録商標))を含むマイクロ流動化により調製されたナノエマルジョンの一つの態様を提示する。
【0204】
マイクロ流動化のための調製物は以下のとおりに作製された:
1. 5gのダイズ油および5gのTween 80を混合し、混合物を乳化するのに必要である場合には(典型的には、必要でない)加熱する。
2. ヒトアルブミンマトリックス内に組み入れられた100ユニットのBOTOX(登録商標)(Allergan, Irvine CA)を、100mLの脱イオン水/蒸留水へ加え、均一に混合されるまで撹拌した。
3. 段階1調製物を段階2調製物に加え、均一に混合されるまで撹拌した。
4. 調製物を1分間、ホモジナイズした(表1および図1における結果として生じた粒子分布参照)。
5. 24,000psiでの単一パスマイクロ流動化手順を、Microfluidizer(登録商標)プロセッサを用いて実行した。
【0205】
結果として生じたナノエマルジョンを、約0.6nm〜6000nmの粒子をサイズで分類できるMalvern Nano S整粒器を用いて粒子サイズについて評価した。BOTOX(登録商標)ナノエマルジョン調製物は、95.33nmの平均粒子サイズをもつ2つの粒子サイズピークを有した(表2および図2)。
【0206】
(表1)ホモジナイズされたBOTOX(登録商標)マイクロエマルジョンの粒子サイズ分布

【0207】
(表2)マイクロ流動化BOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの粒子サイズ分布

【0208】
実施例2:注射されたBOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの筋弛緩効果
この実施例は、塩類溶液としての自由溶液BOTOX(登録商標)注射と同程度の効力を有するBOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの一つの態様を提示する。
【0209】
実験計画は、以下の2つのBOTOX(登録商標)調製物を比較した:
1)実施例1に従って調製されたBOTOX(登録商標)を、Swiss Webster雌マウスの後肢(腓腹筋)への筋内(IM)注射により注入した。
2)BOTOX(登録商標)塩類溶液を、Swiss Webster雌マウスの後肢腓腹筋への筋内(IM)注射により注入した。
【0210】
指外転スコア(DAS)アッセイを用いて、局所的筋脱力効力を測定した(Aoki, 1999)。DAS値は以下のとおり割り当てられた:(0)扁平足、対照脚と同じ指の広がり;(1)扁平足、対照脚と比較して指外転の幅における差、または2本の指の接触および残りは完全に広がっている;(2)扁平足、全指の先端で開いたわずかな空間、または3本の指の接触;(3)足が扁平の場合には、5本の指の接触、足が湾曲している場合には、4本の指が合わさっている;(4)湾曲した足、全5本の指の接触。
【0211】
BOTOX(登録商標)ナノエマルジョンおよびBOTOX(登録商標)塩類溶液のIM注射は、単純盲検プロトコール下で7日間、DASにより評価された。1〜2のDASスコアは、ボツリヌス毒素ナノエマルジョン(3.96U/5μl)およびボツリヌス毒素塩類溶液(3.96U/5μl)の両方について観察された。空ナノエマルジョンである対照群はDAS(0)であった。各群(ボツリヌス毒素ナノエマルジョン、塩類溶液、および対照)は5匹の動物から構成された。
【0212】
この情報は、非マイクロ流動化ボツリヌス毒素塩類溶液の注射により実証されているように、マイクロ流動化技術がボツリヌス毒素の機能特性を破壊しないこと、およびボツリヌス毒素ナノエマルジョンが機能的に効果があることを証明している。
【0213】
実施例3:皮下BOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの筋弛緩効果
この実施例は、皮下投与されたボツリヌス菌ナノエマルジョン(すなわち、例えば、BOTOX(登録商標)ナノエマルジョン)の治療効力を実証する。
【0214】
実施例1に従って調製されたBOTOX(登録商標)ナノエマルジョン(9.9U/100μl)を、5匹のSwiss Webster雌マウスの後肢腓腹筋へ局所投与した。5匹のSwiss Webster雌マウスの対照群は、BOTOX(登録商標)が省かれていること以外、同様に調製されたナノエマルジョンを受けた。処置後7日間の間、実施例2に従ってスコアリングされ、1〜2のDASスコアは、ボツリヌス毒素ナノエマルジョン処置群について観察されたが、対照群において観察されなかった。皮膚の悪化(例えば、刺激、赤みなど)は処置後いかなる時点でも観察されなかった。データは、ボツリヌス毒素ナノエマルジョンが、通常に投与されるボツリヌス毒素注射と類似した様式での皮下投与で生物活性があることを示している。
【0215】
実施例4:ボツリヌス菌ナノエマルジョンの投与による筋弛緩効果:マウスにおける標準注射されたボツリヌス菌対局所用ボツリヌス菌エマルジョンの対照比較
この実施例は、本発明の局所用ボツリヌスナノエマルジョンの適用が、標準注射されたボツリヌス菌調製物(ナノエマルジョンではなかった)と等価の筋弛緩効果を誘導できることを実証するための対照実験を提供した。
【0216】
方法
約20グラムの体重の35匹の雌Swiss Websterマウスを、Charles Riverから購入した。到着したらすぐに、全動物を彼らのケージに1週間、順応させ(下記に定義されているように、群あたり5匹のマウスを群飼育した)、標準ケージ寝具類およびPurina 5001食べ物を供給した。1週間後、指外転スコアリング(DAS)を用いて、実施例1に従って調製されたBOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの投与後の局所的筋肉機能を測定した。DASアッセイにおいて、マウスを短時間(10秒間)、尾でつり下げ、動物がその後肢を伸ばし、その後指を外転させる、特徴的な驚愕反応を誘発した。このアッセイは、週に1回、3週間、行った。
【0217】
3つの処置調製物を、マウスの3つの処置群について調製した:1)注射用の塩類溶液におけるBOTOX(登録商標)、2)BOTOX(登録商標)を含むナノエマルジョン、および3)BOTOX(登録商標)を含むナノエマルジョンと同一の様式でMicrofluidizer(登録商標)プロセッサを通して同様に処理された、BOTOX(登録商標)を除くBOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの全成分を含む「空」ナノエマルジョンを含むナノエマルジョン。
【0218】
治療パラダイム
群1(IM)15匹のマウスに、塩類溶液に懸濁し、続いてマウスの後肢の腓腹筋へ注射される、体重1kgあたり10U/5μLのBOTOX(登録商標)を注入した。
【0219】
群2(局所)15匹のマウスに、後肢の腓腹筋の上を覆うマウスの皮膚に塗布される、体重1kgあたり10U/100μlのBOTOX(登録商標)のナノエマルジョンで局所的に処置した。
【0220】
群3(対照)15匹のマウスに、後肢の腓腹筋の上を覆うマウスの皮膚に塗布される、BOTOX(登録商標)を含まない空ナノエマルジョンで局所的に処置した。
【0221】
評価
注射および/または経皮適用から1週間後、DASアッセイを用いて、処置の可能性のある局所的筋脱力効果を測定した。このアッセイは、週に1回、次の3週間、行われた。BOTOX(登録商標)もしくは対照調製物の注射および/または経皮適用後、様々な程度の指外転は、処置に関して隠された観測者により5点スケール(0=正常〜4=指外転および脚伸展における最大低下)でスコアリングされた。
【0222】
結果および結論
処置後1週間目に、局所用ボツリヌス菌ナノエマルジョン調製物で処置されたマウスの群(群#2)は、0.5±0.3(P<.001)のスコアをもった空ナノエマルジョンで処置されたマウスの対照群(群#3)と比較して、Aokiスケールにおいて2.8±0.3のスコアを達成した。比較して、塩類溶液中のボツリヌス菌を注射されたマウス群(群#1)は、3.5±0.3のスコアをもった。処置後3週間までに、局所用ボツリヌス菌ナノエマルジョン調製物で処置されたマウスの群および塩類溶液中のボツリヌス菌を注射されたマウス群の両方は、注射されたボツリヌス菌に関して発表された文献により予想されたように、対照レベルであったAokiスコアをもった。(マウスにおけるAokiスケールでのこの減少は、ボツリヌス菌に関して繰り返し観察されているが、それにもかかわらず、ボツリヌス菌は、ヒトにおいて治療的用量で用いられた場合、数ヶ月間、持続的抗しわ効果を生じた。)さらに、皮膚の悪化(例えば、刺激、赤みなど)は処置後いかなる時点でも観察されなかった。
【0223】
要約すると、この制御データは、局所用ボツリヌスナノエマルジョン調製物が注射されたボツリヌス菌に匹敵する生物学的効果を送達したことを示唆する。
【0224】
実施例5:しわを軽減するためのヒト被験体へのボツリヌス菌ナノ粒子組成物の投与
本発明の局所用ボツリヌス菌ナノエマルジョンを調製し、かなりの額のしわを有する人に塗布し、それが、それらのしわを生じた額における筋肉を弛緩させるのに効果的でありうるかどうかを測定した(それらの筋肉へ注射される単純塩類溶液に懸濁されたボツリヌス菌の投与から予想されるのとほぼ同じ様式で)。
【0225】
方法
ボツリヌス菌ナノエマルジョンは、以下の段階を用いて作製された:
1. 800mgのダイズ油および800mgのTween 80を滅菌バイアル中で、5分間、撹拌する。
2. 認可されたボツリヌス菌A型毒素薬剤の4500ユニットを含む8.4mL 0.9%塩類溶液を加える。20分間、撹拌する。
3. 試料を1分間、ホモジナイズする。
4. 試料を20分間、撹拌する。
5. 23,000psiで1回、マイクロ流動化する。
【0226】
ナノエマルジョンを、等容量のスキンクリーム(Base PCCA Vanishing Cream Light)へ加え、均一なクリームへとボルテックスした。
【0227】
前頭筋の活動亢進を表す額に渡るかなりの水平的しわを有する患者が、処置のために選択された。この患者は、ボツリヌス菌製品または皮膚充填剤製品で処置されたことはなかった。患者を、4点しわスケールを用いて有資格の形成外科医により処置前に評価し、「1」のスコアが「しわ無し」に相当し、および「4」のスコアはかなりのしわに相当した。患者を、彼の顔が「休息して」いる時、および眉を最大限に上げようと試みることにより達成される前頭筋を収縮させることによって最大限のしわを生じるように試みた時(「最大眉上昇」)、このスケールを用いて評価した。
【0228】
この患者は、休息時に4、および最大眉上昇時に4のスコアをもった。患者は、休息時および最大眉上昇を行うよう求められた時の両方で、デジタルSLRカメラおよびデジタルビデオを用いて撮影された(図3A、処置前の最大眉上昇)。
【0229】
患者は、処置の当日にいかなる顔の化粧品も日焼け止め剤も用いないように求められたが、診療所に来る前にIvory Soapで顔を洗うことは求められた。診療所にいる時、0.6CCのナノエマルジョンクリーム(実施例1で調製された)が、形成外科医により患者の額に彼の前頭筋の分布に渡って塗布された。クリームは、ピペットにより患者の額の皮膚に塗布され、クリームが外科医によりもはや見えなくなるまで、外科医により彼の指(プラスチック手袋により覆われた)を用いて皮膚に塗りつけられた。患者は、医師の診療所で3時間、観察された。彼は、彼の額に12時間、触れないように求められ、その後、Ivory Soapおよび水でそれを洗い流すように求められた。患者は、1日後、ならびにその後、1、2、4、8、および12週間後に追跡調査で観察された。追跡調査通院時に、休息時および最大眉上昇時の患者のしわが医師により評価された。そのうえ、医師は、規格化デジタルスチル写真およびビデオを繰り返した。
【0230】
結果
処置後第1週目までに、患者は、要求された最大眉上昇時に彼の眉を持ち上げる能力がなくなることにより証明されるように、彼の前頭筋を収縮させることができなかった(図3B)。彼のしわスコアは休息時で2、および最大眉上昇時で2であった。医師の臨床評価は、処置が、同様の処置領域におけるボツリヌス毒素の注射を用いて他の患者で彼が行った処置と等価である、処置された筋肉の完全な麻痺を誘導したことであった。患者は、8週間目までに眉運動性のわずかな回復を生じたが、観察の12週間目に彼の眉運動性における有意な低下を有し続けた。
【0231】
患者は、処置されていない皮膚の領域下の他の顔面筋を動かすことができ、処置直後またはいずれの追跡調査通院時においても皮膚への変化無しを含め、形成外科医により副作用は観察されなかった。同様に、患者は、処置後のいかなる時点の皮膚へのいかなる変化(例えば、刺激、赤みなど)をも含め副作用はないと報告した。
【0232】
結論
要約すると、この実験は、局所用ボツリヌス菌ナノエマルジョン調製物が、この患者についての注射されるボツリヌス菌(単純塩類溶液中)の標準処置後に予想されたものと臨床効力において匹敵すると形成外科医により評価された、有意な生物学的および臨床的効果を送達したことを強く示唆している。
【0233】
実施例6:さらなるボツリヌス菌ナノ粒子組成物製剤
様々な異なるボツリヌス菌ナノ粒子組成物を、場合によって、用いられる装置、加えられる圧力、添加されるボツリヌス菌の量、および調製されるナノ粒子組成物の容積における違いがあること以外、実施例1に従って調製したが、それらの違いが観察されるサイズの変動性の原因となる可能性がある。以下の平均粒子サイズおよび分布が観察された(表3)。
【0234】
(表3)マイクロ流動化BOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの粒子サイズ分布

【0235】
実施例7:加えられた圧力の達成された平均粒子サイズとの関係
プレミックス製剤を、実施例1に記載されているように(ボツリヌス毒素の欠如を除く)、調製し、4つの100mlアリコート、A〜Dへ分割し、それぞれを異なる圧力でMicrofluidizer(登録商標)を通過させ、結果として、下の表4に示されているように、異なる平均粒子サイズを生じた。
【0236】
(表4)異なる圧力においてマイクロ流動化されたBOTOX(登録商標)ナノエマルジョンの粒子サイズ

【0237】
等価物および範囲
前記は、本発明の特定の非限定的の好ましい態様の記載である。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識する、または日常的実験と同じ程度を用いて確かめることができると思われる。当業者は、本記載への様々な変化および改変が、特許請求の範囲に定義された、本発明の真意または範囲から逸脱することなく成されうることは理解していると思われる。
【0238】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、その反対の規定がない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、1つまたは1つより多いことを意味しうる。群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、その反対の規定がない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、群メンバーの1つ、1つより多い、または全部が所定の生成物または過程に存在する、用いられる、または別な状態で関連している場合には、満たされるとみなされる。本発明は、群の厳密に1つのメンバーが所定の生成物または過程に存在する、用いられる、または別な状態で関連している態様を含む。本発明はまた、群メンバーの1つより多く、または全部が所定の生成物または過程に存在する、用いられる、または別な状態で関連している態様を含む。さらに、本発明は、特許請求の範囲の1つもしくは複数からの、または記載の関連部分からの1つまたは複数の限定、要素、条項、記述用語がもう一つの特許請求の範囲へ導入される、すべてのバリエーション、組み合わせ、および順列を含むことは理解されるべきである。例えば、もう一つの特許請求の範囲に依存する任意の特許請求の範囲は、同じ基本特許請求の範囲に依存する任意の他の特許請求の範囲に見出される1つまたは複数の限定を含むように改変されうる。さらに、他に規定がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者にとって明らかでない限り、特許請求の範囲が組成物を列挙する場合、本明細書に開示された目的のいずれかのための組成物を用いる方法が含まれ、かつ本明細書に開示された作製する方法、または当技術分野において公知の他の方法のいずれかにより組成物を作製する方法が含まれる。加えて、本発明は、本明細書に開示された組成物を調製するための方法のいずれかにより作製される組成物を含む。
【0239】
要素がリストとして、例えば、マルクーシュ群形式で、提示される場合、要素の各下位集団もまた開示され、かつ任意の要素が群から排除されうることは理解されるべきである。「含む(comprising)」という用語は、開いていることを意図され、追加の要素または段階の包含を許容することもまた留意されたい。一般的に、本発明または本発明の局面が特定の要素、特徴、段階などを含むと言われる場合、本発明または本発明の局面の特定の態様が、そのような要素、特徴、段階などからなら、または本質的になることは理解されるべきである。簡素さのために、それらの態様は、本明細書でこの通りの言葉で具体的に示されていない。従って、1つまたは複数の要素、特徴、段階などを含む本発明の各態様について、本発明はまた、それらの要素、特徴、段階などからなる、または本質的になる態様を提供する。
【0240】
範囲が与えられている場合、端点が含まれる。さらに、他に規定がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から他のことが明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる態様における規定された範囲内の任意の特定の値を、文脈が明らかに他に指示しない限り、範囲の下限値の単位の10分の1まで、想定できることは理解されるべきである。他に規定がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から他のことが明らかでない限り、範囲として表される値は、与えられた範囲内の任意の部分的範囲を想定でき、部分的範囲の端点は、範囲の下限値の単位の10分の1と同じ精度まで表されることもまた理解されるべきである。
【0241】
加えて、本発明の任意の特定の態様が、特許請求の範囲の任意の1つまたは複数から明確に排除されうることは理解されるべきである。本発明の組成物および/または方法の任意の態様、要素、特徴、適用、または局面(例えば、任意のボツリヌス毒素、任意の油、任意の界面活性剤、任意の分散媒、任意のナノ粒子または任意のナノ粒子を含む組成物、組成物が投与される任意の目的など)は、任意の1つまたは複数の特許請求の範囲から排除されうる。簡潔さのために、1つもしくは複数の要素、特徴、目的、または局面が排除されている態様の全部は、本明細書で明確には示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】マイクロ流動化ボツリヌス毒素ナノエマルジョンの粒子直径分布の1つの態様を示す。
【図2】ホモジナイズされたボツリヌス毒素マイクロエマルジョンの粒子直径分布の1つの態様を示す。
【図3】ボツリヌス菌ナノ粒子組成物を含む本発明の組成物の局所投与の前(パネルA)および局所投与から2週間後(パネルB)の最大限眉上昇を試みる患者を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の集団を含むナノエマルジョンであって、粒子の大部分が約10ナノメートルから約300ナノメートルの直径を有し、かつ該ナノエマルジョンが少なくとも1つのボツリヌス毒素を含む、ナノエマルジョン。
【請求項2】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約250ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項3】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約200ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項4】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約150ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項5】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約120ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項6】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約100ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項7】
粒子の大部分が約10ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項8】
粒子の集団が300nmを超える直径を有する粒子を実質的に含まない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項9】
粒子の50%未満が300nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項10】
粒子の25%未満が300nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項11】
粒子の10%未満が300nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項12】
粒子の5%未満が300nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項13】
粒子の1%未満が300nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項14】
粒子の集団が200nmを超える直径を有する粒子を実質的に含まない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項15】
粒子の50%未満が200nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項16】
粒子の25%未満が200nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項17】
粒子の10%未満が200nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項18】
粒子の5%未満が200nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項19】
粒子の1%未満が200nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項20】
粒子の集団が120nmを超える直径を有する粒子を実質的に含まない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項21】
粒子の50%未満が120nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項22】
粒子の25%未満が120nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項23】
粒子の10%未満が120nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項24】
粒子の5%未満が120nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項25】
粒子の1%未満が120nmを超える直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項26】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約600nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項27】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約500nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項28】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約400nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項29】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約300nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項30】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約200nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項31】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約100nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項32】
最小粒子直径と最大粒子直径との差が約50nmを超えない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項33】
粒子が300nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項34】
粒子が200nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項35】
粒子が150nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項36】
粒子が100nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項37】
粒子が75nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項38】
粒子が50nmの平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項39】
粒子が100〜300nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項40】
粒子が50〜250nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項41】
粒子が60〜200nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項42】
粒子が65〜150nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項43】
粒子が70〜130nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項44】
粒子が80〜110nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項45】
粒子が90〜100nmの範囲の平均直径を有する、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項46】
毒性溶媒を実質的に含まない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項47】
50%未満の毒性溶媒を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項48】
25%未満の毒性溶媒を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項49】
10%未満の毒性溶媒を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項50】
5%未満の毒性溶媒を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項51】
1%未満の毒性溶媒を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項52】
安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項53】
粒子の大部分が少なくとも1日間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項54】
粒子の大部分が少なくとも2週間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項55】
粒子の大部分が少なくとも2ヶ月間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項56】
粒子の大部分が少なくとも5ヶ月間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項57】
粒子の大部分が少なくとも12ヶ月間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項58】
粒子の大部分が少なくとも24ヶ月間安定である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項59】
高剪断力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項60】
10分間未満の高剪断力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項61】
2分間未満の高剪断力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項62】
1分間未満の高剪断力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項63】
30秒間未満の高剪断力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項64】
3,000psiより大きな圧力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項65】
10,000psiより大きな圧力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項66】
18,000psiより大きな圧力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項67】
24,000psiより大きな圧力への曝露により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項68】
マイクロ流動化により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項69】
3,000psiより大きな圧力でのマイクロ流動化により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項70】
10,000psiより大きな圧力でのマイクロ流動化により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項71】
18,000psiより大きな圧力でのマイクロ流動化により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項72】
24,000psiより大きな圧力でのマイクロ流動化により生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項73】
マイクロ流動化が単一パスマイクロ流動化である、請求項68〜72のいずれか一項記載のナノエマルジョン。
【請求項74】
キャビテーションにより生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項75】
高圧ホモジナイゼーションにより生成された、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項76】
ボツリヌス毒素が粒子内にカプセル化されている、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項77】
ボツリヌス毒素が粒子の表面上に吸着している、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項78】
ボツリヌス毒素が粒子界面に会合している、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項79】
ボツリヌス毒素が、A型、B型、C1型、C2型、D型、F型、およびG型を含む群より選択される、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項80】
ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項81】
ボツリヌス毒素がボツリヌス毒素複合体である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項82】
ボツリヌス毒素複合体が非毒性赤血球凝集素タンパク質および非毒性非赤血球凝集素タンパク質を含む、請求項81記載のナノエマルジョン。
【請求項83】
ボツリヌス毒素がアルブミンマトリックス内に組み入れられている、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項84】
アルブミンがヒトアルブミンである、請求項83記載のナノエマルジョン。
【請求項85】
ボツリヌス毒素が精製されたボツリヌス毒素タンパク質またはその断片である、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項86】
ボツリヌス毒素が他のタンパク質から単離されている、または実質的に単離されている、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項87】
ボツリヌス毒素が非毒素タンパク質から単離されている、または実質的に単離されている、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項88】
ボツリヌス毒素がクロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)から単離されている、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項89】
ボツリヌス毒素が化学合成される、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項90】
ボツリヌス毒素が組換え技術により産生される、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項91】
皮膚を変えるまたは変化させることなく、皮膚を透過することができる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項92】
皮膚透過促進剤または研磨剤の使用なしに皮膚を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項93】
皮膚透過促進剤または研磨剤の使用なしに皮膚の最上層を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項94】
皮膚の最上層が角質層の表面である、請求項93記載のナノエマルジョン。
【請求項95】
皮膚の最上層が皮層小孔を含む、請求項93記載のナノエマルジョン。
【請求項96】
皮膚の最上層が皮膚腺を含む、請求項93記載のナノエマルジョン。
【請求項97】
化学的透過促進剤または研磨剤の使用なしに皮膚を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項98】
機械的透過促進剤または研磨剤の使用なしに皮膚を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項99】
皮膚を変えるまたは変化させることなく、粒子が皮膚を透過することができる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項100】
粒子が皮膚透過促進剤または研磨剤の使用なしに皮膚を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項101】
皮膚を変えるまたは変化させることなく、ボツリヌス毒素が皮膚を透過することができる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項102】
皮膚透過促進剤または研磨剤の使用なしに、ボツリヌス毒素が皮膚を透過できる、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項103】
油を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項104】
油が、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種、ルリヂサ、ジュニパータール(cade)、カモミール、カノーラ、キャラウェー、カルナバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ゴード(gourd)、ブドウの種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイノキの堅果(kukui nut)、ラバンジン(lavandin)、ラベンダー、レモン、リトシー・キュービバ、マカデミアナッツ、アオイ(mallow)、マンゴー種、メドウフォーム(meadowfoam)種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジ・ラッフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー(savoury)、シーバックソーン(sea buckthorn)、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項103記載のナノエマルジョン。
【請求項105】
油がダイズ油である、請求項103記載のナノエマルジョン。
【請求項106】
油が、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコンオイル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項103記載のナノエマルジョン。
【請求項107】
1つより多い油を有しない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項108】
界面活性剤を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項109】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項108記載のナノエマルジョン。
【請求項110】
界面活性剤が、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span 85);グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Sapn 20);ポリソルベート20(Tween-20);ポリソルベート60(Tween-60);ポリソルベート65(Tween-65);ポリソルベート80(Tween-80);ポリソルベート85(Tween-85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン:ポロキソマー;ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル-アミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高界面活性剤特性を有する合成および/または天然界面活性剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤;ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項108記載のナノエマルジョン。
【請求項111】
界面活性剤がTween 80である、請求項108記載のナノエマルジョン。
【請求項112】
1つより多い界面活性剤を有しない、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項113】
油および界面活性剤を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項114】
油と界面活性剤が0.5〜2.0の範囲の比率で存在する、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項115】
油と界面活性剤が0.5〜1.5の範囲の比率で存在する、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項116】
油と界面活性剤が0.5〜1.0の範囲の比率で存在する、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項117】
油と界面活性剤が1.0〜2.0の範囲の比率で存在する、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項118】
油と界面活性剤が1.5〜2.0の範囲の比率で存在する、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項119】
ナノエマルジョンにおける油のパーセントが1%〜30%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項120】
ナノエマルジョンにおける油のパーセントが1%〜20%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項121】
ナノエマルジョンにおける油のパーセントが1%〜10%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項122】
ナノエマルジョンにおける油のパーセントが約8%である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項123】
ナノエマルジョンにおける油のパーセントが約5%である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項124】
ナノエマルジョンにおける界面活性剤のパーセントが1%〜30%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項125】
ナノエマルジョンにおける界面活性剤のパーセントが1%〜20%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項126】
ナノエマルジョンにおける界面活性剤のパーセントが1%〜10%の範囲である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項127】
ナノエマルジョンにおける界面活性剤のパーセントが約8%である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項128】
ナノエマルジョンにおける界面活性剤のパーセントが約5%である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項129】
油が、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種、ルリヂサ、ジュニパータール、カモミール、カノーラ、キャラウェー、カルナバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ゴード、ブドウの種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイノキの堅果、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リトシー・キュービバ、マカデミアナッツ、アオイ、マンゴー種、メドウフォーム種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジ・ラッフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項130】
油がダイズ油である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項131】
油が、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコンオイル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項132】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項133】
界面活性剤が、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span 85);グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Sapn 20);ポリソルベート20(Tween-20);ポリソルベート60(Tween-60);ポリソルベート65(Tween-65);ポリソルベート80(Tween-80);ポリソルベート85(Tween-85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン:ポロキソマー;ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル-アミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高界面活性剤特性を有する合成および/または天然界面活性剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤;ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項134】
界面活性剤がTween 80である、請求項113記載のナノエマルジョン。
【請求項135】
水性分散媒内に分散している油性粒子を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項136】
水性分散媒が、水、塩類溶液、リン酸緩衝生理食塩水、短鎖アルコール、5%デキストロース、リンガー液、乳酸加リンガー注射液、乳酸加リンガー液プラス5%デキストロース注射液、アシル化リンガー注射液、Normosol-M、Isolyte-E、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項135記載のナノエマルジョン。
【請求項137】
水性分散媒が水である、請求項135記載のナノエマルジョン。
【請求項138】
油性粒子が、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種、ルリヂサ、ジュニパータール、カモミール、カノーラ、キャラウェー、カルナバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ゴード、ブドウの種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイノキの堅果、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リトシー・キュービバ、マカデミアナッツ、アオイ、マンゴー種、メドウフォーム種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジ・ラッフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、またはコムギ胚芽の油からなる群より選択される油を含む、請求項135記載のナノエマルジョン。
【請求項139】
油性粒子はダイズ油を含む、請求項135記載のナノエマルジョン。
【請求項140】
油性粒子が、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコンオイル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される油を含む、請求項135記載のナノエマルジョン。
【請求項141】
油性分散媒内に分散している水性粒子を含む、請求項1記載のナノエマルジョン。
【請求項142】
水性粒子が、水、塩類溶液、リン酸緩衝生理食塩水、短鎖アルコール、5%デキストロース、リンガー液、乳酸加リンガー注射液、乳酸加リンガー液プラス5%デキストロース注射液、アシル化リンガー注射液、またはNormosol-M、Isolyte-Eからなる群より選択される水性物質を含む、請求項141記載のナノエマルジョン。
【請求項143】
水性粒子が水を含む、請求項141記載のナノエマルジョン。
【請求項144】
油性分散媒が、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種、ルリヂサ、ジュニパータール、カモミール、カノーラ、キャラウェー、カルナバ、キャスター、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラの肝臓、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ゴード、ブドウの種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイノキの堅果、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リトシー・キュービバ、マカデミアナッツ、アオイ、マンゴー種、メドウフォーム種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジ・ラッフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、紅花、サンダルウッド、サスクアナ、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、およびコムギ胚芽の油、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項141記載のナノエマルジョン。
【請求項145】
油性分散媒がダイズ油である、請求項141記載のナノエマルジョン。
【請求項146】
油が、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコンオイル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項141記載のナノエマルジョン。
【請求項147】
約10ナノメートルから約300ナノメートルの直径を有する粒子の集団を含むナノエマルジョンであって、該ナノエマルジョンが少なくとも1つのボツリヌス毒素を含み、かつボツリヌス毒素が、非毒素タンパク質と会合したボツリヌス毒素を含む複合体の一部である、ナノエマルジョン。
【請求項148】
約10ナノメートルから約300ナノメートルの直径を有する粒子の集団を含むナノエマルジョンであって、ナノエマルジョンが高剪断力への曝露により生成され;ナノエマルジョンが少なくとも1つのボツリヌス毒素、少なくとも1つの油、および少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含み;かつボツリヌス毒素がヒトアルブミンマトリックス内に組み入れられている、ナノエマルジョン。
【請求項149】
以下を含むナノエマルジョンであって、高剪断力への曝露により生成されたナノエマルジョン:
約10ナノメートルから約300ナノメートルの直径を有する粒子の集団;
少なくとも1つのボツリヌス毒素;
少なくとも1つの油;および
わずか1つの界面活性剤。
【請求項150】
請求項1、21、31、または41記載のナノエマルジョンのいずれか1つを含む薬学的組成物。
【請求項151】
クリーム、ローション、ジェル、軟膏、スプレー、粉末、皮膚軟化剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項150記載の組成物。
【請求項152】
クリームである、請求項150記載の組成物。
【請求項153】
以下の段階を含む、ボツリヌス毒素を被験体へ経皮的に投与する方法:
(a)ボツリヌス毒素を含む組成物を提供する段階;および
(b)組成物を被験体の皮膚に投与する段階。
【請求項154】
組成物が接着性パッチを用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項155】
組成物がスパチュラを用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項156】
組成物がスワブを用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項157】
組成物が針無しの注射器を用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項158】
組成物が手袋をはめた指を用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項159】
組成物が、保護していない指を用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項160】
組成物が、皮膚の非標的部位へ組成物を塗布することなく、皮膚上の標的部位への組成物の塗布を可能にする装置を用いて経皮的に投与される、請求項153記載の方法。
【請求項161】
ボツリヌス毒素の全部が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項162】
ボツリヌス毒素の少なくとも99%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項163】
ボツリヌス毒素の少なくとも95%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項164】
ボツリヌス毒素の少なくとも90%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項165】
ボツリヌス毒素の少なくとも75%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項166】
ボツリヌス毒素の少なくとも50%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項167】
ボツリヌス毒素の少なくとも25%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項168】
ボツリヌス毒素の少なくとも10%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項169】
ボツリヌス毒素の少なくとも1%が皮膚を透過する、請求項153記載の方法。
【請求項170】
組成物が、しわ、顔の線、および/または首の線を処置するために投与される、請求項153記載の方法。
【請求項171】
しわ、顔の線、および/または首の線が、運動過剰性の顔の線、顔のしわ、広頚筋帯、デコルテ帯、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項170記載の方法。
【請求項172】
顔のしわが、額領域、眉間領域、前頭筋領域、側頭筋領域、皺(rhytids)領域、もしくは眼窩周囲領域の1つまたは複数を含む、請求項171記載の方法。
【請求項173】
組成物が多汗症を処置するために投与される、請求項153記載の方法。
【請求項174】
以下の段階を含む、ボツリヌス毒素を被験体へ経皮的に投与する方法:
(a)以下を提供する段階:
(i)被験体;
(ii)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノエマルジョンを含む組成物;および
(b)組成物を被験体の皮膚に投与する段階。
【請求項175】
以下の段階を含む、しわ、顔の線、および/または首の線を処置する方法:
(a)以下を提供する段階:
(i)しわ、顔の線、および/または首の線の症状を示す被験体;
(ii)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノエマルジョンを含む組成物;ならびに
(b)症状が低減するように被験体の皮膚に組成物を投与する段階。
【請求項176】
以下の段階を含む、しわ、顔の線、および/または首の線の発生を遅らせる方法:
(a)以下を提供する段階:
(i)しわ、顔の線、および/または首の線の症状を示していない被験体;
(ii)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノエマルジョンを含む組成物;ならびに
(b)症状の発生が遅れるように被験体の皮膚に組成物を投与する段階。
【請求項177】
以下の段階を含む、ナノエマルジョンを製造する方法:
(a)以下を含むプレミックスを提供する段階:
(i)油;
(ii)界面活性剤;および
(iii)水相;ならびに
(b)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノ粒子組成物に達する時間および条件下で、プレミックスを高剪断力または高圧ホモジナイゼーションに供する段階。
【請求項178】
プレミックスがボツリヌス毒素を含む、請求項177記載の方法。
【請求項179】
以下の段階を含む、ナノエマルジョンを製造する方法:
(a)以下を含むプレミックスを提供する段階:
(i)油;
(ii)界面活性剤;および
(iii)水相;
(b)プレミックスを含む溶液を形成する段階;ならびに
(c)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノ粒子組成物に達する時間および条件下で、プレミックスを高剪断力または高圧ホモジナイゼーションに供する段階。
【請求項180】
以下の段階を含む、ナノエマルジョンを製造する方法であって、油と界面活性剤が0.5〜2.0の範囲の比率(重量で)で存在し、かつ高剪断力がマイクロ流動化により生じる、方法:
(a)以下を含むプレミックスを提供する段階:
(iv)油;
(v)界面活性剤;
(vi)水相;および
(vii)ボツリヌス毒素;
(b)プレミックスを含む溶液を形成する段階;ならびに
(c)請求項1、21、31、または41のいずれか一項記載のナノ粒子組成物に達する時間および条件下で、溶液を高剪断力または高圧ホモジナイゼーションに供する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518307(P2009−518307A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543532(P2008−543532)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/046236
【国際公開番号】WO2008/045107
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508017971)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ロウエル (3)
【Fターム(参考)】