説明

ボデー構造

【課題】信頼性を損なうことなく車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材をボルト締結する。
【解決手段】耐久強度上、最も重要であるコンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26の結合部分をリーンフォース50で補強すると共に、四つのフレーム部材の重なり部分102、104をボルト締結している。しかも、大型でなく小型の補強部材であるリーンフォース50に中実構造部分52Aを設け、ここに雌ネジ穴62、64を設けることで、ナットを用いることなく重ね合わせ部分102、104をボルト78、88で締結している。このため、ボルト78、88を締め込んでも、かしめナットのように、共周りしない。このように、四つのフレーム部材を重ね、高締付けトルクで締結しているので剛性が高い。よって、耐久強度が高いボデー構造100となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成する三つ以上のフレーム部材を結合したボデー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金からなる車体ボデーの前端部を構成するフロントバルクヘッドやサイドフレームの前端部などを単体部品として製造し、これらをボルト締めでフレームの主部に結合させたボデー構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−208509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、図14に示すように、アルミニウム合金を押し出し成形して作られたフレーム部材902とフレーム部材904との結合は、フレーム部材902の貫通孔912周りにポップナット(かしめナット)908をかしめて固定したうえで、フレーム部材904の貫通孔910にボルト906を通してポップナット908に螺合させることによってボルト締結する方法が知られている。
【0004】
しかし、ポップナット908を用いたボルト締結は、ボルト906を締め込むとポップナット908のかしめ部分に共周りを起こしやすく、高締付けトルクでの締結ができない。また、高軸力での締付けもポップナットの強度上、困難である。
【0005】
このため、通常、ポップナットによるボルト締結では、信頼性を確保するために、被締め付け物(図14ではフレーム部材902)は一枚であり、高軸力での締結が必要となる三つ以上のフレーム部材を重ねてのボルト締結では用いられない。
【0006】
さて、アルミニウム合金で形成された複数のフレーム部材を結合することで組み立てられているアルミボデーでは、ポップナットによるボルト締結が主流となっている。しかし、上述したようにポップナットを用いるボルト締結では、三つ以上のフレーム部材を重ねて締結できない。よって、締結点数(締結箇所)の増加やフレーム部材の断面の大型化等が生じる場合がある。このため、組付け作業性の低下、コストアップ、重量増、大型化等の問題が生じる場合があった。
【0007】
本発明は、信頼性を損なうことなく、車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材を重ねてボルト締結することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のボデー構造は、車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材を結合したボデー構造であって、少なくとも三つ以上の前記フレーム部材が重ね合わされた重ね合わせ部分において、前記重ね合わせ部分の重ね合わせ方向の一方側に配設された前記フレーム部材に雌ネジ穴を設けると共に、前記一方側に配設されたフレーム部材よりも重ね合わせ方向の他方側に配設された複数の前記フレーム部材に前記雌ネジ穴に対応する位置に貫通孔を設け、他方側に配設された前記フレーム部材の前記貫通孔からボルトを差し込み、前記一方側に配設されたフレーム部材に設けられた前記雌ネジ穴に螺合させることにより、前記三つ以上のフレーム部材をボルト締結したことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載のボデー構造では、車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材が重ね合わされた重ね合わせ部分において、他方側に配設されたフレーム部材の貫通孔からボルトを差し込み、一方側に配設されたフレーム部材に設けられた雌ネジ穴に螺合させることにより、かしめナットを使用することなく、三つ以上のフレーム部材を重ね合わせてボルト締結することができる。
【0010】
よって、高締付けトルクでのボルト締結が可能となるので、信頼性を損なうことなく重ね合わせ部分がボルト締結される。
【0011】
請求項2に記載のボデー構造は、請求項1に記載の構成において、前記三つ以上のフレーム部材は、車幅方向を長手方向として配設された第一フレーム部材と、前記第一フレーム部材と長手方向の端部同士が重なるように、車体上下方向を長手方向として配設された第二フレーム部材と、前記第一フレーム部材の端部と前記第二フレーム部材の端部との重ね合わせ部分の内側に重なるように、該第一フレームと該第二フレームとで構成された角部に配設された第三フレーム部材と、を有し、前記第三フレーム部材に前記雌ネジ穴を設けると共に、前記第一フレーム部材及び前記第二フレーム部材の該雌ネジ穴に対応する位置に、前記貫通孔を設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載のボデー構造は、第一フレームと第二フレームとで構成される角部の内側に第三フレーム部材を配置して補強すると共に、この第三フレームに雌ネジ穴を設け、三つのフレーム部材の重なり部分をボルト締結することで、三つのフレーム部材が結合されている。
【0013】
よって、高締付けトルクでのボルト締結が可能となるので、信頼性を損なうことなく重ね合わせ部分がボルト締結される。このため、耐久強度が高いボデー構造となる。しかも、ボルト締結する箇所は増加しないので、ボルトの締め付工程上の作業性が損なわれない。
【0014】
請求項3に記載のボデー構造は、請求項2に記載の構成において、前記三つ以上のフレーム部材は、前記第一フレーム部材、前記第二フレーム部材、前記第三フレーム部材に加え、前記第一フレーム部材の端部、及び前記第二フレーム部材の端部、第三フレーム部材の重ね合わせ部分に、長手方向の端部が重なるように、車幅方向を長手方向として配設され、前記雌ネジ穴に対応する位置に前記貫通孔が設けられた第四フレーム部材を有していることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載のボデー構造は、第四フレーム部材を加えた四つのフレーム部材の重なり部分をボルト締結することで、四つのフレーム部材が結合されている。したがって、耐久強度が更に高いボデー構造となる。よって、例えば、外力が入力されても、第四フレームの変形が抑えられる。しかも、第四フレーム部材が加わっても、ボルト締結する箇所は増加しないので、ボルトの締め付工程上の作業性が損なわれない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のボデー構造よれば、信頼性を損なうことなく車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材が重ね合わされた重ね合わせ部分をボルト締結することができる。
【0017】
請求項2に記載のボデー構造よれば、耐久強度が高いボデー構造となる。
【0018】
請求項3に記載のボデー構造よれば、第四フレーム部材の変形が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のボデー構造100(図2も参照)を適用した自動車の車体10の前部のボデー(フロントボディ)を示している。なお、図中の矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。また、本実施形態の車体フレームは、強度が高く軽量であり、且つ高い成形性が得られるアルミニウム合金で形成された種々のフレーム部材を結合することで組み立てられている。
【0020】
図1に示すように、自動車の車体10の前部のボデーには、車体前後方向を長手方向とする左右一対のエプロンアッパーメンバ12、13が配設されている。
【0021】
エプロンアッパーメンバ12、13の前端部間には、車幅方向を長手方向とするコンデンサーサポート20が配設されている。コンデンサーサポート20は、車幅方向に沿って上下平行に配置されたコンデンサーサポートアッパー22及びコンデンサーサポートロア23と、両者を車体上下方向に繋ぐ三本のコンデンサーサポートサイド26、コンデンサーサポートセンター28、コンデンサーサポートサイド27と、を有している。更に、コンデンサーサポートアッパー22とコンデンサーサポートサイド26とで構成される角部にリーンフォース50(図6も参照)が配設されている。同様に、コンデンサーサポートアッパー22とコンデンサーサポートサイド27とで構成される角部にもリーンフォース51が配設されている。
【0022】
コンデンサーサポート20の車幅方向の両外側には、フェンダーサポート30、40が配設されている。フェンダーサポート30は、車幅方向に沿って上下平行に配置されたフェンダーサポートアッパー32及びフェンダーサポートロアー33と、車幅方向外側端部を車体上下方向に繋ぐフェンダーサポートサイド34と、を有している。なお、フェンダーサポート30と車幅方向反対側のフェンダーサポート40も、車幅方向に沿って上下平行に配置されたフェンダーサポートアッパー42及びフェンダーサポートロアー43と、車幅方向外側端部を車体上下方向に繋ぐフェンダーサポートサイド44と、を有している。
【0023】
つぎに、本発明を適用したコンデンサーサポートアッパー22、コンデンサーサポートサイド26、フェンダーサポートアッパー32、及びリーンフォース50の重ね合わせ部分102、104(結合部分)(図2、図3、図4を参照)のボデー構造100について説明する。
【0024】
なお、図3は、図2のコンデンサーサポートアッパー22、コンデンサーサポートサイド26、フェンダーサポートアッパー32、及びリーンフォース50の重ね合わせ部分102、104(結合部分)の縦断面図であり、図4は、図2及び図3におけるA−A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。また、図5は図2の分解斜視図である。なお、図2及び図5において、エプロンアッパーメンバ12とコンデンサーサポートアッパー22及びフェンダーサポートアッパー32とを締結しているボルト221、231以外のボルトの図示を省略している。
【0025】
図2から図5に示すように、コンデンサーサポートアッパー22とフェンダーサポートアッパー32は、長手方向(車幅方向)と直交する断面が略コ字形状をしている(図3参照)。なお、コンデンサーサポートアッパー22よりもフェンダーサポートアッパー32の方がコ字の開口幅は幅広である。また、いずれも、下面側が開口し、上壁面22Aと上壁面32Aは、車体前方から後方に向かうに従って上方に傾斜している(図3参照)。なお、上壁面22Aと上壁面32Aとは平行である(傾斜角度は一致している)。
【0026】
そして、コンデンサーサポートアッパー22の長手方向(車幅方向)と直交する断面における外側にフェンダーサポートアッパー32が被さるように、コンデンサーサポートアッパー22がフェンダーサポートアッパー32に挿入されることで、長手方向の端部同士が重なるように結合されている(図3、図4を参照)。
【0027】
図2と図5とに示すように、コンデンサーサポートサイド26は、長手方向(鉛直方向)と直交する断面が略コ字形状をしている。また、上端部分には、車幅方向外側に突出した突出部26Aが形成されている。更に、突出部26Aの上方には、車体前後方向の両側面が上方に延出した四角形状の延出部26Bが形成されている(図5参照)。そして、図3と図4とに示すように、この延出部26Bがコンデンサーサポートアッパー22とフェンダーサポートアッパー32とが重なった重なり部分の内側に配設される。
【0028】
そして、リーンフォース50が、図2と図5とに示すようにコンデンサーサポートアッパー22とコンデンサーサポートサイド26とで構成される角部に、図3と図4とに示すようにコンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26が重なった部分の内側に配設されている。
【0029】
よって、図3と図4とに示すように、コンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50が重なった重なり部分102、104においては、車幅方向と直交する断面における外側から順番に、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートアッパー22、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の順番で重なっている。なお、各フレーム部材が重なった重なり方向は、本実施形態では車体前後方向となる。
【0030】
つぎに、リーンフォース50について説明する。
【0031】
図6(A)に示すように、リーンフォース50は、正面視において、略四角状の上部52と略三角状の下部54とで構成されている。また、図6(B)に示すように、上面50Aは、車体後方に向かうに従って上方に傾斜した傾斜面となっている。なお、図3にも示すように、上面50Aは、コンデンサーサポートアッパー22の上壁面22A及びフェンダーサポートアッパー32の上壁面32Aと平行である(傾斜角度が一致している)。
【0032】
図6(B)に示すように、リーンフォース50は、アルミニウム合金を押し出し成形することによって作られ、上部52の上側部分は中実構造部分52Aとなっている。なお、この中実構造部分52A以外は所定の肉厚の中空構造となっている。
【0033】
また、図6(A)に示すように、リーンフォース50は、コンデンサーサポートサイド26の板厚分、幅狭となった幅狭部50Bが形成されている(図4も参照)。なお、幅狭部50Bは、押し出し成形後に、後加工で削ることによって形成される。
【0034】
つぎに、図3と図4とに示す、コンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の車体前後方向側面同士が重なった重なり部分102、104におけるボルトによる締結構造について説明する。
【0035】
図3と図6とに示すように、リーンフォース50の中実構造部分52Aには、車体前方側面50Cに形成され車体後方側に凹状となった雌ネジ穴62と、車体後方側面50Dに形成され車体前方側に凹状となった雌ネジ穴64と、が形成されている。なお、本実施形態では、雌ネジ穴62と雌ネジ穴64とは、上下にずれて配置されている(本実施形態では、車体前方側面50Cの雌ネジ穴62が下側で、車体後方側面50Dの雌ネジ穴64が上側)。
【0036】
図3と図4とに示すように、コンデンサーサポートサイド26には貫通孔72、82が、コンデンサーサポートアッパー22には貫通孔74、84が、フェンダーサポートアッパー32には貫通孔76、86が、リーンフォース50の雌ネジ穴62、64に対応する位置に車体前後方向に貫通形成されている。
【0037】
そして、車幅方向と直交する断面における最も外側にあるフェンダーサポートアッパー32の貫通孔76、86からボルト78、88(図3参照)を差し込み(図4の矢印X1、X2を参照)、コンデンサーサポートアッパー22の貫通孔74、84、コンデンサーサポートサイド26の貫通孔72、82に通し、そして、リーンフォース50の雌ネジ穴62、64に螺合させることで、重なり部分102、104がボルト締結されている。
【0038】
つぎに、上述したコンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50が重なった重なり部分102、104以外の部分でのボルトによる締結構造について説明する。なお、重なり部分102、104以外の部分のボルトによる締結構造は、いずれも二つのフレーム部材が重なった部分のボルト締結であるので、従来と同様である。
【0039】
図4に示すように、コンデンサーサポートアッパー22の貫通孔74、84よりも車幅方向外側に形成された締結孔202、203と、フェンダーサポートアッパー32の貫通孔76、86よりも車幅方向外側に形成された締結孔204、205と、にボルト(図示略)を通してナット(図示略)に螺合させることで、コンデンサーサポートアッパー22とフェンダーサポートアッパー32とをボルト締結している。
【0040】
また、コンデンサーサポートアッパー22の貫通孔74、84よりも車幅方向内側に形成された締結孔212、213にボルト(図示略)を通し、リーンフォース50の雌ネジ穴62、64よりも車幅方向内側に形成された雌ネジ穴244、245に螺合させることで、コンデンサーサポートアッパー22とリーンフォース50とをボルト締結している。
【0041】
更に、図3に示すように、コンデンサーサポートサイド26の貫通孔72、82よりも下方に形成された締結孔252、253と、リーンフォース50の雌ネジ穴62、64よりも下方に形成された締結孔254、255と、にボルト(図示略)に通してナット(図示略)に螺合させることによって、コンデンサーサポートサイド26とリーンフォース50とをボルト締結している。
【0042】
なお、コンデンサーサポートアッパー22、コンデンサーサポートサイド27、フェンダーサポートアッパー42、リーンフォース51との重ね合わせ部分は、上述した構成及びボルト締結と、左右対称である以外は同様であるので説明を省略する。
【0043】
つぎに、エプロンアッパーメンバ12、13の構造と締結構造について説明する。なお、エプロンアッパーメンバ12の締結構造も二つのフレーム部材のボルト締結であるので、従来と同様のボルト締結構造である。また、エプロンアッパーメンバ12とエプロンアッパーメンバ13とは、車幅方向に左右対称であるので、代表してエプロンアッパーメンバ12についてのみ図示及び説明する。
【0044】
図2と図5とに示すように、エプロンアッパーメンバ12は、車体前後方向を長手方向とする本体部14と、本体部14とは分割して成形されると共に、本体部14の前端側に一体的に結合された前端部16とを有している。そして、前端部16の後端側に、本体部34の前端側が挿入されている。
【0045】
エプロンアッパーメンバ12の前端部16の車体前方側下端部には、車幅方向外側へ向けて延出されたフランジ部16Aが設けられている。このフランジ部16Aには、締結孔222が鉛直方向に貫通形成されており、この締結孔222と、フェンダーサポートアッパー32の上壁面32Aに鉛直方向に貫通形成された締結孔224及びコンデンサーサポートアッパー22の上壁面22Aに鉛直方向に貫通形成された締結孔226と、にボルト221を通し、ナット(図示略)に螺合させることで、エプロンアッパーメンバ12とフェンダーサポートアッパー32及びコンデンサーサポートアッパー22とが締結されている。
【0046】
また、前端部166の車幅方向内側には、断面略矩形の筒状のフードブラケット部18が一体に並設されている。フードブラケット部18の前方側下端部には、車幅方向内側へ向けて延出されたフランジ部18Aが設けられている。このフランジ部18Aには締結孔232が鉛直方向に貫通形成されており、この締結孔232と、フェンダーサポートアッパー32に鉛直方向に貫通形成された締結孔234と、にボルト231を通しナット(図示略)に螺合させることで、エプロンアッパーメンバ12とフェンダーサポートアッパー32とが締結されている。
【0047】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0048】
耐久強度上、最も重要であるコンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26の結合部分をリーンフォース50で補強すると共に、四つのフレーム部材の重なり部分102、104をボルト締結している。しかも、大型でなく小型の補強部材であるリーンフォース50に中実構造部分52Aを設け、ここに雌ネジ穴62、64を設けることで、ナットを用いることなく重ね合わせ部分102、104をボルト78、88で締結している。このため、ボルト78、88を締め込んでも、かしめナットのように、共周りしない。
【0049】
このように、コンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の四つのフレーム部材を重ね、高締付けトルクで締結しているので剛性が高い。よって、耐久強度が高いボデー構造100となっている。また、締結点数が増えたり大型化したりしていないので、軽量で安価なボデー構造となっている。更に、ボルト78、88を挿入してリーンフォース50の雌ネジ穴62、64に螺合させることでボルト締結できるので、組付け作業性が良い。
【0050】
さて、コンデンサーサポート20には、エアコンコンデンサー(図示略)が取り付けられる。また、フェンダーサポート30には、オイルクーラー(図示略)が取り付けられる。
【0051】
そして、走行時には、これらエアコンコンデンサー及びオイルクーラー(重量物)による慣性力によって、コンデンサーサポート20とフェンダーサポート30とに、車体下方への荷重が入力される。また、コンデンサーサポートサイド26には、サスペンションタワー(図示略)からの車体上方への突き上げ力が入力される。
【0052】
このため、例えば、図7(B)に示すように、フェンダーサポートアッパー32が捩れ変形する(矢印Kを参照)。しかし、本実施形態は、上述したように、コンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の四つのフレーム部材が重なった重なり部分102、104は、剛性が高い結合となっているので、捩れ変形が抑えられる。なお、図7(B)は、判りやすくするため、フェンダーサポートアッパー32の捩れ変形を極端に大きく図示している。実際の変形は僅かである。
【0053】
つぎに、本発明を適用した上記実施形態のボデー構造100と、本発明を適用していないボデー構造101とで、結合部分の剛性と耐久強度について比較する。
【0054】
まず、剛性について比較説明する。
【0055】
図8は、本発明を適用していないボデー構造101を示している。具体的には、本発明を適用したボデー構造100におけるコンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の四つの部材をボルト締結している重なり部分102(図7参照)に対応する部分を、コンデンサーサポートアッパー122とコンデンサーサポートサイド126のみを重ねてボルト締結した構造となっている。なお、この部分を重ね合わせ部分103とする。なお、重なり部分104に対応するボデー構造101の重なり部分も上記と同様にコンデンサーサポートアッパー122とコンデンサーサポートサイド126のみを重ねてボルト締結した構造となっている。よって、図示を省略する。また、これらの部分以外は、本発明を適用したボデー構造100と同様の構成となっている。
【0056】
なお、重ね合わせ部分102、103のボルト締結位置を締結位置G1とする。更に、これらの車幅方向外側のコンデンサーサポートアッパー22、122とフェンダーサポートアッパー32、132とのボルト締結位置を締結位置G2とする。
【0057】
本発明を適用していないボデー構造101は、締結位置G1及び締結位置G2の両方ともに、従来の二つのフレーム部材をボルト締結した締結構造であるので剛性が高くない。更に、フェンダーサポートアッパー132は締結位置G1でボルト締結されていない(本発明を適用していないので、フェンダーサポートアッパー132を締結位置G1に重ねてボルト締結することはできない)。よって、図8(B)に示すように、締結位置G1と締結位置G2との二点間に折れ変形が発生する。このためフェンダーサポートアッパー132の変形量が大きい。なお、図8(B)も図7(B)と同様、判りやすくするため、フェンダーサポートアッパー132の捩れ変形を極端に大きく図示している。
【0058】
これに対して、本発明を適用しているボデー構造100は、締結位置G1において本発明が適用され、四つのフレーム部材が高締付けトルクでボルト締結されているので、剛性が高い。また、フェンダーサポートアッパー32は、締結位置G2に加え、高締付けトルクでボルト締結されている締結位置G1でも締結されている。つまり、締結位置G1と締結位置G2との二点で有効に結合されている。よって、図7(B)に示すように、フェンダーサポートアッパー32の変形量が低減する(図7(B)と図8(B)とを比較参照)。つまり、本発明を適用することによって、剛性が高くなっていることが判る。
【0059】
つぎに、耐久強度について説明する。
【0060】
図9と図10は、応力分布を示している。なお、図中では、発生応力の高い箇所ほど濃度の濃いドットが付与されている。
【0061】
本発明を適用していないボデー構造101は、上述したように本発明を適用したボデー構造100と比較して、剛性が低いので、図10に示すように、結合部分H1と結合部分H2とに高応力が発生している。
【0062】
これに対して、本発明を適用しているボデー構造100は、締結位置G1において四つのフレーム部材が高締付けトルクでボルト締結されていることによって、剛性が高くなっているので、結合部分H1の応力が大幅に低減している。また、結合部分H2の応力も大幅に低減している。つまり、本発明を適用すると耐久強度が大幅に向上することが判る。
【0063】
このように図8から図10で示したように、本発明を適用すると、剛性が向上することによって応力を低減でき、その結果、耐久強度が大幅に向上する。
【0064】
つぎに、リーンフォース50の変形例について説明する。
【0065】
まず、第一の変形例について説明する。
【0066】
図11に示すように、第一の変形例のリーンフォース350は、アルミニウム合金を鋳造することよって作られている。そして、上部352に肉厚を厚くした肉厚部352Aを設け、雌ネジ穴362、364を形成している。なお、本変形例のように、上部352の雌ネジ穴362、364が形成されていない部分(肉厚部352A以外の部分)を中空構造部352Bとすることで軽量化できる。なお、リーンフォース350は、コンデンサーサポートサイド26の板厚分、幅狭となった幅狭部350Bが形成されている。
【0067】
更に、本変形例では、下部354において、締結孔254、255(図6参照)に対応する部分にも肉厚を厚くした肉厚部354Aを設け、雌ネジ穴366、368を形成している。なお、肉厚部354Aを設けずに、締結孔254、255(図6参照)と同様に貫通形成された締結孔としても良い。
【0068】
なお、図示は省略するが、図6に示すリーンフォース50においても、上部52の雌ネジ穴62、64が形成されていない部分を中空構造としても良い。
【0069】
つぎに、第二の変形例について説明する。
【0070】
図12に示すように、第二の変形例のリーンフォース450は、アルミ押し出し部材451に樹脂部材460を接着接合することで構成されている。樹脂部材460は、リーンフォース450の上部452の車幅方向外側半分を構成している。そして、樹脂部材460には、雌ネジ穴462、464が形成されている鉄やアルミなどからなる金属製のインサート部材472がインサートされている。なお、本変形例では、雌ネジ穴62と雌ネジ穴64とは、同じ高さに配置されている。また、これに合わせた位置にコンデンサーサポートアッパー、フェンダーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイドに貫通孔が形成される。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0072】
例えば、変形例を含む上記のリーンフォースの雌ネジ穴は、例えば、図13(A)に示すように、穴底62Aがある雌ネジ穴62となっているが、これに限定されない。図13(B)に示すように、耐久強度などに問題がない雌ネジ穴の深さ(図13(B)のL)が確保されていれば、穴底62Aがない貫通形成された雌ネジ穴63であっても良い。
【0073】
また、例えば、上記実施形態では、コンデンサーサポートアッパー22、フェンダーサポートアッパー32、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の四つの部材が重なった重なり部分102、104に本発明を適用したが、これに限定されない。
【0074】
例えば、フェンダーサポート30(フェンダーサポートアッパー32)を有しない構成であっても良い。この場合、コンデンサーサポートアッパー22、コンデンサーサポートサイド26、リーンフォース50の三つの部材が重なった重なり部分に本発明を適用する。
【0075】
更に、車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材が重ね合わされた、その他の重ね合わせ部分にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のボデー構造を適用した自動車の車体の前部を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明を適用したコンデンサーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイド、フェンダーサポートアッパー、及びリーンフォースとの重ね合わせ部分を示す斜視図である。
【図3】図2に示す重ね合わせ部分の縦断面図である。
【図4】図2及び図3におけるA−A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【図5】図2の分解斜視図である。
【図6】リーンフォースを示し、(A)は車体前方から正面視した図であり、(B)は(A)のB−B断面の断面図である。
【図7】本発明を適用したコンデンサーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイド、フェンダーサポートアッパー、及びリーンフォースとの重ね合わせ部分を示し、(A)は変形前の図であり、(B)は変形後の図である
【図8】本発明を適用していないコンデンサーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイド、フェンダーサポートアッパー、及びリーンフォースとの重ね合わせ部分を示し、(A)は変形前の図であり、(B)は変形後の図である
【図9】本発明を適用したコンデンサーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイド、フェンダーサポートアッパー、及びリーンフォースとの重ね合わせ部分の応力分布を示している。
【図10】本発明を適用していないコンデンサーサポートアッパー、コンデンサーサポートサイド、フェンダーサポートアッパー、及びリーンフォースとの重ね合わせ部分の応力分布を示している。
【図11】第一の変形例のリーンフォースを示し、(A)は車体前方から正面視した図であり、(B)は(A)のB−B断面の断面図である。
【図12】第二の変形例のリーンフォースを示し、(A)は車体前方から正面視した図であり、(B)は(A)のB−B断面の断面図である。
【図13】(A)穴底がある雌ネジ穴を示し、(B)穴底がなく貫通穴となった雌ネジ穴を示す図である。
【図14】二つのフレーム部材をボルトとポップナットとで締結して結合した図ある。
【符号の説明】
【0077】
10 車体
22 コンデンサーサポートアッパー(第一フレーム部材)
32 フェンダーサポートアッパー(第二フレーム部材)
26 コンデンサーサポートサイド(第四フレーム部材)
50 リーンフォース(第三フレーム部材)
62 雌ネジ穴
64 雌ネジ穴
72 貫通孔
74 貫通孔
76 貫通孔
82 貫通孔
84 貫通孔
86 貫通孔
100 ボデー構造
102 重ね合わせ部分
104 重ね合わせ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のボデーを構成する少なくとも三つ以上のフレーム部材を結合したボデー構造であって、
少なくとも三つ以上の前記フレーム部材が重ね合わされた重ね合わせ部分において、前記重ね合わせ部分の重ね合わせ方向の一方側に配設された前記フレーム部材に雌ネジ穴を設けると共に、前記一方側に配設されたフレーム部材よりも重ね合わせ方向の他方側に配設された複数の前記フレーム部材に前記雌ネジ穴に対応する位置に貫通孔を設け、
他方側に配設された前記フレーム部材の前記貫通孔からボルトを差し込み、前記一方側に配設されたフレーム部材に設けられた前記雌ネジ穴に螺合させることにより、前記三つ以上のフレーム部材をボルト締結したことを特徴するボデー構造。
【請求項2】
前記三つ以上のフレーム部材は、
車幅方向を長手方向として配設された第一フレーム部材と、
前記第一フレーム部材と長手方向の端部同士が重なるように、車体上下方向を長手方向として配設された第二フレーム部材と、
前記第一フレーム部材の端部と前記第二フレーム部材の端部との重ね合わせ部分の内側に重なるように、該第一フレームと該第二フレームとで構成された角部に配設された第三フレーム部材と、
を有し、
前記第三フレーム部材に前記雌ネジ穴を設けると共に、前記第一フレーム部材及び前記第二フレーム部材の該雌ネジ穴に対応する位置に、前記貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のボデー構造。
【請求項3】
前記三つ以上のフレーム部材は、前記第一フレーム部材、前記第二フレーム部材、前記第三フレーム部材に加え、
前記第一フレーム部材の端部、及び前記第二フレーム部材の端部、第三フレーム部材の重ね合わせ部分に、長手方向の端部が重なるように、車幅方向を長手方向として配設され、前記雌ネジ穴に対応する位置に前記貫通孔が設けられた第四フレーム部材を有していることを特徴とする請求項2に記載のボデー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−94296(P2008−94296A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279799(P2006−279799)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】