説明

ボトムドロス汲み上げ装置およびボトムドロス汲み上げ具

【課題】溶融亜鉛めっきポット内底部に溜まったボトムドロスを安全かつ確実に掻き取って回収できる新規なボトムドロス汲み上げ装置およびこれに適用するボトムドロス汲み上げ具の提供。
【解決手段】ボトムドロスDを汲み上げるボトムドロス汲み上げ具10を備えたボトムドロス汲み上げ装置100において、前記ボトムドロス汲み上げ具10の下端の掻取部12底部に、これより下方に突出する突起12dを備える。これによって、そのボトムドロス汲み上げ具10を溶融亜鉛めっきポットP内に没入させたときにその掻取部12の先端がその底部に溜まったボトムドロスD内に食い込むような姿勢になるため、そのボトムドロスDを確実かつ効率的に掻き取って回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板や鋼管などの金属素材を錆などの腐食から長期に亘って保護するための溶融亜鉛めっき処理技術に係り、特に、その溶融亜鉛めっきポットの底部に溜まったボトムドロスを汲み上げて回収するための汲み上げ装置およびこれに適用するボトムドロス汲み上げ具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
係る従来の溶融亜鉛めっき処理は、溶融亜鉛が溜められた溶融亜鉛めっきポット内に鋼板や鋼管などの被処理金属素材を浸漬してその表面に亜鉛の被膜を付着形成するようにしたものであるが、この処理に際しては、その被処理金属素材などから溶け出した鉄分(Fe)がその溶融亜鉛(Zn)と反応してFeZnを主成分とする化合物が発生し、これがボトムドロスとしてポット内底部に溜まって徐々に蓄積してくる。
【0003】
そして、このボトムドロスが亜鉛めっき鋼板の表面に付着してしまうと、いわゆる「ドロスぶつ」と呼ばれる不良品となってしまい、製品として出荷することができなくなってしまうため、従来では定期的にこのボトムドロスをポンプなどによって汲み上げて回収する作業を行っている。
しかしながら、このポット内底部に蓄積したボトムドロスは、所定時間が経過するとFe−Znの合金塊となってしまい、そうなるとポンプでは容易に回収することができない。
【0004】
そのため、従来では、例えば図5に示すようにドロススコップSなどと称される工具をそのポットP上に設けられた天井クレーンのフックFに吊り下げ、そのドロススコップSをポットP内に没入し、その底部に設地させた状態でそのドロススコップSをその底部に沿って移動させることによってポットP内底部に蓄積したボトムドロスDやその金属塊を掻き取って回収するようにしている。
【0005】
また、以下の特許文献1や2では、溶融亜鉛めっきポットの長手方向(X軸方向)に移動する機構を備えた親台車上にそのポットの幅方向(Y軸方向)に移動する子台車を設けると共に、さらにその子台車上に上下方向(Z軸)に移動するバケットを備えたドロス回収装置をその溶融亜鉛めっきポット上に設置し、このドロス回収装置によってポット内底部に蓄積したボトムドロスを掘削し、回収して払い出すようにしている。
【特許文献1】特開平10−60611号公報
【特許文献2】特開平10−121216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようなドロススコップSを用いてポットP内底部に蓄積したボトムドロスDやその金属塊を掻き取って回収する場合、そのドロススコップSで掻き取ったボトムドロスDをさらにそのドロススコップSからそのポットPの上デッキなどに設置したドロス回収バッグなどに移し替える必要がある。
しかしながら、この移し替え作業は、スコップなどの専用の掻き出し工具を手にした2〜3人程度の作業員の手作業によって行われているため、その作業は容易でない上に、高温となっている溶融金属の飛散による火傷などのおそれもあり、安全上の配慮が必要となっている。
【0007】
さらに、前述したようなボトムドロス汲み上げ具の構造では、そのドロススコップSの先端がボトムドロスDの表層部に沿って滑ってしまい、ポットP内底部に溜まったボトムドロスDやその金属塊を確実に掻き取ることができないことがあった。
一方、前述した特許文献1や2に示すような方法では、別個新たに専用のドロス回収装置を用意する必要があるため、多大な設備費用がかかるといった問題がある。
【0008】
また、既存の溶融亜鉛めっき処理設備のポット周辺には、安全柵や回収バッグなどが設置されていてスペース的な余裕がないため、前述したような大型のドロス回収装置を既存の溶融亜鉛めっき処理設備に対して増設することができないことが多い。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その主な目的は、溶融亜鉛めっきポット内底部に溜まったボトムドロスやその金属塊を安全かつ確実に掻き取って回収する(汲み上げる)ことができる新規なボトムドロス汲み上げ装置およびこれに適用するボトムドロス汲み上げ具を提供するものである。
【0009】
また、他の目的は、既存の溶融亜鉛めっき処理設備にも容易に適用することができる新規なボトムドロス汲み上げ装置およびこれに適用するボトムドロス汲み上げ具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1の発明は、
溶融亜鉛めっきポット内に没入されてその底部に溜まったボトムドロスを汲み上げるボトムドロス汲み上げ具と、当該ボトムドロス汲み上げ具を昇降自在に吊下して移動する天井クレーンと、前記ボトムドロス汲み上げ具で汲み上げたボトムドロスを回収するドロス回収容器とを有するボトムドロス汲み上げ装置において、
前記ボトムドロス汲み上げ具は、前記溶融亜鉛めっきポット上の天井クレーンからほぼ垂直に吊下される垂直アームと、当該垂直アームの下端部からほぼ水平方向に延びる掻取部と、当該掻取部または前記垂直アームの下端部側から前記溶融亜鉛めっきポット上に延びる引張索とを有し、かつ、前記掻取部の底部に、これより下方に突出する突起を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置である。
【0011】
また、請求項2の発明は、
請求項1に記載のボトムドロス汲み上げ装置において、前記ドロス回収容器の近傍に、前記ボトムドロス汲み上げ具の掻取部底部の突起と係合する支柱を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置である。
また、請求項3の発明は、
請求項2に記載のボトムドロス汲み上げ装置において、前記ボトムドロス汲み上げ具の垂直アームは、前記天井クレーン側に吊下される上部アームと、当該上部アームの下端に連結される下部アームとからなると共に、当該下部アームは、前記上部アームに対して揺動自在に連結されていることを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置である。
【0012】
一方、請求項4の発明は、
溶融亜鉛めっきポット内に没入されてその底部に溜まったボトムドロスを汲み上げる汲み上げ具において、前記溶融亜鉛めっき上の天井クレーンからほぼ垂直に吊下される垂直アームと、当該垂直アームの下端部からほぼ水平方向に延びる掻取部と、当該掻取部または前記垂直アームの下端部側から前記溶融亜鉛めっきポット上に延びる引張索とを有し、かつ、前記掻取部の底部に、これより下方に突出する突起を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ具である。
【0013】
また、請求項5の発明は、
請求項4に記載のボトムドロス汲み上げ具において、前記垂直アームは、前記天井クレーン側に吊下される上部アームと、当該上部アームの下端に連結される下部アームとからなると共に、当該下部アームは、前記上部アームに対して揺動自在に連結されていることを特徴とするボトムドロス汲み上げ具である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、要するにボトムドロス汲み上げ具の掻取部の底部に、これより下方に突出する突起を備えたことから、このボトムドロス汲み上げ具を天井クレーンで吊下して溶融亜鉛めっきポット内に没入した際に、その突起がその底部に当たることにより、その掻取部全体が傾いてその先端がその底部に溜まったボトムドロス内に食い込むような姿勢になる。
【0015】
従って、この状態でその掻取部または前記垂直アームの下端部側に設けられた引張索を引っ張って溶融亜鉛めっきポット内底部に沿って移動させれば、そのボトムドロスや金属塊を確実かつ効率的に掻取部内に掻き取ってドロス回収容器内に回収(汲み上げる)することができる。
また、天井クレーンやドロス回収容器などのような既存の回収設備をそのまま用いることができるため、別個新たに専用にドロス回収装置を用意する場合に比べて極めて安価に実施することができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、前記ドロス回収容器の近傍に、前記ボトムドロス汲み上げ具の掻取部底部の突起と係合する支柱を備えたことから、前記のようにしてボトムドロスを汲み上げたボトムドロス汲み上げ具を天井クレーンによってそのドロス回収容器の近傍まで搬送した後、その支柱にその掻取部底部の突起と係合させた状態でさらに前記ドロス回収容器側に移動させると、このボトムドロス汲み上げ具全体がその係合部を軸として前記ドロス回収容器側に回動するようになる。
【0017】
これによって、その掻取部内に掻き取られたボトムドロスや金属塊がその掻取部の先端から滑り落ちるため、掻き取ったボトムドロスや金属塊の全量を一気にドロス回収容器内に回収(投入)することができる。
従って、従来の人手による移し替え作業が不要となるため、大幅な労力の軽減が達成できると共に作業の安全性を確保することができる。
【0018】
また、請求項3の発明によれば、前記ボトムドロス汲み上げ具の垂直アームを、上部アームと下部アームとから構成すると共に、その下部アームを上部アームに対して揺動自在に連結したため、前記のようにして掻き取ったボトムドロスや金属塊をより簡単かつ確実にそのドロス回収容器内に回収(投入)することができる。すなわち、前記のように掻き取ったボトムドロスや金属塊をそのドロス回収容器近傍に設けられた支柱を利用してそのドロス回収容器内に回収するに際して、そのボトムドロス汲み上げ具の掻取部底部の突起をその支柱に係合した状態でそのままそのボトムドロス汲み上げ具を下ろすと、このボトムドロス汲み上げ具のうち、その垂直アームの下部アームがその上部アームに対してその連結部を軸として傾き、その下部アームとその下端に設けられた掻取部のみがその係合部を軸として前記ドロス回収容器側に回動するようになる。これによって、簡単な天井クレーンの操作によってその掻取部内に掻き取られたボトムドロスや金属塊を容易かつ確実にドロス回収容器内に回収(投入)することができる。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様な作用により、その溶融亜鉛めっきポット内に溜まったボトムドロスや金属塊を確実かつ効率的に掻き取ってドロス回収容器内に汲み上げて回収することができる。
また、請求項5の発明によれば、請求項3の発明と同様な作用により、簡単な操作によって掻き取ったボトムドロスや金属塊を容易かつ確実にドロス回収容器内に回収(投入)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係るボトムドロス汲み上げ装置100の実施の一形態を示したものである。
図示するようにこのボトムドロス汲み上げ装置100は、溶融亜鉛めっきポットP内に没入されてその底部に溜まったボトムドロスDや金属塊などを汲み上げるボトムドロス汲み上げ具10と、このボトムドロス汲み上げ具10を昇降自在に吊下して移動する天井クレーン20と、このボトムドロス汲み上げ具10で汲み上げたボトムドロスを回収するドロス回収容器30とから主に構成されている。
【0021】
先ず、このボトムドロス汲み上げ具10は、この天井クレーン20からほぼ垂直に吊下される垂直アーム11と、この垂直アーム11の下端部に設けられた掻取部12と、この垂直アーム11の下端部側から前記溶融亜鉛めっきポットP上に延びる引張索13とから構成されている。
【0022】
この垂直アーム11は、図2に示すようにその天井クレーン20側に吊下される上部アーム11aと、この上部アーム11aの下端に連結される下部アーム11bとの2つの部材から構成されており、この下部アーム11bがその上部アーム11aに対して揺動自在に連結されている。すなわち、図2に示すように、この下部アーム11bの下端と上部アーム11aの上端とは連結ピン11cによってピン結合されており、この連結ピン11cを軸として下部アーム11bが溶融亜鉛めっきポットPの長手方向に揺動(回動)自在となっている。なお、後述するようにこの上部アーム11aは吊下げ用ピン11dを介して天井クレーン20のフックFに吊り上げられるようになっており、この上部アーム11a側もこのフックFと共に、あるいはフックFに対して溶融亜鉛めっきポットPの長手方向あるいは幅方向に揺動可能になっている。
【0023】
掻取部12は、この垂直アーム11を構成する下部アーム11bの下端から前記溶融亜鉛めっきポットP上のドロス回収容器30側に向かって水平に延びる底板12aと、この底板12aの両側からそれぞれ垂直に起立するように設けられた左右一対の側板12b、12bと、この底板12aの背面側に位置する背板12cとから構成された、いわゆる塵取り形状に形成されており、その下部アーム11bの下端部に連結された補強材11dとその両側から斜めに支持する一対の筋交い材11e、11eとによって容易に外れたりしないようにその下部アーム11bの下端部に強固に取り付けられている。
【0024】
また、さらに図3に示すように、この掻取部12の底面側であってその背面側(背板12c側)には、それぞれ板片状をした4つの突起12d、12d、12d、12dがそれぞれ平行に設けられている。
引張索13は、例えば金属チェーンや金属ワイヤなどのような高い引張強度と耐熱性などを備えたものから構成されており、その一端が垂直アーム11の下端側の締結片11fに締結されていると共に、他端側がこれより溶融亜鉛めっきポットP上に延びて作業員などによって把持可能となっている。
【0025】
一方、天井クレーン20は、溶融亜鉛めっきポットPの長手方向に沿って延びるレール部21と、このレール部21に沿って走行する台車22と、前記ボトムドロス汲み上げ具10を吊り下げるためのフックFの吊下索(金属チェーンなど)23を巻き取り繰り出すための巻取機24およびこれらを操作するためのコントローラ(図示せず)から構成されており、コントローラを操作する操作員によってそのフックFに吊り下げられたボトムドロス汲み上げ具10を任意に昇降したり、水平移動させることで後述するようなボトムドロス汲み上げ作業を行うようになっている。
【0026】
他方、ドロス回収容器30は、図1に示すようにボトムドロス汲み上げ具10で汲み上げた高温のボトムドロスや金属塊を溜めておくための耐熱性の容器であり、その天井クレーン20の走行路の直下であって、溶融亜鉛めっきポットP近傍の上デッキ31上にトレー状の回収容器置台32を介して設置されるようになっている。
また、図示するようにこのドロス回収容器30の近傍であってその溶融亜鉛めっきポットP側には、前記ボトムドロス汲み上げ具10の掻取部12底部の突起12d、12d、12d、12dと係合する支柱33が設けられている。
【0027】
この支柱33は、このドロス回収容器30の上縁よりもやや高い位置であってその上縁と平行(図中紙面方向)に延びる横梁材33aと、この横梁材33aを前記回収容器置台32側から支持する支持脚33bとから構成されており、後述するようにこの横梁材33aに前記ボトムドロス汲み上げ具10の掻取部12底部の突起12d、12d、12d、12dを係合させることで、掻き取ったボトムドロスDや金属塊をより簡単かつ確実にそのドロス回収容器30内に回収(投入)できるようになっている。
なお、図1中、符号40は、溶融亜鉛めっきポットPの周囲に沿って設置された手摺柵である。
【0028】
次に、このような構成をした本発明に係るボトムドロス汲み上げ装置100による溶融亜鉛めっきポットP内底部のボトムドロス汲み上げ作業工程の一例を図4を主に参照しながら説明する。
図示するように溶融亜鉛めっきポットP内底部に蓄積したボトムドロスDやその金属塊を掻き出して回収するためには、先ず、同図(a)に示すように、天井クレーン20を操作してボトムドロス汲み上げ具10を溶融亜鉛めっきポットPの長手方向端部上方に位置させてから、そのままそのボトムドロス汲み上げ具10を降下させてその下端の掻取部12を溶融亜鉛めっき中に没入する。
【0029】
すると、同図(b)に示すように、その掻取部12底面側に設けられた突起12dがボトムドロスDの底部に達して、その突起12dがその底部に当たることにより、その掻取部12全体がその先端側(ドロス回収容器30方向)に傾き、その掻取部12の先端がその底部に溜まったボトムドロスD内に食い込むような姿勢になる。
そして、このような状態になったならば、天井クレーン20を駆動してそのボトムドロス汲み上げ具10をその姿勢を保ったままその先端側(ドロス回収容器30方向)にゆっくりと移動させると共に、作業員がその引張索13をポットP上から引っ張ってその掻取部12をポットP内底部に沿って移動させる。
【0030】
これによって、そのポットP内底部に溜まったボトムドロスDや金属塊がその掻取部12の底板12a先端によって掻き上げられるように分離するため、そのボトムドロスDや金属塊を確実かつ効率的にその掻取部12内に掻き取ることができる。
その後、このようにしてそのポットP内底部に溜まったボトムドロスDや金属塊を掻取部12内に掻き取ったならば、同図(c)、(d)に示すように天井クレーン20のフックFを上昇させてそのボトムドロス汲み上げ具10をポットPの上デッキ31側に搬送させる。なお、このボトムドロス汲み上げ具10の上昇および搬送に際しては図示するようにその垂直アーム11が垂直状態に戻ると共に掻取部12が水平状態に戻るため、掻き取ったボトムドロスDや金属塊は掻取部12から殆どこぼれ落ちることがない。
【0031】
そして、このようにしてボトムドロス汲み上げ具10をドロス回収容器30まで搬送したならば、同図(e)に示すようにその掻取部12底面側に設けられた突起12dを支柱33の横梁材33aに引っ掛けた後、天井クレーン20のフックFを所定量だけ垂直に降下させる。
すると、図示するようにこの掻取部12全体が垂直アーム11の下部アーム11bと共にその横梁材33aを軸としてその先端側に回動し、これによって掻取部12内のボトムドロスDや金属塊がその掻取部12の先端から一気に滑り落ちてその全量がドロス回収容器30内に回収(投入)されることになる。
【0032】
これによって、従来の人手によって行われていた掻取部12内からドロス回収容器30内へのボトムドロスDや金属塊の移し替え作業が不要となるため、大幅な労力の軽減が達成できると共に作業の安全性を確保することができる。また、その移し替え時間も飛躍的に短縮できる。
そして、このようにしてドロス回収容器30内へのボトムドロスDや金属塊の回収がなされたならば、天井クレーン20を操作してこのボトムドロス汲み上げ具10を再び元の位置(同図(a))まで戻してから同様な操作を何度か繰り返すことで溶融亜鉛めっきポットP内底部に溜まったボトムドロスDや金属塊の殆どを安全かつ効率的に汲み上げて回収することができる。
【0033】
このように本発明によれば、上述したように溶融亜鉛めっきポットP内に溜まったボトムドロスDや金属塊を確実かつ効率的に掻き取ってドロス回収容器30内に効率的に回収できるだけでなく、天井クレーン20やドロス回収容器30などのような既存の設備をそのまま用いることができるため、別個新たに専用のドロス回収装置を購入・設置などする場合に比べて極めて安価に実施することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、ボトムドロス汲み上げ具10の掻取部12底面側に板片状をした4つの突起12d、12d、12d、12dをそれぞれ平行に設けた例で説明したが、この突起12dの数は本実施の形態に限定されるものでなく、少なくとも1つ以上あれば良い。また、その形状も支柱33の横梁材33aに容易に係合可能なものであれば本実施の形態に限定されるものでなく、例えばピン状や鉤形状などのその他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るボトムドロス汲み上げ装置100の実施の一形態を示す全体図である。
【図2】本発明に係るボトムドロス汲み上げ具10の実施の一形態を示す上面側斜視図である。
【図3】本発明に係るボトムドロス汲み上げ具10の実施の一形態を示す底面側斜視図である。
【図4】本発明に係るボトムドロス汲み上げ装置100の作用の一例を示す全体図である。
【図5】従来のボトムドロス汲み上げ方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
100…ボトムドロス汲み上げ装置
10…ボトムドロス汲み上げ具
11…垂直アーム
11a…上部アーム
11b…下部アーム
11c…連結ピン
12…掻取部
12d…突起
13…引張索
20…天井クレーン
30…ドロス回収容器
33…支柱
D…ボトムドロス(およびその金属塊など)
F…フック
P…溶融亜鉛めっきポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛めっきポット内に没入されてその底部に溜まったボトムドロスを汲み上げるボトムドロス汲み上げ具と、当該ボトムドロス汲み上げ具を昇降自在に吊下して移動する天井クレーンと、前記ボトムドロス汲み上げ具で汲み上げたボトムドロスを回収するドロス回収容器とを有するボトムドロス汲み上げ装置において、
前記ボトムドロス汲み上げ具は、前記溶融亜鉛めっきポット上の天井クレーンからほぼ垂直に吊下される垂直アームと、当該垂直アームの下端部からほぼ水平方向に延びる掻取部と、当該掻取部または前記垂直アームの下端部側から前記溶融亜鉛めっきポット上に延びる引張索とを有し、かつ、前記掻取部の底部に、これより下方に突出する突起を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボトムドロス汲み上げ装置において、
前記ドロス回収容器の近傍に、前記ボトムドロス汲み上げ具の掻取部底部の突起と係合する支柱を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボトムドロス汲み上げ装置において、
前記ボトムドロス汲み上げ具の垂直アームは、前記天井クレーン側に吊下される上部アームと、当該上部アームの下端に連結される下部アームとからなると共に、当該下部アームは、前記上部アームに対して揺動自在に連結されていることを特徴とするボトムドロス汲み上げ装置。
【請求項4】
溶融亜鉛めっきポット内に没入されてその底部に溜まったボトムドロスを汲み上げる汲み上げ具において、
前記溶融亜鉛めっきポット上の天井クレーンからほぼ垂直に吊下される垂直アームと、当該垂直アームの下端部からほぼ水平方向に延びる掻取部と、当該掻取部または前記垂直アームの下端部側から前記溶融亜鉛めっきポット上に延びる引張索とを有し、かつ、前記掻取部の底部に、これより下方に突出する突起を備えたことを特徴とするボトムドロス汲み上げ具。
【請求項5】
請求項4に記載のボトムドロス汲み上げ具において、
前記垂直アームは、前記天井クレーン側に吊下される上部アームと、当該上部アームの下端に連結される下部アームとからなると共に、当該下部アームは、前記上部アームに対して揺動自在に連結されていることを特徴とするボトムドロス汲み上げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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