説明

ボトル

【課題】ボトルの全高に対する接地部の接地径の比を低く抑えても、転倒を抑制すること。
【解決手段】ボトル10では、底部14が、ボトル軸O上に位置する中央壁部15と、該中央壁部15の外周縁と胴部とを連結する連結周壁部16と、を備え、連結周壁部16には、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦凹条部17が形成され、連結周壁部16において周方向に隣り合う縦凹条部17同士の間に位置する各部分には、中央壁部15よりもボトル軸O方向の外側に向けて突出する脚部18が形成され、該脚部18には、周方向に延在する接地部22が形成され、複数の接地部22は、底面視において、周方向の全長にわたって間欠的に配置され、当該ボトル10の全高に対する接地部22の接地径Dの比が0.230以下とされ、底面視において、それぞれの接地部22がなすボトル軸Oを中心とした中心角αの合計角度は、60°以上180°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、筒状の口部、肩部および胴部と、有底筒状の底部と、が合成樹脂材料で一体に形成されたボトルが知られている。前記底部は、ボトル軸上に位置する中央壁部と、該中央壁部の外周縁と胴部とを連結する連結周壁部と、を備えている。連結周壁部には、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦凹条部が形成されており、該連結周壁部において周方向に隣り合う縦凹条部同士の間に位置する各部分には、中央壁部よりもボトル軸方向の外側に向けて突出する脚部が形成されている。脚部には、周方向に延在する接地部が形成され、複数の接地部は、底部をボトル軸方向の外側から見た底面視において、周方向の全長にわたって間欠的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3616687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、例えば、ボトルの耐圧性を向上させるために接地部の接地径を小さくしたり、デザインのためにボトルをボトル軸方向に細長い形状にしたり等することにより、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比が低く抑えられた場合、ボトルが正立状態から転倒し易くなるおそれがあった。すると例えば、ボトルに内容物を充填するため、空状態のボトルを充填ラインに連立させて搬送するときに、ボトルが転倒して搬送が停止される等の問題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比を低く抑えても、転倒を抑制することができるボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るボトルは、筒状の口部、肩部および胴部と、有底筒状の底部と、が合成樹脂材料で一体に形成され、前記底部は、ボトル軸上に位置する中央壁部と、該中央壁部の外周縁と前記胴部とを連結する連結周壁部と、を備え、前記連結周壁部には、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦凹条部が形成され、前記連結周壁部において周方向に隣り合う縦凹条部同士の間に位置する各部分には、前記中央壁部よりもボトル軸方向の外側に向けて突出する脚部が形成され、該脚部には、周方向に延在する接地部が形成され、複数の前記接地部は、前記底部をボトル軸方向の外側から見た底面視において、周方向の全長にわたって間欠的に配置され、当該ボトルの全高に対する前記接地部の接地径の比が0.230以下とされたボトルであって、前記底面視において、それぞれの前記接地部がなすボトル軸を中心とした中心角の合計角度は、60°以上180°以下であることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、前記合計角度が、60°以上180°以下であるので、接地径の大きさを抑えつつ、脚部における接地部の周方向に沿った大きさである脚幅を確保することが可能になり、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比を0.230以下に抑えてもボトルの転倒を抑制することができるとともに、当該ボトルの賦形性(成形性)を確保し易くすることができる。
【0008】
すなわち、合計角度の理論値は、下記(1)式で算出される。
【0009】
γ=360−2n・Arccos((2h/D)・tanθ)) ・・・ (1)
γ:合計角度(°)の理論値
n:脚部の数(n≧3)
h:空状態のボトルの重心高さ(mm)
D:接地部の接地径(mm)
θ:転倒角(°)の設計値
【0010】
なお転倒角θとは、水平方向に沿って延在する接地面にボトルを載置して、このボトルの縦凹条部における周方向の中央部が下方を向くように接地面を徐々に傾けていくことでボトルが転倒したときに、前記接地面が水平面に対してなす傾斜角度をいい、この転倒角θの設計値が11°以上であると、ボトルの転倒を効果的に抑制することができる。
【0011】
ここで上記(1)式に基づいて、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比(接地径/全高)が0.230となるボトルにおいて、脚部の数nを5、空状態のボトルの重心高さhを107.5mm、接地部の接地径Dを49.45mm、転倒角θの設計値を11°とした場合における合計角度γの理論値を算出すると、約37°となる。すなわち、このようなボトルにおいて、合計角度γの実際の値を37°以上にすると、理論上はボトルの転倒を抑制することができる。なお、上記空状態のボトルにおける重心のボトル軸方向の位置は、ボトルの全高の1/2の高さ位置となっている。
【0012】
しかしながら、前記合計角度が60°未満である場合、各脚部の脚幅が小さくなり過ぎ、これらの脚部の賦形性を確保することが困難になるおそれがある。
また、前記合計角度が180°よりも大きい場合、各縦凹条部の周方向に沿った大きさが小さくなり過ぎ、これらの縦凹条部の賦形性を確保することが困難になるおそれがある。
【0013】
以上より、前記合計角度が、37°よりも大きい60°以上で、かつ180°以下とすることで、当該ボトルの転倒を抑制することができるとともに、当該ボトルの賦形性を確保し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るボトルによれば、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比を低く抑えても、転倒を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るボトルの正面図である。
【図2】図1に示すボトルの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るボトルを説明する。このボトルには、例えば炭酸飲料等、密封された状態でボトル内圧を上昇させる内容物が充填されてもよく、例えば耐圧用ボトル、耐熱圧用ボトル等として用いてもよい。
図1に示すように、ボトル10は、筒状の口部11、肩部12および胴部13と、有底筒状の底部14と、が合成樹脂材料で一体に形成されており、例えば二軸延伸ブロー成形により形成される。なお前記合成樹脂材料として、例えばポリエチレンテレフタレート等を採用してもよい。
【0017】
ここで口部11、肩部12、胴部13および底部14それぞれの中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿った口部11側を上側、底部14側を下側という。また、ボトル軸Oに直交する方向を径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
口部11の外周面には、図示しないキャップが着脱可能に螺着される雄ネジが形成されている。肩部12は、上側から下側に向かうに従い漸次、拡径しており、肩部12の下端部は、胴部13の上端部と段差なく滑らかに連なっている。胴部13は、円筒状に形成されるとともに、ボトル軸O方向の全長にわたって同径となっており、図示の例では、胴部13がその全長にわたって、当該ボトル10において外径が最も大きい最大径部となっている。
【0019】
図1および図2に示すように、底部14は、ボトル軸O上に位置する中央壁部15と、該中央壁部15の外周縁と胴部13とを連結する連結周壁部16と、を備えている。
中央壁部15の表裏面はそれぞれ、ボトル軸O方向を向くとともに、中央壁部15は、底部14を下側(ボトル軸方向の外側)から見た底面視において円形状に形成されており、図示の例では、中央壁部15はボトル軸Oと同軸に配置されている。
【0020】
連結周壁部16には、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦凹条部17が形成されるとともに、連結周壁部16において周方向で隣り合う縦凹条部17同士の間に位置する各部分には、中央壁部15よりも下側(ボトル軸方向の外側)に向けて突出する脚部18が形成されており、このボトル10の底部は、いわゆるペタロイド形状に形成されている。
縦凹条部17および脚部18はそれぞれ、奇数個ずつ形成されており、図示の例では、5個ずつ形成されている。また複数の縦凹条部17は、互いに同形同大に形成されるとともに、周方向に同等の間隔をあけて配置されている。さらに複数の脚部18は、互いに同形同大に形成されるとともに、周方向に同等の間隔をあけて配置されている。
【0021】
脚部18は、中央壁部15から径方向の外側に向けて延在する内壁部19と、内壁部19における径方向の外端部から上側に向けて延在し上端部が胴部13に連結される外壁部20と、周方向に間隔をあけて配置され内壁部19および外壁部20における周方向の各側端部に連結された一対の側壁部21と、を備えている。
内壁部19の表裏面はそれぞれ、ボトル軸O方向を向いており、内壁部19は、径方向の外側に向かうに従い漸次、下方に向けて延在している。内壁部19は、当該ボトル10の縦断面視において、上方に向けて突となる曲線状をなすように湾曲している。内壁部19における径方向の外端部は、胴部13よりも径方向の内側に位置している。
【0022】
外壁部20の表裏面はそれぞれ、径方向を向いており、外壁部20は、下側から上側に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延在している。外壁部20において内壁部19に連結される下端部は、前記縦断面視において、径方向の外側に向けて突となる曲線状をなすように湾曲している。外壁部20において胴部13に連結される上端部は、胴部13と径方向の位置が同等とされ、胴部13と段差なく滑らかに連なっている。
側壁部21の表裏面はそれぞれ、周方向を向いており、側壁部21の表面は、縦凹条部17を画成する壁面を構成している。
【0023】
また脚部18には、周方向に延在する接地部22が形成されている。接地部22は、脚部18における内壁部19と外壁部20との接続部分とされており、当該脚部18の下端となっている。さらに図2に示すように、複数の接地部22は、前記底面視において、周方向の全長にわたって間欠的に配置されており、ボトル軸Oを中心とする同一の仮想円Rに沿って延在している。
【0024】
なお接地部22は、径方向に沿った大きさが極めて小さく、周方向に沿った各位置で接地面に点接触するような線状に形成されていてもよく、径方向に沿った大きさが確保され、周方向に沿った各位置で接地面に線接触するような面状に形成されていてもよい。また、接地部22が前述のような面状に形成されている場合、接地部22の接地径Dは、例えばボトル軸Oを中心とし、かつ複数の接地部22における径方向の外側の各端縁を通過する仮想円の直径としてもよい。
【0025】
ここで図1および図2に示すように、当該ボトル10の全高Lであるボトル軸O方向に沿った口部11の上端から底部14の下端までの長さに対する接地部22の接地径Dである前記仮想円Rの直径の比、つまりD/Lは0.230以下となっている。
そして本実施形態では、前記底面視において、それぞれの接地部22がなすボトル軸Oを中心とした中心角αの合計角度(図示の例では、5・α)は、60°以上180°以下となっている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るボトル10によれば、前記合計角度が、60°以上180°以下であるので、接地径Dの大きさを抑えつつ、脚部18における接地部22の周方向に沿った大きさである脚幅Wを確保することが可能になり、ボトル10の全高Lに対する接地部22の接地径Dの比を0.230以下のような細身で全高の高いボトル10においても転倒を抑制することができるとともに、当該ボトル10の賦形性(成形性)を確保し易くすることができる。
【0027】
すなわち、合計角度の理論値は、下記(1)式で算出される。
【0028】
γ=360−2n・Arccos((2h/D)・tanθ)) ・・・ (1)
γ:合計角度(°)の理論値
n:脚部の数(n≧3)
h:空状態のボトルの重心高さ(mm)
D:接地部の接地径(mm)
θ:転倒角(°)の設計値
【0029】
なお転倒角θは、水平方向に沿って延在する図示しない接地面にボトル10を載置して、このボトル10の縦凹条部17における周方向の中央部が下方を向くように接地面を徐々に傾けていくことでボトル10が転倒したときに、前記接地面が水平面に対してなす傾斜角度をいい、この転倒角θの設計値が11°以上であると、ボトル10の転倒を効果的に抑制することができる。
【0030】
ここで上記(1)式に基づいて、ボトル10の全高Lに対する接地部22の接地径Dの比(接地径D/全高L)が0.230となるボトル10において、脚部18の数nを5、空状態のボトル10の重心高さhを107.5mm、接地部22の接地径Dを49.45mm、転倒角θの設計値を11°とした場合における合計角度γの理論値を算出すると、約37°となる。すなわち、このようなボトル10において、合計角度γの実際の値を37°以上にすると、理論上はボトル10の転倒を抑制することができる。なお、上記空状態のボトル10における重心のボトル軸O方向の位置は、ボトル10の全高Lの1/2の高さ位置となっている。
【0031】
しかしながら、前記合計角度が60°未満である場合、各脚部18の脚幅Wが小さくなり過ぎ、これらの脚部18の賦形性を確保することが困難になるおそれがある。
また、前記合計角度が180°よりも大きい場合、各縦凹条部17の周方向に沿った大きさが小さくなり過ぎ、これらの縦凹条部17の賦形性を確保することが困難になるおそれがある。
【0032】
以上より、前記合計角度が、37°よりも大きい60°以上で、かつ180°以下とすることで、当該ボトル10の転倒を抑制することができるとともに、当該ボトル10の賦形性を確保し易くすることができる。
【0033】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、縦凹条部17および脚部18はそれぞれ、5個ずつ形成されているものとしたが、3個ずつ以上形成されていればこれに限られない。
さらに前記実施形態では、縦凹条部17および脚部18はそれぞれ、奇数個ずつ形成されているものとしたが、偶数個ずつ形成されていてもよい。
【0034】
また前記実施形態では、胴部13が全長にわたって前記最大径部となっているものとしたが、これに限られず、例えば胴部の上端部または下端部が限定的に前記最大径部となっていてもよい。
【0035】
またボトル10を設計するに際し、例えば、まず脚部18の数n、ボトル10の重心高さhおよび接地部22の接地径Dを設定し、これらの数値を、上記(1)式に代入して合計角度γの理論値を算出し、この理論値に基づいて、合計角度γの実際の値を、60°以上180°以下の範囲内で、かつ理論値以上の値とする等してもよい。
なお、n=5、h=107.5(mm)、D=47.88(mm)、θ=11.0(°)とすると、上記(1)式では、γ=67.9(°)となる。
また、n=5、h=109(mm)、D=47.65(mm)、θ=11.0(°)とすると、上記(1)式では、γ=87.8(°)となる。
また、n=5、h=107.5(mm)、D=47.88(mm)、θ=11.58(°)とすると、上記(1)式では、γ=129.4(°)となる。
また、n=5、h=109(mm)、D=47.65(mm)、θ=11.41(°)とすると、上記(1)式では、γ=134.2(°)となる。
ここで合計角度γの実際の値を、上記(1)式により算出される合計角度γの理論値と同等にしたボトル10では、転倒角θの実際の値が、例えば製造上のばらつき(肉厚)等を起因とし、転倒角θの設計値と異なる場合があり、例えば転倒角θの設計値に比べて、実使用上影響がない程度小さくなる場合などがある。
【0036】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ボトル
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部
15 中央壁部
16 連結周壁部
17 縦凹条部
18 脚部
22 接地部
D 接地径
L 全高
O ボトル軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口部、肩部および胴部と、有底筒状の底部と、が合成樹脂材料で一体に形成され、
前記底部は、ボトル軸上に位置する中央壁部と、該中央壁部の外周縁と前記胴部とを連結する連結周壁部と、を備え、
前記連結周壁部には、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦凹条部が形成され、
前記連結周壁部において周方向に隣り合う縦凹条部同士の間に位置する各部分には、前記中央壁部よりもボトル軸方向の外側に向けて突出する脚部が形成され、
該脚部には、周方向に延在する接地部が形成され、
複数の前記接地部は、前記底部をボトル軸方向の外側から見た底面視において、周方向の全長にわたって間欠的に配置され、
当該ボトルの全高に対する前記接地部の接地径の比が0.230以下とされたボトルであって、
前記底面視において、それぞれの前記接地部がなすボトル軸を中心とした中心角の合計角度は、60°以上180°以下であることを特徴とするボトル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−112395(P2013−112395A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261931(P2011−261931)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】