説明

ボビンもしくは巻管搬送装置

【課題】多数の紡績部位(11)を有する紡績機のボビンもしくは巻管搬送装置(1)であって、該ボビンもしくは巻管搬送装置(1)が搬送路(7)の支持面(29)の上を滑動案内された個別のボビンもしくは巻管保持体(2)並びに該ボビンもしくは巻管保持体(2)を前記搬送路(7)の上で前記紡績部位(11)に沿って搬送するための連行体(3)を備えた搬送手段(8)を有している形式のものにおいて、費用のかかる構成的な処置、駆動装置の出力の増大、摩耗の増加なしに多数の巻管もしくはボビン保持体を搬送できるようにすること。
【解決手段】前記搬送路(7)の前記支持面の上に、耐摩耗性が高くかつ滑り性が高い滑り下敷(20)が配置されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多数の紡績部位を有する紡績機のボビンもしくは巻管搬送装置であって、搬送路の支持面の上を滑動案内された、個別のボビンもしくは巻管保持体並びに紡績部位に沿って搬送路の上でボビンもしくは巻管保持体を搬送するための連行体を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
コップもしくはボビンを紡績機から搬出するため並びに空の巻管を紡績機へ供給するためのボビンもしくは巻管搬送システムは十分公知である。例えばEP0517668A1号とWO90/03460号とにはこのような搬送システムが記載されている。ボビンもしくは巻管保持体は通常はピン往復台(ペッグトレイとも呼ばれる)として構成されている。このピン往復台は支持レールとして構成された搬送路の上を滑動案内されている。つまり、ピン往復台は紡績部位へ向かう運動もしくは紡績部位から遠ざかる運動の間、支持レールの上を滑動する。この場合、支持レールはボビン又は巻管が積載されたピン往復台の重量の少なくとも1部を受容する。
【0003】
搬送手段は例えばベルト、特にスチールベルト、ロープ又はチェーンであって変向手段、特に変向ローラを介して案内されるかもしくは駆動される。搬送路に沿ってピン往復台を移動させる、つまり滑動させる連行体は搬送手段に固定され、これによって動かされる。
【0004】
紡績機の紡績部位の数が増すにつれて搬送路も次第に長く、巻管もしくはボビン保持体の数も次第に大きくなる。したがって搬送手段は多数の巻管もしくはボビン保持体を搬送しなければならない。この場合、構成者は2つの問題に対決する。一方では搬送手段は多数の巻管もしくはボビン保持体により高められた総重量を搬送路に沿って移動させなければならない。他方では、動かされる巻管もしくはボビン保持体の数と共に、搬送路の上での巻管もしくはボビン保持体の滑動案内によって発生する摩擦抵抗も増大する。特に搬送装置を始動する場合の付着摩擦は搬送手段駆動装置を著しく強く負荷する。
【0005】
駆動装置の負荷の増強もしくは過負荷は力伝達部位、例えば駆動輪と搬送ベルトとの間でのスリップを増大し、これに相応して摩滅を増大させる。
【0006】
原則的には前述の問題は出力の大きい駆動装置並びに丈夫な搬送手段によって解決できる。しかし、このようなやり方には相応のコストを伴う搬送システムの構成的な超過作業が必要になる。出力の大きい駆動装置並びに丈夫なコンポーネントは紡績機を付加的に高価にし、しかもエネルギ消費を高め、したがって製作費用の他に運転費用を上昇させる。
【特許文献1】EP0517668A1号明細書
【特許文献2】WO90/03460号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は長い紡績機のためのボビンもしくは巻管搬送システムであって、費用のかかる構成的な処置なしでかつ駆動装置の出力を高めることなしにかつ摩耗を増加することなしに多数の巻管もしくはボビン保持体も搬送できるボビンもしくは巻管搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は搬送路の支持面の上もしくは該支持面の間接的又は直接的上に摩耗強度が高く滑り特性の高い滑り下敷きが配置されていることによって解決された。この滑り下敷は有利にはプラスチックから成っている。
【0009】
ボビンもしくは巻管保持体(ピン往復台)は有利には巻管もしくはボビン又はコップを受容するピンが配置されている滑り体、例えば皿形の滑り体を有している。ボビンもしくは巻管保持体はその滑り体で保持レールの中断されていない滑り面又は互いに接続された複数の滑り面の上を滑動する。各ピン往復台は有利には固有の連行体に受容されかつ案内されると有利である。
【0010】
連行体は搬送手段に固定され、これによって搬送路に沿って動かされ、それぞれこの連行体に配属されたピン往復台に相応の運動を与える位置決め手段である。搬送手段で行なわれる連行体の運動は有利には搬送路に沿って延びる引っ張り手段によって行なわれる。
【0011】
連行体は有利には例えばフォーク形のグリッパの形をした連行部分と基体とを有している。この連行体はモジュール状に前記2つのエレメントから構成されるか又は一体に構成されることができる。さらに連行体はドッフィング過程の間、空の巻管を受容する中間支持ピンを保持していることもできる。
【0012】
連行体は案内を用いて搬送路に沿って案内されていることができる。この案内は例えば支持レールに設けられていることができる。このために連行体の基体は有利には案内部分、例えば滑りシューの形をした案内部分を有している。この案内部分は保持レールにおける単数又は複数の別の案内面と係合して例えばピン往復台の滑り面の下側に位置し、この上を連行体が滑り案内される。
【0013】
連行体は一体に構成されるか又は互いに結合された複数の部分から成っていることができる。連行体と案内部分を有する基体は有利にはプラスチック、特に有利には熱可塑性のプラスチック、特にポリエステル、例えばPBT(Polybutylenterephthalat)又はPET(Polyethlenterephthalat)から成ることができる。
【0014】
連行体は本発明の有利な構成では、その基体を介して所定の間隔で、狭幅面を上下に配置された搬送ベルトに固定されている。この搬送ベルト自体は4つの変向ローラに巻掛けられて案内されて、エンドレスな搬送ベルトを形成する。この搬送ベルトは紡績機械を巡って走行する。少なくとも1つの変向ローラには駆動モータが対応配置されている。この駆動モータはベルトを任意の搬送方向に駆動する。
【0015】
搬送路は有利には金属、特にアルミニウムから成る薄板又は押出し成形体の形をした支持レールである。支持レールはピン往復台のための支持面を構成している。支持面は有利には平らに構成されている。支持面は水平又は傾斜させられて構成されていることができる。この場合、あらゆる傾斜は有利にはドッファに向けられている。
【0016】
支持レールの支持面とピン往復台との間には滑り下敷、特にプラスチックから成る滑り下敷が配置されている。この滑り下敷はピン往復台のための滑り面を形成している。滑り下敷は支持レールに対し横方向及び/又は長手方向に単一のエレメント又は複数のエレメントから成ることができる。滑り下敷は支持レールと、材料及び/又は摩擦及び/又は形状接続で結合されていることができる。
【0017】
滑り下敷は有利には支持レールの支持面の上に載着された面状のカバーとして存在している。有利な構成では前記カバーは支持レールの平らな支持面の上に固定されたベルトである。前記ベルトは側部に、長手方向に延びる曲げ区分を有している。この曲げ区分は支持レールにおける側方の案内条片を有利には形状接続で取囲む。このような形式でベルトは支持レールの上に固定されている。曲げ区分は有利にはベルトに一体である構成部分である。又、ベルトは支持レールの支持面の上に位置し、側方で別個のクランプ、例えば金属又はプラスチックから成るクランプで支持レールの上に保持される完全に平らな成形体としても存在することができる。
【0018】
又、ベルトは長手方向に延びる成形部を有し、この成形部が支持レールに固定するために支持レールの支持面の溝、特にアンダカットされた溝内にプレス嵌めされることができる。成形部は例えば蟻形であることができる。滑り下敷は上記固定技術の代りに又は該固定技術に加えて保持レールに接着されていることができる。又、滑り下敷は支持レールの支持面の上に設けられたプラスチックから成るコーディングとして存在することもできる。本発明の特別な構成では支持レールはプラスチックスリーブで完全に取囲まれている。
【0019】
滑り効果を持つ滑り下敷きの幅は、ボビンもしくは巻管保持体の滑り体の幅もしくは直径にほぼ相応している。原理的には滑り面はプロフィール長手方向に案内されたストリップ又はロープ形状の(プラスチック)エレメントから成っていることもできる。しかし、バンド状の滑り下敷によって形成されるような面積の大きい支持面がロープ状の滑り面の上を案内されたピン往復台よりも良好な滑り特性を有することが確認されている。
【0020】
少なくとも皿とも呼ばれる滑り体と有利にはピン往復台全体はプラスチック、有利には熱可塑性のプラスチック、例えばポリエステル(PBT又はPET)から形成されている。
【0021】
滑り下敷は有利には熱可塑性のプラスチック、特に有利にはポリアミド(PA)、例えばPA6,PA11,PA12,PA46,PA6−Gから又はコポリアミド又はポリアミドブレンドから成っている。滑り下敷は有利にはPA66から成っている。前述のポリアミドは付加的に統合された固体潤滑物質もしくは滑り添加物を備えているか又はこれなしで又はMoS又はグラファイト変態を有していることができる。
【0022】
さらに滑り下敷には以下に列挙したプラスチックが適している:
・付加的に統合された固体潤滑物もしくは滑り剤添加物を有するか又は有していないかもしくはMoS−又はグラファイト変態を有するポリアセタル樹脂、例えばポリオキシメチレン(POM,POM−H,POM−K);
・付加的に統合された固体潤滑物質もしくは滑り材添加物を有するか又は有していないかもしくはMoS−又はグラファイト変態を有する熱可塑性ポリエステル、例えばPBT又はPET;
・ポリエチレン(PE)、PE−UHMW(超高分子)、PE−HMW(高分子);
・付加的に統合された固体潤滑物質もしくは滑り剤を有するか又は有していないかもしくはMoS−又はグラファイト変態を有している高出力プラスチック、例えばPI,PAI,PEEK,PAEK。
【0023】
さらに滑り剤添加で変調された非結晶のプラスチック、PC,PMMA,PVC−U,ABS又はPSも、これらが必ずしもPA66のすぐれた滑り及び摩耗特性に達しないにしても適している。
【0024】
特に有利な実施例では滑り体もしくはピン往復台はポリエステル、特にPBIから成り、プラスチック滑り下敷はポリアミド、特にPA66から成っている。
【0025】
本発明の別の構成では連行体は案内面にて滑動するように支持レールに沿って案内されている。この場合、支持レールの案内面と連行体との間には滑り下敷、特にプラスチックから成る滑り下敷が配置されている。この滑り下敷は支持レールと材料、摩擦及び/又は形状接続で結合されている。滑り下敷の材料、構成及び支持レールへの取付けに関してはピン往復台のための滑り下敷に関する先きの記載が個々にかつ互いに組合わされて同様に当嵌まるので、ここでは繰返すことは回避する。
【0026】
搬送システムの記述は意図的に、紡績機における巻管もしくはボビン搬送に関連した構想に関して行なう。しかし、完全を期して紡績機もしくは搬送手段が保持体もしくはボビンを凹部に搬送しかつ保持体もしくは巻管を供給源から受取ることに言及しておく。凹部と供給源は唯一の後続加工ユニット、例えば巻返し機によって形成されることができる。しかし、自動的に又は部分自動的に又は手動操作で働くことのできる搬送システムの入口個所もしくは出口個所によって形成することもできる。搬送システムは例えばボビンをあらかじめ決められた又は決められていない個所へ送りかつ巻管を同じ個所又は別の個所から受取る。もちろん、ピン往復台を例えば巻返し機に搬送するための別の支持レールが同様に本発明による滑り下敷を備えていることもできる。
【0027】
本発明による滑り下敷は支持レールとピン往復台との間の摩擦を著しく減退させ、動かされたピン往復台の数が長い紡績機において増大した場合でも、駆動出力の増大は不要でありかつ消費エネルギは一層好適化されることになる。電蝕した滑り面を有するアルミニウムから成る従来の支持レールとは異って、耐摩耗性の滑り下敷の良好な滑り特性は長い運転期間に亙って維持される。これに対し、これまで滑り表面として使用されていた電蝕された表面の場合には時間の経過する間に酸化層の損傷もしくは破損が発生し、ピン往復台と支持レールとの間で摩擦の顕著な上昇が見られる。
【0028】
本発明の滑り下敷のおかげで摩擦係数は0.4μの上から、特に0.44μから0.3μの下へ、特に0.23μに下げられることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図1から図5に基づき詳説する。さらに図6から図9までには長い紡績機においてドッフィングの間に振動を減退させるドッファモータの支承装置が記載されている。しかし、図6から図9までのドッファモータの支承装置は本願の請求の範囲の対象ではない。
【0030】
図1にはリング紡績機1がその周囲に案内されたエンドレスコンベアと共に概略的な平面図で示されている。リング紡績機1は向き合った機械側に互いに平行に延在する紡績部位12a,12bを有している。紡績部位12a,12bはそれぞれ概略的に1しか示されていない紡績部位11から成っている紡績部位グループ12a,12bを有している。できるだけ等しい紡績部位間隔は符号9で示されている。リング紡績機1の詳細、特に機械ヘッドは一般的でかつ周知の配置であるので図示していない。
【0031】
両方の紡績部位グループ12a,12bはエンドレスコンベアとして構成された垂直に延在するスチールベルトの形をした搬送手段8である。スチールベルトは平行にかつ互いに周方向に延在する紡績部位12a,12bの両側にて、垂直な軸を有する変向ローラ13,14,15,16に巻掛けられている。したがってそれぞれ1つの紡績部位グループ12aもしくは12bに沿って延びる2つの長いベルト区分と両方の紡績部位グループ12a,12bを端部にて結合する2つの短いベルト区分とをエンドレスコンベア8は有している。
【0032】
垂直なスチールベルトとして構成された搬送手段8は個々の紡績部位11に合わせて、エンドレルベルト8から外へ延びる、それぞれ1つの、搬送方向に対し垂直に延びる連行フィンガ5を有する連行体3が固定されている。エンドレスコンベア8のすぐ横及び下には紡績部位グループ12a,12bの領域に水平な支持レール7が延在している。この支持レール7はこの構成ではリング紡績機1の左側の端部をも巡ってエンドレスコンベア8に対し平行に案内され、リング紡績機の両側の間の搬送結合を成している。しかし、支持レールはリング紡績機を巡って案内される必要はない。
【0033】
支持レール7の上には連行体3の連行フィンガ5と接触して互いに間隔をおいてピン往復台2が配置されている。このピン往復台2は円板状の滑り体6(皿)とその上に垂直に配置された巻管ピン4とから成っている。滑り体6と巻管ピン4とは有利にはプラスチックから一体に製作され、巻管ピン4と滑り体6との間に配置された拡幅された足部18の領域で連行体3により背後から掴まれている。
【0034】
両機械側には図1で破線で示された巻管交換装置10が示されている。この巻管交換装置10はこれまでのドッファの場合のように構成されていることができ、紡績部位11のスピンドルから満管ボビン(コップ又はボビン)を外し、その代りに空の巻管をスピンドルに差嵌めることができ、差嵌められた巻管はエンドレスコンベア8で個々の紡績部位11へ供給される。
【0035】
変向ローラ15,16は複矢印の方向で機械長手方向に可動に保持された緊定ビーム17によって互いに結合されている。この緊締ビーム17には機械フレームに支えられた緊締装置によってエンドレスコンベア8を緊締する予備緊締力が作用させられている。
【0036】
適当な個所、例えば変向ローラ13,14の間には図示されていない形式で、連行体3と搬送ベルト8を飛散繊維から浄化するためにブロー又はサクションノズル及び/又はブラシを有する浄化装置が設けられていることができる。
【0037】
さらにすでに連行体3によって占拠されていない個所に、エンドレスコンベア8の循環に際して支持レール7に沿って滑動しかつその際にこれを浄化する研磨ディスクの形をした浄化エレメントがエンドレスコンベア8に固定されていることができる。
【0038】
紡績部位グループ12a,12bの、緊締ビーム17とは反対側の部位には、巻取りユニット又はコップ取外し及び巻管装着ユニットへの搬送結合(図示せず)が設けられていることができる。
【0039】
案内レール7は機械フレームの上もしくは機械フレームの横に配置されている。有利には中空成形体として構成された案内レール7は平らな、水平方向に配向された案内もしくは支持面29を有し、この案内もしくは支持面29の上にはピン往復台2がその滑り体6で滑動可能に支持されかつ案内されているベルト状のプラスチック下敷20が配置されている。このプラスチック下敷20は両側に長手方向に延びるU字形の曲げ区分28a,28bを有している。この曲げ区分28a,28bは案内レール7における案内長手方向条片19a,19bを形状接続で掴み、プラスチック下敷20を案内レール7に固定する。
【0040】
ピン往復台2はピン4と滑り体6との間にピン4に対していくらか拡幅された足部18を有し、この足部18が連行フィンガ5により背後から掴まれている。連行体フィンガ5は保持アームを介して連行体3の滑り体と結合されている。連行体3は固定手段24で垂直な搬送ベルト8に固定されている。反対側から足部18はジョー(図示せず)によって負荷されている。このジョーはばねを介して保持アームに又は直接的に連行体3に固定され、これによりピン往復台2は側方で案内されている。
【0041】
案内もしくは支持レール7は後方へ向かって延びる案内突起21を有している。この案内突起21は上方及び下方の湾曲させられた案内面22,23を有している。この案内面22,23は機械長手方向に延びる垂直方向で間隔をおいた案内隆起部として構成されている。この案内隆起部は案内レール7と構成的に一体化されている。
【0042】
連行体3はその前方領域に機械長手方向に延びる案内受容部25を有している。この案内受容部25は上と下に案内面22,23で掴まれる対応面によって制限されている。この対応面は相応に湾曲されたばね作用を有する舌状部26,27に構成されている。案内面22,23は対応面に相補的に、図2に示された形式で丸味づけされて構成されている。このような形式で連行体3は機械フレームに対し相対的に正確にかつ傾動しないように配向され、ただ図2の図平面に対し垂直である機械の長手方向にだけ規定されて滑り座にて摺動可能である。案内面22,23の上には同様に連行体と案内レールとの間の摩擦を減ずるために、ベルト状の、案内隆起部を形状接続で取囲むプラスチック材料滑り下敷30が施されている。図2の実施例はプラスチック滑り下敷30なしで構成することもできる。
【0043】
変向ローラ以外に案内されていない搬送ベルト8が図2の図平面に対し垂直に移動した場合には連行体3は相応に移動させられ、機械長手方向で案内レール7の上を滑動する。この場合、連行フィンガ5はピン往復台2を連行し、ピン往復台2は支持レール7の支持面7に沿ってこの上を滑動する。
【0044】
案内面22,23を有する案内突起21は支持レール7の案内面の下側にあり、ほぼ搬送ベルト8と同じ高さにある。したがってその間には連行体3は比較的に薄い基体だけで位置する。
【0045】
図3の例はプラスチック材滑り下敷50a,50bの別の構成が示されている。このプラスチック滑り下敷50a,50bは細長いプラスチックストリップ50a、50bから成っているこのプラスチックストリップ50a,50bは支持レール47に固定するために支持レール47の支持面における長手方向に延びるアンダカットされた溝にプレス嵌めされている。連行体43を介して案内されたピン往復台42はレール状に支持レールの支持面から突出するプラスチック材滑り下敷50a,50bの上を滑動する。この構成とは異ってプラスチック材滑り下敷は支持レールの溝にプレス嵌めする一体成形部を有するプラスチックバンドとして構成されていることもできる。
【0046】
図4の実施例においてはプラスチック滑り下敷は側方でクリップ69a,69bで支持レール70の支持面に固定された平らなプラスチックベルト67から成っている。
【0047】
図5には図2に相応してベルト状のプラスチック滑り下敷87が横断面図で示されている。プラスチック滑り下敷87はそれぞれ側部を長手方向に延びるU字形の、ばね弾性的な曲げ区分81a,81bをほぼ水平に延びる端区分と共に有している。ドッファに向かって位置する曲げ区分81aはさらにほぼ水平な端区分に続いて斜め下へ向けられた舌状部82を取付け補助手段として有している。舌状部82の角度は取付けられた状態で舌状部82が案内条片19aから下方へ突出し、良好に掴むことができるように設定されている。
【0048】
プラスチック下敷20,87は取付けに際し、内側の曲げ区分28a,28bで案内条片19bに引掛けられ、支持面29の上へ下げられる。最後のステップでプラスチック下敷20,87は外側の曲げ区分28aで案内条片19aの上へクリップ止めされる。この場合、曲げ区分28aは案内条片19aの上へ被せる目的で舌状部82を握って一時的に弾性的に拡げられる。
【0049】
長い紡績機を構成に際してスピンドル機が増加することはボビン及び巻管搬送系において調整が必要であるだけでなく、ドッファにおいても、ボビンもしくはコップを引き抜きかつ巻管をスピンドルに差嵌めるための昇降装置における適合が必要である。したがって紡績機の長さの増大に際してドッファ装置の駆動装置によって誘発される機械フレームにおける振動は深刻な問題を提起する。
【0050】
前記駆動装置は昇降装置、特にグリッパバーを有するせん断レバーシステムを動かすために用いられる。このために該駆動装置は公知の形式でねじスピンドルを有する伝動装置と作用結合されており、ねじスピンドルを介してグリッパバーはせん断レバーの水平な案内によって上昇もしくは下降させられる。該駆動装置は機械フレームに不動に固定されている。駆動出力の伝達はここでは詳細には記載されていない、例えば歯車、変速装置、ベルト案内装置、変向装置等を有する伝動装置を介して行なわれる。前述のドッファの作用原理は例えばDE4210494B4号及びDE4205215C2号明細書に詳細に説明されている。
【0051】
前記問題を解決するためには、有利には電気モータである駆動装置は一方では有利にはばね作用なしで紡績機の機械フレームに固定されている。該駆動装置は他方ではばね弾性的な支え手段で付加的に振動減衰して床に支えられている。前記固定は電気モータの質量重量の大部分が機械フレーム又は支持装置により支持されるように行なわれる。
【0052】
前記駆動装置は有利にはその理由で紡績機の長手方向に配向され、伝動装置が駆動エネルギが前記軸から取出す側で機械フレームに固定されている。相応して前記駆動装置は有利には紡績機の長手方向で反対側でばね弾性的に支えられている。前記支持装置は有利には支持足の高さを調節するための手段及び/又はばね剛性を調節する手段及び/又はばね行程を調節する手段を有している。
【0053】
電気モータとして構成された駆動装置101は一方では機械フレーム103と他方では支持装置102と結合されかつこれによってばね弾性的に床に支えられている(図8と図9)。駆動装置101は有利には成形区分、特に横支持体又は中間シールドもしくは横桁104を介して機械フレーム103の内部に固定されている。この横桁又はそれに類似したものには有利には伝動エレメントも取付けられており、該伝動エレメントが電気モータの軸と作用結合されている(図示せず)。電気モータはその軸で機械長手方向114に配向されている。
【0054】
支持装置102は互いに間隔をおいた、横成形体111によって互いに結合された支持足105a,105bを有している。横成形体111はアグルプロフィールの形状に構成され、横成形体を電気モータ101のケーシングに、例えばねじで結合するための切欠き112a,112bを有している。
【0055】
支持装置102は振動減衰を目的として皿ばね8を介して互いに相対的に可動に保持された2つの構成グループを有している。第1の構成グループは支持足105a,105bを有し、該支持足105a,105bは円筒形の支持足113a,113bと結合されている。支持脚113a,113bはねじ107a,107bで支持脚113a,113bに保持されたリング円板115を有し、該リング円板115の上には皿ばねエレメント108が支承されている。第2の構成グループは駆動装置101のための結合個所112a、112bを有する横成形体111を有している。リング円板115と横成形体111との間には下に向かって開いた円筒形の案内ブッシュ106a,106bが配置され、この案内ブッシュ106a,106bは皿ばねエレメント並びにリング円板115を側方案内された状態で受容する。案内ブッシュ106a,106bは横成形体111に固定されているか別個の構成部分として構成されていることができる。
【0056】
支持脚113a,113bはリング円板115並びに皿ばねエレメント108を通して案内され、案内ブッシュ106a,106bから上方の孔開口を通って突出しかつ横成形体111における開口を通って導かれる。支持脚113a,113bは案内ブッシュ106a,106bに対し、かつ横成形体111に対し、かつ皿ばねエレメント108に対し相対的に摺動可能に支承されている。
【0057】
支持脚113a,113bは有利には高さ調節装置を有し、この高さ調節装置は支持脚105a,105bと横成形体111との間の間隔及び床に対する横成形体111の高さ位置を調節することを許す。高さ調節装置は例えば支持足105a,105bに又は横成形体111に設けられかつ公知のねじ機構を有していることができる。高さ調節装置は支持脚113a,113bを通して案内された別の成形体によって構成されていることもできる。この別の成形体は支持足に向かって延びかつねじ機構を介して支持脚113a,113bに対して高さ調節可能である。
【0058】
運転中に誘発される電気モータの垂直な振動は横成形体111を介して案内ブシュ106a,106bに伝達される。この案内ブッシュは皿ばね108に作用し、皿ばね108を振動に基づく下方運動で圧縮しかつ上方運動で弛緩する。したがって案内ブッシュ106a,106bは支持脚において皿ばねエレメント108を支えるリング円板115に対し相対的運動を行なう。調節ナット107a,107bを介してリング円板115の高さ、ひいてはばね剛性は調節され得る。
【0059】
ばね弾性的な支持装置はドッファ駆動装置により誘発された振動を吸収し、この振動が機械フレームに導入され、そこで振動を惹き起こさないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】リング紡績機とその周囲を案内されたエンドレスコンベアとの概略的な平面図。
【図2】リング紡績機、特に図1のリング紡績機を搬送ベルトとピン往復台の支持レールとの領域で機械長手方向に対し垂直に断面した断面図。
【図3】第2実施例の搬送ベルトと支持レールとの領域の断面図。
【図4】第3実施例の支持レールの断面図。
【図5】図1のベルト状の滑り下敷の横断面図。
【図6】ドッファ駆動装置のための支持装置の斜視図。
【図7】図6の支持装置の支持脚の横断面図。
【図8】機械フレームに固定されたドッファモータの斜視図。
【図9】機械長手方向でドッファモータを見た側面図。
【符号の説明】
【0061】
1 リング紡績機
2 ピン往復台
3 連行体
4 巻管ピン
5 連行フィンガ
6 滑り体
7 支持レール
8 搬送手段、エンドレスコンベア
9 紡績部位間隔
10 巻管交換装置
11 紡績部位
12a,12b 紡績部位グループ
13,14,15,16 変向ローラ
17 緊締ビーム
18 足部
19a、19b 案内長手方向条片
20 プラスチック下敷
21 案内突起
22,23 案内面
24 固定手段
25 案内受容部
26,27 舌状部
28a,28b 曲げ区分
29 案内もしくは支持面
30 プラスチック材滑り下敷
42 ピン往復台
43 連行体
47 支持レール
50a,50b プラスチック滑り下敷
67 プラスチック滑り下敷
69a,69b クリップ
70 支持レール
81a,81b 曲げ区分
82 舌状部
87 プラスチック滑り下敷
101 駆動装置
102 支持装置
103 機械フレーム
104 横桁
105a,105b 支持足
106a,106b 案内ブッシュ
107a,107b ねじ
108 皿ばねエレメント
111 構成形体
112a,112b 切欠き
113a,113b 支持脚
114 機械長手方向
115 リング円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の紡績部位(11)を有する紡績機のボビンもしくは巻管搬送装置(1)であって、該ボビンもしくは巻管搬送装置(1)が搬送路(7)の支持面(29)の上を滑動案内された個別のボビンもしくは巻管保持体(2)並びに該ボビンもしくは巻管保持体(2)を前記搬送路(7)の上で前記紡績部位(11)に沿って搬送するための連行体(3)を備えた搬送手段(8)を有している形式のものにおいて、前記搬送路(7)の前記支持面の上に、耐摩耗性が高くかつ滑り性が高い滑り下敷(20)が配置されていることを特徴とする、紡績機のボビンもしくは巻管搬送装置。
【請求項2】
前記滑り下敷(20)がプラスチックから成っている、請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送路(7)が金属、特にアルミニウムから成る支持レールを有し、前記滑り下敷(20)が単体であるか又は複数の部分から成り、前記支持レール(7)と材料及び/又は摩擦及び/又は形状結合されている、請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記支持レール(7)の前記支持面(29)が面状にプラスチックで被覆されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項5】
前記滑り下敷(20)が前記支持レールの上に位置するプラスチックベルト又はプラスチックストリップである、請求項1から4までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項6】
前記滑り下敷(20)が長手方向に延びる曲げ区分(28a,28b)を両側に有する、前記支持レール(7)の上に載置されたプラスチックベルトであって、前記曲げ区分(28a,28b)が前記支持レール(7)における案内長手方向条片(19a,19b)を有利には形状接続で掴んでいる、請求項1から5までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項7】
少なくとも、前記搬送路(7)の滑り面の上に載置されたボビンもしくは巻管保持体(2)の滑り体(6)がプラスチックから成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項8】
滑り下敷(20)が熱可塑性のプラスチック、有利にはポリアミド(PA)、特にPA66から成っている、請求項1から7までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項9】
ボビンもしくは巻管保持体(2)もしくはその滑り体(6)が完全に熱可塑性のプラスチック、有利にはポリエステル、特にPBT又はPETから成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項10】
前記滑り下敷(20)の幅が前記ボビンもしくは巻管保持体(2)の滑り体(6)の幅もしくは直径にほぼ相応している、請求項1から9までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項11】
前記支持レール(7)が前記連行体(3)を滑り案内するために案内面(22,23)を有し、前記案内面(22,23)の上に滑り下敷(20)、特にプラスチックから成る滑り下敷が配置され、該滑り下敷(20)が前記連行体(3)の案内部分(3)に滑り接触で支持もしくは接触している、請求項1から10までのいずれか1項記載の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−88623(P2008−88623A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257973(P2007−257973)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】