説明

ボビンを保持するための装置

【課題】たとえば精紡機のクリール内で、ピン1にボビンを保持するための装置であって、ピン1が、回動可能に支持ボルト2と結合されており、ピン1が、支持ボルト2との結合部の周りに滑り面3を備えている形式のものを改良して、一方では所望の制動作用が達成され、他方では摩擦および摩耗が低減されるようなものを提供する。
【解決手段】滑りウェイト10が、自重によって滑り面3に載設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば精紡機のクリール内で、ピンにボビンを保持するための装置であって、ピンが、回動可能に支持ボルトと結合されており、ピンが、支持ボルトとの結合部の周りに滑り面を備えている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
ボビンホルダは多種様々な形状および構造で存在する。一例として欧州特許第0413840号明細書を参照すると、ここではボビンがピンに被せ嵌められ、ピンに設けられたスライドエレメントによって、コイルのための保持機構が作動される。ピン自体は支持ピンを中心に回動し、支持ピンはレール、架構または搬送ベルトなどに取り付けられている。この場合ピンは、フードによって覆われており、フードに制動ばねが押し付けられる。実際には、ばね負荷されたフードは、ピンもしくはピンの上位の滑り面に沿って良好な滑り対偶を成さないことが判った。なぜならば過度に高い摩耗が生じるからである。フードとピンとの間の摩擦が大きすぎるので、粗糸破断が頻繁に生じる。
【0003】
ばね力が低下すると、これに対抗して働くが、このことは同時に制動作用の低下を意味し、これは所望されない。
【特許文献1】欧州特許第0413840号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような形式の保持装置を改良して、一方では所望の制動作用が達成され、他方では摩擦および摩耗が低減されるようなものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、滑りウェイトが、自重によって滑り面に載設している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の構成によれば、ばねを省略することができるので、所望の制動作用を得るためには、専ら滑りウェイトの自重で十分である。滑りウェイトの自重は、たとえばピンが支持ボルトに枢着式に旋回される場合でもほとんど変化しない。このような枢着式の旋回では、ばねの力に抗する旋回による追加的な押圧が行われず、これによって摩擦が高められることはなく、滑りウェイトと滑り面との間の摩擦は不変である。
【0007】
本発明による有利な実施例では、滑り面は球冠状(ドーム形)に湾曲して形成されており、これによって滑りウェイトの下面は、滑り面の湾曲に追従して形成されている。しかしながらこれは一例に過ぎず、実際には、幾何学的に別の形状の表面対も適当なものとしてみなされる。
【0008】
有利には、滑りウェイトは回動不能になっている。これの意味するところによれば、滑りウェイトは、滑り面に対して「固定的」に維持される。「固定的」とは、本発明の範囲内では、滑りウェイトが僅かに連行して回動し得る、ということも含まれるが、制動作用は維持される。
【0009】
原則的に、滑りウェイトは、支持ボルトと形状接続式に結合されると、固定的に維持される。最も簡単な実施形態では、形状接続式の結合は、支持ボルトに、滑りウェイトにおける適当な多角形開口を貫通する多角形部材が対応配置されていることによって得られ、その結果相対回動に対するロックが保証されており、しかも支持ボルトに沿った滑りウェイトの軸方向の移動は実現されたままである。もちろん支持ボルトとの別の伝力接続式(kraftschluessig;力伝達式)または機械的な結合も可能である。
【0010】
滑りウェイトおよび滑り面の表面のためにできるだけ摩耗しにくい材料が提供され、これに応じて摩擦は良好に作用する。滑りウェイトのために、望ましくはできるだけ金属が使用される。経済的な理由から、望ましくは滑りウェイトの基体は亜鉛合金から成っていて、かつダイカストで製作される。したがって下面のコーティングは、クロムまたはニッケルで行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図示の実施例を用いて詳しく説明する。
【0012】
ボビンを収容して保持するために、保持装置はピン1を備えており、ピン1は、たとえば欧州特許第号0413840明細書に記載されているように構成されていて、かつ内部エレメントを備えていてよい。したがって内部エレメントの詳しい説明は省略する。
【0013】
ピン1は、支持ボルト2と結合されており、ここではピン1の上位の滑り面3は、支承部4をカバーしており、支承部4は、下向きに支承部リング5に支持されており、支承部リング5は支持ボルト2のヘッド6に載設されている。このようにしてピン1は、支持ボルト2に対して旋回可能であり、これについては両矢印7で示唆した。
【0014】
支持ボルト2に、支承部リング5の上方で多角形部材8が対応配置されており、多角形部材8は滑り面3における開口9を貫通しており、この場合開口9は、ピン1がスムーズに回動できるような幅を有している。
【0015】
本発明によれば、多角形部材8の周りに滑りウェイト10が配置されており、滑りウェイト10は、多角形部材8の領域で開口11を備えており、開口11を多角形部材8が形状接続式(formschluessig;形状による束縛)に貫通している。これによって滑りウェイト10は、ピン1に対して回動不能になっている。しかしながら両矢印12で示唆したように、滑りウェイト10は、多角形部材8もしくは支持ピン2に沿って軸方向で調節することができる。
【0016】
滑り面3は、湾曲した表面を有しており、この場合滑りウェイト10の下面13は、適当な凹形湾曲を有しているので、下面13は、滑り面3の表面に密着する。
【0017】
滑りウェイト10およびピン1の支承部の全体配置構造は、ダストキャップ14によって覆われている。
【0018】
支持ボルト2は、最終的に架構15に取り付けられ、取付はたとえばナット16および固定ナット17によって行われる。
【0019】
滑り面3および下面(内側面)13は、フラットに、つまり湾曲せずに形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による、ボビンを保持するための装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ピン、 2 支持ボルト、 3 滑り面、 4 支承部、 5 支承部リング、 6 ヘッド、 7 両矢印、 8 多角形部材、 9 開口、 10 滑りウェイト、 11 開口、 12 両矢印、 13 下面、 14 ダストキャップ、 15 架構、 16 ナット、 17 固定ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有利には精紡機のクリール内で、ピン(1)にボビンを保持するための装置であって、
ピン(1)が、回動可能に支持ボルト(2)と結合されており、ピン(1)が、支持ボルト(2)との結合部の周りに滑り面(3)を備えている形式のものにおいて、
滑りウェイト(10)が、自重によって滑り面(3)に載設していることを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
滑りウェイト(10)が、専ら自重によって滑り面(3)に載設している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
滑り面(3)が、湾曲して形成されており、滑りウェイト(10)の下面(13)が、前記滑り面(3)の湾曲形状に対応する形状に形成されているか、または滑り面(3)および下面(13)が、フラットに形成されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
滑りウェイト(10)が、支持ボルト(2)に対して回動不能になっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
滑りウェイト(10)が、鉛直方向を除いて、支持ボルト(2)と形状接続式に結合していて、かつ支持ボルト(2)に対して回動不能になっている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
支持ボルト(2)が、滑りウェイト(10)の領域で多角形部材(8)を備えており、多角形部材(8)が、滑りウェイト(10)に設けられた多角形開口(9)を貫通しているか、または支持ボルトおよび滑りウェイト(10)の開口が、非円形の横断面を有している、請求項5記載の装置。
【請求項7】
滑りウェイト(10)が、支持ボルト(2)に沿って軸方向で移動可能になっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
ピン(1)が、支持ボルト(2)に対して枢着式に旋回可能になっている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
滑りウェイト(10)が、金属から成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
滑りウェイト(10)が、摩耗層の被覆された基体を備えている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
基体が、特に亜鉛合金から成っていて、かつダイカスト法で製作されるようになっている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
摩耗層が、クロムまたはニッケルから成っている、請求項9または10記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−151696(P2006−151696A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340221(P2005−340221)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】