ボリュームデータ処理装置及び方法
【課題】心電図に同期した心臓の画像から、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を抽出する。
【解決手段】心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数枚のフェーズ画像からなる心電図同期SPECT画像を記憶する心電図同期SPECTデータ記憶部11と、心電図同期SPECTデータ記憶部11に記憶されている複数のフェーズ画像について、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像を用いて、そのフェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトル群を、すべてのフェーズ間について算出する動きベクトル算出部13と、動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出部17とを備える。
【解決手段】心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数枚のフェーズ画像からなる心電図同期SPECT画像を記憶する心電図同期SPECTデータ記憶部11と、心電図同期SPECTデータ記憶部11に記憶されている複数のフェーズ画像について、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像を用いて、そのフェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトル群を、すべてのフェーズ間について算出する動きベクトル算出部13と、動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出部17とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図同期SPECT(Gated SPECT)画像から心臓の動きの特徴を評価するための動きパラメータを求めるとともに、この動きパラメータを用いて被験者間の比較を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者にRIを投与して、心筋の血流の状態を示す心臓の断層画像を撮影する心筋SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)という手法が知られている。さらに、心筋SPECTの撮影方法として、心電図に同期させて撮影する心電図同期SPECT(Gated SPECT)と、心電図とは非同期の心電図非同期SPECT(Non−Gated SPECT)とがある。心電図同期SPECTにより撮影した画像を処理する技術には、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−153867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、心電図非同期SPECTは、心臓の動きを無視したブレの大きい画像であり、そこから得られる情報には限界がある。
【0005】
心電図同期SEPCTは、複数のフェーズ画像をそれぞれ解析することによって、心臓の動きによる変化を抽出し、より多くの情報を得られるようにしたものである。
【0006】
ここで、心臓の動きが適正であるか否かを評価するためには、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報によって行う必要がある。しかしながら、心電図同期SEPCT画像から、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を抽出する手法は確立されていない。
【0007】
これは、心電図同期SEPCT画像に限らず、心電図に同期させた他のモダリティに係る画像に対しても同様である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、心電図に同期した画像から、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を抽出することである。
【0009】
さらに、本発明の別の目的は、心電図に同期した画像から抽出した心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を用いて、被験者間で心臓の動きを比較することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従うボリュームデータ処理装置は、心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、前記動きベクトル算出手段が算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出手段と、を備える。
【0011】
好適な実施形態では、前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つを基準フェーズボリュームデータとし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルを前記所定の領域とし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとしたとき、前記動きパラメータ算出手段は、前記動きベクトル群を用いて、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、前記基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに前記動きパラメータを算出するようにしてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置までの距離を示す最大移動量であってもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置に到達したときのフェーズを示す最大移動フェーズであってもよい。
【0014】
好適な実施形態では、いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び前記所定領域の動きパラメータに基づいて、前記一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに前記所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示させる画像表示手段を、さらに備えてもよい。
【0015】
好適な実施形態では、前記記憶手段には、前記記憶手段には、第1の被験者のボリュームデータと一以上の第2の被験者のボリュームデータとが記憶されていて、前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者のボリュームデータのそれぞれについて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出し、前記動きパラメータ算出手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記動きパラメータをそれぞれ算出し、前記画像表示手段は、前記第1の被験者の動きパラメータ及び前記一以上の第2の被験者の動きパラメータに基づくそれぞれの画像を表示させるようにしてもよい。
【0016】
好適な実施形態では、いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのボリュームデータに対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる画像表示手段をさらに有してもよい。
【0017】
好適な実施形態では、前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出するようにしてもよい。
【0018】
好適な実施形態では、前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムの全体構成図である。
【図2】心電図同期SPECTの説明図である。
【図3】動きベクトルの説明図である。
【図4】動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。
【図5】移動軌跡抽出部171によって特定される基準ボクセルRの移動軌跡の一例を示す。
【図6】動きパラメータ算出部17が行う動きベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】SPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。
【図8】フェーズ画像上の最大移動量の表示画面である。
【図9】フェーズ画像上の最大移動量の表示画面である。
【図10】移動軌跡の表示例を示す。
【図11】移動軌跡の表示例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムについて、図面を基準して説明する。本実施形態では、心筋の血流及び機能の解析を行うための心電図同期SPECT法に基づいて撮影した画像の解析を行う心電図同期SPECTの画像解析を例に説明するが、本発明は、これ以外にも、心電図に同期させたPET(Positron Emission Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、CT(Computed Tomography)、及び超音波などの各画像に対しても同様に適用することができる。
【0021】
図1は、本実施形態にかかるSPECT画像処理システムの全体構成図である。すなわち、本システムは、心電図同期SPECT法で被験者の心臓の3次元画像を生成する画像再構成システム1と、画像再構成システム1で再構成された時系列の画像データの解析を行うSPECT画像処理装置100とを備える。
【0022】
画像再構成システム1は、心電図と同期させて、各フェーズ(位相)における心臓の3次元SPECT画像を生成する、心電図同期SPECTを行う。例えば、図2に示すように、心電図のR波同士の間隔(R−R間隔:心臓の運動の1周期)をN(Nは2以上の整数)等分し、R−R間隔の1/Nのサンプリング周期で各フェーズのSPECT画像(以下、フェーズ画像と称する)を撮影する。図2には、3次元画像の一つの断層画像である短軸断層画像(Short Axis;SA画像)を例示しているが、これ以外にも、左心室の長軸垂直断層像(Vertical Long Axis;VLA画像)、長軸水平断層像(Horizontal Long Axis;HLA画像)などの表示の仕方がある。
【0023】
この撮影は、少なくとも心拍の1周期以上の間継続して行われる。画像再構成システム1は、同一部位について、複数の周期に渡り、同一フェーズの画像を重ね合わせて、N枚のフェーズ画像(ボリュームデータ)を生成する。なお、図2ではN=8の例を示したが、Nは任意であって、例えば、16,20,32などでもよい。画像再構成システム1によって生成された心電図同期SPECT画像が、SPECT画像処理装置100の心電図同期SPECTデータ記憶部11に格納される。
【0024】
図1に戻ると、SPECT画像処理装置100は、画像処理装置本体10と、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの入力装置3及び液晶ディスプレイなどの表示装置5とを備える。
【0025】
画像処理装置本体10は、例えばプロセッサ及びメモリを備える汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する画像処理装置本体10内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。そのコンピュータプログラムは、コンピュータ読みとり可能な記録媒体に格納可能である。
【0026】
画像処理装置本体10は、心電図同期SPECT画像(心電図同期画像)を記憶する心電図同期SPECTデータ記憶部11と、心電図同期SPECT画像から動きベクトルを算出する動きベクトル算出部13と、心臓の動きを示す動きベクトルのデータを記憶するベクトルデータ記憶部15と、心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出部17と、健常者の動きパラメータを処理する健常者データ処理部18と、動きパラメータを記憶する動きパラメータデータ記憶部19と、正規化処理部20と、ポーラーマップ生成部21と、表示制御部23と備える。
【0027】
心電図同期SPECTデータ記憶部11は、患者(第1の被験者)の心電図同期SPECTデータ111と、一以上の健常者(第2の被験者)の心電図同期SPECTデータ113とを記憶する。心電図同期SPECT画像111、113は、心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのフェーズ画像(ボリュームデータ)からなる。各フェーズ画像は、それぞれ3次元画像であるから、心電図同期SPECT画像111、113は、3次元ボクセルにそれぞれのカウント値(画素値)が格納されるボリュームデータである。
【0028】
動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECT画像の複数のフェーズ画像について、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像を用いて、そのフェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトルを算出する。動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して、以下に説明する処理によって患者の動きベクトル及び健常者の動きベクトルの算出を行う。ここで算出された心電図同期SPECT画像111に対応する患者の動きベクトルのデータ(患者ベクトルデータ)151、及び心電図同期SPECT画像113に対応する健常者の動きベクトルのデータ(健常者ベクトルデータ)153は、それぞれベクトルデータ記憶部15に保存される。
【0029】
動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像のうちの前フェーズのフェーズ画像における心臓領域に対応するそれぞれのボクセルが、後フェーズのフェーズ画像においてどこへ移動したかを示す個別の3次元動きベクトルを算出する。つまり、動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像から、ボクセル数分の個別の動きベクトルを含む動きベクトル群を算出する。動きベクトル算出部13は、すべてのフェーズ間について動きベクトル群を算出する。図2のように8フェーズの心電図同期SPECT画像の場合、7つの動きベクトル群が算出される。
【0030】
動きベクトル算出部13は、複数のボクセルを一つの単位として、それぞれの個別動きベクトルを算出してもよいし、最後のフェーズ画像と最初のフェーズ画像(図2の場合フェーズ画像P8とP1)の間の動きベクトル群を算出してもよい。
【0031】
動きベクトル算出部13は、互いにフェーズが隣り合う2枚のフェーズ画像間の濃度勾配に基づいて動きベクトルを算出する。例えば、動きベクトル算出部13は、オプティカルフロー法(特に、濃度勾配を利用した勾配法またはブロックマッチング法)を用いて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出してもよい。動きベクトル算出部13は、これ以外の方法で動きベクトルを算出してもよい。
【0032】
図3を用いて、動きベクトル算出部13の処理例について具体的に説明する。なお、ここでは説明の便宜のために2次元の画像及び2次元のベクトルを図示しているが、現実には、動きベクトル算出部13は3次元画像(ボリュームデータ)を用いて3次元ベクトルを算出する。
【0033】
図3は、連続するフェーズ画像の例として、フェーズ1のフェーズ画像P1、フェーズ2のフェーズ画像P2及びフェーズ3のフェーズ画像P3におけるSA画像を示す。動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P1とP2から、フェーズ1−2間の動きベクトル群V1を算出する。同様に、動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P2とP3から、フェーズ2−3間の動きベクトル群V2を算出する。動きベクトル算出部13は、フェーズ4以降の画像に対しても同様の処理を行う。図3に示す動きベクトル群V1、V2内の一つ一つの矢印及び点が個別の動きベクトルを示す。
【0034】
例えば、ベクトル算出部13は、動きベクトル群を算出する際、オプティカルフロー法を用いて、前フェーズのフェーズ画像(例えばフェーズ1)の各ボクセルから、後フェーズのフェーズ画像(例えばフェーズ2)のいずれかのボクセルへの個別の動きベクトルをそれぞれ算出する。そして、動きベクトル群に含まれる各個別の動きベクトルは、前フェーズのフェーズ画像の各ボクセルにそれぞれ対応づけられる。
【0035】
図4は、動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。動きベクトル算出部13は、患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して以下の処理を実行する。
【0036】
動きベクトル算出部13は、まず、隣り合う2枚のフェーズ画像を対象画像として特定する(S11)。動きベクトル算出部13は、ステップS11で特定された対象画像を用いて、オプティカルフロー法によって対象画像のうちの前のフェーズ画像から後のフェーズ画像への動きベクトル群を算出する(S13)。動きベクトル算出部13は、ここで算出された動きベクトル群をベクトルデータ記憶部15に保存する(S15)。動きベクトル算出部13は、ステップS11〜S15の処理をすべてのフェーズ間について行う(S17)。ここで算出されたすべてのフェーズ間のベクトル群が、所定の基準の範囲内に収束するまで、ステップS11〜S17までの処理を繰り返して行う(S19)。
【0037】
図1に戻ると、ベクトルデータ記憶部15は、ベクトル算出部13によって算出された動きベクトルのデータを保存する。例えば、心電図同期SPECT画像111,113を上記の例のように心拍の1周期を8フェーズに分けたときは、ベクトルデータ記憶部15には、それぞれの患者及び健常者の心電図同期SPECT画像111,113について、それぞれ、7つの動きベクトル群がベクトルデータ151,153として保存される。なお、患者及び健常者のベクトルデータ151,153は、上述の通り、3次元のボクセルのそれぞれに、一つの3次元ベクトルが割り当てられている。
【0038】
動きパラメータ算出部17は、動きベクトル算出部13によって算出された動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する。ここで、所定の領域は一以上のボクセルで構成される。本実施形態では、その領域の最小単位であるボクセル単位に動きパラメータを算出する場合を例にとって説明する。
【0039】
例えば、動きパラメータ算出部17は、複数の動きベクトル群を用いて、複数のフェーズ画像のうちの一つである基準フェーズ画像上の複数のボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに動きパラメータを算出する。動きパラメータ算出部17が算出した動きパラメータは動きパラメータデータ記憶部19に格納される。
【0040】
本実施形態では、動きパラメータの一例として、心拍一周期における心臓の動きの中で、心臓の各部位の移動量が最大となる最大移動に関連するパラメータと、フェーズ間での変化量(移動量)が最大となる最大変化に関連するパラメータとを算出する。最大移動に関連するパラメータとしては、例えば、あるフェーズを基準フェーズとしたとき、心臓の各部位が、基準フェーズにおける位置から移動した移動距離が最大となる最大移動量、その最大移動量だけ移動した時のフェーズ(最大移動フェーズ)及び、基準フェーズにおける位置から最大移動量だけ移動した位置へのベクトル(最大移動ベクトル)などがある。最大変化に関連するパラメータとしては、例えば、隣り合うフェーズ間での変化(移動距離)が最大となる最大変化量、最大変化量となったフェーズ間、及び最大変化量となった時のベクトル(最大変化ベクトル)などがある。以下、これらの算出方法について具体的に説明する。
【0041】
動きパラメータ算出部17は、移動軌跡抽出部171と、最大移動算出部173と、最大変化算出部175とを有する。
【0042】
移動軌跡抽出部171は、複数の動きベクトル群を用いて、複数のフェーズ画像のうちの一つである基準フェーズ画像上の複数のボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定する。移動軌跡抽出部171は、ある一つのフェーズ画像を基準フェーズ画像とする。そして、基準フェーズ画像上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルについて、それぞれに対応する個別動きベクトルを辿り、基準フェーズ画像以外のフェーズ画像上での位置を特定することによって、基準ボクセルの移動軌跡を抽出する。
【0043】
図5は、移動軌跡抽出部171によって特定される基準ボクセルRの移動軌跡の一例を示す。
【0044】
ここでは、フェーズ画像P1を基準フェーズ画像として説明する。しかし、フェーズ画像P1以外を基準フェーズ画像としてもよい。移動軌跡抽出部171は、基準フェーズ画像上の各ボクセルを基準ボクセルRとして、それぞれに対して以下のようにして移動軌跡Mを特定する。
【0045】
移動軌跡抽出部171は、基準フェーズ画像と次のフェーズ画像(ここではフェーズ画像P2)との間の動きベクトル群(ここでは動きベクトル群V1)から、基準ボクセルRに対応づけられている個別動きベクトルv1を特定する。個別動きベクトルv1により、次のフェーズ画像であるフェーズ画像P2における、基準ボクセルRの移動先である対応ボクセルR2が定まる。
【0046】
次に、移動軌跡抽出部171は、上記と同様にして、フェーズ画像P2とP3との間の動きベクトル群V2から、対応ボクセルR2に対応づけられている個別動きベクトルv2を特定する。個別動きベクトルv2により、次のフェーズ画像であるフェーズ画像P3における、基準ボクセルRの移動先である対応ボクセルR3が定まる。
【0047】
このような処理をすべての動きベクトル群及びフェーズ画像を用いて行うことにより、心拍一周期に渡って、基準ボクセルRから始まる個別ベクトルをつなげた基準ボクセルRの移動軌跡Mが抽出できる。
【0048】
最大移動算出部173は、移動軌跡抽出部171が特定した移動軌跡Mに基づいて、基準フェーズ画像の各ボクセルについて、最大移動に関するパラメータを算出する。例えば、最大移動算出部173は、最大移動量、最大移動フェーズ及び最大移動ベクトルを算出する。
【0049】
以下、図5を基準して説明する。最大移動算出部173は、基準ボクセルR及び対応ボクセルR2〜R8のボクセルの位置座標に基づいて、基準ボクセルRから対応ボクセルR2〜R8までの移動距離をそれぞれ算出し、その中の最大距離を最大移動量Dmaxとする。つまり、最大移動量Dmaxは、移動軌跡Mにおいて起点となる基準フェーズ画像における位置(基準ボクセル)から最も離れた位置(対応ボクセル)までの距離である。最大移動算出部173は、その最大移動量Dmaxとなったフェーズを最大移動フェーズDPmaxとする。つまり、最大移動フェーズDPmaxは、移動軌跡の中で、起点となる基準フェーズ画像における位置(基準ボクセル)から最も離れた位置(対応ボクセル)となるフェーズである。さらに、最大移動算出部173は、基準ボクセルRから最大移動フェーズDPmaxにおける対応ボクセルまでのベクトルを最大移動ベクトルDVmaxとする。
【0050】
最大変化算出部175は、移動軌跡抽出部171が特定した移動軌跡Mに基づいて、基準フェーズ画像の各ボクセルについて、最大変化に関するパラメータを算出する。例えば、最大変化算出部175は、最大変化量、最大変化フェーズ及び最大変化ベクトルを算出する。
【0051】
最大移動算出部173及び最大変化算出部175は、移動軌跡抽出部171が抽出した移動軌跡に基づいて、患者のベクトルデータ151からそれぞれのパラメータを算出し、これを患者の動きパラメータデータ191として動きパラメータデータ記憶部19に保存する。同様に、最大移動算出部173及び最大変化算出部175は、一以上の健常者のベクトルデータ153から、それぞれのパラメータを算出し、これを一以上の健常者の動きパラメータデータ193として動きパラメータデータ記憶部19に保存する。
【0052】
以下、図5を基準して説明する。最大変化算出部175は、基準ボクセルRの移動軌跡Mを構成する各個別動きベクトルv1〜v7のうち、大きさが最も大きい(移動距離が長い)ベクトルを最大変化ベクトルCVmax(ここでは個別動きベクトルv2)とする。そして、この最大変化ベクトルCVmaxの大きさを最大変化量Cmax、最大変化ベクトルCVmaxがどのフェーズ間のベクトルであるかを示すフェーズ間(ここでは、フェーズ2−3間)を最大変化フェーズCPmaxとする。
【0053】
図6は、動きパラメータ算出部17が行う動きベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。動きパラメータ算出部17は、患者及び被験者のぞれぞれのベクトルデータ151,153を用いて以下の処理を実行する。
【0054】
動きパラメータ算出部17は、まず、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されているフェーズ画像のうちの一つを基準画像に定める(S21)。さらに、動きパラメータ算出部17は、基準画像の中の一つのボクセルを基準ボクセルとして定める(S23)。
【0055】
移動軌跡抽出部171が、基準ボクセルに対して、各動きベクトル群のデータを用いて、心拍一周期に渡る移動軌跡を抽出する(S25)。そして、最大移動算出部173が、ステップS25で抽出された移動軌跡に基づいて、上述のようにして最大移動に関する動きパラメータを算出する(S27)。さらに、最大変化算出部175が、ステップS25で抽出された移動軌跡に基づいて、上述のようにして最大変化に関する動きパラメータを算出する(S29)。これにより、一つの基準ボクセルに対する動きパラメータが算出される。ステップS27及びS29で算出された動きパラメータが動きパラメータデータ記憶部19に保存される(S31)。
【0056】
動きパラメータ算出部17は、ステップS23〜S31までの処理を、基準画像のすべてのボクセルについて行い、すべてのボクセルの動きパラメータが求まるとこの処理が終了する(S33)。
【0057】
これにより、心電図同期SPECT画像から求めた動きベクトルを用いて、患者及び一以上の健常者の心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを抽出することができる。これらのパラメータにより、心臓の動きを定量評価することが可能となる。
【0058】
図1に戻ると、動きパラメータデータ記憶部19には、患者の動きパラメータデータ191及び健常者の動きパラメータデータ193がそれぞれ記憶される。本実施形態では、動きパラメータには、上述のような最大移動に関するパラメータ(最大移動量、最大移動フェーズ、最大移動ベクトル)及び最大変化に関するパラメータ(最大変化量、最大変化フェーズ、最大変化ベクトル)が含まれる。患者の動きパラメータデータ191及び健常者の動きパラメータデータ193では、基準画像のボクセル単位に、上記の動きパラメータが対応づけて記憶されている。
【0059】
ここで、動きパラメータデータ記憶部19には、さらに、健常者平均の動きパラメータデータ195が記憶される。健常者平均の動きパラメータデータ195は、健常者データ処理部18が一以上の健常者の動きパラメータデータ193に基づいて算出した、健常者平均のパラメータデータである。例えば、健常者データ処理部18は、複数の健常者のそれぞれの動きパラメータデータ193を平均して、健常者平均の動きパラメータ195を生成する。これ以降の処理は、健常者の動きパラメータとして健常者平均の動きパラメータデータ195を用いてもよい健常者データ処理部18は、次に説明する正規化処理部20で複数の健常者のパラメータデータを正規化した後に、健常者平均の動きパラメータデータ195を生成してもよい。
【0060】
正規化処理部20は、動きパラメータデータ記憶部19に記憶されている動きパラメータデータを正規化する。心臓の大きさには個人差があるため、正規化を行って個人差を取り除いてから比較するためである。
【0061】
ポーラーマップ生成部21は、心電図同期SPECT画像111,113などの心臓の3次元画像データに基づいてポーラーマップ(ブルズアイマップ)を生成する。本実施形態では、ポーラーマップ生成部21は、動きパラメータをポーラーマップに反映させる。すなわち、ポーラーマップ生成部21は、基準フェーズ画像及び各基準ボクセルの動きパラメータに基づいて、基準フェーズ画像のボクセル値の代わりに動きパラメータを用いたポーラーマップを生成する。
【0062】
例えば、ポーラーマップ生成部21は、心電図同期SPECT画像111,113に対して、周知のポーラーマップの生成方法に従って、ポーラーマップに反映させるボクセルを特定する。通常であれば、そのボクセルのカウント値を用いてポーラーマップを生成するが、本実施形態では、そのボクセルに対応づけられている動きパラメータの値を用いてポーラーマップを生成する。例えば、ボクセルのカウント値の代わりに、最大移動量を用いたポーラーマップ、あるいは最大変化量を用いたポーラーマップを生成してもよい。これにより、患者のデータに基づくポーラーマップと健常者のデータに基づくポーラーマップを生成し、表示制御部23を介して両方を表示装置5に表示させることにより、患者と健常者の動きパラメータを比較することができる。
【0063】
ポーラーマップ生成部21は、一以上の健常者については、個々の健常者の動きパラメータデータ193からポーラーマップを生成してもよいし、複数の健常者の動きパラメータを平均した健常者平均動きパラメータデータ195からポーラーマップを生成してもよい。
【0064】
なお、ポーラーマップ生成部21は、ポーラーマップを生成することで被験者のデータを正規化し、被験者同士(例えば患者と健常者)を比較することができる。従って、SPECT画像処理装置100は、ポーラーマップ以外の正規化手法を用いて、被験者間の比較を行ってもよい。
【0065】
表示制御部23は、いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び所定領域の動きパラメータに基づいて、その一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示装置5に表示させる。表示制御部23が表示装置5に表示させる画像の表示様態としては、心臓全体を一度に見ることができる「ポーラーマップ」、心臓の形態において見ることができる「3D表示」、心筋組織の断面を見ることができる「断層画像」等がある。
【0066】
例えば、ポーラーマップを表示させる場合は、表示制御部23は、ポーラーマップ生成部21が生成したポーラーマップを表示装置5に表示させる。
【0067】
また、表示制御部23は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている心電図同期SPECT画像111、113及びベクトルデータ記憶部15に保存されているベクトルデータ151を表示装置5に表示させてもよい。また、表示制御部23は、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている動きパラメータデータ191、193、195の数値をそのまま表示装置5に出力してもよい。このとき、表示制御部23が患者の動きパラメータと健常者の動きパラメータをともに表示装置5に表示させることにより、両者を比較することができる。
【0068】
表示制御部23は、患者及び健常者の動きパラメータ191、193、195に応じた画像を心臓の画像と重ねて表示してもよい。例えば、表示制御部23は、心臓の2次元断層画像または3次元画像上に、動きパラメータの値に応じた表示態様の画像を、それぞれ対応するボクセルの位置に重ねて表示する。この心臓の画像は、例えば、心電図同期SPECTデータ記憶部11に記憶されている患者または健常者の心電図同期SPECT画像111,113であってもよいし、別の画像であってもよい。動きパラメータの値に応じた表示態様とは、例えば、パラメータの値に応じて色分けした表示や、パラメータの値が所定の閾値を越える領域をマークするなどでもよい。
【0069】
また、表示制御部23は、各フェーズ画像と、患者及び健常者の動きパラメータ191、193、195の各フェーズの特徴を示す画像とを重ねて表示してもよい。例えば、表示制御部23は、同一被験者において、各フェーズ画像中の各ボクセルについて、最大移動フェーズを記録したフェーズを所定の色で表示する。あるいは、各ボクセルの最大移動量の所定割合(例えば50%)以上動いたフェーズを特定し、対応するフェーズ画像の対応するボクセルを特定の色で表示するなどしてもよい。これにより、心筋の同調性を把握することができる。例えば、同調性の高い被験者であれば、特定のフェーズを中心に所定の色で表示されるが、同調性の低い被験者の場合、所定の色で表示される領域が多数のフェーズにばらつくことが考えられる。これにより、ボクセル単位で、心筋の同調性のずれを把握することができ、心筋梗塞の予兆とされる同調性のずれを早期に発見することが可能となる。
【0070】
例えば、表示制御部23は、いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのフェーズ画像(ボリュームデータ)に対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる。以下に示す例では、ある患者の最大移動量について表示しているが、同様にして、ある健常者または健常者平均の最大移動量を表示することもできる。
【0071】
図8及び図9に、フェーズ画像上の最大移動量の表示画面1000,1100の例を示す。同図に示すように、表示制御部23は、あるフェーズのフェーズ画像(ここでは基準フェーズ)を表示させる。図8は、基準フェーズのスライス画像(SA画像は8枚、VLA画像及びHLA画像はそれぞれ4枚)の表示例であり、図9は同じフェーズの3D表示の例である。これらの画像において、各ボクセルの値には、動きパラメータデータ191に含まれている、そのボクセルの最大移動量が設定されていて、そのボクセル値に応じた表示態様(ここでは表示色)で表示されている。
【0072】
これにより、心臓の部位ごとの最大移動量の大きさを把握できる。特に、最大移動量が小さい部分(動きがよくない部分)を簡単に見つけることができる。また、図8のように断面図を表示している場合、心臓の肉厚方向での最大移動量の相違を把握できる。例えば、内壁と外壁の動きの違いなども見つけることが可能である。
【0073】
図10及び図11に、移動軌跡の表示例を示す。図10はボクセル選択画面、図11Aは複数のボクセルの移動軌跡画面であり、図11Bは一つのボクセルの移動軌跡の拡大表示画面である。すなわち、表示制御部23は、図10のボクセル選択画面1200を表示させて、オペレータに心臓の部位(ボクセル)1210を選択させる。ボクセル選択画面1200では複数の部位を選択することができる。表示制御部23は、ベクトルデータ151,153に基づいて、ここで選択された部位1210の移動軌跡を、図11A及びBのような移動軌跡表示画面1300において3D表示させる。移動軌跡は、ドットを起点として個別動きベクトルをつなぎ合わせ、四角を終点とする。なお、この例ではボクセル単位の移動軌跡を表示したが、複数のボクセルからなる領域の個別動きベクトルを求め、それを用いて移動軌跡を表示してもよい。
【0074】
さらに、表示制御部23は、患者の動きパラメータ191に基づく表示態様の画像と健常者の動きパラメータ195に基づく表示態様の画像とを並べて表示してもよい。
【0075】
図7は、上記のような構成を備えるSPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。心電図同期SPECTデータ記憶部11には、予め画像再構成システム1によって再構成された患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113が保存されている。
【0076】
まず、動きベクトル算出部13が、患者の心電図同期SPECT画像111に基づいて患者の動きベクトル群を算出し、患者ベクトルデータ151としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S41)。動きベクトル算出部13は、さらに、一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113に基づいて健常者の動きベクトル群を算出し、健常者ベクトルデータ153としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S43)。
【0077】
動きパラメータ算出部17が、患者ベクトルデータ151に基づいて患者の動きパラメータを算出し、患者動きパラメータデータ191として、動きパラメータデータ記憶部19に保存する(S45)。動きパラメータ算出部17は、さらに、一以上の健常者の健常者ベクトルデータ153に基づいて、健常者の動きパラメータを算出し、健常者動きパラメータデータ193として、動きパラメータデータ記憶部19に保存する(S47)。さらに、健常者データ処理部18が、健常者平均の動きパラメータデータ195を生成して、動きパラメータデータ記憶部19に保存する。なお、ステップS45とステップS47はいずれを先に行ってもよい。
【0078】
ポーラーマップ生成部21は、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている患者の動きパラメータデータ191に基づいて、動きパラメータを反映させた患者のポーラーマップを生成する(S49)。ポーラーマップ生成部21は、さらに、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている健常者の動きパラメータデータ195に基づいて、動きパラメータを反映させた健常者のポーラーマップを生成する(S51)。ステップS49とステップS51はいずれを先に行ってもよい。
【0079】
そして、表示制御部23は、患者及び健常者のポーラーマップを表示装置5に表示させる(S53)。さらに、表示制御部23は、患者及び健常者の動きパラメータを表示装置5に表示させる(S55)。なお、ステップS53のポーラーマップの表示と、ステップS55の動きパラメータの表示は、上記のように同時に行ってもよいし、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0080】
これにより、心電図同期SPECT画像から抽出した心臓の動きの特徴を示す動きパラメータによって、患者と健常者とを対比するなどの被験者間の比較を容易に行うことができる。
【0081】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、ボクセルごとに各種動きパラメータを算出する例について説明したが、複数のボクセルにより構成される領域ごとに動きパラメータを算出するようにしてもよい。複数のボクセルにより構成される領域は、例えば、基準フェーズ画像において予め定められていてもよいし、基準フェーズ画像またはいずれかのフェーズ画像に対してオペレータが入力装置3を用いて所定の入力操作を行うことによって特定してもよい。各領域の移動軌跡は、例えば、動きベクトル群ごとに、その領域内のボクセルのベクトルを平均した平均ベクトルを求め、その平均ベクトルをつなげることによって求めてもよい。移動軌跡を算出した以降の処理は、ボクセル単位の処理と同様である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像再構成システム
10 画像処理装置本体
11 データ記憶部
13 ベクトル算出部
15 ベクトルデータ記憶部
17 動きパラメータ算出部
19 動きパラメータデータ記憶部
21 ポーラーマップ生成部
23 表示制御部
100 SPECT画像処理装置
171 移動軌跡抽出部
173 最大移動算出部
175 最大変化算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図同期SPECT(Gated SPECT)画像から心臓の動きの特徴を評価するための動きパラメータを求めるとともに、この動きパラメータを用いて被験者間の比較を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者にRIを投与して、心筋の血流の状態を示す心臓の断層画像を撮影する心筋SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)という手法が知られている。さらに、心筋SPECTの撮影方法として、心電図に同期させて撮影する心電図同期SPECT(Gated SPECT)と、心電図とは非同期の心電図非同期SPECT(Non−Gated SPECT)とがある。心電図同期SPECTにより撮影した画像を処理する技術には、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−153867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、心電図非同期SPECTは、心臓の動きを無視したブレの大きい画像であり、そこから得られる情報には限界がある。
【0005】
心電図同期SEPCTは、複数のフェーズ画像をそれぞれ解析することによって、心臓の動きによる変化を抽出し、より多くの情報を得られるようにしたものである。
【0006】
ここで、心臓の動きが適正であるか否かを評価するためには、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報によって行う必要がある。しかしながら、心電図同期SEPCT画像から、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を抽出する手法は確立されていない。
【0007】
これは、心電図同期SEPCT画像に限らず、心電図に同期させた他のモダリティに係る画像に対しても同様である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、心電図に同期した画像から、心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を抽出することである。
【0009】
さらに、本発明の別の目的は、心電図に同期した画像から抽出した心臓の動きの特徴を定量的に示す情報を用いて、被験者間で心臓の動きを比較することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従うボリュームデータ処理装置は、心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、前記動きベクトル算出手段が算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出手段と、を備える。
【0011】
好適な実施形態では、前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つを基準フェーズボリュームデータとし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルを前記所定の領域とし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとしたとき、前記動きパラメータ算出手段は、前記動きベクトル群を用いて、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、前記基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに前記動きパラメータを算出するようにしてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置までの距離を示す最大移動量であってもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置に到達したときのフェーズを示す最大移動フェーズであってもよい。
【0014】
好適な実施形態では、いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び前記所定領域の動きパラメータに基づいて、前記一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに前記所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示させる画像表示手段を、さらに備えてもよい。
【0015】
好適な実施形態では、前記記憶手段には、前記記憶手段には、第1の被験者のボリュームデータと一以上の第2の被験者のボリュームデータとが記憶されていて、前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者のボリュームデータのそれぞれについて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出し、前記動きパラメータ算出手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記動きパラメータをそれぞれ算出し、前記画像表示手段は、前記第1の被験者の動きパラメータ及び前記一以上の第2の被験者の動きパラメータに基づくそれぞれの画像を表示させるようにしてもよい。
【0016】
好適な実施形態では、いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのボリュームデータに対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる画像表示手段をさらに有してもよい。
【0017】
好適な実施形態では、前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出するようにしてもよい。
【0018】
好適な実施形態では、前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムの全体構成図である。
【図2】心電図同期SPECTの説明図である。
【図3】動きベクトルの説明図である。
【図4】動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。
【図5】移動軌跡抽出部171によって特定される基準ボクセルRの移動軌跡の一例を示す。
【図6】動きパラメータ算出部17が行う動きベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】SPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。
【図8】フェーズ画像上の最大移動量の表示画面である。
【図9】フェーズ画像上の最大移動量の表示画面である。
【図10】移動軌跡の表示例を示す。
【図11】移動軌跡の表示例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムについて、図面を基準して説明する。本実施形態では、心筋の血流及び機能の解析を行うための心電図同期SPECT法に基づいて撮影した画像の解析を行う心電図同期SPECTの画像解析を例に説明するが、本発明は、これ以外にも、心電図に同期させたPET(Positron Emission Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、CT(Computed Tomography)、及び超音波などの各画像に対しても同様に適用することができる。
【0021】
図1は、本実施形態にかかるSPECT画像処理システムの全体構成図である。すなわち、本システムは、心電図同期SPECT法で被験者の心臓の3次元画像を生成する画像再構成システム1と、画像再構成システム1で再構成された時系列の画像データの解析を行うSPECT画像処理装置100とを備える。
【0022】
画像再構成システム1は、心電図と同期させて、各フェーズ(位相)における心臓の3次元SPECT画像を生成する、心電図同期SPECTを行う。例えば、図2に示すように、心電図のR波同士の間隔(R−R間隔:心臓の運動の1周期)をN(Nは2以上の整数)等分し、R−R間隔の1/Nのサンプリング周期で各フェーズのSPECT画像(以下、フェーズ画像と称する)を撮影する。図2には、3次元画像の一つの断層画像である短軸断層画像(Short Axis;SA画像)を例示しているが、これ以外にも、左心室の長軸垂直断層像(Vertical Long Axis;VLA画像)、長軸水平断層像(Horizontal Long Axis;HLA画像)などの表示の仕方がある。
【0023】
この撮影は、少なくとも心拍の1周期以上の間継続して行われる。画像再構成システム1は、同一部位について、複数の周期に渡り、同一フェーズの画像を重ね合わせて、N枚のフェーズ画像(ボリュームデータ)を生成する。なお、図2ではN=8の例を示したが、Nは任意であって、例えば、16,20,32などでもよい。画像再構成システム1によって生成された心電図同期SPECT画像が、SPECT画像処理装置100の心電図同期SPECTデータ記憶部11に格納される。
【0024】
図1に戻ると、SPECT画像処理装置100は、画像処理装置本体10と、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの入力装置3及び液晶ディスプレイなどの表示装置5とを備える。
【0025】
画像処理装置本体10は、例えばプロセッサ及びメモリを備える汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する画像処理装置本体10内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。そのコンピュータプログラムは、コンピュータ読みとり可能な記録媒体に格納可能である。
【0026】
画像処理装置本体10は、心電図同期SPECT画像(心電図同期画像)を記憶する心電図同期SPECTデータ記憶部11と、心電図同期SPECT画像から動きベクトルを算出する動きベクトル算出部13と、心臓の動きを示す動きベクトルのデータを記憶するベクトルデータ記憶部15と、心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出部17と、健常者の動きパラメータを処理する健常者データ処理部18と、動きパラメータを記憶する動きパラメータデータ記憶部19と、正規化処理部20と、ポーラーマップ生成部21と、表示制御部23と備える。
【0027】
心電図同期SPECTデータ記憶部11は、患者(第1の被験者)の心電図同期SPECTデータ111と、一以上の健常者(第2の被験者)の心電図同期SPECTデータ113とを記憶する。心電図同期SPECT画像111、113は、心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのフェーズ画像(ボリュームデータ)からなる。各フェーズ画像は、それぞれ3次元画像であるから、心電図同期SPECT画像111、113は、3次元ボクセルにそれぞれのカウント値(画素値)が格納されるボリュームデータである。
【0028】
動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECT画像の複数のフェーズ画像について、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像を用いて、そのフェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトルを算出する。動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して、以下に説明する処理によって患者の動きベクトル及び健常者の動きベクトルの算出を行う。ここで算出された心電図同期SPECT画像111に対応する患者の動きベクトルのデータ(患者ベクトルデータ)151、及び心電図同期SPECT画像113に対応する健常者の動きベクトルのデータ(健常者ベクトルデータ)153は、それぞれベクトルデータ記憶部15に保存される。
【0029】
動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像のうちの前フェーズのフェーズ画像における心臓領域に対応するそれぞれのボクセルが、後フェーズのフェーズ画像においてどこへ移動したかを示す個別の3次元動きベクトルを算出する。つまり、動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像から、ボクセル数分の個別の動きベクトルを含む動きベクトル群を算出する。動きベクトル算出部13は、すべてのフェーズ間について動きベクトル群を算出する。図2のように8フェーズの心電図同期SPECT画像の場合、7つの動きベクトル群が算出される。
【0030】
動きベクトル算出部13は、複数のボクセルを一つの単位として、それぞれの個別動きベクトルを算出してもよいし、最後のフェーズ画像と最初のフェーズ画像(図2の場合フェーズ画像P8とP1)の間の動きベクトル群を算出してもよい。
【0031】
動きベクトル算出部13は、互いにフェーズが隣り合う2枚のフェーズ画像間の濃度勾配に基づいて動きベクトルを算出する。例えば、動きベクトル算出部13は、オプティカルフロー法(特に、濃度勾配を利用した勾配法またはブロックマッチング法)を用いて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出してもよい。動きベクトル算出部13は、これ以外の方法で動きベクトルを算出してもよい。
【0032】
図3を用いて、動きベクトル算出部13の処理例について具体的に説明する。なお、ここでは説明の便宜のために2次元の画像及び2次元のベクトルを図示しているが、現実には、動きベクトル算出部13は3次元画像(ボリュームデータ)を用いて3次元ベクトルを算出する。
【0033】
図3は、連続するフェーズ画像の例として、フェーズ1のフェーズ画像P1、フェーズ2のフェーズ画像P2及びフェーズ3のフェーズ画像P3におけるSA画像を示す。動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P1とP2から、フェーズ1−2間の動きベクトル群V1を算出する。同様に、動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P2とP3から、フェーズ2−3間の動きベクトル群V2を算出する。動きベクトル算出部13は、フェーズ4以降の画像に対しても同様の処理を行う。図3に示す動きベクトル群V1、V2内の一つ一つの矢印及び点が個別の動きベクトルを示す。
【0034】
例えば、ベクトル算出部13は、動きベクトル群を算出する際、オプティカルフロー法を用いて、前フェーズのフェーズ画像(例えばフェーズ1)の各ボクセルから、後フェーズのフェーズ画像(例えばフェーズ2)のいずれかのボクセルへの個別の動きベクトルをそれぞれ算出する。そして、動きベクトル群に含まれる各個別の動きベクトルは、前フェーズのフェーズ画像の各ボクセルにそれぞれ対応づけられる。
【0035】
図4は、動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。動きベクトル算出部13は、患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して以下の処理を実行する。
【0036】
動きベクトル算出部13は、まず、隣り合う2枚のフェーズ画像を対象画像として特定する(S11)。動きベクトル算出部13は、ステップS11で特定された対象画像を用いて、オプティカルフロー法によって対象画像のうちの前のフェーズ画像から後のフェーズ画像への動きベクトル群を算出する(S13)。動きベクトル算出部13は、ここで算出された動きベクトル群をベクトルデータ記憶部15に保存する(S15)。動きベクトル算出部13は、ステップS11〜S15の処理をすべてのフェーズ間について行う(S17)。ここで算出されたすべてのフェーズ間のベクトル群が、所定の基準の範囲内に収束するまで、ステップS11〜S17までの処理を繰り返して行う(S19)。
【0037】
図1に戻ると、ベクトルデータ記憶部15は、ベクトル算出部13によって算出された動きベクトルのデータを保存する。例えば、心電図同期SPECT画像111,113を上記の例のように心拍の1周期を8フェーズに分けたときは、ベクトルデータ記憶部15には、それぞれの患者及び健常者の心電図同期SPECT画像111,113について、それぞれ、7つの動きベクトル群がベクトルデータ151,153として保存される。なお、患者及び健常者のベクトルデータ151,153は、上述の通り、3次元のボクセルのそれぞれに、一つの3次元ベクトルが割り当てられている。
【0038】
動きパラメータ算出部17は、動きベクトル算出部13によって算出された動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する。ここで、所定の領域は一以上のボクセルで構成される。本実施形態では、その領域の最小単位であるボクセル単位に動きパラメータを算出する場合を例にとって説明する。
【0039】
例えば、動きパラメータ算出部17は、複数の動きベクトル群を用いて、複数のフェーズ画像のうちの一つである基準フェーズ画像上の複数のボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに動きパラメータを算出する。動きパラメータ算出部17が算出した動きパラメータは動きパラメータデータ記憶部19に格納される。
【0040】
本実施形態では、動きパラメータの一例として、心拍一周期における心臓の動きの中で、心臓の各部位の移動量が最大となる最大移動に関連するパラメータと、フェーズ間での変化量(移動量)が最大となる最大変化に関連するパラメータとを算出する。最大移動に関連するパラメータとしては、例えば、あるフェーズを基準フェーズとしたとき、心臓の各部位が、基準フェーズにおける位置から移動した移動距離が最大となる最大移動量、その最大移動量だけ移動した時のフェーズ(最大移動フェーズ)及び、基準フェーズにおける位置から最大移動量だけ移動した位置へのベクトル(最大移動ベクトル)などがある。最大変化に関連するパラメータとしては、例えば、隣り合うフェーズ間での変化(移動距離)が最大となる最大変化量、最大変化量となったフェーズ間、及び最大変化量となった時のベクトル(最大変化ベクトル)などがある。以下、これらの算出方法について具体的に説明する。
【0041】
動きパラメータ算出部17は、移動軌跡抽出部171と、最大移動算出部173と、最大変化算出部175とを有する。
【0042】
移動軌跡抽出部171は、複数の動きベクトル群を用いて、複数のフェーズ画像のうちの一つである基準フェーズ画像上の複数のボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定する。移動軌跡抽出部171は、ある一つのフェーズ画像を基準フェーズ画像とする。そして、基準フェーズ画像上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとし、各基準ボクセルについて、それぞれに対応する個別動きベクトルを辿り、基準フェーズ画像以外のフェーズ画像上での位置を特定することによって、基準ボクセルの移動軌跡を抽出する。
【0043】
図5は、移動軌跡抽出部171によって特定される基準ボクセルRの移動軌跡の一例を示す。
【0044】
ここでは、フェーズ画像P1を基準フェーズ画像として説明する。しかし、フェーズ画像P1以外を基準フェーズ画像としてもよい。移動軌跡抽出部171は、基準フェーズ画像上の各ボクセルを基準ボクセルRとして、それぞれに対して以下のようにして移動軌跡Mを特定する。
【0045】
移動軌跡抽出部171は、基準フェーズ画像と次のフェーズ画像(ここではフェーズ画像P2)との間の動きベクトル群(ここでは動きベクトル群V1)から、基準ボクセルRに対応づけられている個別動きベクトルv1を特定する。個別動きベクトルv1により、次のフェーズ画像であるフェーズ画像P2における、基準ボクセルRの移動先である対応ボクセルR2が定まる。
【0046】
次に、移動軌跡抽出部171は、上記と同様にして、フェーズ画像P2とP3との間の動きベクトル群V2から、対応ボクセルR2に対応づけられている個別動きベクトルv2を特定する。個別動きベクトルv2により、次のフェーズ画像であるフェーズ画像P3における、基準ボクセルRの移動先である対応ボクセルR3が定まる。
【0047】
このような処理をすべての動きベクトル群及びフェーズ画像を用いて行うことにより、心拍一周期に渡って、基準ボクセルRから始まる個別ベクトルをつなげた基準ボクセルRの移動軌跡Mが抽出できる。
【0048】
最大移動算出部173は、移動軌跡抽出部171が特定した移動軌跡Mに基づいて、基準フェーズ画像の各ボクセルについて、最大移動に関するパラメータを算出する。例えば、最大移動算出部173は、最大移動量、最大移動フェーズ及び最大移動ベクトルを算出する。
【0049】
以下、図5を基準して説明する。最大移動算出部173は、基準ボクセルR及び対応ボクセルR2〜R8のボクセルの位置座標に基づいて、基準ボクセルRから対応ボクセルR2〜R8までの移動距離をそれぞれ算出し、その中の最大距離を最大移動量Dmaxとする。つまり、最大移動量Dmaxは、移動軌跡Mにおいて起点となる基準フェーズ画像における位置(基準ボクセル)から最も離れた位置(対応ボクセル)までの距離である。最大移動算出部173は、その最大移動量Dmaxとなったフェーズを最大移動フェーズDPmaxとする。つまり、最大移動フェーズDPmaxは、移動軌跡の中で、起点となる基準フェーズ画像における位置(基準ボクセル)から最も離れた位置(対応ボクセル)となるフェーズである。さらに、最大移動算出部173は、基準ボクセルRから最大移動フェーズDPmaxにおける対応ボクセルまでのベクトルを最大移動ベクトルDVmaxとする。
【0050】
最大変化算出部175は、移動軌跡抽出部171が特定した移動軌跡Mに基づいて、基準フェーズ画像の各ボクセルについて、最大変化に関するパラメータを算出する。例えば、最大変化算出部175は、最大変化量、最大変化フェーズ及び最大変化ベクトルを算出する。
【0051】
最大移動算出部173及び最大変化算出部175は、移動軌跡抽出部171が抽出した移動軌跡に基づいて、患者のベクトルデータ151からそれぞれのパラメータを算出し、これを患者の動きパラメータデータ191として動きパラメータデータ記憶部19に保存する。同様に、最大移動算出部173及び最大変化算出部175は、一以上の健常者のベクトルデータ153から、それぞれのパラメータを算出し、これを一以上の健常者の動きパラメータデータ193として動きパラメータデータ記憶部19に保存する。
【0052】
以下、図5を基準して説明する。最大変化算出部175は、基準ボクセルRの移動軌跡Mを構成する各個別動きベクトルv1〜v7のうち、大きさが最も大きい(移動距離が長い)ベクトルを最大変化ベクトルCVmax(ここでは個別動きベクトルv2)とする。そして、この最大変化ベクトルCVmaxの大きさを最大変化量Cmax、最大変化ベクトルCVmaxがどのフェーズ間のベクトルであるかを示すフェーズ間(ここでは、フェーズ2−3間)を最大変化フェーズCPmaxとする。
【0053】
図6は、動きパラメータ算出部17が行う動きベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。動きパラメータ算出部17は、患者及び被験者のぞれぞれのベクトルデータ151,153を用いて以下の処理を実行する。
【0054】
動きパラメータ算出部17は、まず、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されているフェーズ画像のうちの一つを基準画像に定める(S21)。さらに、動きパラメータ算出部17は、基準画像の中の一つのボクセルを基準ボクセルとして定める(S23)。
【0055】
移動軌跡抽出部171が、基準ボクセルに対して、各動きベクトル群のデータを用いて、心拍一周期に渡る移動軌跡を抽出する(S25)。そして、最大移動算出部173が、ステップS25で抽出された移動軌跡に基づいて、上述のようにして最大移動に関する動きパラメータを算出する(S27)。さらに、最大変化算出部175が、ステップS25で抽出された移動軌跡に基づいて、上述のようにして最大変化に関する動きパラメータを算出する(S29)。これにより、一つの基準ボクセルに対する動きパラメータが算出される。ステップS27及びS29で算出された動きパラメータが動きパラメータデータ記憶部19に保存される(S31)。
【0056】
動きパラメータ算出部17は、ステップS23〜S31までの処理を、基準画像のすべてのボクセルについて行い、すべてのボクセルの動きパラメータが求まるとこの処理が終了する(S33)。
【0057】
これにより、心電図同期SPECT画像から求めた動きベクトルを用いて、患者及び一以上の健常者の心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを抽出することができる。これらのパラメータにより、心臓の動きを定量評価することが可能となる。
【0058】
図1に戻ると、動きパラメータデータ記憶部19には、患者の動きパラメータデータ191及び健常者の動きパラメータデータ193がそれぞれ記憶される。本実施形態では、動きパラメータには、上述のような最大移動に関するパラメータ(最大移動量、最大移動フェーズ、最大移動ベクトル)及び最大変化に関するパラメータ(最大変化量、最大変化フェーズ、最大変化ベクトル)が含まれる。患者の動きパラメータデータ191及び健常者の動きパラメータデータ193では、基準画像のボクセル単位に、上記の動きパラメータが対応づけて記憶されている。
【0059】
ここで、動きパラメータデータ記憶部19には、さらに、健常者平均の動きパラメータデータ195が記憶される。健常者平均の動きパラメータデータ195は、健常者データ処理部18が一以上の健常者の動きパラメータデータ193に基づいて算出した、健常者平均のパラメータデータである。例えば、健常者データ処理部18は、複数の健常者のそれぞれの動きパラメータデータ193を平均して、健常者平均の動きパラメータ195を生成する。これ以降の処理は、健常者の動きパラメータとして健常者平均の動きパラメータデータ195を用いてもよい健常者データ処理部18は、次に説明する正規化処理部20で複数の健常者のパラメータデータを正規化した後に、健常者平均の動きパラメータデータ195を生成してもよい。
【0060】
正規化処理部20は、動きパラメータデータ記憶部19に記憶されている動きパラメータデータを正規化する。心臓の大きさには個人差があるため、正規化を行って個人差を取り除いてから比較するためである。
【0061】
ポーラーマップ生成部21は、心電図同期SPECT画像111,113などの心臓の3次元画像データに基づいてポーラーマップ(ブルズアイマップ)を生成する。本実施形態では、ポーラーマップ生成部21は、動きパラメータをポーラーマップに反映させる。すなわち、ポーラーマップ生成部21は、基準フェーズ画像及び各基準ボクセルの動きパラメータに基づいて、基準フェーズ画像のボクセル値の代わりに動きパラメータを用いたポーラーマップを生成する。
【0062】
例えば、ポーラーマップ生成部21は、心電図同期SPECT画像111,113に対して、周知のポーラーマップの生成方法に従って、ポーラーマップに反映させるボクセルを特定する。通常であれば、そのボクセルのカウント値を用いてポーラーマップを生成するが、本実施形態では、そのボクセルに対応づけられている動きパラメータの値を用いてポーラーマップを生成する。例えば、ボクセルのカウント値の代わりに、最大移動量を用いたポーラーマップ、あるいは最大変化量を用いたポーラーマップを生成してもよい。これにより、患者のデータに基づくポーラーマップと健常者のデータに基づくポーラーマップを生成し、表示制御部23を介して両方を表示装置5に表示させることにより、患者と健常者の動きパラメータを比較することができる。
【0063】
ポーラーマップ生成部21は、一以上の健常者については、個々の健常者の動きパラメータデータ193からポーラーマップを生成してもよいし、複数の健常者の動きパラメータを平均した健常者平均動きパラメータデータ195からポーラーマップを生成してもよい。
【0064】
なお、ポーラーマップ生成部21は、ポーラーマップを生成することで被験者のデータを正規化し、被験者同士(例えば患者と健常者)を比較することができる。従って、SPECT画像処理装置100は、ポーラーマップ以外の正規化手法を用いて、被験者間の比較を行ってもよい。
【0065】
表示制御部23は、いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び所定領域の動きパラメータに基づいて、その一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示装置5に表示させる。表示制御部23が表示装置5に表示させる画像の表示様態としては、心臓全体を一度に見ることができる「ポーラーマップ」、心臓の形態において見ることができる「3D表示」、心筋組織の断面を見ることができる「断層画像」等がある。
【0066】
例えば、ポーラーマップを表示させる場合は、表示制御部23は、ポーラーマップ生成部21が生成したポーラーマップを表示装置5に表示させる。
【0067】
また、表示制御部23は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている心電図同期SPECT画像111、113及びベクトルデータ記憶部15に保存されているベクトルデータ151を表示装置5に表示させてもよい。また、表示制御部23は、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている動きパラメータデータ191、193、195の数値をそのまま表示装置5に出力してもよい。このとき、表示制御部23が患者の動きパラメータと健常者の動きパラメータをともに表示装置5に表示させることにより、両者を比較することができる。
【0068】
表示制御部23は、患者及び健常者の動きパラメータ191、193、195に応じた画像を心臓の画像と重ねて表示してもよい。例えば、表示制御部23は、心臓の2次元断層画像または3次元画像上に、動きパラメータの値に応じた表示態様の画像を、それぞれ対応するボクセルの位置に重ねて表示する。この心臓の画像は、例えば、心電図同期SPECTデータ記憶部11に記憶されている患者または健常者の心電図同期SPECT画像111,113であってもよいし、別の画像であってもよい。動きパラメータの値に応じた表示態様とは、例えば、パラメータの値に応じて色分けした表示や、パラメータの値が所定の閾値を越える領域をマークするなどでもよい。
【0069】
また、表示制御部23は、各フェーズ画像と、患者及び健常者の動きパラメータ191、193、195の各フェーズの特徴を示す画像とを重ねて表示してもよい。例えば、表示制御部23は、同一被験者において、各フェーズ画像中の各ボクセルについて、最大移動フェーズを記録したフェーズを所定の色で表示する。あるいは、各ボクセルの最大移動量の所定割合(例えば50%)以上動いたフェーズを特定し、対応するフェーズ画像の対応するボクセルを特定の色で表示するなどしてもよい。これにより、心筋の同調性を把握することができる。例えば、同調性の高い被験者であれば、特定のフェーズを中心に所定の色で表示されるが、同調性の低い被験者の場合、所定の色で表示される領域が多数のフェーズにばらつくことが考えられる。これにより、ボクセル単位で、心筋の同調性のずれを把握することができ、心筋梗塞の予兆とされる同調性のずれを早期に発見することが可能となる。
【0070】
例えば、表示制御部23は、いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのフェーズ画像(ボリュームデータ)に対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる。以下に示す例では、ある患者の最大移動量について表示しているが、同様にして、ある健常者または健常者平均の最大移動量を表示することもできる。
【0071】
図8及び図9に、フェーズ画像上の最大移動量の表示画面1000,1100の例を示す。同図に示すように、表示制御部23は、あるフェーズのフェーズ画像(ここでは基準フェーズ)を表示させる。図8は、基準フェーズのスライス画像(SA画像は8枚、VLA画像及びHLA画像はそれぞれ4枚)の表示例であり、図9は同じフェーズの3D表示の例である。これらの画像において、各ボクセルの値には、動きパラメータデータ191に含まれている、そのボクセルの最大移動量が設定されていて、そのボクセル値に応じた表示態様(ここでは表示色)で表示されている。
【0072】
これにより、心臓の部位ごとの最大移動量の大きさを把握できる。特に、最大移動量が小さい部分(動きがよくない部分)を簡単に見つけることができる。また、図8のように断面図を表示している場合、心臓の肉厚方向での最大移動量の相違を把握できる。例えば、内壁と外壁の動きの違いなども見つけることが可能である。
【0073】
図10及び図11に、移動軌跡の表示例を示す。図10はボクセル選択画面、図11Aは複数のボクセルの移動軌跡画面であり、図11Bは一つのボクセルの移動軌跡の拡大表示画面である。すなわち、表示制御部23は、図10のボクセル選択画面1200を表示させて、オペレータに心臓の部位(ボクセル)1210を選択させる。ボクセル選択画面1200では複数の部位を選択することができる。表示制御部23は、ベクトルデータ151,153に基づいて、ここで選択された部位1210の移動軌跡を、図11A及びBのような移動軌跡表示画面1300において3D表示させる。移動軌跡は、ドットを起点として個別動きベクトルをつなぎ合わせ、四角を終点とする。なお、この例ではボクセル単位の移動軌跡を表示したが、複数のボクセルからなる領域の個別動きベクトルを求め、それを用いて移動軌跡を表示してもよい。
【0074】
さらに、表示制御部23は、患者の動きパラメータ191に基づく表示態様の画像と健常者の動きパラメータ195に基づく表示態様の画像とを並べて表示してもよい。
【0075】
図7は、上記のような構成を備えるSPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。心電図同期SPECTデータ記憶部11には、予め画像再構成システム1によって再構成された患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113が保存されている。
【0076】
まず、動きベクトル算出部13が、患者の心電図同期SPECT画像111に基づいて患者の動きベクトル群を算出し、患者ベクトルデータ151としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S41)。動きベクトル算出部13は、さらに、一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113に基づいて健常者の動きベクトル群を算出し、健常者ベクトルデータ153としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S43)。
【0077】
動きパラメータ算出部17が、患者ベクトルデータ151に基づいて患者の動きパラメータを算出し、患者動きパラメータデータ191として、動きパラメータデータ記憶部19に保存する(S45)。動きパラメータ算出部17は、さらに、一以上の健常者の健常者ベクトルデータ153に基づいて、健常者の動きパラメータを算出し、健常者動きパラメータデータ193として、動きパラメータデータ記憶部19に保存する(S47)。さらに、健常者データ処理部18が、健常者平均の動きパラメータデータ195を生成して、動きパラメータデータ記憶部19に保存する。なお、ステップS45とステップS47はいずれを先に行ってもよい。
【0078】
ポーラーマップ生成部21は、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている患者の動きパラメータデータ191に基づいて、動きパラメータを反映させた患者のポーラーマップを生成する(S49)。ポーラーマップ生成部21は、さらに、動きパラメータデータ記憶部19に保存されている健常者の動きパラメータデータ195に基づいて、動きパラメータを反映させた健常者のポーラーマップを生成する(S51)。ステップS49とステップS51はいずれを先に行ってもよい。
【0079】
そして、表示制御部23は、患者及び健常者のポーラーマップを表示装置5に表示させる(S53)。さらに、表示制御部23は、患者及び健常者の動きパラメータを表示装置5に表示させる(S55)。なお、ステップS53のポーラーマップの表示と、ステップS55の動きパラメータの表示は、上記のように同時に行ってもよいし、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0080】
これにより、心電図同期SPECT画像から抽出した心臓の動きの特徴を示す動きパラメータによって、患者と健常者とを対比するなどの被験者間の比較を容易に行うことができる。
【0081】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、ボクセルごとに各種動きパラメータを算出する例について説明したが、複数のボクセルにより構成される領域ごとに動きパラメータを算出するようにしてもよい。複数のボクセルにより構成される領域は、例えば、基準フェーズ画像において予め定められていてもよいし、基準フェーズ画像またはいずれかのフェーズ画像に対してオペレータが入力装置3を用いて所定の入力操作を行うことによって特定してもよい。各領域の移動軌跡は、例えば、動きベクトル群ごとに、その領域内のボクセルのベクトルを平均した平均ベクトルを求め、その平均ベクトルをつなげることによって求めてもよい。移動軌跡を算出した以降の処理は、ボクセル単位の処理と同様である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像再構成システム
10 画像処理装置本体
11 データ記憶部
13 ベクトル算出部
15 ベクトルデータ記憶部
17 動きパラメータ算出部
19 動きパラメータデータ記憶部
21 ポーラーマップ生成部
23 表示制御部
100 SPECT画像処理装置
171 移動軌跡抽出部
173 最大移動算出部
175 最大変化算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、
前記動きベクトル算出手段が算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出手段と、を備えるボリュームデータ処理装置。
【請求項2】
前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つを基準フェーズボリュームデータとし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルを前記所定の領域とし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとしたとき、
前記動きパラメータ算出手段は、前記動きベクトル群を用いて、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、前記基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに前記動きパラメータを算出する、請求項1記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項3】
前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置までの距離を示す最大移動量である、請求項2記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項4】
前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置に到達したときのフェーズを示す最大移動フェーズである、請求項2又は3に記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項5】
いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び前記所定領域の動きパラメータに基づいて、前記一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに前記所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示させる画像表示手段を、さらに備える請求項1〜4のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項6】
前記記憶手段には、第1の被験者のボリュームデータと一以上の第2の被験者のボリュームデータとが記憶されていて、
前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者のボリュームデータのそれぞれについて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出し、
前記動きパラメータ算出手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記動きパラメータをそれぞれ算出し、
前記画像表示手段は、前記第1の被験者の動きパラメータ及び前記一以上の第2の被験者の動きパラメータに基づくそれぞれの画像を表示させる、請求項5記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項7】
いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのボリュームデータに対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる画像表示手段をさらに有する、請求項3記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項8】
前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出する、請求項1〜7のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項9】
前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データである、請求項1〜8のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項10】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置が行う方法であって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出するステップと、を行うボリュームデータの処理方法。
【請求項11】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出するステップと、を前記ボリュームデータ処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、
前記動きベクトル算出手段が算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出する動きパラメータ算出手段と、を備えるボリュームデータ処理装置。
【請求項2】
前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つを基準フェーズボリュームデータとし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルを前記所定の領域とし、前記基準フェーズボリュームデータ上の各ボクセルをそれぞれ基準ボクセルとしたとき、
前記動きパラメータ算出手段は、前記動きベクトル群を用いて、各基準ボクセルの心拍の1周期に渡る移動軌跡を特定し、前記基準ボクセルの移動軌跡に基づいて、基準ボクセルごとに前記動きパラメータを算出する、請求項1記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項3】
前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置までの距離を示す最大移動量である、請求項2記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項4】
前記動きパラメータは、前記移動軌跡において、起点となる基準フェーズボリュームデータにおける位置から最も離れた位置に到達したときのフェーズを示す最大移動フェーズである、請求項2又は3に記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項5】
いずれか一つのフェーズのボリュームデータ及び前記所定領域の動きパラメータに基づいて、前記一つのフェーズのボリュームデータのボクセル値の代わりに前記所定領域の動きパラメータを用いた画像を表示させる画像表示手段を、さらに備える請求項1〜4のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項6】
前記記憶手段には、第1の被験者のボリュームデータと一以上の第2の被験者のボリュームデータとが記憶されていて、
前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者のボリュームデータのそれぞれについて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出し、
前記動きパラメータ算出手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記動きパラメータをそれぞれ算出し、
前記画像表示手段は、前記第1の被験者の動きパラメータ及び前記一以上の第2の被験者の動きパラメータに基づくそれぞれの画像を表示させる、請求項5記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項7】
いずれかの被験者について、いずれか一つのフェーズのボリュームデータに対応する画像を、各ボクセルの最大移動量に対応する表示態様で表示させる画像表示手段をさらに有する、請求項3記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項8】
前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出する、請求項1〜7のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項9】
前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データである、請求項1〜8のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項10】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置が行う方法であって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出するステップと、を行うボリュームデータの処理方法。
【請求項11】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記算出した動きベクトル群に基づいて、所定の領域ごとの動きを解析して心臓の動きの特徴を示す動きパラメータを算出するステップと、を前記ボリュームデータ処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−40829(P2013−40829A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177243(P2011−177243)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]