説明

ボリュームデータ処理装置及び方法

【課題】心電図同期SPECT画像から、ねじれを含む心臓の動きを打ち消したSPECT画像を合成する。
【解決手段】SPECT画像処理装置100は、心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数枚のフェーズ画像からなる心電図同期SPECT画像を記憶する記憶部11と、記憶部11に記憶されている複数のフェーズ画像について、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像を用いて、そのフェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトル群を、すべてのフェーズ間について算出する動きベクトル算出部13と、記憶部11に記憶されている複数のフェーズ画像と、動きベクトル算出部13により算出された複数の動きベクトル群とを用いて、複数のフェーズ画像を一つの合成SPECT画像に合成する画像合成部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図同期SPECT(Gated SPECT)画像から心臓の動きを打ち消した合成SPECT画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者にRI(Radio Isotope)を投与して、心筋の血流の状態を示す心臓の断層画像を撮影する心筋SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)という手法が知られている。さらに、心筋SPECTの撮影方法として、心電図に同期させて撮影する心電図同期SPECT(Gated SPECT)と、心電図とは非同期の心電図非同期SPECT(Non−Gated SPECT)とがある。心電図同期SPECTにより撮影した画像を処理する技術には、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−153867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、心電図非同期SPECTは、心臓の動きを無視したブレの大きい画像であり、そこから得られる情報には限界がある。
【0005】
心電図同期SEPCTは、複数のフェーズ画像をそれぞれ解析することによって、心臓の動きによる変化を抽出し、より多くの情報を得られるようにしたものである。
【0006】
ところで、心臓の動きをより正確に見ると、上下方向の軸に対してねじれながら拡張及び収縮を繰り返していることが知られている。心電図同期SEPCTの従来の解析では、このねじれは考慮されずに行われている。
【0007】
これは、心電図同期SEPCT画像に限らず、心電図に同期させた他のモダリティに係る画像に対しても同様である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、心電図に同期した画像から、ねじれを含む心臓の動きを打ち消した画像を合成することである。
【0009】
さらに、本発明の別の目的は、ねじれを含む心臓の動きを打ち消した合成画像を用いて、被験者間の比較を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従うボリュームデータ処理装置は、心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータと、前記動きベクトル算出手段により算出された複数の動きベクトル群とを用いて、前記複数フェーズのボリュームデータを一つの合成ボリュームデータに合成するボリュームデータ合成手段と、を備える。
【0011】
好適な実施形態では、前記記憶手段には、第1の被験者の心電図同期ボリュームデータと一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータとが記憶されていて、前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータのそれぞれについて、前記複数の動きベクトル群を算出し、前記ボリュームデータ合成手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記合成ボリュームデータをそれぞれ生成し、前記ボリュームデータ処理装置は、前記第1の被験者の合成ボリュームデータ、及び前記一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータから、前記第1の被験者のポーラーマップ及び前記一以上の第2の被験者のポーラーマップを生成するポーラーマップ生成手段を、さらに備えてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出するようにしてもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記ボリュームデータ合成手段は、前記複数の動きベクトル群を用いて、前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つである参照フェーズのボリュームデータ上の参照ボクセルの移動先のボクセルである対応ボクセルを、前記参照フェーズのボリュームデータ以外のボリュームデータであるターゲットフェーズのボリュームデータ上でそれぞれ特定し、前記特定された各ターゲットフェーズのボリュームデータ上の対応ボクセルのすべてのボクセル値を、前記参照ボクセルのボクセル値に加算して、前記合成SPECTデータを生成するようにしてもよい。
【0014】
好適な実施形態では、前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムの全体構成図である。
【図2】心電図同期SPECTの説明図である。
【図3】動きベクトルの説明図である。
【図4】動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。
【図5】画像合成処理の説明図である。
【図6】SPECT画像合成部17が行う処理のフローチャートである。
【図7】SPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るSPECT画像処理システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態では、心筋の血流及び機能の解析を行うための心電図同期SPECT法に基づいて撮影した画像の解析を行う心電図同期SPECTの画像解析を例に説明するが、本発明は、これ以外にも、心電図に同期させたPET(Positron Emission Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、CT(Computed Tomography)、超音波による画像を用いて、合成画像を生成することができる。
【0017】
図1は、本実施形態にかかるSPECT画像処理システムの全体構成図である。すなわち、本システムは、心電図同期SPECT法で被験者の心臓の3次元画像を生成する画像再構成システム1と、画像再構成システム1で再構成された時系列の画像データの解析を行うSPECT画像処理装置100とを備える。
【0018】
画像再構成システム1は、心電図と同期させて、各フェーズ(位相)における心臓の3次元SPECT画像を生成する、心電図同期SPECTを行う。例えば、図2に示すように、心電図のR波同士の間隔(R−R間隔:心臓の運動の1周期)をN(Nは2以上の整数)等分し、R−R間隔の1/Nのサンプリング周期で各フェーズのSPECT画像(以下、フェーズ画像と称する)を撮影する。図2には、3次元画像の一つの断層画像である短軸断層画像(Short Axis;以下SA画像という)を例示しているが、これ以外にも、左心室の長軸垂直断層像(Vertical Long Axis)、長軸水平断層像(Horizontal Long Axis)などの表示の仕方がある。
【0019】
この撮影は、少なくとも心拍の1周期以上の間継続して行われる。画像再構成システム1は、同一部位について、複数の周期に渡り、同一フェーズの画像を重ね合わせて、N枚のフェーズ画像(ボリュームデータ)を生成する。なお、図2ではN=8の例を示したが、Nは任意であって、例えば、16,20,32などでもよい。画像再構成システム1によって生成された心電図同期SPECT画像が、SPECT画像処理装置100の心電図同期SPECTデータ記憶部11に格納される。
【0020】
図1に戻ると、SPECT画像処理装置100は、画像処理装置本体10と、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの入力装置3及び液晶ディスプレイなどの表示装置5とを備える。
【0021】
画像処理装置本体10は、例えばプロセッサ及びメモリを備える汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する画像処理装置本体10内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。そのコンピュータプログラムは、コンピュータ読みとり可能な記録媒体に格納可能である。
【0022】
画像処理装置本体10は、心電図同期SPECT画像(心電図同期画像)を記憶する心電図同期SPECTデータ記憶部11と、心電図同期SPECT画像から動きベクトルを算出する動きベクトル算出部13と、心臓の動きを示す動きベクトルのデータを記憶するベクトルデータ記憶部15と、合成SPECT画像を生成するSPECT画像合成部17と、健常者の合成SPECT画像を処理する健常者データ処理部18と、合成SPECT画像のデータを記憶する合成SPECTデータ記憶部19と、ポーラーマップ生成部21と、表示制御部23と備える。
【0023】
心電図同期SPECTデータ記憶部11は、患者(第1の被験者)の心電図同期SPECTデータ111と、一以上の健常者(第2の被験者)の心電図同期SPECTデータ113とを記憶する。心電図同期SPECT画像111、113は、心電図同期SPECTにより心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのフェーズ画像(ボリュームデータ)からなる。各フェーズ画像は、それぞれ3次元画像であるから、心電図同期SPECT画像111、113は、3次元ボクセルにそれぞれのカウント値(画素値)が格納されるボリュームデータである。
【0024】
動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECT画像の複数のフェーズ画像を用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す動きベクトルを算出する。動きベクトル算出部13は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して、以下に説明する処理によって患者の動きベクトル及び健常者の動きベクトルの算出を行う。ここで算出された心電図同期SPECT画像111に対応する患者の動きベクトルのデータ(患者ベクトルデータ)151、及び心電図同期SPECT画像113に対応する健常者の動きベクトルのデータ(健常者ベクトルデータ)153は、それぞれベクトルデータ記憶部15に保存される。
【0025】
動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像のうちの前フェーズのフェーズ画像における心臓領域に対応するそれぞれのボクセルが、後フェーズのフェーズ画像においてどこへ移動したかを示す個別の3次元の個別の動きベクトルを算出する。つまり、動きベクトル算出部13は、互いに隣り合うフェーズの2枚のフェーズ画像から、ボクセル数分の個別の動きベクトルを含む動きベクトル群を算出する。動きベクトル算出部13は、すべてのフェーズ間について動きベクトル群を算出する。図2のように8フェーズの心電図同期SPECT画像の場合、7つの動きベクトル群が算出される。
【0026】
動きベクトル算出部13は、複数のボクセルを一つの単位として、それぞれの個別動きベクトルを算出してもよいし、最後のフェーズ画像と最初のフェーズ画像(図2の場合フェーズ画像P8とP1)の間の動きベクトル群を算出してもよい。
【0027】
動きベクトル算出部13は、互いにフェーズが隣り合う2枚のフェーズ画像間の濃度勾配に基づいて動きベクトルを算出する。例えば、動きベクトル算出部13は、オプティカルフロー法(特に、濃度勾配を利用した勾配法またはブロックマッチング法)を用いて、各フェーズ間の動きベクトル群を算出してもよい。
【0028】
図3を用いて、ベクトル算出部13の処理について具体的に説明する。なお、ここでは説明の便宜のために2次元の画像及び2次元のベクトルを図示しているが、現実には、動きベクトル算出部13は3次元画像(ボリュームデータ)を用いて3次元ベクトルを算出する。
【0029】
図3は、連続するフェーズ画像の例として、フェーズ1のフェーズ画像P1、フェーズ2のフェーズ画像P2及びフェーズ3のフェーズ画像P3におけるSA画像を示す。動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P1とP2から、フェーズ1−2間の動きベクトル群V1を算出する。同様に、動きベクトル算出部13は、フェーズ画像P2とP3から、フェーズ2−3間の動きベクトル群V2を算出する。動きベクトル算出部13は、フェーズ4以降の画像に対しても同様の処理を行う。図3に示す動きベクトル群V1、V2内の一つ一つの矢印及び点が個別の動きベクトルを示す。
【0030】
例えば、ベクトル算出部13は、動きベクトル群を算出する際、オプティカルフロー法を用いて、前フェーズ(例えばフェーズ1)のフェーズ画像の各ボクセルから、後フェーズ(例えばフェーズ2)のフェーズ画像のいずれかのボクセルへの個別の動きベクトルをそれぞれ算出する。そして、動きベクトル群に含まれる各個別の動きベクトルは、前フェーズのフェーズ画像の各ボクセルにそれぞれ対応づけられる。
【0031】
図4は、動きベクトル算出部13が行う処理のフローチャートである。動きベクトル算出部13は、患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113のそれぞれに対して以下の処理を実行する。
【0032】
動きベクトル算出部13は、まず、隣り合う2枚のフェーズ画像を対象画像として特定する(S11)。動きベクトル算出部13は、ステップS11で特定された対象画像を用いて、オプティカルフロー法によって対象画像のうちの前のフェーズ画像から後のフェーズ画像への動きベクトル群を算出する(S13)。動きベクトル算出部13は、ここで算出された動きベクトル群をベクトルデータ記憶部15に保存する(S15)。動きベクトル算出部13は、ステップS11及びS13の処理をすべてのフェーズ間について行う(S17)。ここで算出されたすべてのフェーズ間のベクトル群が、所定の基準の範囲内に収束するまで、ステップS11〜S17までの処理を繰り返して行う(S19)。
【0033】
図1に戻ると、ベクトルデータ記憶部15は、ベクトル算出部13によって算出された動きベクトルのデータを保存する。例えば、心電図同期SPECT画像111,113を上記の例のように心拍の1周期を8フェーズに分けたときは、ベクトルデータ記憶部15には、それぞれの患者及び健常者の心電図同期SPECT画像111,113について、それぞれ、7つの動きベクトル群がベクトルデータ151,153として保存される。なお、患者及び健常者のベクトルデータ151,153は、上述の通り、3次元のボクセルのそれぞれに、一つの3次元ベクトルが割り当てられている。
【0034】
SPECT画像合成部17は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている複数のフェーズ画像と、ベクトルデータ記憶部15に保存されている複数の動きベクトル群とを用いて、合成SPECT画像を生成する。ここで生成される合成SPECT画像は、ねじれを含む現実の心臓の動きを取り除いて、各フェーズ画像を一枚に集約したものである。つまり、動きベクトルを用いることによって、各フェーズ画像間で対応していると思われる心臓の部位を特定し、対応する部位のボクセル値を加算して一枚の画像に集約することにより、ねじれを含む心臓の動きを打ち消した、より正確な心臓のSPECT画像を得ることができる。
【0035】
SPECT画像合成部17は、患者の心電図同期SPECT画像111及び患者ベクトルデータ151から、その患者の合成SPECT画像191を生成し、合成SPECTデータ記憶部19に保存する。同様に、SPECT画像合成部17は、一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113及び健常者ベクトルデータ153から、各健常者の合成SPECT画像193を生成し、合成SPECTデータ記憶部19に保存する。
【0036】
SPECT画像合成部17は、複数の動きベクトル群を用いて、複数のフェーズ画像のうちの一つである参照フェーズ画像上の参照ボクセルが移動した移動先のボクセルである対応ボクセルを、参照フェーズ画像以外のターゲットフェーズ画像上でそれぞれ特定し、特定された各ターゲットフェーズ画像上の対応ボクセルのすべてのボクセル値を、参照ボクセルのボクセル値に加算して、合成SPECT画像を生成する。
【0037】
図5を用いて、SPECT画像合成部17による画像合成処理例を具体的に説明する。
【0038】
SPECT画像合成部17は、ある一つのフェーズ画像を参照画像とする。参照画像以外のフェーズ画像をターゲット画像とし、参照画像上の参照ボクセルがターゲット画像上のどのボクセルへ移動したか、つまり、参照ボクセルが移動した、ターゲット画像上における移動先のボクセル(対応ボクセル)を個別動きベクトルを用いて特定する。
【0039】
例えば、SPECT画像合成部17は、フェーズ1のフェーズ画像P1を参照画像とする。そして、参照画像と参照画像と隣り合うフェーズのターゲット画像#1のボクセル同士を、これら2枚のフェーズ画像間の動きベクトル群を用いて対応づける。例えば、図5Aの例では、参照画像の参照ボクセルをA0(x0,y0,z0)とすると、参照ボクセルA0には個別の動きベクトルv1(a1,b1,c1)が対応づけられている。このとき、参照ボクセルA0(x0,y0,z0)と対応づけられる対応ボクセルA1(x1,y1,z1)は以下のように定まる。
x1=x0+a1
y1=y0+b1
z1=z0+c1
【0040】
SPECT画像合成部17は、さらに、上記と同様にして、ターゲット画像#1と、ターゲット画像#1と隣り合うフェーズのターゲット画像#2とを、これら2枚のフェーズ画像間の動きベクトル群を用いて対応づける。つまり、対応ボクセルA1に個別ベクトルv2(a2,b2,c2)が対応づけられているとき、対応ボクセルA1にさらに対応するターゲット画像#2上の対応ボクセルA2(x2,y2,z2)は、以下のようにして定まる。
x2=x1+a2=x0+a1+a2
y2=y1+b2=y0+b1+b2
z2=z1+c2=z0+c1+c2
【0041】
そして、SPECT画像合成部17は、図5Aに示すように、これらと同様の処理を残りのフェーズ画像をターゲット画像として行う。なお、上述のようにして対応づけられた前フェーズのフェーズ画像のボクセルと後フェーズのフェーズ画像のボクセルとは、必ずしも一対一対応になるとは限らず、一対多または多対一となる場合もある。一つのターゲット画像に複数の対応ボクセル候補がある場合、任意の方法で一つの対応ボクセルを特定する。
【0042】
次に、SPECT画像合成部17は、上記のように対応づけられた、異なるフェーズ画像間のボクセルのボクセル値を加算する。そして、この加算されたボクセル値を、参照画像の参照ボクセルのボクセル値として、合成画像を生成する。例えば上記の例では、対応ボクセルA1〜A7のボクセル値をすべて参照ボクセルA0に加算して、参照画像をベースとする合成画像を生成する。なお、どのフェーズ画像を参照画像とするかは任意である。
【0043】
図6は、SPECT画像合成部17が行う合成画像の生成処理のフローチャートである。SPECT画像合成部17は、患者及び被験者のぞれぞれの心電図同期SPECT画像111、113及びベクトルデータ151,153を用いて以下の処理を実行する。
【0044】
SPECT画像合成部17は、まず、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されているフェーズ画像のうちの一つを参照画像に定める(S21)。さらに、SPECT画像合成部17は、参照画像の中の一つのボクセルを参照ボクセルとして定める(S23)。
【0045】
SPECT画像合成部17は、ターゲット画像を一つ選択し(S25)、そのターゲット画像における参照ボクセルと対応する対応ボクセルを、ベクトルデータ記憶部15に保存されている動きベクトルを用いて特定する(S27)。この対応ボクセルの特定方法の詳細は上述した通りである。ステップS25及びS27の処理を、すべてのターゲット画像に対して行う(S29)。これにより、一つの参照ボクセルに対して、すべてのターゲット画像上にそれぞれ一つの対応ボクセルが定まる。
【0046】
SPECT画像合成部17は、ステップS23〜S29までの処理を、参照画像のすべてのボクセルについて行う(S31)。これにより、参照画像のすべてのボクセルに対して、すべてのターゲット画像上の対応ボクセルが定まる。
【0047】
SPECT画像合成部17は、参照画像の各ボクセルに、それぞれ対応づけられているターゲット画像の対応ボクセルのボクセル値を加算して、合成画像を生成する(S33)。SPECT画像合成部17は、ここで生成された合成画像を合成SPECTデータ記憶部19に保存する(S35)。
【0048】
なお、この例ではフェーズ1を参照画像とし、フェーズ2〜フェーズ7までのフェーズ画像を、ベクトルの順方向に辿っていったが、フェーズ1以外のフェーズ画像を参照画像とし、一部または全部のベクトルを逆方向へ辿って合成画像を生成してもよい。
【0049】
健常者データ処理部18は、合成SPECTデータ記憶部19に記憶されている一以上の健常者の合成SPECT画像のデータを処理して、健常者平均の合成SPECT画像195を生成する。例えば、健常者データ処理部18は、複数の健常者の合成SPECT画像データのそれぞれ対応するボクセルの値を合計し、その平均値を算出して、健常者平均の合成SPECT画像195を生成してもよい。
【0050】
合成SPECTデータ記憶部19は、SPECT画像合成部17によって合成された合成SPECT画像のデータを記憶する。例えば、合成SPECTデータ記憶部19には、患者の心電図同期SPECT画像111に基づく患者の合成SPECT画像191及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113に基づく健常者の合成SPECT画像193が記憶される。合成SPECT画像191,193も3次元画像であって、3次元ボクセルにそれぞれのカウント値(画素値)が格納されている。なお、健常者のデータについては、上記の通り、健常者データ処理部18が生成した健常者平均の合成SPECT画像が保存されるようにしてもよい。
【0051】
ポーラーマップ生成部21は、合成SPECTデータ記憶部19に保存されている合成SPECT画像191,193からポーラーマップ(ブルズアイマップ)を生成する。ポーラーマップ生成部21は、一以上の健常者については、個々の合成SPECT画像193からポーラーマップを生成してもよいし、健常者平均の合成SPECT画像195からポーラーマップを生成してもよい。
【0052】
なお、ポーラーマップ生成部21は、ポーラーマップを生成することで被験者同士(例えば患者と健常者)を比較するための正規化を行っている。従って、SPECT画像処理装置100は、ポーラーマップ以外の正規化手法を用いてもよい。
【0053】
表示制御部23は、ポーラーマップ生成部21が生成したポーラーマップを表示装置5に表示させる。これ以外にも、表示制御部23は、心電図同期SPECTデータ記憶部11に保存されている心電図同期SPECT画像111、113及びベクトルデータ記憶部15に保存されているベクトルデータ151を表示装置5に表示させてもよい。
【0054】
図7は、上記のような構成を備えるSPECT画像処理装置100の全体処理手順を示すフローチャートである。心電図同期SPECTデータ記憶部11には、予め画像再構成システム1によって再構成された患者の心電図同期SPECT画像111、及び一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113が保存されている。
【0055】
まず、動きベクトル算出部13が、患者の心電図同期SPECT画像111に基づいて患者の動きベクトル群を算出し、患者ベクトルデータ151としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S41)。動きベクトル算出部13は、さらに、一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113に基づいて健常者の動きベクトル群を算出し、健常者ベクトルデータ153としてベクトルデータ記憶部15に保存する(S43)。
【0056】
SPECT画像合成部17が、患者の心電図同期SPECT画像111及び患者ベクトルデータ151に基づいて患者の合成SPECT画像を生成し、患者合成SPECT画像191として、合成SPECTデータ記憶部19に保存する(S45)。SPECT画像合成部17は、さらに、一以上の健常者の心電図同期SPECT画像113及び健常者ベクトルデータ153に基づいて健常者の合成SPECT画像を生成し、健常者合成SPECT画像193として、合成SPECTデータ記憶部19に保存する。さらに、健常者データ処理部18が、健常者合成SPECT画像193から健常者平均の合成SPECT画像195を生成して、合成SPECTデータ記憶部19に保存する(S47)。
【0057】
ポーラーマップ生成部21は、合成SPECTデータ記憶部19に保存されている患者の合成SPECT画像のデータ191に基づいて、患者のポーラーマップを生成する(S49)。ポーラーマップ生成部21は、さらに、合成SPECTデータ記憶部19に保存されている健常者平均の合成SPECT画像のデータ195に基づいて、健常者のポーラーマップを生成する(S51)。そして、表示制御部23は、患者及び健常者のポーラーマップを表示装置5に表示させる(S53)。
【0058】
これにより、心電図同期SPECT画像から、ねじれを含む心臓の動きを打ち消したSPECT画像を合成するができる。さらに、心電図同期SPECT画像からねじれを含む心臓の動きを打ち消した合成SPECT画像を用いて、患者と健常者などの被験者間の比較を容易に行うことができる。
【0059】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、8つのフェーズ画像から7つの動きベクトル群を算出したが、最初のフェーズと最後のフェーズとの間のベクトル群を算出してもよい。これにより、理論的には、心筋の各部位が心拍一周期で元の位置に戻るベクトル群が得られる。SPECT画像の合成処理は、この一周期に渡るベクトル群を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 画像再構成システム
10 画像処理装置本体
11 データ記憶部
13 ベクトル算出部
15 ベクトルデータ記憶部
17 画像合成部
19 データ記憶部
21 ポーラーマップ生成部
23 表示制御部
100 SPECT画像処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出する動きベクトル算出手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータと、前記動きベクトル算出手段により算出された複数の動きベクトル群とを用いて、前記複数フェーズのボリュームデータを一つの合成ボリュームデータに合成するボリュームデータ合成手段と、を備えるボリュームデータ処理装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、第1の被験者の心電図同期ボリュームデータと一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータとが記憶されていて、
前記動きベクトル算出手段は、前記第1の被験者及び一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータのそれぞれについて、前記複数の動きベクトル群を算出し、
前記ボリュームデータ合成手段は、前記第1の被験者及び前記一以上の第2の被験者の前記合成ボリュームデータをそれぞれ生成し、
前記ボリュームデータ処理装置は、
前記第1の被験者の合成ボリュームデータ、及び前記一以上の第2の被験者の心電図同期ボリュームデータから、前記第1の被験者のポーラーマップ及び前記一以上の第2の被験者のポーラーマップを生成するポーラーマップ生成手段を、さらに備える請求項1記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項3】
前記動きベクトル算出手段は、互いに隣り合う2つのフェーズのボリュームデータ間の濃度勾配に基づいて前記動きベクトル群を算出する、請求項1または2に記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項4】
前記ボリュームデータ合成手段は、
前記複数の動きベクトル群を用いて、前記複数フェーズのボリュームデータのうちの一つである参照フェーズのボリュームデータ上の参照ボクセルの移動先のボクセルである対応ボクセルを、前記参照フェーズのボリュームデータ以外のボリュームデータであるターゲットフェーズのボリュームデータ上でそれぞれ特定し、
前記特定された各ターゲットフェーズのボリュームデータ上の対応ボクセルのすべてのボクセル値を、前記参照ボクセルのボクセル値に加算して、前記合成SPECTデータを生成する、請求項1〜3のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項5】
前記ボリュームデータは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データである、請求項1〜4のいずれかに記載のボリュームデータ処理装置。
【請求項6】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置が行う方法であって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータと、前記算出された複数の動きベクトル群とを用いて、前記複数フェーズのボリュームデータを一つの合成ボリュームデータに合成するステップと、を行うボリュームデータ処理方法。
【請求項7】
心電図に同期させて心拍の1周期を複数に分割して撮影された、複数フェーズのボリュームデータからなる心電図同期ボリュームデータを記憶する記憶手段を有するボリュームデータ処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータを用いて、フェーズ間の心臓の動きを示す複数の動きベクトル群を算出するステップと、
前記記憶手段に記憶されている複数フェーズのボリュームデータと、前記算出された複数の動きベクトル群とを用いて、前記複数フェーズのボリュームデータを一つの合成ボリュームデータに合成するステップと、を前記ボリュームデータ処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40830(P2013−40830A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177255(P2011−177255)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】