説明

ボリューム光アラインされたリターダ

本発明は、I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または(iii)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、および(iv)場合によりさらなる成分、あるいはII)(v)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、および(vi)場合によりさらなる成分を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層に関するものであり、さらに、本発明は、複屈折層の製造方法、その使用、およびその光学部品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分;
あるいは
II)(v)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分、
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層に関するものであり、さらに、本発明は、複屈折層の製造方法、その使用、およびその光学部品に関するものである。
【0002】
複屈折層は、光の偏光状態を変えるために広く用いられている。例えば直線偏光面を90°回転するため、または直線偏光を円偏光に変換もしくはその逆に変換するための光学リターダ、例えば4分の1および2分の1波長リターダが、長い間、複屈折層の主な用途であった。
【0003】
2〜3年前から、コンピュータ・モニター、テレビまたは携帯電話に用いられる高品質液晶ディスプレイ(LCD)は、莫大な量の種々の光学特性を有する複屈折ホイルを使用する。具体的な用途に応じて、LCDにおける複屈折フィルムは、コントラスト、輝度、視角または彩度を改良する必要がある。
【0004】
現在、LCDに用いられる複屈折ホイルのほとんどは、まだ延伸プラスチックフィルムである。しかし、フィルムの延伸は、LCDの光学特性のさらなる改良に必要な複雑な光学特性を全て実現することができるわけではなく、それは延伸することが屈折率をウェブ方向に沿っておよびウェブ方向に垂直に変えることを可能にするだけだからである。ここ数年の間、さらなる光学特性を有するコーティングされたリターダが、延伸リターダの周知の代替品になってきた。
【0005】
コーティングされたリターダは、典型的には、架橋性液晶材料を主成分とする。このような材料は、モノマーとして、アライメント性能を示すように変性された表面を有する基板上にコーティングされる。コーティングおよび乾燥の後、液晶はアライメント情報にしたがってアラインされ、その後紫外線露光(uv)により架橋される。架橋された液晶を以下の文で液晶ポリマー(LCP)と呼ぶ。
【0006】
基板上にアライメントを生成する最も進んだ技術は、ブラシングおよび光アライメントである。ブラシング技術は、LCD製造において十分確立されているが、いくつかの欠点(例えば後で洗浄工程を必要とするダストの発生)を有する。別の欠点は、特定の用途のために、個々のシートを切断し、アラインし、偏光子にラミネートしなければならない必要があるロールツーロール製造において、両方のフィルムをロールバイロール直接にラミネートするよりも、調整可能なアライメント方向角の範囲が限られることである。
【0007】
米国特許第4,974,941号(Gibbonsら)には、染料のcis−trans−異性化により、適切な波長の直線偏光での露光に応えて好ましい方向が誘起されるプロセスが記載されている。このように露光された表面と接触する液晶は、この好ましい方向にしたがって配向される。この配向プロセスは可逆であり、すなわち、層を第2の偏光方向の光でさらに露光することにより、配向方向をまた回転することができる。
【0008】
米国特許第5,389,689号(Chigrinovら)に記載されている光構造化可能な配向層の場合、直線偏光露光の間に、不可逆な異方性のポリマーネットワークが生じ、これは液晶に対するアライニング特性を示す。このような直線光重合ポリマーネットワーク(linear photo-polymerised polymer netwoek:LPP)は、安定な、構造化または非構造化液晶配向層が必要な場合は必ず用いられる。
【0009】
LPPアライニング層と接触するLCPの異方性フィルムを含む層構造が、米国特許第5,602,661号(Schadtら)に記載されている。この技術を用いて、例えばEuropean Patent No. 689 084 (Schadt et al.)に示されるような、いくつかの配向されたLCP層からなる多層構造を製造することでも可能である。
【0010】
周知のように、方位角アライメントのほかに、チルト角、すなわち層の面を基準とする液晶層の光学軸の傾斜が必要であることが多い。これは、例えばEuropean Patent No. 0 756 193 (Schadt et al.)に開示されている、表面上にチルト角を有するLPP配向層により行うことができる。
【0011】
上で述べた光アライメント層によるアラインされたLCP層の簡易化が、European Patent EP 1090325に開示されている。この特許には、液晶であり、同時に光アライメント機能を示す材料が記載されている。典型的には、このような材料は、光アライニング材料と架橋性液晶の混合物である。このような材料は、アライメント性能を示す必要のない基板にコーティングすることができる。次に、このような材料の層を直線偏光したUV光露光して、材料の一部である架橋性液晶のアライメントを誘起する。アライメントプロセスが完了した後、液晶配向をuv−架橋により固定する。直線偏光UV光に斜角露光することにより、複屈折層の光学軸を傾けることができる。上述したように、アライニング表面によりアラインされたLCP層に違いがあるので、組み合わせた材料中の分子のアライメントは、表面により制御されるだけでなく、材料バルクの内側からも制御される。このような材料を、以下の文で、ボリューム光アライン可能なリターダ(volume photo-alignable retarder:VPR)材料と呼ぶ。このような材料の利点は、明らかに、層の数およびプロセス工程の減少であり、これは製造におけるコストを減らし収率を上げることができる。
【0012】
光エレクトロニクス、例えば民生用光通信、LCDは急成長中の市場に属するので、品質および機能を向上させコストを減らす要求が絶えずある。
【0013】
本発明は、上で述べた層に、さらなる機能を与える。
【0014】
したがって、本発明は、
I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有し、好ましくはさらに重合性基を有する、モノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、
(vi)場合によりさらなる成分
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層に関するものである。
【0015】
本発明の文脈において、重合性基は架橋基を包含する。
【0016】
本発明の文脈において、表現「光配向性基」とは、アライニング光を照射すると、好ましい方向を発現することができ、したがって液晶のアライメントを誘起することができる基の意味を持つ。
【0017】
本発明の文脈において、アライニング光とは、光アライメントを開始することができる波長の光である。好ましくは、波長はUV−A、UVBおよび/またはUV/Cの範囲、あるいは可視の範囲にある。どの波長が適切であるかは光アライメント化合物に依存する。
【0018】
より好ましくは、アライニング光は、少なくとも部分的な直線偏光、楕円偏光、例えば円偏光、または非偏光であり、最も好ましくは円偏光、または非偏光の斜角露光、または少なくとも部分的な直線偏光である。
【0019】
光配向性基は、より好ましくは、異方性吸収分子(anisotropically absorbing molecule)である。異方性吸収分子は、種々の値、典型的には約150〜2000nmの範囲で吸収特性を示す。
【0020】
通常用いる異方性吸収分子は、炭素−炭素、炭素−窒素、または窒素−窒素二重結合を有する。
【0021】
異方性吸収分子は、例えばアゾ染料、アントラキノン、メロシアニン、メタン、2−フェニルアゾチアゾール、2−フェニルアゾベンゾチアゾール、スチルベン、1,4−ビス(2−フェニルエチレニル)ベンゼン、4,4’−ビス(アリールアゾ)スチルベン、ペリレン、4,8−ジアミノ−1,5−ナフトキノン染料、2個の芳香環と共役したケトン部分またはケトン誘導体を有するジアリールケトン、例えば置換されたベンゾフェノン、ベンゾフェノンイミン、フェニルヒドラゾン、およびセミカルバゾンまたはシンナメートである。上で示した異方性吸収材料の製造は、例えばHoffmanらにより米国特許第4,565,424号に、Jonesらにより米国特許第4,401,369号に、Cole、Jr.らにより米国特許第4,122,027号に、Etzbachらにより米国特許第4,667,020号に、およびShannonらにより米国特許第5,389,285号に示されるように周知である。
【0022】
好ましい異方性吸収分子は、アリールアゾ、ポリ(アリールアゾ)、スチルベンおよびジアリールケトン誘導体およびシンナメートである。
【0023】
アリールアゾ、スチルベン、ジアリールケトンおよびシンナメートがより好ましい。
【0024】
異方性吸収分子は、主鎖ポリマー中に共有結合されることができ、それらは側鎖基として主鎖に共有結合されてもよく、またはそれらは非結合溶質としてポリマー中に含まれてもよい。
【0025】
ポリマーとは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリマレインイミド、ポリ−2−クロロアクリレート、ポリ−2−フェニルアクリレート;非置換またはC1〜C6アルキルで置換されたポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ−2−クロロアクリルアミド、ポリ−2−フェニルアクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリスチレン誘導体、ポリシロキサン、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の直鎖状または分岐状アルキルエステル;炭素原子数1〜20のアルキル残基を有するポリフェノキシアルキルアクリレート、ポリフェノキシアルキルメタクリレート、ポリフェニルアルキルメタクリレート;ポリアクリルニトリル、ポリメタクリルニトリル、ポリスチレン、ポリ−4−メチルスチレンまたはこれらの混合物を意味する。
【0026】
さらに、好ましい光配向性モノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーは、米国特許第5,539,074号、米国特許第6,201,087号、米国特許第6,107,427号、米国特許第6,335,409号および米国特許第6,632,909号に記載されている。
【0027】
液晶モノマーもしくはプレポリマーは、1種以上の棒状(rod-shaped)、板状(board-shaped)または円盤状(disk-shaped)のメソゲン基、すなわち液晶相挙動を誘起する能力を有する基を含む物質または化合物を意味する。棒状または板状の基を有する液晶化合物は、当技術分野においてカラミチック(calamitic)液晶としても公知である。円盤状基を有する液晶化合物は、当技術分野においてディスコチック(discotic)液晶としても公知である。メソゲン基を含む化合物または物質は、必ずしもそれ自体が液晶相を示さなければならないわけではない。それらが他の化合物との混合物においてのみ液晶相挙動を示すことも可能であり、あるいはメソゲン化合物もしくは物質、またはそれらの混合物が重合されているときに液晶相挙動を示すことも可能である。
【0028】
本発明で使用できる、架橋性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーは、例えば、国際公開公報第2005/105932号、国際公開公報第2005/054406号、国際公開公報第2004/085547号、国際公開公報第2003/027056号、米国特許第2004/0164272号、米国特許第6746729号、米国特許第6733690号、国際公開公報第2000/48985号、国際公開公報第2000/07975号、国際公開公報第2000/04110号、国際公開公報第2000/05189号、国際公開公報第99/37735号、米国特許第6395351号、米国特許第5700393号、米国特許第5851424号および米国特許第5650534号に開示されている。
【0029】
好ましい架橋性基は、例えばアクリレートまたはジアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、アリル、ビニルまたはアクリルアミドを意味する。
【0030】
アクリレートまたはジアクリレート架橋性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーがより好ましい。
【0031】
本発明の文脈において、表現「さらなる成分」とは、例えば、キラル分子、二色性の分子および光学吸収剤の意味を持つ。
【0032】
重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー(i)が100重量部の量で含まれるとすれば、光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー(ii)、および/または重合性および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー(iii)は通常、少なくとも0.1重量部、より好ましくは少なくとも1重量部、最も好ましくは少なくとも10重量部の量で含まれる。
【0033】
本発明の好ましい態様は、
I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの混合物;および
(ii)光配向性基を有しかつ好ましくは重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、光配向性基を有しかつ好ましくは重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの混合物、および/または
(iii)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、もしくはオリゴマーもしくはポリマー、または光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーの混合物、および
(iv)場合によりさらなる成分
を、混合物中の物質の量が同じか異なって含むか、あるいは
II)(v)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、もしくはオリゴマーもしくはポリマー、または光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーの混合物、および
(vi)場合によりさらなる成分
を、混合物中の物質の量が同じか異なって含む、複屈折層に関する。
【0034】
本発明の別の好ましい態様では、物質(i)および(iii)は、ネマチック相またはコレステリック相またはスメクチック相を有する。どの相を選択するかは目的の用途に依存する。
【0035】
本発明の別の好ましい態様は、非線形プロフィールを含む複屈折層に関するものである
【0036】
本発明の別の好ましい態様は、物質(i)および/または(iii)がアライニング表面を示す基板上にアラインされた複屈折層に関するものである。
【0037】
本発明の別の態様は、物質(i)および/または(iii)がアラインされ、これにより、アライニング表面を示す基板によって、かつボリューム光アライメントによってアライメントが誘起される複屈折層に関するものであって、好ましくは、アライニング表面からおよびボリューム光アライメントによる両方のアライメント情報、好ましくは方位角および/または斜角誘起されたアライメントが異なる。
【0038】
さらに、本発明の好ましい態様は、物質(i)および/または(iii)がアライニング表面を示す基板上にアラインされ、複屈折層が非線形チルトプロフィールを含む複屈折層に関するものである。
【0039】
さらに、本発明の好ましい態様は、線形または非線形にツイストした複屈折層に関するものである。
【0040】
さらに、本発明の好ましい態様は、ベンド変形またはスプレイ変形を有する複屈折層に関するものである。
【0041】
本発明のさらなる態様では、複屈折層はさらにキラル分子を含む。
【0042】
別の好適な態様では、複屈折層はさらに二色性分子を含む。
【0043】
別の好ましい態様は、均質分布から相分離までの範囲で分散された物質(i)、(ii)および/または(iii)を含む、好ましくは物質(i)および(ii)および/または(iii)が相分離された複屈折層に関するものである。
【0044】
光配向性物質と液晶物質の相互作用に応じて、一つの極端な状態として混合物は均質であるかもしれず、あるいはもう一つの極端な状態としてアライニング化合物と液晶は層中に完全に分離しているかもしれない。一つの好ましい状況は、光アライン可能な化合物の層が複屈折層の1面または両面に位置する、層中の完全な相分離である。後者の場合、単層のコーティングが層構造(液晶層の両側上のアライメント層がアライメント情報を与える液晶セルの層構造に似ている)を与える、自己組織化材料を提供する。
【0045】
より好ましい態様は、物質(i)が物質(ii)より上の層を形成し;または物質(ii)が物質(iii)より上の層を形成し;または物質(i)が物質(ii)より下の層を形成し;または物質(ii)が物質(iii)より下の層を形成し;または物質(ii)が、一つが物質(i)より上で一つが物質(i)より下の2層を形成し;または物質(ii)が、一つが物質(iii)より上で一つが物質(iii)より下の2層を形成し;または物質(iii)が物質(i)より上および/または下の層を形成する、相分離した物質(i)および(ii)および/または(iii)を含む複屈折層に関するものである。
【0046】
さらに、本発明は、複屈折層の物質、特に光配向性のおよび/または光配向された物質(ii)、および/または液晶物質(i)、(iii)および/またはさらに他の成分(iv)の少なくとも一つの物質が、層の厚さ方向に沿って密度勾配を有する複屈折層に関するものである。
【0047】
本発明は、
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性を有し、好ましくはさらに重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分;
あるいは
II)(v)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分;
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層を、好ましくは液晶物質(i)および/または(iii)の透明点より上の温度でアライニング光に露光すること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法にも関するものである。
【0048】
基板とは、支持部材を示す。基板は、最終の層または液晶ディスプレイに有用な機能を与える、層状材料の任意の固体の組み合わせとすることができる。例えば、基板は、次の材料の任意の組み合わせとすることができる。結晶性またはアモルファスシリコン、ガラス、ポリエステルおよびポリイミドを含むプラスチック;石英、インジウム酸化スズ、金、銀、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、反射防止コーティング、カラーフィルタ層、偏光子および位相補償フィルム。実際には、これらの材料のいくつかを、基本的な支持構造、例えばガラスまたはプラスチック上に、付着またはコーティングする。
【0049】
本発明によれば、厚さ方向に沿ってアライメントを制御する一つの方法は、複屈折層の物質、特に光配向性および/または光配向された物質(ii)、および/または液晶物質(i)、(iii)、および/またはさらなる成分(iv)の少なくとも一つの物質の密度勾配を生成することである。これはいくつかの方法で行うことができ、これらのいくつかを以下で述べるが、他の方法も同様に働き得る。
【0050】
本発明の好ましい態様は、
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(i)の混合物;および
(ii)光配向性基を有し、そして好ましくは重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(ii)の混合物;および/または
(iii)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(iii)の混合物;および
(iv)場合によりさらなる成分、または量が同じか異なる種々の物質(iv)の混合物;あるいは
II)(v)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(iii)の混合物;および
(vi)場合によりさらなる成分、または量が同じか異なる種々の物質(iv)の混合物;
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光すること
を含み;これにより複屈折層の物質、特に光配向性および/または光配向された物質(ii)および/または液晶物質(i)、(iii)および/またはさらなる成分の少なくとも一つの物質が、層の厚さ方向に沿った密度勾配を生じる、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法を含む。
【0051】
複屈折層の物質、特に光配向性および/または光配向された物質および/または液晶物質および/または吸収剤の少なくとも一つの物質の複屈折層の厚さ方向に沿った密度勾配を確立するための第1の方法では、層に透過する光を制御することにより反応速度を制御する。
【0052】
これは、光の有効な波長範囲で、材料の吸光度を制御することによって行うことができる。有効な波長範囲は、物質のアライメントが誘起される範囲である。複屈折層に含有される光配向性物質は、それ自身が有効な波長範囲で光を吸収するので、吸光度は例えば、その吸光係数に影響を及ぼす光アライニング化合物の分子構造によって制御することができる。
【0053】
吸光度を制御するさらに他の方法は、複屈折層中の物質の、特に複屈折層内の光配向性および/または光配向された物質の、濃度プロフィールを変えることである。
【0054】
さらに、本発明のより好ましい態様は、
a)I)(i)重合性、好ましくは架橋基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基および好ましくは重合性、特に架橋基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)重合性、好ましくは架橋、および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)重合性、好ましくは架橋、および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分、
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光し、これにより光配向性物質(ii)および/または(iii)の少なくとも一部が層中に留まること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法に関するものである。
【0055】
光配向されたおよび光配向性の物質(ii)および/または(iii)が層の厚さ方向に沿った密度勾配を生じる方法が、最も好ましい。
【0056】
光アライメントプロセスの間、複屈折層において光を吸収する結果として、反応速度はアライニング光が層に入る面のすぐ近で最も高い。典型的には、層を、基板の反対側から、典型的には空気面から露光する。しかし、複雑な構造のさらなる可能性を提供する基板を通しての露光も可能である。
【0057】
別のより好ましい態様では、本方法は、上述したa)(記載された選好を全て包含する)、およびb)コーティングされた層を基板の反対側、通常空気面から、または基板を通してアライニング光に露光することを含む。
【0058】
あるいはまた、複屈折層の吸収が有効な範囲内で波長の関数として変化するなら、アライニング光の波長を、望ましい吸収を示す特定の範囲に限定することができる。
【0059】
本発明のさらに好ましい方法は、上述した工程a)(記載された選好を全て包含する)、およびb)コーティングされた層を露光し、有効な範囲内で吸収が波長の関数として変化することを含む方法に関するものである。
【0060】
工程b)においてコーティングされた層を、次に異なるもしくは同一の波長および/または異なる露光ジオメトリー(例えば入射角および偏光方向)で露光する方法がより好ましい。
【0061】
厚さ方向に沿った複屈折層の密度勾配を誘起する第2の方法は、複屈折層内の少なくとも一つの物質の密度勾配を生成することである。
【0062】
これは、複屈折層の混合挙動を制御することにより、例えば複屈折層における複屈折層内の相分離を制御することにより、達成することができる。
【0063】
光配向性物質の厚さ方向に沿った密度勾配を、光アライメントに先立って確立することができる。光配向性物質の厚さ方向に沿った密度勾配を、アライニング光露光で誘起することができる。
【0064】
さらに好ましい方法は、層をコーティングする工程a)において、または工程a)の後、または工程b)において、または工程b)の後、密度勾配を誘起することを含む。
【0065】
密度勾配は高温により誘起され得る。
【0066】
さらにより好ましい態様は、
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有しおよび好ましくは重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分;あるいは
II)(v)重合性および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分;
の層を基板上にコーティングし、
ここで、物質(i)および(ii)および/または(iii)および/または(iv)は、均質分布から相分離までの範囲で分散され、好ましくは、物質(i)および(ii)および/または(iii)および/または(iv)は相分離され、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光すること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法に関するものである。
【0067】
平坦な光学軸のアライメントを達する予定ならば、反応したアライニング化合物の密度勾配はそれほど重要ではないかもしれない。しかし、液晶分子を傾けるために複屈折層を斜角露光するならば、従来のアライメントを1面または2面で用いて達成することができず、通常、厚さ方向に沿ってチルト角の線形変動をもたらす、非線形変形プロフィールを示すチルトプロフィールを達成することができる。
【0068】
本発明の別の好ましい態様は、上で示したa)、およびb)コーティングされた層を斜角露光することを含む方法に関するものである。
【0069】
変形プロフィールの調節機能は、TN−LCD(ツイストネマチック液晶ディスプレイ)用のさらに改良された視野角拡大フィルムのデザインにとって特に重要であるが、それは、変形プロフィールは広視野角でのコントラストおよびカラーシフトに影響を及ぼすからである。
【0070】
LCDの視野角、広視野角でのコントラストおよびカラーシフトを向上させるための、非線形変形チルトプロフィールを有する、上で示した定義および選好内での複屈折材料の使用。
【0071】
さらに、アライメント表面がアライメントを誘起し、かつボリュームにおいてアライメントがアライニング光により誘起され、好ましくはアライメント表面のアライニング情報(例えばアライニング配列およびチルト角)とボリュームにおいて誘起されたアライニング情報とが異なる方法が好ましい。
【0072】
さらに、アライメント表面およびボリュームがチルト角を誘起し、それが同じでも、方位角が異なっても、方位角およびチルト角の両方が異なってもよい方法が好ましい。
【0073】
好ましくは、アライメント表面を示す基板とは、例えばブラシをかけた基板を意味する。場合によりブラシをかけた基板をラビング前にコーティングすることができる。さらに、アライメント表面は、斜方蒸着、イオンビームプロセスまたはグレーティング構造により得ることができる。さらにアライメント表面は、パターン化または非パターン化光アライメント層であってよい。アライメント表面は、アラインされ重合された液晶の薄層であってもよく、これにより薄層は基板の上にある。
【0074】
表面およびボリュームアライメントの組み合わせから得られるアライメントメカニズムは、従来の表面アライメントと新規なボリュームアライメントの組み合わせである。複屈折層の厚さ方向に沿ったアライメント変動は、異なるアライメントまたはチルト方向を、アライニング表面に対しておよびボリュームアライメントに対して適用することにより実現される。このことは、例えば、複屈折層の内側に異なるチルト方向またはチルトプロフィールを生じるように、アライニング表面における特定のチルト角を規定し、かつ露光パラメータを選択することにより、非線形チルトプロフィールを強力に実現するためのさらなる方法を提供する。アライニング光の透過深度に応じて、複屈折層のトップ部は例えば一軸性チルトを有することができるのに対して、液晶材料の弾力により起こるチルト変形が下部にだけ存在する。
【0075】
本発明によれば、厚さ方向に沿ってアライメントを制御する別の方法は、上述したように、アライニング表面を示す基板上に複屈折層をコーティングし、続いて光アライメントおよび複屈折層の架橋プロセスを行うことである。
【0076】
別の好ましい態様は、
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基および好ましくは重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)重合性および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分、
の層をアライメント表面を示す基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光し、ここでボリュームにおいてアライメントが誘起されること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法に関するものである。
【0077】
さらにより好ましい方法は、アライメント表面層を示す基板上にコーティングし、b)光アライン可能な層をアライニングするために、コーティングされた層を基板側または基板と反対側から露光することを含む。
【0078】
アライニング表面により誘起されるチルト角の方向がボリューム光アライメントにより誘起されるそれと反対ならば、層の下部および上部において反対のチルト角を有するスプレイリターダ構造を実現することができる。チルト角の大きさに応じて、ベンド変形を誘起することが可能である。両方の構造は、従来の表面アラインされたLCP層を用いて実現することができる傾いた構造よりも、角度に関する光学特性の高次対称性をもたらす。
【0079】
本発明は、スプレイ変形またはベンド変形を有するリターダのための、本発明による複屈折層の使用にも関するものである。
【0080】
複屈折層の光学特性は、アライニング表面およびボリュームアライメントの方位角アライメント方向を異なる角度に設定することにより顕著に変化し得る。このため、複屈折層において、ツイスト変形が誘起され、これは液晶物質の方位角アライメント方向が複屈折層の厚さ方向に沿って変化することを意味する。複屈折層バルクにおいてボリューム光アライメントは有効なので、ツイスト変形は、厚さ方向に沿った光アライメント反応速度に強く依存ずる。
【0081】
さらに好ましい方法は、
a)
(i)重合性、好ましくは架橋基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有し、および好ましくは重合性、好ましくは架橋基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)重合性、好ましくは架橋、および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
場合によりさらなる成分、
の層をアライメント表面を示す基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層を、好ましくはアライニング層のアライニング方向とは異なる偏光方向でアライニング光に露光すること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法に関するものである。
【0082】
層がツイスト変形を有する光学部品。
【0083】
上述したように、光配向性物質、液晶物質またはさらなる吸収剤の吸収特性によって、光の透過を制御することができる。例えば、光アライメント反応は、入射アライニング光の方を向いた層部分(一般的に基板の反対側、通常複屈折層の空気面であるが必ずしもそうではない)に限定することができる。この場合は、液晶が二つのアライメント層(その一方がアライニング表面にあり、もう一方が光アラインされて複屈折層のトップ部にある)の間に閉じ込められた構造に似ている。このような構造は液晶セルから周知されている。
【0084】
類似の構造を、アライメント化合物相が、基板と反対の側、通常複屈折層の空気面に層として分離するように、液晶および光配向性物質が互いに非相溶性である、複屈折層の配合物により達成することができる。二つのアライメント層の間に閉じ込められた液晶層の構造に大まかに対応するこのような構造において、液晶のアライメントは、第1アライメント層のアライメント方向から第2アライメント層の方向に厚さ方向に沿って直線的に変化する。
【0085】
複屈折層の吸光度およびアライニング光の照射エネルギーに応じて、複屈折層のボリューム中の反応速度は変化する。十分な量のアライニング光が複屈折層の内側に透過することができるなら、そのアライニング力は、ツイスト変形に関与する弾力と競わなければならない。一般にこれは、厚さ方向に沿った直線状ツイストプロフィールの変形を導き、非線形ツイストプロフィールをもたらす。VPRの吸収、層厚およびアライニング光の照射エネルギーの特定の組合せに対して、ボリュームアライメントはおそらく、複屈折層の上部において有効であるが、下部においては有効ではなく、これは、上部がボリュームアライメントにより誘起される方向に一軸アラインされるのに対して、下部においてツイスト変形が弾力のために誘起される、二層構造と大まかに見なすことができる構造をもたらすことができる。このような構造を、標準的な一軸性リターダ層に比べて改良されたアクロマチック挙動を示すように最適化することができる。全ての深さでVPR材料がボリュームアラインされる極端な場合には、分離したアライニング層のアライメント強度は、ツイストした構造をそれ以上誘起するほど強くないであろう。
【0086】
アクロマチックリターダを製造するための複屈折材料の使用。
【0087】
上述した複屈折層がアクロマチックリターダの機能を有する光学部品。
【0088】
上の記載から、複屈折層の構造を調整するために変えることができる多数のパラメータがある。
【0089】
光アライメントの一つの利点は、層平面におけるアライメントパターンを生ずる可能性である。ボリューム光アライメントもまたこの特性がある。したがって、上で述べた光誘起された光学軸の複屈折層の厚さ方向に沿った変動は、区画が異なっていてもよい。これは、フォトマスクを用いる複数の露光により行うことができる。達成するべき構造に応じて、アライメントマスタを通して、または種々の領域で種々の線量の光を透過させるグレースケールマスクを通してVPR材料を光アライニングすることにより、露光工程の数を減らすことができる。
【0090】
本発明は、局所的に異なる配向で重合した、上述した複屈折層を含む光学部品に関するものである。
【0091】
例えば、種々の領域で種々のツイスト角を示すパターン化されたツイストしたリターダを実現することができる。反対の方向でツイストした隣接した区画を実現することも可能であるが、左および右回りのツイストを示す区画のツイスト角の絶対値は同じでも異なっていてもよい。
【0092】
さらに、本発明は、上述した複屈折層がツイストしたリターダの機能を有する、光学部品に関する。
【0093】
ツイスト向きのさらなる定義を伴わずに、ツイスト角は、90°に限定される。しかし、ツイスト向きは、キラルドーパントを添加することにより、および/またはアライニング表面における、ボリューム光アライメント中のチルト角の発生によりにより規定することができる。
【0094】
後者の方法は例えば、ツイスト角90°以上を示し、左および右回りの領域を有するパターン化されツイストしたリターダを実現させるのを可能にする。
【0095】
さらに、本発明は、上述した複屈折層が左および右回りの領域を有するパターン化されツイストしたリターダの機能を有する、光学部品に関するものである。
【0096】
導波の条件が満たされているならば、ツイストしたリターダがアクロマチックローテータとして働く。パターン化されたアクロマチックローテータは、観察者の目の一つに対する偏光状態をコード化するために、例えば、光の偏光がピクセルの半分に対して90°だけ回転しなければならない3DのLCDに必要である。
【0097】
本発明の別の態様は、上述した複屈折層がアクロマチックローテータの機能を有する光学部品に関する。
【0098】
厚さ方向に沿った光学軸方向の変動は、有効な光学リタデーションに影響を及ぼすので、上述の方法を用いて、適切な露光条件を選択することにより、複屈折層の光学リタデーションを調整することができる。したがって、区画が異なる光学リタデーションを有するパターンを実現することも可能である。パターン化された光学リタデーションは、広視野角でのLCDの色安定性を改良するために、それらが遅延特性(retardance)を特に赤、青および緑色に調節することを可能にするので、特にインセルリターダ(in-cell retarder)用途に有効である。
【0099】
さらに、本発明は、上述した複屈折層がインセルリターダの機能を有する光学部品に関するものである。
【0100】
さらに、本発明は、局所的に異なるリターダ値を有する光学部品に関するものである。
【0101】
さらに、次の光学部品が本発明により包含される。
【0102】
層が、上部に一軸性チルトを、下部にチルト変形プロフィールを有する、本発明による複屈折層を含む光学部品。
【0103】
ベンドまたはスプレイ変形を有する本発明による層を含む光学部品。
【0104】
アライメント表面上に、物質(ii)が上部にあり、かつ物質(i)または(iii)が下部にある、本発明による層を含む光学部品。
【0105】
アライメント表面上に、物質(ii)および(i)または(iii)が上部にあり、かつ物質(i)または(iii)が下部にある、本発明による層を含む光学部品。
【0106】
物質(i)が物質(ii)の上に層を形成するか;または物質(ii)が物質(iii)の上に層を形成するか;または物質(i)が物質(ii)の下に層を形成するか;または物質(ii)が物質(iii)の下に層を形成するか;または物質(ii)が、1層を物質(i)の上にかつ1層を物質(i)の下に2層形成するか;または物質(ii)が、1層を物質(iii)の上にかつ1層を物質(iii)の下に2層形成するか;または物質(iii)が物質(i)の上および/または下に層を形成する、相分離した物質(i)および(ii)および/または(iii)を含む、本発明による層を含む光学部品。
【0107】
これらの方法、使用および光学部品は、複屈折層に対して上で示したのと同じ定義および選好を有する。
【0108】
本発明は、すでに公知の材料およびプロセスを用いては、とても実行することができない、厚さ方向におけるアライメントプロフィールへのアクセスを与える。
【実施例1】
【0109】
ボリューム光アライン可能な層の下の分離したアライメント層は、この場合、光アライメント層、さらにトップで光アライン可能なリターダ層へのカップリングを高めるために用いた重合された液晶の薄層よりなる。市販されている光アライメント材料ROP-103(ROLIC Technologies, Switzerland)を、光アライメント層の製造に用いた。この光アライメントポリマーは、光反応性基としてシンナメートをベースとする。光アライメント材料のポリマー主鎖は、アクリレートタイプである。基板上にアライメント層をスピンコーティングするため、ROP-103をシクロペンタノンに、固体濃度2重量%で溶解した。基板として、機械洗浄した厚さ1mm、長方形のD263(Schott, Germany)ガラス板を用いた。光アライメント層溶液をガラス基板に塗布し、回転速度1分当り2000回転で、60秒間スピンコーティングした。この方法で実現した結果として生じた乾燥フィルム厚さは、約60nmであった。続いて、フィルムを熱板上、温度130℃で5分間熱処理した。このテンパリング工程後、光アライメント層を直線偏光したUV光に露光した。直線偏光したUV光の強度は、280nm〜340nm波長範囲で2.2mW/cm2であった。光アライメント層に移った照射線量は150mJ/cm2であった。この場合、光アライメント層を入射光に垂直に露光した。偏光軸を、基板エッジの一つに平行(φ=0°)に選択した。続いて、前もってセットした下にある光アライメント層にしたがってアラインする目的で、薄い重合性の液晶層を塗布した。薄い液晶アライメント強化フィルムに用いる材料は、市販されている重合性の液晶モノマー材料ROF-5102(ROLIC Technologies, Switzerland)とした。ROF-5102配合物は、ジ−アクリレートタイプ液晶モノマーを含んでいる。ROF-5102をメチルプロピルケトンに、固体濃度2重量%で溶解した。この溶液をROP-103光アライメント層上に塗布し、次に、回転速度1分当り2000回転で、2分間スピンコーティングした。乾燥フィルム厚さ約30nmがこの方法で実現した。スピンコーティング後、フィルムを熱板上、温度54℃で5分間熱処理した。最後に、液晶モノマーフィルムを、窒素雰囲気中で、強度3mW/cm2(波長範囲320〜400nm)のUVA光に露光することによりで架橋した。照射線量2J/cm2がサンプルに移った。
【0110】
上で述べた分離したアライメント層の製造の完了後、光アライン可能なリターダフィルム用途の加工を続けた。光アライン可能なリターダ材料は、上述したアライメントポリマーROP-103および重合性の液晶モノマー材料ROF-5102の混合物からなる。この特定の光アライン可能なリターダ混合物に対して、ROP-103/ROF-5102比3対7を選択した。混合物をアニソールに固体濃度30重量%で溶解した。光アライン可能なリターダ材料の溶液を、D263ガラス板上に前もって用意したアライメント層上に塗布し、続いて、回転速度1分当り2000回転で、120秒間スピンコーティングした。この結果光アライン可能なリターダ層の最終の乾燥フィルム厚さ1ミクロンをもたらした。次に熱板によって2工程の熱処理を加えた。第1工程では、サンプルを50℃に2分の間加熱した。第2工程では、温度を130℃に上げた。サンプルをこの温度に3分に保持した。後続の光アライメントプロセスのために、サンプルを、光アライン可能なリターダ材料の透明点より3℃高い温度59℃に冷却した。光アライン可能なリターダに用いる露光強度は、波長範囲280nm〜340nmで2.2mW/cm2であった。光アライン可能なリターダ層に移った照射線量は、100mJ/cm2であった。サンプルを、基板エッジに斜めの偏光軸(φ=45°)を有する入射直線偏光に垂直に露光した。したがって、分離した下にある光アライメント層およびトップの光アライン可能なリターダに誘起されたアライメント方向は、45°だけ離れる。光アライン可能なリターダ層の光アライメント工程後、サンプルの温度を、59℃から40℃に至るまで1分当り1℃の冷却速度で下げ、その後室温まで急激に下げた。最後の工程で、LCPモノマーの架橋を開始し、したがってフィルムを固体状態に移すことを目的に、サンプルを窒素雰囲気中に置き、非偏光UVA光に露光した。UVA光源は強度3mW/cm2(波長範囲320〜400nm)を与えた。UVA照射中、線量700mJ/cm2がサンプルに移った。
【0111】
ライトテーブル上での直交偏光子間のリターダサンプルの試験は、リターダのアライメント品質は極めて良好であることを示した。しかし、複屈折挙動は、厚さ方向に沿って光学軸の均質の方位角配向を伴う標準的なリターダの挙動(リターダ光学軸が偏光子透過軸に斜めの場合には明状態、およびリターダ光学軸が偏光子透過軸に平行/垂直の場合には暗状態)と一致しないことが分かった。この結果から、下にあるアライメント層から光アライン可能なリターダフィルムへ移ったアライメント、および光アライン可能なリターダフィルムへ直接に適用されるアライメントの複合効果は、リターダ層内の厚さ方向に沿った光学軸のツイストプロフィールを導く、すなわちディレクター(director)の方位角配向が厚さ方向に沿って変化するということが結論づけられた。リターダフィルムはさらに、ツイストプロフィールがサンプル中に存在することを確定するエリプソメトリーによって特徴付けられる。リターダフィルム内の光学軸は、下にある光アライメント層表面(φ=0°)により規定された方向から、光アライン可能なリターダフィルム(φ=45°)の光アライメントにより規定された方向にツイストすることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマー、
(vi)場合によりさらなる成分
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層。
【請求項2】
I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの混合物;および
(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーの混合物、および/または
(iii)光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、もしくはオリゴマーもしくはポリマー、または光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマーの混合物、
(iv)場合によりさらなる成分
を、混合物中の物質の量が同じか異なって含むか、あるいは
II)(v)光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、もしくはオリゴマーもしくはポリマー、または光配向性および重合性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、オリゴマーもしくはポリマーの混合物、
(vi)場合によりさらなる成分
を、混合物中の物質の量が同じか異なって含む、請求項1記載の複屈折層。
【請求項3】
非線形チルトおよび/またはツイストプロフィールを含む、請求項1〜2のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項4】
物質(i)および/または(iii)が、アライニング表面を示す基板上にアラインされた、請求項1〜3のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項5】
物質(i)および/または(iii)がアラインされ、これによりアライメントがアライニング表面を示す基板により、かつボリューム光アライメントにより誘起される、請求項1〜4のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項6】
物質(i)および/または(iii)がアラインされ、これにより、アライニング表面を示す基板により、かつボリューム光アライメントによりアライメントが誘起され、アライニング表面からおよびボリューム光アライメントに誘起される両方のアライメント情報が異なる、請求項1〜5のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項7】
液晶物質が、線形にまたは非線形にツイストした構造を形成するか、またはチルト構造を形成するか、またはチルトおよびツイストした構造を形成する、請求項1〜6のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項8】
層がベンドまたはスプレイ変形を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項9】
均質分布から相分離までの範囲で分散された物質(i)および/または(ii)および/または(iii)を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項10】
複屈折層の少なくとも一つの物質が、層の厚さ方向に沿って密度勾配を有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の複屈折層。
【請求項11】
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性を有し、および好ましくはさらに重合性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分;
あるいは
II)(v)光配向性基および重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分;
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光すること
を含む、請求項1記載の光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層の製造方法。
【請求項12】
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(i)の混合物;および
(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(ii)の混合物;および/または
(iii)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(iii)の混合物;および
(iv)場合によりさらなる成分、または量が同じか異なる種々の物質(iv)の混合物;あるいは
II)(v)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、または量が同じか異なる種々の物質(iii)の混合物;および
(vi)場合によりさらなる成分、または量が同じか異なる種々の物質(iv)の混合物;
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光すること
を含み;これにより複屈折層の少なくとも1つの物質が層の厚さ方向に沿った密度勾配を生じる、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層を製造する請求項11記載の方法。
【請求項13】
a)I)(i)重合性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマーおよび/または
(iii)重合性および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)重合性および光配向性の基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分、
の層を基板上にコーティングし、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光し
、これにより光配向性物質(ii)および/または(iii)の少なくとも一部が層中に留まること
を含む、光学軸の方向が層の厚さ方向に沿って変化する複屈折層を製造する請求項11記載の方法。
【請求項14】
アライニング光の吸収が、有効な範囲内の波長の関数として変化する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
工程b)において、コーティングされた層を、次に、異なるもしくは同一の波長および/または異なる露光ジオメトリーで露光する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
a)I)(i)重合性の、好ましくは架橋基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマー;および
(ii)光配向性基を有する、および好ましくは重合性の、好ましくは架橋基を有するモノマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および/または
(iii)重合性、好ましくは架橋、および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(iv)場合によりさらなる成分、
あるいは
II)(v)重合性、好ましくは架橋、および光配向性基を有する液晶モノマーもしくはプレポリマーもしくはオリゴマーもしくはポリマー、および
(vi)場合によりさらなる成分、
の層を基板上にコーティングし、
ここで、物質(i)および(ii)および/または(iii)および/または(iv)は均質分布から相分離までの範囲で分散され、
b)コーティングされた層をアライニング光に露光すること
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
工程b)において、コーティングされた層を斜角露光することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
基板表面がアライメントを誘起し、かつアライニング光によってボリュームにおいてアライメントが誘起される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
アライメント表面のアライニング情報と、ボリューム光アライメントにより誘起されるアライニング情報とが異なる、請求項11記載の方法。
【請求項20】
アライメント表面のアライニング情報、およびボリューム光アライメントにより誘起されるアライニング情報が、方位角および/または斜角誘起される、請求項11記載の方法。
【請求項21】
視野角、広視野角でのコントラストおよびカラーシフトLCDを向上させるための、非線形変形チルトプロフィールを有する、先行請求項のいずれか記載の複屈折層の使用。
【請求項22】
先行請求項のいずれか記載の複屈折材料の、スプレイ変形またはベンド変形を有するリターダのための使用。
【請求項23】
アクロマチックリターダを製造するための、先行請求項のいずれか記載の複屈折材料の使用。
【請求項24】
層がツイスト変形を含む、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項25】
請求項1記載の複屈折層がアクロマチックリターダの機能を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項26】
局所的に異なるチルトおよび/または配向で重合した、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項27】
請求項1記載の複屈折層がツイストしたリターダの機能を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項28】
請求項1記載の複屈折層がパターン化されたツイストしたリターダの機能を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項29】
上述した複屈折層がアクロマチックローテータの機能を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項30】
上述した複屈折層がインセルリターダの機能を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項31】
局所的に異なるリターデーション値を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項32】
層が、上部に一軸性チルトおよび/またはツイストを有し、並びに下部にチルトおよび/またはツイスト変形プロフィールを有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項33】
ベンドまたはスプレイ変形を有する、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項34】
アライメント表面上に、物質(ii)が上部にあり、かつ物質(i)または(iii)が下部にある、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項35】
アライメント表面上に、物質(ii)および(i)または(iii)が上部にあり、かつ物質(i)または(iii)が下部にある、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。
【請求項36】
物質(i)が物質(ii)の上に層を形成するか;または物質(ii)が物質(iii)の上に層を形成するか;または物質(i)が物質(ii)の下に層を形成するか;または物質(ii)が物質(iii)の下に層を形成するか;または物質(ii)が、1層を物質(i)の上にもう1層を物質(i)の下に2層形成するか;または物質(ii)が、1層を物質(iii)の上にもう1層を物質(iii)の下に2層形成するか;または物質(iii)が物質(i)の上および/または下に層を形成する、相分離した物質(i)および(ii)および/または(iii)を含む、先行請求項のいずれか記載の層を含む光学部品。

【公表番号】特表2010−503878(P2010−503878A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527672(P2009−527672)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000441
【国際公開番号】WO2008/031243
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】