説明

ボリン酸化合物

ボリン酸誘導体、例えばボリン酸エステルを含む、安定化された局所用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] この出願は2009年6月3日に出願された米国仮出願第61/183,788号およびこれも2009年6月3日に出願された米国仮出願第61/183,792号の利益を主張し、その内容を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 本発明はボリン酸誘導体、例えばボリン酸エステル(borinic ester)を含む抗微生物組成物に関する。特定の態様において、本発明は、皮膚または爪の真菌または細菌感染症を処置するための局所用抗微生物組成物、例えば局所用組成物、ならびに口の中の細菌を低減させるための、例えばプラーク、歯肉炎および齲食を抑制および低減するための口腔用組成物、例えば歯磨剤を含む。
【0003】
[0003] 一部のボリン酸エステル類は抗細菌剤として有効であるが、ボリン酸エステル類は水性組成物に添加された場合不安定であることが判明しているため、ボリン酸エステル類を口腔ケア組成物中に組み込むことは困難を呈する。例えば、ボリン酸エステル類は例えば口腔ケア組成物中で加水分解および分解する可能性がある。加えて、ボリン酸エステル類は水性組成物中で不溶性である可能性がある。例えば、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランの水中における溶解度はわずか100ppmであり、それの様々な油類中における溶解度は0.5%未満である可能性がある。ボリン酸誘導体を安定に口腔ケア組成物中に組み込むための組成物および方法を開発する必要性がまだ残っている。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明は、特定のボリン酸エステル類は局所用または口腔ケア組成物、例えば局所用医薬組成物または歯磨剤もしくはマウスウォッシュ(mouthwash)中に組み込まれた際に安定、可溶性であり、抗微生物活性を保持するという驚くべき発見に向けられている。
【0005】
[0005] 1態様において、本発明のボリン酸誘導体はボリン酸エステル類、例えば式Aのボリン酸エステル類であり:
【0006】
【化1】

【0007】
ここで、R1およびR2は同じまたは異なっており(例えば同じ)、アリールアルキル、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環(例えば置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール、例えばフェニル、クロロフェニル、メチルフェニル、またはメチルクロロフェニル)から選択され;R3はヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリールアルキルカルボニル(例えば、置換または非置換ヘテロアリール、例えばキノリニルまたはヒドロキシピリジニルカルボニル)であり、遊離または医薬的に許容できる塩の形であり、医薬的に許容できるキャリヤーとの組み合わせである。例えば、1態様において、R1およびR2は同じであり、共にアリール、例えばフェニル、クロロフェニル、メチルフェニル、またはメチルクロロフェニルである。
【0008】
[0006] ヘテロアリールは例えば1、2または3個の窒素原子を含むアリール基、例えばピリジニル、キノリニル、ヒドロキシピリジニル、またはヒドロキシキノリニルである。アルキルは例えばC1-4アルキルである。置換は例えばハロゲン、例えば、クロロまたはフルオロ、ヒドロキシ、またはC1-4アルキルである。
【0009】
[0007] 従って、本発明において有用なボリン酸エステル類には、例えば(i)ホウ素ピコリネート類、例えばジアリールホウ素ピコリネート類、例えば3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランまたは3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(2-メチル-4-クロロフェニル)-ボラン、および(ii)ジアリールボリン酸エステル類、例えばジフェニルボラン-8-ヒドロキシキノリネート(PBHQ)が含まれる。
【0010】
[0008] 1態様において、そのボリン酸エステル類は、遊離または医薬的に許容できる塩の形の、本明細書に援用するWO2006/102604において記述されているような化合物、例えば式(I)の化合物であり:
【0011】
【化2】

【0012】
ここで
R*およびR**は独立して置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロ環であり;
zは0または1であり、ただし、zが1であるならば、AはCR10またはNであり、DはNまたはCR12であり、さらに、ただし、zがOであるならば、DはO、SまたはNR12aであり;
Eは水素、ヒドロキシ、アルコキシ、(シクロアルキル)オキシ、(シクロヘテロアルキル)オキシ、カルボキシ、またはアルキルオキシカルボニルであり;
mは0または1であり;
R12は水素、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アミド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、またはジアラルキルアミノであり;
R12aは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロ環であり;そして
R9およびR10は独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、カルボニル、ヒドロキシイミノ、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールチオ、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、アミノ、アルコキシ、ニトロ、スルホ、またはヒドロキシである。
【0013】
[0009] “アラルキル”および“アルカリール(alkaryl)”は時々それぞれアリールアルキルおよびアルキルアリールを指して用いられる。R9、R10、またはR12に関して列挙されるあらゆる部分のアルキルまたはアリール部分は場合により、例えばヒドロキシ、ハロゲン、またはC1-4アルキルで置換されている。
【0014】
[0010] アルキルは好ましくはC1-4アルキルである。シクロアルキルは好ましくはC3-7シクロアルキルである。アリールは好ましくはフェニルである。
[0011] 一部の態様において、Eは水素、ヒドロキシ、または(シクロヘテロアルキル)オキシ、例えば2-モルホリノエトキシから選択されるメンバーである。
【0015】
[0012] 他の態様において、R12は(CH2)kOH (ここでk = 1、2または3)、CH2NH2、CH2NH-アルキル、CH2N(アルキル)2、CO2H、CO2アルキル、CONH2、OH、アルコキシ、アリールオキシ、SH、S-アルキル、S-アリール、S02アルキル、SO2N(アルキル)2、SO2NHアルキル、SO2NH2、SO3H、SCF3、CN、ハロゲン、CF3、NO2、NH2、2°-アミノ、3°-アミノ、NH2SO2またはCONH2である。
【0016】
[0013] さらに他の態様において、R9およびR10は独立して水素、アルキル、シクロアルキル、(CH2)nOH (n = 1〜3)、CH2NH2、CH2NHアルキル、CH2N(アルキル)2、ハロゲン、CHO、CH=NOH、CO2H、CO2-アルキル、S-アルキル、S02-アルキル、S-アリール、SO2N(アルキル)2、SO2NHアルキル、SO2NH2、NH2、アルコキシ、CF3、SCF3、NO2、SO3HまたはOHである。
【0017】
[0014] 式1の化合物は回転異性体の形で存在していてよく、その図示された供与結合(矢印)は存在していても存在していなくてもよく、すなわち、本発明は、ホウ素原子とピコリネートの窒素またはヒドロキシの間に配位が存在するそれらの化合物およびそのような配位が欠けているそれらの化合物を含む。本発明は、ホウ素とその分子の別の原子の間に供与結合が形成されている式1のそれらの化合物も含む。加えて、例えば有機化学および医薬品化学の当業者は、炭素とホウ素の間の原子半径の大きな違いは、溶媒分子、例えば水がそのピコリネート環のホウ素原子および窒素原子の間に挿入され得る溶媒配位錯体の形成を可能にすることができることを理解するであろう。本発明は、式1の化合物のそのような付加体を含む。
【0018】
[0015] zが1である本発明の1態様において、式1の化合物は次の式に従う構造を有する:
【0019】
【化3】

【0020】
ここで、DはNおよびCR12から選択される。
[0016] zが0である本発明の別の態様において、式1の化合物は次の式に従う構造を有する:
【0021】
【化4】

【0022】
ここで、DはO、SおよびNR12aから選択されるメンバーである。
[0017] 本発明の1態様において、R*およびR**は同じである。より具体的な態様において、R*およびR**は置換または非置換アリールである。さらにもっと具体的な態様において、R*およびR**は置換または非置換フェニルであり、ここで前記の置換または非置換フェニルは次の構造を有し:
【0023】
【化5】

【0024】
さらに、ここでR4〜R8のそれぞれは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アラルキル、置換されたアラルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、2°-アミノ、3°-アミノ、アミノスルホニル、アミノアルキルオキシ、(アルキルアミノ)アルキルオキシ、(ジアルキルアミノ)アルキルオキシ、およびシクロヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーである。R4〜R8に関して列挙されたそれぞれの部分のそれぞれのアルキルまたはアリール部分は場合により置換されている。
【0025】
[0018] R*およびR**が両方ともちょうど記述したような場合により置換されたフェニルである本発明のより具体的な態様において、R4〜R8のそれぞれは以下のものからなるグループから独立して選択されるメンバーである:水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アラルキル、置換されたアラルキル、(CH2)kOH(ここでk = 1、2または3)、CH2NH2、CH2NH-アルキル、CH2N(アルキル)2、CO2H、CO2アルキル、CONH2、CONHアルキル、CON(アルキル)2、OH、アルコキシ、アリールオキシ、SH、S-アルキル、S-アリール、S02アルキル、SO2N(アルキル)2、SO2NHアルキル、SO2NH2、SO3H、SCF3、CN、ハロゲン、CF3、NO2、NH2、2°-アミノ、3°-アミノ、NH2SO2、OCH2CH2NH25 OCH2CH2NHアルキル、OCH2CH2N(アルキル)2、オキサゾリジン-2-イル、およびアルキル置換されたオキサゾリジン-2-イル。
【0026】
[0019] R*およびR**が両方とも記述したような場合により置換されたフェニルである本発明の1態様において、R9はHであり、zは1であり、AはCHであり、DはCHであり、EはOHであり、mはOである。上記のもののより具体的な態様において、R*およびR**は共に3-クロロ-4-メチルフェニルである。別の具体的な態様において、R*およびR**は共に2-メチル-4-クロロフェニルである。
【0027】
[0020] 特に有用な化合物には、遊離または医薬的に許容できる塩の形の3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランおよび3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(2-メチル-4-クロロフェニル)-ボランが含まれる。
【0028】
[0021] 驚いたことに、配合物中でそのボリン酸エステル化合物は回転異性体の形で存在している可能性があることが発見されており、ここでその形はpHに大きく依存し、そのホウ素は配位共有結合(供与結合)によりヘテロアリール中の窒素に結合している可能性がある。そのホウ素が非極性である、またはピコリネート部分上のヒドロキシル基と結合している回転異性体は主に、または排他的に塩基性pHにおいて存在し、一方でそのホウ素がピコリネートまたは他のヘテロ環上の窒素と結合しているより極性の大きい回転異性体は酸性pHにおいて優勢である。例えば、
【0029】
【化6】

【0030】

その非極性の回転異性体またはそのホウ素がヒドロキシと結合している回転異性体は配合物中でより安定であることも発見されている。理論により束縛されることを意図するわけでは無いが、窒素との供与結合の形成の際に生じる電子密度のシフトはその極性の異性体がそのエステル結合においてより加水分解を受けやすくすると信じられる。
【0031】
[0022] より安定な回転異性体を有利にする(favor)ため、我々は、例えば結果としてより極性の大きい回転異性体の形成をもたらすであろうpHの低下を防ぐための緩衝剤の使用によりその配合物のpHを7より上に維持する、および/またはそのpHをさらにもっと高いレベル、例えば8〜9.5で維持することが好都合であることを発見しており、驚いたことに、その化合物はより高いpHで安定であり、(疑われる可能性があるように)OHイオンによる分解に対して高度に脆弱であるということは無いことが示されている。この発見は、その化合物の安定な水性配合物の調製を可能にする。我々は、この発見が、油相またはその他には比較的低いpH、例えば5.5を有する組成物中のボリン酸エステルを用いた局所用エマルジョンを記述しているWO2006/102604の実施例とはいくらか対照的であることを特筆する。
【0032】
[0023] 従って、本発明は、抗細菌的に有効な量の例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式(I)の化合物を含み、少なくとも8、例えば8.5〜11、例えば約9のpHを有し、または少なくともpH7に緩衝されており、場合によりさらに1種類以上の抗酸化剤、界面活性剤および可溶化剤を含む組成物、例えば局所用組成物、例えば口腔ケアまたは局所用医薬組成物である組成物1.0を提供する。
【0033】
[0024] 本発明は、組成物1.0および歯磨剤ビヒクルを含み、少なくとも8、例えば8.5〜11、例えば約9のpHを有し、または少なくともpH7に緩衝されており、場合によりさらに1種類以上の抗酸化剤、界面活性剤および/または可溶化剤を含む歯磨剤である組成物2.0を含む。
【0034】
[0025] 別の観点において、しばしば可溶化するのが難しい、例えば式Aのボリン酸誘導体は、ポリオキシエチレンまたはポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンを含むポリマー中で高度に可溶性であることが発見されている。従って、別の態様において、本発明は、例えば組成物1.0〜2.0のいずれかに従い、例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式Iの化合物ならびに例えばポリオキシエチレンおよびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンのポリマーから選択される可溶化剤を含む局所用組成物、例えば局所用医薬または口腔ケア配合物である組成物3.0を含む。
【0035】
[0026] その配合物を少なくとも7のpHに緩衝することは安定性を増進することも分かっている。従って、本発明は、抗細菌的に有効な量の例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式(I)の化合物、例えば下記でより完全に記述される組成物1.0(以下参照)〜3.0(以下参照)のいずれかを適切な緩衝剤、例えばホスフェート緩衝剤との組み合わせで含む局所用組成物、例えば局所用医薬または口腔ケア配合物である組成物4.0を提供する。
【0036】
[0027] 本発明は、組成物1.0、3.0または4.0および医薬的に(美容的にを含む)許容できるビヒクルを含み、少なくとも8、例えば8.5〜11、例えば約9のpHを有し、または少なくとも7に緩衝されており、場合によりさらに1種類以上の抗酸化剤、界面活性剤および/または可溶化剤を含む局所用組成物(例えば、局所用抗微生物製品または抗微生物石鹸)である組成物5.0も含む。
【0037】
[0028] 本発明は、組成物1.0、3.0または4.0を医薬的に許容できるビヒクルと混合し、そのpHを少なくとも7、好ましくは少なくとも8、例えば8.5〜11のレベルで調節または維持することを含む、局所用組成物を調製するための方法である方法6.0も含む。
【0038】
[0029] 本発明は、本発明の組成物をそれを必要とする対象の冒された皮膚または爪に適用することを含む、局所的微生物感染症を低減、抑制、または処置するための、例えば
局所的皮膚感染症、例えばアクネ、表在性皮膚感染症、小さな切り傷、病原体のコロニー形成、および炎症性の皮膚の病気を処置、低減または抑制するための方法である方法7.0も含む。
【0039】
[0030] 本発明は、組成物1.0〜4.0のいずれかを口に、または局所的に許容できるビヒクルと混合し、そのpHを少なくとも7、好ましくは少なくとも8、例えば8.5〜11のレベルで調節または維持することを含む、局所用、例えば口腔ケア組成物を調製するための方法である方法8.0も含む。
【0040】
[0031] 本発明は、口の微生物感染症を低減、抑制、または処置するため、例えば齲食の形成を低減または抑制するため、歯肉炎を処置、低減または抑制するため、口腔細菌のレベルを低減するため、口腔中での微生物のバイオフィルムの形成を抑制するため、プラークの蓄積を低減するため、および/または歯および口腔を清潔にするための方法であって、本発明の組成物をそれを必要とする対象の口腔に適用することを含む方法である方法9.0も含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】[0032] 図1は、実施例においてさらに記述されるように、60℃において2週間後の化合物1の回収のパーセントを、(a)Gシリーズの基剤および(b)低含水(low water)基剤における配合pHの関数として表す。
【図2】[0033] 図2は、実施例においてさらに記述されるように、70℃において1日後の50/50 アセトニトリル/水の溶液中の化合物1の回収の百分率を、pHの関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0034] 全体において用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための略記として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。加えて、本明細書において引用される全ての参考文献をそのまま本明細書に援用する。本開示における定義および引用された参考文献の定義において不一致がある場合には、本開示が統制する。
【0043】
[0035] 別途明記されない限り、本明細書において、および明細書中の他の箇所において示されている全ての百分率および量は、重量による百分率を指すものと理解されるべきである。与えられた量はその物質の有効重量に基づく。
【0044】
[0036] 本発明の口腔用組成物には、歯磨剤、マウスリンス(mouth rinse)、デンタルフロス、歯科用塗布剤(dental paint)、歯科用薄膜、ロゼンジ、または菓子類が含まれてよい。歯磨組成物には練り歯磨き、ゲル、または粉末が含まれてよい。
【0045】
[0037] “口に許容できる塩類”は、口腔ケア製品、例えば歯磨剤中での使用に関して、その製品の通常の使用により提供される量および濃度において安全である、医薬的に許容できる酸または塩基付加塩類である。
【0046】
[0038] 本発明において有用である可能性がある式(I)の化合物には、以下のものが含まれる:3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボラン(またはビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)ボリン酸 3-ヒドロキシピコリン酸エステル)、例えば式(II)の化合物:
【0047】
【化7】

【0048】

[0039] 従って、本発明の1観点において、例えば抗細菌的に有効な量の例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式(I)の化合物を含み、少なくとも7、好ましくは少なくとも8、例えば8.5〜11、例えば約9のpHを有し、場合によりさらに1種類以上の抗酸化剤、界面活性剤および可溶化剤を含む組成物、例えば口腔ケア組成物または局所用医薬配合物である組成物1は、例えば以下の組成物のいずれかを含む:
1.1 ボリン酸エステルを含む、組成物1。
【0049】
1.2 式1のボリン酸エステルを含む、組成物1.1。
1.3 ジアリールホウ素ピコリネートを含む、組成物1.1または1.2。
1.4 3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランまたは3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(2-メチル-4-クロロフェニル)-ボランを含む、組成物1.1、1.2または1.3。
【0050】
1.5 3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランを含む、組成物1.4。
1.6 ジアリールボリン酸エステルを含む、組成物1。
【0051】
1.7 そのジアリールボリン酸エステルがジフェニルボラン-8-ヒドロキシキノリネート(PBHQ)である、組成物1.6。
1.8 式(A)の化合物が重量により0.05%〜20%、例えば0.1%〜10%の量で存在する、組成物1.0〜1.7のいずれか。
【0052】
1.9 pHを望まれるレベルに上げて維持する緩衝剤を含む、組成物1〜1.8のいずれか。
1.10 その緩衝剤が遊離または医薬的に許容できる塩の形の塩基性アミノ酸を含む、組成物1.9。
【0053】
1.11 その塩基性アミノ酸が遊離または医薬的に許容できる塩の形のアルギニン、リシン、シトルリン(citrullene)、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸およびそれらの混合物から選択される、組成物1.10。
【0054】
1.12 その塩基性アミノ酸が遊離または医薬的に許容できる塩の形のアルギニンである、組成物1.12。
[0040] 理論により束縛されることを意図するわけでは無いが、式Aの化合物、例えば式(I)のボリン酸エステル類は酸素、過酸化物により、または口腔用および局所用組成物中で例えば酸素と反応するエステル類、例えばポリエチレングリコールから形成され得る過酸化物により酸化されてよい。そのような酸素および/または過酸化物はそのボリン酸エステルとその炭素−ホウ素結合において反応することができ、それは切断およびボロン酸誘導体およびフェノール誘導体の形成をもたらし、それは効果の無い抗細菌剤である。抗酸化剤の添加は、その口腔用組成物中に存在する、またはその口腔用組成物中で形成される可能性がある過酸化物および他の酸化剤を低減させると信じられる。
【0055】
[0041] 従って、本発明の1観点において、組成物1.0は従って例えば下記の組成物のいずれかを含む:
1.13 さらに抗酸化剤を含む、組成物1.0〜1.8のいずれか。
【0056】
1.14 その抗酸化剤がアスコルビン酸、ナトリウムアスコルビルホスフェート、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アルファトコフェロール、クエン酸、およびそれらの混合物から選択される、組成物1.9。
【0057】
1.15 その抗酸化剤がそのボリン酸誘導体の酸化を抑制するのに十分な量で存在する、組成物1.9〜1.10のいずれか;
1.16 その抗酸化剤が式(I)の化合物の酸化を防ぐ、または抑制するのに有効な量で存在する、組成物1.9〜1.11のいずれか。
【0058】
[0042] 本発明の1態様において、式(I)の化合物は本発明の組成物中で可溶化剤により可溶化されており、それは例えばポリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー類(例えばPluraflo L4370)、またはトリブロックコポリマー界面活性剤F127を含んでいてよい。必要とされる可溶化剤の量は、その組成物中の式(I)の化合物の量および選択される個々の可溶化剤に依存するであろう。従って、本発明は下記の組成物を含む:
1.17 さらに可溶化剤を含む、組成物1.0〜1.12のいずれか。
【0059】
1.18 その可溶化剤が非イオン性界面活性剤である、組成物1.13。
1.19 その可溶化剤がアルキルエーテル、例えばポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはこれらのいずれかのコポリマーもしくは混合物を含む、組成物1.14。
【0060】
1.20 式Aの化合物が他の組成物成分との混合の前にその可溶化剤中で可溶化される、組成物1.13〜1.15のいずれか。
1.21 その可溶化剤が1〜30重量%、例えば5〜10重量%の量で存在する、組成物1.13〜1.16のいずれか。
【0061】
[0043] 本発明の組成物は場合により、細菌の細胞壁中に見られるカルシウムと錯体形成することができ、細菌の細胞壁を弱めて細菌の溶菌を増大させると信じられている1種類以上のキレート剤も含んでいてよい。キレート剤はさらに、ボリン酸誘導体と錯体形成して不安定化することができるであろうイオンを隔離することができる。キレート剤としての使用に適した薬剤は当業者に既知であり、ジ−またはテトラ−酸類およびそれらの塩類、例えば可溶性ピロリン酸塩類、ポリカルボン酸類、およびポリアミノカルボン酸類が含まれる。本組成物中で用いられるピロリン酸塩類は、アルカリ金属ピロリン酸塩類のいずれかであることができる。特定の態様において、塩類には四アルカリ金属ピロリン酸塩、二アルカリ金属二酸ピロリン酸塩、三アルカリ金属一酸ピロリン酸塩およびそれらの混合物が含まれ、ここでそのアルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。その塩類はそれらの水和された、および水和されていない形の両方で有用である。本組成物において有用なピロリン酸塩の有効量は一般に少なくとも約1重量%のピロリン酸イオン、約1.5重量%〜約6重量%、約3.5重量%〜約6重量%のそのようなイオンを提供するのに十分である。有用なキレート剤には、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール四酢酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびクエン酸が含まれる。従って、さらなる態様において、本発明は以下のものを提供する:
1.22 さらにキレーターを含む、組成物1.0〜1.17のいずれか。
【0062】
1.23 そのキレーターがピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール四酢酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびクエン酸から選択される、組成物1.22。
【0063】
1.24 そのキレーターが重量により1〜6%の量のイオンを提供する、組成物1.22または1.23のいずれか。
[0044] 1態様において、本発明の組成物2.0は有効量の組成物1.0および口に許容できるキャリヤーを含む口腔ケア製品である。口腔ケア製品における使用に適した許容できるキャリヤーは当業者に既知であり、水および/または湿潤剤を含むペースト、ゲルまたはマウスウォッシュの形をとってよく、または粉末、もしくはデンタルフロスもしくは歯科用装置の形をとってよい。許容できるキャリヤーの構成要素には組成物1.0が含まれてよい。湿潤剤は当業者に既知であり、食用多価アルコール類、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、および他のポリオール類、およびこれらの湿潤剤の混合物が含まれる。本発明の口腔用組成物はその湿潤剤の約5重量%から約80重量%までを構成してよく、水および他の構成要素がそのキャリヤーの残りの部分を構成する。
【0064】
2.1 組成物1〜1.24のいずれかを水および/または湿潤剤との組み合わせまたは会合(association)で含むペースト、ゲルまたは液体の形の、組成物2。
2.2 水の量が10%未満である、組成物2.1。
【0065】
2.3 湿潤剤の量が50%より大きい、組成物2.1または2.2。
2.4 その湿潤剤が多価アルコール類(例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール)およびアルキレングリコール(ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、および他のポリオール類および混合物から選択される、組成物2〜2.3のいずれか。
【0066】
2.5 歯磨剤である、組成物2〜2.4のいずれか。
2.6 練り歯磨きである、組成物2.5。
2.7 さらに研磨剤を含む、組成物2.5または2.6。
【0067】
2.8 さらにフッ化物イオンの源を含む、組成物2.7。
[0045] 別の態様において、本発明は、例えば組成物1.0〜2.8に従い、例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式Iの化合物およびポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンのポリマーから選択される少なくとも1種類の可溶化剤を含む局所用または口腔ケア組成物である組成物3.0、例えば以下のものを提供する:
3.1 その可溶化剤がポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー、例えばFluraflo L4370 (BASF)を含む、組成物3.0。
【0068】
3.2 その可溶化剤がポロキサマー、例えば式H-(O-CH2-CH2)x-(O-CH(CH3)CH2)y-(O-CH2-CH2)z-OHのトリブロックコポリマーを含む、組成物3.0。
3.3 そのポロキサマー中のポリオキシプロピレンブロックの平均分子量がおおよそ3〜4kDであり、そのポリオキシエチレンの含有量がおおよそ65〜75%であり、そのポロキサマーの全体の平均分子量がおおよそ12〜13kDであり、例えばここでxおよびzがそれぞれ90〜110、例えば約101であり、yが50〜65、例えば約56であり、例えばここでそのポロキサマーがポロキサマー407(例えばBASFからのPluronic(登録商標)F-127)である、組成物3.2。
【0069】
3.3 その可溶化剤が例えば100〜1000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール、例えばPEG 300またはPEG 600を含む、組成物3.0。
3.4 その可溶化剤がポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー類、ポロキサマー類、ポリエチレングリコール類、ならびにそれらの混合物から選択される薬剤を含む、組成物3.0。
【0070】
そのボリン酸誘導体の安定性は緩衝剤の使用により、たとえ中性のpHにおいても大きな程度まで著しく増進されることも発見されている。本発明は、さらなる態様において、例えば前記の組成物1.0〜3.4のいずれかに従い、抗細菌的に有効な量の例えば式Aのボリン酸誘導体、例えば式(I)の化合物および緩衝剤を含み、約7〜約11のpH、例えば少なくとも8のpHを有する、例えば少なくとも7.2のpHを提供するリン酸緩衝剤を有する局所用または口腔ケア配合物である組成物4を提供する。
【0071】
[0046] 本発明の口腔ケア組成物は、1種類以上のフッ化物イオンの源、例えば可溶性であることができるフッ化物塩類も含んでいてよい。そのフッ化物が別の原子に共有結合している、および/またはカルシウムから隔離されているフッ化物塩類が好ましい。多種多様なフッ化物イオンを生じる物質を本組成物における可溶性フッ化物の源として用いることができる。代表的なフッ化物イオンの源にはフッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、アミンフッ化物、フッ化アンモニウム、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。特定の態様において、そのフッ化物イオンの源にはフッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムおよびそれらの混合物が含まれる。
【0072】
[0047] 特定の態様において、本発明の口腔ケア組成物は、約25ppm〜約25,000ppmのフッ化物イオン、一般に少なくとも約500ppm、例えば約500〜約2000ppm、例えば約1000〜約1600ppm、例えば約1450ppmを供給するのに十分な量のフッ化物イオンの源またはフッ素を提供する成分を含んでいてもよい。
【0073】
[0048] フッ化物イオンの源は本発明の組成物に、その組成物の重量により、1態様において約0.01重量%〜約10重量%または約0.03重量%〜約5重量%、および別の態様において約0.1重量%〜約1重量%のレベルで添加されてよい。適切なレベルのフッ化物イオンを提供するためのフッ化物塩類の重量は、明らかにその塩の中のカウンターイオンの重量に基づいて異なるであろう。
【0074】
[0049] 本発明の口腔用組成物は追加の抗細菌剤も含んでいてよく、それは当業者に既知であり、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル(トリクロサン)、草の抽出物または精油、ビスグアニド系防腐剤(bisguanide antiseptics)、フェノール系防腐剤、ヘキセチジン、ポビドンヨード、デルモピノール(delmopinol)、サリフルオル(salifluor)、金属イオン(例えば、亜鉛塩類、例えばクエン酸亜鉛)、サンギナリン、およびプロポリスである。
【0075】
[0050] 本発明の口腔用組成物は歯を脱感作する薬剤も含んでいてよく、それは当業者に既知であり、カリウム塩、カプサイシン、ユージノール、ストロンチウム塩、亜鉛塩、塩化物塩、またはそれらの組み合わせを含む。
【0076】
[0051] 本発明の口腔用組成物は研磨剤(abrasives)および/または研磨剤(polishing agents)、例えばカルシウムおよびシリカ研磨剤を含んでいてよく、それは当業者に既知である。好ましいカルシウム研磨剤には、リン酸カルシウム研磨剤、例えばリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、またはリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)が含まれてよい。有用なシリカ研磨剤には、約20ミクロンまでの平均粒径を有する沈降シリカ類、例えばJ. M. Huberにより市場に出されているZeodent 115(登録商標)が含まれてよい。他の有用な研磨剤には、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、か焼アルミナ、ベントナイトまたは他のシリカ性物質、またはそれらの組み合わせも含まれる。
【0077】
[0052] 本明細書において有用なシリカ研磨性(abrasive polishing)物質は、他の研磨剤と同様に、一般に約0.1および約30ミクロン、約5および約15ミクロンの平均粒径を有する。そのシリカ研磨剤は、沈降シリカまたはシリカゲル類、例えばシリカキセロゲル類からのものであることができ、それはW.R.Grace & Co.のDavison化学事業部により商品名Syloid(登録商標)の下で市場に出されているものであってよい。その沈降シリカ物質には、名称Zeodent 115および119を有するシリカを含む、J. M. Huber Corp.により商品名Zeodent(登録商標)の下で市場に出されている沈降シリカ物質が含まれる。
【0078】
[0053] 特定の態様において、本発明に従う口腔ケア組成物の実施において有用な研磨性物質には、約100cc/100gシリカ未満の、および約45cc/100g〜約70cc/100gシリカの範囲の油吸収値(oil absorption value)を有するシリカゲル類および沈降非晶質シリカが含まれる。油吸収値はASTAこすり落とし法(Rub−Out Method)D281を用いて測定される。特定の態様において、シリカ類は約3ミクロン〜約12ミクロン、および約5〜約10ミクロンの平均粒径を有するコロイド粒子である。
【0079】
[0054] 特定の態様において、その研磨性物質は例えば約5ミクロン未満のd50を有する非常に小さい粒子を含む。例えば約3〜約4ミクロンのd50を有する小さい粒子のシリカ(SPS)、例えばSorbosil AC43(登録商標)(Ineos)である。そのような小さい粒子は、過敏症を低減することを目標とした配合物において特に有用である。小さい粒子の構成要素は、第2のより大きな粒子の研磨剤との組み合わせで存在していてよい。例えば、特定の態様において、その配合物は約3〜約8%のSPSおよび約25〜約45%の一般に用いられる研磨剤を含む。
【0080】
[0055] シリカおよび式(I)の化合物を含む口腔用組成物は色を白色から黄色に変化させることが分かっており、それは望ましくない。そのような色の変化は、例えその組成物が(前に論じた)抗酸化剤を含んでいたとしても観察することができる。本発明は、キレート剤のその口腔用組成物への添加はそのような色の変化を抑制することができ、それどころかそのような色の変化を逆行させることができるという驚くべき発見にも基づいている。そのような色の変化を防ぐのに有用なキレート剤は前に論じられている。
【0081】
[0056] 本発明の実施において特に有用である低い油吸収のシリカ研磨剤は、W.R. Grace & Co.のDavison化学事業部、メリーランド州バルティモア 21203により商品名Sylodent XWA(登録商標)の下で市場に出されている。約29重量%の含水量を有し、直径が平均約7〜約10ミクロンであり、油吸収が約70cc/100gシリカ未満であるコロイド状シリカの粒子からなるシリカヒドロゲルであるSylodent 650 XWA(登録商標)は、本発明の実施において有用である低い油吸収のシリカ研磨剤の例である。その研磨剤は本発明の口腔ケア組成物中に約10〜60重量%、他の態様において約20〜45重量%、および別の態様において約30〜50重量%の濃度で存在する。
【0082】
[0057] 本発明の口腔ケア組成物は、口腔がブラッシングされる際に生じる泡の量を増大させるための薬剤を含んでいてもよく、そのような薬剤は当業者に既知である。泡の量を増大させる薬剤の説明的な例には、それに限定されるわけではないがポリオキシエチレン、およびそれに限定されるわけではないがアルギネートポリマー類を含む特定のポリマー類が含まれる。
【0083】
[0058] ポリオキシエチレンは、本発明の口腔ケアキャリヤー構成要素により発生させられる泡の量および泡の厚さを増大させることができる。ポリオキシエチレンは一般にポリエチレングリコール(“PEG”)またはポリエチレン酸化物としても知られている。この発明に適したポリオキシエチレン類は、約200,000〜約7,000,000の分子量を有するであろう。1態様において、その分子量は約600,000〜約2,000,000、および別の態様において約800,000〜約1,000,000であろう。そのポリオキシエチレンは本発明の口腔ケア組成物の口腔ケアキャリヤー構成要素の重量により約1%〜約90%、1態様において約5%〜約50%、および別の態様において約10%〜約20%の量で存在していてよい。その口腔ケア組成物中の発泡剤の投与量(すなわち1回量)は、約0.01〜約0.9重量%、約0.05〜約0.5重量%、および別の態様において約0.1〜約0.2重量%である。
【0084】
[0059] 本発明の口腔用組成物は界面活性剤または共存可能な界面活性剤の混合物も含んでいてよく、それは当業者に既知である。適切な界面活性剤は、広いpH範囲全体にわたって適度に安定である界面活性剤、例えば陰イオン性、陽イオン性、非イオン性または双性イオン性界面活性剤であり、それらの混合物を含む。
【0085】
[0060] 本明細書において有用な陰イオン性界面活性剤には、アルキル基中に約10〜約18個の炭素原子を有するアルキルサルフェート類の水溶性塩類および約10〜約18個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリド類の水溶性塩類、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウム ラウロイルサルコシネートおよびナトリウム ココナッツ(coconut) モノグリセリド サルフェート類が含まれる。陰イオン性界面活性剤の混合物を利用してもよい。
【0086】
[0061] 本発明において有用な陽イオン性界面活性剤には、約8〜約18個の炭素原子を含む1本の長いアルキル鎖を有する脂肪族第四級アンモニウム化合物の誘導体、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジイソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウム、ココナッツ アルキルトリメチルアンモニウム ニトライト、およびフッ化セチルピリジニウムが含まれてよい。
【0087】
[0062] 本発明の組成物において用いることのできる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(本質的に親水性である)と本質的に脂肪族またはアルキル芳香族であってよい有機疎水性化合物の縮合により生成される化合物として定義することができる。本発明において有用な非イオン性界面活性剤の例には、Pluronics、アルキルフェノール類のポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドのプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との縮合に由来する生成物、脂肪族アルコール類のエチレンオキシド縮合物、長鎖第3級アミンオキシド類、長鎖第3級ホスフィンオキシド類、長鎖ジアルキルスルホキシド類ならびにそのような物質の混合物が含まれる。
【0088】
[0063] ポロキサマー類(Polaxamers)は、本発明において用いることのできる特定のタイプの非イオン性界面活性剤である。ポロキサマー類は、2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレン酸化物))の親水性の鎖を両側に有する中央のポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレン酸化物))の疎水性の鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー類である。ポロキサマー類は、商品名Pluronicsによっても知られている。そのポリマーブロックの長さをカスタマイズすることができるため、わずかに異なる特性を有する多くの異なるポロキサマー類が存在する。総称“ポロキサマー”に関して、これらのコポリマー類は一般に文字“P”(ポロキサマーに関する)の後に3桁の数字を付けて名付けられ、最初の2桁の数字×100はそのポリオキシプロピレン中心部のおおよその分子量を示し、最後の桁の数字×10はポリオキシエチレン含有量の百分率を示す(例えば、P407=4,000g/molのポリオキシプロピレンの分子量および70%のポリオキシエチレン含有量を有するポロキサマー)。商品名Pluronicに関して、これらのコポリマー類の符号化はその室温における物理的形状を定める文字(L=液体、P=ペースト、F=フレーク(固体))で始まり、それに2または3桁の数字が続き、数字表示における最初の桁の数字(3桁の数字では2桁)に300を掛けたものがその疎水性部分(hydrophobe)のおおよその分子量を示し;最後の桁の数字×10はポリオキシエチレン含有量の百分率を示す(例えば、L61=1,800g/molのポリオキシプロピレンの分子量および10%のポリオキシエチレン含有量を有するPluronic)。与えた例において、ポロキサマー181(P181)=Pluronic L61である。
【0089】
[0064] 本発明において有用な双性イオン性合成界面活性剤は、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウム(phosphomium)、およびスルホニウム化合物の誘導体として広く記述することができ、ここでその脂肪族基は直鎖または分枝状であることができ、ここで、脂肪族置換基の1個は約8〜約18個の炭素原子を含み、1個は陰イオン性の水可溶化基(water−solubilizing group)、例えばカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートを含む。その組成物中に含めるのに適した界面活性剤の説明的な例には、アルキル硫酸ナトリウム、ナトリウム ラウロイルサルコシネート、ココアミドプロピルベタイン(cocoamidopropyl betaine)およびポリソルベート20、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0090】
[0065] その界面活性剤または共存できる界面活性剤の混合物は、本発明の組成物中に組成物全体の重量により約0.1%〜約5.0%、別の態様において約0.3%〜約3.0%、および別の態様において約0.5%〜約2.0%で存在することができる。
【0091】
[0066] 本発明の口腔ケア組成物は1種類以上の香味剤を含んでいてもよく、それは当業者に既知である。本発明の実施において用いられる香味剤には、精油および様々な香味アルデヒド類、エステル類、アルコール類、および類似の物質が含まれるが、それらに限定されない。精油の例には、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ローズマリー、ユーカリ、マヨラマ、桂皮、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジの油が含まれる。メントール、カルボン(carvone)、およびアネトール(anethole)のような化学物質、ならびに他の抽出物、例えば緑茶抽出物も有用である。
【0092】
[0067] その香味剤は口腔用組成物中に約0.1〜約5重量%および約0.5〜約1.5重量%の濃度で組み込まれる。個々の口腔ケア組成物の投与量(すなわち1回量)中の香味剤の投与量は、約0.001〜約0.05重量%、および別の態様において約0.005〜約0.015重量%である。
【0093】
[0068] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により当業者に既知である1種類以上のポリマー、例えばポリエチレングリコール類、ポリビニルメチルエーテルマレイン酸コポリマー類、多糖類(例えば、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、または多糖ゴム類、例えばキサンタンガムもしくはカラギーナンガム)も含む。酸性ポリマー類、例えばポリアクリレートゲル類は、それらの遊離酸または部分的にもしくは完全に中和された水溶性アルカリ金属(例えばカリウムおよびナトリウム)もしくはアンモニア塩類の形で提供されてよい。特定の態様は、無水マレイン酸またはマレイン酸と別の重合可能なエチレン的に(ethylenically)不飽和な単量体、例えば、メチルビニルエーテル(メトキシエチレン)の、約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有する約1:4〜約4:1コポリマー類を含む。これらのコポリマー類は、例えばGAF Chemicals CorporationのGantrez AN 139(分子量500,000)、AN 119(分子量250,000)およびS−97医薬グレード(Pharmaceutical Grade)(分子量70,000)として入手できる。そのようなコポリマー類は、式(I)の化合物(IR8387)の抗細菌活性を向上させることができる。
【0094】
[0069] 他の有効なポリマー類には、無水マレイン酸のアクリル酸エチル、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、またはエチレンとの1:1コポリマー類(後者は例えばMonsanto EMA No. 1103、分子量10,000およびEMA Grade 61として入手できる)、およびアクリル酸のメチルもしくはヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸メチルもしくはエチル、イソブチルビニルエーテルまたはN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマー類のようなポリマー類が含まれる。
【0095】
[0070] さらなる種類のポリマー性薬剤には、置換されたアクリルアミド類のホモポリマー類および/または不飽和スルホン酸類のホモポリマー類およびその塩類を含む組成物が含まれ、特にその場合、ポリマー類は本明細書に援用するZahidへの米国特許第4,842,847号(1989年6月27日)において記述されている約1,000〜約2,000,000の分子量を有する2−アクリルアミド 2 メチルプロパンスルホン酸のようなアクリルアミドアルカンスルホン酸類から選択される不飽和スルホン酸類に基づく。
【0096】
[0071] 別の有用な種類のポリマー性薬剤には、ポリアミノ酸類、特に、本明細書に援用する米国特許第4,866,161号(Sikesら)において開示されているような、ある割合の陰イオン性界面活性アミノ酸、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸およびホスホセリンを含むポリアミノ酸類が含まれる。
【0097】
[0072] 口腔ケア組成物の調製において時々、望ましい粘稠度(consistency)を与えるために、または配合物の性能を安定化する、もしくは増進するために、多少の増粘物質(thickening material)を添加する必要がある。そのような増粘物質は当業者に既知であり、カルボキシビニルポリマー類、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロースおよびセルロースエーテル類の水溶性塩類、例えばナトリウム カルボキシメチルセルロースおよびナトリウム カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースが含まれてよい。天然ガム類、例えばカラヤ(karaya)、アラビアガム、およびトラガカントガム(gum tragacanth)も組み込むことができる。組成物の質感をさらに向上させるために、コロイド性ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは微細に分割されたシリカを増粘組成物の構成要素として用いることができる。特定の態様において、組成物全体の重量により約0.5%〜約5.0%の量の増粘剤が用いられる。
【0098】
[0073] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により当業者に既知の1種類以上の酵素を含んでいてもよい。有用な酵素には、プロテアーゼ類、グルカノヒドロラーゼ類、エンドグリコシダーゼ類、アミラーゼ類、ムタナーゼ類、リパーゼ類およびムチナーゼ類またはそれらの共存できる混合物が含まれる。特定の態様において、その酵素はプロテアーゼ、デキストラナーゼ、エンドグリコシダーゼおよびムタナーゼである。別の態様において、その酵素はパパイン、エンドグリコシダーゼまたはデキストラナーゼおよびムタナーゼの混合物である。本発明におけるいくつかの共存できる酵素の混合物の内の酵素は、1態様において約0.002%〜約2%、または別の態様において約0.05%〜約1.5%、またはさらに別の態様において約0.1%〜約0.5%を構成する。
【0099】
[0074] 上記の構成要素に加えて、この発明の態様は様々な任意の歯磨剤成分を含むことができ、その一部を下記に記述する。任意の成分には、例えば接着剤、石鹸泡剤(sudsing agents)、香味剤、甘味剤、追加の抗プラーク剤、研磨剤、および着色剤が含まれるが、それらに限定されず、それらは当業者に既知である。
【0100】
[0075] 本発明の組成物は、口腔用製品の領域において一般的である方法を用いて作ることができる。
[0076] 本発明は、1つの方法の観点において、以下のことのために、口腔に安全かつ有効な量の本明細書で記述した口腔ケア組成物を、例えばブラッシングにより適用することを含む:(i)齲食の形成を低減または抑制する、(ii)例えば定量的光誘導蛍光法(QLF)または電気的齲食測定(ECM)により検出されるエナメル質の前齲食病変を低減、修復または抑制する、(iii)歯の脱灰を低減または抑制し、再石灰化を促進する、(iv)歯の過敏性を低減する、(v)歯肉炎を低減または抑制する、(vi)口の中の潰瘍または切り傷の治癒を促進する、(vii)酸を産生する細菌のレベルを低減する、(viii)アルギノ分解性細菌の相対的なレベルを増大させる、(ix)口腔中での微生物のバイオフィルムの形成を抑制する、(x)糖負荷の後にプラークのpHを少なくともpH5.5のレベルに上げる、および/または維持する、(xi)プラークの蓄積を低減する、(xii)口内乾燥を低減する、(xiii)歯および口腔を清潔にする、(xiv)酸食を低減する、(xv)歯を白くする、および/または(xvi)齲食原性細菌を殺す、または抑制する。
【0101】
[0077] その口腔用組成物は、1種類以上の適切な溶媒も含んでいてよい。いずれかの固体物質(溶質)の、いずれかの液体物質(溶媒)中で溶解する能力は、その溶質およびその溶媒の物理的特性に依存する。溶質および溶媒が類似の物理的特性を有する場合、その溶質のその溶媒中での溶解度は最大であろう。これは、“似たものは似たものを溶かす”という伝統的な理解の元になっている。溶媒は一方の極端において非極性の親油性の油として、一方で他方の極端において極性の親水性溶媒として特性付けることができる。油性溶媒は他の非極性物質をファンデルワールス(Van der WaI)相互作用により溶かし、一方で水および他の親水性溶媒は極性物質をイオン性、双極子、または水素結合相互作用により溶かす。全ての溶媒は最も極性が小さい、すなわち炭化水素類、例えばデカンから最も極性が大きい溶媒である水まで連続体(continuum)に沿ってリストすることができる。溶質は等しい極性を有する溶媒中でその最大の溶解度を有するであろう。従って、水中で最小の溶解度を有する薬物に関して、より極性の小さい溶媒は向上した溶解度を与え、その溶質にほぼ等しい極性を有する溶媒は最大の溶解度を与えるであろう。ほとんどの薬物は中程度の極性を有しており、従って、水よりもかなり極性が小さいプロピレングリコールまたはエタノールのような溶媒中で最大の溶解度を経験する。その薬物が水中(例えば0.1%(w/w))よりもプロピレングリコール中(例えば8%(w/w))でより大きい溶解度を有する場合、プロピレングリコールへの水の添加は、その溶媒混合物に関して純粋なプロピレングリコールと比較して薬物の溶解度の最大量を減少させるはずである。優れた溶媒への劣った溶媒の添加は、そのブレンドに関して、優れた溶媒中での最大溶解度と比較して最大溶解度を減少させるであろう。
【0102】
[0078] 化合物が口腔ケア配合物中に組み込まれる場合、その配合物中の有効成分の濃度は選択された溶媒および/またはキャリヤー中でのその有効成分の溶解度により制限される可能性がある。親油性では無い薬物は典型的には医薬的に許容できる溶媒および/またはキャリヤー中で非常に低い溶解度を示す。例えば、一部のボリン酸錯体の水中での溶解度は0.00025% wt/wt未満である。同じボリン酸錯体の溶解度は、プロピレングリコールまたはイソプロピルミリステートのどちらかの中で約2%wt/wt未満である可能性がある。本発明の1態様において、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)が式Iの化合物を溶解させるために用いられる溶媒である。本配合物において有用なボリン酸錯体は、DGME中で約10%wt/wtから約25%wt/wtまでの溶解度を有すると信じられる。別の態様において、式Iの化合物を溶解させるためにDGME水共溶媒系が用いられる。DGMEの溶媒能力は水が添加されると低下する;しかし、そのDGME/水共溶媒系は約0.1%から約5%wt/wtまでの有効成分の望まれる濃度を維持するように設計することができる。好ましくはその有効成分は約0.5%から約3%wt/wtまで、より好ましくは約1%wt/wtで存在する。この増大した溶解度は、沈殿により引き起こされる生物学的利用能の低減の可能性を低減させる。
【0103】
[0079] 液体の形は、緩衝剤、懸濁化および予製(dispensing)剤、シックナー、ならびに同様のものを有する適切な水性または非水性ビヒクルを含んでいてよい。固体の形、例えばクリームまたはペーストまたは同様のものは、例えば以下の成分のいずれかを含んでいてよい:界面活性剤を有する基質としての水、油、アルコールまたはグリース、ポリマー、例えばポリエチレングリコール、シックナー、固体および同様のもの。液体または固体の配合物は、送達増進技術、例えばリポソーム、マイクロソーム、マイクロスポンジ(microsponges)および同様のものを含んでいてよい。加えて、その化合物は持続放出系、例えばその療法剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性母材を用いて送達することができる。様々な持続放出性物質が確立されており、それらは当業者に周知である。
【0104】
[0080] 本発明は有効量の式Aの化合物を含む局所用医薬組成物を含む。薬物、配合物、または浸透性物質(permeant)の“有効な”量は、望まれる局所性または全身性の作用を提供するのに十分な有効薬剤の量を意味する。“局所的に有効な”、“美容的に有効な”、“医薬的に有効な”、または“療法的に有効な”量は、その望まれる療法的結果を達成するのに必要な薬物の量を指す。“局所的に有効な”は、皮膚に適用された際に望まれる薬理学的結果を適用の場所において局所性で、またはその物質中の有効成分の経皮通過の結果として全身性でのどちらかでもたらす物質を指す。“美容的に有効な”は、皮膚に適用された際に望まれる美容的結果をその物質の有効成分の適用の場所において局所性でもたらす物質を指す。
【0105】
[0081] 式Aの化合物は、遊離または医薬的に許容できる塩で提供されてよい。“医薬的に許容できる塩類”は、その塩類が当技術で周知の様々な有機性および無機性のカウンターイオンに由来し、本発明の製品の通常の使用により提供される曝露のレベルにおいて毒性では無い、化合物の医薬的に許容できる塩類を指す。そのような塩類には、例としてのみであるが、塩化水素酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩 ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、アルカン酸塩、例えば酢酸塩、HOOC-(CH2)P-CH3(ここでpは0〜4である)、および同様のものが含まれてよい。加えて、医薬的に適合性の塩類を多くの酸を用いて形成することができ、それには塩基、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、および同様のものの塩類を含む非毒性の医薬的な塩基付加塩類が含まれるが、それに限定されない。当業者は多種多様な非毒性(non〜toxic)の医薬的に許容できる付加塩類を認識しているであろう。
【0106】
[0082] 用語“医薬的に許容できるキャリヤー”または“医薬的に許容できるビヒクル”は、有効量の本明細書で定めた有効薬剤の適切な送達を提供し、その有効薬剤の生物学的活性の有効性を妨げず、受容者または患者に対して十分に非毒性である、あらゆる配合物またはキャリヤー媒体を指す。代表的なキャリヤーには、水、植物性および鉱物性両方の油類、クリーム基剤、ローション基剤、軟膏基剤および同様のものが含まれる。これらの基剤には、懸濁化剤、シックナー、透過増進剤、および同様のものが含まれる。それらの配合は、化粧品および局所用医薬の当業者に周知である。キャリヤーに関する追加の情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17.sup.th edition, 1985, Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストンの第8部において見つけることができ、それを本明細書に援用する。
【0107】
[0083] “医薬的に許容できる局所用キャリヤー”および均等な用語は、本明細書において上記で記述したような、局所適用に適した医薬的に許容できるキャリヤーを指し;その有効薬剤(単数または複数)を懸濁する、または溶解させることができ、皮膚に適用された際に非毒性かつ非炎症性である特性を有する、不活性な液体またはクリームのビヒクルは、医薬的に許容できる局所用キャリヤーの例である。この用語は特に、局所用化粧品における使用に関して認可されたキャリヤー物質も含むことを意図している。用語“医薬的に許容できる添加物”は、薬物配合の領域で知られており、または用いられており、その有効薬剤の生物学的活性の有効性を過度に妨げず、受容者または患者に対して十分に非毒性である保存剤、抗酸化剤、芳香剤、乳化剤、染料および賦形剤を指す。局所用配合物のための添加剤は当技術で周知であり、それらが医薬的に許容でき、上皮細胞またはそれらの機能に有害では無い限り、その局所用組成物に添加されてよい。さらに、それらはその組成物の安定性の劣化を引き起こすべきでは無い。例えば、不活性な増量剤、抗刺激薬、粘着付与剤(tackifiers)、賦形剤、芳香剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、他の浸透増進剤、および局所用または経皮送達配合物の他の一般に用いられる構成要素は当業者に既知である。用語“増進”、“透過増進”または“浸透増進”は、その薬物が皮膚を通って浸透する速度を増大させるための、皮膚の薬物に対する浸透性の増大に関する。そのような増進剤の使用により達成された増進された浸透は、例えば拡散セル装置を用いて動物またはヒトの皮膚を通るその薬物の拡散の速度を測定することにより観察することができる。拡散セルは、Merritt et al. 皮膚透過に関する拡散装置、J of Controlled Release, 1 (1984) pp. 161-162により記述されている。用語“浸透増進剤”または“透過増進剤”は、単独または組み合わせでその皮膚の薬物に対する浸透性を増大させるように作用する薬剤または薬剤の混合物を意図する。用語“賦形剤”は、望まれる使用に関して有効である薬物組成物の配合において用いられるキャリヤー、希釈剤および/またはビヒクルを意味することが慣習的に知られている。用語“局所投与”は、薬剤が局所的に有効である、および/またはその皮膚の外側表面を横切って下にある組織に入るような、医薬品の皮膚の外側表面への適用を指す。局所投与には、その組成物の無傷の皮膚への、皮膚の破れた(broken)傷、生傷、または開放性の傷へのその組成物の適用が含まれる。医薬品の局所投与は結果としてその薬剤のその皮膚および周囲の組織への限られた分配をもたらすことができ、または、その薬剤が血流によりその処置領域から移動させられた場合、結果としてその薬剤の全身性の分配をもたらすことができる。用語“経皮送達”は、組成物の局所投与または他の適用の結果もたらされる薬剤の皮膚の障壁を越える拡散を指す。角質層は障壁として働き、無傷の皮膚に浸透することができる医薬品はわずかしか無い。それに対し、表皮および真皮は多くの溶質にとって浸透可能であり、従って薬物の吸収は、角質層を擦りむいて、またはそうでなければ剥がして表皮を露出させた皮膚を通してより容易に起こる。経皮送達には、皮膚または粘膜のあらゆる部分を通した注射または他の送達ならびに残りの部分を通した吸収または浸透が含まれる。無傷の皮膚を通る吸収は、その有効薬剤を皮膚への適用の前に適切な医薬的に許容できるビヒクル中に置くことにより増進することができる。受動的な局所投与は、その有効薬剤を皮膚軟化剤または浸透増進剤との組み合わせでその処置部位に直接適用することで構成されてよい。本明細書で用いられる際、経皮送達は外皮、すなわち皮膚、毛、または爪を通る、または通過する浸透による送達を含むことを意図する。
【0108】
[0084] 本明細書で特許請求される局所用配合物において有用な有効薬剤は、尋常性座瘡および/または二次感染した皮膚の病気に対して有効である化合物である。本明細書で特許請求される局所用配合物において有用な有効薬剤の例が2004年6月16日に出願された米国特許出願第10/867,465号において開示されており、その出願を本明細書にそのまま援用する。好ましくは、その有効薬剤は本明細書において上記で記述した式Aのボリン酸錯体である。
【0109】
[0085] 本発明は局所用医薬組成物を含む。これらの局所用医薬組成物は、それ自体既知である方式で、例えば一般に行われる混合、溶解、顆粒形成、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル封入(encapsulating)、封入(entrapping)または凍結乾燥プロセスにより製造することができる。従って、本発明に従う使用のための医薬組成物は、有効化合物の医薬的に用いることができる製剤中への加工を容易にする賦形剤および補助剤(auxiliaries)を含む1種類以上の生理的に許容できるキャリヤーを用いて一般に行われる方式で配合することができる。適切な配合は、選択される望まれる製品に依存する。
【0110】
[0086] 本発明の組成物は流体または半固体のビヒクルを含み、それはポリマー、シックナー、緩衝剤、中和剤、キレート剤、保存剤、界面活性剤または乳化剤、抗酸化剤、ワックスまたは油、皮膚軟化剤、日焼け止め、および溶媒または混合溶媒系を含んでいてよいがそれらに限定されない。その溶媒または混合溶媒系は、それが薬物の溶解を主に担っているため、その配合にとって重要である。最高の溶媒または混合溶媒系は、その配合物への劣った溶媒の添加にも関わらず臨床的に適切なレベルのその薬物を溶解状態で維持することもできる。主題発明において有用な局所用組成物は、多種多様な製品のタイプへと作ることができる。これらには、ローション、クリーム、ゲル、棒、スプレー、軟膏、ペースト、泡状物質(foams)、ムース、およびクレンザーが含まれるが、それらに限定されない。これらの製品のタイプには、粒子、ナノ粒子およびリポソームを含むがそれらに限定されないいくつかのタイプのキャリヤー系が含まれ得る。望まれるなら、崩壊剤、例えば架橋されたポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加することができる。配合および投与に関する技法は、“Remington's Pharmaceutical Sciences.”Mack Publishing Co(ペンシルバニア州イーストン)において見つけることができる。その配合は、体内の望まれる標的部位への送達を最大限にするように選択することができる。
【0111】
[0087] 摩擦無しで皮膚の表面に適用されるべき製剤であるローションは、典型的には液体または半液体の製剤であり、その中に微細に分割された固体、ろう様物質(waxy)、または液体が分散している。ローションは典型的には、よりよい分散状態を生成するための懸濁化剤およびその有効薬剤を皮膚と接触した状態で局在させて保つために有用な化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または同様のものを含むであろう。
【0112】
[0088] 本発明に従う送達のための有効薬剤を含むクリームは、水中油または油中水のどちらかの粘着性の液体または半固体のエマルジョンである。クリーム基剤は水洗性であり、油相、乳化剤および水相を含む。その油相は一般にワセリンまたは脂肪族アルコール、例えばセチル−もしくはステアリルアルコールからなり;その水相は通常は、必ずしもそうでは無いが、油相を体積で上回り、一般に湿潤剤を含む。クリーム配合物中の乳化剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(上記)で説明されているように、一般に非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性界面活性剤である。
【0113】
[0089] ゲル配合物も本発明と関連して用いることができる。局所用薬物配合の領域の当業者には理解されるであろうが、ゲルは半固体である。単相のゲルはそのキャリヤーの液体全体にわたって実質的に均一に分布した有機性高分子を含み、それは典型的には水性であるが、溶媒または溶媒の混合物であってもよい。
【0114】
[0090] 半固体の製剤である軟膏は、典型的にはワセリンまたは他の石油派生物に基づく。当業者には理解されるであろうが、用いられるべき具体的な軟膏基剤は、所与の配合物に関して選択された有効薬剤に関して最適な送達を提供し、好ましくは他の望まれる特性、例えば皮膚軟化性(emolliency)または同様の特性も提供する軟膏基剤である。他のキャリヤーまたはビヒクルの様に、軟膏基剤は不活性、安定、非刺激性および非感作性であるべきである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版(ペンシルバニア州イーストン: Mack Publishing Co., 1995)において1399〜1404ページで説明されているように、軟膏基剤は4つの種類にグループ分けすることができる:油性基剤;乳化可能な基剤;エマルジョン基剤;および水溶性基剤。油性軟膏基剤には、例えば植物油、動物から得られた脂肪、および石油から得られた半固体の炭化水素類が含まれる。乳化可能な軟膏基剤は吸収性軟膏基剤としても知られており、ほとんどまたは全く水を含まず、例えばヒドロキシステアリンサルフェート(hydroxystearin sulfate)、無水ラノリンおよび親水性ワセリンを含む。エマルジョン軟膏基剤は油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンのどちらかであり、例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンおよびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基剤は様々な分子量のポリエチレングリコール類から調製され;また、さらなる情報に関してRemington: The Science and Practice of Pharmacy(上記)を参照してもよい。
【0115】
[0091] 本発明の有用な配合物にはスプレー剤も含まれる。スプレー剤は一般に、有効薬剤を送達のために皮膚の上に噴霧することができる水性および/またはアルコール性溶液中で提供する。そのようなスプレー剤には、送達の後に投与の部位における有効薬剤溶液の集中を提供するように配合されたスプレー剤が含まれ、例えば、そのスプレー剤溶液は主に、その中にその薬物または有効薬剤を溶解させることができるアルコールまたは他の同様の揮発性の液体で構成されていることができる。皮膚に送達されると、そのキャリヤーは蒸発し、濃縮された有効薬剤を投与の部位に残す。
【0116】
[0092] その局所用医薬組成物は、適切な固体またはゲル相のキャリヤーも含んでいてよい。そのようなキャリヤーの例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー、例えばポリエチレングリコール類が含まれるが、それらに限定されない。
【0117】
[0093]] その局所用医薬組成物は適切な乳化剤も含んでいてよく、それは水中油または油中水での混合および懸濁化を増進または促進する薬剤を指す。本明細書で用いられる乳化剤は単一の乳化剤で構成されていてよく、または非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性界面活性剤もしくは2種類以上のそのような界面活性剤の混合物であってよく;本明細書における使用に好ましいのは、非イオン性または陰イオン性乳化剤である。そのような表面活性剤は、MC Publishing CompanyのMcCutcheon事業部(米国07452ニュージャージー州グレンロック、ロックロード175)により出版された“McCutcheon's Detergent and Emulsifiers”北アメリカ版、1980年版において記述されている。本明細書における使用に好ましいのは、高分子量アルコール類、例えばセテアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、乳化ワックス、モノステアリン酸グリセリンである。他の例は、エチレングリコールジステアレート、ソルビタントリステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート(SPAN 60)、ジエチレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、スクロースジオレエート、スクロースステアレート(CRODESTA F−160)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ 30)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(BRIJ 72)、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(BRIJ 721)、ポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj 45)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(TWEEN 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN 20)およびオレイン酸ナトリウムである。コレステロールおよびコレステロール誘導体も外部に用いられるエマルジョンにおいて用いられてよく、w/oエマルジョンを促進する。特に適切な非イオン性乳化剤は、Paul L. Lindnerにより、1974年にKenneth Lissantにより編集されDekker(ニューヨーク州ニューヨーク)により出版された“Emulsions and Emulsion”の188〜190ページにおいて記述された方法により決定されるような、w/o系に関して約3〜6およびo/w系に関して8〜18の親水性−親油性バランス(HLB)を有する非イオン性乳化剤である。本明細書における使用により好ましいのは、約8〜約18のHLBを有する系を生成する1種類以上の非イオン性乳化剤である。そのような非イオン性乳化剤の例には、4.9のHLBを有するポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルに関する商品名である“BRIJ 72”、15.5のHLBを有するポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテルに関する商品名である“BRIJ 721”、9.7のHLBを有するポリオキシエチレンラウリルエーテルに関する商品名である“Brij 30”、8.0のHLBを有する乳化ワックスに関する商品名である“Polawax”;4.7のHLBを有するソルビタンモノステアレートに関する商品名である“Span 60”;14.5のHLBを有するスクロースステアレートに関する商品名である“Crodesta F−160”が含まれるが、それらに限定されない。これらの物質は全てRuger Chemicals Inc.;Croda;ICI Americas, Inc.;Spectrum Chemicals;およびBASFから入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の乳化剤を含む場合、それぞれの乳化剤は約0.5〜約2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0%、より好ましくは1.0%または1.8%の量で存在する。好ましくは、その乳化剤は(約1.8%の)ステアレス(steareth)21および(約1.0%の)ステアレス2の混合物を含む。
【0118】
[0094] その局所用医薬組成物は、適切な皮膚軟化剤も含んでいてよい。皮膚軟化剤は、皮膚の乾燥の予防または軽減のために、および皮膚の保護のために用いられる物質である。有用な皮膚軟化剤には、セチルアルコール、イソプロピルミリステート、ステアリルアルコール、および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。多種多様な適切な皮膚軟化剤が既知であり、本明細書において用いることができる。例えば、Sagarin, Cosmetics, Science and Technology、第2版、Vol. 1, pp. 32-43 (1972)、および1990年4月24日に発行されたDecknerらへの米国特許第4,919,934号を参照、その両方を本明細書にそのまま援用する。これらの物質はRuger Chemical Co,(ニュージャージー州アービントン)から入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の皮膚軟化剤を含む場合、それぞれの皮膚軟化剤は約0.1から15%まで、好ましくは0.1〜約3.0、より好ましくは0.5、1.0、または2.5重量%の量で存在する。好ましくは、その皮膚軟化剤はセチルアルコール、イソプロピルミリステートおよびステアリルアルコールの1/5/2の比率での混合物である。その皮膚軟化剤はセチルアルコールおよびステアリルアルコールの1/2の比率での混合物であってもよい。
【0119】
[0095] その局所用医薬組成物は、酸化を抑制することが知られている物質である適切な抗酸化剤も含んでいてよい。本発明に従う使用に適した抗酸化剤には、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-fert-ブチルフェノール、エリソルビン酸、グアヤクガム(gum guaiac)、没食子酸プロピル、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、tert-ブチルヒドロキノンおよびトコフェロール類、例えばビタミンEおよび同様のもの(これらの化合物の医薬的に許容できる塩類およびエステル類を含む)が含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、その抗酸化剤はブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、それらの医薬的に許容できる塩類もしくはエステル類、またはそれらの混合物である。最も好ましくは、その抗酸化剤はブチルヒドロキシトルエンである。これらの物質はRuger Chemical Co,(ニュージャージー州アービントン)から入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の抗酸化剤を含む場合、存在する抗酸化剤の総量は約0.001から0.5重量%まで、好ましくは0.05から約0.5重量%まで、より好ましくは0.1%である。
【0120】
[0096] その局所用組成物は適切な保存剤も含んでいてよい。保存剤は抗微生物剤として作用するために医薬配合物に添加される化合物である。非経口配合物において有効かつ許容できることが当技術において既知である保存剤の中には、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン(chlorohexidine)、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびそれらの様々な混合物がある。例えば、Wallhausser, K.-H., Develop. Biol. Standard, 24:9-28 (1974) (S. Krager, Basel)を参照。好ましくは、その保存剤はメチルパラベン、プロピルパラベンおよびそれらの混合物から選択される。これらの物質はInolex Chemical Co(ペンシルベニア州フィラデルフィア)またはSpectrum Chemicalsから入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の保存剤を含む場合、存在する保存剤の総量は約0.01から約0.5重量%まで、好ましくは約0.1から0.5%まで、より好ましくは約0.03から約0.15までである。好ましくはその保存剤はメチルパラベンおよびプロピルパラベンの5/1の比率での混合物である。アルコールが保存剤として用いられる場合、その量は通常15〜20%である。
【0121】
[0097] その局所用医薬組成物は、脂質二重層を越えない金属陽イオンと錯体を形成するための適切なキレート剤も含んでいてよい。適切なキレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(ベータ-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、および8-アミノ-2-[(2-アミノ-5-メチルフェノキシ)メチル]-6-メトキシキノリン-N5N,N’,N’-四酢酸、四カリウム塩(QUIN−2)が含まれる。好ましくはそのキレート剤はEDTAおよびクエン酸である。これらの物質はSpectrum Chemicalsから入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類のキレート剤を含む場合、存在するキレート剤の総量は約0.005から2.0重量%まで、好ましくは約0.05%から約0.5重量%まで、より好ましくは約0.1重量%である。
【0122】
[0098] その局所用医薬組成物は、その配合物のpHを少なくともpH8の範囲に調節および維持するための適切な塩基性化剤および緩衝剤も含んでいてよい。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の塩基性化または緩衝剤を含む場合、存在する薬剤の総量は約0.1重量%から約10重量%まで、好ましくは0.1重量%から約5.0重量%まで、より好ましくは約1.0重量%である。その薬剤は一般に、その配合物を望まれるpHにするのに必要ないかなる量でも添加される。
【0123】
[0099] その局所用医薬組成物は適切な粘度増加剤も含んでいてよい。これらの構成要素は、ポリマーを含む溶液の粘度を、その薬剤のそのポリマーとの相互作用を通して増大させることができる拡散性化合物である。CARBOPOL ULTREZ 10は粘度増加剤として用いられてよい。これらの物質はNoveon Chemicals(オハイオ州クリーブランド)から入手可能である。本発明の局所用配合物が少なくとも1種類の粘度増加剤を含む場合、存在する粘度増加剤の総量は約0.25重量%から約5.0重量%まで、好ましくは約0.25%から約1.0重量%まで、より好ましくは約0.4重量%から約0.6重量%までである。
【0124】
[00100] その局所用医薬組成物は1種類以上の適切な溶媒も含んでいてよい。いずれかの固体物質(溶質)の、いずれかの液体物質(溶媒)中で溶解する能力は、その溶質およびその溶媒の物理的特性に依存する。溶質および溶媒が類似の物理的特性を有する場合、その溶質のその溶媒中での溶解度は最大であろう。これは、“似たものは似たものを溶かす”という伝統的な理解の元になっている。溶媒は一方の極端において非極性の親油性の油として、一方で他方の極端において極性の親水性溶媒として特性付けることができる。油性溶媒は他の非極性物質をファンデルワールス(Van der WaI)相互作用により溶かし、一方で水および他の親水性溶媒は極性物質をイオン性、双極子、または水素結合相互作用により溶かす。全ての溶媒は最も極性が小さい、すなわち炭化水素類、例えばデカンから最も極性が大きい溶媒である水まで連続体(continuum)に沿ってリストすることができる。溶質は等しい極性を有する溶媒中でその最大の溶解度を有するであろう。従って、水中で最小の溶解度を有する薬物に関して、より極性の小さい溶媒は向上した溶解度を与え、その溶質にほぼ等しい極性を有する溶媒は最大の溶解度を与えるであろう。ほとんどの薬物は中程度の極性を有しており、従って、水よりもかなり極性が小さいプロピレングリコールまたはエタノールのような溶媒中で最大の溶解度を経験する。その薬物が水中(例えば0.1%(w/w))よりもプロピレングリコール中(例えば8%(w/w))でより大きい溶解度を有する場合、プロピレングリコールへの水の添加は、その溶媒混合物に関して純粋なプロピレングリコールと比較して薬物の溶解度の最大量を減少させるはずである。優れた溶媒への劣った溶媒の添加は、そのブレンドに関して、優れた溶媒中での最大溶解度と比較して最大溶解度を減少させるであろう。
【0125】
[00101] 化合物が局所用配合物中に組み込まれる場合、その配合物中の有効成分の濃度は選択された溶媒および/またはキャリヤー中でのその有効成分の溶解度により制限される可能性がある。親油性では無い薬物は典型的には医薬的に許容できる溶媒および/またはキャリヤー中で非常に低い溶解度を示す。例えば、一部のボリン酸錯体の水中での溶解度は0.00025% wt/wt未満である。同じボリン酸錯体の溶解度は、プロピレングリコールまたはイソプロピルミリステートのどちらかの中で約2%wt/wt未満である可能性がある。本発明の1態様において、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)が式Iの化合物を溶解させるために用いられる溶媒である。本配合物において有用なボリン酸錯体は、DGME中で約10%wt/wtから約25%wt/wtまでの溶解度を有すると信じられる。別の態様において、式Iの化合物を溶解させるためにDGME水共溶媒系が用いられる。DGMEの溶媒能力は水が添加されると低下する;しかし、そのDGME/水共溶媒系は約0.1%から約5%wt/wtまでの有効成分の望まれる濃度を維持するように設計することができる。好ましくは、その有効成分は約0.5%から約3%wt/wtまで、より好ましくは約1%wt/wtでそのまま適用される(as−applied)局所用配合物中に存在する。DGMEは水よりも揮発性が低いため、その局所用配合物は適用の際に水分が抜けるので、その有効薬剤はそのクリーム配合物中でより溶けやすくなる。この増大した溶解度は、その薬物の皮膚の表面上での沈殿により引き起こされる生物学的利用能の低減の可能性を低減させる。
【0126】
[00102] 局所投与に適した、または美容的適用に適した液体の形、例えばローションは、緩衝剤、懸濁化および予製(dispensing)剤、シックナー、浸透増進剤、ならびに同様のものを有する適切な水性または非水性ビヒクルを含んでいてよい。固体の形、例えばクリームまたはペーストまたは同様のものは、例えば以下の成分のいずれかを含んでいてよい:界面活性剤を有する基質としての水、油、アルコールまたはグリース、ポリマー、例えばポリエチレングリコール、シックナー、固体および同様のもの。液体または固体の配合物は、送達増進技術、例えばリポソーム、マイクロソーム、マイクロスポンジ(microsponges)および同様のものを含んでいてよい。加えて、その化合物は持続放出系、例えばその療法剤を含む固体疎水性ポリマーの半透性母材を用いて送達することができる。様々な持続放出性物質が確立されており、それらは当業者に周知である。
【0127】
[00103] この発明の実施に従う局所的処置計画は、その組成物を毎日1回から数回まで、適用部位の皮膚に直接適用することを含む。
[00104] 本発明の配合物は、細菌感染、アクネ、炎症および同様のものと関係する病気または症状を処置、改善または予防するために用いることができる。
【0128】
[00105] 以下のものは、本発明の局所用医薬配合物に添加することができる美容的および医薬的薬剤の例である。以下の薬剤は既知の化合物であり、商業的に容易に入手可能である。抗炎症剤には、ビサボロール メンソレータム、ダプソン、アロエ、ヒドロコルチゾン、および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。ビタミン類には、ビタミンB、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンD、および同様のものならびにビタミン誘導体、例えばタザロテン(tazarotene)、カルシポトリエン(calcipotriene)、トレチノイン(tretinoin)、アダパレン(adapalene)および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。抗老化剤には、ナイアシンアミド、レチノールおよびレチノイド誘導体、AHA、アスコルビン酸、リポ酸、補酵素Q10、ベータヒドロキシ酸類、サリチル酸、銅結合ペプチド類、ジメチルアミノエチル(DAEA)および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。日焼け止めおよび/または日焼け軽減剤には、PABA、ホホバ、アロエ、パディメート−O(padimate−O)、メトキシシンナメート類、プロキサミン(proxamine)HCl、リドカインおよび同様のものが含まれるが、それらに限定されない。サンレスタンニング(Sunless tanning)剤には、ジヒドロキシアセトン(DHA)が含まれるが、それに限定されない。抗微生物剤には、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、テルビナフィン(terbinafme)HCL、トリクロサン、および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。乾癬処置剤および/またはアクネ処置剤には、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、コールタール、硫化セレン、酸化亜鉛、ピリチオン(pyrithione)(亜鉛および/またはナトリウム)、タザロテン(tazarotene)、カルシポトリエン(calcipotriene)、トレチノイン(tretinoin)、アダパレン(adapalene)および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。角質化を制御または修正するために有効である薬剤には、限定では無いが以下のものが含まれる:トレチノイン、タザロテン、およびアダパレン。
【0129】
[00106] 式Iの有効薬剤および場合によりこれらの追加の薬剤の少なくとも1種類を含む組成物は、局所的に投与されるべきである。主要な適用において、これはそのボリン酸およびあらゆる他の有効薬剤のその皮膚への作用およびその皮膚の処置をもたらす。あるいは、その局所的に適用された有効成分のいずれか1種類は経皮経路により全身的に送達されてもよい。そのような組成物において、例えば抗炎症剤、ビタミン、抗老化剤、日焼け止め、抗微生物剤、および/またはアクネ処置剤のような追加の美容的にまたは医薬的に有効な薬剤は、通常は微量な構成要素(約0.001重量%から約20重量%まで、または好ましくは約0.01重量%から約10重量%まで)であり、残りの部分は様々なビヒクルまたはキャリヤーおよびその望まれる投与形を形成するのに役立つ加工助剤である。
【0130】
[00107] 本発明は下記の実施例でさらに記述される。その実施例は単に説明的なものであり、記述され、特許請求される本発明の範囲を限定するものでは決して無い。
【実施例】
【0131】
実施例1−低含水歯磨剤中での安定性
[00108] 有効成分である3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボラン(化合物1)をシリカ基剤中に含む歯磨配合物の安定性を、異なる水のレベルにおいて評価する。その配合物は以下の通りである:
表1
【0132】
【表1−1】

【0133】
【表1−2】

【0134】
[00109] 化合物1を低含水歯磨剤中に組み込むことは、より高い含水量を有する歯磨剤の配合と比較して、その有効成分の安定性を増進する。これらの低含水配合の選択肢は、トリクロサンを抗細菌剤として有する陽性対照であるColgate Total(登録商標)と同等のインビトロでの抗細菌および抗炎症効能を示す。
【0135】
[00110] これらの配合物の間の水のレベルの違いは重要である。Gシリーズは、6%水配合物に関する0.25および水の添加無しの配合物に関する0.09と比較して、0.75の水分活性レベル(試料中の水の蒸気圧を同じ温度における遊離水の蒸気圧で割ったものとして表される)を有する。異なる配合物中での時間の経過に対する化合物1の安定性を、下記の表において示す:
表2
【0136】
【表2】

【0137】
[00111] 歯磨剤中の水のレベルの低減は、配合物中の化合物1の安定性にプラスの影響を有するようである。制御された室温および40℃において2ヶ月間の時間経過(aging)の後、0%および6%水添加(added water)の配合物では、より一般に用いられるGシリーズの配合物におけるよりも、化合物1の%回収の低下がより小さい。
【0138】
[00112] 化合物1に対する1:1モル比の過酸化水素の添加によってもこれらの配合物の安定性に負荷をかける。過酸化水素による分解を受けやすい配合物は、時間経過の際に安定性がより低い。例えば、Gシリーズの配合物は40℃において3ヶ月間の後に59%の化合物1の回収率および過酸化物負荷の後に35%の化合物1の回収率を有しており、一方でこの実験において陽性対照として用いられたより安定な配合物は40℃において3ヶ月間の後に87%の回収率および過酸化物による負荷の後に85%の回収率を示した(注釈:この実験に関する陽性対照は化学的に安定であるがインビトロの試験では効果が無かった)。0%水添加の配合物では化合物1の回収率は1%しか低下せず、6%水添加の配合物では%回収が10%低下する。
【0139】
[00113] 両方の配合物は、Gシリーズの配合物において観察される化合物1の回収率の44%の低下よりも著しく低い分解を示す。
[00114] 過酸化物負荷実験および2ヶ月間の時間経過の結果に基づいて、歯磨剤中の水のレベルを低減させることはその有効物質の安定性を増進すると結論付けることができる。その0%および(amd)6%水添加の配合物は、A.ビスコーサス(A. viscosus)の増殖の阻害を測定するアッセイにおいて試験され、それらの抗細菌効能を保持することが示されている。その0%水添加の配合物は、PGE2の誘導を測定する抗炎症アッセイにおいても試験され、トリクロサンを有する陽性対照であるTotal(登録商標)練り歯磨きと同じくらい有効であることが示されており、PGE2の値は200pg/ml未満であり、それに対してプラセボ対照に関しては1200pg/mlより大きく、G配合物に関しては約400pg/mlである。
【0140】
実施例2−高pH配合物
[00115] 有効成分3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボラン(化合物1)を含む歯磨配合物のシリカ基剤中での安定性を、異なる水のレベルにおいて評価する。化合物1の歯磨剤中での安定性は、その配合物のpHに依存していることが分かっている。具体的には、その歯磨剤のpHが7から9に増大した場合、その配合物の抗細菌または抗炎症効能へのマイナスの影響無しに、安定性のかなりの増大が観察される。
【0141】
[00116] 第1の配合基剤はGシリーズと呼ばれ、第2の配合基剤は低含水配合物と呼ばれ、それらは前記の実施例のGシリーズおよび6%水添加の配合物に対応する。その2種類の配合物の間の主な違いは、添加された水のレベルである。Gシリーズは約32%の添加された水を有し、一方で低含水配合物は6%の添加された水を有する。両方の配合物において、化合物1のレベルは0.75%である。前の実施例の配合物中の水酸化ナトリウムのグリセリンに対する比率を調節することによりpHを変化させ、pH7、8.5および9の歯磨剤を得る。
【0142】
[00117] 40℃において加速された時間経過の際の化合物1の安定性の結果を表2に示す。Gシリーズに関して、3ヶ月間の加速された時間経過の後の化合物1の回収の百分率は、pH7の配合物と比較した場合に、pH8.5およびpH9の配合物において30%近く大きい。同じ傾向は低含水配合物においても観察される。これらの結果は、歯磨剤のpHを増大することの結果としての化合物1の安定性の著しい向上を示している。pHは主要な駆動体(driver)であるが、水のレベルの低減も配合物中における化合物1の安定性にプラスの影響を有するようである。
【0143】
[00118] 制御された室温および40OCにおける2ヶ月間の時間経過の後、0%および6%水添加の配合物では、Gシリーズの配合物におけるよりも化合物1の%回収の低下がより小さい:
表3:40℃において加速された時間経過の後の化合物1の%回収
【0144】
【表3】

【0145】
[00119] pHの化合物1の安定性への作用をさらに調べるため、5.7から9までの範囲のpHの値を有する一連のペーストを調製する。配合物の安定性の傾向をpHの関数として迅速に評価するため、そのペーストを60℃で2週間時間経過させる。Gシリーズにおいて、回収された化合物1の百分率は、pHがpH9からpH7.5へと低下するにつれて減少するが、pH7からpH5.7と低下するにつれて増大する。低含水基剤において、回収された化合物1の百分率は、pH9からpH5.7まで減少する。酸性pHにおける安定性はその2種類の配合基剤において異なっているが、両方の配合物においてpH9が結果として最も大きい化合物1の回収の百分率をもたらす。加えて、化合物1の異性体の比率はpHに強く依存することが観察された。pH9において、化合物1はその非極性の形でのみ存在し、その極性の回転異性体の量はその歯磨剤のpHが低下するにつれて増大する。液体歯磨剤において類似の傾向が観察される。
【0146】
[00120] 図1は、60℃において2週間後の化合物1の回収の百分率を、(a)Gシリーズの基剤および(b)低含水基剤における配合pHの関数として示す。
[00121] 歯磨剤は多くの構成要素を含むため、化合物1の安定性とpHの間の関係が歯磨剤の成分に依存するのか、または単に化合物1のpH自体に対する応答かを理解するのは重要である。従って、pHの化合物1への作用の試験を、50/50 アセトニトリル/水の単純な溶液において実施する。その結果を図2に示す。この研究において、9から6までのpHを有する一連の試料を調製し、70℃で1日時間経過させた。pH9における溶液は化合物1の回収の最も高い百分率を有していた。pH9では非極性の異性体のみが存在し、pHが低下するにつれて非極性の回転異性体の極性の回転異性体に対する比率が低下することも観察され、同じ傾向が歯磨剤中で観察された。これらの結果は、化合物1の非極性の回転異性体は本質的により分解を受けづらく、非極性の異性体の極性の異性体に対する比率はpHにより直接影響を受けることを示している。これらの結果は、pH9および8.5の配合物において観察された、pH7と比較した化合物1の%回収の増大を説明する助けとなる。2種類の配合基剤におけるより低いpHでの化合物1の安定性の間の違いは、おそらく配合物の成分のその極性回転異性体を部分的に安定化する能力を反映している。
【0147】
[00122] 図2は、70℃において1日後の50/50 アセトニトリル/水の溶液中の化合物1の回収の百分率を、pHの関数として示す。
[00123] 化合物1の抗炎症作用は、歯磨剤のpHの上昇により影響を受けなかったようである。pH7および9のGシリーズおよび低含水配合物は両方とも、抗炎症マーカーPGE2の抑制において十分に作用した。化合物1の抗細菌作用は、A.ビスコーサスの増殖抑制により測定した場合に、pH7のペーストおよび市販の高品質練り歯磨きの抗細菌作用と比較可能である。
【0148】
[00124] 化合物1のヒドロキシアパタイト(HAP)円盤上への取り込みは、pHの上昇により著しく増大する。pH9における化合物1の放出はわずか29%であるが、G−pH7およびG−pH9配合物により放出される化合物1の量は同等である。
【0149】
実施例3−口腔細菌の抑制における化合物1の有効性
[00125] 化合物1に関する一般的な口腔細菌に対する最小阻止濃度は以下の通りであることが分かっている。エタノールをビヒクルとして用いている。
【0150】
表4
【0151】
【表4】

【0152】
実施例4−化合物1の可溶化
a.エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー中での可溶化
[00126] 化合物Aの乏しい溶解度は、いくらかの配合の困難をもたらす。その水中での溶解度は100ppm未満であり、その香味油(しばしば有効物質を可溶化するのに用いられる)中での溶解度は0.5%未満である。我々は、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマーは化合物1を可溶化することができることを発見した。Fluraflo L4370 (BASF)は1%の化合物1(%wlw)を可溶化することができる。その有効物質を完全に可溶化するためには、低い加熱の上でその溶液を攪拌する必要がある。得られた溶液は、Fluraflo L4370自体の性質を反映して濁っている。Fluraflo L4370中における1%化合物1の溶液を水中1.5%SLSで1:1希釈すると透明な溶液が生成し、これは水中0.5% AN0128、0.75%SLS、50% Fluraflo L4370からなる。Fluracare L1220を用いても類似の結果が得られる。
【0153】
[00127] 次いで、その水中0.5% AN0128、0.75%SLS、50% Fluraflo L4370の溶液をバイオフィルム破壊アッセイで試験する。陰性対照に対して得られたパーセント減少は65%であり、これは化合物1がFluraflo L4370中で可溶化された際にその抗細菌活性を保持していることを示している。
【0154】
b.トリブロックコポリマーを用いる可溶化
[00128] 我々は、トリブロックコポリマー界面活性剤F127は化合物1の可溶化をさらに増進することができることも発見した。時間が経過すると沈殿および結晶化することにより明示されるように、実験的液体歯磨配合物(表3)中では化合物1は時間が経過しても完全には溶けない。5%のF127の添加の後、実験的液体歯磨配合物(表4)は透明なままである。従って、トリブロックコポリマー界面活性剤F127は化合物1をさらに可溶化することができ、配合物中での使用に適している。
【0155】
表5−トリブロックコポリマー無しの実験的配合物
【0156】
【表5】

【0157】
表6−トリブロックコポリマーを有する実験的配合物
【0158】
【表6】

【0159】
c.PEGを用いた可溶化
[00129] 我々はさらに、低分子量ポリエチレングリコール300(PEG300)(Dow Chemical Company)は10%の化合物1(%w/w)を可溶化することを発見した。その有効物質を完全に可溶化するためには、低い加熱の上でその溶液を攪拌する必要がある。得られた溶液は透明であり、化合物1の色によりわずかに黄色の色合いを有している。我々は、PEG600が化合物1を可溶化することができることも発見した。従って、我々は、エチレングリコールのオリゴマーおよび/またはポリマーを含む溶媒は化合物1を可溶化することができ、配合に適している(suitablc)と結論付ける。
【0160】
[00130] PEG300中における2%化合物1の溶液を水中2%SLSで1:1希釈して、水中1%化合物1、1%SLS、50%PEG300からなる溶液を生成し、次いでそれをバイオフィルム破壊アッセイで試験する。陰性対照に対して得られたパーセント減少は76%であり、これは化合物1がPEG300中で可溶化された際にその抗細菌活性を保持していることを示している。
【0161】
[00131] 他の賦形剤と組み合わせた化合物1の特性を、PEG300中の化合物1の溶液を他の溶媒、例えばプロピレングリコールおよびグリセリン中に様々な比率で希釈することによりさらに評価する。19%PEG300および80%プロピレングリコール中に1%化合物1を含む溶液は透明である。次いでこの溶液を水中1%SLSで1:1希釈して、水中0.5%化合物1、0.5%SLS、9.5%PEG300および40%プロピレングリコールからなる溶液を生成し、次いでそれをバイオフィルム破壊アッセイで試験する。陰性対照に対して得られたパーセント減少は80%である。これらの結果は、化合物1が混合溶媒溶液中でその抗細菌活性を保持していることを示している。PEGおよびグリセリンでも類似の結果が得られる。
【0162】
実施例5−緩衝された配合物
[00132] 化合物1の2種類のpH7.2の配合物を、1つはリン酸緩衝剤有りで、1つは無しで調製し、化合物1の分解を14日間にわたって測定する。両方の配合物において測定可能な分解が見られたが、緩衝された配合物における化合物1の分解の程度の勾配は、緩衝されていない配合物の分解の程度の勾配と比較して3.3倍減少している。
【0163】
実施例6−Gantrezの作用
[00133] 化合物1の液体配合物中へのGantrezの添加は、バイオフィルムアッセイにおいて化合物の活性を向上させることが示されている。組成物を以下のように調製する:
表7
【0164】
【表7】

【0165】
[00134] 我々は、我々が多くの他のバイオフィルム形成細菌と比較して比較的化合物1に耐性であることを見出した生物であるA.ビスコーサスによるバイオフィルム形成に対するこれらの歯磨剤の活性を測定する。G7は非常に優れた有効性を有しており、このアッセイにおいてトリクロサンを有する市販のTotal(登録商標)練り歯磨きと同じ程度までバイオフィルムを抑制し、一方でG5はその対照よりごくわずかに優れている。従って、Gantrez(メチルビニルエーテル−マレイン酸コポリマーまたはPVM/MAコポリマー)はA.ビスコーサスによるバイオフィルム形成に対する化合物Aの活性を著しく増大させる。
【0166】
実施例7−歯磨剤の最適化
表8は、化合物1を含む3種類のシリカに基づく練り歯磨き配合物を示しており、構成要素の量は%w/wとして与えられており、水で調節してグリセリンレベルの違いを埋め合わせる:
【0167】
【表8−1】

【0168】
【表8−2】

【0169】
[00135] これらの配合物を、24時間かけてA.ビスコーサスの増殖の阻害に関して測定し、増殖を610nmにおける光学密度として測定する。水または化合物1無しの配合物Gに関する24時間後の値は、化合物1を有する配合物Gに関して0.2未満であるのと比較して、1.4より大きかった。これはこの生物に対する非常に優れた有効性を示しており、陽性対照であるトリクロサンを有する市販のTotal(登録商標)練り歯磨きと同じくらい優れている、またはそれよりも優れている。同様に、多数の種でのバイオフィルムアッセイにおいて、配合物Gに関する、およびTotal(登録商標)に関するCFUの平均は、1.1×10(SD 1.5×10)と比較して2未満(SD 0)であり、これは化合物1を含む練り歯磨きがバイオフィルムの形成を抑制することができることを示している。
【0170】
実施例8−キレート剤の使用
[00136] シリカに基づく歯磨剤は、その配合の最終工程において0.25〜1%の化合物1を添加すると色を白色から黄色に急速に変化させることが観察されている。この色の変化は、抗酸化剤、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ビタミンEまたはビタミンCが存在していてもいなくても観察される。しかし、少量の金属キレート剤の添加は、その歯磨剤をその本来の白色に戻す。この目的のために有効なキレート剤には、0.5%ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、およびピロリン酸四カリウム、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール四酢酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびクエン酸が含まれる。
【0171】
実施例9−抗酸化剤の使用
[00137] ボリン酸エステルは、分子の酸素または空気中の酸素の作用によりエステル類、例えばPEGから形成され得る過酸化物により酸化され得る。これらの高度に酸化的な種は炭素−ホウ素結合を攻撃することができ、それは切断および対応するボロン酸誘導体およびフェノール誘導体(dcrivativcs)の形成をもたらす。そしてその酸化生成物は不活性である。酸素捕捉剤および/または抗酸化剤、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α−トコフェロール)または2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノール(ブチルヒドロキシトルエンまたはBHT)はその酸素を排除し、その配合物中に既に存在する過酸化物を低減する。抗酸化剤の量は、所与の配合物中で用いられるボリン酸エステルの量を上回る必要は無い。
【0172】
[00138] 化合物1の3種類の配合物の安定性を比較し、その配合物は、1つはあらゆる抗酸化剤を含まず、1つはα−トコフェロールを含み、3番目はナトリウムアスコルビルホスフェートを含む以外は同じである。式Iの分解はナトリウムアスコルビルホスフェートを含む配合物において著しく低減し、α−トコフェロールを含む配合物においてさらに少ない。これは、抗酸化剤の使用は配合物中での化合物1の安定性を増進することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8のpHを有する、または少なくとも7のpHを提供するように緩衝されている、遊離または医薬的に許容できる塩の形の式A:
【化1】

の化合物を口に、または局所的に許容できるキャリヤーとの組み合わせまたは会合で含む局所用組成物であって、R1およびR2が同じまたは異なっており、アラルキル、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環から選択され;R3がヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリールアルキルカルボニルである、前記組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ここで式Aの化合物は遊離または医薬的に許容できる塩の形の式(I)の化合物であり:
【化2】

ここで
R*およびR**は独立して置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロ環であり;
zは0または1であり、ただし、zが1であるならば、AはCR10またはNであり、DはNまたはCR12であり、さらに、ただし、zがOであるならば、DはO、SまたはNR12aであり;
Eは水素、ヒドロキシ、アルコキシ、(シクロアルキル)オキシ、(シクロヘテロアルキル)オキシ、カルボキシ、またはアルキルオキシカルボニルであり;
mは0または1であり;
R12は水素、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アミド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、またはジアラルキルアミノであり;
R12aは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロ環であり;そして
R9およびR10は独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、カルボニル、ヒドロキシイミノ、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールチオ、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、アミノ、アルコキシ、ニトロ、スルホ、またはヒドロキシである、前記組成物。
【請求項3】
3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニルオキシ-ビス(3-クロロ-4-メチルフェニル)-ボランを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに緩衝剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに遊離または医薬的に許容できる塩の形のアルギニンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
さらに抗酸化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
さらに可溶化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
さらにキレーターを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも8のpHを有し、抗細菌に有効な量の式(A)の化合物;式(A)の化合物の酸化を抑制するのに有効な量の抗酸化剤;可溶化剤;および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
式(A)の化合物が0.05重量%〜20重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
その抗酸化剤がアスコルビン酸、ナトリウムアスコルビルホスフェート、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アルファトコフェロール、クエン酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
その可溶化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
8.5〜10のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
口に許容できるキャリヤーを含み、その口に許容できるキャリヤーが水および湿潤剤を含む、歯磨剤の形の請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
式Aの化合物が水溶液中にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
その緩衝剤がホスフェート緩衝剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項17】
さらにフッ化物イオンの源および研磨剤を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
式Aの化合物を口に、または局所的に許容できるキャリヤーと混合し、そのpHを少なくとも7のレベルで調節または維持することを含む、請求項1に記載の局所用組成物を調製するための方法。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物をそれを必要とする患者の口腔に適用することを含む、口の微生物感染症を低減、抑制、または処置するための方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物をそれを必要とする対象の歯および歯肉に適用することを含む、齲食の形成を低減または抑制するため、歯肉炎を処置、低減または抑制するため、口腔細菌のレベルを低減するため、口腔中での微生物のバイオフィルムの形成を抑制するため、プラークの蓄積を低減するため、および/または歯および口腔を清潔にするための方法。
【請求項21】
請求項1に記載の局所用組成物であって、皮膚または爪への適用に適しており、少なくとも8のpHを有し、または少なくともpH7に緩衝されており、抗細菌的に有効な量の式(A)の化合物;式(A)の化合物の酸化を抑制するのに有効な量の抗酸化剤;可溶化剤;および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、前記組成物。
【請求項22】
式(A)の化合物が0.05重量%〜20重量%の量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
その抗酸化剤がアスコルビン酸、ナトリウムアスコルビルホスフェート、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アルファトコフェロール、クエン酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
その可溶化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項に記載の組成物。
【請求項25】
8.5〜10のpHを有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
局所用クリーム、ゲル、スプレーまたは軟膏の形である、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
抗微生物石鹸、シャンプー、またはハンドウォッシュ(hand wash)の形である、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
式Aの化合物を医薬的に許容できるキャリヤーと混合し、そのpHを少なくとも7のレベルで調節または維持することを含む、請求項21に記載の局所用組成物を調製するための方法。
【請求項29】
請求項21に記載の組成物をそれを必要とする患者の皮膚に適用することを含む、局所的微生物感染症を低減、抑制、または処置するための方法。
【請求項30】
その処置される病気がアクネ、表在性皮膚感染症、小さな切り傷、病原体のコロニー形成、および炎症性の皮膚の病気から選択される、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528879(P2012−528879A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514120(P2012−514120)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037223
【国際公開番号】WO2010/141694
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】