説明

ボルトの作用力測定用装置

【課題】ボルト作用力を測定するためにボルトに穿設されたボルト孔内の所要の位置に配置するひずみゲージを、該所要の位置まで、容易且つ安定した姿勢でボルト孔内に挿入することができるボルトの作用力測定用装置を提供する。
【解決手段】ボルトの作用力測定用装置1は、直線状に延在するように形成されたロッド部材2と、ロッド部材2の側面に固着されたひずみゲージ3と、ひずみゲージ3から導出された測定用リード線3cと、ロッド部材2の側面に所定の単位長間隔で付設された目盛り4とを備え、ボルトAの孔A3内の所定の位置にひずみゲージ3が配置されるようにロッド部材2の一端側の部分が孔A3に挿入されると共に、孔A3内に充填される接着剤5によってひずみゲージ3とロッド部材2とがボルトAに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に締結されたボルトに作用する力をひずみゲージを用いて測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や機械等の種々様々の装置において、物体の締結に使用するボルトの損傷や緩みが発生することのないようにするために、締結されたボルトに作用する力(以下、ボルト作用力ということがある)を管理することがしばしば要求される。そして、このような場合には、装置の設計にあたって、実際のボルト作用力を測定することが必要となる。
【0003】
この場合、ボルトの表面にひずみゲージを貼り付けることができる場合には、該表面に貼り付けたひずみゲージを介してボルト作用力の測定を行なうことが可能であるものの、ボルトの種類や、物体に対するボルトの締結構造によって、ボルトの表面にひずみゲージを貼り付けることができない場合も多い。
【0004】
このような場合には、例えば特許文献1に見られるように、ボルトの頭部の頂面からボルトの軸部まであらかじめ穿設した小径の孔(以下、ボルト孔ということがある)に、ひずみゲージを挿入すると共に、このボルト孔に充填した接着剤によってひずみゲージをボルトに固定するようにした構造の装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−347349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に見られる如き従来の装置では、ひずみゲージをボルト孔に挿入する作業は、ひずみゲージから導出された細いリード線に接続されたケーブルを把持して行なわれることとなる。この場合、ひずみゲージから導出されているリード線は、ひずみゲージとボルト孔の内周面との接触等によって折れ曲がりやすい。
【0007】
このため、特許文献1に見られる如き従来の装置では、ひずみゲージをボルト孔に挿入する際に、ケーブルとひずみゲージとの間の間隔を一定に保つことが難しく、ひいては、ひずみゲージを、ボルト作用力を測定する上で適切な所要の位置まで挿入することが困難なものとなっていた。
【0008】
また、ひずみゲージをボルト孔に進入させやすくするために、例えばボルト孔を大きめの内径で形成した場合には、ひずみゲージがボルトの軸心方向に対して傾きやすくなる。ひいては、測定しようとするボルト作用力を精度よく測定することが困難となるという不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ボルト作用力を測定するためにボルトに穿設されたボルト孔内の所要の位置に配置するひずみゲージを、該所要の位置まで、容易且つ安定した姿勢でボルト孔内に挿入することができ、ひいては、ボルト作用力の精度のよい測定を可能とするボルトの作用力測定用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボルトの作用力測定用装置は、かかる目的を達成するために、物体に締結されるボルトに作用する力であるボルト作用力を測定するために該ボルトに組み付けられる装置であって、直線状に延在するように形成されており、前記ボルト作用力を測定するために、前記ボルトの頭部の頂面から該ボルトの軸部まで該ボルトの軸心方向にあらかじめ穿設された孔であるボルト孔に一端側の部分が挿入されるロッド部材と、該ロッド部材の前記ボルト孔に挿入される部分の側面に固着されたひずみゲージと、該ひずみゲージから導出された測定用リード線と、前記ロッド部材の長手方向での該ロッド部材に対する前記ひずみゲージの位置を把握し得るように該ロッド部材の側面に、該ロッド部材の長手方向に所定の単位長間隔で付設された目盛りとを備え、前記ボルトの軸心方向での所定の位置で前記ひずみゲージがボルト孔内に配置されるように前記ロッド部材の一端側の部分が該ボルト孔に挿入されると共に、該ボルト孔内に充填される接着剤によって該ひずみゲージとロッド部材とが前記ボルトに固定されることを特徴とする。
【0011】
かかる本発明によれば、前記ひずみゲージが側面に固着された前記ロッド部材は剛性を有するので、折れ曲がり難い。このため、ロッド部材の他端側の部分を把持して、該ロッド部材をボルト孔に挿入することで、ロッド部材に対するひずみゲージの位置及び姿勢を一定に保ったまま、容易に該ひずみゲージをボルト孔に挿入することができる。
【0012】
さらに、ロッド部材は、ボルト孔内で延在することとなるので、該ロッド部材の長手方向が、ボルトの軸心方向に対して傾くのが抑制される。ひいては、ボルトの軸心方向に対して、ひずみゲージが傾くのも防止される。
【0013】
また、ロッド部材の側面には目盛りが付設されているため、ロッド部材に対するひずみゲージの位置を該目盛りに基づいて把握することができる。このため、ロッド部材の一端側の部分をひずみゲージと共にボルト孔内に挿入する際に、ひずみゲージがボルト孔内に入り込んだ状態であっても、前記目盛りに基づいて、ボルトに対するひずみゲージの位置関係を容易に把握することができる。ひいては、ひずみゲージをボルト孔内の所定の位置に精度よく配置させることができ、その状態で、前記接着剤によって、ひずみゲージをロッド部材と共にボルトに固定することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、ひずみゲージを、ボルト孔内の所要の位置まで、容易且つ安定した姿勢でボルト孔内に挿入することができる。そして、ひずみゲージをボルト孔内の所要の位置に適切な姿勢で配置できることから、測定しようとするボルト作用力に対するひずみゲージの検出信号の信頼性を確保することができ、ひいては、該ひずみゲージの検出信号に基づいて、ボルト作用力の精度のよい測定を行なうことが可能となる。
【0015】
かかる本発明では、前記ロッド部材は、前記ボルト孔内に充填される接着剤と同じ材質により構成された部材であることが好ましい。
【0016】
これによれば、ボルト孔内に充填される接着剤と、前記ロッド部材とを均一的に一体化することができる。このため、物体に締結したボルトに作用するボルト作用力を、ボルト孔内のひずみゲージに適切に伝達することができる。ひいては、ひずみゲージの検出信号に基づくボルト作用力の測定の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、上記本発明では、ひずみゲージをボルト孔内の所定の位置に配置するために、次のような組み付け形態を採用することができる。
【0018】
その1つの組み付け形態では、前記ひずみゲージは、前記ロッド部材の一端寄りの位置で該ロッド部材に固着されており、前記ロッド部材の一端側の部分は、前記目盛りによって示される前記ひずみゲージと前記ボルト孔の開口端との間の間隔が、あらかじめ定められた所定の間隔となるように該ボルト孔に挿入される。
【0019】
この場合、ロッド部材の一端側の部分をボルト孔に挿入するときに、前記目盛りによって前記ひずみゲージとボルト孔の開口端との間の間隔を確実に把握できるので、ひずみゲージとボルト孔の開口端との間の間隔が、所定の間隔に精度よく合致するように該ボルト孔にロッド部材を挿入することを行うことができる。これにより、種々様々なサイズ、種類のボルトに対して、ひずみゲージをボルト孔内の所定の位置に精度よく配置することができる。
【0020】
あるいは、他の組み付け形態では、前記ロッド部材は、前記ボルト孔に挿入される前に、その一端部が、該ロッド部材を横断方向に切断することより切り離されると共に、その切断後の該ロッド部材の一端を前記ボルト孔の底面に当接させるように該ボルト孔に挿入され、前記ロッド部材の切断は、前記目盛りによって示される当該切断後のロッド部材の一端と前記ひずみゲージとの間の間隔が、あらかじめ定められた所定の間隔となるように行なわれる。
【0021】
この場合、切断後のロッド部材の一端と前記ひずみゲージとの間の間隔が、あらかじめ定められた所定の間隔となるような、該ロッド部材の切断位置を前記目盛りに基づいて精度よく決定できる。このため、ロッド部材の切断後に、該ロッド部材の一端をボルト孔の底面に当接させるように該ボルト孔に挿入することによって、ボルト孔内で、ボルト孔の底面とひずみゲージとの間隔が前記所定の間隔となる位置に、ひずみゲージを精度よく配置することができる。これにより、種々様々なサイズ、種類のボルトに対して、ひずみゲージをボルト孔内の所定の位置に精度よく配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態におけるボルトの作用力測定用装置の構造を示す図。
【図2】図1の作用力測定用装値を第1の組み付け形態でボルトに組み付けた状態を示す図。
【図3】図1の作用力測定用装値を第2の組み付け形態でボルトに組み付けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図1〜図3を参照して以下に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のボルトの作用力測定用装置1は、ロッド部材2とひずみゲージ3とを主要な構成要素として備えており、これらのロッド部材2及びひずみゲージ3が、ボルト作用力を測定しようとするボルトAに組み付けられる。
【0025】
ボルト作用力を測定しようとするボルトAには、ロッド部材2及びひずみゲージ3を組み付けるために、あらかじめ該ボルトAの頭部A1の頂面(上端面)から、外周面にねじが形成されている軸部A2まで該ボルトAと同軸心に孔A3(以下、ボルト孔A3という)が穿設されている。ボルト孔A3の内径は、例えば2mm程度である。
【0026】
ロッド部材2は、直線状に(一定方向に)延在するように形成された棒状又は中空のパイプ状の部材であり、その全長は、ボルト孔A3の深さよりも長いものとされている。また、ロッド部材2の外径は、ボルト孔A3の内径よりも小さいものとされている。その外径は、例えば1.6mm程度である。
【0027】
従って、ロッド部材2は、その一端側の部分(図1では下端側の部分)をボルト孔A3の内部に収容し、且つ、他端側の部分(図1では上端側の部分)をボルト孔A3から外部に突出させるようにして、ボルト孔A3に挿入することが可能となっている。
【0028】
このロッド部材2は、ボルト孔A3内に充填される後述の接着剤5と同じ材質により構成され、剛性を有するものとされている。その材質は、例えばエポキシ、ポリイミド、アクリル、フェノール等である。
【0029】
また、ロッド部材2の側面には、ロッド部材2の長手方向に所定の単位長間隔(例えば1mm間隔)で並ぶようにして複数の線分状の目盛り4が付設されている。
【0030】
ひずみゲージ3は、その基体としてのゲージベース3aに、抵抗体からなる受感部3bを形成したものであり、そのゲージベース3aが、ロッド部材2の一端寄り(図1では下端寄り)の箇所で該ロッド部材2の側面に接着剤(図示せず)により接着されている。これにより、ひずみゲージ3が、ロッド部材2の側面に固着されている。
【0031】
図示例の作用力測定用装置1では、ロッド部材2は円柱状に形成されている。このため、ひずみゲージ3のゲージベース3aは、円筒状に丸められた形態でロッド部材2の外周面に固着されている。
【0032】
ただし、ロッド部材2を、角柱状もしくは平板状に形成したり、あるいは、ロッド部材2の側面の一部を平坦面状に形成しておき、該ロッド部材2の側面の平坦面部に平板状のゲージベースを有するひずみゲージを固着するようにしてもよい。
【0033】
なお、本実施形態の例では、測定しようとするボルト作用力は、例えばボルトAの軸心方向に作用する作用力である。このため、ひずみゲージ3の受感部3bは、ロッド部材2の長手方向の作用力によるひずみを検知する(換言すれば、ロッド部材2の長手方向の作用力に対して感度を有する)ように形成されている。
【0034】
ひずみゲージ3は、ロッド部材2の長手方向での位置を、ロッド部材2に付設された目盛り4に基づいて、特定(把握)し得るようにしてロッド部材2に固着されている。
【0035】
具体的には、ひずみゲージ3の代表位置、例えば、図1に一点鎖線Cで示すひずみゲージ3の受感部3bの中央位置C(あるいは、ひずみゲージ3の受感部3bの一端の位置等)が、目盛り4のいずれか1つの線分の位置、あるいは、目盛り4のいずれか1つの線分との間の間隔(ロッド部材2の長手方向での間隔)があらかじめ定められた所定間隔となる位置に合致するようにして、ひずみゲージ3のゲージベース3aがロッド部材2に固着されている。
【0036】
これにより、個々の目盛り4(目盛り4の個々の線分)と、ひずみゲージ3の受感部3bとの間の、ロッド部材2の長手方向での間隔(換言すれば、ロッド部材2の長手方向での個々の目盛り4に対するひずみゲージ3の受感部3bの相対位置)を、目盛り4によって特定(把握)することが可能となっている。例えば、図示例の作用力測定用装置1では、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cが、目盛り4xから下側に10目盛り分の間隔(1目盛り分の単位長の10倍の間隔)を有する位置であることを把握することが可能となっている。
【0037】
また、ひずみゲージ3の受感部3bには、あらかじめ測定用リード線3cが結線されており、この測定用リード線3cがひずみゲージ3から導出されている。この測定用リード線3cは、ひずみゲージ3の検出信号(ひずみに応じた検出信号)を処理するための図示しない測定器(電子回路ユニット)に該ひずみゲージ3を接続するためのものである。該測定器は、公知のものであり、ひずみゲージ3の検出信号を、作用力の検出信号に変換する回路(例えばひずみゲージ3を含むホイートストンブリッジ回路を構成するための抵抗回路)や、その回路の出力信号を処理する演算処理回路等により構成される。
【0038】
なお、ひずみゲージ3から導出される測定用リード線3cの本数は、図示例では2本となっているが、その本数は、ひずみゲージ3の検出信号を作用力の検出信号に変換する回路の構成形態や、受感部3bの個数等に応じて規定される。
【0039】
以上のように構成された作用力測定用装置1のロッド部材2及びひずみゲージ3は、以下に説明する如く、ボルトAに組み付けられ、これにより、ボルトAのボルト作用力の測定を行なうことが可能となる。その組み付け形態は、図2を参照して説明する第1の組み付け形態と、図3を参照して説明する第2の組み付け形態との2種類の組み付け形態に大別される。
【0040】
まず、図2を参照して、ボルトAに対するロッド部材2及びひずみゲージ3の第1の組み付け形態は、ロッド部材2の一端をボルト孔A3の底面に当接させると共に、ひずみゲージ3が、ボルトAの軸心方向でボルト孔A3の底面から所定の間隔を存する位置でボルト孔A3内に配置されるように、ロッド部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付ける形態である。
【0041】
さらに詳細には、この第1の組み付け形態では、図2に示す如く、ボルト孔A3内におけるひずみゲージ3の目標とする配置位置は、例えば該ひずみゲージ3の代表位置としての受感部3bの中央位置Cが、ボルト孔A3の底面から、ボルトAの軸心方向で所定の間隔D1を存する位置とされている。その位置は、ボルトAにおけるボルト作用力を適切に測定し得る位置として、ボルトAのサイズや種類等に応じてあらかじめ定められた位置である。
【0042】
ここで、本実施形態の作用力測定用装置1は、特定のサイズ又は種類のボルトAに対する専用的なものではなく、種々様々なサイズ、種類のボルトAにおけるボルト作用力の測定に使用することが可能な汎用的なのとされている。このため、図1に示した作用力測定用装置1のロッド部材2の一端(図1では下端)からひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cまでの間隔Daは、ボルト作用力を測定しようとするボルトAに対して専用的な間隔に設定されているわけではない。このため、上記間隔Daは、図2に示す如く、一般には前記所定の間隔D1と一致せず、該所定の間隔D1よりも長い場合もある。
【0043】
補足すると、Da<D1である場合には、第1の組み付け形態は採用できず、後述の第2の組み付け形態が採用される。
【0044】
上記のように、Da>D1である場合には、ボルト部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付ける前に、ロッド部材2の一端からひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cまでの間隔を所定の間隔D1に一致させるように、ロッド部材2の切断加工(ロッド部材2の一端とひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cとの間の間隔を調整するために、ロッド部材2を切断する加工)が行なわれる。
【0045】
この切断加工では、ロッド部材2は、その一端寄りの位置(一端とひずみゲージ3との間の位置)で該ロッド部材2の横断方向(ロッド部材2の長手方向に対してほぼ直交する方向)に切断され、その切断位置から該ロッド部材2の一端までの部分(図2に二点鎖線2aで示す部分)がロッド部材2から切り離される。その切断作業は、カッターや鋏等の適宜の工具を使用して行なわれる。
【0046】
この切断加工におけるロッド部材2の切断位置は、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cから、ロッド部材2の一端側に上記所定の間隔D1を有する位置、あるいは、切断前の当初のロッド部材2の一端から、ひずみゲージ3側に(Da−D1)の間隔を有する位置として、目盛り4に基づいて決定される。
【0047】
これにより、ロッド部材2は、切断後のロッド部材2の一端とひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cとの間の間隔が、上記所定の間隔D1に一致するように切断される。
【0048】
第1の組み付け形態では、図1に示した当初の作用力測定用装置1のロッド部材2の一端とひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cと間の間隔Daが、Da>D1となる場合には、上記のようにロッド部材2の切断加工が行なわれる。そして、この切断加工後に、前記測定用リード線3cをひずみゲージ3からロッド部材2の他端側に向って延在させるようにして該ロッド部材2に沿わせるようにしつつ、ロッド部材2の他端側の部分(図2の二点鎖線2bで示す部分)が把持され、この状態で、ロッド部材2の一端側の部分が、これに固着されているひずみゲージ3と共に、ボルトAのボルト孔A3に挿入される。
【0049】
なお、ロッド部材2の一端部を切断する前の当初のロッド部材2の一端とひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cとの間の間隔Daが、前記所定の間隔D1に一致(もしくはほぼ一致)している場合には、ロッド部材2の一端部の切断加工は省略される。そして、この場合には、図1に示した当初のロッド部材2の一端側の部分が、ひずみゲージ3と共に、ボルトAのボルト孔A3に挿入される。
【0050】
第1の組み付け形態では、ロッド部材2及びひずみゲージ3のボルト孔A3への挿入は、ロッド部材2の長手方向が、ボルトAの軸心方向とほぼ同方向に保たれるようにしつつ、該ロッド部材2の一端がボルト孔A3の底面に当接するまで行なわれる。これにより、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cがボルト孔A3の底面から前記所定の間隔D1を存する位置になるようにひずみゲージ3がボルト孔3内に配置される。また、ロッド部材2の他端側の部分(図2の二点鎖線2bで示す部分)は、それに沿わせられた測定用リード線3cと共に、ボルト孔A3の外部に突出する。
【0051】
この場合、ロッド部材2は剛性を有するので、ボルト孔A3への挿入時に該ロッド部材2やひずみゲージ3がボルト孔A3の内周面に接触したりしても、ロッド部材2が屈曲変形してしまうようなことはなく、ほぼ直線状の形状に保たれる。そして、ひずみゲージ3はこのロッド部材2に固着されている。このため、ひずみゲージ3をボルト孔A3内にロッド部材2と共に容易に挿入することができる。
【0052】
また、ロッド部材2に固着されているひずみゲージ3は、ロッド部材2に対して一定の位置及び姿勢に保たれるため、ボルト孔A3の底面へのロッド部材2の一端の当接によって、ひずみゲージ3をボルト孔3内の目標とする適切な位置(ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cがボルト孔A3の底面から前記所定の間隔D1を存する位置)に精度よく配置することができる。
【0053】
また、ロッド部材2は、ボルト孔A3の全長にわたって延在するのでロッド部材2の長手方向を精度よくボルトAの軸心方向に沿わせることができる。このため、ひずみゲージ3の向きが、ボルトAの軸心方向に対して傾くのが抑制され、該ひずみゲージ3の受感部3bの感度方向を、測定対象のボルト作用力(本実施形態の例では、ボルトAの軸心方向の作用力)を測定する上で、好適な方向に精度よく一致させることができる。
【0054】
上記のようにボルトAのボルト孔A3に挿入されたロッド部材2及びひずみゲージ3は、さらに、該ボルト孔A3に充填されて硬化される接着剤5によって、ボルトAに固定される。該接着剤5の材質は、前記したようにロッド部材2と同じ(例えばエポキシ、ポリイミド、アクリル、フェノール等)である。なお、硬化前の溶融状態の接着剤5のボルト孔A3への充填は、ロッド部材2及びひずみゲージ3をボルト孔A3に挿入する前に行なうようにしてもよい。
【0055】
この場合、ロッド部材2は、接着剤5と同じ材質によって構成されているので、ボルト孔A3に充填されて硬化した接着剤5と、ロッド部材2とは均一的に一体化する。このため、ボルトAを物体Wに締結した状態で該ボルトAに該物体W等から作用するボルト作用力をひずみゲージ3の受感部3bに適切に伝達させるようにすることができる。
【0056】
第1の組み付け形態では、以上のようにして、ロッド部材2及びひずみゲージ3がボルト作用力を測定しようとするボルトAに組み付けられることとなる。
【0057】
そして、本実施形態では、このようにロッド部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付けた後に、ロッド部材2の、ボルト孔A3から突出している部分が、ボルト孔A3の開口端に近接した位置で、該ロッド部材2の横断方向に切断される。この切断作業は、ロッド部材2の一端部の切断作業と同様に、カッターや鋏等の適宜の工具を使用して行なわれる。
【0058】
これにより、図2のロッド部材2の他端側の部分(図2の二点鎖線2bで示す部分)がボルト孔A3に挿入されている部分から切り離される。このようにロッド部材2の他端側の部分2bを切り離すのは、物体Wに対するボルトAの締結(ねじ締め)や、その締結の解除作業に際して、ロッド部材2が邪魔にならないようにするためである。
【0059】
次いで、上記のようにロッド部材2及びひずみゲージ3が組み付けられたボルトAが物体Wに締結される。そして、ひずみゲージ3から導出されている測定用リード線3cが図示しない測定器に接続され、該ひずみゲージ3の検出信号に基づいて、ボルト作用力が測定される。
【0060】
次に、図3を参照して、第2の組み付け形態を説明する。この第2の組み付け形態は、ひずみゲージ3が、ボルトAの軸心方向でボルト孔A3の開口端から(換言すればボルトAの頭部A1の頂面から)所定の間隔を存する位置でボルト孔A3内に配置されるように、ロッド部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付ける形態である。
【0061】
さらに詳細には、この第2の組み付け形態では、図3に示す如く、ひずみゲージ3の目標とする配置位置は、例えば該ひずみゲージ3の受感部3bの代表位置としての中央位置Cが、ボルト孔A3の開口端から、ボルトAの軸心方向で所定の間隔D2を存する位置とされている。その位置は、ボルトAにおけるボルト作用力を適切に測定し得る位置として、ボルトAのサイズや種類等に応じてあらかじめ定められた位置である。
【0062】
そして、第2の組み付け形態では、前記測定用リード線3cをひずみゲージ3からロッド部材2の他端側(図3では上端側)に向って延在させるようにして該ロッド部材2に沿わせるようにしつつ、ロッド部材2の他端側の部分(図3の二点鎖線2cで示す部分)が把持され、この状態で、ロッド部材2の一端側の部分(図3では下端側の部分)が、これに固着されているひずみゲージ3と共に、ボルトAのボルト孔A3に挿入される。
【0063】
この場合、第2の組み付け形態では、ロッド部材2及びひずみゲージ3のボルト孔A3への挿入は、ロッド部材2の長手方向が、ボルトAの軸心方向とほぼ同方向に保たれるようにしつつ、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cからロッド部材2の他端側に前記所定の間隔D2を有する位置として目盛り4に基づきあらかじめ特定されたロッド部材2上の位置が、ボルト孔A3の開口端の位置に一致するようになるまで行なわれる。そして、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cからロッド部材2の他端側に前記所定の間隔D2を有するロッド部材2上の位置が、ボルト孔A3の開口端の位置に一致する状態で、ロッド部材2が静止・保持される。
【0064】
これにより、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cがボルト孔A3の開口端から前記所定の間隔D2を存する位置になるようにひずみゲージ3がボルト孔3内に配置される。また、ロッド部材2の他端側の部分(図3の二点鎖線2cで示す部分)は、それに沿わせられた測定用リード線3cと共に、ボルト孔A3の外部に突出する。
【0065】
この場合、第1の組み付け形態の場合と同様に、ロッド部材2は剛性を有するので、ボルト孔A3への挿入時に該ロッド部材2やひずみゲージ3がボルト孔A3の内周面に接触したりしても、ロッド部材2が屈曲変形してしまうようなことはなく、ほぼ直線状の形状に保たれる。そして、ひずみゲージ3はこのロッド部材2に固着されている。このため、ひずみゲージ3をボルト孔A3内にロッド部材2と共に容易に挿入することができる。
【0066】
そして、ロッド部材2に固着されているひずみゲージ3は、ロッド部材2に対して一定の位置及び姿勢に保たれるため、ロッド部材2のボルト孔A3への挿入時におけるボルト孔A3の開口端とひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cとの間の間隔を、目盛り4によって精度よく把握することができる。ひいては、ひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cが、ボルト孔A3の開口端から前記所定の間隔D2を存する位置に精度よく一致するように、ひずみゲージ3をボルト孔3内に挿入・配置することができる。
【0067】
また、ロッド部材2の、ボルト孔A3内に配置される部分の長さは、ボルト孔A3の深さに近いものとなるので、ロッド部材2の長手方向を精度よくボルトAの軸心方向に沿わせることができる。このため、ひずみゲージ3の向きが、ボルトAの軸心方向に対して傾くのが抑制され、該ひずみゲージ3の受感部3bの感度方向を、測定対象のボルト作用力(本実施形態の例では、ボルトAの軸心方向の作用力)を測定する上で、好適な方向に精度よく一致させることができる。
【0068】
補足すると、図1に示すロッド部材2の一端(図1では下端)からひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cまでの間隔Daと、上記所定の間隔D2との総和の長さ(Da+D2)が、ボルト孔A3の深さよりも長いものとなる場合もある。
【0069】
このような場合に、第2の組み付け形態でボルト部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付ける場合には、その組み付け前に、ロッド部材2の一端からひずみゲージ3の受感部3bの中央位置Cまでの間隔と、所定の間隔D2との総和の長さが、ボルト孔A3の深さよりも短くなるように、ロッド部材2の一端部の切断加工を行えばよい。そして、その切断加工は、第1の組み付け形態でロッド部材2の一端部を切断する場合と同様に、カッターや鋏等の適宜の工具を使用して行なえばよい。
【0070】
上記のようにボルトAのボルト孔A3に挿入されたロッド部材2及びひずみゲージ3は、第1の組み付け形態の場合と同様に、さらに、該ボルト孔A3に充填されて硬化される接着剤5によって、ボルトAに固定される。
【0071】
この場合、ロッド部材2は、接着剤5と同じ材質によって構成されているので、第1の組み付け形態と同様に、ボルト孔A3に充填されて硬化した接着剤5と、ロッド部材2とは均一的に一体化する。このため、ボルトAを物体Wに締結した状態で該ボルトAに該物体W等から作用するボルト作用力をひずみゲージ3の受感部3bに適切に伝達させるようにすることができる。
【0072】
第2の組み付け形態では、以上のようにして、ロッド部材2及びひずみゲージ3がボルト作用力を測定しようとするボルトAに組み付けられることとなる。
【0073】
そして、このようにロッド部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付けた後に、第1の組み立て形態の場合と同様に、ロッド部材2の、ボルト孔A3から突出している部分が、ボルト孔A3の開口端に近接した位置で、該ロッド部材2の横断方向に切断される。これにより、図3のロッド部材2の他端側の部分(図3の二点鎖線2cで示す部分)がボルト孔A3に挿入されている部分から切り離される。
【0074】
次いで、上記のようにロッド部材2及びひずみゲージ3が組み付けられたボルトAが物体Wに締結される。そして、ひずみゲージ3から導出されている測定用リード線3cが図示しない測定器に接続され、該ひずみゲージ3の検出信号に基づいて、ボルト作用力が測定される。
【0075】
補足すると、前記第1の組み付け形態及び第2の組み付け形態のいずれの組み付け形態においても、ロッド部材2及びひずみゲージ3をボルトAに組み付けた後の測定用リード線3cの処理に関しては、例えば、ボルトAの頭部A1の頂面に端子基板を固着して、この端子基板に測定用リード線3cを結線すると共に、該端子基板から引き出された接続用ケーブルに該端子基板を介して測定用リード線3を導通させるようにしてもよい。そして、ボルト作用力の測定に際して、上記接続ケーブルを測定器に接続するようにしてもよい。また、この場合、測定用リード線3cを、接着剤によりモールドするようにして端子基板に固定しておくようにしてもよい。
【0076】
以上説明した如く、本実施形態の作用力測定用装置1によれば、種々様々なサイズ、種類のボルトAに対して、前記第1の組み付け形態又は第2の組み付け形態によって、ひずみゲージ3を、容易にボルト孔A3の所定の位置に精度よく適切な姿勢で配置させることができる。このため、ボルトAに対するひずみゲーじ3の組み付け作業を効率よく短時間で行なうことができる。また、ボルト作用力の測定を、ひずみゲージ3の検出信号に基づいて高い信頼性で行なうことができる。
【符号の説明】
【0077】
1…作用力測定用装置、2…ロッド部材、3…ひずみゲージ、3c…測定用リード線、4…目盛り、5…接着剤、A…ボルト、A1…頭部、A2…軸部、A3…ボルト孔、W…物体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に締結されるボルトに作用する力であるボルト作用力を測定するために該ボルトに組み付けられる装置であって、
直線状に延在するように形成されており、前記ボルト作用力を測定するために、前記ボルトの頭部の頂面から該ボルトの軸部まで該ボルトの軸心方向にあらかじめ穿設された孔であるボルト孔に一端側の部分が挿入されるロッド部材と、
該ロッド部材の前記ボルト孔に挿入される部分の側面に固着されたひずみゲージと、
該ひずみゲージから導出された測定用リード線と、
前記ロッド部材の長手方向での該ロッド部材に対する前記ひずみゲージの位置を把握し得るように該ロッド部材の側面に、該ロッド部材の長手方向に所定の単位長間隔で付設された目盛りとを備え、
前記ボルトの軸心方向での所定の位置で前記ひずみゲージがボルト孔内に配置されるように前記ロッド部材の一端側の部分が該ボルト孔に挿入されると共に、該ボルト孔内に充填される接着剤によって該ひずみゲージとロッド部材とが前記ボルトに固定されることを特徴とするボルトの作用力測定用装置。
【請求項2】
請求項1記載のボルトの作用力測定用装置において、
前記ロッド部材は、前記ボルト孔内に充填される接着剤と同じ材質により構成された部材であることを特徴とするボルトの作用力測定用装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のボルトの作用力測定用装置において、
前記ひずみゲージは、前記ロッド部材の一端寄りの位置で該ロッド部材に固着されており、前記ロッド部材の一端側の部分は、前記目盛りによって示される前記ひずみゲージと前記ボルト孔の開口端との間の間隔が、あらかじめ定められた所定の間隔となるように該ボルト孔に挿入されることを特徴とするボルトの作用力測定用装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のボルトの作用力測定用装置において、
前記ロッド部材は、前記ボルト孔に挿入される前に、その一端部が、該ロッド部材を横断方向に切断することより切り離されると共に、その切断後の該ロッド部材の一端を前記ボルト孔の底面に当接させるように該ボルト孔に挿入され、前記ロッド部材の切断は、前記目盛りによって示される当該切断後のロッド部材の一端と前記ひずみゲージとの間の間隔が、あらかじめ定められた所定の間隔となるように行なわれることを特徴とするボルトの作用力測定用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202688(P2012−202688A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64389(P2011−64389)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000151520)株式会社東京測器研究所 (29)
【Fターム(参考)】