説明

ボルトテンショナ

【課題】ボルトテンショナにおいて、被締結部材の形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とする。
【解決手段】ハウジング201と、ハウジング201内の軸中心部に配置されるプラーバ202と、プラーバ202を軸方向に移動可能とする油ポンプユニット115と、プラーバ202とスタッドボルト65とを軸方向に相対移動不能に連結するプラーバソケット203と、プラーバソケット203を作動するロッキングリング205と、ハウジング201内の軸中心部で且つプラーバ202より先端部側に回転自在に支持されるナットソケット207と、ハウジング201の外周部に装着されてナットソケット207を正逆回転可能なナット回転装置209とを設け、ハウジング201を、プラーバ202が収容される第1ハウジング231と、ナットソケット207が収容される第2ハウジング232とを一体に連結して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子炉容器の上部に蓋を取付けるときにスタッドボルトにテンションを作用させながらナットを回転して締結したり、原子炉容器の上部に固定された蓋を取り外すときにスタッドボルトにテンションを作用させながらナットを回転して弛緩するボルトテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。
【0003】
このような加圧水型原子炉に用いられる原子炉容器は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体とその上部に装着される原子炉容器蓋により構成されており、この原子炉容器本体に対して原子炉容器蓋が開閉可能となっている。そして、この原子炉容器本体に原子炉容器蓋を着脱自在に装着する場合、スタッドボルトを原子炉容器蓋の外周フランジを貫通し、原子炉容器本体の上部外周フランジに捩じ込んで植え込み、このスタッドボルトにテンションを作用させながら、ナットを螺合することで締結するようにしている。
【0004】
このような締結弛緩装置としては、下記特許文献1、2に記載されたものがある。この特許文献1に記載された装置では、ボルトテンショナを用いて作業を行っている。また、特許文献2には、一般的なボルトテンショナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−227888号公報
【特許文献2】特公昭60−057996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なボルトテンショナは、円筒形状をなすハウジング内に、プラーバ、ピストン、ロッキングリング、プラーバソケット、ナットソケットなどが収容され、側部にソケット回転装置が装着されて構成されている。そして、スタッドボルト及びナットに対してこのボルトテンショナの先端部を係合することで作動させている。
【0007】
ところで、原子炉容器は、その仕様などにより原子炉容器本体や原子炉容器蓋の形状が異なる。そのため、原子炉容器蓋における突起部分を避けるようにボルトテンショナを配置し、作業を行うこととなる。この場合、ボルトテンショナは、ナットを回転(締結または弛緩)するとき、スタッドボルトに原子炉容器蓋から離間する方向のテンションを作用させなければならず、先端部に原子炉容器蓋の上面に接触する所定の範囲(面積)の接触面を設ける必要がある。しかし、多種形状の原子炉容器蓋に対して、所定の範囲の接触面が確保されるように、ボルトテンショナの先端部形状を構成することは困難である。その結果、多種形状の原子炉容器蓋に対して、複数のボルトテンショナを用意することとなり、設備コストが上昇してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、被締結部材の形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とするボルトテンショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のボルトテンショナは、被締結物に対して複数のスタッドボルトが捩じ込まれて配列されると共に該複数のスタッドボルトにそれぞれナットが螺合し、前記スタッドボルトに前記被締結物から離間する軸心方向にテンションを作用させながら前記ナットを回転して締結または弛緩を行うボルトテンショナであって、円筒形状をなすハウジングと、該ハウジング内の軸中心部に配置されるプラーバと、該プラーバを軸方向に移動可能とするプラーバ移動装置と、前記プラーバと前記スタッドボルトとを軸方向に相対移動不能に連結するプラーバソケットと、該プラーバソケットを作動するロッキングリングと、前記ハウジング内の軸中心部で且つ前記プラーバより先端部側に回転自在に支持されるナットソケットと、前記ハウジングの外周部に装着されて前記ナットソケットを正逆回転可能な駆動装置と、を備え、前記ハウジングは、前記プラーバが収容される第1ハウジングと、前記ナットソケットが収容される第2ハウジングとが一体に連結されて構成される、ことを特徴とするものである。
【0010】
従って、ハウジングを第1ハウジングと第2ハウジングとで構成することで、被締結物の形状に応じて適正な第2ハウジングを選択して装着することが可能となり、被締結部材の形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とすることができる。また、ハウジングを分割構造とすることで、プラーバやナットソケットなどのメンテナンス性を向上することができる。
【0011】
本発明のボルトテンショナでは、前記駆動装置は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に配置されることを特徴としている。
【0012】
従って、ハウジングに対して駆動装置を容易に装着することが可能となり、組付性を向上することができると共に、駆動装置のメンテナンス性を向上することができる。
【0013】
本発明のボルトテンショナでは、前記駆動装置は、前記第1ハウジングの先端部に配置されることを特徴としている。
【0014】
従って、駆動装置に影響を与えることなく第1ハウジングから第2ハウジングを取り外すことができると共に、駆動装置のメンテナンス性を向上することができる。
【0015】
本発明のボルトテンショナでは、前記ナットソケットは、外周部に外歯の従動ギアが固定されて前記第1ハウジングに支持され、該従動ギアに前記駆動装置の中間ギアが噛み合うことを特徴としている。
【0016】
従って、駆動装置やナットソケットに影響を与えることなく、第2ハウジングだけを容易に着脱することが可能となる。
【0017】
本発明のボルトテンショナでは、前記第2ハウジングは、複数の固定ボルトが先端部側から貫通して前記第1ハウジングの先端部に螺合することで、前記第1ハウジングに固定されることを特徴としている。
【0018】
従って、複数の固定ボルトを回転することで、第1ハウジングに対して第2ハウジングの着脱を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のボルトテンショナによれば、ハウジングを、プラーバが収容される第1ハウジングと、ナットソケットが収容される第2ハウジングとが一体に連結して構成するので、被締結部材の形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る締結弛緩装置の全体構成を表す斜視図である。
【図2】図2は、本実施例の締結弛緩装置の全体構成を表す平面図である。
【図3】図3は、本実施例の締結弛緩装置を表す斜視図である。
【図4】図4は、本実施例の締結弛緩装置を表す正面図である。
【図5】図5は、本実施例の締結弛緩装置を表す側面図である。
【図6】図6は、ボルトテンショナを表す断面図である。
【図7−1】図7−1は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−2】図7−2は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−3】図7−3は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−4】図7−4は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−5】図7−5は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図8】図8は、本実施例の締結弛緩装置におけるガイド装置を表す平面図である。
【図9】図9は、本実施例の締結弛緩装置におけるボルトテンショナの分割構造を表す断面図である。
【図10−1】図10−1は、ボルトテンショナの交換状態を表す概略図である。
【図10−2】図10−2は、ボルトテンショナの交換状態を表す概略図である。
【図11】図11は、原子力発電プラントの概略構成図である。
【図12】図12は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るボルトテンショナの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係る締結弛緩装置の全体構成を表す斜視図、図2は、本実施例の締結弛緩装置の全体構成を表す平面図、図3は、本実施例の締結弛緩装置を表す斜視図、図4は、本実施例の締結弛緩装置を表す正面図、図5は、本実施例の締結弛緩装置を表す側面図、図6は、ボルトテンショナを表す断面図、図7−1から図7−5は、ボルトテンショナの作動を表す概略図、図8は、本実施例の締結弛緩装置におけるガイド装置を表す平面図、図9は、本実施例の締結弛緩装置におけるボルトテンショナの分割構造を表す断面図、図10−1及び図10−2は、ボルトテンショナの交換状態を表す概略図、図11は、原子力発電プラントの概略構成図、図12は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【0023】
本実施例の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0024】
本実施例の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図11に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ15aが設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0025】
蒸気発生器13は、蒸気タービン17と冷却水配管18を介して連結されており、この蒸気タービン17は高圧タービン19及び低圧タービン20を有すると共に、発電機21が接続されている。また、高圧タービン19と低圧タービン20との間には、湿分分離加熱器22が設けられており、冷却水配管18から分岐した冷却水分岐配管23が湿分分離加熱器22に連結される一方、高圧タービン19と湿分分離加熱器22は低温再熱管24により連結され、湿分分離加熱器22と低圧タービン20は高温再熱管25により連結されている。
【0026】
更に、蒸気タービン17の低圧タービン20は、復水器26を有しており、この復水器26には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管27及び排水管28が連結されている。この取水管27は、循環水ポンプ29を有し、排水管28と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器26は、冷却水配管30を介して脱気器31に連結されており、この冷却水配管30に復水ポンプ32及び低圧給水加熱器33が設けられている。また、脱気器31は、冷却水配管34を介して蒸気発生器13に連結されており、この冷却水配管34には給水ポンプ35及び高圧給水加熱器36が設けられている。
【0027】
従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管18を通して蒸気タービン17(高圧タービン19から低圧タービン20)に送られ、この蒸気により蒸気タービン17を駆動して発電機21により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン19を駆動した後、湿分分離加熱器22で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン20を駆動する。そして、蒸気タービン17を駆動した蒸気は、復水器26で海水を用いて冷却されて復水となり、低圧給水加熱器33で、例えば、低圧タービン20から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器31で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、高圧給水加熱器36で、例えば、高圧タービン19から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器13に戻される。
【0028】
このように構成された原子力発電プラントに適用された加圧水型原子炉12において、図12に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋43により構成されており、この原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43が開閉可能となっている。原子炉容器本体42は、上部が開口して下部が球面状に閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を給排する入口ノズル44及び出口ノズル45が形成されている。
【0029】
原子炉容器本体42内にて、入口ノズル44及び出口ノズル45より下方には、円筒形状をなす炉心槽46が原子炉容器本体42の内面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽46の上部には、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板47が連結され、下部には、同じく円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板48が連結されている。そして、原子炉容器本体42内には、炉心槽46の上方に位置して円板形状をなす上部炉心支持板49が固定されており、この上部炉心支持板49から複数の炉心支持ロッド50を介して上部炉心板47、つまり、炉心槽46が吊下げ支持されている。一方、下部炉心板48、つまり、炉心槽46は、原子炉容器本体42の内面に対して複数のラジアルキー52により位置決め保持されている。
【0030】
炉心槽46と上部炉心板47と下部炉心板48により炉心53が形成されており、この炉心53には、多数の燃料集合体54が配置されている。この燃料集合体54は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。そして、複数の制御棒55は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ56となり、燃料集合体54内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管57が支持されており、下端部が燃料集合体54の制御棒クラスタ56まで延出されている。
【0031】
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43の上部には、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置58が設けられており、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング59内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管57の上端部は、制御棒駆動装置58まで延出され、この制御棒駆動装置58から延出されて制御棒クラスタ駆動軸60が、制御棒クラスタ案内管57内を通って燃料集合体54まで延出され、制御棒クラスタ56を把持可能となっている。また、図示しないが、上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の炉内計装案内管が支持されており、下端部が燃料集合体54まで延出されており、中性子束を計測できるセンサを挿入可能となっている。
【0032】
この制御棒駆動装置58は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ56に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸60を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0033】
従って、制御棒駆動装置58により制御棒クラスタ駆動軸60を移動して燃料集合体54に制御棒55を挿入することで、炉心53内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル45から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体54を構成する燃料としてのウランまたはプルトニウムが核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒55を燃料集合体54に挿入することで、炉心53内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときには炉心53に急速に挿入される。
【0034】
また、原子炉容器41内には、炉心53に対して、その上方に出口ノズル45に連通する上部プレナム61が形成されると共に、下方に下部プレナム62が形成されている。そして、原子炉容器41と炉心槽46との間に入口ノズル44及び下部プレナム62に連通するダウンカマー部63が形成されている。従って、軽水は、4つの入口ノズル44から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部63を下向きに流れ落ちて下部プレナム62に至り、この下部プレナム62の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心板48を通過した後、炉心53に流入する。この炉心53に流入した軽水は、炉心53を構成する燃料集合体54から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体54を冷却する一方、高温となって上部炉心板47を通過して上部プレナム61まで上昇し、出口ノズル45を通って排出される。
【0035】
このように構成された原子炉容器41は、上述したように、原子炉容器本体42と原子炉容器蓋43により構成され、この原子炉容器蓋43は、複数のスタッドボルト65及び複数のナット66により原子炉容器本体42の上部に着脱自在に装着されている。この場合、スタッドボルト65は、図7−1に詳細に示すように、下部ねじ部65a、貫通部65b、上部ねじ部65c、平行溝部65dを有している。そして、上部ねじ部65cにナット66が螺合するスタッドボルト65は、貫通部65bが原子炉容器蓋43に形成された取付穴43aを貫通し、下部ねじ部65aが原子炉容器本体42に形成されたねじ穴42aに捩じ込まれた状態で、スタッドボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(ここでは、上方)にテンションを作用させながら、ナット66を螺合することで、締結または弛緩することができ、原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43を着脱することができる。
【0036】
ここで、本発明の被締結部材は、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43である。そして、本実施例のボルトテンショナは、複数のスタッドボルト65及びナット66を用いて原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43を取付けたり、取り外したりすることができるものである。以下、本実施例の締結弛緩装置について詳細に説明する。
【0037】
本実施例において、図1及び図2に示すように、原子炉格納容器11(図11参照)を構成する建屋11aに対してハウジング59の支持円盤59aが複数の支持ロッド71により支持されている。この支持円盤59aは、外周部にガイドレール72が固定され、4つの搬送装置(電動トロリーホイスト)73が移動自在に支持されている。そして、この4つの搬送装置73は、それぞれリフト装置74を有しており、吊りケーブル75を介して締結弛緩装置76が吊り下げ支持されると共に、昇降可能となっている。この場合、4つの搬送装置73及び締結弛緩装置76は、ほぼ同様の構成をなし、周方向に均等間隔(90度間隔)に配置されている。
【0038】
搬送操作装置77は、テンション制御装置78が連結されると共に、電源部79及び空気圧源80が連結されている。そして、搬送操作装置77は、電源ケーブル81により各搬送装置73及び各締結弛緩装置76に接続されると共に、空圧ホース82により各締結弛緩装置76に接続されている。
【0039】
締結弛緩装置76は、上述したように、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の外周部に対して複数のスタッドボルト65が捩じ込まれて配列されると共に、この複数のスタッドボルト65にそれぞれナット66が螺合し、スタッドボルト65に原子炉容器本体42から離間する軸心方向にテンションを作用させながらナット66を回転して締結または弛緩を行うものである。
【0040】
即ち、締結弛緩装置76は、図3乃至図5に示すように、装置本体101と、ボルトテンショナ102と、2つのガイド装置103と、2つの位置決め装置104とから構成されている。
【0041】
吊り金具111は、搬送装置73におけるリフト装置74の吊りケーブル75に吊り下げ支持可能であり、複数の吊りロッド112により支持プレート113が支持されている。装置本体101は、この吊り金具111、吊りロッド112、支持プレート113などにより構成されている。従って、装置本体101は、上部が搬送装置73に支持されることで、スタッドボルト65の配列方向(原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の円周方向)に沿って移動自在に支持されることとなる。
【0042】
ボルトテンショナ102は、上部が支持プレート113の中央部を貫通するように支持されており、上部に油タンク114、油圧ポンプユニット(プラーバ移動装置)115、圧力計116が配置されている。従って、ボルトテンショナ102は、装置本体101に装着されることから、リフト装置74の作動によりスタッドボルト65の軸心方向に沿って移動自在となる。
【0043】
このボルトテンショナ102において、図6に示すように、円筒形状をなすハウジング201は、上部が支持プレート113に嵌入して固定されており、先端部が原子炉容器蓋43の上面に当接可能となっている。プラーバ202は、ハウジング201よりも小径の円筒形状をなし、このハウジング201内の中心部に収容されている。このプラーバ202は、ハウジング201の内周面に図示しないピストンを介して移動自在に嵌合しており、油圧ポンプユニット115により給排される油圧により軸心方向(上下方向)に沿って移動可能となっている。そして、プラーバ202は、下端部に平行溝部202aが形成されている。
【0044】
プラーバソケット203は、周方向に4分割された円筒形状をなし、ハウジング201とプラーバ202の下端部及びスタッドボルト65との間に配置されている。このプラーバソケット203は、上端部がカラー204を介してプラーバ202の下部に支持されており、4分割された各部材が径方向に移動自在で、且つ、外側に付勢支持されている。そして、このプラーバソケット203は、上部内周面にプラーバ202の平行溝部202aに係合する上係合溝部203aが形成されると共に、下部内周面にスタッドボルト65の平行溝部65dに係合する下係合溝部203bが形成されている。また、プラーバソケット203は、外周面に凹凸部203cが形成されている。
【0045】
また、ロッキングリング205は、円筒形状をなし、ハウジング201とプラーバソケット203との間に配置されている。このロッキングリング205は、内周面にプラーバソケット203の凹凸部203cに嵌合可能な凹凸部205aが形成されている。そして、ロッキングリング205は、ハウジング201の内周面に装着された複数のエアシリンダ206により昇降可能となっている。従って、ロッキングリング205が上昇位置にあるとき、図6にて左側に示すように、プラーバソケット203が径方向の外側に移動し、凹凸部205aがこのプラーバソケット203の凹凸部203cに嵌合しており、各係合溝部203a,203bは、プラーバ202の平行溝部202a及びスタッドボルト65の平行溝部65dに係合していない。一方、ロッキングリング205が下降位置にあるとき、図6にて右側に示すように、凹凸部205aがプラーバソケット203の凹凸部203cを押圧し、プラーバソケット203が径方向の内側に移動し、各係合溝部203a,203bは、プラーバ202の平行溝部202a及びスタッドボルト65の平行溝部65dに係合する。
【0046】
ハウジング201は、その下端内周部にナットソケット207が回転自在に支持されており、外周部に従動ギア208が固定されている。このナットソケット207は、ナット66に対して軸心方向には相対移動自在である一方、周方向には一体回転自在になっている。また、ハウジング201は、その下端外周部にナットソケット207を回転させるナット回転装置209が装着されている。このナット回転装置209は、ハウジング201に固定されるケース210、電動サーボモータ211、駆動ギア212、3つの中間ギア213から構成されている。従って、電動サーボモータ211により駆動ギア212を正回転させると、その回転駆動力が各中間ギア213を介して従動ギア208に伝達され、ナットソケット207を回転し、ナット66を回転して締結することができる。一方、電動サーボモータ211により駆動ギア212を逆回転させると、その回転駆動力が各中間ギア213を介して従動ギア208に伝達され、ナットソケット207を回転し、ナット66を回転して弛緩することができる。
【0047】
従って、まず、図7−1に示すように、搬送装置73により締結弛緩装置76を移動し、所定の位置、つまり、ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66の位置で停止する。次に、図7−2に示すように、リフト装置74により締結弛緩装置76を下降し、ボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66に係合させる。そして、図7−3に示すように、プラーバソケット203を径方向の内側に移動し、スタッドボルト65の平行溝部65dをチャッキングする。この状態で、図7−4に示すように、油圧ポンプユニット115を作動することでプラーバ202を上昇させ、スタッドボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(上方)にテンションを作用させる。そして、図7−5に示すように、ナット回転装置209を作動することでナットソケット207を回転し、ナット66を回転して締結または弛緩することができる。
【0048】
また、締結弛緩装置76にて、図3乃至図5に示すように、ボルトテンショナ102に対して装置本体101の移動方向の前後にガイド装置103が設けられている。この前後のガイド装置103は、ボルトテンショナ102の中心線に対して対称をなす形状であり、ほぼ同様の構成となっている。
【0049】
即ち、前後のシリンダ121は、本体が支持プレート113に固定され、下方に延びるピストンロッド121aの先端部に断面が逆U字形状をなす箱体122が連結されている。なお、シリンダ121は、ピストンロッド121aの最長伸張位置が規制されている。この箱体122は、図8に詳細に示すように、装置本体101の移動方向の左右両側に内ガイド部材123と外ガイド部材124が装着されている。この各ガイド部材123,124は、それぞれが対向する側にガイド片125,126が固定され、このガイド片125,126は、スタッドボルト65の配列方向(円周方向)に沿った湾曲形状をなしている。この場合、各ガイド片125,126は、隣接する2つ(または、3つ以上)のナット66の外周に接触可能となっている。また、各ガイド部材123,124は、前方側の端部と後方側の端部にそれぞれ上下に沿う回転軸心を有するガイドローラ127,128が装着されている。
【0050】
この場合、箱体122、ガイド部材123,124、ガイド片125,126、ガイドローラ127,128などによりガイド装置103が構成されている。また、シリンダ121は、内部に油が充填されることでダンパとして機能し、装置本体101と共にボルトテンショナ102が昇降しても、ピストンロッド121aが伸縮することで、装置本体101とガイド装置103とが相対移動するようになっている。更に、2つのガイド装置103は、円周方向の外側で、各箱体122が上下2つの連結部材129により連結されており、所定の剛性が確保されている。
【0051】
従って、この各ガイド部材123,124におけるガイド片125,126やガイドローラ127,128は、装置本体101の移動方向の左右両側から各スタッドボルト65に螺合した各ナット66の外周に接触することで、この装置本体101の下部をガイドすることができる。
【0052】
また、締結弛緩装置76にて、図3乃至図5に示すように、ボルトテンショナ102に対して装置本体101の移動方向の前後にガイド装置103と共に位置決め装置104が設けられている。この前後の位置決め装置104は、ガイド装置103に装着され、ボルトテンショナ102の中心線に対して対称をなす形状であり、ほぼ同様の構成となっている。
【0053】
即ち、ガイド装置103の箱体122の側部(原子炉容器蓋43における円周方向の外側)に箱型のケース131が固定され、このケース131内にエアシリンダ132が装着されている。このエアシリンダ132は、原子炉容器蓋43における円周方向の内側に向けてピストンロッド132a(図8参照)が伸縮可能であり、先端部に隣接するナット66間に円周方向の外側から嵌入する位置決め部材133が装着されている。また、ケース131は、箱体122側に位置して下部に車輪134が装着されており、ガイド装置103及び位置決め装置104の荷重が車輪134により支持され、原子炉容器蓋43の上面を転動可能となっている。
【0054】
この場合、ケース131、エアシリンダ132、位置決め部材133などにより位置決め装置104が構成されている。
【0055】
従って、所定の位置で、エアシリンダ132を作動してピストンロッド132aを伸張すると、位置決め部材133が隣接するナット66間に嵌入することで、装置本体101をその移動方向に対して所定の位置に位置決めすることができる。
【0056】
なお、前方側のガイド装置103の箱体122に、締結弛緩装置による作業前後におけるスタッドボルト65の伸び量を検出する伸び量検出装置141が設けられ、この伸び量検出装置141の検出結果に基づいてボルトテンショナ102に適正にテンションが作用して締結されているかを検出している。また、前方側のガイド装置103の箱体122にナット66を検出するナット検出センサ(光センサ)142が設けられ、位置決め装置104のケース131に車輪134の回転数を検出するロータリエンコーダ143が設けられており、ナット検出センサ142及びロータリエンコーダ143の検出結果に基づいて装置本体101、つまり、ボルトテンショナ102の移動位置を検出している。
【0057】
そして、本実施例の締結弛緩装置にて、ボルトテンショナ102はハウジング201が軸方向に2分割されている。即ち、図9に示すように、ハウジング201は、第1ハウジング231と第2ハウジング232とが複数(本実施例では、4本)の固定ボルト233により一体に連結されて構成されている。この場合、第1ハウジング231と第2ハウジング232とは、外径が同径となっており、隙間なく接触している。また、第1ハウジング231は、先端部の内周部側に突出する厚肉部231aが形成される一方、第2ハウジング232は、全体が第1ハウジング231より厚肉で、基端部側に突出するフランジ部232aが形成されており、このフランジ部232aが厚肉部231aの内周面に嵌合している。そして、各固定ボルト233が第2ハウジング232の先端部側から軸方向に貫通し、先端部が第1ハウジング231の先端部に螺合することで、第1ハウジング231の先端部に第2ハウジング232の基端部が隙間なく固定される。
【0058】
また、第1ハウジング231は、内部にプラーバ202、プラーバソケット203、ロッキングリング205などが収容されている。一方、第2ハウジング232は、内部にナットソケット207、従動ギア208が収容されている。そして、ナット回転装置(駆動装置)209は、第1ハウジング231と第2ハウジング232の間、具体的には、第1ハウジング231の先端部に配置されている。
【0059】
即ち、第1ハウジング231は、先端部の側面に開口部231bが形成され、ナット回転装置206は、ケース210がこの開口部231bに嵌合し、ケース210と一体のフランジ部210aが複数の固定ボルト234により第1ハウジング231の外周面に固定されている。そして、ナットソケット207は、外周部に従動ギア208が固定されており、ナットソケット207の外周面が第2ハウジング232のフランジ部232aに回転自在に嵌合し、従動ギア208の外周面が第1ハウジング231の厚肉部231aに回転自在に嵌合しており、ナット回転装置206のケース210内に収容された中間ギア213がこの従動ギア208に噛み合っている。
【0060】
また、第2ハウジング232は、先端部の角部がカットされるようなテーパ面232bが形成されることで、原子炉容器蓋43の上面に接触する押圧面232cが形成されている。
【0061】
ところで、原子炉容器41は、その仕様などにより原子炉容器蓋43の形状が異なる。そのため、ボルトテンショナ102は、原子炉容器蓋43における突起部分を避けるような形状である必要がある。そのため、本実施例のボルトテンショナ102は、ハウジング201が第1ハウジング231と第2ハウジング232から構成され、原子炉容器蓋43の形状に応じて第2ハウジング232が交換可能となっている。
【0062】
即ち、図10−1及び図10−2に示すように、ボルトテンショナ102は、第2ハウジング232に対して交換可能な第2ハウジング232A,232Bが設けられており、原子炉容器蓋43の形状に応じて複数設けられている。この場合、第2ハウジング232,232A,232Bは、原子炉容器蓋43における屋根部43aの形状や連結部43bなどの形状に応じて接触しないように、テーパ面232bの位置や傾斜角度、押圧面232cの面積が相違している。従って、作業を行う前に、適正な第2ハウジング232,232A,232Bを選択して第1ハウジング231の先端部に取付けておけばよい。
【0063】
ここで、上述した本実施例の締結弛緩装置の作動について説明する。
【0064】
本実施例の締結弛緩装置において、図1及び図2に示すように、原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外す場合、まず、4つの搬送装置73にリフト装置74を介して締結弛緩装置76を吊り下げ支持し、リフト装置74により締結弛緩装置76を下降することで、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43に締結されたスタッドボルト65及びナット66に対してセットアップする。そして、装置本体101と共にボルトテンショナ102を上昇し、このボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66の上方に配置する。この場合、前後のガイド装置103は配列されたナット66に係合している。
【0065】
この状態で、搬送装置73を作動し、締結弛緩装置76をスタッドボルト65及びナット66の配列方向に沿って移動する。そして、ボルトテンショナ102がスタッドボルト65及びナット66と上下に対向する位置に移動すると、搬送装置73の作動を停止し、位置決め装置104を作動することで、ボルトテンショナ102の位置決めを行う。即ち、ボルトテンショナ102は、装置本体101と共に搬送装置73から吊り下げられているだけであり、また、ガイド装置103は、移動するためにナット66との間に若干の隙間が設けられており、ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66との正確な位置決めが困難となる。そのため、位置決め装置104を作動し、位置決め部材133を外側から隣接するナット66の間に嵌入すると、位置決め装置104(位置決め部材133)とガイド装置103(内ガイド部材123)とでナット66を挟持することとなり、ボルトテンショナ102の正確な位置決めが可能となる。
【0066】
ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66との正確な位置決めが完了すると、この状態で、ボルトテンショナ102を作動することで、ナット66を弛緩する。即ち、スタッドボルト65に原子炉容器本体42から離間する軸心方向にテンションを作用させながらナット66を逆回転して弛緩する。
【0067】
一つのナット66の弛緩が完了すると、リフト装置74により装置本体101と共にボルトテンショナ102を上昇し、このボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66の上方に離間する。このとき、ガイド装置103及び位置決め装置104などの自重によりシリンダ121が伸張することで、前後のガイド装置103及び位置決め装置104は配列されたナット66に係合している。この状態で、前述したように、搬送装置73により締結弛緩装置76をスタッドボルト65及びナット66の配列方向に沿って移動すると、ガイド装置103及び位置決め装置104は、車輪134により原子炉容器蓋43の上面を転動する。そして、ボルトテンショナ102がスタッドボルト65及びナット66と上下に対向する位置に移動すると、搬送装置73の作動を停止し、以下、前述と同様の作業を繰り返し行うことで、複数のナット66を順に弛緩していく。
【0068】
なお、4つの締結弛緩装置76は、周方向に等間隔で配置されており、各締結弛緩装置76は、同期して作動することで、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43に締結されたスタッドボルト65及びナット66に対して偏荷重が作用することなくナット66を弛緩することができる。そして、全てのナットの弛緩作業が完了したら、4つの搬送装置73を停止し、各リフト装置74を作動して全ての締結弛緩装置76を吊り上げ、図示しないクレーン装置を用いて全ての締結弛緩装置76を取り外す。そして、図示しない回転装置を用いてスタッドボルト65を回転して取り外した後、クレーン装置により原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外す。
【0069】
一方、原子炉容器本体42に原子炉容器蓋43を取付ける場合は、前述の作動と同様であるが、ボルトテンショナ102にて、ナット66の回転方向が逆になる。
【0070】
また、本実施例の締結弛緩装置を別の原子炉容器41に適用する場合、原子炉容器蓋43の形状が相違していることから、ボルトテンショナ102にて、事前に、適正な第2ハウジング232,232A,232Bを選択して第1ハウジング231の先端部に取付けておく。この場合、第2ハウジング232は、内部にナットソケット207や従動ギア208を収容しているものの、従動ギア208が第1ハウジング231に支持され、この従動ギアにナットソケット207が固定されていることから、第2ハウジング232,232A,232Bだけを交換することが可能となる。原子炉容器蓋43の形状に応じて適正な第2ハウジング232,232A,232Bを選択することで、原子炉容器蓋43の形状が相違しても、一つのボルトテンショナ102を使用することが可能となる。また、原子炉容器蓋43は、形状が相違することで、その締結力(弛緩力)、つまり、テンションも相違するが、このテンションに応じても、適正な形状の第2ハウジングを交換することが可能となる。
【0071】
また、ボルトテンショナ102は、内部にプラーバ202、プラーバソケット203、ロッキングリング205などが収容されていることから、定期的にメンテナンスを行う必要がある。この場合であっても、第1ハウジング231から第2ハウジング232を取り外すことで、内部部品のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0072】
このように本実施例のボルトテンショナにあっては、ハウジング201と、ハウジング201内の軸中心部に配置されるプラーバ202と、プラーバ202を軸方向に移動可能とする油ポンプユニット115と、プラーバ202とスタッドボルト65とを軸方向に相対移動不能に連結するプラーバソケット203と、プラーバソケット203を作動するロッキングリング205と、ハウジング201内の軸中心部で且つプラーバ202より先端部側に回転自在に支持されるナットソケット207と、ハウジング201の外周部に装着されてナットソケット207を正逆回転可能なナット回転装置209とを設け、ハウジング201を、プラーバ202が収容される第1ハウジング231と、ナットソケット207が収容される第2ハウジング232とを一体に連結して構成している。
【0073】
従って、ハウジング201を第1ハウジング231と第2ハウジング232とで構成することで、原子炉容器蓋43の形状に応じて適正な形状の第2ハウジング232を選択して第1ハウジング231に装着することが可能となる。そのため、原子炉容器蓋43の形状に拘わらずスタッドボルト65に対して適正にナット66の締結と弛緩を行うことができる。また、ハウジング201を分割構造とすることで、プラーバ202やナットソケット207などのメンテナンス性を向上することができる。
【0074】
また、本実施例のボルトテンショナでは、ナット回転装置209を第1ハウジング231と第2ハウジング232との間に配置している。ハウジング201に対してナット回転装置209を容易に装着することが可能となり、組付性を向上することができると共に、装置のメンテナンス性を向上することができる。本実施例では、ナット回転装置209を第1ハウジング231側に配置したが、ナット回転装置209を第1ハウジング231と第2ハウジング232とで挟持するように配置してもよい。
【0075】
また、本実施例のボルトテンショナでは、ナット回転装置209を第1ハウジング231の先端部に配置している。従って、ナット回転装置209の装着状態に拘わらず第1ハウジング231から第2ハウジング232を取り外すことができると共に、ナット回転装置209のメンテナンス性を向上することができる。
【0076】
また、本実施例のボルトテンショナでは、ナットソケット207は、外周部に外歯の従動ギア208を固定して第1ハウジング231に支持し、この従動ギア208にナット回転装置209の中間ギア213が噛み合うようにしている。従って、ナット回転装置209やナットソケット207に影響を与えることなく、第2ハウジング232だけを容易に着脱することが可能となる。
【0077】
また、本実施例のボルトテンショナでは、第2ハウジング232を複数の固定ボルト233が先端部側から貫通して第1ハウジング231の先端部に螺合することで、第1ハウジング231に固定している。従って、複数の固定ボルト233を回転することで、第1ハウジング231に対して第2ハウジング232の着脱を容易に行うことができる。
【0078】
なお、上述した実施例では、ハウジング201を軸方向に2分割としたが、3分割以上としてもよく、その分割位置に限定されるものではない。
【0079】
また、上述した実施例では、本発明の締結弛緩装置を原子炉容器41に適用して説明したが、被締結部材としてはこれに限るものではなく、複数のスタッドボルト及びナットが所定の方向に沿って配列されたものであれば、いずれのものであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
11 原子炉格納容器
12 加圧水型原子炉
13 蒸気発生器
17 蒸気タービン
21 発電機
41 原子炉容器
42 原子炉容器本体(被締結部材)
43 原子炉容器蓋(被締結部材)
46 炉心槽
53 炉心
54 燃料集合体
55 制御棒
58 制御棒駆動装置
59 ハウジング
65 スタッドボルト
66 ナット
73 搬送装置
74 リフト装置
76 締結弛緩装置
101 装置本体
102 ボルトテンショナ
103 ガイド装置
104 位置決め装置
115 油ポンプユニット(プラーバ移動装置)
201 ハウジング
202 プラーバ
203 プラーバソケット
205 ロッキングリング
206 エアシリンダ
207 ナットソケット
208 従動ギア
209 ナット回転装置(駆動装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結物に対して複数のスタッドボルトが捩じ込まれて配列されると共に該複数のスタッドボルトにそれぞれナットが螺合し、前記スタッドボルトに前記被締結物から離間する軸心方向にテンションを作用させながら前記ナットを回転して締結または弛緩を行うボルトテンショナであって、
円筒形状をなすハウジングと、
該ハウジング内の軸中心部に配置されるプラーバと、
該プラーバを軸方向に移動可能とするプラーバ移動装置と、
前記プラーバと前記スタッドボルトとを軸方向に相対移動不能に連結するプラーバソケットと、
該プラーバソケットを作動するロッキングリングと、
前記ハウジング内の軸中心部で且つ前記プラーバより先端部側に回転自在に支持されるナットソケットと、
前記ハウジングの外周部に装着されて前記ナットソケットを正逆回転可能な駆動装置と、
を備え、
前記ハウジングは、前記プラーバが収容される第1ハウジングと、前記ナットソケットが収容される第2ハウジングとが一体に連結されて構成される、
ことを特徴とするボルトテンショナ。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のボルトテンショナ。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記第1ハウジングの先端部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のボルトテンショナ。
【請求項4】
前記ナットソケットは、外周部に外歯の従動ギアが固定されて前記第1ハウジングに支持され、該従動ギアに前記駆動装置の中間ギアが噛み合うことを特徴とする請求項1または2に記載のボルトテンショナ。
【請求項5】
前記第2ハウジングは、複数の固定ボルトが先端部側から貫通して前記第1ハウジングの先端部に螺合することで、前記第1ハウジングに固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のボルトテンショナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−157950(P2012−157950A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20156(P2011−20156)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)