説明

ボルト締め付け用ソケット

【課題】ボルトに対して空転することがないボルト締め付け用ソケットを提供し、ナットランナーを用いたボルトの締め付け作業の自動化および締め付け作業に要する時間の短縮を実現する。
【解決手段】ヘッド部8aを有するボルト8の締め付けに使用する、ヘッド部8aと係合する凹状の部位である係合部1cを有するボルト締め付け用のソケット1であって、係合部1cのヘッド部8aを挿入する側の端部に、端部側に向けて係合部1cを拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部1eが形成されるとともに、テーパ部1eにヘッド部8aを係止するための部位である係止部9が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの締め付け等に使用する工具であるボルト締め付け用ソケットの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトの締め付け等に使用するナットランナー等に付設して使用する、当該ボルト等を係合させるための工具であるソケットが知られている。
そして、ソケットによるボルト・ナットに対する確実な係合状態を実現するために、ソケットの改良が種々行われており、例えば、以下に示す特許文献1において、改良されたソケットの技術が開示され、公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ボルトによって締結しようとする部位に当該ボルトを配置した状態において、ボルトが締結方向(即ち、ボルトを螺合するナット孔の軸心方向)に対して傾くことがあるが、ボルトが傾いた状態では、ボルトのヘッド部がソケットに形成された凹状の係合部に嵌合せず、ソケットがボルトに対して空転してしまうことがあった。
このような場合には、ナットランナー等で本締めをする前に、作業者が手作業でボルトをナット孔に数山だけ螺挿しておき、ボルトの傾きをなくしてからナットランナーを使用するようにしていた。
このため従来は、ナットランナー等を用いたボルトの締め付け作業を完全に自動化することができず、また、ボルトの締め付け作業に要する時間も長くなっていた。
【0005】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、ボルトに対して空転することがないボルト締め付け用ソケットを提供し、ナットランナーを用いたボルトの締め付け作業の自動化および締め付け作業に要する時間の短縮を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、ヘッド部を有するボルトの締め付けに使用する、前記ヘッド部と係合する凹状の部位である係合部を有するボルト締め付け用ソケットであって、前記係合部の前記ヘッド部を挿入する側の端部に、端部側に向けて前記係合部を拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部が形成されるとともに、前記テーパ部に前記ヘッド部を係止するための部位である係止部が形成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記係止部は、前記ヘッド部の角部に対応させて放射状に形成されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記係止部は、前記ヘッド部の周辺部に対応させて放射状に形成されるものである。
【0010】
請求項4においては、前記係止部は、溝状の凹部として形成されるものである。
【0011】
請求項5においては、前記係合部は、異なる2種類の前記ボルトである第一ボルトおよび第二ボルトの各ヘッド部に対応する、第一および第二の各係合部により構成されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、ソケットがボルトに対して空転することを防止できる。これにより、作業者による手締めの作業を省略して、ボルトの締め付け作業の自動化を実現できる。また、装置稼働率を向上させるとともに、製品の組立時間を短縮できる。
【0014】
請求項2においては、傾斜した状態のボルトを係止して、回転させることができる。
【0015】
請求項3においては、傾斜した状態のボルトをより確実に係止して、回転させることができる。
【0016】
請求項4においては、係止部を容易に形成することができる。
【0017】
請求項5においては、異なる2種類のボルトが存在している場合において、ソケットを交換する必要が無いため、ボルトの締め付け作業に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットを備えるボルト締め付け装置の全体構成および締め付け対象たる対象部品を示す模式図。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成を示す模式図、(a)軸心方向視における模式図、(b)図2(a)におけるA−A断面図。
【図3】本発明の第二の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成を示す模式図、(a)軸心方向視における模式図、(b)図3(a)におけるB−B断面図。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットによる対象部品の締め付け状況を示す模式図。
【図5】本発明の第三の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成を示す模式図、(a)軸心方向視における模式図、(b)図5(a)におけるC−C断面図。
【図6】本発明の第三の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの使用状態を示す模式図、(a)第一ボルトに対する使用状態を示す模式図、(b)第二ボルトに対する使用状態を示す模式図。
【図7】本発明の第四の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成を示す模式図、(a)軸心方向視における模式図、(b)図7(a)におけるD−D断面図。
【図8】従来のボルト締め付け用ソケットの全体構成を示す模式図、(a)軸心方向視における模式図、(b)図8(a)におけるE−E断面図。
【図9】従来のボルト締め付け用ソケットによる対象部品の締め付け状況を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットを備えたボルト締め付け装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット1を備えたボルト締め付け装置2は、複数の部品からなる対象部品3を締結する用途に使用する装置であり、ソケット1のほか、ナットランナー4、スピンドル5等を備えている。
【0020】
また、本実施形態に示す対象部品3は、第一の部品6、第二の部品7、ボルト8等からなる構成としている。
第一の部品6は、第二の部品7が付設される部品であり、ボルト8を螺合するためのナット孔6aが形成されている。
また第二の部品7は、薄板状の部品であり、ボルト8を挿通するための孔7aが形成されている。
【0021】
そしてボルト8は、所謂六角ボルトであり、ボルト8の締め付け時に回転力が付与される部位であるヘッド部8aや、ナット孔6aと螺合する部位であるネジ部8b等が形成されている。
そして、ネジ部8bを第二の部品7の孔7aに挿通した状態で、ネジ部8bをナット孔6aに螺合させてボルト8を締め付けることによって、各部品6・7・8を締結して対象部品3を一体化する構成としている。
【0022】
ナットランナー4は、ボルト8を締め付けるために必要な回転駆動力を発生させるための装置であり、回転する軸部である駆動軸4aを備えている。
また、ナットランナー4の駆動軸4aには、軸心を一致させた状態でスピンドル5が付設されている。
【0023】
スピンドル5は、ナットランナー4とソケット1とを連結するための部位であり、駆動軸4aに固設される第一の部材である第一部材5aと、該第一部材5aにより軸方向に変位可能な状態で支持される第二の部材である第二部材5bと、各部材5a・5bに介設される弾性部材であるバネ部材5c等により構成している。そして、スピンドル5によって、ソケット1によりボルト8を締め付けるときに生じる振動等を吸収する構成としている。
【0024】
ここで、本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットについて、図2を用いて説明をする。
図2(a)(b)に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット1は、略円柱状の形状を有しており、締め付け対象となるボルト8と対面する側の端部である一端部1aと、スピンドル5に連結する側の端部である他端部1bが形成されている。
そして、一端部1aにおけるソケット1の軸心上には、ボルト8を係合するための略六角柱状の凹部である係合部1cが形成されており、また他端部1bにおけるソケット1の軸心上には、該ソケット1をスピンドル5と連結するための凹部である連結部1dが形成されている。
【0025】
そして、係合部1cのさらに端部側には、端部側に向かって係合部1cを拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部1eが形成されている。テーパ部1eの内周面は、端部側に向かって拡径する円錐形状面に形成されている。
さらに、テーパ部1eには、複数の溝部1f・1f・・・がソケット1の軸心を中心とした略放射状に形成されており、各溝部1f・1f・・・によって係止部9を構成している。
また、ソケット1では、正六角形状を有するヘッド部8aの各角部8c・8c・・・(図1参照)に対応させて、複数の溝部1f・1f・・・を、係合部1cの各角部1g・1g・・・に対応した角度(60度)ごとに形成して、係止部9を構成している。
【0026】
続いて、本発明の第二の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットについて、図3を用いて説明をする。
図3(a)(b)に示す如く、本発明の第二の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット11は、ソケット1と同様に略円柱状の形状を有しており、締め付け対象となるボルト8と対面する側の端部である一端部11aと、スピンドル5に連結する側の端部である他端部11bが形成されている。
そして、一端部11aにおけるソケット11の軸心上には、ボルト8を係合するための略六角柱状の凹部である係合部11cが形成されており、また他端部11bにおけるソケット11の軸心上には、該ソケット11をスピンドル5と連結するための凹部である連結部11dが形成されている。
【0027】
そして、係合部11cのさらに端部側には、端部側に向かって係合部11cを拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部11eが形成されている。テーパ部11eの内周面は、端部側に向かって拡径する円錐形状面に形成されている。
さらに、テーパ部11eには、複数の溝部11f・11f・・・がソケット11の軸心を中心とした略放射状に形成されており、各溝部11f・11f・・・によって係止部19を構成している。
また、ソケット11では、正六角形状を有するヘッド部8aの各周辺部8d・8d・・・(図1参照)に対応させて、複数の溝部11f・11f・・・を、係合部11cの各辺部11h・11h・・・に対応した角度(60度)ごとに形成して、係止部19を形成している。
【0028】
このソケット11に形成される溝部11fの長さは、前述したソケット1の溝部1fに比して、長くすることができるため、ボルト8の傾きがより大きい場合でも係止部19によってヘッド部8aを係止することができる。
【0029】
さらにここで、従来のボルト締め付け用ソケットについて、図8を用いて説明をする。
図8(a)(b)に示す如く、従来のボルト締め付け用ソケットであるソケット41は、各ソケット1・11と同様に略円柱状の形状を有しており、締め付け対象となるボルト8と対面する側の端部である一端部41aと、スピンドル5に連結する側の端部である他端部41bが形成されている。
【0030】
そして、一端部41aにおけるソケット41の軸心上には、ボルト8を係合するための略六角柱状の凹部である係合部41cが形成されており、また他端部41bにおけるソケット41の軸心上には、該ソケット41をスピンドル5と連結するための凹部である連結部41dが形成されている。
【0031】
そして、係合部41cのさらに端部側には、端部側に向かって係合部41cを拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部41eが形成されている。テーパ部41eの内周面は、端部側に向かって拡径する円錐形状面に形成されている。
しかしながらソケット41においては、テーパ部41eには係止部となる溝部等が形成されていない。
即ち、本発明の第一および第二の実施形態に係る各ソケット1・11は、各テーパ部1e・11eに複数の係止部となる各溝部1f・11fが形成されている点において、従来のソケット41と相違している。
【0032】
次に、ボルト締め付け装置2によるボルト8の締め付け状況について、図4および図9を用いて説明をする。
尚、本実施形態では、本発明の第一の実施形態に係るソケット1を備えるボルト締め付け装置2によるボルト8の締め付け状況を例示して説明をするが、本発明の第二の実施形態に係るソケット11を使用した場合であっても同様の効果を奏するものであるため、説明は省略している。
【0033】
図4および図9に示す如く、第一の部品6のナット孔6aと第二の部品7の孔7aの各軸心X2をナットランナー4の軸心X1に略一致するように配置した状態で、各孔6a・7aにボルト8を挿通して配置すると、未だネジ部8bとナット孔6aが螺合していない状態では、ボルト8の軸心X3は、各軸心X1・X2に対して傾斜した状態となる。
ボルト8の軸心X3が、各軸心X1・X2に対して傾斜した状態は、第二の部品7の厚さがボルト8の首下長さに比して、十分に小さい場合に顕著となる。
【0034】
このような状態において、図9に示す如く、従来のソケット41を用いてボルト8を締め付けようとする場合、ヘッド部8aを、ソケット41のテーパ部41eに当接させると、テーパ部41eでは、ヘッド部8aを係止することができないため、この状態でボルト8に対してソケット41が空転してしまう。このため、ボルト8は傾斜した状態に維持され、ヘッド部8aは係合部41cに係合しない。
このように、従来のソケット41を使用した場合には、ボルト8の締め付け異常(締め付けできない状態)が発生し、ボルト8の締め付け作業を自動化することが困難であった。
【0035】
一方、同様の状態において、図4に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るソケット1を用いてボルト8を締め付けようとする場合、ヘッド部8aは、ソケット1のテーパ部1eに当接させると、テーパ部1eに形成された各溝部1f・1f・・・によってヘッド部8aの角部8c・8c・・・が係止されるため、ボルト8が傾斜した状態であっても、ボルト8に回転力を付与することができる。
【0036】
そして、傾斜した状態のボルト8に回転力が付与されると調心作用が生じ、ボルト8の軸心X3が各軸心X1・X2に一致するように引き起こされる。
そして、ヘッド部8aと係合部1cが係合させることができる。
【0037】
このため、本発明の第一の実施形態に係るソケット1を使用した場合には、ボルト8が傾斜していた場合であっても締め付け異常(締め付けできない状態)が発生することなく、ボルト8の締め付け作業を自動化することができる。
【0038】
尚、本発明の第一の実施形態に係るソケット1では、テーパ部1eに複数の溝部1f・1f・・・が形成されている場合を例示しているが、軸心X3が傾斜している状態において、ヘッド部8a(より詳しくは、角部8c・8c・・・)を係止できる態様であればよく、係止部9を構成する部位の形態が溝状である場合に限定するものではない。
【0039】
また、本発明の第一の実施形態に係るソケット1では、溝部1fを6箇所形成する場合を例示しているが、本発明に係るソケットにおける係止部の態様を、溝部の形成箇所数によって限定するものではなく、例えば、120度ごとに3箇所の各溝部を形成する態様や、6箇所以上の溝部を形成する態様とすることも可能である。
【0040】
さらに、本実施形態では、係止部9を凹状の溝部である各溝部1f・1f・・・によって形成する場合を例示しているが、本発明に係るソケットにおける係止部の態様を、凹状の溝部によって構成する態様に限定するものではなく、例えば、放射状に突起部を形成する態様や、テーパ部を粗し面として摩擦力によってヘッド部を係止する等の態様とすることも可能である。
【0041】
即ち、本発明の第一の実施形態に係るソケット1において、係止部9は、ヘッド部8aの各角部8c・8c・・・に対応させて放射状に形成されるものである。
このような構成により、傾斜した状態のボルト8を係止して、回転させることができる。
【0042】
また、本発明の第二の実施形態に係るソケット11において、係止部19は、ヘッド部8aの周辺部8d・8d・・・に対応させて放射状に形成されるものである。
このような構成により、傾斜した状態のボルト8をより確実に係止して、回転させることができる。
【0043】
さらに、本発明の第一および第二の実施形態に係る各ソケット1・11においては、各係止部9・19は、溝状の凹部たる各溝部1f・1f・・・および各溝部11f・11f・・・として形成されるものである。
このような構成により、各係止部9・19を容易に形成することができる。
【0044】
そして、本発明の第一および第二の実施形態に係る各ソケット1・11は、ヘッド部8aを有するボルト8の締め付けに使用する、ヘッド部8aと係合する凹状の部位である各係合部1c・11cを有するものであって、各係合部1c・11cの各ヘッド部8aを挿入する側の端部に、端部側に向けて各係合部1c・11cを拡大するように傾斜させた部位である各テーパ部1e・11eが形成されるとともに、各テーパ部1e・11eにヘッド部8aを係止するための部位である各係止部9・19が形成されるものである。
このような構成により、各ソケット1・11がボルト8に対して空転することを防止できる。これにより、作業者による手締めの作業を省略して、ボルトの締め付け作業の自動化を実現できる。また、装置稼働率を向上させるとともに、製品の組立時間を短縮できる。
【0045】
次に、本発明の第三の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成について、図5および図6を用いて説明をする。
図5(a)(b)に示す如く、本発明の第三の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット21は、第一および第二の実施形態に係る各ソケット1・11と同様に、傾斜状態で配置されるボルト8に回転を付与することができるものであるが、さらに、一つのソケット21で、異なる二種類のボルト8である第一ボルト8Xおよび第二ボルト8Yに対応できる点で、第一および第二の実施形態に係る各ソケット1・11と相違している。
そして、ソケット21は、第一部材22、第二部材23、バネ部材24等により構成されている。
【0046】
第一部材22は、第一の大きさである第一ボルト8Xに対応した係合部が形成される略円柱状の部材であり、締め付け対象となる第一ボルト8Xと対面する側の端部である一端部22aと、スピンドル5に連結する側の端部である他端部22bが形成されている。
【0047】
そして、一端部22aにおける第一部材22の軸心上には、第一ボルト8Xを係合するための略六角柱状の凹部である係合部22cが形成されており、また他端部21bにおける第一部材22の軸心上には、該第一部材22をスピンドル5と連結するための凹部である連結部22dが形成されている。
【0048】
そして、係合部22cのさらに開放端側にはテーパ部22eが形成されるとともに、該テーパ部22eを切り欠く複数の溝部22f・22f・・・が第一部材22の軸心を中心とする略放射状に形成されている。
尚、本実施形態では、第一ボルト8Xのヘッド部8aの正六角形状に対応して、複数の溝部22f・22f・・・が係合部22cの各角部22g・22g・・・に対応した角度(60度)ごとに形成されている。
【0049】
第二部材23は、第二の大きさである第二ボルト8Yに対応した係合部が形成される略六角柱状の部材であり、第一部材22に形成された略六角柱状の凹部である係合部22cに略一致する形状を有している。そして、第二部材23は、締め付け対象となる第二ボルト8Yと対面する側の端部には一端部23aが形成されている。
【0050】
また、一端部23aにおける第二部材23の軸心上には、第二ボルト8Yを係合するための略六角柱状の凹部である係合部23cが形成されており、また他端部23bは、バネ部材24の内径に対応した外径で形成されている。
【0051】
そして、係合部23cのさらに開放端側にはテーパ部23eが形成されるとともに、該テーパ部23eを切り欠く複数の溝部23f・23f・・・が第二部材23の軸心を中心とする略放射状に形成されている。
尚、本実施形態では、第二ボルト8Yのヘッド部8aの正六角形の形状に対応して、複数の溝部23f・23f・・・が係合部23cの各角部23g・23g・・・に対応した角度(60度)ごとに形成されている。
【0052】
そして、第一部材22の係合部22cにバネ部材24を介設した状態で第二部材23を挿入して、本発明の第三の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット21を構成している。
このように、ソケット21は、互いに径の大きさが異なる係合部22cおよび係合部23cを有している。係合部22cの径は係合部23cの径よりも大きく形成されている。また、係合部22cの端部側に形成されるテーパ部22eの径は、係合部23cの端部側に形成されるテーパ部23eの径よりも大きく形成されている。
【0053】
このような構成により、ソケット21では、第一ボルト8Xを使用するときには、図6(a)に示すように、第二部材23を係合部22c内に落ち込ませた状態で固定することにより、第一部材22の係止部28によって、傾斜した第一ボルト8Xを引き起こすとともに、第一部材22の係合部22cによって、ヘッド部8aを係合して、締め付けることができる。またソケット21では、第二ボルト8Yを使用するときには、図6(b)に示すように、第二部材23を係合部22cの一端部22a側端部にまで摺動させて、第二部材23の係止部29によって、傾斜した第二ボルト8Yを引き起こすとともに、第二部材23の係合部23cによって、ヘッド部8aを係合して、締め付けることができる。
【0054】
次に、本発明の第四の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットの全体構成について、図7を用いて説明をする。
図7(a)(b)に示す如く、本発明の第四の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット31は、第三の実施形態に係るソケット21と同様に、異なる二種類のボルト8である第一ボルト8Xおよび第二ボルト8Yに対応できるものであるが、形成される係止部の態様が相違している。
【0055】
即ち、ソケット31は、第一部材32、第二部材33、バネ部材34等により構成されている。
【0056】
第一部材32は、第一の大きさである第一ボルト8Xに対応した係合部が形成される略円柱状の部材であり、締め付け対象となる第一ボルト8Xと対面する側の端部である一端部32aと、スピンドル5に連結する側の端部である他端部32bが形成されている。
【0057】
そして、一端部32aにおける第一部材32の軸心上には、第一ボルト8Xを係合するための略六角柱状の凹部である係合部32cが形成されており、また他端部31bにおける第一部材32の軸心上には、該第一部材32をスピンドル5と連結するための凹部である連結部32dが形成されている。
【0058】
そして、係合部32cのさらに開放端側にはテーパ部32eが形成されるとともに、該テーパ部32eを切り欠く複数の溝部32f・32f・・・が第一部材32の軸心を中心とする略放射状に形成されている。
尚、本実施形態では、第一ボルト8Xのヘッド部8aの正六角形状に対応して、複数の溝部32f・32f・・・が係合部32cの各辺部32g・32g・・・に対応した角度(60度)ごとに形成されている。
【0059】
第二部材33は、第二の大きさである第二ボルト8Yに対応した係合部が形成される略六角柱状の部材であり、第一部材32に形成された略六角柱状の凹部である係合部32cに略一致する形状を有している。そして、第二部材33は、締め付け対象となる第二ボルト8Yと対面する側の端部には一端部33aが形成されている。
【0060】
また、一端部33aにおける第二部材33の軸心上には、第二ボルト8Yを係合するための略六角柱状の凹部である係合部33cが形成されており、また他端部33bは、バネ部材34の内径に対応した外径で形成されている。
【0061】
そして、係合部33cのさらに開放端側にはテーパ部33eが形成されるとともに、該テーパ部33eを切り欠く複数の溝部33f・33f・・・が第二部材33の軸心を中心とする略放射状に形成されている。
尚、本実施形態では、第二ボルト8Yのヘッド部8aの正六角形の形状に対応して、複数の溝部33f・33f・・・が係合部33cの各辺部33g・33g・・・に対応した角度(60度)ごとに形成されている。
【0062】
そして、第一部材32の係合部32cにバネ部材34を介設した状態で第二部材33を挿入して、本発明の第四の実施形態に係るボルト締め付け用ソケットであるソケット31を構成している。
このように、ソケット31は、互いに径の大きさが異なる係合部32cおよび係合部33cを有している。係合部32cの径は係合部33cの径よりも大きく形成されている。また、係合部32cの端部側に形成されるテーパ部32eの径は、係合部33cの端部側に形成されるテーパ部33eの径よりも大きく形成されている。
【0063】
このような構成により、ソケット31では、第一ボルト8Xを使用するときには、本発明の第三の実施形態に係るソケット21と同様に(図6(a)参照)、第二部材33を係合部32c内に落ち込ませた状態で固定することにより、第一部材32の係止部38によって、傾斜した第一ボルト8Xを引き起こすとともに、第一部材32の係合部32cによって、ヘッド部8aを係合して、締め付けることができる。またソケット31では、第二ボルト8Yを使用するときには、本発明の第三の実施形態に係るソケット21と同様に(図6(b)参照)、第二部材33を係合部32cの一端部32a側端部にまで摺動させて、第二部材33の係止部39によって、傾斜した第二ボルト8Yを引き起こすとともに、第二部材33の係合部33cによって、ヘッド部8aを係合して、締め付けることができる。
【0064】
即ち、本発明の第三および第四の実施形態に係る各ソケット21・31において、係合部は、異なる2種類のボルトである第一ボルト8Xおよび第二ボルト8Yの各ヘッド部8a・8aに対応する、第一および第二の各係合部22c・23cあるいは各係合部32c・33cにより構成されるものである。
このような構成により、異なる2種類の各ボルト8X・8Yが存在している場合において、各ソケット21・31を交換する必要が無いため、ボルトの締め付け作業に要する時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0065】
1 ソケット(第一の実施形態)
1c 係合部
1f 溝部
2 ボルト締め付け装置
3 対象部品
4 ナットランナー
8 ボルト
8a ヘッド部
9 係止部
11 ソケット(第二の実施形態)
11c 係合部
11f 溝部
19 係止部
21 ソケット(第三の実施形態)
28 係止部
29 係止部
31 ソケット(第四の実施形態)
38 係止部
39 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部を有するボルトの締め付けに使用する、前記ヘッド部と係合する凹状の部位である係合部を有するボルト締め付け用ソケットであって、
前記係合部の前記ヘッド部を挿入する側の端部に、端部側に向けて前記係合部を拡大するように傾斜させた部位であるテーパ部が形成されるとともに、
前記テーパ部に前記ヘッド部を係止するための部位である係止部が形成される、
ことを特徴とするボルト締め付け用ソケット。
【請求項2】
前記係止部は、
前記ヘッド部の角部に対応させて放射状に形成される、
ことを特徴とする請求項1記載のボルト締め付け用ソケット。
【請求項3】
前記係止部は、
前記ヘッド部の周辺部に対応させて放射状に形成される、
ことを特徴とする請求項1記載のボルト締め付け用ソケット。
【請求項4】
前記係止部は、
溝状の凹部として形成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボルト締め付け用ソケット。
【請求項5】
前記係合部は、
異なる2種類の前記ボルトである第一ボルトおよび第二ボルトの各ヘッド部に対応する、第一および第二の各係合部により構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボルト締め付け用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−66360(P2012−66360A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214192(P2010−214192)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000158976)技研工業株式会社 (7)