説明

ボルト締結部のガスシール構造及びそのガスシール構造を有する固体酸化物型燃料電池

【課題】従来のシール構造は、水密性を目的としたものであり、さらに高レベルのシーリングが要求される気密構造にそのまま適用することは困難であった。
【解決手段】ねじ穴1Aを有する金属部材1と、ねじ穴1Aに螺入したボルト2の頭部2Aとの間の気密性を確保するガスシール構造であって、ボルト2の頭部2Aの接合面に、金属部材1の接合面に線接触する断面形状の突条部1Cをボルト2と同心円状に有し、金属部材1へのボルト2の締め込みにより前記突条部1Cを金属部材1の接合面に陥入状態にすると共に、金属部材1の表面からボルト2の頭部2Aの表面にかけて連続した酸化膜3を有するガスシール構造としたことで、シーリング部材を用いずに充分な気密性を確保することを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材とこれに締結したボルトにおいて、金属部材とボルトの頭部との間の気密性を確保するのに用いられるボルト締結部のガスシール構造、及びそのガスシール構造を有する固体酸化物型燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシール構造としては、例えば、特許文献1に記載されているものがあった。特許文献1に記載の技術は、スタッドボルトとして用いる溶接ボルトに関するものであり、頭部の座面に、ねじ軸部を中心とする環状突条が設けてある。このボルトは、基板の取付孔に通して頭部を基板にプロジェクション溶接する際に、環状突条を基板に食い込ませることによって漏水を防ぐものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−14233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したような従来のシール構造は、漏水防止すなわち水密性能を目的としたものであるから、さらに高レベルのシーリングが要求される気密構造(ガスシール構造)にそのまま適用することは困難である。そこで、従来のシール構造をガスシール構造に適用するには、ガスケットやワッシャなどのシーリング部材の使用が考えられるが、その分部品点数が増加するうえに、高温環境下で使用する機器においては、シーリング部材の緩みや劣化を免れないという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、シーリング部材を用いずに充分な気密性能を確保することができるボルト締結部のガスシール構造を提供することを目的としている。また、上記のガスシール構造を有する固体酸化物型燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボルト締結部のガスシール構造は、貫通したねじ穴を有する金属部材と、そのねじ穴に螺入したボルトの頭部との間の気密性を確保するための構造である。このガスシール構造では、金属部材及びボルトの頭部の互いの接合面のいずれか一方の接合面に、他方の接合面に線接触する断面形状の突条部を前記ねじ穴及びボルトと同心円状に有している。
【0007】
そして、ガスシール構造は、金属部材へのボルトの締め込みにより前記突条部を他方の接合面に陥入状態にすると共に、金属部材の表面からボルトの頭部の表面にかけて連続した酸化膜を有する構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池は、上記のベルト締結部のガスシール構造を有するものであって、平板状を成す単セルを複数積層したスタック構造体と、スタック構造体の積層方向端部に配置したエンドプレートと、スタック構造体及びエンドプレートを貫通するボルトを備えている。このとき、貫通したねじ穴を有する金属部材が、上記のエンドプレートであって、エンドプレート及びボルトの頭部の互いの接合面のいずれか一方の接合面に、他方の接合面に線接触する断面形状の突条部を前記ねじ穴又はボルトと同心円状に有している。
【0009】
そして、固体酸化物型燃料電池は、エンドプレートへのボルトの締め込みにより前記突条部を他方の接合面に陥入状態にすると共に、エンドプレートの表面からボルトの頭部の表面にかけて連続した酸化膜を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボルト締結部のガスシール構造によれば、ガスケットやワッシャなどのシーリング部材を用いずに、充分な気密性能を確保することができる。これにより、部品点数の削減や低コスト化を実現すると共に、高温環境下で使用する機器にも適用可能である。
【0011】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池によれば、ガスケットやワッシャなどのシーリング部材を用いずに、エンドプレートとボルトとの締結部における充分な気密性能を確保することができ、とくに、漏れ易い性質である水素ガスに対する確実なシーリング機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るボルト締結部のガスシール構造の一実施形態を説明する断面図である。
【図2】ボルトの突条部と金属部材との界面を説明する断面図(A)、酸化膜が形成された状態を説明する断面図(B)、及び拡散接合した状態を説明する断面図(C)である。
【図3】ボルト及び金属部材の加熱処理を説明する断面図である。
【図4】図1に示すガスシール構造を有する固体電解型燃料電池を説明する断面図である。
【図5】本発明に係るボルト締結部のガスシール構造の他の実施形態を説明する断面図である。
【図6】発明に係るボルト締結部のガスシール構造のさらに他の実施形態を説明する断面図である。
【図7】発明に係るボルト締結部のガスシール構造のさらに他の実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明に係るボルト締結部のガスシール構造の一実施形態を説明する図である。
【0014】
図1に示すガスシール構造は、貫通したねじ穴1Aを有する金属部材1と、そのねじ穴1Aに螺入したボルト2の頭部2Aとの間の気密性を確保するための構造である。図示例の金属部材1は、一例として、22%のCrを含有するフェライト系ステンレスを材料とし、平板状であると共に、その表裏に開口したねじ穴1Aを有している。また、ボルト2は、一例として、M8規格であると共に、インコネル718を材料とし、六角形の頭部2Aと、おねじを形成した軸部2Bとを有している。
【0015】
ガスシール構造は、金属部材1及びボルト2の頭部2Aの互いの接合面のいずれか一方の接合面に、他方の接合面に線接触する断面形状の突条部を前記ねじ穴1A又はボルト2と同心円状に有している。この実施形態では、ボルト2の頭部2Aの接合面(座面)に、金属部材1の接合面に線接触する断面形状の突条部2Cが、当該ボルト2と同心円状に形成してある。このとき、突条部2Cは、例えば、直径が12mmである。
【0016】
図示例の突条部2Cは、例えば、幅0.6mmで、高さ0.3mmの断面二等辺三角形状であると共に、全体にわたって均一な高さを有している。このような突条部2Cは、切削加工やプレス加工によりボルト2の製造と同時に形成することができる。したがって、ボルト2のコスト増になる心配はない。
【0017】
なお、突条部2Cは,ボルト2の材料がインコネル718である場合は、切削加工で形成することができ、ボルト2の材料が耐熱性ステンレスである場合は、プレス加工で形成することができる。また、突条部2Cの断面形状は、二等辺三角形以外の三角形状、半円形状、あるいは半円をさらに半分にした形状等にすることができ、いずれにしても相手側の接合面に線接触する断面形状であれば良い。
【0018】
さらに、ガスシール構造は、金属部材1へのボルト2の締め込みにより、図2(A)に示すように、前記突条部2Cを金属部材1の接合面に陥入状態にする。この実施形態では、ボルト2の締め込み時の頭部面圧を1MNにした。そして、ガスシール構造は、図2(B)に示すように、金属部材1の表面からボルト2の頭部の表面にかけて連続した酸化膜3を有するものとなっている。
【0019】
より詳しく説明すると、金属部材1のねじ穴1Aにボルト2を締め込む最終段階において、ボルト2の頭部2Aの突条部2Cが、滑りながら金属部材1の接合面に食い込むこととなる。このとき、突条部2Cは、相手側に線接触する断面尖頭形状であるため、金属部材1に対する圧迫圧力は非常に高く、22%Cr含有ステンレスやインコネルなどのように比較的硬い材料でも、滑らせながら食い込ませることができる。これにより、ステンレス製である金属部材1の酸化膜が破壊され、図2(A)に示すように、ミクロな隙間が消滅してガスシール面4が形成される。また、酸化膜の破壊により、ガスシール面4は、後述する拡散接合をし易い界面となる。
【0020】
その後、図3に示すように、ヒータ11を備えた電気炉12内に、金属部材1及びボルト2をセットし、同電気炉12に酸素を含有するガスとして空気を導入し、この雰囲気中で800℃程度まで昇温する。これにより、図2(B)に示すように、金属部材1の表面からボルト2の頭部の表面にかけて連続した酸化膜3が形成される。金属が酸化する場合には、表面の金属の体積が膨張しながら拡散が生じるので、非常に薄い酸化膜3が連続して形成される。この酸化膜3により、母材内部の保護性能とボルト締結部の気密性能(ガスシール性能)が得られる。
【0021】
また、当該ボルト締結部のガスシール構造は、金属部材の取付孔にボルトを貫通させた従来構造に対して、金属部材1にねじ穴1Aを設け、このねじ穴1Aにボルト2を螺入貫通させている。したがって、金属部材1とボルト2だけで互いの締結を完成することができ、金属部材1に突条部2Cを陥入させた加圧状態を維持している。
【0022】
そこで、当該ボルト締結部のガスシール構造では、上記の加圧状態を維持しつつさらに加熱することにより、図2(C)に示すように、一方の接合面としての頭部2Aの突条部2Cと、他方の接合面としての金属部材1の接合面とを拡散接合させて、拡散層5を形成する。この際、より好ましい実施形態として、頭部2Aの突条部2C及び金属部材1の接合面の少なくとも片方に、拡散接合を促進させる材料を設けることができる。この拡散接合を促進させる材料としては、AgやNi合金等が用いられる。
【0023】
上記の拡散接合により、金属部材1とボルト2の頭部2Aとは、実質的に一体化したものとなり、先述の酸化膜3と相俟って極めて高い気密性能を得ることができるうえに、ボルト2の緩みを阻止して、固定強度を高めることができる。
【0024】
このように、上記実施形態のボルト締結部のガスシール構造によれば、ガスケットやワッシャなどのシーリング部材を全く用いずに、充分な気密性能を確保することができる。また、シーリング部材が不要であるから、部品点数の削減や低コスト化を実現することができると共に、シーリング部材の緩みや劣化を考慮する必要も無いので、高温環境下で使用する機器にも適用可能である。
【0025】
また、上記のボルト締結部のガスシール構造は、ボルト2の頭部2Aの突条部2Cと金属部材1の接合面とを拡散接合したことから、より確実なガスシール性能を達成することができ、この際、拡散接合を促進させる材料を用いることで、拡散層5を短時間で形成することができ、ボルト締結部の製造効率の向上などに貢献することができる。
【0026】
さらに、上記のボルト締結部のガスシール構造は、金属部材1の材料として、ステンレス若しくはインコネルを用いることで、耐熱性の高いボルト締結部を得ることができると共に、酸化膜3を形成し易くなり、母材内部の保護性能や気密性能のさらなる向上に貢献することができる。
【0027】
図4は、上記したボルト締結部のガスシール構造を有する固体酸化物型燃料電池の一実施形態を説明する図である。
【0028】
図示の固体酸化物型燃料電池FSは、平板状を成すセルユニットCを複数積層したスタック構造体Sと、スタック構造体Sの積層方向両端部に配置したエンドプレートE1,E2と、スタック構造体S及びエンドプレートE1,E2を貫通するボルト2を備えている。
【0029】
セルユニットCは、電解質層を燃料極層と空気極層で挟んだ構造を有する単セルと、この単セルの燃料極層との間にガス流路を形成するセパレータを備え、互いに隙間を介して多段に積層されてスタック構造体Sを構成する。なお、燃料極層側のみにセパレータを備えた構成では、空気極層がユニット外部に露出している。
【0030】
そして、固体酸化物型燃料電池FSは、スタック構造体Sの両端部にエンドプレートE1,E2を配置したのち、これらの中心線上にボルト2を貫通させ、同ボルト2の軸部2Bの先端に、ワッシャを兼用する絶縁部材6を介してナット7を螺着し、スタック構造体Sを積層方向に加圧した状態を維持している。
【0031】
このとき、固体酸化物型燃料電池FSは、その中心線上にアノードガスの流通路Gが形成してある。また、ナット7を配置した側(図4中で上側)のエンドプレートE2及び絶縁部材6には、ガス供給孔HAを有し、ボルト2の頭部2A側のエンドプレートE1には、ガス排出孔HBを有している。したがって、前記ボルト2は、アノードガスの流通路Gの中心線上に配置してある。なお、ガス供給孔HAとガス排出孔HBは、逆の位置関係であっても良い。
【0032】
上記の固体酸化物型燃料電池FSは、図示しないケースに収容され、ガス供給孔HAから流通路Gを通して、各セルユニットCの内部の燃料極層にアノードガス(水素ガス)を供給する。また、ケース内にカソードガス(空気)を導入して、この空気を各セルユニットCの外部の空気極層に供給する。これにより、各セルユニットCにおいて、電気化学反応により電気エネルギを発生する。
【0033】
上記の固体酸化物型燃料電池FSにおいて、ボルト締結部のガスシール構造は、図4中で下側となる一方のエンドプレートE1とボルト2の頭部2Aとの間に適用する。すなわち、図1に示す貫通したねじ穴を有する金属部材が、上記エンドプレートE1であって、ボルト2が螺合するねじ穴1Aを有している。
【0034】
また、エンドプレートE1及びボルト2の頭部2Aの互いの接合面のいずれか一方の接合面に、他方の接合面に線接触する断面形状の突条部を前記ねじ穴1A又はボルト2と同心円状に有している。さらに、エンドプレートE1へのボルト2の締め込みにより、図2(A)に示すように、前記突条部をエンドプレートE1の接合面に陥入状態にする。そして、図2(B)に示すように、エンドプレートE1の表面からボルト2の頭部2Aの表面にかけて連続した酸化膜を有するものとなっている。
【0035】
ここで、上記の固体酸化物型燃料電池FSでは、製造過程において、図3に示す電気炉12により酸化膜(3)や拡散層(5)を形成することも可能であるが、組立て後において、運転時に発生する熱により酸化膜(3)及び拡散層(5)を形成し得る。
【0036】
すなわち、固体酸化物型燃料電池FSは、その運転温度が600〜800℃である。この運転温度は、耐熱金属を用いた拡散接合の一般的な接合温度よりも低温ではあるが、エンドプレートE1とボルト2との締結部には、締め込みによる高圧と運転時の高熱が付与される。これにより、図2(C)に示すように、エンドプレート(金属部材1)E1とボルト2の突条部2Cとの界面に拡散層5が形成され、最終的に双方が接合される。
【0037】
ところで、上記したような固体酸化物型燃料電池FSにおいて、ボルト締結部のガスシール構造としては、例えば、硬度が低いCu,Ag,Al等で作製したワッシャや、厚さ方向に柔軟性を有し且つインコネル製で作製したガスケットなどのシーリング部材を用いることが考えられる。また、エンドプレートE1とボルト2の頭部2Aとを溶接することも考えられる。
【0038】
ところが、固体酸化物型燃料電池FSは、高温酸化雰囲気や水蒸気を含有する水素ガスが多量に存在する環境で用いられるうえに、熱サイクルが繰り返されるので、シーリング部材が次第に劣化し、ガスリークやボルト2の緩みが発生する虞がある。さらに、溶接による場合には、溶接部の金属結晶構造が崩れるため、高温動作時の耐久性が低下する虞がある。とくに、アノードガスである水素ガスは、分子半径が小さいために漏れ易い。
【0039】
これに対して、上記の固体酸化物型燃料電池FSは、エンドプレートE1とボルト2の頭部2Aとの間において、ガスケットやワッシャなどのシーリング部材を全く用いずに、充分な気密性能を確保することができ、とくに、漏れ易い性質である水素ガスに対する確実なシーリング機能を得ることができる。また、シーリング部材が不要であるから、シーリング部材の緩みや劣化を心配する必要も無く、部品点数及び工数の削減や、製造コストの低減などを実現することができる。
【0040】
さらに、上記の固体酸化物型燃料電池FSでは、ボルト2の緩みが阻止されて、固定強度がより向上したものとなり、なお且つ、突条部による接合部分が細い線状であるので、拡散層5を破壊することにはなるがボルト2を緩めて分解することも可能であり、気密及び分解という相反する要求を満足するものとなる。
【0041】
図5〜図7は、本発明に係るボルト締結部のガスシール構造の他の実施形態を示す図である。なお、以下の実施形態において、先の実施形態と同じ構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図5に示すボルト締結部のガスシール構造は、金属部材1及びボルト2の頭部2Aの互いの接合面のうち、金属部材1の接合面に、ボルト2の頭部(座面)2Aに線接触する断面形状の突条部1Bが、ねじ穴1Aと同心円状に設けてある。図示例の突条部1Bは、断面三角形状を成しており、ボルト2の六角形の頭部2Aに対して、その六角形の内接円の直径よりも小さい直径である。
【0043】
図6に示すボルト締結部のガスシール構造は、ボルト2が皿ねじ型であって、円錐状を成す頭部2Aに、六角穴2Dを有している。これに対して、金属部材1は、ねじ穴1Aの開放端に、ボルト2の頭部2Aが入り込む座ぐり1Cを有している。この金属部材1は、座ぐり1Cの内周面(接合面)に段部を有しており、この段部が、ボルト2の頭部2Aの円錐面(接合面)に線接触する断面形状の突条部1Bになっている。突条部1Bは、座ぐり1Cの内部全周にわたって形成してあり、ねじ穴1Aと同心円状である。
【0044】
図7に示すボルト締結部のガスシール構造は、ボルト2の頭部2Aが、扁平な円柱状を成すとともに六角穴2Dを有している。また、この実施形態では、前記頭部2Aの座面(接合面)における周縁部が、金属部材1の接合面に線接触する断面形状の突条部2Cである。突条部2Cは、ボルト2と同心円状である。これに対して、金属部材1は、ねじ穴1Aの開放端に、ボルト2の頭部2Aが入り込む座ぐり1Cを有している。この金属部材1は、座ぐり1Cの底面と内周面とのコーナー部に、接合面として全周にわたる傾斜面1Dを有しており、ボルト2の締め込みにより、傾斜面1Dにボルト2の突条部2Cが陥入する。
【0045】
上記の各ガスシール構造は、先の実施形態と同様に、ボルト2の締め込みにより、金属部材1の突条部1Bがボルト2の頭部2Aの座面(接合面)や円錐面(接合面)に陥入し、あるいはボルト2の頭部2Aの突条部2Cが金属部材1の傾斜面(接合面)1Dに陥入する。そして、いずれのガスシール構造も、図2(B)に示すように、金属部材1の表面からボルト2の頭部2Aの表面にかけて連続した酸化膜3を有するものとなり、さらに、双方の接合面同士を拡散接合して、図2(C)に示す如く拡散層5を形成する。
【0046】
上記の各ガスシール構造にあっても、先の実施形態と同様に、シーリング部材を必要とせずに、充分な気密性能を得ることができる。また、いずれも図4に示すような固体酸化物型燃料電池FSにおけるエンドプレートE1とボルト2の締結部に適用することができ、水素ガスに対する高いシーリング機能を得ることができ、固体酸化物型燃料電池FSの生産性や信頼性の向上などに貢献することができる。
【0047】
本発明に係るボルト締結部のガスシール構造は、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、構成部材の各部形状や材料などの構成の細部を適宜変更することが可能であり、例えば、金属部材及びボルトの頭部の双方に突条部を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 金属部材
1A ねじ穴
1B 突条部
1C 座ぐり
1D 傾斜面
2 ボルト
2A 頭部
2B 軸部
2C 突条部
2D 六角穴
3 酸化膜
4 ガスシール面
5 拡散層
6 絶縁部材
7 ナット
11 ヒータ
12 電気炉
C セルユニット
E1 エンドプレート(金属部材)
E2 エンドプレート
FS 固体酸化物型燃料電池
G ガスの流通路
HA ガス供給孔(若しくはガス排出孔)
HB ガス排出孔(若しくはガス供給孔)
S スタック構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通したねじ穴を有する金属部材と、そのねじ穴に螺入したボルトの頭部との間の気密性を確保するためのガスシール構造であって、
金属部材及びボルトの頭部の互いの接合面のいずれか一方の接合面に、他方の接合面に線接触する断面形状の突条部を前記ねじ穴又はボルトと同心円状に有し、
金属部材へのボルトの締め込みにより前記突条部を他方の接合面に陥入状態にすると共に、金属部材の表面からボルトの頭部の表面にかけて連続した酸化膜を有することを特徴とするボルト締結部のガスシール構造。
【請求項2】
前記一方の接合面の突条部と他方の接合面とが、拡散接合してあることを特徴とする請求項1に記載のボルト締結部のガスシール構造。
【請求項3】
前記一方の接合面の突条部及び他方の接合面の少なくとも片方に、拡散接合を促進させる材料を設けたことを特徴とする請求項2に記載のボルト締結部のガスシール構造。
【請求項4】
前記金属部材の材料が、ステンレス若しくはインコネルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボルト締結部のガスシール構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のボルト締結部のガスシール構造を有する固体酸化物型燃料電池であって、
平板状を成すセルユニットを複数積層したスタック構造体と、
スタック構造体の積層方向端部に配置したエンドプレートと、
スタック構造体及びエンドプレートを貫通するボルトを備えると共に、
貫通したねじ穴を有する金属部材が、上記エンドプレートであって、
エンドプレート及びボルトの頭部の互いの接合面のいずれか一方の接合面に、断面尖頭形状の突条部を前記ねじ穴及びボルトと同心円状に有し、
エンドプレートへのボルトの締め込みにより前記突条部を他方の接合面に陥入状態にすると共に、エンドプレートの表面からボルトの頭部の表面にかけて連続した酸化膜を有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
運転時に発生する熱により、前記酸化膜を形成したことを特徴とする請求項5に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項7】
運転時に発生する熱により、前記一方の接合面の突条部と他方の接合面とを拡散接合したことを特徴とする請求項5又は6に記載の固体酸化物型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241751(P2012−241751A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110226(P2011−110226)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】