ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブを使用するn−パラフィン選択的水素化変換プロセス
本発明は、イソパラフィンの最小限の形成で、重ノルマルパラフィンを、より軽いノルマルパラフィン生成物に選択的水素化変換するための触媒として、ボロシリケートZSM−48を使用するプロセスを対象とする。ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブは、新規な構造指向剤を使用して合成される、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロシリケートZSM−48、ボロシリケートZSM−48を調製するための方法、及びボロシリケートZSM−48の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ノルマルパラフィン(n−パラフィン)が豊富であるC5+液体は、溶媒、エチレン生成用原料油、ジェット燃料及びジェット燃料ブレンド成分、ディーゼル燃料及びディーゼル燃料ブレンド成分、並びに潤滑剤を作製するための異性化用原料油などとしての使用を含めて、いくつかの適用に理想的に適している。
【0003】
歴史的には、ノルマルパラフィンが豊富であるC5+液体は、石油など混合物由来のノルマルパラフィンを選択的に抽出することによって調製されてきた。この操作は比較的高価であり、原料油中のノルマルパラフィンの含有量に制限される。
【0004】
ノルマルパラフィンは、フィッシャー・トロプシュプロセスにおいて生成することもできる。しかし、フィッシャー・トロプシュプロセスは、上記の適用のための使用範囲を外れ得る重生成物も発生させる。これらの重生成物は、従来の酸性触媒上で水素化クラッキングすることによって、より軽い生成物に変換されると、イソパラフィン豊富な生成物が、所望のノルマルパラフィン豊富な生成物の代わりに得られる。
【0005】
したがって、n−パラフィン選択的である触媒を含めて、炭化水素変換プロセスにおける使用に適当な新規の触媒組成物が引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,972,204号
【特許文献2】米国特許第6,960,327号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0032692号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)
【非特許文献2】「ゼオライト材料のZSM−48ファミリーにおける構造的不規則(The Structural Disorder in the ZSM−48 Family of Zeolite Materials)」Acta Crystallographica、A58(別冊)、C41(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが提供される。
【0009】
本発明は、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによってボロシリケートZSM−48を調製するための方法も含める。
【化1】
式中、nは8から12(8と12を含む)の整数である。
【0010】
本発明は、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に、本明細書において下記表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48も含めており、ここで、該モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12(8と12を含む)の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。
【0011】
本発明は、合成されたまま及び無水状態で、モル比を単位として、以下の通りの組成を有するボロシリケートZSM−48も含める。
【表1】
式中、Qは、構造(1)によって表される構造指向剤である。
【0012】
形成されるモレキュラーシーブが中間材料である場合、本発明のプロセスは、目的のモレキュラーシーブを達成するため、さらなる合成後プロセス(post-synthesis processing)も含める。
【0013】
別の態様において、本発明は、炭化水素質供給原料と、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることによって、炭化水素を変換するためのプロセスを含める。
【0014】
別の態様において、本発明は、炭化水素を水素化変換するためのプロセスを提供し、該プロセスは、炭化水素質供給原料と、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に、本明細書において下記の表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることを含み、ここで、該モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12(8と12を含む)の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。
【0015】
本発明によると、供給原料と、水素及び酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48を含有するn−パラフィン選択的水素化変換触媒とを接触させることによって、炭化水素質供給原料中のC10+n−パラフィンを、該供給原料中のC10+n−パラフィンよりも分子量が低いn−パラフィン生成物に選択的に水素化変換するためのプロセスがさらに提供される。非限定的な例として、供給原料は、以下の条件下:約320℃から420℃の温度、50psigから5000psigの間の圧力(1psig=6894.76Pa)、及び0.5から5の間の液空間速度(LHSV)で触媒と接触させることができる。炭化水素質供給原料は、通常約5重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、一般に約50重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、及びしばしば約80重量%を超えるC10+ノルマルパラフィンを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の例1に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】本発明の例1に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4A】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4B】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6A】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6B】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図8A】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8B】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8C】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ボロシリケートZSM−48、ボロシリケートZSM−48を調製するための方法、及びボロシリケートZSM−48の使用を対象とする。本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブは小結晶形で調製することができ、i−パラフィンの最小限の形成で、より重いn−パラフィンを、より軽いn−パラフィン生成物に選択的水素化変換するのに有用である。
【0018】
導入
「活性供給源」という用語は、反応することができ、モレキュラーシーブ構造に組み込まれてよい形態で、少なくとも1種の元素を供給することが可能な試薬又は前駆体材料を意味する。「供給源」及び「活性供給源」という用語は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0019】
「周期表」という用語は、2007年6月22日付のIUPAC元素周期表のバージョンを指し、周期表の族の番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されている通りである。
【0020】
「モレキュラーシーブのZSM−48ファミリー」及び「ZSM−48」という用語は同義であり、Lobo及び共同研究者によって「ゼオライト材料のZSM−48ファミリーにおける構造的不規則(The Structural Disorder in the ZSM−48 Family of Zeolite Materials)」Acta Crystallographica、A58(別冊)、C41(2002)に記載されている通り、T10環窓を持つ縮合T6環の巻かれた蜂の巣様のシートの管状細孔から作られた層を含有する一連の不規則なモレキュラーシーブを指す。
【0021】
「水素化変換」という用語は、大気圧を超える圧力にて水素の存在下で操作し、異性化が最小でありメタンが過剰に形成することなくC10+ノルマルパラフィンを、より低い分子量のn−パラフィンに変換する触媒プロセスを指す。
【0022】
「炭化水素変換条件」という用語は、本明細書において、炭化水素質供給原料中の炭化水素を他の化学実体に触媒変換させるのを可能にする適当な温度、圧力及び触媒組成など物理的及び/又は化学的パラメーターの1つ又は複数の組を指すのに使用することができる。
【0023】
イソ−パラフィン対ノルマルパラフィン比(i/n比)は、別段の注記がない限り重量比を指す。
【0024】
許可される場合、この出願において引用されている全ての出版物、特許及び特許出願は、こうした開示が本発明と矛盾していない範囲で参照によりそれらの全体を本明細書に組み込む。
【0025】
別段の指定がない限り、個々の成分又は成分の混合物が選択され得る、元素、材料又は他の成分の属の記述は、列挙されている成分及びそれらの混合物の全ての可能な下位属の組合せを含めることが意図されている。また、「含める」及びその変形は非限定的であることが意図されており、一覧における品目の記述は、本発明の材料、組成物及び方法にも有用であり得る他の類似の品目を排除しない。
【0026】
ボロシリケートZSM−48の合成
反応混合物
一般に、本発明のボロシリケートZSM−48(B−ZSM−48)は、
(a)(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)以下の構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤
【化2】
(式中、nは8から12の整数である)、並びに(6)水を含有する反応混合物を形成することと、
(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によって調製することができる。一下位実施形態において、構造指向剤は、nが8、9、11又は12である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される。
【0027】
ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比を単位として、下記表1に同定されている。
【表2】
表中、Mは周期表の1族及び2族の元素から選択され、Qは、nが8から12の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤である。
【0028】
本発明において有用な酸化ケイ素の供給源として、煙霧シリカ、沈殿シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラ−アルキルオルトシリケート(例えばテトラエチルオルトシリケート)及び水酸化シリカを挙げることができる。本発明において有用であり得る酸化ホウ素の供給源として、ホウケイ酸ガラス、アルカリボレート、ホウ酸、ホウ酸エステル、及び特定のモレキュラーシーブが挙げられる。酸化ホウ素の供給源の非限定的な例として、テトラホウ酸カリウム10水和物及びホウ素ベータモレキュラーシーブ(B−ベータモレキュラーシーブ)が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載されている各実施形態では、モレキュラーシーブ反応混合物は、1種を超える供給源によって供給され得る。また、2つ以上の反応成分が1種の供給源によって提供され得る。一例として、ボロシリケート・モレキュラーシーブは、1999年10月26日にCormaらに発行された米国特許第5,972,204号において教示されている通り、ホウ素含有ベータモレキュラーシーブから合成することができる。
【0030】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のいずれかで調製することができる。本発明のボロシリケートZSM−48の結晶の大きさ、結晶形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件で変動し得る。
【0031】
上述されている通り、反応混合物は、周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源(本明細書において「M」と称することがある)を含めることができる。元素Mの供給源は、結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物を含むことができる。M含有化合物には、それらの酸化物、水酸化物、ナイトレート、サルフェート、ハロゲン化物、オキサレート、シトレート及びアセテートを含めることができる。一下位実施形態において、周期表の1族又は2族の元素は、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)であり得る。下位実施形態において、M含有化合物は、カリウムの臭化物又はヨウ化物などアルカリ金属ハロゲン化物を含むことができる。
【0032】
比較的少量のアルミニウム(Al)が、反応混合物の1種又は複数の成分の痕跡量の異物として、特定の反応混合物中に存在することもある。好ましくは、反応混合物におけるAlの存在を最小限に抑えるか、又は回避する。
【0033】
反応混合物のSDAジカチオンは、通常、モレキュラーシーブの形成に有害ではない任意のアニオンであってよいアニオンに関連する。代表的なアニオンとして、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、アセテート、サルフェート、テトラフルオロボレート及びカルボキシレートなどが挙げられる。
【0034】
B−ZSM−48の結晶化
実際に、本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブは、(a)上述されている通りに反応混合物を調製すること、及び(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で反応混合物を維持することによって調製することができる。
【0035】
反応混合物は、モレキュラーシーブの結晶が形成されるまで高温で保持される。水熱結晶化は、圧力下で、及び反応混合物が自生圧力を受けるように一般にオートクレーブ中にて、約140℃から180℃の間の温度で一般に行われる。
【0036】
反応混合物は、結晶化ステップ中に穏やかな撹拌又は激しい撹拌を受けてよい。本明細書に記載されているボロシリケートZSM−48が、非晶質材料、該モレキュラーシーブと一致していない骨格トポロジーを有する相及び/又は他の不純物(例えば、有機炭化水素)など痕跡量の不純物を含有し得ることは当業者によって理解されよう。
【0037】
水熱結晶化ステップ中、ボロシリケートZSM−48の結晶は、反応混合物から自然発生的に核を発生することが可能であり得る。種子材料としてモレキュラーシーブの結晶を使用することは、完全な結晶化が生じるのに必要な時間を減少させるのに有利であり得る。さらに、種結晶を播種することは、任意の所望でない相におけるモレキュラーシーブの核発生及び/又は形成を促進することによって、得られる生成物の純度の増加に至ることがある。種結晶として使用される場合、種子結晶は通常、反応混合物に使用される二酸化ケイ素の供給源重量の約0.5%から5%の間の量で添加される。
【0038】
モレキュラーシーブ結晶が形成すると、固体生成物は、濾過などの機械的分離技術によって反応混合物から分離させることができる。結晶を水洗浄し、次いで乾燥させることで、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶が得られる。乾燥ステップは、大気圧又は真空下で行うことができる。
【0039】
B−ZSM−48の合成後処理
本発明のボロシリケートZSM−48は合成されたままで使用することができるが、通常、モレキュラーシーブは熱処理される(焼成される)。「合成されたまま」という用語は、SDAカチオン及び/又は元素Mの除去前の、結晶化後の形態におけるボロシリケートZSM−48を指す。SDAは、好ましくは酸化雰囲気(例えば、空気、又は0kPaを超える酸素分圧の別のガス)中にて、SDAをモレキュラーシーブから除去するのに十分な温度(当業者によって容易に決定可能)での熱処理(例えば、焼成)によって除去することができる。SDAは光分解技術によって、例えば、実質的に2005年11月1日にNavrotsky及びParikhに発行された米国特許第6,960,327号に記載されている通り、有機物質をモレキュラーシーブから選択的に除去するのに十分な条件下で、可視光より短い波長を有する光線又は電磁放射線に、SDA含有モレキュラーシーブ生成物を曝露することによって除去することもできる。
【0040】
一般に、イオン交換によってボロシリケートZSM−48からアルカリ金属カチオンを除去すること、及びアルカリ金属カチオンを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンと置き換えることが望ましい場合もある。ボロシリケートZSM−48は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os又はそれらの組合せを含めて、周期表の8〜10族から選択される金属など様々な金属を含浸させることもできる。
【0041】
イオン交換に続いて、モレキュラーシーブは通常、水で洗浄し、約90℃から120℃の範囲の温度で乾燥させる。洗浄した後、モレキュラーシーブを空気、水蒸気又は不活性ガス中にて、約315℃から650℃の範囲の温度で、約1時間から24時間、又はそれ以上の範囲の時間焼成することで、炭化水素変換プロセスに特に有用な触媒活性生成物を生成することができる。
【0042】
生成物の特性決定
本発明に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、モル比を単位として表2に示されている通り、合成されたまま及び無水状態の組成を有し、表中、Q及びMは上述の通りである。
【表3】
【0043】
本発明のボロシリケートZSM−48は通常、連晶(intergrown crystals)の球状又は卵形の凝集体として結晶化し、ここで、凝集体は、2μm未満及びしばしば1μm未満の直径を有する。一部の実施形態において、凝集体内の個々の結晶は、長さが約20nmから200nmの範囲及び厚さが約5nmから50nmの範囲であり、大部分は約5nmから20nmの範囲の厚さを有する、少なくとも実質的に針状であり得る。
【0044】
本明細書に記載されている方法によって合成されるボロシリケートZSM−48型モレキュラーシーブは、それらの粉末XRDパターンを特徴とする。表3の粉末XRD線は、本発明に従って作製された合成されたままのボロシリケートZSM−48型モレキュラーシーブを代表する。
【表4】
【0045】
本明細書に提示されている粉末XRDパターン及びデータは、標準的技術によって回収された。放射線はCuK−α放射線であった。ピークの高さ及び位置は、θがブラッグ角である2θの関数として、ピークの絶対強度から読み取られており、記録線に対応するオングストロームの面間隔であるdを算出することができる。
【0046】
表4の粉末XRDデータは、本発明に従って作製された焼成ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブの代表的なものである。
【表5】
【0047】
回折パターンにおける軽微な変動は、格子定数における変化による、特別なB−ZSM−48試料の骨格種のモル比における変動に起因し得る。さらに、十分小さな結晶はピークの形状及び強度に影響を及ぼし、有意なピーク広幅化に至る(例えば、図7を参照のこと)。回折パターンにおける軽微な変動は、モレキュラーシーブの調製で使用される有機テンプレートの構造における変動に起因することもある。焼成も粉末XRDパターンにおける軽微なシフトを引き起こすことがある。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本結晶格子構造は変化しないままである。
【0048】
ボロシリケートZSM−48の適用
本発明に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、例えば、炭化水素変換反応など様々な反応における触媒として様々に適用され得る。一実施形態において、本発明のボロシリケートZSM−48は、重n−パラフィンを、より軽いn−パラフィン生成物に選択的に水素化変換するために使用される。
【0049】
B−ZSM−48を含有する触媒組成物
本発明のボロシリケートZSM−48を含有する触媒組成物は、重量パーセントを単位として、表5に示されている通りの組成を有し得る。
【表6】
【0050】
触媒としての商業的応用に関し、ボロシリケートZSM−48を適当な大きさ及び形状に形成することができる。この形成は、ペレット化、押出し及びそれらの組合せなどの技術によって行うことができる。押出しによって形成する場合、押し出される材料は、シリンダ、トリローブ、溝付きであってよいか、又は軸対称であり得る、B−ZSM−48押出し生成物の内面に対する供給材料の拡散及び接近を促進する他の形状を有する。
【0051】
本発明のプロセスに使用するための触媒を調製する際、B−ZSM−48結晶は、温度及び炭化水素変換プロセスに用いられる他の条件に耐性のバインダーと複合することができる。また、強酸性を触媒に付与しないバインダーを使用することが好ましい。こうしたバインダーとして、活性及び不活性な材料を挙げることができる。頻繁に、バインダーを添加することで触媒の粉砕強度を向上させる。
【0052】
バインダー材料は、周期表の4族及び14族の元素の耐火性酸化物の中から選択することができる。これらのうち、シリコン、チタン及びジルコニウムの酸化物が注目に値し、シリカ、特に低級アルミニウムシリカが特に有用である。これら及び他の酸化物の組合せも有用であり得る。例えば、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、チタニア−ジルコニア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアを使用することができるが、但し、これらの組合せが強酸性を持つ材料を形成しないという条件である。これらの耐火性酸化物は結晶質若しくは非晶質であってよいか、又はゼラチン状沈殿物、コロイド、ゾル若しくはゲルの形態であってよい。シリカゾルの形態におけるシリカは、好ましいバインダーである。好ましいシリカゾルは約30重量%のシリカ及び直径約7nm〜9nmの粒径を有し、これは、良好な摩滅抵抗性及び優れた粉砕強度を有する触媒をもたらす。
【0053】
ペレット又は押出物をモレキュラーシーブから形成することは、一般に、バインダーに加えて押出し助剤及び粘度調整剤の使用を伴う。これらの添加剤は通常、セルロース系材料、例えばMETHOCELセルロースエーテル(Dow Chemical Co.)、エチレングリコール及びステアリン酸などの有機化合物である。多くのこうした化合物は、当技術分野において知られている。これらの添加剤がペレット化後に、有害な残留物、即ち、望ましくない反応性を持つもの又はモレキュラーシーブの細孔を閉塞し得るものをもたらさないことが重要である。本発明には、こうした残留物が触媒の強酸官能基を作り出さないことが特に望ましい。上記されている洗浄は、低濃度のこれらの材料を除去する。押出し助剤からの残留物は、好ましくは、10分の数パーセント未満、より好ましくは0.1重量%未満である。
【0054】
触媒組成物を調製するための方法は当業者によく知られており、噴霧乾燥、ペレット化、押出し、及び様々な球体作製技術などの従来技術が挙げられる。
【0055】
該触媒組成物におけるB−ZSM−48及びバインダーの相対的比率は広範に変動し得る。一般に、該触媒組成物のB−ZSM−48含有量は、乾燥複合体の約1重量パーセント(重量%)から約99重量パーセント(重量%)の間の範囲であり、一般に、乾燥複合体の約5重量%から約95重量%、及びより通常には乾燥複合体の約50重量%から85重量%の範囲である(例えば、上述の表5を参照のこと)。
【0056】
触媒は任意選択により、周期表の8〜10族から選択される1種又は複数の金属を含有することができる。一下位実施形態において、該触媒は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を含有する。別の下位実施形態において、該触媒は白金(Pt)を含有する。本明細書に記載されている各実施形態に関して、触媒の8〜10族の金属含有量は、一般に、0重量%から約10重量%、通常約0.05重量%から約5重量%、一般に約0.1重量%から約3重量%、及びしばしば約0.3重量%から約1.5重量%の範囲であってよい。溶液における正荷電白金錯イオンを形成する白金化合物は、該モレキュラーシーブと組み合わせる白金の好ましい供給源である。白金テトラアミン塩化物及び白金テトラアミン硝酸塩の両方が、本発明のプロセスに使用される触媒を調製する際の使用に適当である。触媒炭化水素変換用の白金含浸モレキュラーシーブの調製は、同一出願人による米国特許出願公開第2007/0032692号に開示されており、その開示内容を参照により本明細書にその全体を組み込む。
【0057】
追加として、他の元素も、周期表の8〜10族から選択される金属と組み合わせて使用することができる。こうした他の元素の例として、Sn、Re及びWが挙げられる。本発明の触媒材料に使用することができる元素の組合せの例として、限定されることなく、Pt/Sn、Pt/Pd、Pt/Ni及びPt/Reが挙げられる。これらの金属又は他の元素は、イオン交換、細孔充填含浸又は初期湿潤含浸などの様々な従来技術の1つ又は複数を使用して、B−ZSM−48複合体中に容易に導入することができる。初期湿潤含浸方法は、本発明下の特定の適用に好まれる場合がある。しかし含浸技術に関わらず、該金属、例えば白金は、該モレキュラーシーブの中の金属の均一な分散をもたらす方法でB−ZSM−48中に組み込まれる。これに関して、クエン酸などのキレート試薬を使用することで、金属の分散を促進することができる。触媒活性の金属(単数又は複数)への言及は、元素状態における、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物及びカルボキシレートなどの一部の形態におけるこうした金属(単数又は複数)を包含することが意図されている。
【0058】
より重いn−パラフィンの、n−パラフィン豊富なより軽い生成物への水素化変換
本明細書に記載されている新規な方法に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、イソパラフィンの最小限の形成で、重ノルマルパラフィンを、より軽いノルマルパラフィン生成物に選択的に水素化変換するのに有用である。
【0059】
本発明の触媒炭化水素変換プロセスは、本明細書においてn−パラフィン選択的水素化変換と称されることがある。対照的に、「クラッキング」は、熱クラッキング、触媒クラッキング、水素化クラッキング及び水素化分解を含めて、より小さい成分に分割することによって炭化水素の分子量を減少させる全てのプロセス及び反応を指す広義語である。これらのプロセスのうち、熱クラッキング及び触媒クラッキングは添加水素を使用しないが、水素化クラッキング及び水素化分解は水素を使用する。
【0060】
水素も使用する、本明細書に記載されているn−パラフィン選択的水素化変換プロセスは、より低い(通常、かなり低い)イソ/ノルマルアルカン(i/n)比を有するパラフィン生成物の形成によって、水素化クラッキング及び水素化分解と区別することができ、n−パラフィン選択的水素化変換はさらに、高変換率で比較した場合、より低いメタン収率(例えば、1重量%未満)によって、水素化分解と区別される。n−パラフィン選択的水素化変換は、有意な量(即ち、1重量%以上)のオレフィンの非存在によって、形成される生成物の点において、通常の熱及び触媒クラッキングと区別される。
【0061】
本発明によると、炭化水素を変換するためのプロセスは、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素質供給原料とを接触させることを含める。炭化水素質供給原料は通常、約5重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、一般に約50重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、及びしばしば約80重量%を超えるC10+ノルマルパラフィンを含有する。
【0062】
本発明の一態様によると、炭化水素を水素化変換するためのプロセスは、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素質供給原料とを接触させることを含めており、ここで、ボロシリケート・モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。下位実施形態において、構造指向剤は、nが8、9、11又は12である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される。
【0063】
ボロシリケートZSM−48を含有する触媒組成物は、一般に上述されている通り、周期表の8〜10族から選択される1種又は複数の金属、例えばPt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を任意選択により含有することができる。8〜10族の金属の量は、一般に、ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブの重量に対して約0.05重量%から5重量%である。8〜10族の金属は、モレキュラーシーブ内、例えば該シーブの細孔内に分散させることができる。該触媒は、ボロシリケートZSM−48に8〜10族の金属を含浸させること、及びその後にモレキュラーシーブを焼成することによって調製することができる。
【0064】
一下位実施形態において、炭化水素質供給原料におけるC10+n−パラフィンは、該供給原料と、水素、及び酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることによって、該供給原料におけるC10+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィン生成物に変換される。非限定的な例として、該供給原料は、a)約320℃から420℃の間の温度、b)50psigから5000psigの間の圧力(1psig=6894.76Pa)、及びc)0.5から5の間のLHSVを含む条件下で、触媒と接触させることができる。本発明のプロセスは、C1〜C13のn−アルカンを含め得るアルカンの混合物を含む炭化水素変換生成物をもたらし、ここで、該生成物は、1重量%メタン未満(<)、通常<0.5重量%、及びしばしば<0.1重量%を含む。
【0065】
本発明のボロシリケートZSM−48は、イソパラフィンの最小限の形成で、炭化水素質供給原料中のC14+n−パラフィンを、より低い分子量のn−パラフィンに変換するために使用することができる。非限定的な例として、約375℃から400℃の間の温度範囲において、本発明に従って調製される触媒は、供給原料におけるC14+n−パラフィンの少なくとも約92%を変換することで、合わせたC4〜C13イソ/ノルマルアルカン(i/n)重量比が(≦)0.15と同等又はそれ未満、及び下位実施形態において(≦)0.10と同等又はそれ未満である生成物を提供する。「合わせたC4〜C13イソ/ノルマル重量比」によって、C4からC13(C4とC13を含む)の範囲にかかる生成物におけるアルカンの基に関する、ノルマルパラフィンに対するイソパラフィンの重量比を意味する。
【0066】
一実施形態において、該水素化変換プロセスに有用であるボロシリケートZSM−48は、多結晶凝集体として合成することができ、ここで、各凝集体は複数の個々の結晶(結晶子)を含む。凝集体の各個々の結晶は、少なくとも実質的に針状であってよく、各針状結晶は、約20nmから200nmの範囲における長さ、及び約5nmから約50nmの範囲における厚さを有してよい(例えば、図2及び4Bを参照のこと)。
【0067】
本発明の一態様において、n−ヘキサデカンをモデル化合物として使用することで、異性化生成物と比較した場合、より重い(例えば、C16)ノルマルパラフィン(単数又は複数)を、より軽い(例えば、C≦15)ノルマルパラフィン生成物に選択的水素化変換させる触媒を同定するための「より重い」n−アルカン「供給原料」を表すことができる。一例として、n−ヘキサデカンを使用することで、n−C16を、より低い分子量のアルカンを含み、低い又は非常に低い(例えば、≦0.5、≦0.1又は≦0.05)イソ/ノルマルアルカン(i/n)比を有する生成物に変換するn−パラフィン選択的水素化変換触媒を同定することができる(例えば、例8及び表6を参照のこと)。
【0068】
一実施形態において、ボロシリケートZSM−48を含む本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約370℃から400℃の温度で少なくとも約67%のn−C16アルカン(n−ヘキサデカン)を変換することで、≦0.09(0≦i/n≦0.09)のi/n比を有するC6アルカン生成物を含む生成物を提供する。
【0069】
一下位実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から400℃の温度で少なくとも約90%のn−ヘキサデカンを変換することで、0から0.09のi/n比を持つC6アルカン生成物を提供する。約390℃から400℃の間の温度で、n−ヘキサデカンの変換は少なくとも約96%であり、該触媒は、0から0.09のi/n比を持つC6アルカン生成物を提供する。
【0070】
別の実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から395℃の温度で少なくとも約90%のn−C16アルカンを変換することで、少なくとも約67%のC7〜C13収率を提供する。下位実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から380℃の温度で少なくとも約92%のn−C16アルカンを変換することで、0から0.04のi/n比、及び少なくとも約80%のC7〜C13収率を持つC6アルカン生成物を与える。
【0071】
炭化水素質供給原料は、固定床系、移動床系、流動床系、バッチ系、又はそれらの組合せにおいて該触媒と接触させることができる。水素化処理及び水素化クラッキングにおいて用いられるものと同様の反応器が適当である。固定床系又は移動床系のいずれかが好ましい。固定床系において、予熱供給原料は、本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブから調製された触媒の固定床を含有する少なくとも1つの反応器に入れられる。供給原料の流れは、上向き、下向き又は放射状であってよい。反応は発熱性であり、重パラフィンの含有量が高く(>50重量%)、変換率が高い(>50%)場合は特に、段間冷却が必要な場合がある。こうした冷却は、一例として、反応器床の間に冷水素を注入することによって行うことができる。反応器は、水素化分解器に通常使用される、温度、圧力及び流量を監視及び制御するための計器を装備され得る。本発明の組成物及びプロセスと連動して、複数床も使用され、ここで、2つ以上の床はそれぞれ異なる触媒組成物を含有することができ、このうち少なくとも1つは本発明のボロシリケートZSM−48を含有する。
【実施例】
【0072】
以下の例は本発明を実証するものであるが、限定するものではない。
【0073】
(例1)
n=8である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,8−ビス(トリメチルアンモニウム)オクタンヒドロキシド([OH−]=0.64mmol/g)の水溶液4.69g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水6.51gを一緒に混合した。次いでテトラホウ酸カリウム10水和物(KTB)0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ(Cabot Corporation、Boston、MA)0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを160℃の温度で乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0074】
例1のモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD、誘導結合プラズマ−発光分光法(ICP−OES)、及び走査電子顕微鏡法(SEM)によって分析した。生じた粉末XRDパターンは、図1に示されている通り、例1のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。例1の生成物によって表示された並外れて広いピークは、従来の(即ち、アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合、結晶骨格の比較的高いB2O3含有量、及び/又はボロシリケートZSM−48の個々の結晶の並外れて小さい大きさに関連し得る。例1のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって61であると決定された。図2は例1のボロシリケートZSM−48生成物の走査電子顕微鏡写真であり、ボロシリケートZSM−48の多結晶凝集体を示しており、ここで、各凝集体は、長さが約200nm未満、及び厚さが約5nmから50nmの範囲の個々の針状結晶から構成されている。
【0075】
(例2)
n=9である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,9−ビス(トリメチルアンモニウム)ノナンヒドロキシド([OH−]=0.44mmol/g)の水溶液6.87g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水4.33gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを160℃の温度で乾燥器のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0076】
生じた粉末XRDパターンは、図3に示されている通り、例2のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。再度、XRDパターンは、従来の(アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを表示した(例えば、図7を参照のこと)。例2のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって80であると決定された。図4A及び4Bは、例2において調製されたボロシリケートZSM−48の小さな結晶形態の各SEM画像である。例2のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブ生成物が多結晶凝集体の形態であり、各凝集体が約0.5μmから2μmの範囲の直径を有し、100nm未満の長さ、及び約5nmから50nmの範囲の厚さを有する個々の結晶から構成されていたことを、図4A及び4Bから認めることができる。
【0077】
(例3)
n=10である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,10−ビス(トリメチルアンモニウム)デカンジブロマイド0.63g、1NのKOH3.00g及び脱イオン水7.80gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。例3のモレキュラーシーブ生成物は、粉末XRDデータからボロシリケートZSM−48として同定され、例2のものと広く同様であった。
【0078】
0.035gのKTBの代わりに0.070gのKTBを使用して、例3の調製を反復した結果、広く同様であった。混合物中のホウ素濃度(0.070gKTB)が高い方の調製物は、約21度でピークの僅かな広幅化を示し、B含有量の増加とともに、結晶の小さい方の針の長さと一致した。
【0079】
(例4)
n=11である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,11−ビス(トリメチルアンモニウム)ウンデカンジブロマイド0.65g、1NのKOH3.00g及び脱イオン水7.80gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで7日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0080】
例4のモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD、ICP−OES、及びSEMによって分析した。生じた粉末XRDパターンは、図5に示されている通り、例4のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。再度、例4の生成物のXRDパターンは、従来の(アルミノシリケート又はオールシリカ)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを表示した。例4のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって87であると決定された。図6は、例4のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブ生成物のSEMであり、それぞれが100nm未満の長さであり、約5nmから50nmの範囲の厚さを有する個々の結晶から構成されている多結晶凝集体の形態における生成物を示している。
【0081】
(例5)
n=12である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,12−ビス(トリメチルアンモニウム)ドデカンヒドロキシド([OH−]=0.64mmol/g)の水溶液4.69g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水6.49gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0082】
(例6)
例5の教示を、中間量(0.07g)のKTBを使用して反復した。例5の教示を、より大きい量(1.05g)のKTBを使用して反復した。
【0083】
例5及び6の生じたモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD及びSEMによって分析した。例5及び6に関する生じた粉末XRDパターンは、図7に表示されており、例5及び6のそれぞれのモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。図7の3つのXRDトレースは、0.035g(下部トレース)、0.07g(中間トレース)及び1.05g(上部トレース)のKTBを使用する、例5及び6からの3種の調製物に対応する。例5及び6の生成物のXRDパターンが、従来の(アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを示したことを、図7から認めることができる。反応混合物のホウ素濃度が増加されるにつれて、下部トレースの上向きから、XRDパターンの特徴の広幅化の傾向があることも、図7から認めることができる。
【0084】
例5及び6において調製されたB−ZSM−48のXRDパターンにおける広いピークは、各調製物の小さな結晶の大きさと一致する。図8A、8B及び8Cは、それぞれ、0.035g、0.07g及び1.05gのKTBを使用する例5及び6からの生成物ボロシリケートZSM−48を示すSEMである。それぞれの場合において、B−ZSM−48材料の多結晶凝集体は直径が約1μmであり、一方各凝集体は、微細針の形態における個々の結晶(結晶子)を含んでいた。各個々の針状結晶は、約5nmから50nmの範囲の厚さを有していた。
【0085】
(例7)
白金含浸ボロシリケートZSM−48(Pt/B−ZSM−48)の合成
例1の固体生成物を、マッフル炉中にて2%酸素/98%窒素の雰囲気下で焼成し、1℃/分の速度で595℃に加熱し、595℃で5時間保持した。焼成モレキュラーシーブを次いで、以下の通りに、アンモニウム形態に交換した。交換されるモレキュラーシーブの質量と同等の硝酸アンモニウムの量を、モレキュラーシーブの質量の10倍(10X)の脱イオン水の量中に完全に溶解した。モレキュラーシーブを次いで溶液に添加し、懸濁液をガラスバイアル中に密封し、乾燥器内にて95℃で終夜加熱した。バイアルを次いで乾燥器から除去し、モレキュラーシーブを濾過によって回収した。アンモニウム交換溶液を調製するために使用される脱イオン水の量の少なくとも10倍(10X)である脱イオン水の量で、モレキュラーシーブを洗浄した。アンモニウム交換手順を同じモレキュラーシーブで反復し、その後アンモニウム交換モレキュラーシーブを乾燥器内にて95℃で終夜乾燥させた。
【0086】
アンモニウム交換ボロシリケートZSM−48に、次いで、以下の通りに白金を含浸させた。該試料を水中に懸濁し(1gのB−ZSM−48当たり9gの水)、ボロシリケートZSM−48の乾燥重量に対して0.5重量%のPtを提供する濃度でPt(NH3)4(NO3)2の溶液を、懸濁液に添加した。0.15N水酸化アンモニア溶液をゆっくり添加することによって、pHをpH約9に調節し、懸濁液を48時間100℃で撹拌した。冷却した後、混合物をガラスフリットに通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、120℃で乾燥させた。該試料を次いで、温度を300℃に空気中でゆっくり増加させることによって焼成し、温度を300℃で3時間保持した。
【0087】
(例8)
Pt/B−ZSM−48上でのn−ヘキサデカンの水素化変換
例7に従って調製された白金含浸ボロシリケートZSM−48(Pt/B−ZSM−48)を、以下の条件下でn−ヘキサデカンの選択的水素化変換に使用した。供給原料を予備加熱するために触媒の上流にアランダムを装填した0.25インチの外径のステンレス鋼反応器チューブによって、0.5gのPt/B−ZSM−48を長さ3フィートの中央に装填した(ボロシリケートZSM−48触媒をチューブの中央に装填し、長さを約1インチから2インチに引き伸ばした)(全圧=1200psig(1psig=6894.76Pa)、水素下降流量=160mL/分(1大気圧及び25℃で測定した場合)、下降流液供給量=1mL/時)。全ての材料を最初に、流れる水素中にて約300℃で終夜還元した。
【0088】
生成物を、オンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によって30分毎に1回分析した。GCからの生データを自動データ回収/プロセッシングシステムによって回収し、炭化水素変換を生データから算出した。次の設定の測定用に温度範囲を決定するため、触媒を約315℃で初めに試験した。温度を調節することで、80%未満の変換率にした。次いで、変換が80%を上回るまで、温度を約5.6℃(10°F)ずつ上昇させた。8つのオンライン試料を各温度で回収した。変換を、n−C16からn−C16未満の炭素数を持つ生成物への変換と定義し、したがって、イソ−C16異性体は変換生成物として計上しなかった。収率は、n−C16以外の重量パーセント材料として表し、イソ−C16を収率生成物として含めた。
【0089】
結果を下記表6に示す。67〜92%(371℃〜377℃)のn−C16変換率で、本発明のボロシリケートZSM−48が、C4〜C10の範囲にわたって非常に低い(≦0.04)i/n比で、n−C16供給原料から、より軽い比較的大きな(C7〜C13)n−アルカン生成物への変換に良好な選択性を示した(74〜85%の収率)ことを認めることができる。
【0090】
例8のn−ヘキサデカン選択的水素化変換試験の目的で、Pt/B−ZSM−48触媒n−C16変換プロセスの「n−パラフィン選択性」を、変換された正味n−C16に対する、より軽い(即ち、C≦15)ノルマルパラフィン生成物の比率として定義することができる。したがって、
n−パラフィン選択性=(正味ノルマルパラフィン生成物C≦15)×100
供給原料において消費された正味ノルマルC16
【0091】
上記の定義に基づいて、より軽いn−パラフィン生成物へのn−C16変換に対する触媒の選択性は、約310℃から400℃の温度範囲全体にわたって76%を超えており(データは表6に示されていない)、選択性は約377℃から400℃の温度範囲にわたって>96%であった。
【表7】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロシリケートZSM−48、ボロシリケートZSM−48を調製するための方法、及びボロシリケートZSM−48の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ノルマルパラフィン(n−パラフィン)が豊富であるC5+液体は、溶媒、エチレン生成用原料油、ジェット燃料及びジェット燃料ブレンド成分、ディーゼル燃料及びディーゼル燃料ブレンド成分、並びに潤滑剤を作製するための異性化用原料油などとしての使用を含めて、いくつかの適用に理想的に適している。
【0003】
歴史的には、ノルマルパラフィンが豊富であるC5+液体は、石油など混合物由来のノルマルパラフィンを選択的に抽出することによって調製されてきた。この操作は比較的高価であり、原料油中のノルマルパラフィンの含有量に制限される。
【0004】
ノルマルパラフィンは、フィッシャー・トロプシュプロセスにおいて生成することもできる。しかし、フィッシャー・トロプシュプロセスは、上記の適用のための使用範囲を外れ得る重生成物も発生させる。これらの重生成物は、従来の酸性触媒上で水素化クラッキングすることによって、より軽い生成物に変換されると、イソパラフィン豊富な生成物が、所望のノルマルパラフィン豊富な生成物の代わりに得られる。
【0005】
したがって、n−パラフィン選択的である触媒を含めて、炭化水素変換プロセスにおける使用に適当な新規の触媒組成物が引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,972,204号
【特許文献2】米国特許第6,960,327号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0032692号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)
【非特許文献2】「ゼオライト材料のZSM−48ファミリーにおける構造的不規則(The Structural Disorder in the ZSM−48 Family of Zeolite Materials)」Acta Crystallographica、A58(別冊)、C41(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが提供される。
【0009】
本発明は、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによってボロシリケートZSM−48を調製するための方法も含める。
【化1】
式中、nは8から12(8と12を含む)の整数である。
【0010】
本発明は、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に、本明細書において下記表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48も含めており、ここで、該モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12(8と12を含む)の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。
【0011】
本発明は、合成されたまま及び無水状態で、モル比を単位として、以下の通りの組成を有するボロシリケートZSM−48も含める。
【表1】
式中、Qは、構造(1)によって表される構造指向剤である。
【0012】
形成されるモレキュラーシーブが中間材料である場合、本発明のプロセスは、目的のモレキュラーシーブを達成するため、さらなる合成後プロセス(post-synthesis processing)も含める。
【0013】
別の態様において、本発明は、炭化水素質供給原料と、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることによって、炭化水素を変換するためのプロセスを含める。
【0014】
別の態様において、本発明は、炭化水素を水素化変換するためのプロセスを提供し、該プロセスは、炭化水素質供給原料と、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に、本明細書において下記の表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることを含み、ここで、該モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12(8と12を含む)の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。
【0015】
本発明によると、供給原料と、水素及び酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48を含有するn−パラフィン選択的水素化変換触媒とを接触させることによって、炭化水素質供給原料中のC10+n−パラフィンを、該供給原料中のC10+n−パラフィンよりも分子量が低いn−パラフィン生成物に選択的に水素化変換するためのプロセスがさらに提供される。非限定的な例として、供給原料は、以下の条件下:約320℃から420℃の温度、50psigから5000psigの間の圧力(1psig=6894.76Pa)、及び0.5から5の間の液空間速度(LHSV)で触媒と接触させることができる。炭化水素質供給原料は、通常約5重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、一般に約50重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、及びしばしば約80重量%を超えるC10+ノルマルパラフィンを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の例1に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】本発明の例1に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4A】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4B】本発明の例2に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6A】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6B】本発明の例4に従って調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図8A】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8B】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8C】本発明の例5及び6に従って、3つの異なる濃度のホウ素で調製されたボロシリケートZSM−48の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ボロシリケートZSM−48、ボロシリケートZSM−48を調製するための方法、及びボロシリケートZSM−48の使用を対象とする。本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブは小結晶形で調製することができ、i−パラフィンの最小限の形成で、より重いn−パラフィンを、より軽いn−パラフィン生成物に選択的水素化変換するのに有用である。
【0018】
導入
「活性供給源」という用語は、反応することができ、モレキュラーシーブ構造に組み込まれてよい形態で、少なくとも1種の元素を供給することが可能な試薬又は前駆体材料を意味する。「供給源」及び「活性供給源」という用語は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0019】
「周期表」という用語は、2007年6月22日付のIUPAC元素周期表のバージョンを指し、周期表の族の番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されている通りである。
【0020】
「モレキュラーシーブのZSM−48ファミリー」及び「ZSM−48」という用語は同義であり、Lobo及び共同研究者によって「ゼオライト材料のZSM−48ファミリーにおける構造的不規則(The Structural Disorder in the ZSM−48 Family of Zeolite Materials)」Acta Crystallographica、A58(別冊)、C41(2002)に記載されている通り、T10環窓を持つ縮合T6環の巻かれた蜂の巣様のシートの管状細孔から作られた層を含有する一連の不規則なモレキュラーシーブを指す。
【0021】
「水素化変換」という用語は、大気圧を超える圧力にて水素の存在下で操作し、異性化が最小でありメタンが過剰に形成することなくC10+ノルマルパラフィンを、より低い分子量のn−パラフィンに変換する触媒プロセスを指す。
【0022】
「炭化水素変換条件」という用語は、本明細書において、炭化水素質供給原料中の炭化水素を他の化学実体に触媒変換させるのを可能にする適当な温度、圧力及び触媒組成など物理的及び/又は化学的パラメーターの1つ又は複数の組を指すのに使用することができる。
【0023】
イソ−パラフィン対ノルマルパラフィン比(i/n比)は、別段の注記がない限り重量比を指す。
【0024】
許可される場合、この出願において引用されている全ての出版物、特許及び特許出願は、こうした開示が本発明と矛盾していない範囲で参照によりそれらの全体を本明細書に組み込む。
【0025】
別段の指定がない限り、個々の成分又は成分の混合物が選択され得る、元素、材料又は他の成分の属の記述は、列挙されている成分及びそれらの混合物の全ての可能な下位属の組合せを含めることが意図されている。また、「含める」及びその変形は非限定的であることが意図されており、一覧における品目の記述は、本発明の材料、組成物及び方法にも有用であり得る他の類似の品目を排除しない。
【0026】
ボロシリケートZSM−48の合成
反応混合物
一般に、本発明のボロシリケートZSM−48(B−ZSM−48)は、
(a)(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)以下の構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤
【化2】
(式中、nは8から12の整数である)、並びに(6)水を含有する反応混合物を形成することと、
(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によって調製することができる。一下位実施形態において、構造指向剤は、nが8、9、11又は12である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される。
【0027】
ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比を単位として、下記表1に同定されている。
【表2】
表中、Mは周期表の1族及び2族の元素から選択され、Qは、nが8から12の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤である。
【0028】
本発明において有用な酸化ケイ素の供給源として、煙霧シリカ、沈殿シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラ−アルキルオルトシリケート(例えばテトラエチルオルトシリケート)及び水酸化シリカを挙げることができる。本発明において有用であり得る酸化ホウ素の供給源として、ホウケイ酸ガラス、アルカリボレート、ホウ酸、ホウ酸エステル、及び特定のモレキュラーシーブが挙げられる。酸化ホウ素の供給源の非限定的な例として、テトラホウ酸カリウム10水和物及びホウ素ベータモレキュラーシーブ(B−ベータモレキュラーシーブ)が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載されている各実施形態では、モレキュラーシーブ反応混合物は、1種を超える供給源によって供給され得る。また、2つ以上の反応成分が1種の供給源によって提供され得る。一例として、ボロシリケート・モレキュラーシーブは、1999年10月26日にCormaらに発行された米国特許第5,972,204号において教示されている通り、ホウ素含有ベータモレキュラーシーブから合成することができる。
【0030】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のいずれかで調製することができる。本発明のボロシリケートZSM−48の結晶の大きさ、結晶形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件で変動し得る。
【0031】
上述されている通り、反応混合物は、周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源(本明細書において「M」と称することがある)を含めることができる。元素Mの供給源は、結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物を含むことができる。M含有化合物には、それらの酸化物、水酸化物、ナイトレート、サルフェート、ハロゲン化物、オキサレート、シトレート及びアセテートを含めることができる。一下位実施形態において、周期表の1族又は2族の元素は、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)であり得る。下位実施形態において、M含有化合物は、カリウムの臭化物又はヨウ化物などアルカリ金属ハロゲン化物を含むことができる。
【0032】
比較的少量のアルミニウム(Al)が、反応混合物の1種又は複数の成分の痕跡量の異物として、特定の反応混合物中に存在することもある。好ましくは、反応混合物におけるAlの存在を最小限に抑えるか、又は回避する。
【0033】
反応混合物のSDAジカチオンは、通常、モレキュラーシーブの形成に有害ではない任意のアニオンであってよいアニオンに関連する。代表的なアニオンとして、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、アセテート、サルフェート、テトラフルオロボレート及びカルボキシレートなどが挙げられる。
【0034】
B−ZSM−48の結晶化
実際に、本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブは、(a)上述されている通りに反応混合物を調製すること、及び(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で反応混合物を維持することによって調製することができる。
【0035】
反応混合物は、モレキュラーシーブの結晶が形成されるまで高温で保持される。水熱結晶化は、圧力下で、及び反応混合物が自生圧力を受けるように一般にオートクレーブ中にて、約140℃から180℃の間の温度で一般に行われる。
【0036】
反応混合物は、結晶化ステップ中に穏やかな撹拌又は激しい撹拌を受けてよい。本明細書に記載されているボロシリケートZSM−48が、非晶質材料、該モレキュラーシーブと一致していない骨格トポロジーを有する相及び/又は他の不純物(例えば、有機炭化水素)など痕跡量の不純物を含有し得ることは当業者によって理解されよう。
【0037】
水熱結晶化ステップ中、ボロシリケートZSM−48の結晶は、反応混合物から自然発生的に核を発生することが可能であり得る。種子材料としてモレキュラーシーブの結晶を使用することは、完全な結晶化が生じるのに必要な時間を減少させるのに有利であり得る。さらに、種結晶を播種することは、任意の所望でない相におけるモレキュラーシーブの核発生及び/又は形成を促進することによって、得られる生成物の純度の増加に至ることがある。種結晶として使用される場合、種子結晶は通常、反応混合物に使用される二酸化ケイ素の供給源重量の約0.5%から5%の間の量で添加される。
【0038】
モレキュラーシーブ結晶が形成すると、固体生成物は、濾過などの機械的分離技術によって反応混合物から分離させることができる。結晶を水洗浄し、次いで乾燥させることで、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶が得られる。乾燥ステップは、大気圧又は真空下で行うことができる。
【0039】
B−ZSM−48の合成後処理
本発明のボロシリケートZSM−48は合成されたままで使用することができるが、通常、モレキュラーシーブは熱処理される(焼成される)。「合成されたまま」という用語は、SDAカチオン及び/又は元素Mの除去前の、結晶化後の形態におけるボロシリケートZSM−48を指す。SDAは、好ましくは酸化雰囲気(例えば、空気、又は0kPaを超える酸素分圧の別のガス)中にて、SDAをモレキュラーシーブから除去するのに十分な温度(当業者によって容易に決定可能)での熱処理(例えば、焼成)によって除去することができる。SDAは光分解技術によって、例えば、実質的に2005年11月1日にNavrotsky及びParikhに発行された米国特許第6,960,327号に記載されている通り、有機物質をモレキュラーシーブから選択的に除去するのに十分な条件下で、可視光より短い波長を有する光線又は電磁放射線に、SDA含有モレキュラーシーブ生成物を曝露することによって除去することもできる。
【0040】
一般に、イオン交換によってボロシリケートZSM−48からアルカリ金属カチオンを除去すること、及びアルカリ金属カチオンを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンと置き換えることが望ましい場合もある。ボロシリケートZSM−48は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os又はそれらの組合せを含めて、周期表の8〜10族から選択される金属など様々な金属を含浸させることもできる。
【0041】
イオン交換に続いて、モレキュラーシーブは通常、水で洗浄し、約90℃から120℃の範囲の温度で乾燥させる。洗浄した後、モレキュラーシーブを空気、水蒸気又は不活性ガス中にて、約315℃から650℃の範囲の温度で、約1時間から24時間、又はそれ以上の範囲の時間焼成することで、炭化水素変換プロセスに特に有用な触媒活性生成物を生成することができる。
【0042】
生成物の特性決定
本発明に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、モル比を単位として表2に示されている通り、合成されたまま及び無水状態の組成を有し、表中、Q及びMは上述の通りである。
【表3】
【0043】
本発明のボロシリケートZSM−48は通常、連晶(intergrown crystals)の球状又は卵形の凝集体として結晶化し、ここで、凝集体は、2μm未満及びしばしば1μm未満の直径を有する。一部の実施形態において、凝集体内の個々の結晶は、長さが約20nmから200nmの範囲及び厚さが約5nmから50nmの範囲であり、大部分は約5nmから20nmの範囲の厚さを有する、少なくとも実質的に針状であり得る。
【0044】
本明細書に記載されている方法によって合成されるボロシリケートZSM−48型モレキュラーシーブは、それらの粉末XRDパターンを特徴とする。表3の粉末XRD線は、本発明に従って作製された合成されたままのボロシリケートZSM−48型モレキュラーシーブを代表する。
【表4】
【0045】
本明細書に提示されている粉末XRDパターン及びデータは、標準的技術によって回収された。放射線はCuK−α放射線であった。ピークの高さ及び位置は、θがブラッグ角である2θの関数として、ピークの絶対強度から読み取られており、記録線に対応するオングストロームの面間隔であるdを算出することができる。
【0046】
表4の粉末XRDデータは、本発明に従って作製された焼成ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブの代表的なものである。
【表5】
【0047】
回折パターンにおける軽微な変動は、格子定数における変化による、特別なB−ZSM−48試料の骨格種のモル比における変動に起因し得る。さらに、十分小さな結晶はピークの形状及び強度に影響を及ぼし、有意なピーク広幅化に至る(例えば、図7を参照のこと)。回折パターンにおける軽微な変動は、モレキュラーシーブの調製で使用される有機テンプレートの構造における変動に起因することもある。焼成も粉末XRDパターンにおける軽微なシフトを引き起こすことがある。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本結晶格子構造は変化しないままである。
【0048】
ボロシリケートZSM−48の適用
本発明に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、例えば、炭化水素変換反応など様々な反応における触媒として様々に適用され得る。一実施形態において、本発明のボロシリケートZSM−48は、重n−パラフィンを、より軽いn−パラフィン生成物に選択的に水素化変換するために使用される。
【0049】
B−ZSM−48を含有する触媒組成物
本発明のボロシリケートZSM−48を含有する触媒組成物は、重量パーセントを単位として、表5に示されている通りの組成を有し得る。
【表6】
【0050】
触媒としての商業的応用に関し、ボロシリケートZSM−48を適当な大きさ及び形状に形成することができる。この形成は、ペレット化、押出し及びそれらの組合せなどの技術によって行うことができる。押出しによって形成する場合、押し出される材料は、シリンダ、トリローブ、溝付きであってよいか、又は軸対称であり得る、B−ZSM−48押出し生成物の内面に対する供給材料の拡散及び接近を促進する他の形状を有する。
【0051】
本発明のプロセスに使用するための触媒を調製する際、B−ZSM−48結晶は、温度及び炭化水素変換プロセスに用いられる他の条件に耐性のバインダーと複合することができる。また、強酸性を触媒に付与しないバインダーを使用することが好ましい。こうしたバインダーとして、活性及び不活性な材料を挙げることができる。頻繁に、バインダーを添加することで触媒の粉砕強度を向上させる。
【0052】
バインダー材料は、周期表の4族及び14族の元素の耐火性酸化物の中から選択することができる。これらのうち、シリコン、チタン及びジルコニウムの酸化物が注目に値し、シリカ、特に低級アルミニウムシリカが特に有用である。これら及び他の酸化物の組合せも有用であり得る。例えば、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、チタニア−ジルコニア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアを使用することができるが、但し、これらの組合せが強酸性を持つ材料を形成しないという条件である。これらの耐火性酸化物は結晶質若しくは非晶質であってよいか、又はゼラチン状沈殿物、コロイド、ゾル若しくはゲルの形態であってよい。シリカゾルの形態におけるシリカは、好ましいバインダーである。好ましいシリカゾルは約30重量%のシリカ及び直径約7nm〜9nmの粒径を有し、これは、良好な摩滅抵抗性及び優れた粉砕強度を有する触媒をもたらす。
【0053】
ペレット又は押出物をモレキュラーシーブから形成することは、一般に、バインダーに加えて押出し助剤及び粘度調整剤の使用を伴う。これらの添加剤は通常、セルロース系材料、例えばMETHOCELセルロースエーテル(Dow Chemical Co.)、エチレングリコール及びステアリン酸などの有機化合物である。多くのこうした化合物は、当技術分野において知られている。これらの添加剤がペレット化後に、有害な残留物、即ち、望ましくない反応性を持つもの又はモレキュラーシーブの細孔を閉塞し得るものをもたらさないことが重要である。本発明には、こうした残留物が触媒の強酸官能基を作り出さないことが特に望ましい。上記されている洗浄は、低濃度のこれらの材料を除去する。押出し助剤からの残留物は、好ましくは、10分の数パーセント未満、より好ましくは0.1重量%未満である。
【0054】
触媒組成物を調製するための方法は当業者によく知られており、噴霧乾燥、ペレット化、押出し、及び様々な球体作製技術などの従来技術が挙げられる。
【0055】
該触媒組成物におけるB−ZSM−48及びバインダーの相対的比率は広範に変動し得る。一般に、該触媒組成物のB−ZSM−48含有量は、乾燥複合体の約1重量パーセント(重量%)から約99重量パーセント(重量%)の間の範囲であり、一般に、乾燥複合体の約5重量%から約95重量%、及びより通常には乾燥複合体の約50重量%から85重量%の範囲である(例えば、上述の表5を参照のこと)。
【0056】
触媒は任意選択により、周期表の8〜10族から選択される1種又は複数の金属を含有することができる。一下位実施形態において、該触媒は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を含有する。別の下位実施形態において、該触媒は白金(Pt)を含有する。本明細書に記載されている各実施形態に関して、触媒の8〜10族の金属含有量は、一般に、0重量%から約10重量%、通常約0.05重量%から約5重量%、一般に約0.1重量%から約3重量%、及びしばしば約0.3重量%から約1.5重量%の範囲であってよい。溶液における正荷電白金錯イオンを形成する白金化合物は、該モレキュラーシーブと組み合わせる白金の好ましい供給源である。白金テトラアミン塩化物及び白金テトラアミン硝酸塩の両方が、本発明のプロセスに使用される触媒を調製する際の使用に適当である。触媒炭化水素変換用の白金含浸モレキュラーシーブの調製は、同一出願人による米国特許出願公開第2007/0032692号に開示されており、その開示内容を参照により本明細書にその全体を組み込む。
【0057】
追加として、他の元素も、周期表の8〜10族から選択される金属と組み合わせて使用することができる。こうした他の元素の例として、Sn、Re及びWが挙げられる。本発明の触媒材料に使用することができる元素の組合せの例として、限定されることなく、Pt/Sn、Pt/Pd、Pt/Ni及びPt/Reが挙げられる。これらの金属又は他の元素は、イオン交換、細孔充填含浸又は初期湿潤含浸などの様々な従来技術の1つ又は複数を使用して、B−ZSM−48複合体中に容易に導入することができる。初期湿潤含浸方法は、本発明下の特定の適用に好まれる場合がある。しかし含浸技術に関わらず、該金属、例えば白金は、該モレキュラーシーブの中の金属の均一な分散をもたらす方法でB−ZSM−48中に組み込まれる。これに関して、クエン酸などのキレート試薬を使用することで、金属の分散を促進することができる。触媒活性の金属(単数又は複数)への言及は、元素状態における、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物及びカルボキシレートなどの一部の形態におけるこうした金属(単数又は複数)を包含することが意図されている。
【0058】
より重いn−パラフィンの、n−パラフィン豊富なより軽い生成物への水素化変換
本明細書に記載されている新規な方法に従って調製されるボロシリケートZSM−48は、イソパラフィンの最小限の形成で、重ノルマルパラフィンを、より軽いノルマルパラフィン生成物に選択的に水素化変換するのに有用である。
【0059】
本発明の触媒炭化水素変換プロセスは、本明細書においてn−パラフィン選択的水素化変換と称されることがある。対照的に、「クラッキング」は、熱クラッキング、触媒クラッキング、水素化クラッキング及び水素化分解を含めて、より小さい成分に分割することによって炭化水素の分子量を減少させる全てのプロセス及び反応を指す広義語である。これらのプロセスのうち、熱クラッキング及び触媒クラッキングは添加水素を使用しないが、水素化クラッキング及び水素化分解は水素を使用する。
【0060】
水素も使用する、本明細書に記載されているn−パラフィン選択的水素化変換プロセスは、より低い(通常、かなり低い)イソ/ノルマルアルカン(i/n)比を有するパラフィン生成物の形成によって、水素化クラッキング及び水素化分解と区別することができ、n−パラフィン選択的水素化変換はさらに、高変換率で比較した場合、より低いメタン収率(例えば、1重量%未満)によって、水素化分解と区別される。n−パラフィン選択的水素化変換は、有意な量(即ち、1重量%以上)のオレフィンの非存在によって、形成される生成物の点において、通常の熱及び触媒クラッキングと区別される。
【0061】
本発明によると、炭化水素を変換するためのプロセスは、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素質供給原料とを接触させることを含める。炭化水素質供給原料は通常、約5重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、一般に約50重量%を超えるC10+ノルマルパラフィン、及びしばしば約80重量%を超えるC10+ノルマルパラフィンを含有する。
【0062】
本発明の一態様によると、炭化水素を水素化変換するためのプロセスは、炭化水素変換条件下で、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素質供給原料とを接触させることを含めており、ここで、ボロシリケート・モレキュラーシーブは、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)nが8から12の整数である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される。下位実施形態において、構造指向剤は、nが8、9、11又は12である構造(1)によって表されるジカチオンから選択される。
【0063】
ボロシリケートZSM−48を含有する触媒組成物は、一般に上述されている通り、周期表の8〜10族から選択される1種又は複数の金属、例えばPt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を任意選択により含有することができる。8〜10族の金属の量は、一般に、ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブの重量に対して約0.05重量%から5重量%である。8〜10族の金属は、モレキュラーシーブ内、例えば該シーブの細孔内に分散させることができる。該触媒は、ボロシリケートZSM−48に8〜10族の金属を含浸させること、及びその後にモレキュラーシーブを焼成することによって調製することができる。
【0064】
一下位実施形態において、炭化水素質供給原料におけるC10+n−パラフィンは、該供給原料と、水素、及び酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有し、焼成後に表4の粉末X線回折(XRD)線を有するボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブとを接触させることによって、該供給原料におけるC10+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィン生成物に変換される。非限定的な例として、該供給原料は、a)約320℃から420℃の間の温度、b)50psigから5000psigの間の圧力(1psig=6894.76Pa)、及びc)0.5から5の間のLHSVを含む条件下で、触媒と接触させることができる。本発明のプロセスは、C1〜C13のn−アルカンを含め得るアルカンの混合物を含む炭化水素変換生成物をもたらし、ここで、該生成物は、1重量%メタン未満(<)、通常<0.5重量%、及びしばしば<0.1重量%を含む。
【0065】
本発明のボロシリケートZSM−48は、イソパラフィンの最小限の形成で、炭化水素質供給原料中のC14+n−パラフィンを、より低い分子量のn−パラフィンに変換するために使用することができる。非限定的な例として、約375℃から400℃の間の温度範囲において、本発明に従って調製される触媒は、供給原料におけるC14+n−パラフィンの少なくとも約92%を変換することで、合わせたC4〜C13イソ/ノルマルアルカン(i/n)重量比が(≦)0.15と同等又はそれ未満、及び下位実施形態において(≦)0.10と同等又はそれ未満である生成物を提供する。「合わせたC4〜C13イソ/ノルマル重量比」によって、C4からC13(C4とC13を含む)の範囲にかかる生成物におけるアルカンの基に関する、ノルマルパラフィンに対するイソパラフィンの重量比を意味する。
【0066】
一実施形態において、該水素化変換プロセスに有用であるボロシリケートZSM−48は、多結晶凝集体として合成することができ、ここで、各凝集体は複数の個々の結晶(結晶子)を含む。凝集体の各個々の結晶は、少なくとも実質的に針状であってよく、各針状結晶は、約20nmから200nmの範囲における長さ、及び約5nmから約50nmの範囲における厚さを有してよい(例えば、図2及び4Bを参照のこと)。
【0067】
本発明の一態様において、n−ヘキサデカンをモデル化合物として使用することで、異性化生成物と比較した場合、より重い(例えば、C16)ノルマルパラフィン(単数又は複数)を、より軽い(例えば、C≦15)ノルマルパラフィン生成物に選択的水素化変換させる触媒を同定するための「より重い」n−アルカン「供給原料」を表すことができる。一例として、n−ヘキサデカンを使用することで、n−C16を、より低い分子量のアルカンを含み、低い又は非常に低い(例えば、≦0.5、≦0.1又は≦0.05)イソ/ノルマルアルカン(i/n)比を有する生成物に変換するn−パラフィン選択的水素化変換触媒を同定することができる(例えば、例8及び表6を参照のこと)。
【0068】
一実施形態において、ボロシリケートZSM−48を含む本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約370℃から400℃の温度で少なくとも約67%のn−C16アルカン(n−ヘキサデカン)を変換することで、≦0.09(0≦i/n≦0.09)のi/n比を有するC6アルカン生成物を含む生成物を提供する。
【0069】
一下位実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から400℃の温度で少なくとも約90%のn−ヘキサデカンを変換することで、0から0.09のi/n比を持つC6アルカン生成物を提供する。約390℃から400℃の間の温度で、n−ヘキサデカンの変換は少なくとも約96%であり、該触媒は、0から0.09のi/n比を持つC6アルカン生成物を提供する。
【0070】
別の実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から395℃の温度で少なくとも約90%のn−C16アルカンを変換することで、少なくとも約67%のC7〜C13収率を提供する。下位実施形態において、本発明のn−パラフィン選択的水素化変換触媒は、例8において定義した通りの条件下、及び約375℃から380℃の温度で少なくとも約92%のn−C16アルカンを変換することで、0から0.04のi/n比、及び少なくとも約80%のC7〜C13収率を持つC6アルカン生成物を与える。
【0071】
炭化水素質供給原料は、固定床系、移動床系、流動床系、バッチ系、又はそれらの組合せにおいて該触媒と接触させることができる。水素化処理及び水素化クラッキングにおいて用いられるものと同様の反応器が適当である。固定床系又は移動床系のいずれかが好ましい。固定床系において、予熱供給原料は、本発明のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブから調製された触媒の固定床を含有する少なくとも1つの反応器に入れられる。供給原料の流れは、上向き、下向き又は放射状であってよい。反応は発熱性であり、重パラフィンの含有量が高く(>50重量%)、変換率が高い(>50%)場合は特に、段間冷却が必要な場合がある。こうした冷却は、一例として、反応器床の間に冷水素を注入することによって行うことができる。反応器は、水素化分解器に通常使用される、温度、圧力及び流量を監視及び制御するための計器を装備され得る。本発明の組成物及びプロセスと連動して、複数床も使用され、ここで、2つ以上の床はそれぞれ異なる触媒組成物を含有することができ、このうち少なくとも1つは本発明のボロシリケートZSM−48を含有する。
【実施例】
【0072】
以下の例は本発明を実証するものであるが、限定するものではない。
【0073】
(例1)
n=8である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,8−ビス(トリメチルアンモニウム)オクタンヒドロキシド([OH−]=0.64mmol/g)の水溶液4.69g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水6.51gを一緒に混合した。次いでテトラホウ酸カリウム10水和物(KTB)0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ(Cabot Corporation、Boston、MA)0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを160℃の温度で乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0074】
例1のモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD、誘導結合プラズマ−発光分光法(ICP−OES)、及び走査電子顕微鏡法(SEM)によって分析した。生じた粉末XRDパターンは、図1に示されている通り、例1のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。例1の生成物によって表示された並外れて広いピークは、従来の(即ち、アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合、結晶骨格の比較的高いB2O3含有量、及び/又はボロシリケートZSM−48の個々の結晶の並外れて小さい大きさに関連し得る。例1のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって61であると決定された。図2は例1のボロシリケートZSM−48生成物の走査電子顕微鏡写真であり、ボロシリケートZSM−48の多結晶凝集体を示しており、ここで、各凝集体は、長さが約200nm未満、及び厚さが約5nmから50nmの範囲の個々の針状結晶から構成されている。
【0075】
(例2)
n=9である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,9−ビス(トリメチルアンモニウム)ノナンヒドロキシド([OH−]=0.44mmol/g)の水溶液6.87g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水4.33gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを160℃の温度で乾燥器のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0076】
生じた粉末XRDパターンは、図3に示されている通り、例2のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。再度、XRDパターンは、従来の(アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを表示した(例えば、図7を参照のこと)。例2のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって80であると決定された。図4A及び4Bは、例2において調製されたボロシリケートZSM−48の小さな結晶形態の各SEM画像である。例2のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブ生成物が多結晶凝集体の形態であり、各凝集体が約0.5μmから2μmの範囲の直径を有し、100nm未満の長さ、及び約5nmから50nmの範囲の厚さを有する個々の結晶から構成されていたことを、図4A及び4Bから認めることができる。
【0077】
(例3)
n=10である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,10−ビス(トリメチルアンモニウム)デカンジブロマイド0.63g、1NのKOH3.00g及び脱イオン水7.80gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。例3のモレキュラーシーブ生成物は、粉末XRDデータからボロシリケートZSM−48として同定され、例2のものと広く同様であった。
【0078】
0.035gのKTBの代わりに0.070gのKTBを使用して、例3の調製を反復した結果、広く同様であった。混合物中のホウ素濃度(0.070gKTB)が高い方の調製物は、約21度でピークの僅かな広幅化を示し、B含有量の増加とともに、結晶の小さい方の針の長さと一致した。
【0079】
(例4)
n=11である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,11−ビス(トリメチルアンモニウム)ウンデカンジブロマイド0.65g、1NのKOH3.00g及び脱イオン水7.80gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで7日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0080】
例4のモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD、ICP−OES、及びSEMによって分析した。生じた粉末XRDパターンは、図5に示されている通り、例4のモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。再度、例4の生成物のXRDパターンは、従来の(アルミノシリケート又はオールシリカ)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを表示した。例4のボロシリケートZSM−48生成物のSi/Bモル比は、ICP−OES分析によって87であると決定された。図6は、例4のボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブ生成物のSEMであり、それぞれが100nm未満の長さであり、約5nmから50nmの範囲の厚さを有する個々の結晶から構成されている多結晶凝集体の形態における生成物を示している。
【0081】
(例5)
n=12である構造(1)のSDAを使用するボロシリケートZSM−48の合成
1,12−ビス(トリメチルアンモニウム)ドデカンヒドロキシド([OH−]=0.64mmol/g)の水溶液4.69g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水6.49gを一緒に混合した。次いでKTB0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5煙霧シリカ0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。懸濁液をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、160℃で加熱された乾燥器内のスピットに置き、43rpmで8日間混合した。反応器を乾燥器から除去し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。
【0082】
(例6)
例5の教示を、中間量(0.07g)のKTBを使用して反復した。例5の教示を、より大きい量(1.05g)のKTBを使用して反復した。
【0083】
例5及び6の生じたモレキュラーシーブ生成物を、粉末XRD及びSEMによって分析した。例5及び6に関する生じた粉末XRDパターンは、図7に表示されており、例5及び6のそれぞれのモレキュラーシーブ生成物をボロシリケートZSM−48と同定した。図7の3つのXRDトレースは、0.035g(下部トレース)、0.07g(中間トレース)及び1.05g(上部トレース)のKTBを使用する、例5及び6からの3種の調製物に対応する。例5及び6の生成物のXRDパターンが、従来の(アルミノシリケート)ZSM−48と比較した場合に並外れて広いピークを示したことを、図7から認めることができる。反応混合物のホウ素濃度が増加されるにつれて、下部トレースの上向きから、XRDパターンの特徴の広幅化の傾向があることも、図7から認めることができる。
【0084】
例5及び6において調製されたB−ZSM−48のXRDパターンにおける広いピークは、各調製物の小さな結晶の大きさと一致する。図8A、8B及び8Cは、それぞれ、0.035g、0.07g及び1.05gのKTBを使用する例5及び6からの生成物ボロシリケートZSM−48を示すSEMである。それぞれの場合において、B−ZSM−48材料の多結晶凝集体は直径が約1μmであり、一方各凝集体は、微細針の形態における個々の結晶(結晶子)を含んでいた。各個々の針状結晶は、約5nmから50nmの範囲の厚さを有していた。
【0085】
(例7)
白金含浸ボロシリケートZSM−48(Pt/B−ZSM−48)の合成
例1の固体生成物を、マッフル炉中にて2%酸素/98%窒素の雰囲気下で焼成し、1℃/分の速度で595℃に加熱し、595℃で5時間保持した。焼成モレキュラーシーブを次いで、以下の通りに、アンモニウム形態に交換した。交換されるモレキュラーシーブの質量と同等の硝酸アンモニウムの量を、モレキュラーシーブの質量の10倍(10X)の脱イオン水の量中に完全に溶解した。モレキュラーシーブを次いで溶液に添加し、懸濁液をガラスバイアル中に密封し、乾燥器内にて95℃で終夜加熱した。バイアルを次いで乾燥器から除去し、モレキュラーシーブを濾過によって回収した。アンモニウム交換溶液を調製するために使用される脱イオン水の量の少なくとも10倍(10X)である脱イオン水の量で、モレキュラーシーブを洗浄した。アンモニウム交換手順を同じモレキュラーシーブで反復し、その後アンモニウム交換モレキュラーシーブを乾燥器内にて95℃で終夜乾燥させた。
【0086】
アンモニウム交換ボロシリケートZSM−48に、次いで、以下の通りに白金を含浸させた。該試料を水中に懸濁し(1gのB−ZSM−48当たり9gの水)、ボロシリケートZSM−48の乾燥重量に対して0.5重量%のPtを提供する濃度でPt(NH3)4(NO3)2の溶液を、懸濁液に添加した。0.15N水酸化アンモニア溶液をゆっくり添加することによって、pHをpH約9に調節し、懸濁液を48時間100℃で撹拌した。冷却した後、混合物をガラスフリットに通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、120℃で乾燥させた。該試料を次いで、温度を300℃に空気中でゆっくり増加させることによって焼成し、温度を300℃で3時間保持した。
【0087】
(例8)
Pt/B−ZSM−48上でのn−ヘキサデカンの水素化変換
例7に従って調製された白金含浸ボロシリケートZSM−48(Pt/B−ZSM−48)を、以下の条件下でn−ヘキサデカンの選択的水素化変換に使用した。供給原料を予備加熱するために触媒の上流にアランダムを装填した0.25インチの外径のステンレス鋼反応器チューブによって、0.5gのPt/B−ZSM−48を長さ3フィートの中央に装填した(ボロシリケートZSM−48触媒をチューブの中央に装填し、長さを約1インチから2インチに引き伸ばした)(全圧=1200psig(1psig=6894.76Pa)、水素下降流量=160mL/分(1大気圧及び25℃で測定した場合)、下降流液供給量=1mL/時)。全ての材料を最初に、流れる水素中にて約300℃で終夜還元した。
【0088】
生成物を、オンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によって30分毎に1回分析した。GCからの生データを自動データ回収/プロセッシングシステムによって回収し、炭化水素変換を生データから算出した。次の設定の測定用に温度範囲を決定するため、触媒を約315℃で初めに試験した。温度を調節することで、80%未満の変換率にした。次いで、変換が80%を上回るまで、温度を約5.6℃(10°F)ずつ上昇させた。8つのオンライン試料を各温度で回収した。変換を、n−C16からn−C16未満の炭素数を持つ生成物への変換と定義し、したがって、イソ−C16異性体は変換生成物として計上しなかった。収率は、n−C16以外の重量パーセント材料として表し、イソ−C16を収率生成物として含めた。
【0089】
結果を下記表6に示す。67〜92%(371℃〜377℃)のn−C16変換率で、本発明のボロシリケートZSM−48が、C4〜C10の範囲にわたって非常に低い(≦0.04)i/n比で、n−C16供給原料から、より軽い比較的大きな(C7〜C13)n−アルカン生成物への変換に良好な選択性を示した(74〜85%の収率)ことを認めることができる。
【0090】
例8のn−ヘキサデカン選択的水素化変換試験の目的で、Pt/B−ZSM−48触媒n−C16変換プロセスの「n−パラフィン選択性」を、変換された正味n−C16に対する、より軽い(即ち、C≦15)ノルマルパラフィン生成物の比率として定義することができる。したがって、
n−パラフィン選択性=(正味ノルマルパラフィン生成物C≦15)×100
供給原料において消費された正味ノルマルC16
【0091】
上記の定義に基づいて、より軽いn−パラフィン生成物へのn−C16変換に対する触媒の選択性は、約310℃から400℃の温度範囲全体にわたって76%を超えており(データは表6に示されていない)、選択性は約377℃から400℃の温度範囲にわたって>96%であった。
【表7】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素質供給原料をボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素変換条件下で接触させることを含む前記炭化水素質供給原料を変換するプロセスであって、前記ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有するものであって、焼成後に実質的に以下の表に示されている通りのX線回折パターンを有する、前記プロセス。
【表1】
【請求項2】
約320℃から420℃の温度、50psigから5000psigの圧力、及び0.5から5の液空間速度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
モレキュラーシーブが、モレキュラーシーブ内に分散される周期表8〜10族の金属をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
周期表8〜10族の金属が、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
周期表8〜10族の金属の量がモレキュラーシーブの重量に対して0.05重量%から5重量%である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
触媒が、モレキュラーシーブに周期表8〜10族の金属を含浸させ、その後モレキュラーシーブを焼成することによって調製される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
モレキュラーシーブが、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【化1】
【請求項8】
nが8、9、11又は12である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
供給原料が5重量%を超えるC10+n−パラフィンを含み、供給原料を水素の存在下で触媒と接触させ、供給原料中のC10+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィンを含む生成物を提供する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
370℃から400℃の間の温度で、生成物が、0から0.9(0と0.9を含む)の間のイソ/ノルマル重量比を有するC6アルカン生成物を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
供給原料がn−ヘキサデカンを含み、触媒が約375℃から395℃の温度でn−ヘキサデカンの少なくとも約90%を変換することで、少なくとも約67%のC7〜C13収率を提供する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
生成物が1重量%未満のメタンを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
供給原料がn−ヘキサデカンを含み、触媒が約375℃から400℃の間の温度でn−ヘキサデカンの少なくとも約90%を水素化変換する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
モレキュラーシーブが、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることを含むプロセスによって作製される、請求項1に記載のプロセス
【化2】
(式中、nは8から12(8と12を含む)の整数である)。
【請求項15】
供給原料中のn−パラフィンを選択的に水素化変換して、供給原料中のn−パラフィンより分子量が低いn−パラフィンを含む生成物を提供する水素化変換プロセスである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
nが8、9、11又は12である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
条件が約375℃から400℃の間の温度を含み、生成物が、0から0.09(0と0.09を含む)の間のイソ/ノルマル重量比を有するC6アルカン生成物を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
モレキュラーシーブがボロシリケートZSM−48を含み、触媒がPt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの組合せからなる群から選択される周期表8〜10族の金属をさらに含み、8〜10族の金属の量がモレキュラーシーブの重量に対して0.05重量%から5重量%の間である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
C14+n−パラフィンを含む炭化水素質供給原料を水素化変換するためのプロセスであって、水素の存在下並びに
a)約320℃から420℃の間の温度
b)約50psigから5000psigの間の圧力、及び
c)約0.5から5の間の液空間速度
を含む条件下にて、供給原料とボロシリケートZSM−48及び8〜10族の金属を含む触媒とを接触させて、供給原料中のC14+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィン生成物を含む生成物を生成し、ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素の40から400の間のモル比を有し、焼成後に実質的に以下の表に示されている通りのX線回折パターンを有する、上記プロセス。
【表2】
【請求項20】
約390℃から400℃の間の温度範囲で、触媒が供給原料中のC14+n−パラフィンの少なくとも約96%を水素化変換し、生成物が、0から0.15(0と0.15を含む)の間の合わせたC4〜C13イソ/ノルマル重量比を有する、請求項19に記載のプロセス。
【請求項1】
炭化水素質供給原料をボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブと炭化水素変換条件下で接触させることを含む前記炭化水素質供給原料を変換するプロセスであって、前記ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素のモル比が40から400の間を有するものであって、焼成後に実質的に以下の表に示されている通りのX線回折パターンを有する、前記プロセス。
【表1】
【請求項2】
約320℃から420℃の温度、50psigから5000psigの圧力、及び0.5から5の液空間速度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
モレキュラーシーブが、モレキュラーシーブ内に分散される周期表8〜10族の金属をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
周期表8〜10族の金属が、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
周期表8〜10族の金属の量がモレキュラーシーブの重量に対して0.05重量%から5重量%である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
触媒が、モレキュラーシーブに周期表8〜10族の金属を含浸させ、その後モレキュラーシーブを焼成することによって調製される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
モレキュラーシーブが、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【化1】
【請求項8】
nが8、9、11又は12である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
供給原料が5重量%を超えるC10+n−パラフィンを含み、供給原料を水素の存在下で触媒と接触させ、供給原料中のC10+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィンを含む生成物を提供する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
370℃から400℃の間の温度で、生成物が、0から0.9(0と0.9を含む)の間のイソ/ノルマル重量比を有するC6アルカン生成物を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
供給原料がn−ヘキサデカンを含み、触媒が約375℃から395℃の温度でn−ヘキサデカンの少なくとも約90%を変換することで、少なくとも約67%のC7〜C13収率を提供する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
生成物が1重量%未満のメタンを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
供給原料がn−ヘキサデカンを含み、触媒が約375℃から400℃の間の温度でn−ヘキサデカンの少なくとも約90%を水素化変換する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
モレキュラーシーブが、結晶化条件下で(1)酸化ケイ素の少なくとも1種の供給源、(2)酸化ホウ素の少なくとも1種の供給源、(3)周期表の1族又は2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)以下の構造によって表されるジカチオンから選択される構造指向剤を接触させることを含むプロセスによって作製される、請求項1に記載のプロセス
【化2】
(式中、nは8から12(8と12を含む)の整数である)。
【請求項15】
供給原料中のn−パラフィンを選択的に水素化変換して、供給原料中のn−パラフィンより分子量が低いn−パラフィンを含む生成物を提供する水素化変換プロセスである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
nが8、9、11又は12である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
条件が約375℃から400℃の間の温度を含み、生成物が、0から0.09(0と0.09を含む)の間のイソ/ノルマル重量比を有するC6アルカン生成物を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
モレキュラーシーブがボロシリケートZSM−48を含み、触媒がPt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、及びそれらの組合せからなる群から選択される周期表8〜10族の金属をさらに含み、8〜10族の金属の量がモレキュラーシーブの重量に対して0.05重量%から5重量%の間である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
C14+n−パラフィンを含む炭化水素質供給原料を水素化変換するためのプロセスであって、水素の存在下並びに
a)約320℃から420℃の間の温度
b)約50psigから5000psigの間の圧力、及び
c)約0.5から5の間の液空間速度
を含む条件下にて、供給原料とボロシリケートZSM−48及び8〜10族の金属を含む触媒とを接触させて、供給原料中のC14+n−パラフィンより分子量が低いn−パラフィン生成物を含む生成物を生成し、ボロシリケートZSM−48モレキュラーシーブが、酸化ホウ素に対する酸化ケイ素の40から400の間のモル比を有し、焼成後に実質的に以下の表に示されている通りのX線回折パターンを有する、上記プロセス。
【表2】
【請求項20】
約390℃から400℃の間の温度範囲で、触媒が供給原料中のC14+n−パラフィンの少なくとも約96%を水素化変換し、生成物が、0から0.15(0と0.15を含む)の間の合わせたC4〜C13イソ/ノルマル重量比を有する、請求項19に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公表番号】特表2013−510226(P2013−510226A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537910(P2012−537910)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053739
【国際公開番号】WO2011/056469
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053739
【国際公開番号】WO2011/056469
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】
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