説明

ボロン酸エステルおよびボロン酸化合物の合成

【課題】ボロン酸エステルおよび酸化合物の大規模生成。
【解決手段】水との低混和性を有するエーテル溶媒、および式(I)のボロン酸エステル化合物:


の少なくとも約10モルを含む組成物であって:Rが必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;Rが水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;Rが、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そしてRおよびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基もしくは芳香族基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成する、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ボロン酸エステルおよび酸化合物の合成に関する。さらに詳細には、本発明は、ルイス酸が促進したホウ素「アート」(boron「ate」)錯体の転移によるボロン酸エステルおよび酸化合物の調製のための大規模合成プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ボロン酸およびエステル化合物は、種々の薬学的に有用な生物学的活性を示す。Shenviら、特許文献1(1985)は、ペプチドボロン酸が特定のタンパク質分解性酵素のインヒビターであることを開示している。KettnerおよびShenvi、特許文献2(1993)、特許文献3(1993)、および特許文献4(1993)は、トリプシン様プロテアーゼを阻害するペプチドボロン酸のクラスを記載する。Kleemanら、特許文献5(1992)は、レニンの作用を阻害するN末端修飾されたペプチドボロン酸を開示する。Kinderら、特許文献6(1992)は、特定のトリペプチドボロン酸化合物がガン細胞の増殖を阻害することを開示している。
【0003】
さらに近年では、ボロン酸およびエステル化合物は、細胞内タンパク質代謝回転のほとんどを担う多触媒性のプロテアーゼである、プロテアソームのインヒビターとしての特段の展望を示している。非特許文献1は、このプロテアソームが、ユビキチン−プロテアソーム経路のタンパク質分解性成分であって、ここではタンパク質がユビキチンの多数の分子に対する結合によって分解について標的されることを開示している。Ciechanoverはまた、ユビキチン−プロテアソーム経路が、種々の重要な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たすことを開示している。
【0004】
その全体が参照によって本明細書に援用される、Adamsら、特許文献7(1998)、特許文献8(2000)、特許文献9(2000)、特許文献10(2001)、特許文献11および特許文献12(2003)は、プロテアソームインヒビターとして有用なペプチドボロン酸エステルおよび酸化合物を記載する。この引用文献はまた、ボロン酸エステルおよび酸化合物の使用が、筋肉のタンパク質分解の速度を低下し、細胞中のNF−κBの活性を低下し、細胞中のp53タンパク質の分解の速度を低下し、細胞中のサイクリン分解を阻害し、ガン細胞の増殖を阻害し、細胞中の抗原提示を阻害し、NF−κB依存性細胞付着を阻害し、そしてHIV複製を阻害することを記載する。
【0005】
非特許文献2は、このようなペプチドボロン酸プロテアソームインヒビターの1つであるボルテゾミブ(bortezomib)(N−2−ピラジンカルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)が、ヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて有意な抗腫瘍活性を示し、臨床試験中であることを開示している。非特許文献3は、ボルテゾミブの第2相試験の結果を報告しており、ここでは再発しかつ難治性の多発性骨髄腫を処置するのにおける有効性が示されている。
【0006】
ボロン酸プロテアーゼインヒビターの研究は、官能化されたボロン酸化合物、特にα−ハロ−およびα−アミノボロン酸の調製のための化学の発達によって大きく進歩している。非特許文献4は、ボロン酸エステルの同族体化によってα−クロロボロン酸エステルを調製するための方法を開示しており、そして非特許文献5は、同族体化反応のキラル制御が、ピナンジオールボロン酸エステルの使用によって達成され得ると報告している。α−アミノボロン酸および対応するα−クロロボロン酸エステル由来のエステル化合物の調製も報告されている(非特許文献6;Shenvi,特許文献13(1985))。
【0007】
MattesonおよびSadhu、特許文献14(1985)は、ルイス酸触媒の存在下における、中間体ホウ素「アート」錯体の転移によるボロン酸エステルの同族体化についての改良手順を記載している。ルイス酸は、転移反応を促進すること、そしてα−炭素原子でのエピマー化を最小化することが報告されている。しかし、最適の結果には、水の厳格な排除およびルイス酸化学量論の注意深い制御が必要である。これらの特徴によって製造規模で反応を首尾よく行うことが困難になり、そして薬学的に重要なボロン酸エステルおよび酸化合物、例えば、ボルテゾミブ(bortezomib)のアベイラビリティーが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,499,082号明細書
【特許文献2】米国特許第5,187,157号明細書
【特許文献3】米国特許第5,242,904号明細書
【特許文献4】米国特許第5,250,720号明細書
【特許文献5】米国特許第5,169,841号明細書
【特許文献6】米国特許第5,106,948号明細書
【特許文献7】米国特許第5,780,454号明細書
【特許文献8】米国特許第6,066,730号明細書
【特許文献9】米国特許第6,083,903号明細書
【特許文献10】米国特許第6,297,217号明細書
【特許文献11】米国特許第6,548,668号明細書
【特許文献12】米国特許第6,617,317号明細書
【特許文献13】米国特許第4,537,773号明細書
【特許文献14】米国特許第4,525,309号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ciechanover,Cell,79:13〜21(1994)
【非特許文献2】AlbanellおよびAdams、Drugs of the Future 27:1079〜1092(2002)
【非特許文献3】Richardsonら、New Engl.J.Med.,348:2609(2003)
【非特許文献4】MattesonおよびMajumdar,J.Am.Chem.Soc.,102:7590(1980)
【非特許文献5】MattesonおよびRay,J.Am.Chem.Soc.,102:7591(1980)
【非特許文献6】Mattesonら、J.Am.Chem.Soc.,103:5241(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、ボロン酸エステルおよび酸化合物の大規模生成のための改良方法が当該分野では依然として必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化1】


を調製するための大規模プロセスであって:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
該プロセスは:
(a)式(II)のホウ素「アート」錯体:
【化2】


を提供する工程であって、
Yは離核性基であり;
が陽イオンであり;そして
〜Rの各々が上記に規定されるとおりである工程と;
(b)式(II)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを式(I)のボロン酸エステル化合物が得られる条件下で接触させる工程であって、該接触工程は
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合中で行われる工程と;
を包含する、プロセス。
(項目2)
前記反応混合物が配位性共溶媒を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記配位共溶媒がテトラヒドロフラン、ジオキサン、水およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目2に記載のプロセス。
(項目4)
前記配位共溶媒が、前記反応混合物の約20%(v/v)以下を構成する、項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記配位共溶媒が、前記反応混合物の約15%(v/v)以下を構成する、項目3に記載のプロセス。
(項目6)
水との低混和性を有する前記エーテル溶媒中の水の溶解度が約2%(w/w)未満である、項目1に記載のプロセス。
(項目7)
水との低混和性を有する前記エーテル溶媒が、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、イソプロピルエーテルおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目6に記載のプロセス。
(項目8)
水との低混和性を有する前記エーテル溶媒が前記反応混合物の少なくとも約70%(v/v)を構成する、項目7に記載のプロセス。
(項目9)
式(II)の前記ホウ素「アート」錯体の少なくとも約5モルが工程(a)で提供される、項目1に記載のプロセス。
(項目10)
式(II)の前記ホウ素「アート」錯体の少なくとも約20モルが工程(a)で提供される、項目1に記載のプロセス。
(項目11)
式(II)の前記ホウ素「アート」錯体の少なくとも約50モルが工程(a)で提供される、項目1に記載のプロセス。
(項目12)
式(II)の前記ホウ素「アート」錯体の少なくとも約100モルが工程(a)で提供される、項目1に記載のプロセス。
(項目13)
前記ルイス酸が、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第二鉄および臭化第二鉄からなる群より選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目14)
前記ルイス酸が湿性である、項目13に記載のプロセス。
(項目15)
項目13に記載のプロセスであって、前記工程(a)において、式(II)の前記ホウ素「アート」錯体が、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む溶液中に提供され、かつ前記接触工程(b)が:
(i)ルイス酸とテトラヒドロフランとを含む溶液を提供する工程と;
(ii)工程(a)由来の式(II)の該ホウ素「アート」錯体の溶液に対してルイス酸溶液を添加する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目16)
項目13に記載のプロセスであって、前記工程(a)において、式(II)の前記ホウ素「アート」錯体が、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む溶液中で提供され、かつ前記接触工程(b)が以下の工程:
(i)ルイス酸と水とを含む溶液を提供する工程と;
(ii)工程(a)由来の式(II)の該ホウ素「アート」錯体の溶液に対してルイス酸溶液を添加する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目17)
Yがハロゲンである、項目1に記載のプロセス。
(項目18)
Yがクロロである、項目1に記載のプロセス。
(項目19)
がC1−8脂肪族、C6−10アリール、または(C6−10アリール)(C1−6脂肪族)である、項目1に記載のプロセス。
(項目20)
がLi、Na、およびKからなる群より選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目21)
およびRが、介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、必要に応じて置換された5員の環を形成する、項目1に記載のプロセス。
(項目22)
およびRが一緒になって、キラル部分である、項目21に記載のプロセス。
(項目23)
式(II)の前記ホウ素「アート」錯体が:
【化3】


である、項目22に記載のプロセス。
(項目24)
項目22に記載のプロセスであって、前記工程(b)が式(I)の前記ボロン酸エステル化合物を提供し、R、RおよびRを保有する炭素原子が、R−Rキラル部分中のキラル中心に対して少なくとも約96:4のジアステレオマー比を有するキラル中心である、プロセス。
(項目25)
項目22に記載のプロセスであって、前記工程(b)が式(I)の前記ボロン酸エステル化合物を提供し、R、RおよびRを保有する炭素原子が、R−Rキラル部分中のキラル中心に対して少なくとも約97:3のジアステレオマー比を有するキラル中心である、プロセス。
(項目26)
以下の特徴:
(a)前記接触工程(b)がtert−ブチルメチルエーテルを含む反応混合物中で行われる;
(b)前記ルイス酸が塩化亜鉛である;
(c)式(II)のボロン酸エステルの少なくとも約5モルが工程(a)で提供される;
(d)前記接触工程(b)が約−60℃〜約−30℃の範囲の反応温度で行なわれる;
(e)前記ルイス酸が湿性である;
(f)Yがクロロである;
(g)Rがクロロである;
(h)Rが水素である;そして
(i)RがC1−4脂肪族である;
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、項目22に記載のプロセス。
(項目27)
前記特徴(a)〜(h)のうちの少なくとも2つによって特徴付けられる、項目26に記載のプロセス。
(項目28)
前記特徴(a)〜(h)のうちの少なくとも3つによって特徴付けられる、項目26に記載のプロセス。
(項目29)
前記特徴(a)〜(h)のうちの8つ全てによって特徴付けられる、項目26に記載のプロセス。
(項目30)
項目24に記載のプロセスであって、さらに:
(c)水溶液を用いて前記反応混合物を洗浄する工程と;
(d)該洗浄された反応混合物を溶媒の除去によって濃縮して、式(I)のボロン酸エステル化合物を含む残渣を得る工程と;
を包含する、プロセス。
(項目31)
項目26に記載のプロセスであって、前記残渣が、式(I)の前記ボロン酸エステル化合物の少なくとも約5モルを含む、プロセス。
(項目32)
項目31に記載のプロセスであって、前記残渣中に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、R、RおよびRを保有する炭素原子で少なくとも約96:4のジアステレオマー比を有する、プロセス。
(項目33)
項目31に記載のプロセスであって、前記残渣中に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、R、RおよびRを保有する炭素原子で少なくとも約97:3のジアステレオマー比を有する、プロセス。
(項目34)
水と低混和性を有するエーテル溶媒、および式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化4】


の少なくとも約10モルを含む組成物であって:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基もしくは芳香族基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成する、組成物。
(項目35)
水と低混和性を有するエーテル溶媒、および式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化5】


の少なくとも約10モルを含む組成物であって:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基もしくは芳香族基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
ここで、R、RおよびRが結合される炭素原子が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、少なくとも約96:4のジアステレオマー比を有するキラル中心である、組成物。
(項目36)
水と低混和性を有するエーテル溶媒、および式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化6】


の少なくとも約10モルを含む組成物であって:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基もしくは芳香族基であるか;またはRおよびRが介在する酸素およびホウ素と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
ここで、R、RおよびRが結合される炭素原子が、少なくとも約96:4のエピマー性比を有するキラル中心である、組成物。
(項目37)
前記エーテル溶媒中の水の溶解度が約2%(w/w)未満である、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目38)
前記エーテル溶媒が、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、イソプロピルエーテルおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目39)
がC1−8脂肪族、C6−10アリール、または(C6−10アリール)(C1−6脂肪族)である、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目40)
以下の特徴:
(a)Rがクロロである;
(b)Rが水素である;そして
(c)RがC1−4脂肪族である;
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目41)
およびRが、介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、必要に応じて置換された5員の環を形成する、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目42)
式(I)の前記化合物が:
【化7】


である、項目34〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目43)
式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化8】


の少なくとも約10モルを含む組成物であって:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環のキラル環を形成し;
ここで、R、RおよびRが結合される炭素原子が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、少なくとも約96:4のジアステレオマー比を有する、キラル中心であって、
式(I)のボロン酸エステル化合物が該組成物の少なくとも約70%(w/w)を構成する、組成物。
(項目44)
式(I)のボロン酸エステル化合物の少なくとも約20モルを含む、項目36に記載の組成物。
(項目45)
、RおよびRが結合される炭素原子が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、少なくとも約97:3のジアステレオマー比を有する、項目36に記載の組成物。
(項目46)
前記組成物に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物の全てが単回バッチの試行で生成される、項目36に記載の組成物。
(項目47)
前記組成物に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物の全てが項目1に記載のプロセスの単回バッチの試行で生成される、項目36に記載の組成物。
(項目48)
以下の特徴:
(a)Rがクロロである;
(b)式(I)のボロン酸エステル化合物が:
【化9】


である;
(c)Rが水素である;そして
(d)RがC1−4脂肪族である;
のうちの少なくとも1つが存在する、項目36に記載の組成物。
(項目49)
式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化10】


を調製するための大規模プロセスであって、
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
該プロセスは:
(a)以下;
(i)式(III)のボロン酸エステル:
【化11】


であって、R、RおよびRが上記のとおりであるボロン酸エステル;ならびに
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒;
を含む溶液を提供する工程と、
(b)式(IV)の試薬;
【化12】


を用いて該溶液を処理して、式(II)のホウ素「アート」錯体:
【化13】


を形成する工程であって
Yが離核性基であり;
が陽イオンであり;そして
〜Rの各々が上記のとおりである工程と;
(c)式(II)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを式(I)のボロン酸エステル化合物が得られる条件下で接触させる工程であって、該接触工程は
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合中で行われる工程と;
を包含する、プロセス。
(項目50)
式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化14】


を調製するための大規模プロセスであって、
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
該プロセスは:
(a)以下;
(i)式(III)のボロン酸エステル:
【化15】


であって、R、RおよびRが上記のとおりであるボロン酸エステル;
(ii)式(V)の化合物:
【化16】

であって、Yが離核性基であり、かつRおよびRが上記のとおりである化合物;ならびに
(iii)溶媒であって、
(aa)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(bb)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;を含む溶媒;
を含む溶液を提供する工程と;
(b)工程(a)の溶液を強力な、立体的に干渉される塩基を用いて処理して、式(II)のホウ素「アート」錯体:
【化17】


を形成する工程であって
が該塩基由来の陽イオンであり、かつYおよびR〜Rの各々が上記のとおりである工程と;
(c)式(II)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む溶液中で接触させて、式(I)のボロン酸エステル化合物を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目51)
式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化18】


を調製するための大規模プロセスであって、
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRが一緒になって、2〜5個の炭素原子、ならびにO、NおよびSからなる群より選択された0〜2個のヘテロ原子を含む、必要に応じて置換された連結している鎖を形成し;
該プロセスは:
(a)以下;
(i)式(VI)のボロン酸化合物:
【化19】


であって、Rが上記のとおりであるボロン酸化合物と;
(ii)式HO−R−R−OHの化合物であって、RおよびRが上記のとおりである、化合物;および
(iii)水との共沸混合物を形成する有機溶媒;
を含む溶液を提供する工程と;
(b)水の共沸除去をしながら、工程(a)の溶液を加熱還流して、R、RおよびRが上記のとおりである式(III)のボロン酸エステル
【化20】


を形成する工程と:
(c)以下;
(i)式(III)のボロン酸エステル:
(ii)式(V)の化合物:
【化21】


であって、Yが離核性基であり、かつRおよびRが上記のとおりである化合物;ならびに
(iii)溶媒であって、
(aa)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(bb)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;を含む溶液を提供する工程と;
(d)工程(c)由来の溶液を強力な、立体的に干渉される塩基を用いて処理して、式(II)のホウ素「アート」錯体:
【化22】


を形成する工程であって
が該塩基由来の陽イオンであり、かつYおよびR〜Rの各々が上記のとおりである工程と;
(e)式(II)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む溶液中で接触させて、式(I)のボロン酸エステル化合物を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目52)
前記立体的に干渉される塩基が式MN(Rのアルカリ金属ジアルキルアミド塩基であり、Mが、Li、NaおよびKからなる群より選択され、そして各々のRが独立して分枝したまたは環状のC3−6脂肪族である、項目50または51に記載のプロセス。
(項目53)
工程(a)における前記有機溶媒が、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、ヘプタンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目51に記載のプロセス。
(項目54)
項目51に記載のプロセスであって、工程(a)の有機溶媒が水との低混和性を有するエーテル溶媒である、プロセス。
(項目55)
工程(a)および(c)における溶液が各々同じエーテル溶媒を含む、項目54に記載のプロセス。
(項目56)
工程(b)が式(III)のボロン酸エステルを含む生成物溶液を提供し、そして工程(b)由来の該生成物溶液が、式(III)のボロン酸エステルの単離なしに工程(c)において用いられる、項目55に記載のプロセス。
(項目57)
式(VII)のアミノボロン酸エステル化合物:
【化23】


またはその酸付加塩を調製するための大規模プロセスであって、
が、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成し;
該プロセスは:
(a)式(II)のホウ素「アート」錯体:
【化24】


であって
Yが離核性基であり;
が陽イオンであり;
が水素であり;
は離核性基であり;かつ
、RおよびRの各々が上記のとおりである錯体を提供する工程と;
(b)式(II)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、R〜Rの各々が上記のとおりである式(I)のボロン酸エステル化合物:
【化25】


が得られる条件下で接触させる工程であって、該接触工程は、
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合物中で行われる工程と;
(c)式(I)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、各々のRが独立してアルキル、アラルキルおよびアリールからなる群より選択され、該アリールまたは該アラルキルのアリール部分は必要に応じて置換されている式M−N(Si(Rの試薬を用いて処理して、式M−Rの副生成物ならびに各々のGおよびR〜Rが上記のとおりである式(VIII)の化合物:
【化26】


を形成する工程と;
(d)該G基を除去して、式(VII)の化合物:
【化27】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目58)
工程(c)における前記反応混合物が、有機溶媒を含み、前記副生成物M−Rが低溶解度を有する、項目57に記載のプロセス。
(項目59)
がLiでありかつRがClである項目58に記載のプロセス。
(項目60)
工程(c)における前記反応混合物が、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、トルエンおよびそれらの混合物からなる群より選択される有機溶媒を含む、項目59に記載のプロセス。
(項目61)
工程(c)における前記反応が、約−100℃〜約50℃の範囲の反応温度で行われる、項目57に記載のプロセス。
(項目62)
前記反応温度が、約−50℃〜約25℃の範囲内である、項目61に記載のプロセス。
(項目63)
前記反応温度が、約−30℃〜約0℃の範囲内である、項目61に記載のプロセス。
(項目64)
工程(d)が、酸を用いて式(VIII)の化合物を処理する工程と、酸付加塩として式(VII)の化合物を単離する工程とを包含する、項目57に記載のプロセス。
(項目65)
前記酸がトリフルオロ酢酸である、項目64に記載のプロセス。
(項目66)
工程(c)が前記反応混合物を濾過して、式(VIII)の化合物を含む濾液を提供する工程をさらに包含する、項目57に記載のプロセス。
(項目67)
工程(c)において式M−N(Si(Rの前記試薬が、テトラヒドロフランを含む溶液として反応混合物に添加され、かつ工程(c)がさらに、該反応物を濾過する前に該テトラヒドロフランを除去する工程を包含する、項目66に記載のプロセス。
(項目68)
前記濾液が工程(d)において直接用いられる、項目66に記載のプロセス。
(項目69)
項目57に記載のプロセスであって、さらに以下の工程:
(e)式(VII)の化合物と式(IX)の化合物:
【化28】


であって、
がアミノ基ブロッキング部分であり;
が水素、C1−10脂肪族、必要に応じて置換されたC6−10アリール、またはC1−6脂肪族−Rからなる群より選択され;そして
がアルコキシ、アルキルチオ、必要に応じて置換されたアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル基、および必要に応じて保護されたアミノ、ヒドロキシおよびグアニジノ基からなる群より選択され;そして
XがOHまたは脱離基である、化合物;
とをカップリングさせて、各々のP、R、R、RおよびRが上記のとおりである式(X)の化合物:
【化29】


を形成する工程を包含する、プロセス。
(項目70)
が切断可能な保護基である、項目69に記載のプロセス。
(項目71)
項目70に記載のプロセスであって、さらに以下の工程:
(f)保護基Pを切断して、R、R、RおよびRの各々が上記のとおりである式(XI)の化合物:
【化30】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(g)式(XI)の化合物と、Pがアミノ基ブロッキング部分であって、Xが脱離基である式P−Xの試薬とをカップリングさせて、P、R、R、RおよびRの各々が上記のとおりである式(XII)の化合物:
【化31】


を形成する工程と;
(h)ボロン酸部分を脱保護して、P、RおよびRの各々が上記のとおりである式(XIII)の化合物:
【化32】


またはそのボロン酸無水物を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目72)
式(VIIa)または(VIIb)のアミノボロン酸エステル化合物:
【化33】


またはその酸付加塩を調製するための大規模プロセスであって、
が、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;そして
およびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、必要に応じて置換されたキラル環状ボロン酸エステルを形成し;
該プロセスは:
(a)式(IIa)または(IIb)のホウ素「アート」錯体:
【化34】


であって、
Yが離核性基であり;
が陽イオンであり;
が水素であり;
は離核性基であり;かつ
およびRが上記のとおりである錯体を提供する工程と;
(b)式(IIa)または(IIb)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、R〜Rの各々が上記のとおりである式(Ia)または(Ib)のボロン酸エステル化合物:
【化35】


が得られる条件下で接触させる工程であって、該接触工程は、
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合物中で行われる工程と;
(c)式(Ia)または(Ib)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、かつ各々のGがアミノ基保護部分である式M−N(G)の試薬を用いて処理して、各々のGおよびR〜Rが上記のとおりである式(VIIIa)または(VIIIb)の化合物:
【化36】


を形成する工程と;
(d)該G基を除去して、式(VIIa)または(VIIb)の化合物:
【化37】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目73)
式(XIV)の化合物:
【化38】


またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスであって、該プロセスが:
(a)Mがアルカリ金属である式(XV)のホウ素「アート」錯体:
【化39】


を提供する工程と;
(b)式(XV)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、式(XVI)のボロン酸エステル化合物:
【化40】

が得られる条件下で接触させる工程であって、該接触工程は、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む反応混合物中で行われる工程と;
(c)式(XVI)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、かつ各々のGが個々にまたは一緒になって、アミノ基保護基である式M−N(G)の試薬を用いて処理して、式(XVII)の化合物:
【化41】


を形成する工程と;
(d)該G基を除去して、式(XVIII)の化合物:
【化42】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(e)式(XVIII)の化合物と、
が切断可能なアミノ基保護部分であり;かつ
XがOHまたは脱離基である
式(XIX)の化合物:
【化43】


とをカップリングさせて、Pが上記のとおりである式(XX)の化合物:
【化44】


を形成する工程と;
(f)保護基Pを除去して、式(XXI)の化合物:
【化45】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(g)式(XXI)の化合物と、XがOHまたは脱離基である式(XXII)の試薬:
【化46】


とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物:
【化47】


を形成する工程と;
(h)該ボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目74)
項目73に記載のプロセスであって、以下の特徴(1)〜(5)のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、プロセス:
(1)式(XV)のホウ素「アート」錯体において、RおよびYの両方がクロロである;
(2)前記カップリング工程(e)が、以下の工程:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIX)の化合物とを、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下においてカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する;
(3)前記保護基除去工程(f)が以下の工程:
(i)酢酸エチルに含まれるHClを用いて式(XX)の化合物を処理する工程と;
(ii)該反応混合物に対してヘプタンを添加する工程と;
(iii)式(XXI)の化合物を結晶化することによってそのHCl付加塩として単離する工程と;を包含する;
(4)前記カップリング工程(g)が以下の工程:
(i)式(XXI)の化合物と2−ピラジン−カルボン酸とを、ジクロロメタン中に含まれるTBTUおよび三級アミンの存在下でカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する;
(5)前記ボロン酸脱保護工程(h)が以下の工程:
(i)式(XXIII)の化合物と、有機ボロン酸アクセプターと、低級アルカノールと、C5−8炭化水素溶媒と無機酸水溶液とを含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)該二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)該溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;を包含する。
(項目75)
5つの特徴(1)〜(5)の全てによって特徴付けられる、項目74に記載のプロセス。(項目76)
項目74に記載のプロセスであって、工程(h)(iii)が:
(1)前記溶媒層を分離する工程と;
(2)前記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いて該水層を洗浄する工程と;
(4)約8未満のpHまで該水層を調節する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目77)
工程(h)(iii)(3)において、前記水層がジクロロメタンで洗浄される、項目76に記載のプロセス。
(項目78)
項目76に記載のプロセスであって、工程(h)(iv)において、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ジクロロメタン中に抽出され、前記溶媒が酢酸エチルに交換され、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ヘキサンまたはヘプタンの添加によって結晶化される、プロセス。
(項目79)
ヘキサンまたはヘプタンの添加が式(XXIV)の環状三量体ボロン酸無水物:
【化48】


の結晶化を生じる、項目78に記載のプロセス。
(項目80)
式(XIV)の化合物:
【化49】

またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスであって、以下の工程:
(aa)式(XVIII)の化合物:
【化50】


またはその酸付加塩と、
が切断可能なアミノ基保護部分であり;かつ
XがOHまたは脱離基である;
式(XIX)の化合物
【化51】


とをカップリングさせて、Pが上記のとおりである式(XX)の化合物:
【化52】


を形成する工程であって、該カップリング工程(aa)が以下の工程:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIX)の化合物とを、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下においてカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する、工程と;
(bb)該保護基Pを除去して式(XXI)の化合物:
【化53】


またはその酸付加塩を形成する工程であって、該保護基除去工程(bb)が以下の工程:
(i)酢酸エチルに含まれるHClを用いて式(XX)の化合物を処理する工程と;
(ii)該反応混合物に対してヘプタンを添加する工程と;
(iii)式(XXI)の化合物をそのHCl付加塩として結晶化することによって単離する工程と;を包含する工程と;
(cc)該式(XXI)の化合物と、XがOHまたは脱離基である式(XXII)の試薬
【化54】


とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物:
【化55】


を形成する工程であって、該カップリング工程(cc)が以下の工程:
(i)式(XXI)の化合物と2−ピラジンカルボン酸とを、ジクロロメタン中に含まれるTBTUおよび三級アミンの存在下でカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する工程と;
(dd)該ボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程であって、該脱保護工程(dd)が以下の工程:
(i)式(XXIII)の化合物と、有機ボロン酸アクセプター、低級アルカノール、C5−8炭化水素溶媒および無機酸水溶液を含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)該二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)該溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;を包含する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目81)
項目80に記載のプロセスであって、工程(dd)(iii)が:
(1)前記溶媒層を分離する工程と;
(2)前記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いて該水層を洗浄する工程と;
(4)約8未満のpHまで該水層を調節する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目82)
工程(dd)(iv)において、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ジクロロメタン中に抽出され、前記溶媒が酢酸エチルに交換され、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ヘキサンまたはヘプタンの添加によって結晶化される、項目81に記載のプロセス。
(項目83)
項目82に記載のプロセスであって、ヘキサンまたはヘプタンの添加が式(XXIV)の環状三量体ボロン酸無水物:
【化56】


の結晶化を生じる、プロセス。
(項目84)
式(XIV)の化合物:
【化57】


またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスであって、該プロセスは以下の工程:
(a)式(XV)のホウ素「アート」錯体:
【化58】


を提供する工程であって、
が離核性基であり;
Yが離核性基であり;かつ
がアルカリ金属である、工程と;
(b)式(XV)の該ホウ素「アート」錯体とルイス酸とを式(XVI)のボロン酸エステル化合物:
【化59】


を得る条件下で接触させる工程であって、該接触工程が:
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合物中で行われる、工程と;
(c)式(XVI)の該ボロン酸エステル化合物を、式M−N(Si(Rの試薬であって、Mがアルカリ金属であり、かつRが独立して、アルキル、アラルキルおよびアリールからなる群より選択され、ここで該アリールまたは該アラルキルのアリール部分が必要に応じて置換された試薬を用いて処理して、式(XVII)の化合物:
【化60】


を形成する工程と;
(d)該(RSi基を除去して、式(XVIII)の化合物:
【化61】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(e’)式(XVIII)の化合物と、XがOHまたは脱離基である式(XIXa)の化合物
【化62】


とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物
【化63】


を形成する工程と:
(f’)ボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目85)
項目84に記載のプロセスであって、以下の特徴(1)〜(3):
(1)式(XV)のホウ素「アート」錯体において、RおよびYの両方がクロロである;
(2)前記カップリング工程(e’)が、以下の工程:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIXa)の化合物とを、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下においてカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する;
(3)前記ボロン酸脱保護工程(f’)が以下の工程:
(i)式(XXIII)の化合物、有機ボロン酸アクセプター、低級アルカノール、C5−8炭化水素溶媒および無機酸水溶液を含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)該二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)該溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;を包含する;
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、プロセス。
(項目86)
項目85に記載のプロセスであって、工程(f’)(iii)が:
(1)前記溶媒層を分離する工程と;
(2)前記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いて該水層を洗浄する工程と;
(4)約8未満のpHまで該水層を調節する工程と;
を包含する、プロセス。
(項目87)
工程(f’)(iii)(3)において、前記水層がジクロロメタンで洗浄される、項目86に記載のプロセス。
(項目88)
項目86に記載のプロセスであって、工程(f’)(iv)において、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ジクロロメタン中に抽出され、前記溶媒が酢酸エチルに交換され、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物が、ヘキサンまたはヘプタンの添加によって結晶化される、プロセス。
(項目89)
ヘキサンまたはヘプタンの添加が式(XXIV)の環状三量体ボロン酸無水物:
【化64】


の結晶化を生じる、項目88に記載のプロセス。
(項目90)
式(XXIV)の化合物:
【化65】


の少なくとも1キログラムを含む組成物であって、式(XXIV)の該化合物が、項目73または80に記載のプロセスに従って調製される、組成物。
(項目91)
式(XXIV)の化合物
【化66】


の少なくとも1キログラムを含む組成物であって、式(XXIV)の該化合物が、該組成物の少なくとも99%(w/w)を構成する、組成物。
(発明の詳細)
本発明は、ボロン酸エステルおよび酸化合物の大規模生成のための改良された合成プロセスを提供する。これらのプロセスによって、先行技術の方法に比べて、収率および純度の向上、処理能力の向上、および取り扱いの容易さの向上が得られる。特に、本明細書に記載されるプロセスは、利用可能な製造能力の大きさによってのみ限定される、大規模の数キログラムの規模でのバッチ生産のために適切である。本発明のプロセスは、α−アミノボロン酸エステルおよび酸化合物を含む、キラルボロン酸エステルおよび酸化合物の合成のために特に有利である。規模にかかわらず、所望の産物は、極めて高い化学的かつ立体化学的な純度で生成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に引用される特許および科学文献は、当業者に利用可能である知識を確立するものである。他に規定しない限り、本明細書に用いられる全ての技術的および科学的な用語は、本発明が関連する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と同様または等価である方法および材料が、本発明の実施または試験において用いられ得るが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。本明細書に引用される、発行された特許、出願および引用文献は、各々が詳細にかつ個々に参照によって援用されるように示されるのと同じ程度まで参照によって本明細書に援用される。矛盾する場合、定義を含む本発明の開示が上回る。さらに、材料、方法および実施例は、例示のみであって、限定するつもりはない。
【0013】
「約、およそ(about)」という用語は、本明細書において用いて、約(ほぼ、およそ)(approximately)、〜の範囲の、大体(おおよそ)(roughly)、またはおよそ(おおよそ)(around)を意味する。「約」という用語を数値の範囲と組み合わせて用いる場合、示した数値の上下の境界を拡大することによってその範囲を修飾する。一般に、「約」という用語を本明細書において用いる場合、10%の分散で言及した値の上下の数値を修飾する。
【0014】
「含む、包含する(comprise)」という用語を本明細書で用いる場合、「限定はしないが、〜を含む、包含する(includes,but is not limited to)」ことを意味する。
【0015】
「脂肪族(aliphatic)」という用語を本明細書において用いる場合、直鎖、分枝鎖、または環状のC1−12炭化水素であって、完全に飽和されているか、または1つ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない炭化水素を意味する。例えば、適切な脂肪族の基としては、飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基およびその混成体、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。種々の実施形態では、脂肪族基は1〜12個、1〜8個、1〜6個または1〜4個の炭素を有する。
【0016】
「アルキル(alkyl)」、「アルケニル(alkenyl)」、および「アルキニル(alkynyl)」という用語は、単独でまたはより大きい部分の一部として用いて、1、2または3つの置換基で必要に応じて置換される、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝した鎖の脂肪族基をいう。本発明の目的のために、「アルキル(alkyl)」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が飽和炭素原子である場合に用いられる。しかし、アルキル基は、他の炭素原子では不飽和を含んでもよい。従って、アルキル基としては、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、アリル、プロパルギル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
【0017】
本発明の目的のためには、「アルケニル(alkenyl)」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が炭素−炭素間の二重結合の一部を形成する場合に用いられる。アルケニル基としては、限定はしないが、ビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニルおよび1−ヘキセニルが挙げられる。本発明の目的については、「アルキニル(alkynyl)」という用語は、分子の残りに対して脂肪族基を結合する炭素原子が炭素−炭素間の三重結合の一部を形成する場合に用いられる。アルキニル基としては、限定はしないが、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニルおよび1−ヘキシニルが挙げられる。
【0018】
「シクロアルキル(cycloalkyl)」、「炭素環(carbocycle)」、「カルボシクリル(carbocyclyl)」、カルボシクロ(carbocyclo)または「炭素環の、炭素環式(carbocyclic)」という用語は、単独で用いて、またはそれより大きい部分の一部として用いて、飽和したまたは部分的に不飽和の、3〜14員の環状脂肪族環系を意味し、この脂肪族環系は必要に応じて置換される。シクロアルキル基としては、限定はしないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニルおよびシクロオクタジエニルが挙げられる。ある実施形態では、シクロアルキルは3〜6個の炭素を有する。「シクロアルキル」、「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」または「炭素環の、炭素環式」という用語はまた、ラジカルまたは結合点が脂肪族環の上にある、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルのような、1つ以上の芳香族または非芳香族の環に縮合される脂肪族環を包含する。
【0019】
「ハロアルキル(haloalkyl)」、「ハロアルケニル(haloalkenyl)」および「ハロアルコキシ(haloalkoky)」という用語は、場合によっては、1つ以上のハロゲン原子で置換され得る、アルキル、アルケニルまたはアルコキシ基をいう。本明細書において用いる場合、「ハロゲン(halogen)」または「ハロ(halo)」という用語は、F、C、BrまたはIを意味する。他に示さない限り、「アルキル(alkyl)」、「アルケニル(alkenyl)」および「アルコキシ(alkoky)」という用語は、ハロアルキル、ハロアルケニルおよびハロアルコキシ基を包含し、これには詳細には、1〜5のフッ素原子を有するものが挙げられる。
【0020】
「アリール(aryl)」および「アー(ar−)」という用語を、単独でまたはより大きい部分の一部として用いて、例えば、「アラルキル(aralkyl)」、「アラルコキシ(aralkoxy)」または「アリールオキシアルキル(aryloxyalkyl)」は、必要に応じて置換される、1〜3個の芳香族環を含むC6−14芳香族部分をいう。好ましくは、アリール基は、C6−10アリール基である。アリール基としては、限定はしないが、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルが挙げられる。本明細書において用いる場合、「アリール(aryl)」という用語はまた、芳香族環が1つ以上の非芳香族環に縮合されている基、例えば、インダニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロナフチルであって、ラジカルまたは結合点が芳香族環の上にある基を包含する。「アリール(aryl)」という用語は、「アリール環(aryl ring)」という用語と交換可能に用いられ得る。
【0021】
「アラルキル(aralkyl)」または「アリールアルキル(arylalkyl)」基とは、そのいずれかが独立して必要に応じて置換される、アルキル基に対して共有結合されたアリール基を包含する。好ましくは、アラルキル基は、C6−10アリール(C1−6)アルキルであり、これには、限定はしないが、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルが挙げられる。
【0022】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」および「ヘテロア−(heteroar−)」という用語を、単独で、またはそれより大きい部分(例えば、ヘテロアラルキル(heteroaralkyl)または「ヘテロアラルコキシ(heteroaralkoky)」)の一部として用いて、とは、5〜14環の原子、好ましくは、5、6、9または10個の環の原子を有する基;環状のアレイで共有される6、10または14個のπ電子を有する基;そして炭素原子に加えて、N、OおよびSからなる群より選択される1〜4個のヘテロ原子を有する基をいう。ヘテロアリール基としては、限定はしないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキザゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、ナフチルジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニルおよびフェナジニルが挙げられる。「ヘテロアリール(heteroaryl)」および「ヘテロア(heteroar−)」という用語は本明細書において用いる場合また、ラジカルまたは結合点が芳香族複素環上である、芳香族複素環が1つ以上の非芳香族環に縮合されている基を包含する。非限定的な例としては、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[3,4−d]ピリミジニルが挙げられる。「ヘテロアリール(heteroaryl)」という用語は、「ヘテロアリール環(heteroaryl ring)」という用語、または「芳香族複素環式(heteroaromatic)」という用語と交換可能に用いられ得、この用語のいずれも必要に応じて置換される環を包含する。「ヘテロアラルキル(heteroaralkyl)」という用語は、アルキルおよびヘテロアリール部分が独立して必要に応じて置換される、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基をいう。
【0023】
本明細書において用いる場合、「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」、または「複素環式ラジカル(heterocyclic radical)」という用語は、安定な5員〜7員の単環または7員〜10員の二環式複素環部分であって、飽和されているかまたは部分的に不飽和であり、かつさらに炭素原子に加えて、N、OおよびSからなる群より選択された1つ以上、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有し、この窒素およびイオウのヘテロ原子が必要に応じて酸化され、かつ窒素原子が必要に応じて四級化される複素環部分を指す。この複素環式環は、任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合されてもよく、それによって安定な構造が生じ、そしてこの環原子のいずれかが必要に応じて置換されてもよい。このような飽和または部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例としては、限定はしないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサアゼピニル、チアアゼピニルおよびモルホリニルが挙げられる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書において用いる場合また、非芳香族ヘテロ原子含有環が1つ以上の芳香族環または非芳香族環、に縮合されている基(例えば、インドリニル、クロマニル、フェナンチリジニルまたはテトラヒドロキノリニル)であって、ここでラジカルまたは結合点がこの非芳香族ヘテロ原子含有環の上にある基を包含する。「ヘテロシクリルアルキル(heterocyclylalkyl)」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されるアルキル基であって、このアルキルおよびヘテロシクリル部分が独立して必要に応じて置換される基をいう。
【0024】
本明細書において用いる場合、「部分的に不飽和(partially unsaturated)」という用語は、環の原子の間の少なくとも1つの二重結合または三重結合を包含する環部分をいう。「部分的に不飽和」という用語は、1つまたは複数の不飽和部位を有する環を包含するものとするが、本明細書に記載されるように、アリールまたはヘテロアリール部分を包含することは意図しない。
【0025】
本明細書において用いる場合、「飽和した(substituted)」という用語は、指定された部分の1つ以上の水素原子が置換され、ただしこの置換が安定であるかまたは化学的に実現可能な化合物を生じる条件で置換されていることを意味する。安定な化合物または化学的に実現可能な化合物とは、40℃以下の温度で、湿度も他の化学的に反応性の条件もない状態で、少なくとも1週間維持した場合、化学構造が実質的に変更されない化合物、または本発明の合成プロセスに有用であるのに十分長く、完全な長さを維持する化合物である。本明細書において用いる場合、「1つ以上の置換(one or more substituents)」という句は、安定性および化学的実現性の上記の条件が満たされる条件のもとで、1つの置換から利用可能な結合部位の数に基づいて可能である最大数の置換までの数の置換をいう。
【0026】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどにおけるアリール部分を含む)基、またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどにおけるヘテロアリール部分を含む)基は、1つ以上の置換基を含んでもよい。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換の例としては、−ハロ、−NO、−CN、−R、−OR、―SR、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−O−CO、−O−C(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、および−NRSON(Rが挙げられる。各々のRは独立して、R、−C(O)R、−CO、および−SOからなる群より選択されるか、または同じ窒素原子上の2つのRは、その窒素原子と一緒になって、その窒素原子に加えてN、OおよびSから選択される0〜2環のヘテロ原子を有する、5〜8員の芳香族または非芳香族環を形成する。各々のRは独立して、水素または必要に応じて置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル基である。各々のRは独立して、必要に応じて置換された脂肪族基またはアリール基である。
【0027】
脂肪族基はまた、1つ以上の置換基で置換されてもよい。脂肪族基のまたは非芳香族複素環の飽和炭素上の適切な置換基の例としては、限定はしないが、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記されたものが挙げられる。
【0028】
本発明者らは、ルイス酸が促進したホウ素「アート」錯体の転移について以前に記載された手順を特徴付ける、厳密に乾燥された設備、溶媒および試薬についての要件が、水との混和性が低いエーテル溶媒の使用によって省略され得るということを発見した。驚くべきことに、このような溶媒の使用によって、収率も純度も悪化することなく反応を数キログラム規模で行うことが可能になる。本質的に、反応の規模は、利用可能な製造能力の大きさによってのみ制限される。
【0029】
従って1局面では、本発明は、式(I)のボロン酸エステル化合物:
【0030】
【化67】


を調製するための大規模プロセスを提供し、ここで:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素原子およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成する。
【0031】
このプロセスは以下の工程:
(a)式(II)の化合物:
【0032】
【化68】


のホウ素「アート」錯体を提供する工程であって、
Yは離核性基であり;
が陽イオンであり;そして
〜Rの各々が上記に規定されるとおりである工程と;
(b)式(II)のこのホウ素「アート」錯体とルイス酸とを式(I)のボロン酸エステル化合物が得られる条件下で接触させる工程であって、この接触工程は
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合中で行われる工程と;
を包含する。
【0033】
ホウ素「アート」錯体のルイス酸が促進した転移について以前に報告されたプロセスは、水と十分に混和性であるエーテル溶媒、テトラヒドロフランを使用する。これらのプロセスにおいて厳格に乾燥された装備、溶媒および試薬を使用できなければ、ジアステレオマー比の劇的な低下が生じる。詳細には吸湿性のルイス酸は代表的には、反応中での使用の直前に直火で乾燥されなければならない。湿度に過敏な反応を行うための技術は当業者には周知であり、実験室規模では慣用的に実施されるが、このような反応は費用がかさみかつ大規模化が困難である。
【0034】
さらに、先行技術のプロセスで試みた大規模化では、生成物のボロン酸エステル化合物のワークアップおよび単離の間にジアステレオマー比のさらなる悪化が頻繁に生じる。MattesonおよびErdiik、Organometallics,2:1083(1983)は、遊離のハロゲン化物イオンに対するα−ハロボロン酸エステル生成物の曝露がα炭素中心でエピマー化を生じることを報告している。理論によって束縛されることは望まないが、本発明者らは、反応のワークアップおよび/または引き続く工程の間に、エピマー化が特に問題であると考えている。例えば、エピマー化は、テトラヒドロフラン溶媒を除去して、水不混和性の溶媒と交換するための反応混合物の濃縮の間に生じると考えている。テトラヒドロフランの完全な除去ができないことも、引き続く水での洗浄の間にジアステレオマー比に対して負に影響する。これらの工程の間のハロゲン化物イオンに対するこの生成物の曝露は、特に反応が大規模に行われる場合には、回避することが困難である。
【0035】
本発明者らは、ホウ素「アート」錯体の転移が水との混和性が低いエーテル溶媒中で有利に行われるということを発見している。この溶媒の使用によって、水での洗浄の前の溶媒交換の必要性をなくし、そして有機物溶解性の生成物は、大規模で行われてさえ、洗浄の間に水性のハロゲン化物イオンから効率的に遮蔽される。好ましくは、エーテル溶媒中の水の溶解度は、約5%(w/w)未満、さらに好ましくは約2%(w/w)未満である。種々の実施形態では、水との混和性が低いエーテル溶媒は、反応混合物のうち少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%(v/v)を構成する。
【0036】
エーテル溶媒は好ましくは、大規模生成における慣用的な使用に適切であるものである。本明細書において用いる場合、「大規模(large−scale)」という用語は、少なくとも1つの出発物質の少なくとも約5モルを利用する反応をいう。好ましくは大規模プロセスは、少なくとも1つの出発物質の少なくとも約10、20、50または100モルを利用する。
【0037】
本発明の目的に関しては、「エーテル(ether)」という用語は、2つの炭素原子に結合された酸素原子を有することで特徴付けられる任意のクラスの化合物を指す。「エーテル溶媒(ether solvent)」は、所望の反応温度で液体型で存在し、かつ反応の出発物質(単数または複数)および/または生成物(単数または複数)を溶解し得るエーテル化合物である。本発明のプロセスにおける使用に適切なエーテル溶媒の非限定的な例としては、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、およびイソプロピルエーテルが挙げられる。
【0038】
1実施形態では、反応混合物はさらに、配位性共溶媒を含む。別の実施形態では、水との混和性が低いエーテル溶媒は、十分に配位性であって、配位性の共溶媒が不必要である。本発明の目的に関しては、「配位性共溶媒(coordinating co−solvent)」および「配位性溶媒(coordinating solvent)」という用語は、ルイス酸を配位し得、その反応のイオン性成分を溶媒和させ得る溶媒を指す。ヒンダード(hindered)エーテル溶媒、例えば、tert−ブチルメチルエーテルは、配位性が乏しく、そして好ましくは、配位性共溶媒とともに用いられる。本発明の実施における使用に適切な配位性共溶媒の非限定的な例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
ある実施形態では、反応混合物は、少なくとも約5%または少なくとも約10%(v/v)の配位性共溶媒を含む。好ましくは、反応混合物中に存在する水混和性の配位性共溶媒の量は、反応またはワークアップの間の相分離を妨害するほどの大きさではない。種々の実施形態では、配位性共溶媒は、反応混合物の約20%、約15%、または約10%(v/v)以下を構成する。
【0040】
本明細書において用いる場合、「離核性(nucleofugic)」という用語は、本発明のプロセスの転移条件下で求核性の置換を受け得る任意の基をいう。このような離核性の基は、当該分野で公知である。好ましくは、離核性の基はハロゲン、より好ましくはクロロまたはブロモである。式(II)のホウ素「アート」錯体を式(I)のボロン酸エステル化合物へ変換する転移反応の経過において、離核性基Yは、Yとして遊離される。例えば、Yがクロロである場合、塩化物イオンは工程(b)で遊離される。
【0041】
変数のMは、式(II)のホウ素「アート」錯体における負に荷電された四価のホウ素原子の任意の陽イオン性の対イオンである。いくつかの好ましい実施形態では、Mは、Li、NaおよびKからなる群より選択される。当業者は、塩Mが、工程(b)の転移反応における副生成物として形成されることを認識する。
【0042】
変数のRは好ましくは、良好な移動性の適性を有する基である。ある実施形態では、RはC1−8脂肪族、C6−10アリール、または(C6−10アリール)(C1−6脂肪族)であり、その基のいずれかが必要に応じて置換されている。特定の実施形態では、RはC1−4脂肪族、特にイソブチルである。
【0043】
変数のRは好ましくは、水素、離核性の基、または必要に応じて置換されたC1−8脂肪族、C6−10アリール、または(C6−10アリール)(C1−6脂肪族)基である。可変性のRは好ましくは、離核性の基、または必要に応じて置換されたC1−8脂肪族、C6−10アリール、または(C6−10アリール)(C1−6脂肪族)基である。当業者は、官能性の置換基は、この官能性の置換基が式(II)のホウ素「アート」錯体の形成を妨害しないという条件であれば、R、RまたはRのいずれに存在してもよいということを理解する。
【0044】
本発明の1実施形態は、Rが離核性の基である式(I)のボロン酸エステル化合物を調製するためのプロセスに関する。このような化合物は、下記のとおり、α−アミノボロン酸エステルおよび酸化合物を含む、α置換されたボロン酸エステルおよび酸化合物の合成のための中間体として有用である。特定の好ましい実施形態では、Rは離核性の基であり、Rは水素である。
【0045】
変数のRおよびRは、同じであっても異なってもよい。ある実施形態では、RおよびRは、直接結合され、その結果RおよびRは介在する酸素およびホウ素原子と一緒になって、N、OまたはSから選択される0〜2個のさらなる環ヘテロ原子を有し得る、必要に応じて置換された、5員〜10員の環を形成する。ある実施形態では、この環は、5員または6員の環、好ましくは5員の環である。
【0046】
本発明は、RおよびRが直接結合されて一緒にキラル部分である、式(II)のホウ素「アート」錯体のルイス酸促進転移に特に有利である。本発明の1実施形態は、R、RおよびRを保有する炭素原子がキラル中心である式(I)のボロン酸エステル化合物を提供するためのこのようなキラルホウ素「アート」錯体の転移に関する。この転移反応は好ましくは、R−Rキラル部分による高い程度の立体方向で進んで、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して少なくとも約96:4のR、RおよびRを保有する炭素原子でジアステレオマー比を有する式(I)のボロン酸エステル化合物を提供する。好ましくはこのジアステレオマー比は少なくとも約97:3である。
【0047】
「立体異性体(stereoisomer)」、「エナンチオマー(enantiomer)」、「ジアステレオマー(diastereomer)」、「エピマー(epimer)」および「キラル中心(chiral center)」という用語は、各々の意味に従って本明細書において用いられて、当業者による通常の用法で示される。従って、立体異性体とは、同じ原子連結性を有するが、原子の空間配列は異なる化合物である。エナンチオマーは鏡像関係を有する立体異性体であり、すなわち全ての対応するキラル中心で立体化学的な配置が反対である。ジアステレオマーは、2つ以上のキラル中心を有する立体異性体であり、対応するキラル中心のうち全てではないが少なくとも1つの立体化学的配置が反対であるという点でお互いとは異なる。エピマーは、1つだけのキラル中心で立体化学的配置が異なるジアステレオマーである。
【0048】
本明細書において用いる場合、「ジアステレオマー比(diastereomeric
ratio)」という用語は、同じ分子の第二のキラル中心に対して、1つのキラル中心で立体化学的配置が異なるジアステレオマーの間の比をいう。例えば、2つのキラル中心を有する化学構造によって、4つの可能性のある立体異性体:RR、RS、SR、およびSSが得られ、ここで星印は、各々の立体異性体における対応するキラル中心を示す。立体異性体のこのような混合物のジアステレオマー比は、1つのジアステレオマーおよびそのエナンチオマー対他のジアステレオマーおよびそのエナンチオマーの比=(RR+SS):(RS+SR)である。
【0049】
当業者は、分子が3つ以上のキラル中心を有する場合、さらなる立体異性体が可能であることを理解する。本発明の目的に関しては、「ジアステレオマー比(diastereomeric ratio)」という用語は、複数のキラル中心を有する化合物に関して、2つのキラル中心を有する化合物に関して有するのと同じ意味を有する。従って、「ジアステレオマー比」という用語は、特定されたキラル中心でRRまたはSS配置を有する全ての化合物対この特定のキラル中心でRSまたはSR配置を有する全ての化合物の比を指す。便宜上、この比は、第二の特定されたキラル中心に対する、星印を付けた炭素でのジアステレオマー比として本明細書においては言及される。
【0050】
このジアステレオマー比は、特定のキラル中心で種々の相対的な立体化学配置を有するジアステレオマー化合物の間を識別するために適切な任意の分析方法によって測定され得る。このような方法としては、限定はしないが、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)、および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法が挙げられる。
【0051】
上記のように、本発明の1実施形態は、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して少なくとも約96:4というR、RおよびRを保有する炭素原子でのジアステレオマー比を有する式(I)のボロン酸エステル化合物を提供するプロセスに関する。当業者は、R−Rキラル部分は、2つ以上のキラル中心をそれ自体が含み得るということを認識する。R−Rが2つ以上のキラル中心を有する場合、これは好ましくは高いジアステレオマー純度を有し、そしてR、RおよびRを保有する炭素原子でのジアステレオマー比は、R−Rにおけるキラル部分のいずれか1つに対して測定され得る。
【0052】
本発明のプロセスでは、R−Rキラル部分は好ましくは、高レベルのエナンチオマー純度を有する。本発明の目的については、「エナンチオマー純度(enantiomeric purity)」という用語を用いて、「エナンチオマー過剰率(enantiomeric excess)」を意味し、これは、主なエナンチオマーがマイナーなエナンチオマーより過剰である量であり、全体のパーセンテージとして表される。好ましくは、R−Rキラル部分は、少なくとも約98%、さらに好ましくは少なくとも約99%、それよりさらに好ましくは少なくとも99.5%、そして最も好ましくは少なくとも約99.9%のエナンチオマー純度を有する。
【0053】
−Rキラル部分が極めて高いエナンチオマー純度を有する場合、R、RおよびRを保有する炭素原子でのジアステレオマー比は、その中心でのエピマー比に近似し、すなわち、ジアステレオマー≡(RR):(SR)または(RS):(SS)≡(R):(S)である。本明細書において用いる場合、「エピマー比(epimeric ratio)」という用語は、所定のキラル中心で1つの絶対的な立体化学的配置を有する生成物対対応するキラル中心で反対の絶対的な立体化学配置を有する生成物の比を指す。好ましくは、この生成物は、全ての他の対応するキラル中心で同一の立体化学的配置を有する。従って、1実施形態では、本発明は、式(I)のボロン酸エステルを得るための式(II)のキラルホウ素「アート」錯体の転移に関し、ここでR、RおよびRを保有する炭素原子でのエピマー比は、少なくとも約96:4、さらに好ましくは少なくとも約97:3である。
【0054】
本発明の実施における使用に適切なルイス酸は、離核性基と錯化してRの移動の際にその置換を容易にし得るルイス酸である。好ましくは、ルイス酸はさらに、ホウ素に結合された酸素原子と配位し得る。適切なルイス酸の非限定的な例としては、臭化亜鉛、塩化亜鉛、臭化第二鉄および塩化第二鉄が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、ルイス酸は塩化亜鉛である。
【0055】
接触工程は好ましくは、低温で行われるが、周囲温度または高温で行われてもよい。適切な反応温度の選択は主に、使用されるルイス酸に、そして同様にR部分の移動適性に依存する。当業者は、用いられる反応条件の観点から適切な温度を選択し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、接触工程は、少なくとも約−100℃、−78℃または−60℃の反応温度で行われる。ある実施形態では、接触工程は、約80℃、40℃または30℃以下の反応温度で行われる。これらの高温および低温を包含する任意の範囲が、本発明の範囲内に包含される。好ましくは、この接触工程は、約−100℃〜約80℃、約−70℃〜約40℃、約−60℃〜約30℃、または約−50℃〜約30℃の範囲の反応温度で行われる。特定の好ましい実施形態では、この接触工程は、低温で、好ましくは約−70℃〜約−30℃の範囲で開始され、ついでこの反応混合物は、好ましくは周囲温度まで温められる。
【0057】
驚くべき事に、本発明のプロセスは、転移反応自体の間の水の存在を回避するために特別な注意は必要としない。ある実施形態では、ジアステレオマー比の悪化が最小である、湿性のルイス酸を使用する。ルイス酸について用いる場合、「湿性(moist)」という用語は、ルイス酸の水含量が約100、200、500または1,000ppmより大きいことを意味する。著しい事に、ルイス酸は、ジアステレオマー比に有害な影響なしに水溶液の形態で反応混合物に添加さえされ得る。
【0058】
従って、ある実施形態では、本発明のプロセスは、以下の工程:
(a)式(II)のホウ素「アート」錯体および
(i)水との混和性が低い配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との混和性が低いエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む溶液を提供する工程と;
(b)工程(a)の溶液に対して、水およびルイス酸を含むルイス酸溶液を添加する工程;
を包含する。
【0059】
いくつかの他の実施形態では、このルイス酸溶液はテトラヒドロフランおよびルイス酸を含む。
【0060】
従って、先行技術のプロセスとは異なり、本発明のプロセスは大規模の生成に容易に適合できる。種々の実施形態では、式(II)のホウ素「アート」錯体の少なくとも約5、10、20、50、100、500または1000モルを、式(I)のボロン酸エステル化合物が得られる条件下でルイス酸と接触させる。本発明はさらに、本明細書において上記されるような、式(I)のボロン酸エステル化合物、および水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む組成物を提供する。この組成物は好ましくは、式(I)のボロン酸エステル化合物の少なくとも約5、10、20、50、100、500または1000モルを含む。特定の実施形態では、RおよびRは一緒になって、キラル部分であり、そしてこの組成物に存在する式(I)の化合物は、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、R、RおよびRを保有する炭素原子での少なくとも約96:4というジアステレオマー比を有する。
【0061】
反応のワークアップは好ましくは、式(I)のボロン酸エステル化合物を含む残渣を得るために、水溶液での反応混合物の洗浄および溶媒の除去によるこの洗浄された反応混合物の濃縮を包含する。好ましくは、この残渣は、式(I)のボロン酸エステル化合物の少なくとも約5、10、20、50、100、500または1000モルを含む。これらの実施形態では、R−Rがキラル部分である場合、この残渣に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物は好ましくは、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、R、RおよびRを保有する炭素原子での少なくとも約96:4というジアステレオマー比を有する。さらに好ましくは、このジアステレオマー比は少なくとも約97:3である。
【0062】
式(II)のホウ素「アート」錯体は、任意の公知の方法によって調製され得るが、好ましくは、式(III)のボロン酸エステル:
【0063】
【化69】


と、式(IV)の試薬:
【0064】
【化70】


との反応によって調製され、
ここでM、YおよびR〜Rの各々は、式(II)のホウ素「アート」錯体について上記されたとおりである。ある実施形態では、この反応は、少なくとも約−100℃、−78℃または−60℃の反応温度で行われる。ある実施形態では、この反応は、約0℃、−20℃、または−40℃以下の反応温度で行われる。これらの高温および低温を包含する任意の範囲が、本発明の範囲内に包含される。好ましくは、この反応は、約−100℃〜約0℃、約−78℃〜約20℃、または約−60℃〜約−40℃の範囲の反応温度で行われる。ある実施形態では、式(II)のホウ素「アート」錯体は、水との低混和性を有するエーテル溶媒を含む溶液中で調製され、そしてこの反応混合物は、式(I)のボロン酸エステル化合物への転移を果たすためにルイス酸で直接処理される。
【0065】
ある実施形態では、式(IV)の試薬は、インサイチュで形成される。このような実施形態は以下の工程を包含する:
(i)上記のような式(III)のボロン酸エステルと、RおよびRが式(IV)の試薬について上記されたとおりの式(V):
【0066】
【化71】


とを含む溶液を提供する工程と;
(ii)強力な立体的に障害された塩基を用いてこの溶液を処理して式(II)のホウ素「アート」錯体を形成する工程。
【0067】
ある実施形態では、立体的に障害された塩基が式MN(Rのアルカリ金属ジアルキルアミド塩基であって、ここでMはLi、NaまたはKであり、そして各々のRが独立して、分枝したかまたは環状のC3−6脂肪族である。式(IV)の試薬のインサイチュ形成は、式(IV)の試薬の不安定性に起因して、Yが離核性の基である実施形態において特に有利である。
【0068】
式(III)のボロン酸エステルは、任意の公知の方法によって調製されてもよいが、代表的には、対応するボロン酸化合物のエステル化によって、例えば、Brownら、Organometallics,2:1311〜316(1983)に記載の方法によって調製される。式(III)の環状ボロン酸エステルは好ましくは以下によって調製される:
(a)以下:
(i)式R−B(OH)のボロン酸化合物と;
(ii)式HO−R−R−OHの化合物であって、RおよびRが一緒になって、2〜5個の炭素原子およびN、OもしくはSからなる群より選択された0〜2個のヘテロ原子を含む必要に応じて置換された連結鎖である化合物と;
(iii)水との共沸混合物を形成する有機溶媒と;
を含む溶液を提供する工程と;
(b)水の共沸除去をしながら、この溶液を加熱還流する工程。
【0069】
およびRに関して用いる場合、「連結鎖(linking chain)」という用語は、RおよびRが結合される酸素原子を連結する原子の最も短い直鎖をいう。この連結鎖は必要に応じて任意の鎖原子で置換され、そして1つ以上の鎖原子がまた、直鎖の連結鎖に対するスピロであるか、縮合されるか、または架橋している環系の一部を形成し得る。一例として、限定はしないが、ある実施形態では、式HO−R−R−OHの化合物は、以下の構造:
【0070】
【化72】


を有するピナンジオールである。ある実施形態では、この連結鎖R−Rは、2つの炭素原子を含み、これが一緒になってビシクロ[3.1.1]ヘプタン環系の片側を形成し、そしてその一方はさらにメチル基で置換される。
【0071】
ある実施形態では、式HO−R−R−OHの化合物は、キラルジオールであり、好ましくは高いジアステレオマー純度およびエナンチオマー純度を有するものである。当業者は、このような実施形態で、R、RおよびRを保有する炭素での立体化学的配置を指向するために、式HO−R−R−OHの化合物がキラル補助として使用されるということを理解する。有機合成におけるキラル補助として有用なキラルジオールは、当該分野で周知である。非限定的な例としては、2,3−ブタンジオール、好ましくは(2R,3R)−(−)−2,3−ブタンジオールまたは(2S,3S)−(+)−2,3−ブタンジオール;ピナンジオール、好ましくは(1R、2R、3R、5S)−(−)−ピナンジオールまたは(1S,2S,3S,5R)−(+)−ピナンジオール;1,2−シクロペンタンジオール、好ましくは(1S,2S)−(+)−trans−1,2−シクロペンタンジオールまたは(1R,2R)−(−)−trans−1,2−シクロペンタンジオール;2,5−ヘキサンジオール、好ましくは(2S,5S)−2,5−ヘキサンジオールまたは(2R,5R)−2,5−ヘキサンジオール;1,2−ジシクロヘキシル−1,2−エタンジオール、好ましくは(1R,2R)−1,2−ジシクロヘキシル−1,2−エタンジオールまたは(1S,2S)−1,2−ジシクロヘキシル−1,2−エタンジオール;ヒドロベンゾイン、好ましくは(S,S)−(−)−ヒドロベンゾインまたは(R,R)−(+)−ヒドロベンゾイン;2,4−ペンタンジオール、好ましくは(R,R)−(−)−2,4−ペンタンジオールまたは(S,S,)−(+)−2,4−ペンタンジオール;エリスロニックγ−ラクトン、好ましくは、D−エリスロニックγ−ラクトンが挙げられる。炭水化物、例えば、1,2,5,6−対称的保護マンニトールもキラルジオールとして用いられ得る。
【0072】
エステル化反応における使用に適切な有機溶媒の非限定的な例としては、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、およびその混合物が挙げられる。ある実施形態では、この有機溶媒はエーテル溶媒、好ましくは、水との低混和性を有するエーテル溶媒である。特定の好ましい実施形態では、エステル化反応は、水との低混和性を有するエーテル溶媒中で行い、そして式(III)のボロン酸エステルを含む生成物溶液を、ボロン酸エステルの単離なしに、直接次の工程に用いる。
【0073】
上記で注記したとおり、本発明のプロセスにより初めて、ジアステレオマー比の有意な悪化なしに大規模反応ワークアップが実施可能となる。従って、別の局面では、本発明は、式(I)のボロン酸エステル化合物:
【0074】
【化73】


の少なくとも約5、10、20、50、100、500または1000モルを含む組成物を提供し、
ここで:
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;
が、離核性基、または必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であり;そして
およびRが介在する酸素およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環のキラル環を形成し;
ここで、R、RおよびRが結合される炭素原子が、R−Rキラル部分におけるキラル中心に対して、少なくとも約96:4、好ましくは少なくとも約97:3のジアステレオマー比を有する、キラル中心である。
【0075】
〜Rの好ましい値は上記のとおりである。好ましくは、溶媒は、本発明のこの局面による組成物の約30%(w/w)、20%(w/w)、10%(w/w)または5%(w/w)未満を構成する。ある実施形態では、式(I)のボロン酸エステル化合物は、この組成物の少なくとも約70%(w/w)、80%(w/w)、90%(w/w)または95%(w/w)を構成する。
【0076】
1実施形態は、以下の特徴のうちの少なくとも1つが存在する上記の組成物に関している:
(a)Rはクロロである;
(b)ボロン酸エステル化合物(I)が
【0077】
【化74】


である;
(c)Rが水素である;そして
(d)RがC1−4脂肪族である。
【0078】
この組成物中に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物の全てが、単回のバッチの試行で生成され得る。本発明の目的に関しては、「バッチ試行(batch run)」という用語は、合成プロセスの遂行をいい、ここではこのプロセスの各工程は一回しか行われない。好ましくは、この組成物に存在する式(I)のボロン酸エステル化合物は、本発明の第一の局面によるプロセスの単回バッチの試行で調製される。当業者は大規模プロセスの単回バッチ試行による所定の量の生成物の調製がさらに効率的であり、そして小規模プロセスの繰り返しの遂行による同じ量の生成物の調製よりも均一な生成物を提供することを理解する。
【0079】
が離核性の基である式(I)のボロン酸エステル化合物は、α−アミノボロン酸エステル化合物の合成のための中間体として有用である。従って、別の局面では、本発明は、好ましくは以下の工程を含むプロセスによって、αアミノボロン酸エステルを調製するための大規模プロセスを提供する:
(a)式(II)のホウ素「アート」錯体:
【0080】
【化75】


を調製するための工程であって、ここで
Yが離核性の基であり;
が陽イオンであり;
が必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;
が水素であり;
は離核性基であり;かつ
およびRの各々が独立して、必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基もしくは芳香族複素環基であるか;またはRおよびRが介在する酸素およびホウ素原子と一緒になって、N、OもしくはSから選択された0〜2個のさらなる環のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員環〜10員環の環を形成する工程と;
(b)式(II)のこのホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、R〜Rの各々は上記のとおりである式(I)のボロン酸エステル化合物:
【0081】
【化76】


が得られる条件下で接触させる工程であって、この接触工程は
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合中で行われる工程と;
(c)式(I)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、各々のGが個々にまたは一緒になって、アミノ基保護基である式M−N(G)の試薬を用いて処理して、式M−Rの副生成物、ならびに各々のGおよびR〜Rが上記のとおりである式(VIII)の化合物:
【0082】
【化77】


を形成する工程と;
(d)このG基を除去して、式(VII)の化合物:
【0083】
【化78】


またはその酸付加塩を形成する工程。
【0084】
ある実施形態では、工程(c)では、式(I)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、各々のRが独立して、アルキル、アラルキルおよびアリールからなる群より選択され、このアリールまたはこのアラルキルのアリール部分が必要に応じて置換される、式M−N(Si(Rの試薬で処理する。
【0085】
式(I)のボロン酸エステル化合物と式M−N(G)の試薬との反応は好ましくは、約−100℃〜約50℃の範囲、好ましくは約−50℃〜約25℃、そしてさらに好ましくは約−30℃〜約0℃の範囲の反応温度で行われる。ある実施形態では、Rはハロ、好ましくはクロロであり、そしてMはLiである。式(VIII)の生成物の単離を容易にするために、この反応混合物は好ましくは、副生成物M−Rが低溶解度を有する有機溶媒を含む。適切な有機溶媒の非限定的な例としては、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサンおよびトルエンが挙げられる。ある実施形態では、工程(c)はさらに、反応混合物を濾過して、M−Rを除去し、式(VIII)の化合物を含む濾液を提供する工程を包含する。好ましくはこの濾液は工程(d)で直接用いられる。
【0086】
副生成物M−Rが低い溶解度を有する有機溶媒を反応混合物が含む実施形態では、この反応混合物は副生成物M−Rが高い溶解度を有する溶媒をさらに含んでもよい。このような場合、副生成物M−Rが高い溶解度を有する溶媒は好ましくは反応混合物の濾過の前に除去される。一例として、ある実施形態では、式M−N(Si(Rの試薬を、テトラヒドロフランを含む溶液として反応混合物に添加する。このような実施形態では、工程(c)は好ましくは、反応混合物を濾過する前にテトラヒドロフランを除去する工程をさらに包含する。
【0087】
当業者は、式(VIII)の化合物中の保護基Gを除去するために用いられ得る種々の方法、例えば、水性の加水分解または酸での処理を含む方法を承知している。式(VII)の生成物αアミノボロン酸エステルは、低い安定性を有し、好ましくは直ちに誘導体化される(Mattesonら、J.Am.Chem.Soc.,103:5241(1981))か、または酸付加塩として単離される。ある実施形態では、工程(d)は、式(VIII)の化合物を酸を用いて処理する工程と、式(VII)の化合物を酸付加塩として単離する工程とを包含する。特定の好ましい実施形態では、この酸はトリフルオロ酢酸であり、式(VII)の化合物はトリフルオロ酢酸付加塩として単離される。
【0088】
上記で考察したとおり、本発明のプロセスは特に、α炭素がキラル中心である式(VII)のα−アミノボロン酸エステル化合物を調製するためによく適している。従って、本発明の1実施形態は、式(VIIa)または(VIIb)のαアミノボロン酸エステル化合物:
【0089】
【化79】


、またはその酸付加塩を調製するための大規模プロセスに関しており、ここで:
は必要に応じて置換された脂肪族基、芳香族基または芳香族複素環基であり;そして
およびRが介在する酸素およびホウ素原子と一緒になって、必要に応じて置換されたキラル環状ボロン酸エステルを形成し;
このプロセスは:
(a)式(IIa)または(IIb)のホウ素「アート」錯体:
【0090】
【化80】


を提供する工程であって、
Yは離核性基であり;
が陽イオンであり;
が水素であり;
が離核性基であり;かつ
およびRが上記のとおりである;工程と、
(b)式(IIa)または(IIb)のホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、R〜Rの各々が上記に規定されるとおりである式(Ia)または(Ib)のボロン酸エステル化合物:
【0091】
【化81】


が得られる条件下で接触させる工程であって、この接触工程は
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;もしくは
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合中で行われる工程と;
(c)式(Ia)または(Ib)のボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であって、かつGがアミノ基保護部分である式M−N(G)の試薬を用いて処理して、各々のGおよびR〜Rが上記のとおりである式(VIIIa)または(VIIIb)の化合物:
【0092】
【化82】


を形成する工程と;
(d)このG基を除去して、式(VIIa)または(VIIb)の化合物:
【0093】
【化83】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
を包含する。
【0094】
Y、M、R〜R、およびGについての好ましい値は上記のとおりである。式(VIIa)または(VIIb)の化合物は好ましくは、R−Rキラル部分中のキラル中心に対して、少なくとも約96:4、より好ましくは少なくとも約97:3というα炭素でのジアステレオマー比を有する。
【0095】
式(VII)のαアミノボロン酸エステル化合物は、ペプチジルボロン酸エステル化合物の調製のために有用な合成中間体である。従って、ある実施形態では、本発明のこの局面によるプロセスはさらに、式(VII)の化合物と式(IX)の化合物:
【0096】
【化84】


であって、
がアミノ基ブロッキング部分であり;
が水素、C1−10脂肪族、必要に応じて置換されたC6−10アリール、またはC1−6脂肪族−Rからなる群より選択され;そして
がアルコキシ、アルキルチオ、必要に応じて置換されたアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル基、および必要に応じて保護されたアミノ、ヒドロキシおよびグアニジノ基からなる群より選択され;そして
XがOHまたは脱離基である化合物;
とをカップリングさせて式(X)の化合物:
【0097】
【化85】


であって、各々のP、R、R、RおよびRが上記のとおりである化合物を形成する工程を包含する。
【0098】
脱離基Xは、式(VII)の化合物のαアミノ基によって求核性置換し得る任意の基である。ある実施形態では、部分−C(O)−Xは、O−(N−ヒドロキシスクシンイミド)エステルのような活性化エステルである。ある実施形態では、活性化エステルは、XがOHである式(IX)の化合物とペプチドカップリング試薬とを接触させることによってインサイチュで生成される。適切なペプチドカップリング試薬の例としては、限定はしないが、カルボジイミド試薬、例えば、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC);ホスホニウム試薬、例えば、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬);およびウロニウム試薬、例えば、O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)が挙げられる。
【0099】
当業者はまた、事前の脱保護工程なしに、シリル保護アミンの直接カップリングを可能にする手順を承知している。このような手順では、シリル基は、カップリング反応条件のもとにおいてインサイチュで除去される。従って、本発明のある実施形態では、式(VIII)の化合物を、インサイチュで(RSi基を除去する条件下で式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を形成する。
【0100】
本発明の目的に関しては、「アミノ基ブロッキング部分(amino−group blocking moiety)」という用語は、アミノ基を誘導体化するために用いられる任意の基、特にペプチドまたはアミノ酸のN末端アミノ基をいう。「アミノ基ブロッキング部分」という用語は、限定はしないが、有機合成、特にペプチド合成において通常使用される保護基を包含する。例えば、GrossおよびMienhoffer編、The Peptides,第3巻、Academic Press,New York,1981、pp3−88;Green and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版、John Wiley and Sons,Inc.,New York,1999を参照のこと。しかし、他に特定しない限り、アミノ基保護部分が容易に切断可能である必要はない。アミノ基ブロッキング部分としては、例えば、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびスルホニル部分が挙げられる。ある実施形態では、アミノ基ブロッキング部分は、アミノ酸もしくはペプチド由来のアシル部分、またはその誘導体もしくはアナログである。
【0101】
本明細書において用いる場合、「アミノ酸(amino acid)」という用語は、天然に存在する、そして天然ではないアミノ酸の両方を包含する。本発明の目的については、アミノ酸の「誘導体(derivative)」またはペプチドとは、N末端または側鎖上の官能基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシまたはグアニジノ基が、ブロッキング基で修飾されているものである。本明細書において用いる場合、アミノ酸またはペプチドの「アナログ」とは、修飾された骨格または側鎖を含むものである。「ペプチドアナログ(peptide analog)」という用語は、1つ以上の立体中心が反転され、かつ1つ以上のペプチド結合がペプチドアイソスターで繰り返されるペプチドを包含するものとする。
【0102】
ある実施形態では、Pは切断可能な保護基である。切断可能な保護基の例としては、限定はしないが、アシル保護基、例えば、ホルミル、アセチル(Ac)、スクシニル(Suc)、またはメトキシスクシニル(MeOSuc)、およびウレタン保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、またはフルオロニルメトキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。
【0103】
このような実施形態のいくつかでは、本発明の局面によるプロセスはさらに以下の工程:
(f)保護基Pを除去して、R、R、RおよびRの各々が上記のとおりである式(XI)の化合物:
【0104】
【化86】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(g)式(XI)の化合物と、上記のとおりPがアミノ基ブロッキング部分であって、Xが脱離基である式P−Xの試薬とをカップリングさせて、P、R、R、RおよびRの各々が上記のとおりである式(XII)の化合物:
【0105】
【化87】


を形成する工程と、を包含する。Pが、例えば、アミノ酸もしくはペプチド由来のアシル部分、またはそれらのアナログもしくは誘導体を含むアシル基であるそれらの実施形態では、脱離基Xは式(IX)の化合物について上記されたとおり、インサイチュで生成され得るということを当業者は理解する。
【0106】
化合物(X)および(XII)の各々では、ボロン酸部分は、ボロン酸エステルとして保護される。所望の場合、このボロン酸部分は、当該分野で公知の任意の方法によって脱保護され得る。好ましくは、このボロン酸部分は、二相性の混合物中でのエステル交換反応によって脱保護される。さらに好ましくは、このボロン酸脱保護工程は、以下の工程:
(i)式(X)または(XII)のボロン酸エステル化合物と、有機ボロン酸アクセプターと、低級アルコールと、C5−8炭化水素溶媒と無機酸水溶液とを含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)この二相性混合物を撹拌して式(Xa)または(XIII)の対応する脱保護されたボロン酸化合物
【0107】
【化88】


を得る工程と;
(iii)この溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(Xa)、(XIII)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;を包含する。
【0108】
工程(i)における有機ボロン酸アクセプターは好ましくは、脂肪族、アリールまたはアル(アリファリティック)ボロン酸(ar(aliphatic)boronic acid)である。ある実施形態では、このボロン酸アクセプターは、フェニルボロン酸、ベンジルボロン酸、ブチルボロン酸、ペンチルボロン酸、ヘキシルボロン酸およびシクロヘキシルボロン酸からなる群より選択される。特定の実施形態では、このボロン酸アクセプターは、イソブチルボロン酸である。ある実施形態では、このボロン酸アクセプターは、式(III)のボロン酸エステル化合物が脱保護反応の副生成物として形成されるように選択される。次いで、式(III)のボロン酸エステル化合物は、上記のプロセスの別のバッチの試行で用いられ得る。このような実施形態では、R−R部分は有効にリサイクルされ、これは、R−Rが高価なキラル部分である場合に特に有利であり得る。
【0109】
この生成物の純度を向上するために、式(Xa)または(XIII)の化合物を含む水層を好ましくは洗浄して、抽出工程(iv)の前に中性の有機不純物を取り除く。このような実施形態では、工程(iii)は好ましくは以下の工程:
(1)溶媒層を分離する工程と;
(2)水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いてこの水層を洗浄する工程と;
(4)約6未満のpHまでこの水層を調節する工程と;
を包含する。
【0110】
ある実施形態では、本発明は、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブを製造するための改良されたプロセスに関する。従って、1実施形態では、本発明は、式(XIV)の化合物:
【0111】
【化89】


またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスを提供する。このプロセスは以下の工程:
(a)式(XV)のホウ素「アート」錯体:
【0112】
【化90】


を提供する工程であって、
が離核性基であり;
Yが離核性基であり;かつ
がアルカリ金属である、工程と;
(b)式(XV)のホウ素「アート」錯体とルイス酸とを式(XVI)のボロン酸エステル化合物:
【0113】
【化91】


を得る条件下で接触させる工程であって、この接触工程が:
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合物中で行われる、工程と;
(c)式(XVI)のボロン酸エステル化合物を、式M−N(G)の試薬であって、Mがアルカリ金属であり、かつ各々のGが独立して、または一緒になって、アミノ基保護基である試薬を用いて処理して、式(XVII)の化合物:
【0114】
【化92】


を形成する工程と;
(d)このG基を除去して、式(XVIII)の化合物:
【0115】
【化93】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(e)式(XVIII)の化合物と、
が切断可能なアミノ基保護部分であり;かつ
XがOHまたは脱離基である、
式(XIX)の化合物:
【0116】
【化94】


とをカップリングさせて、Pが上記のとおりである、式(XX)の化合物
【0117】
【化95】


を形成する工程と;
(f)この保護基Pを除去して式(XXI)の化合物:
【0118】
【化96】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(g)式(XXI)の化合物と、XがOHまたは脱離基である式(XXII)の試薬:
【0119】
【化97】


とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物:
【0120】
【化98】


を形成する工程と;
(h)このボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程と;を包含する。
【0121】
ある実施形態では、このプロセスは、以下の特徴(1)〜(5)のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。特定の好ましい実施形態では、このプロセスは、以下の5つの特徴(1)〜(5)の全てによって特徴付けられる:
(1)式(XV)のホウ素「アート」錯体において、RおよびYの両方がクロロである;
(2)上記カップリング工程(e)が、以下の工程を包含する:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIX)の化合物とを、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下でカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程
(3)上記保護基除去工程(f)が以下の工程を包含する:
(i)式(XX)の化合物を、酢酸エチルに含有されるHClを用いて処理する工程と;
(ii)この反応混合物にヘプタンを添加する工程と;
(iii)式(XXI)の化合物を結晶化させることによってそのHCl付加塩として単離する工程
(4)このカップリング工程(g)が以下の工程を包含する:
(i)式(XXI)の化合物と、ジクロロメタンに含まれるTBTUおよび三級アミンの存在下で2−ピラジンカルボン酸とカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程
(5)ボロン酸脱保護工程(h)が以下の工程を包含する:
(i)式(XXIII)の化合物、有機ボロン酸アクセプターと、低級アルカノールと、C5−8炭化水素溶媒と無機酸水溶液とを含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)この二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)この溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程。
【0122】
好ましくは工程(h)(iii)は以下の工程:
(1)上記溶媒層を分離する工程と;
(2)上記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いてこの水層を洗浄する工程と;
(4)約6未満のpHまでこの水層を調節する工程と;
を包含する。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、式(XIV)の化合物:
【0124】
【化99】


またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスに関し、このプロセスは以下の工程を包含する:
(aa)式(XVIII)の化合物:
【0125】
【化100】


またはその酸付加塩と、
が切断可能なアミノ基保護部分であり;かつ
XがOHまたは脱離基である;
式(XIX)の化合物
【0126】
【化101】


とをカップリングさせて、Pが上記のとおりである式(XX)の化合物:
【0127】
【化102】


を形成する工程であって、このカップリング工程(aa)が以下の工程:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIX)の化合物とを、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下においてカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;を包含する、工程と;
(bb)この保護基Pを除去して式(XXI)の化合物:
【0128】
【化103】


またはその酸付加塩を形成する工程であって、この保護基除去工程(bb)が以下の工程:
(i)酢酸エチルに含まれるHClを用いて式(XX)の化合物を処理する工程と;
(ii)この反応混合物に対してヘプタンを添加する工程と;
(iii)式(XXI)の化合物を結晶化することによってそのHCl付加塩として単離する工程と;
を包含する工程と;
(cc)この式(XXI)の化合物と、
XがOHまたは脱離基である式(XXII)の試薬
【0129】
【化104】

とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物:
【0130】
【化105】


を形成する工程であって、このカップリング工程(cc)が以下の工程:
(i)式(XXI)の化合物と2−ピラジンカルボン酸とを、ジクロロメタン中に含まれるTBTUおよび三級アミンの存在下でカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;
を包含する工程と;
(dd)このボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程であって、この脱保護工程(dd)が以下の工程:
(i)式(XXIII)の化合物と、有機ボロン酸アクセプターと、低級アルカノールと、C5−8炭化水素溶媒と無機酸水溶液とを含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)この二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)この溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;
を包含する工程。
【0131】
好ましくは、工程(dd)(iii)は以下の工程:
(1)上記溶媒層を分離する工程と;
(2)上記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いてこの水層を洗浄する工程と;
(4)約6未満のpHまでこの水層を調節する工程と;
を包含する。
【0132】
上記のプロセスの有効性は、工程を入れ子にすることによって、例えば、1つの反応由来の反応混合物または完成された生成物溶液を、中間生成物の単離なしに以下の反応に直接持ち込むことによってさらに高められる。例えば、ある実施形態では、工程(e)(iii)または(aa)(iii)によって、式(XX)の化合物を含む酢酸エチル溶液が得られ、そしてこの酢酸エチル溶液は、工程(f)または(bb)において保護基Pを除去するために有効な条件に直接供される。いくつかのこのような実施形態では、この保護基Pは、酸不安定性保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)であり、そして工程(e)(iii)または(aa)(iii)由来の酢酸エチル溶液は酸で処理される。特定の好ましい実施形態では、工程(e)(iii)または(aa)(iii)由来の酢酸エチル溶液を、共沸的に乾燥して、次いでガス状のHClで処理する。
【0133】
脱保護工程(f)または(bb)を無水条件下で行う場合、上記のように、式(XXI)の生成物は、反応混合物から結晶化によって、そのHCl付加塩として単離され得る。生成物塩の結晶化は、n−ヘプタンのような炭化水素溶媒の添加によって促進される。ある実施形態では、この反応混合物は炭化水素溶媒の添加の前に部分的に濃縮される。本発明者らは、式(XXI)の化合物のこの様式での結晶化によって、カップリング工程(e)または(aa)の間に形成され得る任意のトリペプチド不純物を効率的に除去するということを発見した。このような不純物は、合成におけるあとの段階では除去することが困難である。
【0134】
このプロセスのさらなる入れ子化は、カップリング工程(g)または(cc)由来の生成物混合物をボロン酸部分脱保護工程(h)または(dd)に直接持ち込むことによって可能である。好ましくは、カップリング反応由来の有機溶媒を、水洗浄を容易にするために酢酸エチルで最初に置換する。次いで、炭化水素溶媒への第二の溶媒交換によって、工程(g)または(cc)由来の生成物溶液を、式(XXIII)の化合物の単離なしに、二相性のボロン酸脱保護工程(h)または(dd)に直接用いることが可能になる。
【0135】
あるいは、さらに収束したアプローチを式(XIV)の化合物の合成に適合させてもよい。従って、さらに別の実施形態では、本発明は、式(XIV)の化合物:
【0136】
【化106】


またはそのボロン酸無水物を形成するための大規模プロセスを提供する。このプロセスは以下の工程:
(a)式(XV)のホウ素「アート」錯体:
【0137】
【化107】


であって、ここで
が離核性基であり;
Yが離核性基であり;かつ
がアルカリ金属である、錯体を提供する工程と;
(b)式(XV)のホウ素「アート」錯体とルイス酸とを、式(XVI)のボロン酸エステル化合物:
【0138】
【化108】


が得られる条件下で接触させる工程であって、この接触工程は:
(i)水との低混和性を有する配位性エーテル溶媒;または
(ii)水との低混和性を有するエーテル溶媒および配位性共溶媒;
を含む反応混合物中で行われる、工程と;
(c)式(XVI)の該ボロン酸エステル化合物を、Mがアルカリ金属であり、かつ各々のRが独立して、アルキル、アラルキルおよびアリールからなる群より選択され、ここでこのアリールまたはこのアラルキルのアリール部分が必要に応じて置換された、式M−N(Si(Rの試薬を用いて処理して、式(XVII)の化合物:
【0139】
【化109】


を形成する工程と;
(d)この(RSi基を除去して、式(XVIII)の化合物:
【0140】
【化110】


またはその酸付加塩を形成する工程と;
(e’)式(XVIII)の化合物と、XがOHまたは脱離基である式(XIXa)の化合物
【0141】
【化111】


とをカップリングさせて、式(XXIII)の化合物
【0142】
【化112】

を形成する工程と:
(f’)ボロン酸部分を脱保護して、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を形成する工程と;
を包含する。
【0143】
ある実施形態では、このプロセスは、以下の特徴(1)〜(3)のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。特定の好ましい実施形態では、このプロセスは下の(1)〜(3)の3つの特徴の全てによって特徴付けられる。
【0144】
(1)式(XV)のホウ素「アート」錯体において、RおよびYの両方がクロロである;
(2)前記カップリング工程(e’)が、以下の工程:
(i)式(XVIII)の化合物と、XがOHである式(XIXa)の化合物を、ジクロロメタン中に含まれる2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および三級アミンの存在下でカップリングさせる工程と;
(ii)酢酸エチルでジクロロメタンを置換するように溶媒交換を行う工程と;
(iii)酢酸エチル溶液の水洗浄を行う工程と;
を包含する;
(3)前記ボロン酸保護基工程(f’)が以下の工程:
(i)式(XXIII)の化合物と、有機ボロン酸アクセプターと、低級アルカノールと、C5−8炭化水素溶媒と無機酸水溶液とを含む二相性混合物を提供する工程と;
(ii)この二相性混合物を撹拌して式(XIV)の化合物を得る工程と;
(iii)該溶媒層を分離する工程と;
(iv)式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を有機溶媒中に抽出する工程と;
を包含する。
【0145】
好ましくは、工程(f’)(iii)が、以下の工程:
(1)上記溶媒層を分離する工程と;
(2)上記水層を塩基性のpHに調節する工程と;
(3)有機溶媒を用いてこの水層を洗浄する工程と;
(4)約6未満のpHまでこの水層を調節する工程と;
を包含する。
【0146】
上記のプロセスの工程(h)(iv)、(dd)(iv)または(f’)(iv)では、式(XIV)の化合物またはそのボロン酸無水物を好ましくは、酢酸エチルに抽出して、ヘキサンまたはヘプタンの添加によって結晶化する。ある実施形態では、このプロセスはさらに、式(XIV)の化合物のボロン酸無水物、好ましくは式(XXIV)の三量体ボロン酸無水物:
【0147】
【化113】

の単離を包含する。
【0148】
本発明のプロセスによって、極めて高い化学的純度および立体化学的純度のボルテゾミブの大規模製造が可能になる。先行技術のプロセスは、規模および得られた生成物の全体的な純度の低さで制限される。従って、さらに別の局面では、本発明は、式(XXIV)の化合物:
【0149】
【化114】


の少なくとも1キログラムを含む組成物を提供する。この式(XXIV)の化合物は好ましくは、上記のプロセスに従って調製され、そして好ましくは本発明のこの局面によるこの組成物の少なくとも99%(w/w)を構成する。
【実施例】
【0150】
(略称)
BOC tert−ブトキシカルボニル
D.I. 脱イオン化
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
GC ガスクロマトグラフィー
GC−MS ガスクロマトグラフィー−質量分析法
h 時間
HDPE 高密度ポリエチレン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LDA リチウムジイソプロピルアミド
LOD 乾燥減量
min 分
MTBE t−ブチルメチルエーテル
RP−HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
RPM 毎分回転数
TBTU O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸
THF テトラヒドロフラン。
【0151】
(実施例1:(1R)−(S)−ピナネジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸の製造プロセス)
(1S)−(S)−ピナンジオール 1−クロロ−3−メチルブタン−1−ボロン酸
1.(S)−ピナンジオール−2−メチルプロパン−1−ボロン酸(12.0kg、50.8モル)を、窒素雰囲気下に維持した反応槽に加えた。
2.tert−ブチルメチルエーテル(53kg)およびジクロロメタン(22.5kg)を加えて得られた混合物を撹拌しながら−57℃まで冷却した。
3.ジイソプロピルアミン(6.7kg)を、窒素雰囲気下に維持した別の反応槽に加えた。
4.tert−ブチルメチルエーテル(27kg)をジイソプロピルアミンに加えて、得られた混合物を撹拌しながら−10℃まで冷却した。
5.n−ヘキシルリチウム含有ヘキサン(33.2重量%の溶液)(17.6kg)を、反応温度を−10℃〜−7℃に維持したままで、57分の時間にわたってジイソプロピルアミン混合物に添加した。
6.この混合物(LDA−混合物)を、これを用いる前に、−9℃〜−7℃で33分間撹拌した。
7.塩化亜鉛(12.1kg)を窒素雰囲気下に維持した第三の反応槽に加えた。
8.tert−ブチルメチルエーテル(16kg)を塩化亜鉛に加えて、得られた混合物を撹拌しながら30℃まで温めた。
9.テトラヒドロフラン(53kg)を、反応温度を35℃〜40℃に維持したままで、18分の時間にわたってこの塩化亜鉛懸濁液に添加した。
10.この混合物(ZnCl−混合物)を、用いるまで38℃〜39℃で4時間28分撹拌した。
11.反応温度を−60℃〜−55℃に維持したままで、(S)−ピナンジオール−2−メチルプロパン−1−ボロン酸を含有する反応容器に、LDA−混合物(#3〜6)を、60分の時間にわたって添加した。
12.tert−ブチルメチルエーテルリンス(10kg)を用いてこの添加を完了した。
13.この反応混合物を−59℃〜−55℃でさらに20分間撹拌した。
14.この反応混合物を11分の時間にわたって−50℃まで温めた。
15.反応温度を−50℃〜−45℃に維持したままで、(S)−ピナンジオール−2−メチルプロパン−1−ボロン酸およびLDA−混合物を含有する反応容器に、ZnCl混合物(#7〜10)を48分の時間にわたって添加した。
16.tert−ブチルメチルエーテルリンス(10kg)を用いてこの添加を完了した。
17.この反応混合物を−45℃〜−40℃でさらに30分間撹拌し、次いで81分の時間にわたって10℃に温めた。
18.反応温度を10℃〜21℃に維持したままで、10%硫酸溶液(72kg)を40分の時間にわたって反応槽に添加した。
19.水相を分離する前に、反応混合物を環境温度で16分間撹拌した。
20.この有機相を脱イオン(D.I.)水(32kg)および10%塩化ナトリウム溶液(26.7kg)を用いて連続的に洗浄し、各々の洗浄では環境温度での15〜17分という激しい撹拌を含んだ。
21.反応混合物は減圧下(Pmin=81mbar)で濃縮し、このとき50℃〜55℃という外部(ジャケット/槽)温度を維持し、メチルシクロヘキサン(56kg)に溶解された残渣を得た。
22.反応混合物は減圧下(Pmin=67mbar)で還流させ(水分離のためのDean−Stark型コンデンサー中で)濃縮し、このとき50℃〜55℃という外部(ジャケット/槽)温度を、もう水が分離されなくなるまで2時間7分維持した。
23.50℃〜55℃という外部(ジャケット/槽)温度を維持しながら、減圧下(Pmin=81mbar)で溶媒の約35Lを蒸留し去った。
24.(1S)−(S)−ピナンジオール1−クロロ−3−メチルブタン−1−ボロン酸を含む得られた乾燥メチルシクロヘキサン混合物を14℃に冷却した。
【0152】
(1R)−(S)−ピナンジオール1−ビス(トリメチルシリル)アミノ−3−メチルブタン−1−ボロン酸
1.窒素雰囲気下に維持した反応槽に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドを含有するテトラヒドロフラン(19.4重量%溶液)、(41.8kg)を加えて、撹拌しながら−19℃に冷却した。
2.反応温度を−19℃〜−13℃に維持したままで、(1S)−(S)−ピナンジオール1−クロロ−3−メチルブタン−1−ボロン酸を含むメチルシクロヘキサン混合物を55分の時間にわたって添加した。
3.メチルシクロヘキサンリンス(5kg)を用いてこの添加を完了させた。
4.この反応混合物を−13℃〜−12℃でさらに65分間撹拌し、次いで25分間にわたって25℃に温めた。
5.Celite(セライト)(2.5kg)を含有するメチルシクロヘキサン(22kg)の懸濁液を反応混合物に添加した。
6.45℃〜50℃という外部(ジャケット/槽)温度を維持しながら、減圧下(Pmin=25mbar)で反応混合物を濃縮して、残渣を得て、これをメチルシクロヘキサン(36kg)に溶解した。
7.次いで、サンプルをGCによるテトラヒドロフラン含量についての製造過程試験のために取り出した。
8.テトラヒドロフランアッセイは0.58%であった。
9.固体を濾過によって除去して、その濾液をSilica Gelのプラグ(2.0kg)を通して濾過した。
10.両方のフィルターユニットをイソプロピルエーテル(30kg)で洗浄した。
11.(1R)−(S)−ピナンジオール1−ビス(トリメチルシリル)アミノ−3−メチルブタン−1−ボロン酸を含有する、得られたメチルシクロヘキサン/イソプロピルエーテル混合物を、次の工程に用いるまで、周囲温度で容器に保管した。
【0153】
(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸
1.窒素雰囲気下で維持した別の反応槽にトリフルオロ酢酸(12kg)を加えた。
2.イソプロピルエーテル(78kg)をトリフルオロ酢酸に加えて、得られた混合物を撹拌しながら−10℃に冷却した。
3.反応温度を−10℃〜−5℃に維持したままで、(1R)−(S)−ピナンジオール1−ビス(トリメチルシリル)アミノ−3−メチルブタン−1−ボロン酸を含有するメチルシクロヘキサン/イソプロピルエーテル混合物を、53分の時間にわたって添加して生成物の沈殿を生じた。
4.イソプロピルエーテルリンス(5kg)を用いてこの添加を終了させた。
5.この反応混合物を−9℃〜−7℃でさらに8時間20分撹拌した。
6.この固体を濾過によって収集し、2部のイソプロピルエーテル(70kg)で洗浄し、減圧下(pmin=56mbar)において、41℃〜42℃で、2時間15分間乾燥させた。
7.この固体を周囲温度で24分間D.I.水(60kg)とともに撹拌し、その後そのD.I.水を濾過によって除去した。
8.固体をD.I.水(12kg)を用いて洗浄した。
9.次いでこの固体を減圧下(pmin=4mbar)で40℃〜44℃で9時間22分間乾燥し、その後の乾燥減量は0.51%であって、これは1%以下という要件を満たしている。
10.次いで、中間体(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸、粗生成物をポリプロピレンドラム中の単一のポリエチレンバッグにパッケージして、表示した。その収率は72%であった。
【0154】
(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸、粗生成物の再結晶化
1.(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸、粗生成物(13kg)を、窒素雰囲気下で維持した反応容器に加えた。
2.トリフルオロ酢酸(31kg)を反応槽に加えて、得られた反応混合物を撹拌しながら4℃に冷却した。
3.一旦固体の全てがわずかに濁った混合物を残して溶解されれば、反応温度を2℃〜3℃に維持したままで、イソプロピルエーテル(29kg)を57分の時間にわたって添加した。
4.完全な添加後、窒素雰囲気下で維持した受容槽中に、この混合物をフィルター濾過させた。
5.トリフルオロ酢酸(3.8kg)およびイソプロピルエーテル(5kg)の混合物を用いてリアクターおよびフィルターをリンスした。このリンスをこの濾液に添加した。
6.反応温度を16℃〜18℃に維持したままで、イソプロピルエーテル(126kg)を15分の時間にわたって添加して生成物の沈殿を生じた。
7.この混合物を16℃〜18℃で15分間撹拌し、次いで67分の時間にわたって−5℃に冷却し、−3℃〜−5℃で、窒素雰囲気下で89分間撹拌させた。
8.次いで、この固体を濾過によって単離し、2部のイソプロピルエーテル(48kg)を用いて洗浄し、減圧下(pmin=2mbar)で34℃〜40℃で2時間55分間乾燥し、その後の乾燥減量は0.32%であって、これは0.5%以下という要件を満たしている。
9.次いで、この生成物(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸を、ファイバードラム中の二重のポリエチレンバッグにパッケージして、表示した。その収率は86%であった。
【0155】
(実施例2:N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物の製造プロセス)
(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオール N−BOC−L−フェニルアラニン−L−ロイシン−ボロン酸
1.ドラフト中で、Claisenヘッド温度レコーダーおよび機械的スターラーを装備した三つ首ガラス反応フラスコを窒素でフラッシュした。
2.(1R)−(S)−ピナンジオール 1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸(2.0kg)を、そのフラスコに加えた。
3.BOC−L−フェニルアラニン(1.398kg)をフラスコに加えた。
4.2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラン酸、TBTU(1.864kg)をこのフラスコに加えた。5.ジクロロメタン(15.8L)をこのフラスコに加えた。
6.撹拌モーターを調節して、260RPMでの撹拌を得た。
7.氷/水冷却槽を用いて、窒素雰囲気を維持しながら、反応混合物を1.0℃に冷却した。
8.N,N−ジイソプロピルアミン(2.778L)をガラスフラスコに加えて、0.7℃〜2.1℃の反応温度範囲を維持しながら蠕動ポンプを用いて117分の時間にまたがって反応混合物に移した。全体的な添加速度は23.7mL/分であった。
9.反応混合物へのフラスコのジクロロメタン(0.2L)リンスを用いてこの添加を完了させた。
10.この反応混合物をさらに35分間撹拌した。撹拌時間の開始の温度は1.8℃、終了時には2.5℃であった。
11.次いで逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)による製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。変換パーセントは99.3%であると確認された。
12.反応混合物をほぼ等しく半分ずつ2つのロータリーエバポレーターフラスコに移した。この反応混合物を、29〜30℃の外部槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
13.酢酸エチル(4.0L)を2つのほぼ同じ部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えた。
14.各々のフラスコ中の混合物を、29〜30℃の外部槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で再度濃縮した。
15.次いで、各々のロータリーエバポレーターフラスコ中の残渣を、酢酸エチル(13.34L)を用いて反応フラスコ中に移して戻した。
16.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、1%リン酸水溶液を、D.I.水(13.18L)およびリン酸(0.160kg)を混合することによって調製した。
17.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(11.76L)および炭酸カリウム(0.24kg)を混合することによって、2%炭酸カリウム水溶液(12.0L)を調製した。
18.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(13.34L)および塩化ナトリウム(1.334kg)を混合することによって、10%塩化ナトリウム水溶液(13.34L)を調製した。
19.酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコにD.I.水(13.34L)を加えて、その混合物を380RPMで7分間撹拌した。その相を分離させて、水相(底の層)を減圧下で適切なフラスコに移して廃棄した。
20.再度、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコにD.I.水(13.34L)を加えて、その混合物を385RPMで7分間撹拌した。その層を分離させて、水相(底の層)を減圧下で適切なフラスコに移して廃棄した。
21.工程16で調製された1%リン酸溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を365RPMで7分間撹拌した。その層を分離させて、酸性の水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
22.工程17で調製された2%炭酸カリウム溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を367RPMで7分間撹拌した。その層を分離させて、塩基性の水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
23.工程18で調製された10%塩化ナトリウム溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を373RPMで6分間撹拌した。その層を分離させて、水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
24.酢酸エチル溶液をロータリーエバポレーターフラスコに移して、29〜30℃の槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮して残渣を得た。25.次いで、その残渣を酢酸エチル(4.68L)に再溶解した。
26.この溶液を、29〜30℃の槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮して、もう1回残渣を得た。
27.再度、この残渣を酢酸エチル(4.68L)に再溶解して、Karl Fisher滴定による水分含量の測定のために2つのサンプルを採取した。この2つのサンプルの水含量は、0.216%および0.207%と測定された。
28.さらなる量の酢酸エチル(12.66L)を用いて、この混合物をロータリーエバポレーターフラスコから、温度レコーダーと、機械的スターラーと、フリットガス分散チューブとを装備した乾燥反応フラスコに移して、窒素でパージした。
【0156】
(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールL−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、HCl塩
1.(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールN−BOC−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸を含有する酢酸エチル溶液を氷/水冷却槽を用いて−0.9℃に冷却した。
2.塩化水素(1.115kg)ガスを1.48時間の時間にわたって反応混合物中にバブリングした。添加の開始時点の温度は−0.9℃であって、終了時は6.8℃であった。
3.次いで、窒素雰囲気を維持したままで、この反応物を50分間にわたって14.4℃まで温めさせた。
4.RP−HPLCによる製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。変換パーセントは68.9%(面積%)であった。
5.この反応物を35分間撹拌した。開始時点の温度は14℃であって、終了時は14.8℃であった。
6.RP−HPLCによる製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。変換パーセントは94.7%(面積%)であった。
7.10℃±5℃の温度を維持しながら、この反応物をさらにほぼ50分間撹拌した。
8.RP−HPLCによる製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。変換パーセントは97.3%であった。
9.10℃±5℃の温度を維持しながら、この反応物をさらにほぼ50分間撹拌した。最終温度は14.6℃であった。
10.RP−HPLCによる製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。塩化水素の添加後の総反応時間は四(4)時間であった。
11.変換パーセントは99%であった。
12.スラリーを観察した。
13.n−ヘプタン(8.8L)を反応混合物に加えた。
14.スラリーを2時間撹拌した。撹拌時間の開始の温度は12.7℃で、終了では15.3℃であった。
15.この固体をポリプロピレンフェルトフィルターパッドを裏打ちしたブフナー漏斗での濾過によって分離した。
16.この固体をn−ヘプタン(4.68L)を用いて洗浄した。
17.フード中で、この固体を、1インチ以下の深さの3つの乾燥トレイに移して1時間風乾した。
18.次いでこの固体を、真空ゲージおよび温度レコーダーを装備したバキュームオーブン中で、27インチHgの減圧下で、35℃以下で16時間28分乾燥させた。
19.乾燥減量(LOD)の%を測定するために、各々の乾燥トレイから固体をサンプリングした。採取した3つのサンプルでLODは0%、0.02%および0.02%であると決定された。
20.次いで(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールL−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、HCl塩を、ファイバードラム中の二重のポリバッグにパッケージして、表示して、サンプリングした。
21.単離の収率は1.87kg、79.1%であった。中間体は、さらなる製造に用いるまで2〜8℃で保管した。
【0157】
(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸
1.ドラフト中で、Claisenヘッドと、温度レコーダーと、機械的スターラーとを装備した三つ首ガラス反応フラスコを窒素でフラッシュした。
2.(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールL−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、HCl塩(1.85kg)をフラスコに加えた。
3.2−ピラジンカルボン酸(0.564kg)をフラスコに加えた。
4.2(H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボロン酸、TBTU(1.460kg)をフラスコに加えた。
5.ジクロロメタン(18.13L)をフラスコに加えた。
6.272RPMの撹拌を得るように撹拌モーターを調節した。
7.冷却槽を用いて反応混合物を−1.2℃に冷却した。
8.N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.865kg)をガラスフラスコに加えて、−1.2℃〜2.8℃の反応温度範囲を維持している蠕動ポンプを用いて50分の時間にまたがって反応物に移した。
9.反応混合物へのフラスコのジクロロメタン(0.37L)リンスを用いてこの添加を完了させた。
10.この反応混合物を温めて、さらに81分間撹拌した。
11.撹拌時間の開始の温度は15℃で、終了では24.9℃であった。
12.次いでRP−HPLCによる製造過程の試験のためにサンプルを取り出した。変換パーセントは99.9%であると確認された。
13.反応混合物をほぼ等しく半分ずつ2つのロータリーエバポレーターフラスコに移した。この反応混合物を、33〜34℃の外部槽温度を維持しながら、2つのロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
14.酢酸エチル(12.95L)を2つのほぼ等しい部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えた。
15.次いで、各々のフラスコ中の混合物を、33〜34℃の外部槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
16.次いで、各々のロータリーエバポレーターフラスコ中の残渣を、酢酸エチル(12.95L)を用いて反応フラスコ中に移し戻した。
17.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、1%リン酸水溶液(12.34L)を、D.I.水(12.19L)およびリン酸(0.148kg)を混合することによって調製した。
18.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(12.09L)および炭酸カリウム(0.247kg)を混合することによって、2%炭酸カリウム水溶液(12.34L)を調製した。
19.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(12.34L)および塩化ナトリウム(1.234kg)を混合することによって、10%塩化ナトリウム水溶液(12.34L)を調製した。
20.酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコにD.I.水(12.34L)を加えて、その混合物を382RPMで7分間撹拌した。その相を分離させて、水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
21.再度、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコにD.I.水(12.34L)を加えて、その混合物を398RPMで7分間撹拌した。その層を分離させて、水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
22.工程17で調製された1%リン酸溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を364RPMで8分間撹拌した。その層を分離させて、酸性の水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
23.工程18で調製された2%炭酸カリウム溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を367RPMで8分間撹拌した。その層を分離させて、塩基性の水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
24.工程19で調製された10%塩化ナトリウム溶液を、酢酸エチル溶液を含有する反応フラスコに加えて、その混合物を374RPMで8分間撹拌した。その層を分離させて、水相(底の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
25.酢酸エチル溶液を減圧下でほぼ等しく半分ずつ2つのロータリーエバポレーターフラスコに移して、34℃の外部槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
26.n−ヘプタン(14.8L)を、2つのほぼ等しい部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えた。次いで、各々のフラスコ中の混合物を、34℃の外部槽温度を維持しながら、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
【0158】
N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物、粗生成物
1.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(20.36L)および塩酸(1.84kg)を混合することによって、1Nの塩酸溶液(22.2L)を調製した。2.スターラーを装備したガラスフラスコ中で、D.I.水(12.03L)および塩化ナトリウム(0.962kg)を混合することによって、2Nの水酸化ナトリウム水溶液(12.03L)を調製した。
3.次いで各々のロータリーエバポレーターフラスコに(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸を含有する残渣を、n−ヘプタン(14.8L)およびメタノール(14.8L)を用いて、温度レコーダーおよび機械的スターラーを装備した三つ首ガラス反応フラスコに移した。
4.撹拌モーターを調節して、284RPMでの撹拌を得た。
5.このフラスコに2−メチルプロパンボロン酸(0.672kg)を加えた。
6.工程1で調製した1Nの塩酸(11.2L)をこのフラスコに加えた。
7.撹拌モーターを調節して、326RPMの撹拌を得た。
8.反応混合物を16.38時間撹拌した。開始バッチ温度は28.6℃であって、最終バッチ温度は21.6℃であった。
9.次いで、RP−HPLCによる製造過程試験のためにサンプルを取り出した。
10.変換パーセントは100%であることが確認された。
11.撹拌を停止して、二相性の混合物を分離させた。
12.n−ヘプタン層(上層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
13.n−ヘプタン(5.37L)を反応フラスコに加えて、その混合物を381RPMで6分間撹拌した。その層を分離させて、n−ヘプタン相(上部の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
14.再度、n−ヘプタン(5.37L)を反応フラスコに加えて、その混合物を340RPMで6分間撹拌した。その層を分離させて、n−ヘプタン相(上部の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
15.メタノール水溶液をほぼ等しく半分ずつ2つのロータリーエバポレーターフラスコに移して、33〜34℃の外部槽温度を維持している、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。15Lのメタノールを収集した。
16.ジクロロメタン(5.37L)を用いて、残渣をロータリーエバポレーターフラスコから移して反応フラスコに戻した。
17.工程2で調製した2Nの水酸化ナトリウム(11.2L)をこのフラスコに加えた。
18.ジクロロメタン層(下部の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
19.ジクロロメタン(5.37L)を反応フラスコに加えて、その混合物を374RPMで6分間撹拌した。その層を分離させて、ジクロロメタン層(下部の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
20.再度、ジクロロメタン(5.37L)をフラスコに加えて、その混合物を368RPMで8分間撹拌した。その層を分離させて、ジクロロメタン層(下部の層)を適切なフラスコに移して廃棄した。
21.ジクロロメタン(5.37L)をこのフラスコに加えた。
22.1N塩酸(10.7L)を撹拌しながらフラスコに加えた。この水相のpHは6であることが確認された。
23.撹拌を中止して、層を分離させた。
24.ジクロロメタン層(下部の層)を減圧下でガラスの受容フラスコに移した。
25.ジクロロメタン(5.37L)をフラスコに加えて、その混合物を330RPMで6分間撹拌した。その相を分離させて、ジクロロメタン層(下部の層)をガラスの受容フラスコに移した。
26.再度、ジクロロメタン(5.37L)をフラスコに加えて、その混合物を335RPMで6分間撹拌させた。その相を分離させて、ジクロロメタン層(下部の層)をガラスの受容フラスコに移した。
27.ジクロロメタン抽出物を合わせて、ほぼ等しく半分ずつ2つのロータリーエバポレーターフラスコに移し、33〜34℃の外部槽温度を維持しているロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
28.酢酸エチル(12.95L)を、2つのほぼ等しい部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えた。次いで各々のフラスコ中の混合物を、45〜46℃の外部槽温度を維持しているロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
29.再度、酢酸エチル(12.95L)を、2つのほぼ等しい部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えた。次いで各々のフラスコ中の混合物を、45〜46℃の外部槽温度を維持しているロータリーエバポレーターを用いて、元の容積のほぼ10%が残るまで、減圧下で濃縮した。
30.n−ヘプタン(10.2L)を、2つのほぼ等しい部分に分けて、2つのロータリーエバポレーターフラスコに加えて、そのスラリーを窒素雰囲気下で2.67時間、22〜23℃で撹拌した。
31.この固体を、ポリプロピレンフェルトフィルターパッドを裏打ちしたブフナー漏斗での濾過によって分離した。
32.この固体をn−ヘプタン(2.96L)を用いて洗浄した。
33.フード中で、この固体を、4つの乾燥トレイに移して1.25時間風乾した。
34.次いでこの固体を、真空ゲージおよび温度レコーダーを装備したバキュームオーブン中で、27インチHgの減圧下で、36〜50℃で18時間27分乾燥させた。
35.乾燥減量(LOD)の%を測定するために、各々のトレイから固体をサンプリングした。採取した4つのサンプルでLODは0.38%、0.62%、0.71%および0.63%であると決定された。
36.N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物、粗生成物を、2つの5LのHDPE,不正加工防止広口ビンにパッケージングして、表示した。
37.分離された収率は1.314kg、83%であった。
【0159】
(N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物、粗生成物の再結晶化)
1.フード中で、機械的スターラー、還流冷却器および温度レコーダーを装備したガラス反応フラスコを窒素でフラッシュさせた。
2.酢酸エチル(21L)をこのフラスコに加えた。
3.熱水/蒸気槽を用いて、窒素雰囲気下で酢酸エチルを66.8℃に加熱した。
4.N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物、粗生成物(1.311kg)を反応フラスコにゆっくり加えた。添加は3分にわたって行った。
5.この混合物は、全ての固体が溶解するまで1分間撹拌した。溶液の温度は64℃であった。
6.熱源を取り出して、その混合物を冷浴を用いて60℃にゆっくり冷却した。
7.熱い酢酸エチル溶液を、蠕動ポンプを用いてポリの配管およびポリプロピレンの直列のフィルターカプセルを通して受容フラスコに移した。
8.この混合物を27.2℃まで冷却させて、撹拌なしに窒素雰囲気下で17.75時間静置させた。最終温度は20.5℃と記録された。
9.この混合物を、2.33時間撹拌しながら、氷/水浴を用いて冷却した。撹拌の開始時点の温度は3.8℃で、終了では−2.8℃であった。
10.この固体を、ポリプロピレンフェルトフィルターパッドを裏打ちしたブフナー漏斗での濾過によって分離した。濾液は収集フラスコ中に収集した。
11.この固体を酢酸エチル(2.62L)を用いて洗浄して、4.7℃に冷却した。
12.フード中で、この固体を、2つの乾燥トレイに移した。
13.次いでこの固体を、真空ゲージおよび温度レコーダーを装備したバキュームオーブン中で、27インチHgの減圧下で、51〜65℃で19時間10分乾燥させた。
14.乾燥減量(LOD)の%を測定するために、この固体をサンプリングした。採取した2つのサンプルでLODは0.65%および0.62%であると決定された。
15.N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物を、4つの1Lのタイプ3の、Teflon(登録商標)裏打ちしたキャップの付いた、コハク広口ボトル(Amber Wide−Mouth Bottles)にパッケージングして、表示した。
16.分離した収率は1.132kg、86.3%であった。
17.N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物は、−25℃〜−15℃で保管した。
【0160】
(実施例3:N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物収束合成)
(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸
(1R)−(S)−ピナンジオール1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸(13.97g)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(6.23g)の66mLのDMFの溶液を−5℃に冷却して、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(10.83g)を添加した。得られた懸濁物を−5〜0℃の温度で1時間撹拌した。N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン(19.52g;ジオキサン−水中でピラジンカルボン酸の事前形成されたスクシンイミドエステルをL−フェニルアラニンとカップリングすることによって調製した)を含有する62mLのDMFの溶液を、0℃の温度でN−メチルモルホリン(5.7mL)を添加して、得られた溶液をこの懸濁液に添加した。この懸濁液は、さらに5.7mLのN−メチルモリホリンの添加によってpH7に調節して、温度をゆっくり21℃に上昇しながら一晩撹拌した。濾過後、このフィルターケーキをMTBEを用いて2回洗浄し、そしてあわせた濾液を950mLのMTBEを用いて希釈した。有機層を20%のクエン酸水溶液(3×150mL)、20% NaHCO水溶液(3×150mL)およびブライン(2×)を用いて洗浄した。この有機層をNaSOで乾燥し、濾過して濃縮し、25.5g(95.5%)の表題の化合物を泡状物として得た。TLCによって示されるとおりこの物質は、いくつかのわずかな不純物を含み、これには約2%のシクロヘキシル尿素が挙げられる。
【0161】
(N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物)
(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(25.2g)を含有する207mLのMeOHおよび190mLのヘキサンの溶液を15℃に冷却して、109.4mLの1N HClを少しずつ添加して、温度を15〜25℃に維持した。次いで2−メチルプロパンボロン酸(8.67g)を激しく撹拌しながら添加して、この二相性混合物の撹拌を、一晩継続した。2つの相の分離後、この下部の層を75mLのヘキサンを用いて1回抽出した。次いでこの下部の層を、それが濁るまで減圧下で濃縮し、続いて109.4mLの2N NaOHおよび100mLのEtOを添加した。この2つの層を分離して、その下部の層をEtO(4×それぞれ100mL)を用いて抽出し、次いで109mLの1N HClの添加によってpH 6.0にさせた。100mLの酢酸エチルでの抽出後、この下部の層を、1N HClを用いてpH6.0に調節して、75mLの酢酸エチルを用いてもう1回抽出した。合わせた酢酸エチル層を半飽和したブライン(2×25mL)およびブライン(2×25mL)を用いて洗浄し、NaSO乾燥し、濾過して、濃縮して、15.3g(81.8%)の粗N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物を泡状物として得た。この粗生成物質を150mLの酢酸エチルに溶解して、減圧下で懸濁液に濃縮し、続いて150mLのMTBEを添加した。この懸濁液を、2〜8℃で一晩保管して、濾過し、MTBEで2回洗浄して、高真空下で乾燥し、10.69g(57.2%)のN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物を白色の固体として得た。
【0162】
(実施例4:(1R)−(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオール−1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸のジアステレオマー比の測定)
(1R)−(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオール−1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸(化合物1)のジアステレオマー純度は、非キラルガスクロマトグラフィー(GC)によって測定した。
化学物質:アセトニトリル(p.a.Brukerまたは等価物)
テトラデカン(内部標準)(Fluka puriss.または等価物)
トリフルオロ酢酸無水物(TFAA)(p.a.Merckまたは等価物)
装置:Trace−GC2000システムまたは等価物
移動相:H
溶媒A(内部標準と一緒に):約300mgのテトラデカンを0.1mgの正確性で、100mLのメスフラスコ中に秤量した。1.5mLのTFAAを添加して、そのフラスコをアセトニトリルを用いて容積を増した。
サンプル調製:約150mgのサンプルを10mLのメスフラスコに正確に秤量した(0.1mg以内)。フラスコを、溶媒Aを用いて増量させた。この溶液は注射の前に15分間保管した。
GCのパラメーター:
カラム:Rtx−200;105m×0.25mm内径×0.25μmフィルム
移動相:H
温度プログラム:130℃(0.5分);0.5℃/分〜200℃(0分);30℃/分〜300℃(2分)
流量:0.9mL/分(一定流量)
注入温度:250℃
検出温度:250℃(FID)
スプリット:1:50
注入容積:1μL
物質
化合物1 (1R)−(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオール−1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸
【0163】
【化115】


化合物2 (1S)−(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオール−1−アンモニウムトリフルオロ酢酸−3−メチルブタン−1−ボロン酸
【0164】
【化116】



【0165】
(溶液の安定性)
化合物1のストック溶液は、150.13mgの化合物1を10mLの定量フラスコに秤量すること、およびこれを溶媒Aを用いて増量することによって調製した。この溶液の安定性を、48時間にわたって周囲温度で試験した。このストック溶液を6つの別のGCバイアルに加えた。GCシステムへの注入を、0、12、24、48および72時間後にこれらのバイアルから行なった(各々のバイアルから二回の注入)。化合物1および化合物2の面積%を測定した。面積%の変化は観察されず、このことは、この溶液が周囲温度で72時間にわたって安定であることを示す。
【0166】
(特異性)
化合物1および化合物2を含むサンプルの約150mgを溶媒Aに溶解して、GCクロマトグラフィーシステムに注入した。化合物1のピークは、化合物2のピークと十分に分かれていた。GC−MSによるピーク純度チェックによって、化合物1または化合物2と共溶出する他の成分はないことが示された。
【0167】
(検出限界)
検出限界(LOD)は、化合物1のシグナルが少なくとも3:1というシグナル対ノイズ比を示した濃度であると規定した。事前のブランク測定を行って、他に邪魔されるピークがないことを示した。このシグナル対ノイズ比は以下の式によって算出された:
【0168】
【化117】


S/N=シグナル対ノイズ比
H(シグナル)=化合物1についてのシグナルの高さ[mm]
H(ベースライン)=シグナルベースラインの高さ[mm]。
【0169】
0.05%というサンプル濃度の標準の試験サンプル濃度を注入して、4:3というシグナル対ノイズ比が示された。従って、検出限界は0.0075mg/mLである。
【0170】
(定量限界)
定量限界(LOQ)とは、化合物1のシグナルが少なくとも10:1というシグナル対ノイズ比を示す濃度であると規定した。シグナル対ノイズ比は上記のとおり算出した。0.1%のサンプル濃度という標準サンプル濃度を注入して、10:1というシグナル対ノイズ比が示された。従って、定量の限界は0.015mg/mLである。
【0171】
(実施例5:N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物の純度アッセイ)
N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物(化合物3)の純度は、逆相HPLCによってアッセイした。
試薬:水、HPLC等級
アセトニトリル、HPLC等級
ギ酸、ACS等級、98%以上の純度
3%過酸化水素、ACS等級または等価
装置
高速液体クロマトグラフィー
20vL注入を送達し、かつ5℃の温度を維持し得るオートサンプラー
1.0mL/分の勾配送達可能なポンプ
270nmでの流出モニタリングが可能なUV検出器
カラム
対称C18クロマトグラフィーカラム、250mm×4.6mm内径、
5μm、Waters,カタログ番号WAT054275
サンプル調製:
約50mgの化合物3を50mLのメスフラスコに正確に秤量した。移動相B(5mL)を添加して、混合物を超音波処理して化合物3を溶解した(約30〜60秒)。この溶液を室温まで到達させて、移動相Aを用いて容積を希釈し、よく混合した。各々のサンプルを二重に調製し、光から保護して2〜8℃で保管した場合7日間安定であった。
HPLCパラメーター:
移動相A:アセトニトリル/水/ギ酸、30:70:0.1(v/v/v)脱気
移動相B:アセトニトリル/水/ギ酸、80:20:0.1(v/v/v)脱気
流速:1.0mL/分
検出器:270nmのUV
注入容積:20μL
カラム温度:周囲温度
サンプルトレイ温度:5℃
勾配プログラム:
【0172】
【化118】


物質
化合物3 N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物
【0173】
【化119】


化合物4 N−(2−ピラジンカルボニル)−D−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物
【0174】
【化120】


化合物5 N−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−D−ロイシンボロン酸無水物
【0175】
【化121】


化合物3の保持時間は、1.3分の滞在容積のHPLCシステムを用いた場合、代表的には10〜14分であった。化合物4および5は、さらに長い保持時間で共溶出して、2.0以上の分解能であった。
【0176】
標準的なクロマトグラムにおける保持に対する、サンプルのクロマトグラムにおける化合物3の相対的な保持は、以下の式によって算出した:
【0177】
【化122】


ここで:
=相対的な保持
sam=サンプルのクロマトグラムにおける化合物3のピークの保持時間(分)
std=すぐ先行する標準的なクロマトグラムにおける薬物のピークの保持時間(分)。
【0178】
アッセイ結果は、以下の式に従って各々のサンプルについて算出した:
【0179】
【化123】


ここで:
sam=サンプル調製物における化合物3のピーク面積応答
std=動作中の標準調製物における化合物3の平均ピーク面積応答
std=標準の重量(mg)
P=標準物の指定純度(少数形式)
sam=サンプルの重量(mg)
M=サンプルの含水率(%)
100=パーセント変換。
【0180】
各々のサンプルにおける相対的保持および不純物レベルは、以下の式に従って算出した:
【0181】
【化124】


ここで:
=相対的保持
=個々の不純物の保持時間
ds=化合物3のピークの保持時間
【0182】
【化125】


ここで:
=個々の不純物
=サンプル調製物における個々の不純物のピーク面積応答
std,1%=1%標準調製物における化合物3の平均ピーク面積応答
std=標準の重量(mg)
sam=サンプルの重量(mg)
P=標準物の指定純度(少数形式)
DF=希釈係数、1/100
RF=個々の純度の相対的応答因数
100=パーセンテージ係数へ変換。
【0183】
この方法によってアッセイした場合、実施例2由来のN−(2−ピラジンカルボニル)−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸無水物は、1%未満という総不純物を示した。
【0184】
前述の本発明は、明確さと理解の目的である程度詳細に記載してきたが、これらの特定の実施形態は、例示として解釈されるべきであって、限定と解釈されるべきではない。形態および詳細における種々の変更は、本発明の真の範囲および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく行なうことが可能であるということが、本開示を読めば当業者には理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【公開番号】特開2013−100378(P2013−100378A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−43972(P2013−43972)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2010−126333(P2010−126333)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】