説明

ボンディング良否判定方法およびボンディング良否判定装置ならびにボンディング装置

【課題】ボンディング装置のボンディング良否判定方法において、ボンディングの途中でボンディングの良否を判定することを目的とする。
【解決手段】超音波振動子の振動と共振して中心軸の方向に縦振動する超音波ホーンと、超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるキャピラリと、超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、ボンディングアームと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、を備えるボンディング装置のボンディング良否判定装置であって、ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重を連続的に検出し、検出した荷重の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重に基づいてボンディング良否の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置のボンディング良否判定方法およびボンディング装置に用いられるボンディング良否判定装置ならびにボンディング良否判定を行うボンディング装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体チップの電極であるパッドとリードフレームの電極であるリードとの間を金属細線であるワイヤで接続するワイヤボンディング装置が多く用いられている。ワイヤボンディング装置は、駆動モータにより回転駆動されるボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられた超音波ホーンと、超音波ホーンの先端に取り付けられたキャピラリと、超音波ホーンに取り付けられた超音波振動子とを備え、ボンディングアームを回転駆動してキャピラリをパッドまたはリードに対して接離方向に移動させ、キャピラリ先端に形成されたイニシャルボールをパッドに、ワイヤをリードに押しつけて圧着すると共に、超音波振動子によって超音波ホーンを共振させ、キャピラリ先端に超音波振動を付与してボンディングを行うことが多い。
【0003】
ワイヤボンディング装置によってボンディングを行う場合、キャピラリに挿通されたワイヤの先端に形成されたイニシャルボールはある速度をもってパッドに衝突した後に一定荷重でパッドに押圧されてパッドに圧着されて圧着ボールとなるが、衝突の影響で後の一定荷重での押圧期間においてもワイヤとキャピラリとが押し付け方向に振動し、この振動により押圧荷重が変動して圧着ボールの形状や圧着ボール径等がバラツキ、ボンディング不良を生じる場合がある。また、イニシャルボールの形成不良により所定の大きさに満たないいわゆる小ボールの場合にも押圧荷重が変動してボンディング不良を生じる。
【0004】
このため、ワイヤボンディング装置では、ボンディングヘッドにキャピラリの高さ方向変位を検出するエンコーダを設け、このエンコーダの検知出力を制御装置にフィードバックし、駆動モータの出力を制御して押圧荷重の変動を防止することが行われている。しかし、エンコーダはワイヤの押圧荷重を直接検出することができないため、エンコーダの出力のフィードバックでは押圧荷重の変動を十分に抑制することができなかった。
【0005】
そこで、超音波ホーンとボンディングアームとの間に設けた圧力センサによって押圧荷重を検出し、この押圧荷重によって駆動モータを制御してキャピラリの振動を抑制し、押圧荷重を一定にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、ボンディングアームおよびキャピラリに機械的緩みや磨耗があると、ワイヤボンディングにおいてキャピラリによってワイヤを半導体チップのパッドに衝突させた際の衝撃力で半導体チップに亀裂や割れが入るなどのチップ破壊が生じることがある。このため、ボンディングステージに衝撃力を測定する衝撃センサを取り付け、検出した波形と基準波形との違いに基づいてアラームを発生させて、ボンディングアームおよびキャピラリの機械的緩みや摩耗を確認する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003―258021号公報
【特許文献2】特開平7−74215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、半導体チップと基板とのボンディングは、複数の半導体チップのパッドと基板のリードとを順次接続して行っていく。この際、ボンディングアームおよびキャピラリの緩みや摩耗がなく、キャピラリがパッドを押し付ける押圧荷重が所定の値に制御されていてもボールの異常潰れやチップ破壊などのボンディング不良が発生する場合がある。しかし、特許文献1または特許文献2に記載された従来技術ではボンディングの途中でボンディング不良を検出することができないため、半導体チップの複数のパッドと基板の複数のリードとを全てボンディングした後に行われるボンディング部の目視検査工程までボンディング不良を発見することができない。このため、製品の修正のために多くの時間がかかってしまうという問題があった。また、製造の途中の工程でボンディング部の目視検査工程を行わない場合には、最終検査工程まで不良品の発見ができず、製品の歩留まりが悪化してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、ボンディングの途中でボンディングの良否を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボンディング良否判定方法は、基体部と、超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、を備えるボンディング装置のボンディング良否判定方法であって、ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重を連続的に検出し、検出した荷重の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重に基づいてボンディング良否の判定を行うこと、を特徴とする。
【0011】
本発明のボンディング良否判定方法において、衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合にボンディング不良と判定すること、としも好適であるし、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタによって荷重センサによって検出した荷重信号から、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出し、抽出した信号に基づいてボンディング良否の判定を行うこと、としても好適であるし、ボンディングツール接地後、荷重センサによって検出した荷重信号の時間に対する増大割合が閾値よりも大きい場合に、ボール異常つぶれと判定すること、としても好適である。
【0012】
本発明のボンディング良否判定装置は、基体部と、超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、を備えるボンディング装置に用いられるボンディング良否判定装置であって、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタによって荷重センサによって検出した荷重信号から、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出し、抽出した信号の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重の大小によってボンディング良否の判定を行うこと、を特徴とする。
【0013】
本発明のボンディング装置は、基体部と、超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、ボンディングの良否判定を行う制御部と、を備えるボンディング装置であって、制御部は、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタ手段と、ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重信号を連続的に検出し、フィルタ手段によって荷重信号から超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出する信号抽出手段と、信号抽出手段によって抽出した信号の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重の大小によってボンディング良否の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ボンディングの途中でボンディングの良否を判定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のボンディング良否判定装置50が取り付けられているワイヤボンディング装置10は、基体部であるボンディングヘッド11と、超音波振動子13と、超音波ホーン12と、ボンディングツールであるキャピラリ17と、超音波ホーン12に設けられたフランジ14と、ボンディングアーム21と、荷重センサ31と、駆動モータ45と、制御部60と、ボンディング対象である半導体チップ34や基板35を吸着固定するボンディングステージ33と、を備えている。
【0016】
ボンディングヘッド11にはボンディングアーム21を回転駆動する駆動モータ45が設けられている。超音波振動子13は複数枚の圧電素子を重ね合わせたもので、超音波ホーン12の後端側に取り付けられている。また、超音波ホーン12の先端にはキャピラリ17が取り付けられている。後で説明する超音波ホーン12の振動の節となる位置にはフランジ14が設けられ、フランジ14はボンディングアーム21先端のフランジ取り付け面22にボルト16によって固定されている。
【0017】
ボンディングアーム21は、ボンディングヘッド11に設けられた回転軸30の周りに回転自在に取り付けられている。ボンディングアーム21の回転中心43はボンディングステージ33の上に吸着された基板35の表面、或いは基板35に取り付けられている半導体チップ34の表面と同一面上にある。
【0018】
ボンディングアーム21は超音波ホーン12の中心軸15の方向に延びる略直方体で、フランジ取り付け面22のある先端側部分21aと回転中心43を含む後端側部分21bとを有しており、先端側部分21aと後端側部分21bとは超音波ホーン12の中心軸15を含む高さ方向位置(Z方向位置)に設けられた薄板状の接続部24によって接続されている。接続部24のボンディング面41側とボンディング面41と反対側にはボンディングアーム21の先端側部分21aと後端側部分21bとの間に細いスリット23,25が設けられている。ボンディングアーム21のボンディング面41と反対側であるZ方向上側には荷重センサ31を取り付けるための溝26が設けられている。溝26はボンディングアーム21の先端側部分21aと後端側部分21bとの間に対向して設けられている。溝26に取り付けられた荷重センサ31はボンディングアーム先端側部分21aから後端側部分21bに向かってねじ込まれているねじ27によって先端側部分21aと後端側部分21bとの間で挟みこまれて与圧されるよう構成されている。荷重センサ31はその中心軸28が超音波ホーン12の中心軸15からボンディング面41とキャピラリ17の先端17aとの接離方向であるZ方向に距離Lだけオフセットして取り付けられている。この距離Lはフランジ14のZ方向の幅よりも大きく、キャピラリ17から超音波ホーン12にかかる曲げ力に対して大きな剛性を備えることができる構成となっている。
【0019】
図2(a)に示すように、荷重センサ31はボンディングアーム21の幅方向の中央部に取り付けられ、ねじ27は荷重センサ31の両側に設けられている。また、図2(b)に示すように、ボンディングアーム21のボンディング面41側には、超音波ホーン12と超音波振動子13とが収容される窪み29が設けられている。
【0020】
図3に示すように、超音波ホーン12は、超音波振動子13によって中心軸15に沿った方向である長手方向に共振し、縦振動をするものである。ここで縦振動とは振動の伝わる方向と振幅の方向が同一方向の振動をいう。図3に模式的に示すように、超音波ホーン12は後端に取り付けられた超音波振動子13の振動によって超音波振動子13の取り付けられている後端とキャピラリ17の取り付けられている先端との間で、後端と先端とが振動の腹となる共振モードで振動する。そして、後端と先端との間にできる振動の節、つまり共振状態にあっても振動しない部位に超音波ホーン12をボンディングアーム21に固定するフランジ14が設けられている。フランジ14はボンディングアーム21のフランジ取り付け面22にボルト16によって固定されている。フランジ14は超音波ホーン12の共振によって振動しないことから、ボンディングアーム21のフランジ取り付け面22には超音波ホーン12の共振による超音波振動は伝わらないよう構成されている。このためボンディングアーム21に設けられている荷重センサ31にも超音波ホーン12の共振による超音波振動は伝達されないように構成されている。なお、図3はボンディングアーム21と超音波ホーン12、フランジ14、ボルト16との関係を説明するための模式図で、超音波ホーン12から水平方向であるXY方向に延びているフランジ14を縦方向に記載してある。また、図3(b)は超音波ホーン12の振幅を模式的に示したもので、中心軸15方向の振幅を中心軸15と直角方向の振幅として記載してある。
【0021】
図1に示すように、ボンディング良否判定装置50は、荷重センサ31が接続され、その内部にローパスフィルタを含んでいる。ローパスフィルタは超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の信号を通過させると共に超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を遮断するノッチ機能を備えるものであり、荷重センサ31によって検出した信号から超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を含まない超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の信号を抽出することができるよう構成されている。超音波振動子13と駆動モータ45とは制御部60に接続され、制御部60の指令によって超音波振動子13の出力と駆動モータ45の回転方向と出力が制御されるよう構成されている。また、ボンディング良否判定装置50は制御部60と接続され、ボンディング良否の判定信号を制御部60に出力することができるよう構成されている。
【0022】
ボンディング良否判定装置50、制御部60は内部にCPUやメモリなどを含むコンピュータとして構成されていてもよいし、検出、制御のシステムを電気回路によって構成したものであってもよい。
【0023】
以上のように構成されたボンディング良否判定装置50によってワイヤボンディング装置10によるボンディング動作中におけるキャピラリ17の先端17aに加わる衝撃荷重の検出動作について説明する。
【0024】
図1に示す制御部60は、キャピラリ17の先端17aから伸出したワイヤの先端を図示しない放電トーチ等によって球状のイニシャルボール18に形成する。そして、制御部60は、駆動モータ45を駆動する指令を出力する。この指令によって駆動モータ45は回転を開始し、キャピラリ17を半導体チップ34の上に向かって降下させ始める。又、制御部60は、超音波振動子13の振動を開始する指令を出力する。この指令によって超音波振動子13にはボンディングの条件に対応して予め設定された振動出力を出力することのできる電圧が印加される。ボンディング良否判定装置50は荷重センサ31からの荷重信号のメモリへの蓄積を開始する。
【0025】
キャピラリ17の先端に形成されたイニシャルボール18が半導体チップ34の表面に接する前は、図3に示すように超音波ホーン12は超音波振動子13の振動と共振して、キャピラリ17の取りつけられた先端と超音波振動子13の取り付けられた後端とを振動の腹とする縦振動をしている。フランジ14は振動の節に配置されているので超音波ホーン12の共振では振動せず、荷重センサ31も荷重を検出していない。ただし、超音波ホーン12はボンディングの際のパッドへの衝突によってZ方向に固有の共振周波数fで微小な振動をしている。このため、図4(a)に示すように荷重センサ31には超音波ホーン12の振動による微小な周期変動荷重が検出されている。
【0026】
ボンディングアーム21は駆動モータ45によって加速され、所定の下降速度を持って図4(a)の時間tに半導体チップ34のパッドに衝突する。すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は急速に上昇する。そして、図4(a)に示す時間tにおいて最大値Fとなる。その後、制御部60は荷重センサ31によって検出される押圧荷重が予め決められた押圧荷重Pとなるように駆動モータ45を制御する。そして、所定の押圧時間が終了したら制御部60は、駆動モータ45を最初と反対方向に駆動してキャピラリ17を上昇させる。キャピラリ17が上昇すると、荷重センサ31の検出する押圧荷重は次第に低下してゼロになり、その後、荷重センサ31は超音波ホーン12のZ方向の固有振動による微小な周期変動を検出する。この間、ボンディング良否判定装置50は荷重センサ31からの荷重信号をメモリに蓄積し、その間の最大値Fを衝撃荷重として別のメモリに格納する。
【0027】
図5(a)に示すように、イニシャルボール18が所定の直径dに形成されている場合には、キャピラリ17の降下による衝撃荷重でイニシャルボール18を円板状の圧着ボール19に潰した場合、図5(b)に示すように、イニシャルボール18は所定の厚みHを持つ圧着ボール19に変形される。一方、イニシャルボール18の大きさが所定の大きさよりも小さい直径dの場合、イニシャルボール18がキャピラリ17の先端17aで潰された際に、イニシャルボール18はキャピラリ17の先端にあるインナチャンファ部17bの中に入り込んでしまい、圧着ボール19の厚さが所定の厚さのHより薄いHとなり、ボール異常つぶれとなる。イニシャルボール18の直径が所定の直径dよりも小さいdとなった場合、イニシャルボール18は衝撃荷重のエネルギーを変形で吸収することができなくなるので荷重センサ31はイニシャルボール18が所定の直径dの場合よりも大きな衝撃荷重を検出する。このように、荷重センサ31の検出する衝撃荷重が所定の値よりも大きい場合にはボール異常つぶれなどが発生していることとなる。
【0028】
また、この衝撃荷重を的確に検出するためには、荷重センサ31が衝撃荷重によって変形しない位置に取り付けられていることが必要となる。本実施形態では、荷重センサ31は超音波ホーン12の中心軸15からフランジ14のZ方向の幅よりも大きなオフセットを持って剛性の高い直方体のボンディングアーム21に取り付けられているので衝撃荷重を的確に検出することができる。
【0029】
ボンディング良否判定装置50は別のメモリに格納した衝撃荷重を、他のメモリに格納されている所定の閾値と比較し、別のメモリに格納した衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、ボールの異常つぶれ或いはチップ破壊などのボンディング不良が発生していると判定し、例えば、ボンディング不良発生を示すランプを点灯させる。また、ボンディング良否判定装置50はボンディング不良発生信号を制御部60に出力し、ワイヤボンディング装置10を停止させ、異常発生ランプを点灯させるようにしてもよい。
【0030】
図4(b)に示すように、ボンディング良否判定装置50は、内部に超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の信号を通過させると共に超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を遮断するノッチ機能を備えるローパスフィルタ51を備え、荷重センサ31によって検出した信号から超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を含まない超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の信号を抽出し、その抽出した信号をメモリに格納して最大値を衝撃荷重F’として検出してもよい。この場合、図4(c)に示すように、荷重センサ31の検出した荷重信号から高周波成分と超音波ホーン12固有の共振周波数fによる周期変動荷重が除去されているのでメモリには単純なカーブのデータが格納される。このため衝撃荷重である最大値F’を容易に決定することができる。また、例えば、一定のサイクルタイムで荷重センサ31からの荷重信号を検出し、ローパスフィルタ51を通して信号を抽出し、所定のサイクル数分の抽出データのみをメモリに格納しておき、抽出データの値の増加量がプラスからマイナスになった際の抽出信号の値を最大値として検出することによってより素早く衝撃荷重の検出を行うことができる。
【0031】
また、図6に示すように、イニシャルボール18の直径が所定の直径dよりも小さい場合には、衝撃荷重が大きくなるとともに、図6の一点鎖線bによって示すフィルタ51を通して抽出した信号の増大の勾配が図6の実線aによって示した正常なボンディングの際に抽出した信号の増大の勾配よりも大きくなってくる。このため、抽出した信号の時間に対する増加割合が閾値よりも大きくなった場合には、ボール異常つぶれ等のボンディング不良が発生したと判定することとしてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のボンディング良否判定装置50は、ボンディングの途中でボンディング不良を判定、検出することができるという効果を奏する。また、ボンディングの途中でボンディング不良を判定、検出することができるので、ボンディング不良の発生した直後にワイヤボンディング装置10を停止させることができ、ボンディング不良の発生した製品の修理を容易に行うことができるという効果を奏する。更に、ボンディングの途中でボンディング不良の発生した製品の製造を停止することができるので、製品の歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
【0033】
本実施形態では、ボンディング不良はボールの異常な潰れとして説明したが、半導体チップの破壊などによって発生するボンディング不良の判定にも適用することができる。また、本実施形態は、ワイヤボンディング装置10について説明したが、本発明はバンプボンダなど他のボンディング装置にも適用することができる。
【0034】
以上の実施形態では、ボンディング不良の発生は制御部60とは別に設けられたボンディング良否判定装置50によって行うものとして説明したが、以下、制御部60によってボンディング不良の判定を行う機能を組み込んだワイヤボンディング装置10の実施形態について説明する。図1から図6を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0035】
図7に示すように、本実施形態のワイヤボンディング装置10は、図1から図3を参照して説明したワイヤボンディング装置10と同様の構成であり,荷重センサ31は荷重センサインターフェース55を介して制御部60に接続され、制御部60は荷重センサ31からの信号が取得することができるように構成されている。荷重センサインターフェース55はA/D変換器を含み、荷重センサ31からのアナログ信号をデジタル信号として制御部60に出力する。
【0036】
以下、図8を参照しながら本実施形態のワイヤボンディング装置10の動作について説明する。図8のステップS101に示すように、制御部60は、ワイヤボンディング装置10にボンディング動作を開始させると、荷重センサインターフェース55から荷重センサ31の信号を取得する。そして、制御部60は、図8のステップS102に示すように、荷重センサインターフェース55を介して取得した荷重センサ31のデジタル信号を、例えば、IIRフィルタ、FIRフィルタなどのデジタル式のフィルタによってフィルタリングし(フィルタ手段)、図8のステップS103に示すように、超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を含まない超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の荷重信号を抽出してメモリに格納、蓄積する(信号抽出手段)。この場合、デジタル式のローパスフィルタは、超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を含まない超音波振動子13の共振周波数fよりも低い周波数帯の荷重信号を抽出することができるものであればよく、例えば、超音波振動子13の共振周波数fの周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させると共に超音波ホーン12固有の共振周波数fの周波数帯にある信号を遮断するノッチ機能を備えるローパスフィルタとしてもよい。制御部60のメモには、図4(c)に示すような比較的単純なカーブが格納される。
【0037】
図8のステップS104に示すように、制御部60は、メモリに格納されているフィルタリングされた抽出データの中から最大値をピックアップして衝撃荷重の検出を行う。この際、制御部60は、所定のサイクル数分の抽出データのみをメモリに格納しておき、抽出データの値の増加量がプラスからマイナスになった際の抽出データの値を最大値としてピックアップすることによって衝撃荷重の検出を行うこととしても良い。
【0038】
図8のステップS105に示すように、制御部60は、検出した衝撃荷重と所定の閾値とを比較し、衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、図8のステップS106に示すように、ボンディング不良が発生したものと判断し、図8のステップS107に示すように、ワイヤボンディング装置10を停止する。また、制御部60は、衝撃荷重が所定の閾値以下の場合には、図8のステップS108に示すように、ボンディングは良好と判断する(判定手段)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のワイヤボンディング装置10は、ボンディングの途中でボンディング不良を判定、検出することができ、ボンディング不良の発生した直後にワイヤボンディング装置10を停止させることができ、ボンディング不良の発生した製品の修理を容易に行うことができるという効果を奏する。更に、ボンディングの途中でボンディング不良の発生した製品の製造を停止することができるので、製品の歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
【0040】
また、本実施形態は、ワイヤボンディング装置10について説明したが、本発明はバンプボンダなど他のボンディング装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置の適用されるワイヤボンディング装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置の適用されるワイヤボンディング装置におけるボンディングアームの上面と下面とを示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置の適用されるワイヤボンディング装置の超音波振動を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置の信号処理を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置の適用されるワイヤボンディング装置のボンディングの際のイニシャルボールの状態の変化を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態におけるボンディング良否判定装置におけるフィルタリング後の押圧荷重の時間変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の構成を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
10 ワイヤボンディング装置、11 ボンディングヘッド、12 超音波ホーン、13 超音波振動子、14 フランジ、15 中心軸、16 ボルト、17 キャピラリ、17a 先端、17b インナチャンファ部、18 イニシャルボール、19 圧着ボール、21 ボンディングアーム、21a 先端側部分、21b 後端側部分、22 フランジ取り付け面、23,25 スリット、24 接続部、26 溝、28 中心軸、29 窪み、30 回転軸、31 荷重センサ、33 ボンディングステージ、34 半導体チップ、35 基板、41 ボンディング面、43 回転中心、45 駆動モータ、50 ボンディング良否判定装置、51 ローパスフィルタ、55 荷重センサインターフェース、60 制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と、
超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、
超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、
超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、
超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、
超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、を備えるボンディング装置のボンディング良否判定方法であって、
ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重を連続的に検出し、検出した荷重の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重に基づいてボンディング良否の判定を行うこと、
を特徴とするボンディング良否判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディング良否判定方法であって、
衝撃荷重が所定の閾値よりも大きい場合にボンディング不良と判定すること、
を特徴とするボンディング良否判定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のボンディング良否判定方法であって、
超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタによって荷重センサによって検出した荷重信号から、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出し、抽出した信号に基づいてボンディング良否の判定を行うこと、
を特徴とするボンディング良否判定方法。
【請求項4】
請求項3に記載のボンディング良否判定方法であって、
ボンディングツール接地後、荷重センサによって検出した荷重信号の時間に対する増大割合が閾値よりも大きい場合に、ボール異常つぶれと判定すること、
を特徴とするボンディング良否判定方法。
【請求項5】
基体部と、
超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、
超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、
超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、
超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、
超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、を備えるボンディング装置に用いられるボンディング良否判定装置であって、
超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタによって荷重センサによって検出した荷重信号から、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出し、抽出した信号の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重の大小によってボンディング良否の判定を行うこと、
を特徴とするボンディング良否判定装置。
【請求項6】
基体部と、
超音波振動子の振動と共振して長手方向に縦振動する超音波ホーンと、
超音波ホーンの振動の腹に取り付けられるボンディングツールと、
超音波ホーンの振動の節に設けられるフランジと、
超音波ホーンのフランジが固定されるフランジ取り付け面を含み、ボンディングツール先端をボンディング対象に対して接離方向に動作させるように基体部に回転自在に取り付けられたボンディングアームと、
超音波ホーンの長手方向の中心軸からボンディング対象に対して接離方向にオフセットしてボンディングアームの回転中心とフランジ取り付け面との間に取り付けられる荷重センサと、
ボンディングの良否判定を行う制御部と、を備えるボンディング装置であって、
制御部は、超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を遮断すると共に超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を通過させるフィルタ手段と、
ボンディングの際に荷重センサによってボンディングツールに加わるボンディング対象に接離方向の荷重信号を連続的に検出し、フィルタ手段によって荷重信号から超音波ホーン固有の共振周波数の周波数帯にある信号を含まない超音波振動子の共振周波数よりも低い周波数帯の信号を抽出する信号抽出手段と、
信号抽出手段によって抽出した信号の最大値を衝撃荷重とし、衝撃荷重の大小によってボンディング良否の判定を行う判定手段と、
を有することを特徴とするボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27699(P2010−27699A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184386(P2008−184386)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【特許番号】特許第4275724号(P4275724)
【特許公報発行日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】