説明

ボンド磁石用コンパウンド、及び、ボンド磁石

【課題】 十分な耐熱性を有し、成形時の流動性・充填性に優れたボンド磁石用コンパウンド及びボンド磁石を提供すること。
【解決手段】 磁石粉末とポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂とポリアミド(PA)樹脂を含み、コンパウンド中の磁石粉末の含有比率が79〜94.5wt%、PPS樹脂の含有比率が5〜20wt%、PA樹脂の含有比率が0.1〜2wt%、であることを特徴とする、ボンド磁石用コンパウンド、及び、ボンド磁石。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な耐熱性を有し、成形性に優れたボンド磁石用コンパウンド及びボンド磁石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石は、磁石粉末と熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの有機バインダーを混練して得られたコンパウンド(混合物)を、所望とする形状に成形して製造される。ボンド磁石の成形方法には、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法などが利用されている。
【0003】
射出成形法は、前述のコンパウンドを加熱溶融して金型内に溶融物を注入し、所望の形状に成形する方法である。このとき、磁場印加された金型内で成形されれば異方性ボンド磁石、磁場印加されなければ等方性ボンド磁石となる。射出成形法は、圧縮成形法や押出成形法と比較して形状自由度が高く、複雑形状の製品も成形し易いといった利点がある。しかし、加熱溶融したコンパウンドに高流動性が求められるため、前述の2種の成形法よりも高樹脂量のコンパウンドが必要となる。このため、同じ磁石粉末を使用しても低磁気特性となる欠点がある。
【0004】
射出成形法で製造されるボンド磁石には、有機バインダーとして一般的に熱可塑性樹脂が使用される。これは熱硬化性樹脂を用いた場合、成形性が悪い、硬化処理が必要などの問題があるためである。ボンド磁石に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(Poly Amide、以下PAと記載)樹脂が良く知られている。PA樹脂は成形性が良好で、樹脂量を比較的少なくすることが可能であるが、耐熱性、耐湿性、寸法精度の面で劣っている。これに対して、十分な耐熱性を有する熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(Poly Phenylene Sulfide、以下PPSと記載)樹脂を使用したボンド磁石が知られているが、成形性の面でPA樹脂に劣るため、樹脂量を少なくすることが難しい。そこで、PPS樹脂の耐熱性を生かしつつ、成形性を改善する検討が行われている。
【0005】
例えば特許文献1には、PPS樹脂とPA樹脂を所定の割合で混合することで、耐熱性を損なうことなく成形性の良好な材料が提案されている。また、特許文献2には、PPS樹脂を用いて、磁石粉末の外面をPPS樹脂で覆うことで隣接する磁石粉末同士の接触を阻止し、成形性と磁気特性に優れたボンド磁石が提案、実施されている。
【0006】
さらに、特許文献3〜5には、PPS樹脂をはじめとした熱可塑性樹脂を用いたボンド磁石やボンド磁石用コンパウンドにおいて、磁石粉末の表面をカップリング剤処理することで、磁石粉末と樹脂材料の親和性を向上させ、磁石粉末の分散性を改善し、その結果、コンパウンドの流動性を向上して成形性を改善する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平03−167804号公報
【特許文献2】特開平09−223616号公報
【特許文献3】特開昭62−223268号公報
【特許文献4】特開昭62−282418号公報
【特許文献5】特開平06−295816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の実施例によれば、樹脂成分中のPA12(ポリラウリルラクタム)樹脂の含有量が少なくとも30vol%必要であり、これは換算すると約4.2wt%に相当する。PA12樹脂の融点は175℃程度と比較的低温であるため、PA12樹脂の含有量が30vol%以上となった場合、PPS樹脂の特徴である高耐熱性が実使用において十分発揮されるとはいい難い。また、PPS樹脂は非極性の分子構造を有し、表面が極性を有する磁石粉末への濡れ性が悪いことから、磁石粉末をPPS樹脂で被覆しにくい。したがって、特許文献2に提案、実施されているように、磁石粉末の外面をPPS樹脂が覆って、磁石粉末同士の接触を十分に阻止するのは困難である。
【0009】
さらに、特許文献3〜5に提案されているような、磁石粉末をカップリング剤処理する方法では、PPS樹脂を用いた場合のコンパウンド化に必要なPPS樹脂の融点(約280℃)以上で溶融混練した場合、カップリング剤成分の熱分解や揮発が起こりやすい。そのため、カップリング剤が有している磁石粉末と樹脂との親和性向上や、磁石粉末の分散性改善という本来の機能が発揮されないばかりか、カップリング剤の分解生成物の影響により、逆に流動性・成形性が低下するなど、混練・成形時に他の予期せぬ問題が発生することが容易に考えられる。
【0010】
そこで本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、十分な耐熱性を有し、成形時の流動性・充填性に優れたボンド磁石用コンパウンド及び前記コンパウンドを用いることにより高耐熱性で、寸法精度、機械的強度、磁気特性に優れたボンド磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決して目的を達成するために、本発明のボンド磁石用コンパウンドは、磁石粉末とポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂とポリアミド(PA)樹脂を含み、コンパウンド中の磁石粉末の含有比率が79〜94.5wt%、PPS樹脂の含有比率が5〜20wt%、PA樹脂の含有比率が0.1〜2wt%、であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、本発明のボンド磁石用コンパウンドは、磁石粉末とポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂とポリアミド(PA)樹脂を含み、コンパウンド中の磁石粉末の含有比率が81〜93wt%、PPS樹脂の含有比率が6.5〜18.5wt%、PA樹脂の含有比率が0.2〜1.5wt%、であることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、磁石粉末がPA樹脂に被覆されていることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、PA樹脂が、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応で合成されたPA樹脂であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、PA樹脂が、その分子骨格中に芳香環を含んでいることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のボンド磁石は、磁石粉末とPPS樹脂とPA樹脂を含み、磁石粉末の含有比率が79〜94.5wt%、PPS樹脂の含有比率が5〜20wt%、PA樹脂の含有比率が0.1〜2wt%、であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、PPS樹脂の特徴である耐熱性を損なうことなく、成形時の流動性・充填性に優れたボンド磁石用コンパウンドを提供することが出来る。また前記コンパウンドを用いることにより、高耐熱性が必要な箇所に使用することが可能で、寸法精度、機械的強度や磁気特性に優れたボンド磁石を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るボンド磁石の製造に用いる、射出成形機の要部断面図である。
【図2】図2はボンド磁石用コンパウンドの断面構成図である。
【図3】図3は、図2のボンド磁石用コンパウンド中の磁石粉末周囲の拡大図である。
【図4】図4は、本発明のボンド磁石の好適な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
射出成形装置
図1に示す射出成形装置1について説明する。この射出成形装置1は、ペレット5が投入されるホッパ2を有する押出機3と、押出機3から押し出されたペレット5の溶融物をキャビティ6内で成形するための金型4とを有する。この射出成形装置1には、金型4の周囲に磁場印加のためのコイルなどを備えていても良い。成形時に磁場印加されれば異方性ボンド磁石、磁場印加されずに成形されれば等方性ボンド磁石が、それぞれ得られる。本実施形態においては、いずれの場合のおいても好適である。
【0021】
磁石粉末
本実施形態に用いられる磁石粉末は特に限定されないが、例えば、フェライト系磁石粉末、Sm−Co系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末、Nd−Fe−B系磁石粉末、あるいはこれらの磁石粉末の混合物が挙げられる。
【0022】
フェライト系磁石粉末としては、好ましくはマグネトプランバイト型のM相、W相等の六方晶系のフェライトが用いられる。特に好ましいマグネトプランバイト型のM相のフェライトを「M型フェライト」とするが、前記M型フェライトは一般式AFe1219 (Aは、Sr、Ba、Ca等)で表わされる。このM型フェライトには更に、磁気特性の低下に影響しない範囲で、希土類元素、Ca、Pb、Si、Ga、Sn、Zn、In、Co、Ni、Ti、Cr、Mn、Cu、Ge、Nb、Zr、Al、B等が含有されていても良い。
【0023】
Sm−Co系磁石粉末としては、例えば、SmCoやSmCo17が挙げられる。これらの磁石粉末は、磁気特性低下に影響しない範囲でCoの一部がFe、Cu、Zr等の遷移金属元素で置換されたものも含む。
【0024】
Sm−Fe−N系磁石粉末としては、例えば、SmFe17Nが挙げられる。これらの磁石粉末は、磁気特性低下に影響しない範囲でFeの一部がCo、Mn、Ni等の遷移金属元素で置換されたものも含む。
【0025】
Nd−Fe−B系磁石粉末としては、例えば、NdFe14Bが挙げられる。これらの磁石粉末は、磁気特性低下に影響しない範囲で、Ndの一部をLa、Ce、Pr、Tb、Dyなどで置換されたもの、Feの一部をCo、Mn、Ni等の遷移金属元素で置換されたもの、Bの一部をCなどで置換されたものを含む。
【0026】
特にNd−Fe−B系磁石粉末として、HDDR(水素化分解・脱水素再結合、Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法で作製された異方性Nd−Fe−B系磁石粉末を使用すると、高磁気特性を有するボンド磁石を作製することが出来る。
【0027】
磁石粉末の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.1〜200μm程度が好ましく、より好ましくは1〜100μmである。最大粒径は、300μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以下である。粒子サイズが大きいと、コンパウンドの密度バラツキや流動性バラツキを生じて製品の変形や特性バラツキに影響したり、混練機、成形機や金型内でカジリ発生の原因となる。逆に粒子サイズが小さいと、流動性が低下して成形時の充填性が悪化したり、磁石粉末が金属の場合には酸化しやすくなって磁気特性が低下する。
【0028】
磁石粉末の粒径分布は、特に限定されるものではないが、分布の範囲が広い(粒径分布がブロード)と、樹脂量が少ない状態でもコンパウンドの流動性が向上し、充填性が改善されるため、より好ましい。
【0029】
本実施形態において、コンパウンド中における磁石粉末の含有量は、79〜94.5wt%である。磁石粉末の含有量がこの範囲内であることにより、十分な耐熱性を有し、成形時の高流動性・高充填性と高磁気特性が両立したボンド磁石用コンパウンドを製造することが出来る。このような観点から、磁石粉末の量は、コンパウンド総量に対して、好ましくは81〜93wt%であり、更に好ましくは、82〜90wt%である。
【0030】
有機バインダー
本実施形態では有機バインダーとして熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂は、所望とする成形性、耐熱性、機械的強度などに応じて、様々な種類の樹脂を選択することが可能であり、1種類の樹脂を単独で使用しても、2種類以上の樹脂を混合して使用しても良い。
【0031】
本実施形態では、熱可塑性樹脂成分の融点として、200〜400℃であることが好ましく、230〜350℃であることがより好ましい。熱可塑性樹脂成分の融点が200℃未満では、本実施形態における耐熱性が不十分である。また、融点が400℃を超えると、混練時や成形時の装置負荷が大きくなったり、高温で混練、成形する必要があるために樹脂自体や磁石粉末の劣化が問題となる。また、有機バインダー原料としての形状は、粉末状、ビーズ形状、ペレット形状等、特に限定されないが、磁石粉末と均一に混合するためには粉末状であることがより好ましい。
【0032】
これらを鑑み、本実施形態では熱可塑性樹脂として、PPS樹脂とPA樹脂が用いられる。この2種類の樹脂を用いることで、十分な耐熱性を有し、成形性に優れたボンド磁石用コンパウンド及びボンド磁石を提供することが可能となる。
【0033】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂
本実施形態ではPPS樹脂が用いられる。PPS樹脂は、芳香環と硫黄原子が交互に結合した分子構造を有する熱可塑性樹脂で、約280℃の高融点であるため高耐熱性が必要な分野で利用されている。PPS樹脂には直鎖型と架橋型の2種類があり、必要に応じて単独若しくは両方を任意の割合で混合して使用されている。
【0034】
本実施形態において、PPS樹脂は磁石粉末の有機バインダーの主成分として作用する。前述の通り、PPS樹脂は高融点であることから耐熱性が必要とされる箇所や、また耐水性、耐油性を有することから、これらを必要とする環境下で使用される部品への応用が期待される。
【0035】
一方、PPS樹脂は非極性の分子構造であり、磁石粉末との相互作用が弱く濡れにくい。すなわち、磁石粉末がPPS樹脂で被覆されにくいため、磁石粉末同士の間の距離を適度に保てず、磁石粉末同士が接触したりする。そのため、PPS樹脂単独ではコンパウンドの流動性や成形性を向上したり、磁石粉末の含有率を高めたりすることが難しい。
【0036】
PPS樹脂は、前述のように分子構造の違いから直鎖型と架橋型に分類される。本実施形態では、使用される型が限定されることはなく、製品で重視される特性に応じて、直鎖型または架橋型を単独で用いても良く、両方の型を任意の割合で混合して使用しても良い。
【0037】
本実施形態におけるPPS樹脂の量は、コンパウンド総量に対して5〜20wt%である。5wt%未満であると、PPSの特徴である耐熱性という効果を得ることが困難でであるとともに、コンパウンドの流動性が低下して成形が困難となる。また、20wt%を超えると、流動し易い樹脂成分と流動し難い磁石粉末が樹脂の溶融時に分離し易くなるため、コンパウンドの流動性や成形性に悪影響を及ぼすからである。こういった観点より、PPS樹脂の量は、より好ましくは6.5〜18.5wt%であり、7〜17wt%であることが更に好ましい。
【0038】
ポリアミド(PA)樹脂
本実施形態ではPA樹脂が用いられる。PA樹脂は、分子内にアミド結合(−CO−NH−)を有する熱可塑性樹脂であり、一般的には、主に脂肪族骨格で構成されているものはナイロン、芳香族骨格のみで構成されているものはアラミドと呼ばれている。PA樹脂には、ポリアミドxとポリアミドyzが存在し、x、y、zは、それぞれモノマー成分の炭素数に由来する数字である。ポリアミドxは、環状ラクタム(炭素数x)の開環重合やω‐アミノカルボン酸(炭素数x)の重縮合で得られる。ポリアミドyzは、ジアミン(炭素数y)とジカルボン酸(炭素数z)の共重縮合で得られる。なお、本実施形態では、製品で重視される特性に応じて、いずれのポリアミドを単独で用いても両方の型を任意の割合で混合して使用しても良いが、一般的にポリアミドyzの方が高融点であるため、ポリアミドyzを使用することが好ましい。
【0039】
例えば、ポリアミドxとしては、PA6(ポリ(ε―カプロラクタム))、PA11(ポリウンデカンラクタム)、PA12(ポリラウリルラクタム)などが挙げられる。また、ポリアミドyzとしては、PA66(ポリ(ヘキサメチレンアジパミド))、PA610(ポリ(ヘキサメチレンセバサミド))、PA46(ポリ(テトラメチレンアジパミド)、PA6T(ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド))、PA9T(ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド))、PA6I(ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド))、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などが挙げられる。本実施形態においては、これらのPA樹脂に限定されることなく、本発明の範囲内で必要に応じて適宜選択して良い。
【0040】
PA樹脂は、前述のように、主鎖(分子骨格)が主に炭素−炭素単結合で構成される脂肪族PAと、主鎖が主に芳香環で構成される芳香族PAがあり、また脂肪族系モノマーと芳香族系モノマーを共重縮合した半芳香族PAも存在する。一般的に、PA分子の主鎖内に芳香環が多く含まれるほど高融点となり、耐熱性が向上する。本実施形態では、製品で重視される特性に応じて、脂肪族PA、芳香族PAあるいは半芳香族PAを単独で用いてもいずれの型を任意の割合で混合して使用しても良いが、半芳香族PAを使用することがより好ましい。
【0041】
前述のPA樹脂を分類すると、例えば、脂肪族PAは、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA46、芳香族PAは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、半芳香族PAはPA6T、PA9T、PA6Iである。
【0042】
本実施形態でPA樹脂は、磁石粉末の有機バインダーの副成分として作用する。PA樹脂は分子構造により様々な融点を有しており、低融点PA樹脂を主成分とした場合、PPS樹脂の特徴である高耐熱性が損なわれるためである。PA樹脂は分子内に極性官能基であるアミド結合を有しているため、磁石粉末表面との相互作用により付着しやすいことが期待出来る。すなわち、磁石粉末がPA樹脂で被覆されやすく、そのため磁石粉末同士の間の距離が適度に保たれ、磁石粉末の分散状態が向上して摩擦抵抗を低減すると共に、樹脂成分と磁石粉末が一体となって動くため、成形時のコンパウンドの流動性や充填性を高めることが出来る他、成形体強度や寸法精度の向上も期待出来る。
【0043】
本実施形態におけるPA樹脂の量は、コンパウンド総量に対して0.1〜2wt%である。0.1wt%未満であると、磁石粉末の有機バインダー中への分散状態が悪化し、成形時のコンパウンドの流動性や充填性が低下する。一方、2wt%を超えると、200℃未満の低融点のPA樹脂を使用していた場合には、PA樹脂がPPS樹脂よりも高流動性である影響により、PA樹脂が優先的に充填されやすくなるため、成形時のコンパウンドの充填バラツキが大きくなる。また、PA樹脂の吸湿の影響が大きくなり、磁石粉末が酸化劣化したり、コンパウンドの流動性が低下する。このような観点より、PA樹脂の量は、コンパウンド総量に対して、より好ましくは0.2〜1.5wt%であり、0.2〜1.0wt%であることが更に好ましい。
【0044】
ボンド磁石用コンパウンド
図2に本実施形態におけるボンド磁石用コンパウンドの断面構成図を、図3に図2のボンド磁石用コンパウンド中の磁石粉末7周囲の拡大図を、それぞれ示す。図2および図3に示すボンド磁石用コンパウンドは、磁石粉末7とPPS樹脂9とPA樹脂8から構成される。前述のように、PPS樹脂9は磁石粉末7への濡れ性が悪いため、PA樹脂8で被覆した磁石粉末7をPPS樹脂9中に分散させる。このような構造を形成することにより、磁石粉末7同士の間の距離が適度に保たれることで、磁石粉末7の分散状態が向上して摩擦抵抗を低減するために、成形性に優れたボンド磁石用コンパウンドを提供することが出来る。
【0045】
本実施形態におけるボンド磁石用コンパウンドは、磁石粉末の含有比率が79〜94.5wt%、PPS樹脂の含有比率が5〜20wt%、PA樹脂の含有比率が0.1〜2wt%である。この範囲とすることで、PPS樹脂の特徴である高耐熱性を損なうことなく、成形時の流動性や充填性を向上したボンド磁石用コンパウンドとなり、磁気特性、寸法精度や機械的強度などに優れたボンド磁石を提供することが出来る。このような観点から、本実施形態におけるボンド磁石用コンパウンドは、磁石粉末の含有比率が、82wt%〜93wt%であり、PPS樹脂の含有比率が、6.5〜18.5wt%であり、PA樹脂の含有比率が0.2〜1.5wt%であることが好ましい。
【0046】
ボンド磁石用コンパウンドに含まれる成分の重量比率は、例えば、TG−DTA(熱重量測定―示差熱分析)法、FT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)法、Py−GC−MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析)法、などを組合せることで確認することが出来る。本実施形態におけるボンド磁石用コンパウンドは、複数の成分から構成されているため、複数の分析手法を組み合わせることが非常に有効である。本発明では、前述の分析手法に制限されるものではなく、必要に応じて適切な分析手法を組み合わせて成分比率を求めて良い。
【0047】
PA樹脂が磁石粉末を被覆する際、その厚みが5〜1300nmとなるようにPA樹脂を含有することが好ましい。これは、コンパウンド中のPA樹脂の含有比率を、前述の範囲にすることで達成される。PA樹脂は分子内に極性官能基を有することから、PPS樹脂と比較して磁石粉末との親和性が高いため、磁石粉末と混練することでPA樹脂が磁石粉末表面に被覆されやすい。
【0048】
ここで、前述のPA樹脂の厚みとは、PA樹脂が屈曲なく直鎖状の分子構造になっており、磁石粉末それぞれの表面に、含有するPA樹脂全ての分子が層状になって均一に付着している場合の仮想厚みを意味する。その模式図を図2に示しているが、この仮想厚みTPA[nm]は、磁石粉末の比表面積S[m2/g]と重量W[g]、PA樹脂の密度DPA[g/cm]と重量WPA[g]から下式(1)で求められる。
PA=[(WPA/DPA)/(S×W)]×10 (1)
【0049】
実際には、全ての磁石粉末表面にPA樹脂が完全に均一な厚みで被覆することはなく、磁石粉末毎に、また磁石粉末内でもPA樹脂の厚みバラツキを有しているのが通常である。すなわち、本発明においてPA樹脂の被覆厚みとは、磁石粉末それぞれの表面に、含有するPA樹脂全てが被覆したときの平均厚みであり、これは前述の仮想厚みと一致する。したがって、PA樹脂の被覆厚みは前述の式(1)から求められるが、後述のような分析手法でも確認することが出来る。
【0050】
5nm未満となるようなPA樹脂の含有量である場合、磁石粉末へのPA樹脂の被覆が不十分となるため、磁石粉末同士の間の距離が適度に保てず、有機バインダー中への磁石粉末の分散状態が悪くなったり、磁石粉末同士の摩擦抵抗が増大する。そのため、成形時のコンパウンドの流動性や充填性が低下する。一方、1300nmを超えるPA樹脂の含有量である場合、特に低融点PA樹脂を使用していた場合には、PA樹脂がPPS樹脂よりも高流動性である影響により、PA樹脂が優先的に充填されやすくなるため、成形時のコンパウンドの充填バラツキが大きくなる。また、PA樹脂の吸湿の影響が無視出来なくなり、磁石粉末が酸化劣化したりコンパウンドの流動性が低下する。
【0051】
本実施形態におけるボンド磁石用コンパウンド中における磁石粉末の分散状態や、磁石粉末へのPA樹脂の被覆状態や被覆厚みは、例えば、コンパウンドの断面をSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察やSTEM(走査型透過電子顕微鏡、Scanning Transmission Electron Microscope)観察、EDS(エネルギー分散型X線分光法、Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)による元素分布解析等を組み合わせることで、確認することが出来る。本発明では、前述の分析手法に制限されるものではなく、必要に応じて適切な分析手法を組み合わせて良い。
【0052】
本発明のボンド磁石用コンパウンドには、必要に応じて酸化防止剤、重金属不活性化剤等の添加剤を添加しても良い。ただし、本発明のボンド磁石用コンパウンドにおいては、製造中に300℃前後の高温に晒されるため、これら添加剤の使用時には、使用量を必要最小限にしたり、高融点あるいは高分解温度の添加剤を適宜選択すれば良い。
【0053】
ボンド磁石
図4に、本実施形態におけるボンド磁石10の好適な一例を示す。図4に示すボンド磁石10の形態は、リング(円筒)形状であるが、本発明ではこの形状に限定されるものではなく、金型を変えることによって、所望の形状(例えば、柱状、平板状又はC型形状)を有するボンド磁石に適用可能である。
【0054】
ボンド磁石の製造方法
以下に、本発明の好適な実施形態に係るボンド磁石の製造方法について説明する。本実施形態におけるボンド磁石の製造方法は、混練・ペレット作製(コンパウンド化)工程、成形工程を含み、これからの工程を経て、ボンド磁石を製造することが出来る。各工程について以下に説明する。
【0055】
混練・ペレット作製(コンパウンド化)工程
本実施形態における混練・ペレット作製工程では、磁石粉末とPPS樹脂とPA樹脂を混練し、混練物をペレタイザなどでペレット状に成形する。混練は、例えばバッチ式ニーダー、二軸押出機などで行えば良い。ペレタイザとしては、例えば一軸押出機が用いられる。特に、二軸押出機などは、混練後にストランド(排出口)から連続的に排出される、棒状のコンパウンドを連続してカットすればペレットが作製出来るので、より好適である。混練およびペレット作製は、使用するPPS樹脂およびPA樹脂の溶融温度に応じて加熱しながら実施されるが、250〜350℃であることが好ましく、280〜330℃であることがより好ましい。
【0056】
本実施形態において、前述のコンパウンド中における磁石粉末の含有量は、79〜94.5wt%である。磁石粉末の含有量がこの範囲内であることにより、十分な耐熱性を有し、成形時の高流動性・高充填性と高磁気特性が両立したボンド磁石用コンパウンドを製造することが出来る。このような観点から、磁石粉末の量は、コンパウンド総量に対して、好ましくは82〜93wt%であり、更に好ましくは、82〜90wt%である。
【0057】
成形工程
本実施形態の成形工程では、例えば図1に示す射出成形装置1を用いて、前述のペレット5を金型4内に射出成形し、ボンド磁石の成形品が得られる。ペレット5は押出機3の内部で、例えば250〜330℃に加熱溶融される。この加熱溶融物が金型4に射出される前に金型4は閉じられ、内部にキャビティ6が形成される。加熱溶融物はスクリューにより金型4の内部キャビティ6に射出され、射出成形される。このときの金型4の温度は100〜160℃程度とすれば良い。
【0058】
成形時、金型4へ磁場が印加されると、異方性ボンド磁石が得られる。このときの金型4への印加磁場は、398〜1989kA/m(5〜25kOe)程度とすれば良い。
【0059】
以上、ボンド磁石の好適な製造方法について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で主々に改変することが出来る。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の内容を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1〜8、比較例1、2
磁石粉末として、HDDR法で作製した異方性Nd−Fe−B系磁石粉末(平均二次粒子径:50μm)、有機バインダーとして、直鎖型PPS樹脂(融点:約280℃)、PA6T(ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド))樹脂(融点:約300℃)を準備した。これらを表1に示すコンパウンド組成となるように秤量し、キャビティー内を窒素置換した加圧加熱ニーダーを用いて、300℃で2hr混練し、得られたコンパウンドをペレタイザでペレット化した。
【0062】
得られたペレットについて、メルトインデクサを用いて、設定温度:330℃、荷重:10kg、余熱時間:360秒、インターバル:25mmの条件で、MVR(メルトボリュームフローレート、単位:cm/10min.)を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
得られたペレットについて、TG−DTA(熱重量測定―示差熱分析)法、FT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)法、Py−GC−MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析)法を組合せ、コンパウンド中の成分比率を確認した。
【0064】
次に、図1に示す磁場射出成形装置1を用いて、ペレット5を金型4内に射出成形し、異方性ボンド磁石を作製した。金型4への射出前に、金型4は閉じられ、内部にキャビティ6が形成され、金型4には磁場が印加された。なお、ペレット5は、押出機3の内部で加熱溶融され、スクリューにより金型4のキャビティ6内に射出された。射出温度は300℃、金型温度は140℃、射出成形時の印加磁場は1592kA/mとした。磁場射出成形工程で得られたボンド磁石は円板状であり、直径15mm、厚み10.5mmであった。なお、磁場印加方向は厚み方向とした。
【0065】
作製したボンド磁石は、アルキメデス法により、密度測定を行った。このボンド磁石を用い、25℃の大気中にて、最大印加磁場1989kA/mの
B−Hトレーサにて磁気特性(残留磁束密度Br、保磁力HcJ)を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
さらに、図1の磁場射出成形装置1にて、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの板状ボンド磁石を作製した。なお、磁場印加方向は、厚み方向とした。このボンド磁石を用いて、荷重たわみ温度を、JIS K 7191に基づいて、曲げ応力1.8MPaとなる荷重で測定した。測定結果は、180℃未満の場合は「×」、180〜230℃の場合は「△」、230℃以上の場合は「○」、250℃以上の場合は「◎」で、それぞれ示した。また、曲げ強度をJIS K 7171に基づいて、支点間距離64mm、加重速度2mm/mmの条件で測定した。測定結果は、60MPa未満の場合は「×」、60〜90MPaの場合は「△」、90MPa以上の場合は「○」、100MPa以上の場合は、「◎」で、それぞれ示した。
【0067】
比較例3
有機バインダーとして、PA6T樹脂を使用しない以外は、実施例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0068】
実施例9
有機バインダーとして、架橋型PPS(融点:約280℃)樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
実施例10
有機バインダーとして、直鎖型PPS樹脂と架橋型PPS樹脂を重量比1:1で混合して用いた以外は、実施例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
比較例4
磁石粉末として、HDDR法で作製した異方性Nd−Fe−B系磁石粉末(平均粒子径:50μm)、有機バインダーとしてPPS樹脂(融点:約280℃)、さらに磁石粉末への表面処理剤としてシランカップリング剤(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を準備した。
【0071】
ミキサーで異方性Nd−Fe−B系磁石粉末を乾式攪拌している中に、無水エタノールで希釈した前記シランカップリング剤を磁石粉末に対して1wt%噴霧し、さらに乾式混合した。混合後、100℃で乾燥し、シランカップリング剤処理異方性Nd−Fe−B系磁石粉末を得た。
【0072】
前記シランカップリング剤処理した磁石粉末を用いて、PA6T樹脂を使用しない以外は実施例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
実施例11〜12、比較例5〜6
HDDR法で作製した異方性Nd−Fe−B系磁石粉末の平均粒子径を10μm、または100μmとした以外は、実施例1または比較例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
実施例13、比較例7
PA6T樹脂の代わりにPA12(ポリラウリルラクタム)樹脂(融点:約175℃)を使用した以外は、実施例1または比較例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。
【0075】
実施例14〜15、比較例8
PA6T樹脂の代わりにPA66(ポリ(ヘキサメチレンアジパミド))樹脂(融点:約240℃)を使用した以外は、実施例1または比較例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
実施例16、比較例9
磁石粉末を、等方性Nd−Fe−B系磁石粉末(平均粒子径:75μm)とした以外は、実施例1または比較例1と同様に、コンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
実施例17、比較例10
磁石粉末を、M型フェライト磁石粉末(主組成:Ca0.45La0.4Sr0.15Ba0.001Fe9.4Co0.2519、SiO=0.6wt%含む、平均粒子径:1μm)とした以外は、実施例1または比較例1と同様にコンパウンド及びボンド磁石を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
同じ磁石粉末含有量で比較すると、本発明に係るコンパウンド、すなわちPA樹脂を含むコンパウンドにおいて、流動性の指標であるMVR値が向上している(実施例1〜3と比較例3など)。これは磁石粉末がPA樹脂に被覆されてPPS樹脂中に分散し、磁石粉末同士の接触による摩擦抵抗が大きく低減されたためである。比較例2では、磁石粉末をカップリング剤処理したにも係わらず流動性が低い。これは混練・成形中の熱によりカップリング剤が熱分解し、PPS樹脂と磁石粉末の潤滑性向上効果が失われたためである。また、PA樹脂を含むことで、磁石粉末含有量が多くなっても、高流動性を維持することが出来る(実施例2・4・5)。
この流動性向上効果は、PPS樹脂の種類が直鎖型であっても、架橋型であっても、両方の型が混合されていても、同様に確認出来た(実施例1・9・10)。すなわち、PPS樹脂の種類に係わらず、コンパウンド中の磁石粉末が同様の状態になっていると考えられる。
【0080】
このように本発明に係るコンパウンドは、コンパウンド中に摩擦抵抗が小さくなった磁石粉末がより均一に分散しているため、成形時において、金型中に磁石粉末と有機バインダーがムラなく充填される。そのため作製したボンド磁石の成形体密度が向上し、高い残留磁束密度が得られる。一方、比較例のPA樹脂を含まないコンパウンドは、磁石粉末と有機バインダーが一体となって流動し難いため、流動性の高い有機バインダーが金型内に多く充填される。そのため作製したボンド磁石の成形体密度が向上せず、得られる残留磁束密度も低い。また、比較的低融点のPA樹脂を多く含むコンパウンド(比較例7・8)は、成形時に高流動性のPA樹脂が金型内に多く充填されてしまうため、作製したボンド磁石の成形体密度が向上せず、得られる残留磁束密度も低い。
【0081】
比較例2のように、磁石粉末量が少なくPPS量が多い場合には、MVR値自体は高いが、これは流動し易い樹脂成分と流動し難い磁石粉末が樹脂成分の溶融時に分離し易く、樹脂成分が多く流動した影響である。すなわち、成形時には樹脂成分が優先的に充填されてしまう。そのため、成形体密度が低下し、高い残留磁束密度、曲げ強度や荷重たわみ温度が得られない。
また、比較例3のように、磁石粉末量が多くPPS量が少ない場合、流動し易い樹脂成分自体が少なすぎてMVR値が大きく低下する。そのため、成形体を得ることが出来ないか、仮に成形出来たとしても、配向度低下による残留磁束密度の低下や密度バラツキによる強度低下の原因となる。
【0082】
さらに、本発明に係るボンド磁石は、曲げ強度や荷重たわみ温度が優れている。これは、強度の低い磁石粉末同士の接触点が大きく低減され、磁石粉末がより均一に分散して密度バラツキが小さく、PPS樹脂が全体を覆う形となっているため、機械的強度や耐熱性が向上したと考えられる。なお、本実施形態においては、曲げ強度もしくは荷重たわみ温度、いずれかの評価結果が「×」である場合に、比較例とした。
【0083】
以上のように、本発明に係るボンド磁石用コンパウンドは、成形時の流動性・充填性が良好で、得られたボンド磁石は磁気特性、耐熱性や機械的強度に優れていることが明確である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係るボンド磁石用コンパウンドは、高耐熱性が必要な箇所に使用することが可能で、成形時の流動性・充填性に優れている。本発明に係るボンド磁石用コンパウンドを使用することは、磁気特性、寸法精度や機械的強度に優れたボンド磁石に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 射出磁場成形装置
2 ホッパ
3 押出機
4 金型
5 ペレット
6 キャビティ
7 磁石磁粉
8 PA樹脂
9 PPS樹脂
10 ボンド磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド磁石用コンパウンドであって、
磁石粉末の含有比率が、79〜94.5wt%であり、
ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有比率が、5〜20wt%であり、
ポリアミド樹脂の含有比率が、0.1〜2wt%
であることを特徴とする、ボンド磁石用コンパウンド。
【請求項2】
請求項1に記載のボンド磁石用コンパウンドであって、
前記磁石粉末の含有比率が、81〜93wt%であり、
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有比率が、6.5〜18.5wt%であり、
前記ポリアミド樹脂の含有比率が、0.2〜1.5wt%
であることを特徴とする、ボンド磁石用コンパウンド。
【請求項3】
請求項1のボンド磁石用コンパウンドであって、
磁石粉末が、ポリアミド樹脂に被覆されていることを特徴とする、
ボンド磁石用コンパウンド。
【請求項4】
請求項1または請求項2のボンド磁石用コンパウンドであって、
ポリアミド樹脂が、 ジアミンとジカルボン酸の重縮合反応物
であることを特徴とする、ボンド磁石用コンパウンド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のボンド磁石用コンパウンドであって、
ポリアミド樹脂が、その分子骨格中に芳香環を含むことを特徴とする、
ボンド磁石用コンパウンド。
【請求項6】
磁石粉末の含有比率が、79〜94.5wt%であり、
ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有比率が、5〜20wt%であり、
ポリアミド樹脂の含有比率が、0.1〜2wt%
であることを特徴とする、ボンド磁石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−77802(P2013−77802A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149252(P2012−149252)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】