説明

ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法、並びに、これを用いたボンド磁石

【課題】流動性や圧縮密度を得るため粒度分布幅を広くしながらも、それによるSFDの増加を抑制し、配向性や着磁性の低下を抑制できるボンド磁石用フェライト粉末を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.20μm以上、5.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライト粉であって、レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた当該マグネトプランバイト型フェライト粉の粒度分布において、粒子径1μm以下の粒子の割合が20質量%以上あるボンド磁石用フェライト粉末を製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法、並びに、これを用いたボンド磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
高磁力が要求される、AV、OA機器、自動車電装部品等に使用される小型モーターや、複写機のマグネットロール等に用いられる磁石には、フェライト系焼結磁石が使用されている。だが、当該フェライト系焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なため生産性に劣ることに加え、複雑な形状への加工が困難であるという固有の問題がある。最近では、希土類磁石を用いたボンド磁石がこの分野で一部使用されている。しかし、希土類磁石は、フェライト系焼結磁石の20倍のコスト高であり、また錆びやすいという問題がある。そこで、フェライト系焼結磁石をフェライト系ボンド磁石で代替したいという要請がある。
【0003】
しかし、ボンド磁石と焼結磁石とでは、フェライトの含有率が大きく異なる。例えば、フェライト系焼結磁石はフェライトのみ含有しているのに対し、フェライト系ボンド磁石では、樹脂やゴム等のバインダーが含まれるため当然フェライトの含有率はこれより低くなり、磁力は下がる。したがって、フェライト系ボンド磁石の磁力を高くするには、フェライト粉末の含有率を増やすことが必須の課題となる。しかし、フェライト系ボンド磁石においてフェライト粉末の含有率を増やすと、今度は、フェライト粉末とバインダーとの混練時に、当該混練物が高粘度となり、負荷が増大して生産性が低下し、極端な場合には混練不可になる。そして、たとえ混練が出来たとしても、今度は、成形時においても混練物の流動性が悪いので、やはり生産性が低下し、極端な場合には成形不可になる。
【0004】
このフェライト系ボンド磁石特有の課題を解決するために、バインダーの選定やフェライト粉末の表面処理等の面での改良が行われている。例えば、特許文献1には、平均粒子径が0.5〜1.5μmの範囲にあるフェライト微粉と、平均粒子径が30〜250μmの範囲にあるフェライト粗粉とを、配合する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭63−34610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討によると、例えば、特許文献1に記載された方法により、圧縮密度が高く、高充填性のフェライト粉末は得られるものの、配向度の観点から重要なSFDが増大するという課題が見出されたものであった。
本発明は、このような状況の下でなされたものであり、流動性や圧縮密度を得るため粒度分布幅を広くしながらも、配向度を保つことが出来、高磁力を有するボンド磁石を作製できるボンド磁石用フェライト粉末を提供することを課題とする。
尚、本発明においてSFDとは、ヒステリシスカーブを微分して得られるiHcの分布曲線の半価幅をiHcで割った値のことをいう。当該SFDの値が小さいほど、iHc分布幅が小さくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、大きな粒子径分布を有するM型フェライトと、小さな粒子径分布を有するM型フェライトとを混合すると、iHcの
分布幅が広がる為、SFDの値も増加し配向度が低下するというトレードオフ関係にあることに想到した。iHcについては結晶異方性と形状異方性、単磁区構造等によって説明されており、平均粒子径が小さくなると単軸構造に近づくためiHcが大きくなる。
ここで本発明者らは、小さな粒子径分布を有するM型フェライト粉末中に適宜量の遷移金属酸化物を含有させ、当該小さな粒子径分布を有するM型フェライト粉末のiHcを、大きな粒子径分布を有するM型フェライトのiHcに近づける構成に想到した。そして、当該iHcの近い、大、小の粒子径分布を有する マグネトプランバイト型フェライト粉
末を混合することにより、混練物の流動性を保ちながら配向度を上げられるとの画期的な知見に想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
平均粒子径が0.20μm以上、5.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、
Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライト粉であって、
レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた当該マグネトプランバイト型フェライト粉の粒度分布において、粒子径1μm以下の粒子の割合が20質量%以上あることを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末である。
【0009】
第2の発明は、
平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉と、平均粒子径1.00μm以上、5.0
0μm未満のマグネトプランバイト型フェライトの粗粉とを含み、
前記マグネトプランバイト型フェライトの微粉の配合量が、15質量%以上、40質量%以下であることを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末である。
【0010】
第3の発明は、
前記遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉が、Zr酸化物および/またはTi酸化物を、0.01質量%以上、3質量%以下、含有することを
特徴とする第2の発明に記載のボンド磁石用フェライト粉末である。
【0011】
第4の発明は、
前記遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉が、Ti酸化物およびZn酸化物を、0.01質量%以上、3質量%以下、含有することを特徴とす
る第2の発明に記載のボンド磁石用フェライト粉末である。
【0012】
第5の発明は、
遷移金属酸化物を含有したマグネトプランバイト型フェライトを準備し、これを平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲に入る微粉とする工程と、
マグネトプランバイト型フェライトを準備し、これを粉平均粒子径が1.00μ以上、
5.00μm未満の範囲に入る粗粉とする工程と、
当該微粉と当該粗粉とを混合し、微粉の配合量が15質量%以上、40質量%以下、残部が粗粉である混合比率を有するフェライト粉末を製造する工程と、を有することを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末の製造方法である。
【0013】
第6の発明は、
第1から第4の発明のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を、磁性粉として用いたことを特徴とするボンド磁石である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粒度分布幅が広く、圧縮密度が高いにもかかわらずSFDが小さく、飽和磁化σsが高い、ボンド磁石製造用のフェライト粉末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のボンド磁石用フェライト粉末について詳細に説明する。尚、本明細書において、「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0016】
本発明者らの検討によると、フェライト系ボンド磁石において高磁力化を達成するには、(1)フェライト粉末のボンド磁石中へ高充填すること、(2)フェライト粉末の配向度を上げること、が必須の要件である。
以下、当該(1)、(2)の要件を満足するための実施形態および製造方法について説明する。
【0017】
〈1.フェライト粉末の、ボンド磁石中への高充填〉
高充填のフェライト粉末を得るには、当該フェライト粉末の粒度分布幅を広くすることが効果的である。
本発明者らは、マグネトプランバイト型フェライト粉末について、充填性と配向度の高い製造条件を知るべく広汎な試験研究を行った。
そして、当該試験研究の結果、平均粒子径が0.20μm以上、5.00μm未満の範
囲にあり、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライト粉であって、レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた当該マグネトプランバイト型フェライト粉の粒度分布において、粒径1μm以下の粒子の割合が20質量%以上あることを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末が、高充填性をもたらすことを見出した。
【0018】
尚、本発明においてマグネトプランバイト型フェライト(「M型フェライト」と、よばれる場合もある。)とは、一般式「AFe1219」で表記されるフェライトである。但し、A元素は、例えば、Sr、Ba、CaおよびPbの1種以上である。またFeの一部を、Alのような3価の元素、または、TiとCoのような4価と2価の元素で置換したものも含む。
【0019】
併せて本発明者等は、平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲にあるマグネトプランバイト型フェライトの微粉と、平均粒子径が1.00μm以上、5.00μ
m未満の範囲、好ましくは1.3μm以上2.2μm未満の範囲にあるM型フェライトの粗粉とを混合し、かつ、その混合の際、平均粒子径が0.30μm以上、1.00μm未満の範囲にあるマグネトプランバイト型フェライトの微粉の配合量を15〜40%とした場合に、得られた粉末が高充填性をもたらすことを見出した。
【0020】
〈2.フェライト粉末の配向度の向上〉
本発明者らの検討によれば、高配向性のフェライト粉末を得るには、当該フェライト粉末のSFDを小さくすることが効果的であり、モーターの磁気波形が改善されることなどが期待される。ところが〈1〉で説明したように、フェライト粉末の充填性を上げるには、粒度分布幅を広げ圧縮密度を高くすることが効果的であるためSFDも増加してしまう。このトレードオフ関係を克服し、高配向と高充填とを両立するために、本発明者らは、上述の微粉部分と粗粉部分とのiHcを近づける構成に想到した。
【0021】
本発明者らは、当該構成を実現すべく、フェライトについて広汎な試験研究を行った。
その結果、マグネトプランバイト型フェライトの微粉部分へ0.01〜3.00%、好
ましくは0.5〜2.5%の遷移金属酸化物を添加することで当該微粉部分のiHcが低くなり、微粉部分と粗粉部分とのiHcの差が縮まり、マグネトプランバイト型フェライト
全体としてのSFDが小さな磁性粉を得られることを見出した。尚、当該遷移金属酸化物の添加量は、0.01%以上あればiHcの低下効果が発揮され、3.00%以下であればiHcの過剰低下を回避出来る。
【0022】
さらに、本発明者らの検討によれば、当該遷移金属酸化物種としては、Zr、Ti、Zn、Co、Mn又はNi、およびこれらを任意に組み合わせたものの酸化物が、iHcの制御の面から好ましい。中でも、Zr、Tiの一方又は双方の元素を含む酸化物や、TiとZnとの双方の元素を含む酸化物は、σsを向上させる観点からも好ましい。
【0023】
〈3.フェライト粉末製造方法〉
本発明に係るマグネトプランバイト型フェライト粉末を製造するには、先ず、微粉原料と粗粉原料とを準備する。
微粉原料として、例えば、遷移金属酸化物を含有したフェライトを、粉砕するか、または、粉砕後に分級して平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲である微粉を得る。このフェライトの粉砕時に、平均粒子径を0.20μm以上とすることで、当該
粉砕時間の長時間化を回避出来、ボンド磁石製造時の磁気特性低下も回避出来る。
他方、平均粒子径を1.00μm未満とすることで、粒子径1.00μm超の粒子の割合を低減する。粒子径1.00μm超の粒子の割合を低減することで、後述する粗粉との混
合時に、混合粉の圧縮密度を上げることが出来、ボンド磁石への高充填を実現できる。
【0024】
一方、粗粉原料として、例えば、平均粒子径が3.0μm以上、4.0μm未満の範囲にあるフェライトを準備し、これを粉砕するか、または、粉砕後に分級して平均粒子径が1.00μ以上、50μm未満の範囲に入る粗粉を得る。この粉砕時に、粒子径1.00μm未満の粒子の割合を低減することで、上述した微粉との混合粉において、混合粉の圧縮密度を上げることが出来、ボンド磁石への高充填を実現できる。
他方、粒子径5.00μm超の粒子の割合を低減することで、ボンド磁石製造時の配向度と保磁力を高く保つことが出来る。
【0025】
このようにして準備した平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲にある微粉と、平均粒子径が1.00μm以上、5.00μm未満の範囲にある粗粉とを混合し
て、微粉の配合量が15〜40%、残部が粗粉である混合比率を有するフェライト粉末を製造する。
微粉の配合量が15%以上あれば、混合粉の圧縮密度を高め高充填を実現出来る上、ボンド磁石に成形後の保磁力も高くなる。他方微粉の配合量が40%以下であれば、ボンド磁石製造の際において、バインダーとの混練および成形時の粘度が高くなりすぎてボンド磁石化が困難になる事態を回避でき、さらに、成形後において磁粉の配向度が低くなって残留磁束密度Brが下がる事態を回避できると考えられる。
【0026】
上述の混合比をもって微粉と粗粉とを混合後に、当該混合粉へアニール処理を施すか、または、予め、微粉と粗粉とを別々にアニール処理してから混合し、本発明に係るボンド磁石用フェライト粉末を得る。当該アニール処理によって、微粉・粗粉製造時における粉砕の際に、粒子中の結晶に発生した歪みを除去することができる。当該アニール温度は800〜1100℃が好ましい。800℃以上あればアニールの効果が十分に達成され、保磁力と飽和磁化を上げることが出来る。また1100℃以下とすることで焼結の過剰進行を回避し、圧縮密度と配向性との低下を回避出来る。
【0027】
〈4.本発明に係るフェライト粉末の特徴〉
以上詳細に説明したように、本発明に係るフェライト粉末は、ボンド磁石中へ高充填することが可能であるばかりでなく、フェライト粉末の配向度を上げることが出来る。従って、本発明に係るフェライト粉末を用いることで、AV、OA機器、自動車電装部品等に
使用される小型モーターや、複写機のマグネットロール等の分野において従来のものにはない高磁力のボンド磁石を提供することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、本実施例において製造したフェライト粉の粉体特性の測定方法について説明する。
【0029】
<平均粒子径>
フェライト粉の平均粒子径は、島津製作所製のSS−100型を用い、空気透過法に基づいて測定を行った。
【0030】
<比表面積>
フェライト粉の比表面積(SSA)は、BET法に基づいて、ユアサ アイオニクス株式会社製のモノソーブを用いて測定を行った。
【0031】
<圧縮密度>
フェライト粉の圧縮密度は、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉10gを充填した後、1ton/cmの圧力で圧縮した。このときのフェライト粉の密度を圧縮密度として測定した。
【0032】
<磁気特性>
フェライト粉の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いてσs(emu/g)、SFDの測定を行った。
【0033】
<粒度分布>
フェライト粉の粒度分布は、乾式レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用い、focal length=20mm、分散圧 5.0bar、吸引圧 130mbarの条件にて測定を行った。
【0034】
(実施例1)
(1)微粉の製造
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比で、酸化鉄5.6:炭酸ストロンチウム1に
なるように秤量し、当該秤量物に対して0.5質量%のZrOを加えて混合した。次に、当該混合物を水で造粒し、乾燥後、電気炉中1020℃で40分間焼成し焼成物を得た。当該焼成物をハンマーミル(商品名:サンプルミル)で粉砕し、さらに湿式粉砕機(商品名:ウエットミル)で湿式粉砕し、実施例1に係る微粉を得た。
得られた微粉は、ZrOを0.5質量%含有、平均粒子径:0.65μm、σs:5
7.3emu/gであった。
【0035】
(2)粗粉の製造
酸化鉄と炭酸ストロンチウムを、モル比で酸化鉄5.6:炭酸ストロンチウム1になる
ように秤量し混合する。次に、当該混合物を水で造粒し、乾燥後、電気炉中1200℃で2時間焼成し焼成物を得た。当該焼成物をサンプルミルで粉砕し、さらに湿式粉砕機(商品名:ウエットミル)で湿式粉砕し、実施例1に係る粗粉を得た。
得られた粗粉は、平均粒子径:2.11μm、σs:54.4emu/gであった。
【0036】
(3)混合粉(フェライト粉末)の製造
上記(1)で得られた微粉(20%)と、(2)で得られた粗粉(80%)とを秤量し
、これを良く混合し、その混合粉を電気炉中950℃で1時間焼成(アニール)して、実施例1に係るフェライト粉末を得た。
得られたフェライト粉末は、平均粒子径:1.22μm、比表面積 :2.48m/g
、圧縮密度 :3.45g/cm、σs:57.4emu/g、SFD:0.9129で
あった。
【0037】
(4)ボンド磁石の製造
上記(3)で得られたフェライト粉末90部に、シラン系カップリング剤(東レダウコーニング製、Z−6094N)0.6部を添加し、ミキサー(共立理工製、SK−10型
)で撹拌して当該フェライト粉末の表面処理を行った。次に、当該フェライト粉末へ、粉末状の6−ナイロン(宇部興産株式会社製、P−1011F)8.6部と、滑剤(ヘンケル製、VPN―212P)0.8部とを添加し、混合物を得た。
次いで、当該混合物を、混練機(東洋精機製作所製、100C100型)を用いて230℃で混練ペレット化した。そして当該混練ペレットを3.4KOeの磁界中で射出成形
し、実施例1に係る直径15mm×高さ8mmの円柱状異方性ボンド磁石を得た。ここで、当該混練、射出成形はスムーズに実施できた。
当該実施例1に係る磁石を、BHトレーサーで測定したところ、SQ(Area)0.893、Hk/iHc0.803を示した。当該結果を一覧表である表1に記載した。
【0038】
(実施例2)
実施例1における(1)の微粉の製造時に、ZrO添加量を2.0質量%とした以外は、実施例1と同様に操作して実施例2に係るフェライト粉末を得た。
実施例2に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
尚、表2において、D5、D10、・・・D90は、それぞれ、累積粒度分布が5%、10%・・・90%のときの粒径である。一方、0.3μm↓(0.3μmアンダー)、1μm↓(1μmアンダー)、・・・14.6μm↑(14.6μmアッパー)は、それぞれ、粒径0.3μm以下の粒子の存在割合、粒径1μm以下の粒子の存在割合、・・・粒径14.6μm以上の粒子の存在割合である。
【0039】
(実施例3)
実施例1における(1)で得られた微粉(30%)と、(2)で得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例3に係るフェライト粉末を得た。
実施例3に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0040】
(実施例4)
実施例1における(1)の微粉製造時に加える繊維金属酸化物種をTiOとし、添加量を2.0質量%とした以外は、実施例1と同様に操作して実施例4に係るフェライト粉末を得た。
実施例4に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に記載した。
【0041】
(実施例5)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を酸化鉄5.8:炭酸ストロンチウム1
とした以外は、実施例1と同様に操作して実施例5に係るフェライト粉末を得た。
実施例5に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に記載した。
【0042】
(実施例6)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、加える遷移金属酸化物種をTiO、添加量を0.05質量%として得られた微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし、電気炉中で1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例6に係るフェライト粉末を得た。
実施例6に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0043】
(実施例7)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、加える遷移金属酸化物種をTiO、添加量を0.5質量%として得られた微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし、電気炉中で1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例7に係るフェライト粉末を得た。
実施例7に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0044】
(実施例8)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、加える遷移金属酸化物種をTiO+ZnO、添加量を0.1質量%+0.1質量%=0.2質量%として得られた微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし、電気炉中で1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例8に係るフェライト粉末を得た。
実施例8に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0045】
(実施例9)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、加える遷移金属酸化物種をTiO+ZnO、添加量を1.0質量%+1.0質量%=2.0質量%として得られた微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし、電気炉中で1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例9に係るフェライト粉末を得た。
実施例9に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0046】
(実施例10)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、加える遷移金属酸化物種をTiO+ZrO、添加量を1.0質量%+1.0質量%=2.0質量%として得られた微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし,電気炉中で1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して実施例10に係るフェライト粉末を得た。
実施例10に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0047】
(比較例1)
実施例1における(1)の微粉の製造時に、ZrOを添加しなかった以外は、実施例
1と同様に操作して比較例1に係るフェライト粉末およびボンド磁石を得た。
比較例1に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に記載し、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
次に、上記で得られたフェライト粉末を用い、実施例1と同様にして比較例1に係る円柱状異方性ボンド磁石を得た。
そして、当該比較例1に係る磁石を、BHトレーサーで測定したところ、SQ(Area)0.878、Hk/iHc0.772を示した。当該結果を一覧表である表1に記載した。
【0048】
(比較例2)
実施例1における(1)の微粉の製造時に、ZrOを添加せず、微粉(30%)と、(2)で得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して比較例2に係るフェライト粉末を得た。
比較例2に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0049】
(比較例3)
実施例1における(3)混合粉(フェライト粉末)の製造に、(1)で得られた微粉(80%)と、(2)で得られた粗粉(20%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して比較例2に係るフェライト粉末を得た。
比較例3に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に記載した。
【0050】
(比較例4)
実施例1における(1)の微粉の製造時に、ZrO添加量を10質量%とした以外は、実施例1と同様に操作して比較例4に係るフェライト粉末を得た。
比較例4に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に記載した。
【0051】
(比較例5)
実施例1における(1)の微粉製造時のモル比を、酸化鉄5.5:炭酸ストロンチウム1とし、ZrOを添加せずに得られた、微粉(30%)と、(2)の粗粉製造時のモル比を、酸化鉄5.9:炭酸ストロンチウム1とし,電気炉中1230℃焼成して得られた粗粉(70%)とを秤量し、これを良く混合した以外は、実施例1と同様に操作して比較例5に係るフェライト粉末を得た。
比較例5に係るフェライト粉末の平均粒子径、比表面積、圧縮密度、σs、SFDの測定値を表1に、当該フェライト粉末の粒度分布を表2に記載した。
【0052】
【表1】

【表2】

【0053】
(まとめ)
表1、2の結果から、平均粒子径が0.20μm以上、5.00μm未満の範囲にあり
、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライト粉であって、レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた当該マグネトプランバイト型フェライト粉の粒度分布において、粒子径1μm以下の粒子の割合が20質量%以上あるか、または、平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉と、平均粒子径1.00μm以上、5.00μm未満
のマグネトプランバイト型フェライトの粗粉とを含み、 前記マグネトプランバイト型フェライトの微粉の配合量が、15質量%以上、40質量%以下である、実施例1〜10に係るフェライト粉末は、移金属酸化物を含有させる構成を有しない比較例1、2、5に係るフェライト粉末と、ほぼ同様の粉末物性を有していた。
ところが、実施例1〜10に係るフェライト粉末と、比較例1〜5に係るフェライト粉末との磁気特性を比較してみると、σs、SFDとも実施例1〜10に係るフェライト粉末の方が優れていることが判明した。
さらに、実施例1に係るボンド磁石と、比較例1に係るボンド磁石との磁気特性を比較してみると、SQ、Hk/iHcとも実施例1に係るボンド磁石の方が優れており、高配向・高磁力品であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.20μm以上、5.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、
Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライト粉であって、
レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた当該マグネトプランバイト型フェライト粉の粒度分布において、粒子径1μm以下の粒子の割合が20質量%以上あることを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項2】
平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲にあり、Zr、Ti、Zn、Co、Mn及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉と、平均粒子径が1.00μm以上、5.00μm未満の範囲にあるマグネトプランバイト型フェライトの粗粉とを含み、
前記マグネトプランバイト型フェライトの微粉の配合量が、15質量%以上、40質量%以下であることを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項3】
前記遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉が、Zr酸化物および/またはTi酸化物を、0.01質量%以上、3質量%以下、含有することを
特徴とする請求項2に記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項4】
前記遷移金属の酸化物を含有するマグネトプランバイト型フェライトの微粉が、Ti酸化物およびZn酸化物を、0.01質量%以上、3質量%以下、含有することを特徴とす
る請求項2に記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項5】
遷移金属酸化物を含有したマグネトプランバイト型フェライトを準備し、これを平均粒子径が0.20μm以上、1.00μm未満の範囲に入る微粉とする工程と、
マグネトプランバイト型フェライトを準備し、これを粉平均粒子径が1.00μ以上、
5.00μm未満の範囲に入る粗粉とする工程と、
当該微粉と当該粗粉とを混合し、微粉の配合量が15質量%以上、40質量%以下、残部が粗粉である混合比率を有するフェライト粉末を製造する工程と、を有することを特徴とするボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末を、磁性粉として用いたことを特徴とするボンド磁石。

【公開番号】特開2009−99969(P2009−99969A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246834(P2008−246834)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(595156333)DOWAエフテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】