説明

ボーマン・バークインヒビタープロテインを大豆加工ストリームから回収する方法

本発明は、特定される総BBIタンパク質濃度、および(例えばキモトリプシン阻害物質活性および内毒素含量をはじめとする)他のBBIの特性を有する、BBI生成物を精製する新規方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその内容全体を本明細書に援用する、2009年12月30日に出願された米国仮特許出願第61/291,312号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、精製ボーマン・バークインヒビター(BBI)プロテインを大豆加工ストリームから回収する方法を提供する。具体的には、本開示は、BBI生成物をクロマトグラフ分離するステップを含み、BBI生成物を単離し除去する1つまたは複数の分離技術が含まれていてもよい方法を提供し、BBI生成物は、少なくとも90質量%の総BBIタンパク質濃度で表される純度を有する。
【背景技術】
【0003】
大豆加工ストリームは、相当量のプロテアーゼインヒビターを含有する。プロテアーゼインヒビターは、少なくともトリプシン、キモトリプシンを阻害し、そして一連の様々な重要代謝機能を制御する、多様な他の重要な膜貫通プロテアーゼを潜在的に阻害することが知られている。プロテアーゼインヒビターの局所投与は、数カ所に局在していてもまたは身体の大きな部分に関わっていてもよい、皮膚炎症の一般的な形態であるアトピー性皮膚炎などの病状において用途がある。プロテアーゼインヒビターの色素除去活性、および紫外線誘発色素沈着を予防するそれらの能力は、生体外および生体内の双方で実証されている(例えば、Paine et al.,J.Invest.Dermatol.,116:587−595[2001]を参照されたい)。プロテアーゼインヒビターはまた、創傷治癒を促進することが報告されている。例えば分泌型白血球プロテアーゼインヒビターを局所的に塗布すると、組織破壊が逆転し、創傷治癒過程を加速することが実証された。さらにセリンプロテアーゼインヒビターは、紅斑性狼瘡患者において疼痛を軽減させる一助にもなり得る(例えば、米国特許第6,537,968号明細書を参照されたい)。
【0004】
天然プロテアーゼインヒビターは、穀類(オート麦、大麦、およびトウモロコシ)、芽キャベツ、タマネギ、ビート根、小麦、シコクビエ、および落花生などの多様な食物に見られる。関心のもたれる供給源は、大豆である。大豆中に存在するプロテアーゼインヒビターの平均レベルは、2つの最重要なプロテアーゼインヒビターであるKunitzおよびボーマン・バークで、それぞれ約1.4%および0.6%である。
【0005】
ボーマン・バークプロテアーゼインヒビター(BBI)として知られているプロテアーゼインヒビターは、トリプシンおよびキモトリプシンの低分子量タンパク質(7〜8kDa)両刃阻害物質であり、大豆から単離される。それは60年以上前に初めて発見され(Bowman,Proc.Soc.Exptl.Med.,1946,63,574;引き続いてBirk,Y.Biochim.Biophys.Acta,1961,54,378−381;およびBirk.Y.et al.,Biochemical Preparations,1968,Vol.12,25−29によってさらに特性解析された)、いくつかの実験系における、その強力な抗発癌性効果の発見以来、科学研究コミュニティから新たな関心が寄せられている。
【0006】
トリプシンおよびキモトリプシン阻害性に加えて、BBIはまた、カテプシンG、エラスターゼ、およびキマーゼなどの他のプロテアーゼ活性を阻害する能力も有する(そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、Birk Y.,Int J Pept Protein Res,1985,25:113−131;Larionova et al.,Biokhimiya,1993,58:1437−1444;およびWare et al.,Archives of Biochemistry and Biophysics 1997,344:133−138)。BBIタンパク質は、およそ65〜77個のアミノ酸残基と、およそ7つのジスルフィド架橋からなる。BBIは、そのアミノ酸システインの高濃度(約20質量%)、高水溶解性、熱変性耐性、および独立した阻害部位でトリプシンとキモトリプシンを阻害する能力を有することで特徴付けられる、タンパク質である。
【0007】
粗製および精製BBIのどちらも、培養中、および実験動物中において、様々な各種誘発性の細胞悪性形質転換を予防し、または軽減させることが良く知られている(Kennedy,A.R.,The Bowman−Birk Inhibitor from soybeans as an anticarcinogenic agent,Am J of Clinical Nutr,1998:68,1406S−1412S)。例えば(1)Kennedy,A.R.Chemopreventive agents:protease inhibitors.Pharmacology & Therapeutics 78:167−209,1998;(2)Kennedy,A.R.Overview:Anticarcinogenic activity of protease inhibitors.In:Protease Inhibitors as Cancer Chemopreventive Agents;(3)Troll,W.,Kennedy,A.R.,Eds.;Plenum Publishing Corporation:New York,9−64,1993;(4)Kennedy,A.R.,Szuhaj,B.F.,Newberne,P.M.,Billings,P.C.Preparation and production of a cancer chemopreventive agent,Bowman−Birk Inhibitor Concentrate.Nutr.Cancer 19:281−302,1993;(5)Kennedy,A.R.Prevention of carcinogenesis by protease inhibitors.Cancer Res.(suppl.).54:1999s−2005s,1994;(6)Kennedy,A.R.In vitro studies of anticarcinogenic protease inhibitors.In:Protease Inhibitors as Cancer Chemopreventive Agents;Troll,W.,Kennedy,A.R.,Eds.;Plenum Publishing Corporation:New York,65−91,1993(7)Kennedy,A.R.,The Status of Human Trials Utilizing Bowman−Birk Inhibitor Concentrate from Soybeans.In:Soy in Health and Disease Prevention,edited by Michihiro Sugano,CRC Press LLC,Boca Raton,Florida,Chapter 12,pp.207−223,2005;(8)Kennedy,A.R. Status of current human trials utilizing Bowman Birk Inhibitor Concentrate.2006年10月12および13日にDusseldorf,Germanyで開催されたシンポジウム「Soy & Health 2006;Dietetic Applications−Dietetic Applications」議事録(近刊);(9)Bartsch and Gerhaeuser,Molecular Mechanisms of Cancer Induction and Chemoprevention.In:Chemoprevention of Cancer and DNA Damage by Dietary Factors,edited by Siegfried Knasmuller,Ian Johnson,David DeMarini and Clarissa Gerhauser,Wiley−VCH Verlag,GmbH & Co.,KGaA,Weinheim,2009もまた参照されたい。
【0008】
一般にボーマン・バークインヒビター濃縮物(BBIC)と称されるBBIに富んだ大豆抽出物は、1992年4月に米国食品医薬品局(FDA)において治験薬(IND)の地位を得た。BBICは、特定条件下で細胞の悪性形質転換に対して阻害活性を示すことが示されており、その投与は、様々な形態の癌に作用することが示されている。例えば米国特許第7,404,973号明細書を参照されたい。さらなる例として、全生涯にわたって1.0%の食餌性BBICを与えられた動物は、成長に異常がないことが示され、寿命が顕著に長くなることが分かっている(Kennedy et al.Nutr Cancer,1993,19:281−302)。
【0009】
BBICはまた、動物モデルおよびヒト臨床試験において、口腔癌、筋ジストロフィーの治療、筋肉消耗予防、抗炎症活性、放射線防護活性において作用することが示されている。(例えばKennedy,A.R.,Soy and Health and Disease Prevention,2005、および米国特許公開公報第2008/0300179A1号明細書を参照されたい)。BBICはまた、マウスにおいて腹腔内注射に続いて、肺、腎臓、および肝臓組織中で、タンパク質分解活性を阻害することが示されている(Oreffo et al.,Toxicology,1991,69:165−176)。BBICはまた、神経筋疾患の影響を改善することが示されている(米国特許出願公開第20080300179号明細書、Morris et al.,J Appl Physiol.2005 Nov;99(5):1719−27、Arbogast et al.,J Appl Physiol.2007 Mar;102(3):956−64)。
【0010】
前述の米国特許第5,338,547号明細書は、高活性BBI濃縮(BBIC)生成物によって、発癌を抑制し阻害する方法を開示し、生物学的活性レベルは、キモトリプシン阻害物質含量によって測定される。これらのBBI濃縮生成物は、脱脂大豆粉またはフレークから得られる酸性大豆可溶性物質から製造され、それはpH4〜5の酸性水溶液によって抽出され、遠心分離によって不溶性物質が除去されている。大豆可溶性物質に限外濾過を施して粗製BBI濃縮物を生成し、それを希釈し噴霧乾燥して最終乾燥BBI濃縮生成物を生成した。本特許で開示される好ましいプロセス実施形態では、粗製BBI濃縮物をアセトンで処理してBBI濃縮沈殿物を生成し、それを風乾して粉砕し、水で再度スラリーにして濾過し、次に凍結乾燥または噴霧乾燥して、最終BBI濃縮生成物を生成した。この生成物は、改善された発癌阻害剤であると述べられている。Kennedyらはまた、Odaniら(J.Biochem.1973,74,857)によって記載される方法を用いて、BBI濃縮生成物をさらに精製し得ることに言及しており、その方法は、BBIC生成物を1つの断片がトリプシン阻害部位を有し、別の断片がキモトリプシン阻害部位を有する2つの別々の断片に分断するステップを伴う。しかしキモトリプシン阻害部位を有する画分の阻害活性は、大きく損なわれた。
【0011】
BBICはまた、動物モデルおよびヒト臨床試験において、口腔癌、筋ジストロフィーの治療、筋肉消耗予防、抗炎症活性、放射線防護活性の機能があることが示されている。(例えばKennedy,A.R.,Soy and Health and Disease Prevention,2005、および米国特許公開公報第2008/0300179A1号明細書を参照されたい)。BBICはまた、マウスにおいて腹腔内注射に続いて、肺、腎臓、および肝臓組織中で、タンパク質分解活性を阻害することが示されている(Oreffo et al.,Toxicology,1991,69:165−176)。
【0012】
BBIC生成物が、発癌の予防および改善に潜在的改善を提供する可能性の観点から、様々な方法により、多様な癌の病状のための潜在的治療用薬剤として、純粋なそして様々なBBIC製剤を調製する試みがなされている。(米国特許第5,217,717号明細書;関連文献のレビューは、Kennedyらによって、その内容全体を本明細書に援用する米国特許第5,338,547号明細書で提供される)。これもまたKennedyらに付与された米国特許第4,793,996号明細書は、BBICを得るために、大豆をアセトンで処理し、続いてエタノール抽出してアセトンで沈殿させる方法を開示する。Kennedyらは、Perlmann et al.,Methods in Enzymology,19:860−861(1970)によって教示されるエタノール抽出工程に先だって、大豆をアセトンで処理することにより、得られたBBICが、細胞の悪性形質転換を阻害するのにより効果的であることを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野で目下使用される精製方法は、様々である。いくつかの方法は、固定化トリプシンまたはキモトリプシンによる親和性精製を使用する。固定化トリプシンは、BBIとKunitzトリプシンインヒビター(KTI)との双方に結合するので、特に純粋なBBI生成物は単離されない。別法として、固定化キモトリプシンの使用を伴う方法は、KTIに結合しない一方で、多数の使用と浄化工程に続いて、キモトリプシンが樹脂から漏出する可能性などのいくつかの問題を有する。多数の以前のBBI精製方法は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用し、その技術はBBI異性体の副分画をもたらし得る。さらにアニオン交換クロマトグラフィーでは、BBI収率の顕著な損失なしに、KTIを含まないBBI画分を得ることが困難であった。したがって、これまでに使用された方法は、本明細書に記載される精製BBIを生成できなかった。
【0014】
精製BBIタンパク質を得るために当該技術分野で知られている現行の方法は、BBIのKunitzトリプシンインヒビター(KTI)タンパク質によるコンタミネーションに起因する、低い純度レベルが欠点である。使用される単離方法次第では、内毒素レベルもまた問題になり得る。現行の方法は出発原料として丸大豆を使用し、次にそれは様々な手段によって脱脂されてもよい。対照的に、本発明の方法は、出発原料として脱脂大豆白色フレークを使用する。その結果、先行技術は、高い純度レベルを有するBBI生成物について記載しておらず、特に、先行技術は、大豆から得られる高純度レベルを有するBBI生成物について記載していない。さらにBBIは、1940年代にBowmanによって同定され、1960年代にBirkによってさらに特性解析されたことが留意される(Bowman D.E.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,63:547−550,1946;Birk,Y.Biochim.Biophys.Acta,1961,54,378−381;およびBirk.Y.etal.,Biochemical Preparations,1968,Vol.12,25−29)。しかし文献において、または商業的に、本明細書に記載される純度レベルを有するBBI生成物は、欠如している。
【0015】
したがって大豆加工ストリームから、精製BBIタンパク質、ならびに他の構成要素を回収するのに使用し得る方法に対する必要性がある。したがって本発明は、高純度のBBIタンパク質を含んでなるBBI生成物を単離する、新規方法について記載する。さらに本発明の方法は、目下当該技術分野で知られている方法よりも少ない工程を利用し、それは結果として、時間とコスト要件の双方を減少させる。なおもさらには、大豆単離物の加工には水を必要とするので、本発明の方法は、大豆単離物加工の結果として残る水に必要な水処理量を減少させることで、発生する汚染を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、特定される総BBIタンパク質濃度と、他のBBIの特性(例えばキモトリプシン阻害物質活性および内毒素含量をはじめとする)を有する、BBI生成物を精製する新規方法について記載する。
【0017】
本発明の特定の態様では、本発明は、大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームにクロマトグラフ分離を施すステップを含み、大豆加工ストリームに1つまたは複数の分離技術を施すステップがさらに含まれていてもよい、特定される総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を精製する方法に関する。特定の態様では、BBI生成物は少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有する。
【0018】
本発明のさらなる特定の態様では、クロマトグラフ分離は、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーからなる群から選択される。特定の態様では、クロマトグラフ分離はイオン交換クロマトグラフィーである。他の特定の態様では、クロマトグラフ分離は、イオン交換カラムを含んでなるイオン交換クロマトグラフィーである。さらなる他の特定の態様では、イオン交換カラムは、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、またはその組み合わせを含んでなる。なおもさらなる他の特定の態様では、方法は、pHを調節してBBIタンパク質の等電点未満に保ち、イオン交換樹脂によるBBIタンパク質の保持を提供するステップを含む。なおもよりさらなる他の特定の態様では、方法は、BBIタンパク質がイオン交換樹脂によって保持されないように、pHを調節してBBIタンパク質の等電点よりも高く保つステップを含む。
【0019】
本発明のさらなる特定の態様では、クロマトグラフ分離に先だって、1つまたは複数の分離技術が実施される。本発明の他の特定の態様では、クロマトグラフ分離後に、1つまたは複数の分離技術が実施される。
【0020】
本発明のさらなる特定の態様では、1つまたは複数の分離技術が、膜分離、電気泳動、透析、微粒子濾過、沈殿、遠心分離、結晶化、重力分離、および任意のその組み合わせからなる群から選択される。特定の態様では、1つまたは複数の分離技術は膜分離である。他の特定の態様では、膜分離は、精密濾過膜、限外濾過膜、またはその組み合わせを含んでなる。
【0021】
本発明のさらなる特定の態様では、精製BBI生成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および任意のその組み合わせと少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つのアミノ酸配列を含んでなる。
【0022】
本発明の別の特定の態様では、本発明は、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を精製する方法に関し、本方法は、(a)大豆タンパク質おとび不純物を含んでなる大豆加工ストリームに1つまたは複数の分離技術を施すステップと;(b)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームにクロマトグラフ分離を施すステップを含み、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物が得られる。特定の態様では、ステップ(a)がステップ(b)の前に実施される。
【0023】
本発明の別の特定の態様では、本発明は、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を分離し精製する方法に関し、本方法は、
(a)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームに少なくとも1つの分離技術を施して、大豆タンパク質を含んでなる第1の透過液と、不純物を含んでなる第1の残余分を形成するステップと;(b)第1の透過液に少なくとも1つの分離技術を施して、不純物を含んでなる第2の透過液と、大量のタンパク質留分を含んでなる第2の残余分を形成するステップと;(c)少なくとも1つのクロマトグラフ分離に通過させるために、第2の残余分をキャリアストリームと合わせて、加工ストリーム中の他のタンパク質からBBIタンパク質ストリームを単離するステップと;(d)BBIタンパク質ストリームを液体沈殿媒体と合わせ、それに少なくとも1つの分離技術を施して、沈殿BBIタンパク質画分を形成するステップと;(e)沈殿BBIタンパク質画分を液体洗浄媒体と合わせて、可溶化BBIタンパク質画分を形成するステップと;(f)可溶化タンパク質画分に少なくとも1つの分離技術を施して、精製可溶化BBIタンパク質画分を形成するステップと;(g)精製可溶化タンパク質画分に少なくとも1つの分離操作を施して、精製BBI生成物を形成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】加工ストリームから、精製大豆ホエータンパク質を回収する方法の工程0〜4を示す概略工程図である。
【図1B】加工ストリームから、精製大豆ホエータンパク質を回収する方法の工程5、6、14、15、16、および17を示す概略工程図である。
【図1C】加工ストリームから、精製大豆ホエータンパク質を回収する方法の工程7〜13を示す概略工程図である。
【図2】大豆ホエーストリームから、BBIタンパク質を回収する膜ベースの方法を示す概略工程図である。
【図3】結果的に得られたBBI生成物をはじめとする、本発明に従ったBBI精製中に発生する様々な残余分および透過液を示す、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を示す。
【図4】本発明の方法によって単離された、特定の新規BBIタンパク質配列のMALDI−TOF質量分析法データを図示す。
【図5】二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)に続く、本発明のBBIタンパク質を示す。
【図6】市販されるBBI製品の2D−PAGE分析の結果を示す。
【図7】OdaniおよびIkenakaによる、当該技術分野で既知の大豆からのBBIの一次構造を示す。
【図8】新規BBIタンパク質アイソフォームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されるのは、タンパク質の製造から発生する多様なマメ科および非マメ科植物加工ストリームから、高度精製BBIタンパク質およびその他の生成物を回収する新規方法である。例えば、本開示の方法は、BBIタンパク質またはその他の生成物の回収、または大豆ホエーストリームの様々な構成要素の分離、または双方を提供するように選択され設計された、1つまたは複数の分離技術または方法(例えばクロマトグラフ分離または膜分離)を含んでなる。BBIタンパク質、および大豆ホエーストリームの1つまたは複数の他の構成要素(例えばオリゴ糖類をはじめとする様々な糖類)の回収は、複数の分離技術を利用してもよい。特定の分離技術は、加工ストリームの他の構成要素から分離され回収される、所望の構成要素によって決まる。
【0026】
例えば精製BBI画分は、典型的には、最初に1つまたは複数の不純物(例えば微生物またはミネラル)を除去し、続いて1つまたは複数の大豆貯蔵タンパク質(すなわちグリシニンおよびβ−コングリシニン)をはじめとする追加的不純物を除去し、続いて(例えばKTIおよび他の非BBIタンパク質またはペプチドをはじめとする)1つまたは複数の大豆ホエータンパク質を除去し、および/または続いて糖類をはじめとする1つまたは複数の追加的不純物を大豆ホエーから除去することで調製される。高純度形態のBBIタンパク質の回収は、希釈により純度を損なうホエーストリームのその他の主要構成要素(例えば貯蔵タンパク質、ミネラル、および糖類)を除去しながら、タンパク質の拮抗物質でありおよび/または有害効果がある構成要素(例えば内毒素)の除去を通じて、タンパク質画分を精製することで、同様に純度を改善することによって改善される。大豆ホエーの様々な構成要素の除去は、典型的には、大豆ホエー構成要素を除去する前および/または最中に、大豆ホエーを濃縮するステップを含む。
【0027】
貯蔵タンパク質、糖類、ミネラル、およびその他の不純物の除去は、所望のBBIタンパク質に富み、拮抗物質または毒素であることもでき、さもなければ有害効果を及ぼすこともできる不純物を含まない画分を生じる。例えば典型的には、大豆貯蔵タンパク質富化画分を1つまたは複数の大豆ホエータンパク質に富んだ画分と共に回収することもできる。もう1種の糖類(例えばオリゴ糖類および/または多糖類)に富んだ画分もまた、典型的に調製される。したがって本方法は、BBIタンパク質の回収に適した画分を提供し、水性大豆ホエーからの他の有用な生成物の回収のために使用し得る他の画分もまた提供する。例えば大豆ホエーストリームから糖類および/またはミネラルを除去することで、それから糖類をさらに分離し得る有用な画分が生成され、ひいては次の追加的な有用な画分が生じる。濃縮糖および(クエン酸を含んでもよい)ミネラル画分、および行うとしても最小の処理で廃棄され、またはプロセス水として再循環されてもよい比較的純粋な加工ストリーム。このようにして生成されたプロセス水は、本方法を実施する上で特に有用であることもできる。したがって本方法のさらなる利点は、従来の単離物調製法と比較して、減少したプロセス水の所要量であることもできる。
【0028】
本開示の方法は、少なくとも2つの点で、大豆タンパク質単離物および濃縮物を製造する従来の方法と比較して利点を提供する。言及されたように、大豆タンパク質材料を製造する従来の方法は、典型的には大豆ホエーストリーム(例えば水性大豆ホエーまたは大豆糖蜜)を廃棄する。したがって本開示の方法によって回収される生成物は、付加産物に相当し、従来の大豆タンパク質単離物および大豆タンパク質濃縮物製造との関連で、目下実現されていない収入源に相当する。さらに商品性のある生成物を回収する大豆ホエーストリームまたは大豆糖蜜の処理は、好適には、大豆ホエーストリームまたは大豆糖蜜の処理および廃棄に付随するコストを低減させる。例えば本明細書の他の箇所で詳述する本発明の様々な方法は、比較的純粋な加工ストリームを提供し、それは様々な他の工程で容易に利用され、または行うとしても最小の処理で廃棄されてもよく、それによって方法の環境影響を低下させる。本開示の方法に関連した特定のコストは存在するが、単離される付加産物の利益および廃棄物処理の最小化は、あらゆる付加費用を代償すると考えられる。
【0029】
A.酸可溶性タンパク質
大豆タンパク質単離物は、典型的には、大豆貯蔵タンパク質の等電点(例えばpH約4.5)において、脱脂大豆フレークまたは大豆粉の水性抽出物から沈殿する。したがって大豆タンパク質単離物は、一般に、酸性液体媒質中で可溶性でないタンパク質を含む。同様に、2番目に最も精製された大豆タンパク質材料である、大豆タンパク質濃縮物のタンパク質は、同じく酸性液体媒質中で一般に可溶性でない。しかし本開示の方法によって回収される大豆ホエータンパク質は、一般に酸可溶性であり、すなわちそれらは酸性液体媒質中で可溶性である。
【0030】
例えば本開示は、水性大豆ホエーに由来して、周囲条件(例えば約25℃の温度)において、比較的広範なpHの水性(典型的には酸性)媒質(例えばpH約2〜約10、約2〜約7、または約2〜約6を有する水性媒質)中で有利な溶解度を示す、大豆タンパク質組成物を提供する。典型的には大豆タンパク質組成物の溶解度は、1リットル当たり少なくとも約10グラム(g/L)であり、より典型的には少なくとも約15g/Lであり、なおもより典型的には少なくとも約20g/Lである。(添付の特許請求に含まれる)pH範囲にわたる溶解度への言及は、特定溶解度が、特定pH範囲内に入るいずれかのそして全てのpH値で達成されることを示唆するものと理解される。例えば約2〜約10のpH範囲にわたる少なくとも約10g/Lの溶解度への言及は、特定溶解度が、3、4、5、6などのpHで達成されることを示唆する。
【0031】
本開示の方法による酸可溶性大豆タンパク質の回収は、当該技術分野における顕著な進歩に相当する。本明細書で言及されるように、典型的には廃棄される大豆ホエーストリームから、酸可溶性タンパク質が回収される。
【0032】
B.ボーマン・バークプロテアーゼインヒビター
本明細書で考察されるように、例えば大豆ホエーストリームおよび大豆糖蜜ストリームをはじめとする大豆加工ストリームは、相当量のボーマン・バークプロテアーゼインヒビター(BBI)を含有する。このプロテアーゼインヒビターは、少なくともトリプシン、キモトリプシンを阻害し、そして一連の重要な代謝機能を制御する、カテプシンG、エラスターゼ、およびキマーゼなどの多様な他の重要プロテアーゼを潜在的に阻害することが知られている。
【0033】
本実施形態に従って単離されるBBIタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である、アミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなってもよい。図4は、本発明によって単離された新規BBIタンパク質アイソフォームの質量分析法データ結果を示す。一実施形態では、BBIタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数のアミノ酸配列と少なくとも70%同一である、より好適には、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である、なおもより好ましくは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、最も好適には、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数のアミノ酸配列と少なくとも95%と同一である、アミノ酸配列を含んでなってもよい。
【0034】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号1と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0035】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号2と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0036】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号3と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0037】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号4と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0038】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号5と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0039】
本実施形態の別の態様では、アミノ酸配列は配列番号6と少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%までも同一である。
【0040】
本発明の特定の態様では、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、アミノ酸配列を比較することで判定される。本発明の別の態様では、配列同一性は、アミノ酸配列と、その保存アミノ酸置換とを比較することで判定され得る。本発明の別の態様では、本発明のタンパク質は、1つまたは複数の保存的置換を有し得る。本発明の別の態様では、本発明のタンパク質は、1つまたは複数の非保存的置換を有し得る。
【0041】
天然アミノ酸としては、例えばアラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)が挙げられる。
【0042】
保存的および非保存的アミノ酸置換は当業者に知られており、例えば酸性アミノ酸で別の酸性アミノ酸を置き換えることは、保存的置換と見なすこともできるのに対し、塩基性アミノ酸で酸性アミノ酸を置き換えることは、非保存的置換と見なすこともできる。同様に、極性アミノ酸で別の極性アミノ酸を置き換えることは、保存的置換と見なすこともできるのに対し、非極性アミノ酸で極性アミノ酸を置き換えることは、非保存的置換と見なすこともできる。アミノ酸は一般に、(置換が保存的または非保存的かどうかを判定する指針として使用し得る)以下のカテゴリーに分けられる。(1)極性/親水性:N、Q、S、T、K、R、H、D、E、C、およびY;(2)非極性/疎水性:G、A、L、V、I、P、F、W、およびM;(3)酸性:D、E、およびC;(4)塩基性:K、R、およびH;(5)芳香族:F、W、Y、およびH;および(6)脂肪族:G、A、L、V、I、およびP。
【0043】
1つまたは複数のアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6と同一でない本発明の特定の態様では、このような1つまたは複数のアミノ酸配列もまた、キモトリプシンおよびトリプシン活性の双方を阻害することが知られているBBIタンパク質として機能する。これらの機能を確認する方法は本明細書に記載され、当業者に知られている。
【0044】
組成物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6と同一でない、1つまたは複数のアミノ酸配列を含んでなる本発明の他の態様では、このような1つまたは複数のアミノ酸配列もまた、キモトリプシンおよびトリプシンの双方を阻害することが知られているBBIタンパク質として機能する。これらの機能を確認する方法は本明細書に記載され、当業者に知られている。
【0045】
BBIタンパク質は、およそ65〜77個のアミノ酸残基と、およそ7個のジスルフィド架橋を含んでなる。BBIタンパク質の一次構造は、1972年以来知られており(Odani S.and T.Ikenaka,J.Biochem.1973 74:697 1972)、図7に記載される。
【0046】
目下、本開示のBBI生成物の純度は、他のBBI生成物と比較して、かつて達成されたことのないレベルの純度に相当すると考えられている。BBI画分の純度は、総BBIタンパク質濃度、比活性(キモトリプシン阻害物質単位/gタンパク質で測定される)、およびBBIの拮抗物質として機能する構成要素、毒素、またはBBI単位量当たりの効率を単に希釈する以上に有害効果を及ぼす他の構成要素の不在の関数である。一般に、本開示のBBI生成物の総BBIタンパク質濃度は、少なくとも約70質量%、または少なくとも約80質量%である。典型的には、本開示のBBI生成物の総BBIタンパク質濃度は、少なくとも約90質量%、少なくとも約91質量%、少なくとも約92質量%、少なくとも約93質量%、少なくとも約94質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約96質量%、少なくとも約97質量%、少なくとも約98質量%、および少なくとも約99質量%である。
【0047】
「純粋」モノマータンパク質は、一次元または二次元SDS−PAGEゲル上の電気泳動後に単一バンドを生じ、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、またはイオン交換カラムから単一の対称的吸光度ピークとして溶出され、単一セットの質量分光測定、核磁気共鳴(NMR)、またはW吸光度スペクトルシグナルを生じ、該当する場合は汚染酵素活性を含まない。絶対純度は確立され得ないので、慣例的に単純な純度基準、すなわちSDS−PAGE後の単一バンドを超えるタンパク質が検出できないことが使用される。(Mohan,Determination of purity and yield.Methods in Molecular Biology,11,307−323(1992)を参照されたい)。図3は、一次元ゲル電気泳動に続く本発明のBBIタンパク質を示す。図5は、二次元ゲル電気泳動(2D−PAGE)に続く本発明のBBIタンパク質を示す。図3および5で示されるように、本発明のBBIタンパク質は、等電点が異なる6.5kDaおよび14.4kDaの分子量標準間の単一バンドとして示される。単一バンドのみの存在は、生成物中の汚染物質(混入物質)の欠如を示唆する。比較として、図6は、Sigma Aldrich,St.Louis,MO(製品番号T9777)によって市販されるBBI生成物の2D−PAGE分析の結果を示す。図6では、対照的に、サンプルBBIタンパク質が図5中のBBIタンパク質と同じ分子量標準間にありながら、単一バンドで出現していないことが明らかである。これは、残留Kunitzトリプシンインヒビタープロテインならびに非タンパク質構成要素をはじめとする混入物質が、本発明のBBIタンパク質よりもSigma BBIサンプル中により多く存在したことを示唆する。
【0048】
BBI純度と共に、本開示のBBI生成物の総タンパク質含量は有利であり、および/または技術分野の進歩に相当する。本開示の生成物のBBIタンパク質含量は、例えばOhnishi,S.T.,and Barr,J.K.,A simplified method of quantitating proteins using the biuret and phenol reagents.Anal.Biochem.,86,193(1978)に記載されるLowry法はじめとする、当該技術分野で知られている従来の方法によって測定することもできる。一般に、本開示のBBI生成物の総タンパク含量は、少なくとも約60質量%(乾燥質量基準)、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、または少なくとも約85質量%である。典型的には、本開示のBBI生成物の総タンパク質含量は、少なくとも約90質量%、少なくとも約91質量%、少なくとも約92質量%、少なくとも約93質量%、少なくとも約94質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約96質量%、少なくとも約97質量%、少なくとも約98質量%、および少なくとも約99質量%である。
【0049】
BBI生成物が、目下、適していると考えられる様々な用途は、内毒素含量が比較的低いことを要とする。例えば様々な治療用途は、BBI生成物が、製薬等級材料に適用される規制を満たすことを要する。したがって様々な好ましい態様では、BBI生成物の総内毒素含量は、好適には約5.0EU/gタンパク質以下、約4.5EU/gタンパク質以下、約4.0EU/gタンパク質以下、約3.5EU/gタンパク質以下、約3.0EU/gタンパク質以下、約2.5EU/gタンパク質以下、約2.0EU/gタンパク質以下、約1.5EU/gタンパク質以下、約1.0EU/gタンパク質以下、および約0.5EU/gタンパク質以下である。例えば、このような様々な態様に従って、BBI生成物の総内毒素含量は、典型的には約0.5〜約5EU/gタンパク質、より典型的には約0.5〜約2.5EU/gタンパク質、なおもより典型的には約0.5〜約1EU/gタンパク質である。
【0050】
BBIタンパク質は、キモトリプシンとトリプシンの双方を阻害することが知られている一方で、タンパク質含有組成物の他の構成要素(例えばKTIタンパク質)は、トリプシンのみを阻害することが知られている。したがって目下、キモトリプシン阻害物質活性とトリプシン阻害物質活性の比率が、BBIタンパク質存在の指標と考えられている。概して、キモトリプシン阻害物質活性とトリプシン阻害物質活性の比率は、少なくとも約1:1、少なくとも約1:2、少なくとも約1:3、少なくとも約1:4、少なくとも約1:5、少なくとも約1:6、少なくとも約1:7、少なくとも約1:8、少なくとも約1:9、または少なくとも約1:10である。本発明の特定の態様では、キモトリプシン阻害物質活性とトリプシン阻害物質活性の比率は、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、または約1:1.9である。
【0051】
本開示のBBI生成物のキモトリプシン阻害物質活性(キモトリプシン阻害物質単位/gタンパク質、またはCIU/gタンパク質を単位として表される)は、当該技術分野で知られている従来の方法によって測定されてもよい。概して、本開示のBBI生成物のキモトリプシン阻害物質活性は、少なくとも約500CIU/gタンパク質、より概して少なくとも約1000CIU/gタンパク質、およびさらにより概して少なくとも約1200CIU/gタンパク質である。典型的には、本開示のBBI生成物のキモトリプシン阻害物質活性は、少なくとも約1600CIU/gタンパク質、少なくとも約2500CIU/gタンパク質、少なくとも約2700CIU/gタンパク質、または少なくとも約3000CIU/gタンパク質である。
【0052】
キモトリプシン阻害物質活性は、以前述べられたようにして(Ware et al.、1997 Arch. Biochem. Biophys. Vol 344、No.1 pp.133−138)、以下の修正を加えて実施される。ウシ膵臓からのα−キモトリプシンは、Sigma Chemical Co.(カタログ番号C4129、St.Louis,MO)から購入し、活性キモトリプシンは、Jameson et al.(Biochem.J.1973 131:107−117)によって記載される方法に基づいて、メチルウンベリフェリルp−トリメチルアンモニオシンナマートクロリド(MUTMAC、カタログ番号M5407、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)での活性部位滴定によって定量化した。BBIサンプルを脱イオン蒸留(dI)H2O中で、およそ1mg BBI/mlに希釈した(例えば1mg/mlの精製BBI、10mg/mlのSWPを秤量する)。シリコン処理微量遠心管内で以下を合わせた。a)0〜5μlのBBIサンプル、;b)0.1Mのリン酸ナトリウムおよび1MのNaCl、pH7、5μl;およびc)10μlの50uM活性キモトリプシン(1mMのHClおよび2mMのCaCl2中に溶解)。混合して室温で10分間インキュベートする。残留キモトリプシン活性をアッセイするために、サンプルをdI H2Oで1:40に希釈し、895μlのアッセイ緩衝液(0.5M Tris、20mM CaCl2、1M NaCl、pH8.0)と80μlの10mM sucAAPF−pNA(カタログ番号S7388、Sigmachemical Co.,St.Louis,MO)を含有する1.5mlガラスキュベットに、25μlの希釈サンプルを移して混合し、即座に10秒間隔で、Ab410nmで1分間の測定を開始する。40〜80%阻害の範囲で結果が得られるように、阻害物質溶液の濃度を調節し、外挿して、キモトリプシンを完全に阻害するのに要するサンプル量を判定する。キモトリプシン阻害活性(CI単位/g)は、Ware et al.(1997 Arch.Biochem.Biophys.Vol 344,No.1 pp.133−138)で既述されたように、1mgの活性キモトリプシンを完全に阻害し得るサンプル量と定義される。
【0053】
同様に、本開示のBBI生成物のトリプシン阻害物質活性(トリプシン阻害物質単位/gタンパク質、またはTIU/gタンパク質を単位として表される)は、当該技術分野で知られている従来の方法によって測定されてもよく、例えばその中で1TIUは1mgのトリプシンを阻害し得る基質量と定義され、1トリプシン単位はpH8.2および37℃で、ベンゾイル−DL−アルギニン−p−ニトロアニリド(BAPA)を基質として、10分間あたりの0.019のΔA410に等しい。一般的に本開示のBBI生成物のトリプシン阻害物質活性は少なくとも約400TIU/gタンパク質、より一般的に少なくとも約600TIU/gタンパク質、およびなおもより一般的に少なくとも約800TIU/gタンパク質である。典型的には、本開示のBBI生成物のトリプシン阻害物質活性は、少なくとも約1000TIU/gタンパク質、少なくとも約1200TIU/gタンパク質、少なくとも約1400TIU/gタンパク質、または少なくとも約1600TIU/gタンパク質である。トリプシン阻害物質活性は、好適には約3000TIU/gタンパク質以下である(すなわち理論的に純粋である)。
【0054】
本開示のBBI生成物は、上で特定される特性の1つ、組み合わせ、または全部を示してもよいものと理解される。例えば本開示のBBI生成物は、特定されるBBI純度およびキモトリプシン阻害物質活性を示してもよい。BBI生成物はまた、特定されるBBI純度、トリプシン阻害物質活性またはキモトリプシン阻害物質活性、および本明細書で開示される配列を示してもよい。さらなる例として、BBI生成物は、特定されるBBIタンパク質濃度および総内毒素含量を示してもよい。これらの態様で、そしてなおも別の態様で、本開示のBBI生成物は、特定される総大豆タンパク質濃度およびトリプシン阻害物質活性を示してもよい。BBI生成物はまた、特定される総大豆タンパク質濃度およびキモトリプシン阻害物質活性も示してもよい。さらなる例として、本開示のBBI生成物は、特定される総大豆タンパク質濃度および総内毒素含量を示してもよい。これらのBBI生成物の諸特性の組み合わせは例示的であり、この一覧が網羅的であることは意図されない。すなわち本開示に従って、BBI生成物は、上で特定される何れかの範囲内の上で特定される何れかの値で、上記の諸特性の任意の組み合わせを示してもよい。
【0055】
本開示のBBI生成物は、経口、局所適用、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、および腹腔内投与からなる群から選択される、少なくとも1つの様式によって対象に投与される医薬品に含まれてもよい、多様な医薬組成物中で利用されてもよい。本発明の特定の態様では、投与経路としては、経口また非経口投与が挙げられる。本発明の他の態様では、投与経路としては、食品を手段とする経口投与が挙げられる。治療法の所望の持続時間と有効性次第で、本発明に従った組成物は、1回または数回、そしてまた断続的に、例えば日毎または週毎ベースで、数日間、数週間、または数ヶ月、異なる投薬量で、異なる経路の組み合わせによって投与してもよい。本開示のBBI生成物はまた、健康補助食品調合物中で利用されてもよい。医薬品および健康補助食品組成物の適切な形態としては、例えばシロップ、粉末、クリーム、注射剤、懸濁液、エマルション、錠剤、カプセル、ロゼンジ、坐薬、および口内洗浄液が挙げられる。
【0056】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるBBI生成物を含んでなる食品の提供である。このような食品としては、飲料と、フードバーと、または食品摂取時に本明細書に記載されるBBI生成物が摂取されることが当業者に知られている他の消耗品とが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
一実施形態では、食品は飲料であってもよい。好ましい飲料としては、即席飲料(RTD)または乾式混合飲料(DBB)が挙げられる。飲料は、実質的に濁った飲料または実質的に透明な飲料であることもできる。適切な飲料の非限定的例としては、ミルクベースの飲料、ミルク類似飲料(例えば豆乳、ライスミルクなど)、体重管理飲料、プロテイン・シェーク、食事代替飲料、コーヒーベース飲料、栄養飲料、エナジードリンク、乳児用調製粉乳、果汁ベース飲料、果実飲料、果物風味飲料、野菜ベース飲料、スポーツドリンクなどが挙げられる。飲料のpHは変動してもよく、酸性、中性、またはアルカリ性であってもよい。
【0058】
別の実施形態では、食品は、グラノーラバー、シリアルバー、栄養バー、またはエネルギーバーなどのフードバーであってもよい。なおも別の実施形態では、食品は穀物ベース製品であってもよい。穀物ベース食品の非限定的例としては、朝食用シリアル、パスタ、パン、ベイクド製品(すなわちケーキ、パイ、ロール、クッキー、クラッカー)、およびスナック製品(例えばチップ、プレッツェルなど)が挙げられる。穀物ベース食品の食用材料は、小麦(例えば漂白小麦粉、全粒粉、小麦胚芽、小麦ふすま)、トウモロコシ(例えばコーンフラワー、コーンミール、コーンスターチなど)、オート麦(例えば膨化オート麦、オートミール、オート麦粉など)、米(例えば膨化米、米粉、米デンプン)などに由来してもよい。別の実施形態では、食品は栄養補給剤であってもよい。栄養補給剤は、液体または固体であってもよい。
【0059】
様々な医薬用途に加えて、本開示のBBI生成物はまた、多種多様なパーソナルケア製品への組み込みにも適する。例えば本開示のBBI生成物は、目下、肌の光老化を低下させると考えられており、(例えば、Paine C.et al.,J.Invest.Dermatol.116:587−595(2001)を参照されたい、したがって美容およびスキンケア製品への組み込みに適する。
【0060】
本発明のBBIは、天然植物ベースのマトリックスからBBIを分離、単離、または精製できるようにする、あらゆる原料またはあらゆるプロセスから入手し得る。非限定的例として、天然植物ベースのマトリックスは、例えば大豆、トウモロコシ、エンドウマメ、カノーラ、ヒマワリ、ソルガム、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、葛、カンナ、ルピナス、セイヨウアブラナ、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、落花生、タチナタマメ、ハトムギ、マメ科植物、トンカマメ、フジマメ、ランスポッド(lancepods)(例えば、アップルリーフシード(apple leaf seed))、アルファルファ、スメイルメディックシード(snail medic seeds)、ライマメ、サンドマメ、インゲンマメ、ツルナシインゲンマメ、サトウキビ、キビ、材木用樹木、ホウレンソウ、チャプル(chapule)、繊毛虫類、デザートバナナ、レンズマメ、ふすま、ソラマメ、緑豆、小豆、ササゲ、ジャトロファ属、緑藻類、およびそれらの混合物をはじめとする、マメ科または非マメ科植物に由来し得る。本発明の特定の態様では、BBIは様々な加工ストリーム中で大豆から得られる。様々な大豆加工ストリームとしては、例えば水性大豆抽出物ストリーム(脱脂大豆材料からなど、その中で大豆ストリームタンパク質の構成要素が可溶性形態であるあらゆるストリーム)、水性豆乳抽出物ストリーム(その中で大豆ストリームタンパク質の構成要素が可溶性形態であるホールまたは部分的脱脂大豆材料からのあらゆるストリーム)、水性大豆ホエーストリーム(貯蔵タンパク質の沈殿または塩析から得られるあらゆるホエーストリーム;沈殿法としては熱ならびに化学処理が挙げられる)、水性大豆糖蜜ストリーム(水性大豆ホエーストリームからの水分除去によって発生するあらゆるストリーム)、水性大豆タンパク質濃縮物大豆糖蜜ストリーム(大豆タンパク質濃縮工程からの可溶性糖類のアルコール抽出からのあらゆるストリーム)、水性大豆透過液ストリーム(より小さな分子量タンパク質が膜を通過する、異なる分子量タンパク質画分の分離から得られるあらゆるストリーム)、および水性豆腐ホエーストリーム(豆腐凝固工程から得られるあらゆるホエーストリームを含む)が挙げられる。本発明の方法によって単離されるBBI生成物の量は、1グラム程度にわずかであってもよく(実験室規模単離)、または数トンであってもよい(工業的または大規模単離)。
【0061】
C.大豆ホエータンパク質を得る方法
分離は決して100%でないため、各ストリーム中に残留構成要素があり得ることが分離技術当業者によって理解される。さらに当業者は、分離技術が出発原料次第で異なり得ることを理解する。
【0062】
工程0(図1A参照)−ホエータンパク質前処理は、単離大豆タンパク質(ISP)糖蜜、ISPホエー、大豆タンパク質濃縮物(SPC)糖蜜、SPCホエー、機能性大豆タンパク質濃縮物(FSPC)ホエー、およびそれらの組み合わせをはじめとするが、これに限定されるものではない、供給流から出発し得る。ホエータンパク質前処理工程で使用し得る加工助剤としては、酸、塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩酸、水、蒸気、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。pHを調節した後の工程0のpHは、約3.0〜約6.0、または3.5〜5.5、または約5.3であり得る。温度は約70℃〜約95℃、または約85℃であり得る。温度保持時間は約0分間〜約20分間で異なり、または約10分間であり得る。保持時間後、ホエーストリームから沈殿物を分離するために、典型的には間欠排出ディスク清澄化遠心分離である遠心分離工程にストリームを通過させる。ホエータンパク質前処理からの生成物としては、ストリーム0a中のホエーストリーム(前処理大豆ホエー)(分子量約50キロダルトン(kD)以下)の水相中の可溶性構成要素と、前処理大豆ホエー、貯蔵タンパク質、およびそれらの組み合わせなどのストリーム0b中の不溶性のより大きな分子量のタンパク質(約300kD〜約50kD)とが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
工程1(図1A参照)−微生物学減少(Microbiology reduction)は、前処理大豆ホエーをはじめとするが、これに限定されるものではない、ホエータンパク質前処理工程の生成物から出発し得る。この工程は、前処理大豆ホエーの精密濾過を伴う。この工程のプロセス変量および代替物としては、遠心分離、全量濾過、加熱滅菌、紫外線滅菌、精密濾過、クロスフロー膜濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程1のpHは、約2.0〜約12.0、または約3.5〜約5.5、または約5.3であり得る。温度は約5℃〜約90℃、または約25℃〜75℃または約50℃であり得る。工程1からの生成物としては、ストリーム1a中の貯蔵タンパク質、微生物、ケイ素、およびそれらの組み合わせと、ストリーム1b中の精製前処理大豆ホエーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
工程2(図1A参照)−水およびミネラル除去は、ストリーム1bまたは4aからの精製前処理大豆ホエー、またはストリーム0bからの前処理大豆ホエーから出発し得る。それは水除去および部分的ミネラル除去のためのナノ濾過工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、クロスフロー膜濾過、逆浸透、蒸発、ナノ濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程2のpHは、約2.0〜約12.0、または約3.5〜約5.5、または約5.3であり得る。温度は約5℃〜約90℃、または約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。この水除去工程からの生成物としては、ストリーム2a中の精製前処理大豆ホエーと、ストリーム2b中の水、幾種かのミネラル、一価のカチオン、およびそれらの組み合わせとが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0065】
工程3(図1A参照)−ミネラル沈殿工程は、ストリーム2aからの精製前処理大豆ホエー、またはストリーム0aまたは1bからの前処理大豆ホエーから出発し得る。それはpHおよび/または温度変化による沈殿工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、撹拌または再循環反応タンクが挙げられるが、これに限定されるものではない。ミネラル沈殿工程で使用し得る加工助剤としては、酸、塩基、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、塩酸、塩化ナトリウム、フィターゼ、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程3のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約8.0であり得る。温度は約5℃〜約90℃、または約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。pH保持時間は、約0分間〜約60分間、または約5分間〜約20分間で異なり、または約10分間であり得る。ストリーム3の生成物は、精製前処理大豆ホエーと沈殿したミネラルとの懸濁液である。
【0066】
工程4(図1A参照)−ミネラル除去工程は、ストリーム3からの精製前処理ホエーと沈殿したミネラルとの懸濁液から出発し得る。それは遠心分離工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、遠心分離、濾過、全量濾過、クロスフロー膜濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ミネラル除去工程からの生成物としては、ストリーム4a中の脱ミネラル前処理ホエーと、ストリーム4b中の幾種かのタンパク質ミネラル複合体がある不溶性ミネラルとが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0067】
工程5(図1B参照)−タンパク質分離および濃縮工程は、ストリーム4aからの精製前処理ホエー、またはストリーム0a、1b、または2aからのホエーから出発し得る。それは限外濾過工程を含む。限外濾過工程で使用し得る加工助剤としては、酸、塩基、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、塩酸、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。この工程のプロセス変量および代替物としては、クロスフロー膜濾過、限外濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程5のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約8.0であり得る。温度は、約5℃〜約90℃、または約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。ストリーム5aからの生成物としては、大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、貯蔵タンパク質、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム5bからの生成物としては、ペプチド、大豆オリゴ糖類、ミネラル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
工程6(図1B参照)−タンパク質の洗浄および精製工程は、ストリーム4aまたは5aからの大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、貯蔵タンパク質、他のタンパク質、または精製前処理ホエー、またはストリーム0a、1b、または2aからのホエーから出発し得る。それは透析濾過工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、再スラリー化、クロスフロー膜濾過、限外濾過、水透析濾過、緩衝液透析濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。タンパク質洗浄および精製工程で使用し得る加工助剤としては、水、蒸気、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程6のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約7.0であり得る。温度は、約5℃〜約90℃、約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。ストリーム6aからの生成物としては、大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、貯蔵タンパク質、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム6bからの生成物としては、ペプチド、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0069】
工程7(図1C参照)−水分除去工程は、ストリーム5bおよび/またはストリーム6bからのペプチド、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせから出発し得る。それはナノ濾過工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、逆浸透、蒸発、ナノ濾過、水透析濾過、緩衝液透析濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程7のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約7.0であり得る。温度は、約5℃〜約90℃、約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。ストリーム7aからの生成物としては、ペプチド、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム7bからの生成物としては、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0070】
工程8(図1C参照)−ミネラル除去工程は、ストリーム5b、6b、7a、および/または12bからのペプチド、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせから出発し得る。それは電気透析膜工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、イオン交換カラム、クロマトグラフィー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。このミネラル除去工程で使用し得る加工助剤としては、水、酵素、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。酵素としては、プロテアーゼ、フィターゼ、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程8のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約7.0であり得る。温度は、約5℃〜約90℃、約25℃〜50℃、または約40℃であり得る。ストリーム8aからの生成物としては、導電率が約10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)〜約0.5mS/cm、または約2mS/cmの脱ミネラル大豆オリゴ糖類が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム8bからの生成物としては、ミネラル、水、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0071】
工程9(図1C参照)−色除去工程は、ストリーム8a、5b、6b、12b、および/または7aからの脱ミネラル大豆オリゴ糖類から出発し得る。それを活性炭素床利用する。この工程のプロセス変量および代替物としては、イオン交換が挙げられるが、これに限定されるものではない。この色除去工程で使用し得る加工助剤としては、活性炭素、イオン交換樹脂、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。温度は、約5℃〜約90℃、または約40℃であり得る。9aからの生成物ストリームとしては、着色化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム9bは脱色溶液である。ストリーム9bからの生成物としては、大豆オリゴ糖類、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0072】
工程10(図1C参照)−大豆オリゴ糖類分画工程は、ストリーム9b、5b、6b、7a、および/または8aからの大豆オリゴ糖類、およびそれらの組み合わせから出発し得る。それはクロマトグラフィー工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、クロマトグラフィー、ナノ濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。この大豆オリゴ糖類分画工程で使用し得る加工助剤としては、当業者なら使用樹脂に基づいて分かるであろう、pHを調節するための酸または塩基が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム10aからの生成物としては、大豆オリゴ糖類が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム10bからの生成物としては、大豆オリゴ糖類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
工程11(図1C参照)−水分除去工程は、ストリーム9b、5b、6b、7a、8a、および/または10bからの大豆オリゴ糖類から出発し得る。それは蒸発工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、蒸発、逆浸透、ナノ濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。水除去工程で使用し得る加工助剤としては、脱泡剤、蒸気、真空、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。温度は、約5℃〜約90℃、または約60℃であり得る。ストリーム11aからの生成物としては、水が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム11bからの生成物としては、大豆オリゴ糖類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
工程12(図1C参照)−大豆オリゴ糖類工程からの追加的タンパク質分離は、ストリーム7a、5b、および/または6bからのペプチド、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせから出発し得る。それは限外濾過工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、クロスフロー膜濾過、孔径約50kD〜約1kDの限外濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。この糖類工程からのタンパク質分離で使用し得る加工助剤としては、酸、塩基、プロテアーゼ、フィターゼ、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程12のpHは約2.0〜約12.0、約7.0であり得る。温度は、約5℃〜約90℃、約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。ストリーム12bからの生成物としては、大豆オリゴ糖類、水、ミネラル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム12aからの生成物としては、ペプチド、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0075】
工程13(図1C参照)−水分除去工程は、ストリーム12aからのペプチド、および他のタンパク質から出発し得る。それは蒸発工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、逆浸透、ナノ濾過、噴霧乾燥、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム13aからの生成物としては、水が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム13bからの生成物としては、ペプチド、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
工程14(図1B参照)−タンパク質分画工程は、ストリーム6aおよび/または5aからの大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、貯蔵タンパク質、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせから出発して実施されてもよい。それは限外濾過(孔径300kD〜10kD)工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、クロスフロー膜濾過、限外濾過、ナノ濾過、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。クロスフロー膜濾過としては、らせん巻き、平板、中空繊維、セラミック、動的または回転ディスク、ナノファイバー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。工程14のpHは、約2.0〜約12.0、または約6.0〜約9.0、または約7.0であり得る。温度は約5℃〜約90℃、約25℃〜75℃、または約50℃であり得る。ストリーム14aからの生成物としては、貯蔵タンパク質が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム14bからの生成物としては、大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0077】
工程15(図1B参照)−水分除去工程は、ストリーム6a、5a、および/または14bからの大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、および他のタンパク質から出発し得る。それは蒸発工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、蒸発、ナノ濾過、RO、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム15aからの生成物としては、水が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム15bの生成物としては、大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0078】
工程16(図1B参照)−熱処理およびフラッシュ冷却工程は、ストリーム6a、5a、14b、および/または15bからの大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、他のタンパク質から出発し得る。それは超高温工程を含む。この工程のプロセス変量および代替物としては、加熱滅菌、蒸発、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。この熱処理およびフラッシュ冷却工程で使用し得る加工助剤としては、水、蒸気、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。加熱工程の温度は、約129℃〜約160℃、または約152℃であり得る。温度保持時間は、約8秒間〜約15秒間、または約9秒間であり得る。フラッシュ冷却時には、温度は約50℃〜約95℃、または約82℃であり得る。ストリーム16からの生成物としては、大豆ホエータンパク質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0079】
工程17(図1B参照)−乾燥工程は、ストリーム6a、5a、14b、15b、および/または16からの大豆ホエータンパク質、BBI、KTI、他のタンパク質から出発し得る。それは乾燥工程を含む。液体供給温度は、約50℃〜約95℃、または約82℃であり得る。入口温度は、約175℃〜約370℃、または約290であり得る℃。排気温度は、約65℃〜約98℃、または約88℃であり得る。17aからの生成物ストリームとしては、水が挙げられるが、これに限定されるものではない。ストリーム17bからの生成物としては、BBI、KTI、他のタンパク質、およびそれらの組み合わせを含む、大豆ホエータンパク質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0080】
D.水性ホエーストリーム
大豆加工ストリームの一種である水性ホエーストリームおよび糖蜜ストリームは、ホールマメ科植物または油糧種子の精製過程から発生する。ホールマメ科植物または油糧種子は、多様な適切な植物に由来してもよい。非限定的例として、適切な植物としては、例えば大豆、トウモロコシ、エンドウマメ、カノーラ、ヒマワリ、ソルガム、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、葛、カンナ、ルピナス、セイヨウアブラナ、小麦,オート麦、ライ麦、大麦、落花生、タチナタマメ、ハトムギ、マメ科植物、トンカマメ、フジマメ、ランスポッド(lancepods)(例えば、アップルリーフシード(apple leaf seed))、アルファルファ、スメイルメディックシード(snail medic seeds)、ライマメ、サンドマメ、インゲンマメ、ツルナシインゲンマメ、サトウキビ、キビ、材木用樹木、ホウレンソウ、チャプル(chapule)、繊毛虫類、デザートバナナ、レンズマメ、ふすま、ソラマメ、緑豆、小豆、ササゲ、ジャトロフィア(jatrophia)、緑藻類、およびそれらの混合物をはじめとするマメ科または非マメ科植物が挙げられる。一実施形態では、マメ科植物は大豆であり、大豆精製過程から発生する水性ホエーストリームは、水性大豆ホエーストリームである。
【0081】
大豆タンパク質単離物の製造において発生する水性大豆ホエーストリームは、概して比較的希釈されており、典型的には廃棄物として廃棄される。より具体的には、水性大豆ホエーストリームは、典型的には約10質量%未満、典型的には約7.5質量%未満、なおもより典型的には約5質量%未満の総固形分を有する。例えば様々な態様で、水性大豆ホエーストリームの固形分は、約0.5〜約10質量%、約1質量%〜約4質量%、または約1〜約3質量%(例えば約2質量%)である。したがって工業的大豆タンパク質単離物製造中に、処理または廃棄しなくてはならない顕著な量の廃水が発生する。
【0082】
大豆ホエーストリームは、典型的には、出発原料大豆の最初の大豆タンパク質含量のかなりの部分を含有する。本明細書の用法では「大豆タンパク質」という用語は、概して、大豆に天然のあらゆるそして全てのタンパク質を指す。天然大豆タンパク質は、概して、親水性シェルで取り囲まれる疎水性コアを有する球形タンパク質である。例えばグリシニンやβ−コングリシニンなどの貯蔵タンパク質をはじめとする、多数の大豆タンパク質が同定されている。大豆タンパク質はさらに、上記のBBIタンパク質などのプロテアーゼインヒビターを含む。大豆タンパク質はまた、レクチン、リポキシゲナーゼ、β−アミラーゼ、およびルナシンなどの赤血球凝集素も含む。大豆植物は、形質転換されて、常態では大豆植物によって発現されない他のタンパク質を産生してもよいことに留意されたい。本明細書の「大豆タンパク質」への言及は、このようにして生成されたタンパク質も同様に考察するものと理解される。
【0083】
乾燥質量基準で、大豆タンパク質は、大豆ホエーストリームの少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、または少なくとも約20質量%(乾燥質量基準)を構成する。典型的には、大豆タンパク質は、大豆ホエーストリームの約10〜約40質量%、または約20〜約30質量%(乾燥質量基準)を構成する。大豆タンパク質単離物は、典型的には、大豆の貯蔵タンパク質のかなりの部分を含有する。しかし単離沈殿後に残留する大豆ホエーストリームも、同様に1つまたは複数の大豆貯蔵タンパク質を含有する。
【0084】
様々な大豆タンパク質に加えて、水性大豆ホエーストリームは、さらに1つまたは複数の炭水化物(すなわち糖類)を含んでなる。概して糖類は、大豆ホエーストリームの少なくとも約25%、少なくとも約35%、または少なくとも約45質量%(乾燥質量基準)を構成する。典型的には、糖類は、大豆ホエーストリームの約25%〜約75%、より典型的には約35%〜約65%、なおもより典型的には、約40%〜約60質量%(乾燥質量基準)を構成する。
【0085】
大豆ホエーストリームの糖類は、概して1つまたは複数の単糖類、および/または1つまたは複数のオリゴ糖類または多糖類を含む。例えば、様々な態様で、大豆ホエーストリームは、グルコース、果糖、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される単糖類を含んでなる。典型的には単糖類は、大豆ホエーストリームの約0.5%〜約10質量%、より典型的には約1%〜約5質量%(乾燥質量基準)を構成する。さらにこれらの態様および様々な他の態様に従って、大豆ホエーストリームは、スクロース、ラフィノース、スタキオース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるオリゴ糖類を含んでなる。典型的にはオリゴ糖類は、大豆ホエーストリームの約30%〜約60%、より典型的には約40%〜約50質量%(乾燥質量基準)を構成する。
【0086】
水性大豆ホエーストリームはまた、典型的には、例えば様々なミネラル、フィチン酸、クエン酸、およびビタミンをはじめとする多様な構成要素を含む、灰分画を含んでなる。大豆ホエーストリーム中に典型的に存在するミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、塩化物、鉄、マンガン、亜鉛、銅、およびそれらの組み合わせが挙げられる。大豆ホエーストリーム中に存在するビタミンとしては、例えばチアミンおよびリボフラビンが挙げられる。その正確な組成にかかわらず、灰分画は、典型的には大豆ホエーストリームの約5%〜約30%、より典型的には約10%〜約25質量%(乾燥質量基準)を構成する。
【0087】
水性大豆ホエーストリームはまた、典型的には、概して大豆ホエーストリームの約0.1%〜約5質量%(乾燥質量基準)を構成する、脂肪画分を含んでなる。本発明の特定の態様では、脂肪含量は酸加水分解によって測定され、大豆ホエーストリームの約3質量%(乾燥質量基準)である。
【0088】
上の構成要素に加えて、水性大豆ホエーストリームはまた、典型的には、例えば様々な細菌、カビ、および酵母をはじめとする、1つまたは複数の微生物を含んでなる。これらの構成要素の割合は、典型的には、ミリリットル当たり約1×102〜約1×109コロニー形成単位(CFU)で変動する。本明細書の他の箇所で詳述されるように、様々な態様で、タンパク質の回収および/または単離に先だって、水性大豆ホエーストリームを処理してこれらの構成要素を除去する。
【0089】
言及されたように、大豆タンパク質単離物の従来の製造は、典型的には、大豆タンパク質単離物の単離後に残留する、水性大豆ホエーストリームの廃棄を含む。本開示に従って、1つまたは複数のタンパク質および様々な他の構成要素(例えば糖類およびミネラル)の回収は、比較的純粋な水性ホエーストリームをもたらす。それからタンパク質および1つまたは複数の構成要素が除去された従来の大豆ホエーストリームは、概して廃棄および/または再利用に先立って処理が必要である。本開示の様々な態様に従って、水性ホエーストリームは、行うとしても最小の処理で廃棄され、またはプロセス水として利用されてもよい。例えば水性ホエーストリームは、本開示の1つまたは複数の濾過(例えば透析濾過)操作で使用されてもよい。
【0090】
大豆糖蜜ストリームは追加的タイプの大豆加工ストリームであることから、本明細書に記載される方法は、大豆タンパク質単離物の製造において発生する水性大豆ホエーストリームからのBBIタンパク質の回収に加えて、同様に、大豆タンパク質濃縮物の製造において発生する大豆糖蜜ストリームの1つまたは複数の構成要素の回収に適するものと理解される。
【0091】
E.BBIタンパク質の回収
本明細書に記載される方法は、ホールマメ科植物または油糧種子の精製過程から発生する水性ホエーストリーム中に存在する、精製BBIタンパク質の回収および単離を対象とする。上で考察したように、ホールマメ科植物または油糧種子は、多様な適切な植物に由来してもよい。非限定的例として、適切な植物としては、例えば大豆、トウモロコシ、エンドウマメ、カノーラ、ヒマワリ、ソルガム、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、葛、カンナ、ルピナス、セイヨウアブラナ、小麦,オート麦、ライ麦、大麦、落花生、タチナタマメ、ハトムギ、マメ科植物、トンカマメ、フジマメ、ランスポッド(lancepods)(例えば、アップルリーフシード(apple leaf seed))、アルファルファ、スメイルメディックシード(snail medic seeds)、ライマメ、サンドマメ、インゲンマメ、ツルナシインゲンマメ、サトウキビ、キビ、材木用樹木、ホウレンソウ、チャプル(chapule)、繊毛虫類、デザートバナナ、レンズマメ、ふすま、ソラマメ、緑豆、小豆、ササゲ、ジャトロフィア(jatrophia)、緑藻類、およびそれらの混合物をはじめとする、マメ科または非マメ科植物挙げられる。一実施形態では、マメ科植物は大豆であり、大豆の精製過程から発生する水性ホエーストリームは、水性大豆ホエーストリームである。
【0092】
本開示は、大豆タンパク質単離物の製造において発生する、水性大豆ホエーストリームからのBBIタンパク質の回収に適した多様な方法を包含する。概して、本開示の方法は、(例えば水性大豆ホエーストリームをはじめとする)大豆加工ストリームの特定構成要素を分離するように設計され設定された、1つまたは複数の操作を含んでなる。
【0093】
概して、本開示に従って、例えば以下をはじめとする、当該技術分野で良く知られている多様な分離または精製技術の何れかを利用して、水性大豆ホエー中に見られる様々な妨害性構成要素を除去し、それから精製BBIタンパク質を単離してもよい。膜分離技術(例えば限外濾過、精密濾過、ナノ濾過などの濾過、および/または逆浸透)、クロマトグラフ分離技術(例えばイオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および例えばアニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィーをはじめとする親和性クロマトグラフィー、模擬移動床クロマトグラフィー、膨張床吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換膜クロマトグラフィー、および混合床イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動、透析、微粒子濾過、沈殿、遠心分離、結晶化、およびそれらの組み合わせ。濾過用途では、濾過媒質の透過度が、サンプルの化学、分子または静電諸特性によって影響され得るが、様々な構成要素分離の主要原理は分子サイズである。本明細書の他の箇所で詳述されるように(例えば下の図2への言及)、本開示の方法は、典型的には、除去するホエーストリームの特定構成要素次第で、1つを超えるタイプの分離膜を利用する。例えば方法の一工程は限外濾過分離膜を利用して、ナノ濾過分離膜を用いる1つまたは複数の工程がそれに続いてもよい。
【0094】
様々な態様で、本開示は大豆タンパク質単離物の製造において発生する水性大豆ホエーストリーム中に存在する、精製BBIタンパク質を回収および単離する方法を提供する。本発明の方法が、大豆ホエーまたは大豆糖蜜ストリームに限定されるものではなく、多種多様なマメ科または非マメ科植物加工ストリームから、タンパク質および様々な他の構成要素を回収するのに使用されてもよいことに留意すべきである。様々な態様で、高比率のBBIタンパク質を含んでなる画分が、大豆ホエーストリームから回収される。例えば、本明細書の他の箇所で詳述されるように、本開示の方法は、かつて達成されたことのない純度レベルのBBIタンパク質組成物を提供する。
【0095】
本開示の方法によって処理された大豆ホエーストリームは、概して比較的希釈されている。BBIタンパク質の回収および/または単離を促進するために、ホエーストリームは好適には、方法の初期段階で濃縮される。大豆ホエーストリームを濃縮することは、ホエーストリームからのBBIタンパク質の回収および分離を助ける。例えば本開示の好ましい実施形態では、BBIタンパク質の回収に先だって、水性大豆ホエーまたはその画分を分離膜に接触させ、水性大豆ホエーを含んでなる残余分と、水を含んでなる透過液とを形成することで、水性大豆ホエーから水を除去する。本開示の別の実施形態では、当該技術分野で知られているあらゆる方法を通じて、例えば蒸発によって、水を大豆ホエーから除去してもよい。
【0096】
BBIタンパク質の回収と共に、本開示の方法は、典型的には、大豆ホエーストリーム中に存在する糖類からタンパク質を分離する。本開示の方法は、大豆ホエーストリームの糖類を1つまたは複数の画分(例えば単糖類に富む画分および/またはオリゴ糖類に富む画分)に分離するように、構成され制御されていてもよい。これは多段階で実施されて、タンパク質から異なる糖類が分離されてもよい。大豆ホエーストリームからの糖類の回収は、このようにしてさらなる生成流を提供する。言及されたように、糖の除去は、典型的には、それから糖類を分離し得る画分を生成し、濃縮糖画分、および行うとしても最小の処理で廃棄され、またはプロセス水として再循環されてもよい比較的純粋な水性画分の双方が生じる。糖類を除去する残余分の処理に続き、残余分をさらに処理して追加的構成要素を除去する。
【0097】
言及されたように、本開示によって処理されてもよい様々な大豆ホエーストリームは、1つまたは複数のミネラル(例えばリンおよびカルシウム)を含む。1つまたは複数のミネラルの存在は、例えば膜の汚損と、回収を所望する構成要素(すなわちBBIタンパク質)からの分離の困難さによって、後処理過程に難題をもたらすこともあることが観察されている。これらの所望の構成要素の回収に加えて、概して大豆ホエーからのミネラルの除去は、目下、純度がより高いBBI生成物の回収にも寄与すると考えられている。本明細書の他の箇所で詳述されるように、大豆ホエーからのミネラル除去は、概して、例えば沈殿および遠心分離をはじめとする、当該技術分野で知られている方法に従って開始してもよい。フィチン酸が、典型的には、本方法によって処理された水性大豆ホエーストリーム中に存在するので、カルシウムおよびマグネシウムなどのミネラルは、典型的にはカルシウムおよびマグネシウムフィチン酸の形態で回収される。除去される他のミネラルとしては、例えばナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、マンガン、および銅もまた挙げられる。
【0098】
不溶性固形物除去の特定の態様では、微粒子濾過、沈殿、遠心分離、結晶化、およびそれらの組み合わせを使用してもよい。これらの方法によって除去される不溶性固形物は、典型的には5ミクロンよりも大きい。
【0099】
精密濾過は、精密濾過膜を使用することで、固体粒子を流体から分離する方法である。適切な精密濾過膜は、例えばポリスルホン、変性ポリスルホン、セラミック、およびステンレス鋼をはじめとする当該技術分野で知られている適切な材料から構成される。精密濾過膜は、典型的には、約0.1ミクロン〜約20ミクロン範囲の孔径を有する。特定の態様では、精密濾過膜は約0.2ミクロン〜約2ミクロンにわたる孔径を有する。
【0100】
限外濾過は精密濾過と類似するが、分離膜の孔径の点で異なる。限外濾過膜は、典型的には、より低い分子量を有する分子から、(例えばタンパク質をはじめとする、高分子量を有する分子を分離するのに使用される。適切な限外濾過膜は、典型的には、例えばポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、再生セルロース、セラミック、ステンレス鋼、または薄膜複合材などの当該技術分野で知られている適切な材料から構成される。限外濾過膜は、典型的には約1〜約300キロダルトン(kDa)または約5〜約50kDaの分画分子量(MWCO)を有する。さらにまたは代案としては、適切な限外濾過膜は、約0.002ミクロン〜約0.5ミクロンの孔径を有してもよい。
【0101】
ナノ濾過は、流体から小分子を除去するのに使用される。適切なナノ濾過膜は、典型的には、当該技術分野で知られている適切な材料(例えばポリエステル上のポリエーテルスルホン、ポリスルホン、セラミック、およびポリアミド−タイプの薄膜複合材)から構成され、典型的には約0.1〜約5kDaまたは約1〜約4kDaのMWCOを有する。さらにまたは代案としては、適切なナノ濾過膜は、約0.9ナノメートル〜約9ナノメートルの孔径を有してもよい。
【0102】
逆浸透(または超濾過)は、典型的には糖類の濃縮のために使用される。適切な逆浸透膜としては、概して当該技術分野で知られているもの(例えば孔径が0.5nm未満の膜)が挙げられる。
【0103】
本発明の濾過工程で利用される分離膜は、単独でまたは組み合わせで、当該技術分野で知られている、1つまたは複数の立体配置に従って配置されてもよい。例えば膜は、その中で(任意の分離スクリーン層と共に)膜層が共に組み合わされた、平板、またはカセットモジュールの形態に構成されてもよい。水性大豆ホエーは、概して重なりの一端の交互の溝内に導入され、流体は膜を通過して、1つまたは複数の濾液または透過液溝に入る。分離膜はまた、その中で膜の交互の層が中空の中核周囲に巻かれる、らせん巻きモジュールに配列されてもよい。水性大豆ホエーがモジュールの一端に導入される一方で、流体は膜の交互の層を通過して、モジュールのコア内に向かう。さらなる例として、分離膜は、比較的細い膜管束を含んでなる中空繊維モジュールに配列されてもよい。水性大豆ホエーがモジュール内に導入され、流体は、モジュールを通過する大豆ホエー流を横断する膜管束を通過する。適切な膜配置は、例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,946,075号明細書に記載される。
【0104】
本発明の濾過工程は、本明細書でさらに詳しく述べるように、直接(ノーマルフロー)濾過または接線流(クロスフロー)濾過を利用してもよい。直接濾過またはノーマルフロー濾過では、流体(すなわち水性大豆ホエー)は、そのまま分離膜に向かって運ばれる。代案としては、接線流またはクロスフロー濾過では、流体(すなわち水性大豆ホエー)は、分離膜表面に沿って接線方向に運ばれてもよい。接線流またはクロスフロー濾過の1つの利点は、水性大豆ホエー流によって膜上に接線方向に及ぼされる摩擦または掃引力が、典型的には、流動速度を保つのを助けることである。したがって本開示の方法の様々な態様において、1つまたは複数のステップ、およびそれらの組み合わせは、クロスフロー濾過として操作される。適切なクロスフローフィルターとしては、米国特許第6,946,075号明細書に記載されるものをはじめとする、概して当該技術分野で知られているものが挙げられる。液体通過は、適切には、ノーマルフローおよび/または接線流(すなわちクロスフロー)に従って進行してもよいものと理解される。図2に示される実施形態、およびその他の態様との関連で、本明細書の他の箇所で詳述される他の膜分離ユニットを通る液体の通過は、これらの機序のどちらかまたは双方に従って進行してもよいものとさらに理解される。
【0105】
本発明によって記載される方法は、大豆ホエーストリームから様々な構成物を逐次除去し、または精製BBI生成物を回収または単離する、適切な分離操作または操作の組み合わせの選択を伴い、BBI生成物は、当該技術分野でかつて達成されたことのない純度レベルを有する。本発明の特定の態様では、および本明細書の他の箇所で詳述されるように、BBIタンパク質を回収する方法は、膜分離と(例えばイオン交換)クロマトグラフ分離操作の組み合わせを利用する。様々な態様で、個々のBBIタンパク質の回収は、(当該技術分野で「SMB」構造と言及されることが多い)模擬移動床操作によって進行する。
【0106】
本明細書の他の箇所で言及されるように、本開示の方法によって処理された水性大豆ホエーストリームは、概して比較的希釈されている。様々な態様で、水性大豆ホエーは、標的とされる個々のタンパク質の回収に先だって、水分除去により少なくとも約2(例えば約3または約6)倍に濃縮される。
【0107】
BBIタンパク質を回収する他の方法と比較して、模擬移動床を使用する非BBIタンパク質の回収は、概して、少なくともある程度は水性大豆ホエーの複数サンプル処理への適応性に起因する、コスト低下、処理能力、および/または順応性の利点もまた提供してもよい。
【0108】
大豆ホエーストリームの1つまたは複数の構成要素が、BBIタンパク質の回収を妨げることもあることが観察されている。例えば大豆タンパク質単離物の製造中に、典型的にはシリコーンであるケイ素化合物が、通常、Hydrite ChemicalまたはEmerald Performance Materialsから市販されるものなどのケイ素含有化合物の形態で、脱泡剤として導入されることが多い。正確な起源を問わず、有機ケイ素化合物は、典型的には、ケイ素含量を基準にして約15百万分率(ppm)まで、約10ppmまで、または約5ppmまでの濃度で、大豆ホエーストリーム中に存在する。有機ケイ素化合物の存在は、大豆ホエーストリームのBBIタンパク質の回収を妨げることもあるので、概して望まれない。
【0109】
したがって本明細書の他の箇所で詳述されるように、BBIタンパク質の回収および分離処理に先だって、様々な態様で、大豆ホエーストリームからシリコーンおよび/または他の有機ケイ素化合物が除去される。好適には、ケイ素化合物は、本明細書でさらに詳述するように、大豆ホエーが痕跡量以下のレベルの有機ケイ素を含有する程度まで、除去される。さらにまたは代案としては、水性大豆ホエーは、水性大豆ホエーの所望の構成要素の回収を妨げることもあり、および/または方法の最終回収生成物中で望まれない、1つまたは複数の微生物を含むこともある。
【0110】
これらの妨害性構成要素を除去するために、ケイ素脱泡剤および/または1つまたは複数の微生物の保持に対して選択的である分離膜を使用して、大豆ホエーストリームを濾過し、ケイ素および/または1つまたは複数の微生物を含んでなる残余分と、水性大豆ホエーを含んでなる透過液とを得てもよい。この最初の精製で使用される(例えば精密濾過をはじめとする)特定の膜は、除去する構成要素を考慮して選択される。選択される膜のタイプ、および大豆ホエーストリームから除去する構成要素にかかわらず、好適には所望のBBIタンパク質の少なくともかなりの部分が、そして好適には実質的に全部が、残余分中に見られる。さらにこの点において、水性大豆ホエーを含んでなる透過液への言及は、1つまたは複数の不純物を除去するホエーストリームの処理が大豆ホエーストリームの他の構成要素に及ぼす影響は、たとえあったとしてもわずかであることを示唆することに留意されたい。
【0111】
様々な代案の態様で、ホエーストリームに含有される細菌は、タンパク質回収に先だって加熱により死滅させてもよい。細菌を破壊するための大豆ホエーストリームの加熱様式は厳密に決定的でなく、概して、当該技術分野で知られている従来の方法に従って行ってもよい。しかし微生物を破壊する大豆ホエーストリームの加熱は、タンパク質変性のリスクを持ち込むこともある。したがって大豆ホエーストリームの加熱を含まない方法による、大豆ホエーストリームからの細菌および他の微生物の除去が概して好ましい。
【0112】
図2は大豆タンパク質単離物の製造において発生する大豆ホエーストリームから、1つまたは複数の個々のタンパク質を回収する、本開示の方法の実施形態を示す。
【0113】
図2に示されるように、水性大豆ホエー1は、膜の反対側の第1の透過液ゾーン8内の圧力よりも高い圧力で分離膜7の片側に接する第1の濾過供給ゾーン6を含んでなる、膜分離ユニット5内に導入される。好適には、膜分離ユニット5は、少なくとも1つの精密濾過膜を含んでなる。
【0114】
膜分離ユニット5内の分離膜7を越える膜貫通圧力は、概して少なくとも約5psi、少なくとも約25psi、少なくとも約50psi、少なくとも約100psi、または少なくとも約150psiである。流体は、典型的には、以下の体積流量または流速で膜を通過する。少なくとも約1リットル流体/時間−m2、または約1〜約200リットル流体/時間−m2の流れ方向を横断する膜断面積。流速は、例えば濾過のタイプ、膜の汚損などによって影響されることもある。大豆ホエーは、典型的には約0℃〜約100℃の温度、より典型的には約25℃〜約60℃の温度で、膜分離ユニットの濾過供給ゾーン内に導入される。典型的には水性大豆ホエー1は、残余分のために体積が約5%減少する。
【0115】
分離膜を越える液体通過は、第1の透過液ゾーン8内に、第1の残余分9と第1の透過液13をもたらす。第1の残余分9は、主として1つまたは複数の微生物と不溶性物質を含んでなり、特に第1の残余分9は、典型的には第1の透過液13と比較して微生物に富む。好適には、第1の残余分9は、水性大豆ホエーの微生物含量の実質的に全部でないとしても、かなりの部分を含有する。なおもより好ましくは、第1の残余分9はまた、消泡剤(例えば水性大豆ホエー中に存在する、有機ケイ素−または脂質−含有含有化合物のケイ素)のかなりの部分を含んでなり、特に好適には、消泡剤含量を基準にして、水性大豆ホエーの消泡剤含量の少なくとも約70質量%、より好適には少なくとも約80質量%、さらにより好適には少なくとも約90質量%を含んでなる。第1の透過液13は、主として、可溶性大豆貯蔵タンパク質、大豆ホエータンパク質、様々な糖類、水、ミネラル、イソフラボン、およびビタミンなどの水性大豆ホエーストリームの様々な残りの構成要素の全てを含んでなる。
【0116】
再度図2に言及すると、第1の透過液13は、第2の透過液ゾーン20内の圧力よりも高い圧力で分離膜19の片側に接する第2の濾過供給ゾーン18を含んでなる、膜分離ユニット17内に導入される。膜分離ユニット17は、好適には分離膜19として、少なくとも1つの限外濾過膜を含んでなる。膜分離ユニット17内の分離膜19を越える膜貫通圧力は、概して少なくとも約5psi、少なくとも約10psi、少なくとも約25psi、少なくとも約50psi、少なくとも約100psi、または少なくとも約150psiである。流体は、典型的には、以下の体積流量または流速で膜を通過する。少なくとも約1リットル流体/時間−m2、または約1〜約150リットル流体/時間−m2の流れ方向を横断する膜断面積。大豆ホエーは、典型的には、約0℃〜約100℃の温度、より典型的には約25℃〜約60℃の温度で、膜分離ユニットの濾過供給ゾーン内に導入される。典型的には、水性大豆ホエー1は、少なくとも約5、または約5〜約75(例えば約25)の濃縮係数に濃縮される。限外濾過工程には透析濾過が含まれていてもよい。透析濾過体積は、典型的には、残余分1部当たり約1〜約10部の透析濾過体積に及んでもよい。
【0117】
分離膜を通る液体通過は、第2の残余分21と第2の透過液25をもたらす。第2の残余分21は水性大豆ホエーのタンパク質含量の顕著な画分を含んでなり、したがってBBIタンパク質の回収のためにさらに処理される。好適には第2の残余分21は、第1の濾過供給ゾーン6内に導入された水性大豆ホエー中に存在する様々な大豆ホエータンパク質の少なくとも約25質量%〜少なくとも約90質量%(例えば少なくとも約50質量%)(乾燥質量基準)を含んでなる。
【0118】
再度図2に言及すると、第2の透過液25は、概して、第2の残余分21中で回収されないあらゆるタンパク質と、大豆ホエーストリームの様々な他の構成要素(例えば様々な糖類、水、ミネラル、ビタミン、およびイソフラボン)とを含んでなる。図2には示されないが、水性ホエーストリームから個々の構成要素を単離しおよび/または除去するために、適切な分離操作に従って、第2の透過液25の構成要素をさらに処理してもよい。追加的分離工程に続いて、廃棄または使用に先立って、行うとしても最小の処理を要する、比較的純粋な水ストリームが好適には形成される。したがって本明細書に記載される本発明は、例えば環境の質を改善することで環境上の利点もまた有する。
【0119】
第2の残余分21をキャリアストリーム23と合わせて、少なくとも1つのイオン交換樹脂30を含有するイオン交換カラムまたはユニット29への供給材料24を形成する。キャリアストリームの正確な組成は、厳密に決定的ではない。したがって本明細書に記載される本発明はまた、例えば環境の質を改善することで環境上の利点も有する。BBIタンパク質の回収の様々な態様において、キャリアストリームは、例えばクエン酸ナトリウムをはじめとする非揮発性緩衝液、または例えばギ酸アンモニウムをはじめとする揮発性緩衝液を含んでなる。例えば様々な態様において、キャリアストリームは、約10〜約30ミリモル濃度(例えば20mM)の濃度で水性混合物中に対イオンを含有する、緩衝液を含んでなる。
【0120】
第2の残余分21および/または供給流24のpHは大豆タンパク質の溶解度に影響を及ぼし、沈殿タンパク質はイオン交換樹脂の汚損をもたらすこともある。したがって特定限度内で、イオン交換カラムへの供給材料の(例えば緩衝による)pH調節が所望されることもある。必要ならば供給材料のpHは、例えば第2の残余分の希釈、キャリアストリーム、および/または残余分とキャリアストリームの組み合わせによって提供される供給材料によって、範囲内に保たれてもよい。希釈剤の組成は厳密に決定的でなく、典型的には、当業者に容易に選択されてもよい水性媒体(例えば脱イオン水)である。供給材料のpHに影響を及ぼすのに加えて、希釈はまた、典型的には供給材料の固有イオン強度を低下させ、それはタンパク質とイオン交換樹脂の結合を促進する。さらにまたは代案としては、供給材料のpHは、キャリアストリームの選択によって制御されてもよい。
【0121】
イオン交換樹脂は、第2の残余分21および供給材料24中に存在する、1つまたは複数のタンパク質の選択的保持および回収に適するように選択される。様々な態様で、イオン交換樹脂は、BBIタンパク質を非BBIタンパク質から分離するように、選択的なBBIタンパク質保持または非BBIタンパク質保持について選択される。以下の考察は、水性大豆ホエー(すなわち第2の残余分21)からのBBIタンパク質の回収および単離に注目する。しかし以下の手順は、他の標的タンパク質(例えばKTIタンパク質)ならびに水性以外の(例えば噴霧乾燥から戻された)他の各種受け入れストリームの回収のために、容易に適合できるものと理解される。
【0122】
イオン交換ユニットの正確な構成にかかわらず、BBIタンパク質の回収のための適切なイオン交換樹脂としては、多様なカチオンおよびアニオン交換樹脂が挙げられる。イオン交換カラムへの供給材料次第で、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のどちらもBBIタンパク質の回収に適するが、様々な態様でイオン交換樹脂はカチオン交換樹脂を含んでなる。例えばその等電点(pI)未満のpHに曝露したタンパク質は正電荷域を有する可能性がより高く、したがってカチオン交換樹脂とより密接に結合する。供給流中のほとんどのタンパク質は、BBI、そして供給材料の典型的なpHよりも高いpIを有する。したがってこれらのタンパク質は、典型的には樹脂とより密接に結合する。BBIタンパク質含有画分は、樹脂を適切な溶離液に接触させることにより、イオン交換カラムから容易に溶出させることもできる。
【0123】
代案としては、供給材料のpHがBBIタンパク質のpIを下回るように調節して、イオン交換樹脂によるBBIタンパク質の保持を提供してもよい。他のタンパク質(例えばKTIタンパク質)もまた、樹脂に結合する。しかし所望の画分の回収は、タンパク質画分の差次的溶出のために、イオン交換樹脂を適切な溶離液と接触させることで進行してもよい。
【0124】
適切なカチオン交換樹脂としては、当該技術分野で良く知られている多様な樹脂が挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、イオン交換樹脂は、Applied Biosystemsによって製造されるPoros 20 HSを含んでなり、これはスルホプロピル基(例えばプロピルスルホン酸、−CH2CH2CH2SO3-)で官能化されたポリヒドロキシル化ポリマーで表面被覆された、架橋ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)マトリックスである。
【0125】
残余分および/または供給材料のpHの調節は、非BBIタンパク質の沈殿をもたらすこともあることが観察されている。このような場合、沈殿タンパク質は、イオン交換カラム内への導入に先だって、あらゆる膜分離技術(例えば限外濾過、精密濾過、ナノ濾過などの濾過、および/または逆浸透)、クロマトグラフ分離技術(例えばイオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および例えばアニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィーをはじめとする親和性クロマトグラフィー、模擬移動床クロマトグラフィー、膨張床吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換膜クロマトグラフィー、および混合床イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動、透析、微粒子濾過、沈殿、遠心分離、結晶化、(例えば硫酸アンモニウムまたは塩化アンモニウムをそれぞれ使用した塩析または塩溶をはじめとする)重力分離、またはその組み合わせによって、供給材料から分離してもよい(図2には示されない)。分離は、約1〜10に及ぶpHで約0℃〜100℃で実施してもよい。
【0126】
再度図2に言及すると、イオン交換カラム30を通る供給材料24の通過後に、溶出BBIタンパク質ストリーム33が回収される。
【0127】
必要ならば、イオン交換樹脂を適切な溶離液と接触させて、溶出BBIタンパク質含有ストリーム33およびKTIタンパク質含有ストリーム37を得る。イオン交換カラムからのタンパク質溶出は、典型的には多段階工程を通じて進行する。様々な態様に従って、第1段階では、イオン交換樹脂からのBBIタンパク質除去のために、カラムを溶離液と接触させる。適切な溶離液としては、例えば塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムの混合物が挙げられる。例えば適切な溶離液は、1mM〜400mMの溶液を使用して、塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムの体積比が約15:1〜約25:1である、塩化ナトリウムとクエン酸ナトリウムの混合物を包含し得る。このようにして溶出されるBBIタンパク質に加えて、BBIタンパク質含有ストリームも(例えばpH、イオン強度などの)条件次第で、イオン交換カラムを通過し得る(すなわち通過画分)。溶出緩衝液としては、例えば緩衝液および適切な対イオンが挙げられ、それは当業者によって判定され得る。第2段階では、例えばKTIタンパク質含有ストリーム37の形態の非BBIタンパク質を除去するために、イオン交換樹脂を溶離液と接触させる。
【0128】
BBIタンパク質を保持しない(すなわち通過画分)イオン交換カラムを使用してBBIタンパク質が得られる本発明の特定の態様では、BBIタンパク質はカラムの固定相と同一の電荷を担持し、その結果、保持されずに通過する。しかし非BBIタンパク質は、カラムによって保持される。
【0129】
再度図2に言及すると、BBIタンパク質含有ストリーム33は、液体沈殿媒体45と共に、沈殿ゾーンを含んでなる分離ユニット41内に誘導される。概して液体沈殿媒体45は、沈殿剤を含んでなる。典型的には、液体沈殿剤は硫酸アンモニウムを含んでなり、BBIタンパク質ストリーム33からBBIタンパク質を沈殿させる。様々な態様において、液体沈殿媒体は、液体沈殿媒体中のその飽和濃度の約30%〜約60%(例えば約40%〜約50%)の濃度で、硫酸アンモニウムを含んでなる。
【0130】
沈殿ゾーン内におけるBBIタンパク質画分33と沈殿媒体45の接触は、沈殿BBIタンパク質画分49と、分離ユニット41から除去される上清53とを形成する。沈殿BBIタンパク質画分49は、塩または緩衝液の存在または不在下で水性洗浄媒体57と合わせられて、可溶化BBIタンパク質画分61が形成する。このBBIタンパク質画分61は、残留沈殿剤(例えば硫酸アンモニウム)および1つまたは複数の他の不純物を含むこともある。
【0131】
図2に示されるように、可溶化タンパク質画分61は、あらゆる残留沈殿剤および1つまたは複数の不純物を除去するために、透析または透析濾過ユニット65内に誘導される。透析または透析濾過ユニットの形態および構成は厳密に決定的でなく、ユニットは当業者によって容易に選択されてもよい。例えば適切な透析カセットを含んでなる透析ユニット(例えばThermo Scientific Pierce Protein Research Productsによって製造されるSlide−A−Lyzer;分子量カットオフ2000ダルトン)、または(大規模分離により適していてもよい)クロスフロー濾過膜を含んでなる透析濾過ユニットを利用してもよい。残留沈殿剤および/または不純物の除去は、可溶化タンパク質画分61の導電率をモニタリングすることで判定される。ひとたび適切な不純物除去が達成されたら、透析または透析濾過ユニット65から、精製BBI可溶化タンパク質画分73を取り出す。精製可溶化BBIタンパク質画分73を乾燥ユニット77(例えば凍結乾燥ユニットまたは噴霧乾乾燥ユニット)内に導入して、乾燥精製BBIタンパク質生成物81を形成してもよい。精製可溶化BBIタンパク質画分73の処理によって、BBIタンパク質画分から1つまたは複数の残留不純物を除去し、本発明の精製BBIタンパク質生成物81が形成されてもよい。例えば1つまたは複数の内毒素を除去するために、Triton(登録商標)X114による処理を使用する。
【0132】
図3は、最終BBI生成物をはじめとする、図2で示される本発明の方法において単離された、様々な残余分および透過液のSDS−PAGE純度分析を示す。レーン1は分離に先立つ大豆ホエーの組成を示し、複数成分の存在が示唆される。対照的にレーン8は、本発明の分離法に続いて大豆ホエーから単離されたBBIタンパク質を示し、実質的に追加的構成要素は含まれず、高レベルの純度が示唆される。
【0133】
図2に示されるプロセススキームは、使用出発原料や、上述の大豆ホエー構成要素の分離および回収順序に限定されるものではなく、例えば添付の特許請求の範囲に記載されるものをはじめとする、上で論じたものと異なる加工スストリームを調製するのに利用してもよい。
【0134】
F.BBIタンパク質を製造する追加的方法
特定の実施形態では、本発明のBBIタンパク質は、例えば組換え手段によって、または合成的に生成される。本発明のタンパク質の組換え生産は、当業者に知られている標準技術を使用して行われる。このような方法としては、例えば1つまたは複数のコード核酸配列を作成することが挙げられ、それは全長cDNA配列をテンプレートとして使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの方法によって実施し得る。所望の核酸配列の生成に続いて、配列を(例えば大腸菌(Escherichia coli)pCAL−n発現プラスミドをはじめとする)発現プラスミドに挿入し、次にそれを微生物に形質移入する;次に(例えば抗生物質耐性選択マーカーまたは発光選択マーカーをはじめとする)選択マーカーを使用して、所望の配列を含有するプラスミドを含有するクローン選択を実施する;所望の配列を含有するプラスミドを含有するクローンの大量生産がそれに続く;所望のクローンからペプチドを精製する(例えばGorlatov et al.Biochemistry(2002)41,4107−4116に記載される方法;米国特許第4,980,456号明細書を参照されたい)。代案としては本発明のペプチドは、合成手段または半合成手段(例えば組換え生産と合成手段の組み合わせ)によって製造し得る。
【0135】
合成的製造は、例えばCarpino L.A.and Han.GY、J.(Amer.Chem.Soc.1981;37;3404−3409)に記載のフルオレニルメチロキシカルボニル(FMOC)−保護基ストラテジーを応用し、またはtert−ブトキシカルボニル(t−Boc)−保護基ストラテジーを応用することで実施し得る。ペプチドは、例えば多重ペプチド合成装置を使用して、Merrifield R.B.(J.Amer.Chem.Soc.1963;85,2149−2154)に記載の固相ペプチド合成手段によって合成される。次に粗製ペプチドを精製する。
【0136】
本発明のタンパク質を合成製造するための例示的方法は、続く節に記載される。装填量0.24mmol/gで、100mgのTentagel−S−RAM(Rapp−Polymere)を市販のペプチド合成装置(PSMM(Shimadzu))に移し、そこでペプチド配列をカルボジイミド/HOBt法に従って段階的に構築する。FMOC−アミノ酸誘導体は、5倍等モル過剰量のジ−イソプロピル−カルボジイミド(DIC)、ジ−イソプロピル−エチルアミン(DIPEA)、およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を添加してあらかじめ活性化され、反応容器に移した後に樹脂担体と30分間混合された。洗浄工程は、例えばDMFの添加と、1分間にわたる完全混合によって実施される。切断工程は、例えばDMF中のピペリジンの添加と、4分間にわたる完全混合によって実施される。個々の反応および洗浄溶液の除去は、溶液を反応容器底のフリットを通して押し出すことで達成される。アミノ酸誘導体FMOC−Ala、FMOC−Arg(Pbf)、FMOC−Asp、FMOC−Gly、FMOC−His(Trt)、FMOC−Ile、FMOC−Leu、FMOC−Lys(BOC)、FMOC−Pro、FMOC−Ser(tBu)、およびFMOC−Tyr(tBu)(Orpegen)が用いられる。合成が完了したら、ペプチド樹脂を乾燥させる。トリフルオロ酢酸/TIS/EDT/水(95:2:2:1vol)による室温で2時間の処理により、ペプチドアミドを引き続いて切断する。濾過、溶液濃縮、および氷冷ジエチルエーテル添加による沈殿の手段を通じて、粗生成物を固体として得る。次に0.1%TFA中のRP−HPLCによって、60%アセトニトリル上の勾配5、流速12ml/分で40分間、および215nmにおけるUV検出の手段による溶離剤の評価で、プチドを精製する。個々の画分の純度は、分析的RP−HPLCおよび質量分析法によって判定される。
【0137】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を下で定義する。
【0138】
「酸可溶性」という用語は、本明細書の用法では、約2〜約7のpHを有する水媒質中において、1リットル(g/L)当たり10グラムの濃度で、少なくとも約80%の溶解度を有する物質を指す。
【0139】
「大豆タンパク質単離物」または「単離大豆タンパク質」という用語は、本明細書の用法では、無水ベースで少なくとも約90%大豆タンパク質のタンパク質含量を有する大豆材料を指す。
【0140】
「対象(単数)」または「対象(複数)」という用語は、本明細書の用法では、病的状態の治療を必要とする、哺乳類(好適にはヒト)、鳥、魚、爬虫類、または両生類を指し、病的状態としては、筋肉、無制御な細胞増殖、自己免疫疾患、および癌と関連付けられている疾患が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0141】
「加工ストリーム」という用語は、本明細書の用法では、例えば水性大豆抽出物、水性豆乳抽出物、水性大豆ホエーストリーム、水性大豆糖蜜ストリーム、水性大豆タンパク質濃縮物大豆糖蜜ストリーム、水性大豆透過液ストリーム、水性豆腐ホエーストリームをはじめとし、さらに例えば本明細書で開示される方法に従って中間生成物として回収され得る、液体および乾燥粉末双方の形態の大豆ホエータンパク質をはじめとする、水性ストリーム、溶剤ストリーム、または乾燥(例えば噴霧乾燥)から戻されたストリームをはじめとする、ホールマメ科植物または油糧種子の精製過程に由来する、二次的または偶発的生成物を指す。
【0142】
「その他のタンパク質」という用語は、本明細書の用法では、ルナシン、レクチン、デヒドリン、リポキシゲナーゼ、およびそれらの組み合わせを含むが、これに限定されないと定義される。
【0143】
「大豆ホエータンパク質」または「大豆ホエー」という用語は、本明細書の用法では、BBI、KTI、ルナシン、リポキシゲナーゼ、デヒドリン、レクチン、ペプチド、およびそれらの組み合わせをはじめとするが、これに限定されるものではない、大豆貯蔵タンパク質が典型的には不溶性であるpHにおいて、可溶性であるタンパク質を含むと定義される。大豆ホエータンパク質は、貯蔵タンパク質をさらに含んでもよい。
【0144】
「大豆オリゴ糖類」という用語は、本明細書の用法では、糖を含むが、これに限定されないと定義される。糖は、スクロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、単糖類、およびそれらの組み合わせ含むが、これに限定されるものではないと定義される。
【0145】
本発明の要素またはその好ましい実施形態を述べる際の「a」、「an」、「the」と言う冠詞、および「said」は、1つ以上の要素を意味することが意図される。「comprising」、「including」、および「having」は、包括的であることが意図され、列挙される要素以外の追加的要素があってもよいことを意味する。
【0146】
本発明の範囲を逸脱することなく、上の化合物、生成物、および方法には様々な変更を加え得るので、上の説明および下の実施例に包含される全ての事項は例示的であり、限定的でないと解釈されるものとする。
【実施例】
【0147】
実施例1:大豆ホエータンパク質からのBBIタンパク質の回収
およそ3.7質量%の総タンパク量含量と、22.5質量%(乾燥質量基準)の総固形分を有する水性大豆ホエー(145l)をBTS−25またはMMM0.45ミクロン精密濾過膜を含有するOPTISEP 7000濾過モジュール内に導入する。膜に水性大豆ホエーを通過させると、水性大豆ホエーを含有する透過液(3.2質量%の固形分を有する132L)と、大豆ホエーの最初の細菌含量の99%以上、および大豆ホエーのケイ素脱泡剤含量の90%以上を含有する残余分とが形成される。
【0148】
精密濾過モジュールからの透過液(132l)を孔径およそ100kDaを有する再生セルロース(RC)限外濾過膜を含有する、OPTISEP 7000濾過モジュール内に導入した。透過液を限外濾過膜に通過させると、糖類、ミネラル、およびビタミンを含有する第2の透過液と、およそ25.4質量%の固形分およびおよそ83質量%(乾燥ベース)の総大豆タンパク質含量を有する第2の残余分(約2L)とが形成された。
【0149】
第2の残余分(516ml)を少量のバッチで、pH3の20mMクエン酸ナトリウムであらかじめ平衡化させたPoros 20 HSカチオン交換樹脂(68.3mlカラム床体積)を含有するイオン交換カラム内に導入した。pH3の20mMクエン酸ナトリウムで5倍希釈し、必要に応じてHClを添加することで、イオン交換樹脂と接触させる残余分(すなわちイオン交換カラム内に導入される供給流)のpHを約4.15に保つ。
【0150】
線流速およそ76cm/時間でカラムを通る残余分の各バッチの通過からは、BBIタンパク質ストリーム(およそ73g)が生成した。BBIタンパク質を含有する第2のタンパク質画分(およそ9g)は、pH3の20mMクエン酸ナトリウム中の400mM塩化ナトリウムでの溶出によってイオン交換カラムから回収され、他のタンパク質を含有する第3のタンパク質画分(およそ27g)は、pH3の20mMクエン酸ナトリウム中の1M塩化ナトリウムでの溶出によってイオン交換カラムから回収された。BBI含有画分からは、驚くべきことにそして意外にも、純粋なBBI組成物が生成した。この画分は、(例えばpIがBBIと同じかまたはそれ以下である、KTIおよび他の大豆ホエータンパク質をはじめとする)タンパク質をさらに含有することが予期された。
【0151】
BBIタンパク質ストリーム(およそ6.45L)をおよそ23℃の温度でおよそ30分間、(NH42SO4によって40%飽和にして、上清および沈殿BBIタンパク質画分を形成し、それを遠心分離によって分離した。
【0152】
沈殿BBIタンパク質画分をおよそ23℃の温度で、それぞれおよそ5分間にわたり、45%飽和(NH42SO4洗浄媒体と2回接触させた。
【0153】
沈殿BBIタンパク質画分を最小体積の脱イオン水中で可溶化して、Pierce 2K分子量カットオフSlide−a−lyzer透析カセットに移し、脱イオン水に対して徹底的に透析した。BBIタンパク質画分を透析カセットから回収し、遠心分離して少量の沈殿した材料を除去した。
【0154】
可溶性BBIタンパク質画分を4℃の温度にして、十分な10%Triton X114溶液(温度4℃で)を添加し、1%の最終Triton X114濃度を得た。この混合物を4℃の温度でおよそ60時間撹拌した。混合物をおよそ40℃で30分間加熱して、Triton X114の曇り点沈殿(相分離)を得た。
【0155】
混合物を遠心分離して、上部のBBIタンパク質画分相を収集した。内毒素に富む下部のTriton X114相を4℃の温度で30分間、脱イオン水洗浄媒体と接触させた。混合物を40℃の温度で30分間加熱して、Triton X114の曇り点沈殿(相分離)を得た。混合物を遠心分離して上部の残留BBIタンパク質画分相を収集し、先のBBIタンパク質画分材料と合わせた。驚くべきことにそして意外にも、Triton X114溶液は他の溶液よりもはるかに良く機能して、内毒素を除去した。
【0156】
総BBIタンパク質画分をPall Life Sciences 0.2ミクロンHT TuffrynメンブランAcrodiscシリンジフィルターに通過させ、エタノール洗浄ガラスバイアルに入れた。バイアルをLabconco Freezone 4.5凍結乾燥システム上で−80℃で凍結して、凍結乾燥させた。
【0157】
およそ2.9gのBBI(SDS−PAGEによる測定で>95%の純度)が回収された。表1は、実施例1に記載される方法に従って、各精製工程で得られた結果を示し、究極的に高純度の生成物がもたらされる。
【0158】
【表1】

【0159】
実施例2:大豆ホエータンパク質からのBBIタンパク質の回収
86.2質量%(乾燥質量基準;窒素燃焼アッセイ、標準ケルダール法による測定)の総タンパク量含量を有する噴霧乾燥大豆ホエータンパク質(44gm)を脱イオン水中で最終濃度10%(w/v)に再懸濁し、室温で2時間撹拌した。次に懸濁液をBeckman JA−10ローター内で10分間、4000×Gで遠心分離して不溶性物質を除去した。上清を4体積のクエン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH3.0)で希釈して、濃塩酸で最終pH3.0にさらに調節した。pH調節された上清を遠心分離し、Jouan C60ローター内で室温で30分間、4000RPMで不溶性物質を除去し、上清をデカントしてカラム装入材料として使用した。
【0160】
カラム展開に使用した溶液は、次のとおりであった。溶液A:脱イオン水;溶液B:クエン酸ナトリウム、500mM、pH2.1。Axichrom50/300カラム内のSP Sepharose Fast Flow樹脂(424ml)の21.6×5cmのカラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を3カラム体積の98%溶液A、2%溶液B中で平衡化した。前段落に記載される最終大豆ホエータンパク質溶液(2.29リットル、14.2mg/mlタンパク質;修正Lowry法、Sigma−Aldrich Total Protein Kit、Micro−Lowry、OnishiおよびBarr変法を使用して推定される)を流速50ml/分でカラムに注入した。カラムを98%の溶液A、2%の溶液B(20カラム体積)で洗浄し、次に5カラム体積にわたる2〜15%直線勾配の溶液Bと、それに続く追加的な20カラム体積の均一濃度の15%溶液Bで溶出した。次に追加的な20カラム体積の均一濃度の20%溶液Bと、それに続く5カラム体積の100%溶液Bで溶出を実施した。
【0161】
カラム溶出相全体を通じて、代表的な画分を収集した。画分1(1740ml)は297〜2120mlで収集された。15%の均一濃度の溶出工程全体は、画分2(8500ml)として収集された。20%溶液B均一濃度の工程全体は、画分3(8500ml)として収集された。画分4(2120ml)は100%溶液B溶出を含んでなる。精製BBIは、画分2中で、10〜20%Criterion Tris−HClゲル(Bio−Rad Labs,Herculles,CA)上でのSDS−PAGE分析に続いて同定された。
【0162】
可溶性BBIタンパク質画分を4℃の温度にして、十分な10%Triton X114溶液(4℃の温度)を添加して、1%の最終Triton X114濃度を得た。この混合物を4℃の温度でおよそ60時間撹拌した。混合物をおよそ40℃で30分間加熱して、Triton X114の曇り点沈殿(相分離)をもたらした。
【0163】
混合物を遠心分離して、上部のBBIタンパク質画分相を収集した。内毒素に富む下部のTriton X114相を4℃の温度で30分間、脱イオン水洗浄媒体と接触させた。混合物を40℃の温度で30分間加熱して、Triton X114の曇り点沈殿(相分離)をもたらした。混合物を遠心分離して、上部残留BBIタンパク質画分相を収集し、先のBBIタンパク質画分材料と合わせた。次にVirtis Freezemobile 25XLを使用してこの材料を部分凍結乾燥し、サンプル体積をおよそ150mlに減少させた。
【0164】
総BBIタンパク質画分をPall Life Sciences 0.2ミクロンHT Tuffryn膜Acrodiscシリンジフィルターに通過させて、エタノール洗浄ガラスバイアルに入れた。バイアルをVirtis Freezemobile 25XL凍結乾燥システム上で−80℃で凍結して、凍結乾燥した。
【0165】
およそ3.6gのBBI(SDS−PAGEによる測定で>95%の純度)が回収された。表2は、実施例2に記載される方法に従って、各精製工程で得られた結果を示し、究極的に高純度の生成物がもたらされる。
【0166】
【表2】

【0167】
実施例3:BBIタンパク質サンプルと本発明のBBIタンパク質との比較
既知のBBIタンパク質構造と、本発明のBBIタンパク質の比較として、表3に、それぞれに見られるアミノ酸残基のモル百分率(mol%)を記載する。本発明のBBI生成物は、UC DavisのMolecular Structure Facilityによって、L−8800 Hitachi分析器を使用して分析された。分析器はイオン交換クロマトグラフィーを使用してアミノ酸を分離し、「ポストカラム」ニンヒドリン反応検出システムがそれに続いた。標準加水分解手順は、6N HClを110℃で24時間使用した。標準酸加水分解に先だって、システイン酸およびメチオニンスルホンの酸安定形態を生じる過ギ酸での酸化によって、システイン(およびシスチン)およびメチオニンを測定した。トリプトファンは、MES加水分解工程を使用して測定した。
【0168】
【表3】

【0169】
実施例4:病的状態を治療するためのBBI
先に考察したように、対象において特定の病的状態を治療するのに、本発明のBBIタンパク質が使用される。BBIタンパク質は、単一BBIタンパク質であり、または本明細書に記載されるBBIタンパク質のあらゆる混合物である。本発明のBBIタンパク質は、例えば本発明のBBIタンパク質と薬学的に許容できるキャリアとを含んでなる組成物として、または本発明のBBIタンパク質を含んでなる食品として、投与し得る。
【0170】
本発明のBBIタンパク質は、使用していない間の機能的骨格筋量および力の喪失を予防することが判明する。本発明のBBIタンパク質の食餌への添加は、後肢懸垂期間に続く骨格筋萎縮症を顕著に減弱することが判明する。さらに本発明のBBIタンパク質の投与は、mdxマウスにおいてジストロフィー筋の機能的改善を生じることが判明し、したがって例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化、脊髄筋萎縮症、および脊髄損傷をはじめとする、退行性筋疾患を治療するための本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物のさらなる用途が実証される。
【0171】
後肢懸垂実験および方法については以前に述べられており、当業者に知られている(例えばMatuszczak et al.,Aviat Space Environ Med 75:581−588,2004;Arbogast et al.,Journal of Applied Physiology March 2007 vol.102 no.3:956−964;U.S.Pre−Grant Publication No.20080300179を参照されたい)。神経変性筋疾患実験および方法については以前に述べられており、当業者に知られている(Morris et al.,J Appl Physiol.2010 Nov;109(5):1492−9;U.S.Pre−Grant Publication No.20080300179)。
【0172】
使用しないことに伴う筋肉萎縮症の進行を阻止する、本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物の能力は、筋肉負荷除去(例えば後肢懸垂)中に変化することが知られている、いくつかの生理学的パラメータを測定することで、マウスにおいて実証される。BBI処置(すなわち本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物投与)された懸垂および非懸垂動物において得られる結果と、aBBI(すなわち高圧蒸気滅菌されて阻害活性が除去された本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物の投与)または標準固形飼料のどちらかを給餌された動物とを比較する。各実験で、3種の供給材料の1つを給餌されたマウスに後肢懸垂を実施し、またはそれを非懸垂対照として使用する。
【0173】
最初の実験では、3ヶ月齢マウスを使用して、後肢懸垂に伴う筋萎縮の量を減少させるBBI補給食の能力を実証する。この実験では、14日間懸垂されたマウスにBBI−またはaBBI−補給食のどちらかを与える。懸垂に続いて、筋肉を解剖して力を測定する。強縮力は、aBBI給餌動物よりもBBI給餌動物でより大きい。筋肉グラム質量当たりの張力で測定される平均比筋力は、aBBI給餌動物よりもBBI給餌動物でより高い大きい。BBI給餌動物の筋肉質量は、aBBI給餌動物の筋肉質量を上回る。aBBI給餌動物の%萎縮は、BBI給餌動物を上回る。
【0174】
BBI給餌動物において筋肉質量増大が観察されるので、6ヶ月齢のマウスを使用して、より大規模な研究を実施する。
【0175】
これらの実験では、実験的期間前後に、続く懸垂および非懸垂マウスの体重を測定する。各群の非懸垂動物は、14日間にわたり体重のわずかな増大を示す。懸垂BBI給餌およびaBBI給餌動物の体重は、14日間の後肢懸垂にわたり低下する。14日間の後肢懸垂にわたり、懸垂対照給餌動物の体重は低下する。体重低下は、以前に多数の研究によって報告されており(Thomason,D.B.and Booth,F.W.J Appl Physiol 1990 68:1−12の参考文献を参照されたい)、総食物摂取量の低下と、摂取食物グラム数当たりの体重増加の低下の双方に起因することが提案されている(Morey E R.Bioscience 29:168−172,1979)。
【0176】
本発明のBBIタンパク質が、非使用萎縮中の筋肉損失を減弱できるかどうかを判定するために、対照食またはBBI補給食のどちらかを給餌される動物を3、7、または14日間懸垂する。BBI補給食は各時点で、筋肉量の損失を減弱することが分かる。7日間の後肢懸垂後、BBI給餌動物の筋肉量は、aBBI給餌と対照給餌動物を上回る。BBI給餌動物の平均ヒラメ筋質量は、aBBI給餌および対照給餌動物を上回る。BBI給餌動物の%萎縮は限定的であり、aBBI給餌および対照給餌動物と比較するとより低い。対照給餌非懸垂、BBI給餌非懸垂、およびaBBI給餌非懸垂の筋肉質量は異ならなかった。
【0177】
筋肉当たりの平均繊維数は全ての群で同様であり、後肢懸垂が個々の筋肉繊維の消失を誘発しないことが示唆される。したがって個々の筋肉繊維の繊維面積を横断面で測定する。繊維サイズに変化があるかどうかを判定する簡単な方法は、高倍率視野(例えば40×対物)中の繊維数を定量化することである。繊維サイズの増大は、視野中の繊維数を減少させる(すなわち筋肉繊維が細いほど、繊維数は増大する)。この方法を使用して、後肢研究におけるBBI給餌動物の平均繊維数はaBBI給餌動物と比較してより少なく、それはBBI給餌動物における萎縮の低下を実証する。
【0178】
ラミニン染色筋肉の横断面を分析し、繊維面積を直接測定する。平均繊維面積は、aBBI給餌動物と比較してBBI給餌動物で増大する。
【0179】
したがって本発明のBBIタンパク質の投与は、繊維サイズの減少を少なくとも遅延させ、それによって筋肉の全体的質量を保つことで、後肢懸垂に伴う筋肉萎縮を改善する。
【0180】
筋肉が機能を保つかどうかを判定するために、全ての食餌群において、非懸垂および懸垂動物双方のヒラメ筋の収縮測定を実施する。BBI給餌懸垂動物によって生じる総強縮力は、同様の対照給餌およびaBBI給餌動物を上回る。結果は、筋肉萎縮症モデル中において、本発明のBBIタンパク質が機能的筋肉量を維持し、筋肉による全体的により大きな力の生成を可能にし得ることを実証する。
【0181】
マウスで観察される筋肉量の変化は、BBI摂取と相関する。さらに具体的には、14日の実験期間にわたって摂取される食物の量が、個々の動物の筋肉質量に対してプロットされる。結果は、1日当たり摂取BBI食物量と、筋肉質量の間の正相関を示す。1日当たり食物摂取量の関数としての筋肉質量に対するBBIの効果は、aBBI摂取と比較して増大している。より多量のBBIを摂取したサブセットに対するBBI給餌動物の再評価は、ヒラメ筋を評価した際に、筋肉萎縮量のさらなる低下を示す。aBBI給餌マウスにおける同様の分析は、ヒラメ筋にこのような変化がないことを示唆する。これはBBI消費量の増大が、筋萎縮の度合いを低下させることを示唆する(すなわち用量反応)。これらの結果は、食物量が、またはさらに具体的には消費BBIの量が、後肢懸垂に伴う筋萎縮量を低下させる上で重要であることを示唆する。
【0182】
追加的実験では、浸透圧ポンプを挿入して、6ヶ月齢のマウスに、本発明のBBIタンパク質または本発明のaBBIタンパク質のどちらかを直接送達する。各動物に、BBI(10%w/v)またはaBBI(10%w/v)のどちらかを含有する、Alzet浸透圧ポンプ(Alza,Palo Alto,Calif.)を背中の前方部分、皮膚直下に外科的に挿入する。ポンプは2週間にわたって、例えば0.5μl/時間の速度で、溶液を絶え間なく放出する。BBI処置動物の筋肉質量は、aBBI処置動物の筋肉質量を上回る。BBIによる筋肉量維持は、14日間の懸垂に続く筋肉質量亢進をもたらす。実験はまた、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルであるmdxマウスでも実施された。
【0183】
これらの実験では、本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物、具体的にはそれを補給した食物によるオスmdxマウスの治療を4週齢で開始し、12週間継続する。動物体重を毎週モニターして記録する。対照mdxマウスと、1.0%BBI補給食を与えたmdxマウスの間で、体重増大の差は観察されない。これに加えて、さらなる対照として、野性型C57BL/6マウスにBBI補給食を与え、BBIが正常な非ジストロフィー筋肉のサイズまたは機能に何らかの変化を誘発するかどうかを判定する。
【0184】
mdxマウスの横隔膜は、4ヶ月齢で通例のヘマトキシリン−エオジン(H&E)染色を使用して観察可能な、かなりの線維化を示す。線維症組織の筋肉細胞からのより大きな差別化は、筋肉組織を赤色に染色し、線維化および結合組織を紺青色に染色する三重染色法を使用して達成し得る。BBIの給餌は、対照mdxマウスと比較して、H&Eおよび三重染色を使用して染色されたmdxマウスの横隔膜の外観を著しく改善することが分かる。
【0185】
さらにmdxマウスの筋肉繊維には、およそ4週齢で開始する明白な退化/再生周期がある。筋肉繊維の再生は、再生繊維の中心に出現する衛星細胞の活性化と融合を必要とする。したがって再生筋肉繊維の尺度は中心核筋肉繊維(CNF)の存在であり、CNF比の増大は再生増大を意味する。筋肉切片をラミニンで染色して筋肉繊維の輪郭を描き、核染色4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールで核を染色する。各筋肉で、CN数は、総繊維数の比率として測定され、各測定で合計2〜4の筋肉を使用する。BBI処置に続いて、前脛骨筋、EDL筋肉、および横隔膜筋肉中のCNF比の顕著な低下が観察される。
【0186】
エバンスブルー染料を使用して、未処置およびBBI処置mdxマウス双方で、膜の完全性を判定する。屠殺の24時間前に、動物にエバンスブルー染料を腹腔内注射する。筋肉を切片化して固定し、蛍光顕微鏡下で観察して、膜損傷の度合いを判定する。少なくとも1匹の未処置mdx動物において、大腿四頭筋中の浸潤領域増大が観察される。
【0187】
mdxマウスのEDL筋肉は、非ジストロフィー動物と比較して、質量および断面積の増大を示す。しかし全ての質量増大が、断面積当たりの力(比筋力)の改善と相関するわけではなく、むしろmdx筋肉の比筋力の顕著な低下もあり得る。BBI処置は、比筋力を維持しながら、筋肉量、絶対筋力、および断面積を顕著に増大させる。これらの結果は、強度改善がBBI処置によって得られることを示唆する。比筋力は変化しないが、筋肉量および絶対筋力の増大は、日常のタスクで機能するより高い能力を動物に提供する。筋肉質量対体重比の顕著な増大があることから、筋肉量増大は、単に全体的体重増大に起因しない。
【0188】
したがって上記の実施例のそれぞれによって実証されるように、このデュシェンヌ型筋ジストロフィーマウスモデルのマウスによる12週間のBBI摂取に続いて、骨格筋の複数の形態学的および機能的測定における顕著な改善がある。
【0189】
したがって本発明は、本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物を使用する方法を提供する。
【0190】
これもまた本明細書で実証されるように、本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物の投与は、退行性筋疾患のマウスモデル中で骨格筋機能を改善し、これは筋肉の強度増大と質量増大の双方からもたらされる。
【0191】
さらに本発明は、退行性筋疾患または障害の症状を軽減し、および/または進行を遅延させる組成物と方法を提供する。
本明細書で実証されるように、本発明のBBIタンパク質を含んでなる組成物による処置は、退行性筋疾患デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおける骨格筋機能を改善する。
【0192】
当業者は、本明細書に記載される方法および組成物が例示的な実施形態を代表するものであり、本発明の範囲に対する制限を意図するものでないことを容易に理解するであろう。発明の範囲と精神を逸脱することなく、様々な置換と修正を本明細書で開示される本開示に加えてもよいことが、当業者にはすぐに分かるであろう。
【0193】
本明細書中で言及される全ての特許および刊行物は、本発明が関係する当業者の水準を示す。全ての特許および刊行物は、各々の個々の刊行物が具体的に個々に参考として援用されて示されるかのように、同じ程度までその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0194】
本明細書に例証的に記載される本開示は、適切には、本明細書で具体的に開示されないあらゆる要素または要素群、制限または制限群の不在下で実施されてもよい。したがって例えば本明細書の各場合において、「comprising」、「consistingessentially of」、および「consisting of」の何れかは、他の2つのどちらかの用語で置き換えてもよい。用いられた用語および表現は、限定でなく説明の用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示され記載される徴群のいかなる同等物もまたはその一部も排除することは意図されず、本開示が特許請求する範囲内で、様々な修正が可能であることが認識される。したがって本開示は、好ましい実施形態と任意の徴群によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念の修正形態およびバリエーションが、当業者によって用いられてもよいものと理解すべきである。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲内であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を精製する方法であって、
(a)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームにクロマトグラフ分離を施すステップと;
(b)任意選択的に、大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームに1つまたは複数の分離技術を施すステップと、
を含み、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物が得られる方法。
【請求項2】
クロマトグラフ分離が、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロマトグラフ分離が、イオン交換カラムを含んでなるイオン交換クロマトグラフィーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イオン交換カラムが、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、またはその組み合わせを含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
イオン交換カラムが前記BBI生成物を保持する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
イオン交換カラムが前記BBI生成物を保持しない、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数の分離技術が、膜分離、電気泳動、透析、微粒子濾過、沈殿、遠心分離、結晶化、重力分離、および任意のその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の分離技術が膜分離である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
大豆加工ストリームが、少なくとも約1リットル流体/時間−m2の体積流量で膜を通過する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
体積流量が、約1〜約400リットルの流体/時間−m2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
大豆加工ストリームが、約0℃〜約100℃の温度で膜を通過する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
大豆加工ストリームが、約25℃〜約75℃の温度で膜を通過する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
膜が、精密濾過膜、限外濾過膜、またはその組み合わせを含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
pHを調節してBBIタンパク質の等電点未満に保ち、前記イオン交換樹脂によるBBIタンパク質の保持を提供するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
BBIタンパク質が前記イオン交換樹脂によって保持されないように、pHを調節してBBIタンパク質の等電点よりも高く保つステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
1つまたは複数の分離技術が、前記クロマトグラフ分離に先だって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
1つまたは複数の分離技術が、前記クロマトグラフ分離の後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
精製BBI生成物が、少なくとも約95質量%の総BBIタンパク質濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
精製BBI生成物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および任意のその組み合わせと少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つのアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
精製BBI生成物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および任意のその組み合わせと少なくとも95%の同一性を有する、少なくとも1つのアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を精製する方法であって、
(a)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームに1つまたは複数の分離技術を施すステップと;
(b)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームにクロマトグラフ分離を施すステップと
を含み、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物が得られる、方法。
【請求項22】
少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物を精製する方法であって、
(a)大豆タンパク質および不純物を含んでなる大豆加工ストリームに少なくとも1つの分離技術を施して、前記大豆タンパク質を含んでなる第1の透過液と、前記不純物を含んでなる第1の残余分を形成するステップと;
(b)前記第1の透過液に少なくとも1つの分離技術を施して、不純物を含んでなる第2の透過液と、大量のタンパク質留分を含んでなる第2の残余分を形成するステップと;
(c)少なくとも1つのクロマトグラフ分離に通過させるために、前記第2の残余分をキャリアストリームと合わせて、前記加工ストリーム中の他のタンパク質からBBIタンパク質ストリームを単離するステップと;
(d)前記BBIタンパク質ストリームを液体沈殿媒体と合わせ、それに少なくとも1つの分離技術を施して、沈殿BBIタンパク質画分を形成するステップと;
(e)前記沈殿BBIタンパク質画分を液体洗浄剤と合わせて、可溶化BBIタンパク質画分を形成するステップと;
(f)前記可溶化タンパク質画分に少なくとも1つの分離技術を施して、精製可溶化BBIタンパク質画分を形成するステップと;
(g)前記精製可溶化タンパク質画分に少なくとも1つの分離操作を施して、精製BBI生成物を形成するステップと
を含み、少なくとも約90質量%の総BBIタンパク質濃度を有するBBI生成物が得られる、方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−516429(P2013−516429A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547311(P2012−547311)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062556
【国際公開番号】WO2011/082338
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】