説明

ボーラス投与に基づく灌流評価法およびシステム

灌流評価システム(105)が提案される。このシステムは、ボーラスとして投与され、身体部分を通る間に破壊を受けるコントラスト剤の、解析対象の身体部分における灌流を示すエコーパワー信号を提供する手段(705-735)と、上記破壊なしに上記コントラスト剤の通過を示すボーラス関数と、上記コントラスト剤の実質的に一定の流入に対応する破壊に続く上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示す灌流関数との間の積を含むモデル関数にこのエコーパワー信号を関連する関連手段(740,755,767)と、ボーラス関数および/または灌流関数から少なくとも1つの灌流指標を概算する概算手段(738,743)とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断撮像の分野に関する。より詳細には、本発明は、コントラスト剤のエコーパワー信号解析による血液灌流評価に関し、特に、本発明は、コントラスト剤がボーラスとして処方されるときに灌流評価を実行することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
診断撮像は、医療装置の分野において新しく現れた技術である。たとえば、この技術は、典型的には、血液灌流の評価のために開発され、多くの診断用途に、特に超音波解析に使用されている。この灌流評価は、患者に超音波コントラスト剤(UCA)を投与して得られる1シーケンスの超音波コントラスト像の解析に基づく。コントラスト剤は効率的な超音波反射体として作用するので、超音波を当て、生じたエコー信号を測定することにより容易に検出できる。コントラスト剤が患者の体内で血液と同じ速度で流れるとき、その追跡は、解析対象の身体部分における血液の灌流についての情報を提供する。
【0003】
適当なコントラスト剤は、液体搬送媒体の中での気泡の懸濁を含む。この目的のため、気泡は、乳化剤、油、シックナまたは砂糖を用いることにより、または、種々の系の中に気体またはその前駆体を運んでいくかまたはカプセル化することにより、安定化される。安定化された気泡は、一般に、気体で充填された微小胞(microvesicles)という。この微小胞は、水溶液媒体の中に分散される気泡であって、表面活性剤すなわち両親媒性材料を含む非常に薄い外被(エンベロープ)により気体/液体界面で境界をなす気泡(微小泡ともいう)を含む。別の例では、微小胞は、自然のまたは人工の高分子(微小気球または微小カプセルともいう)からなる固体材料外被により気泡が囲まれている懸濁液を含む。他の種類の超音波コントラスト剤は、高分子または他の固体の多孔性微粒子の懸濁液であって、多孔性微粒子の孔の中に気泡をとらえている。微小胞、特に微小気泡や微小バルーンの適当な懸濁水の例は、欧州特許公報EP-A-0458745号、国際公開公報WO-A-91/15244号、欧州公開公報EP-A-0554213号、国際公開公報WO-A-94/09829号および国際公開公報WO-A-95/16467号に記載されている。
【0004】
灌流評価処理は、典型的には、いわゆる破壊・補充技法で実行される。この目的のため、解析されるべき身体部分は、まず、コントラスト剤で一定速度で灌流される。微小気泡は、次に一瞬の充分なエネルギーにより破壊される。上記身体部分の中での微小気泡の補充(すなわち再灌流)の観察は、局所的な血液灌流についての定量的な情報を提供する。この目的のため、測定されるエコーパワー信号の時間経過が、血液灌流の定量的指標を抽出するために、数学的モデルにより合わせられる。こうして得られた情報は、上記身体部分の生理機能条件を推論するために使用できる。この技法は、Wei, K., Jayaweera, A. R., Firoozan, S., Linka, A., Skyba, D. M., and Kaul, S.著の論文"Quantification of Myocardial Blood Flow With Ultrasound-Induced Destruction of Microbubbles Administered as a Constant Venous Infusion," (Circulation, vol. 97 1998)において最初に提案された。
【0005】
当業界で既知の数学的モデルは、一般的に、再灌流の間にコントラスト剤が一定濃度で解析対象の身体部分に入るという仮定に基づいている。この目的のため、コントラスト剤は、連続的な注入として提供されねばならない。しかし、これは、カテーテルを通してコントラスト剤を定常的に供給する自動注入ポンプを必要とする。
【0006】
さらに、連続的投与は、大量のコントラスト剤の使用を含む。すべての上述の事項は灌流評価処理の費用を高くすることがある。
【0007】
当業界で知られている別の解決は、コントラスト剤をボーラス(すなわち、短い期間、典型的には2〜20秒のオーダーにわたって供給される1つの投与量)として投与することである。この場合、コントラスト剤を提供する操作は非常に単純であり、手で(たとえば注射器を用いて)行える。さらに、このボーラス投与に必要なコントラスト剤は少量である。
【0008】
しかし、この場合、上記身体部分の中でのコントラスト剤の流入は変動する。実際、典型的なボーラス型の流入は、流入期(wash-in period)と流出期(wash-out period)を示す。流入期では、流入が、ボーラス投与につづいて時間とともに増加し、流出期では、流入が、最大値に達した後で減少する。さらに、コントラスト剤の流入は、一般に、当該身体部分の多くの領域において同じ時刻で異なっている。したがって、これらの条件において、当業界において知られている既知の数学的モデルは、灌流過程の厳格な表現について適当でない。
【0009】
上述の問題を克服するための試みとして、コントラスト剤が「遅い」ボーラスとして、かなり一定の注入速度のもとで再補充解析を行うのに充分長い期間にわたって、投与された。しかし、定常状態の条件は、ボーラスの流出期の存在のため達成できないので、得られた結果の精度は強く制限される。
【0010】
Martin Krix, Christian Plathow, Fabian Kiessling, Felix Herth, Andreas Karcher, Marco Essig, Harry Schmitteckert, Hans-Ulrich Kauczor, and Stefan Delorme著の文献("Quantification of perfusion of liver tissue and metastases using a multivessel model for replenishment kinetics of ultrasound contrast agents", Ultrasound in Med. & Biol., Vol. 30, No. 10, pp. 1355-1363, 2004)は、追加の同じボーラス投与により全体の灌流曲線を得ることを提案する。しかし、これは、患者についての追加の、時間がかかる操作を必要とする。いずれの場合でも、そうして得られた結果の精度は、2つの別々のボーラス投与が(不可能でないとしても)実際に同一であることが難しいので、非常に悪い。
【特許文献1】欧州公開公報EP-A-0458745
【特許文献2】国際公開公報WO-A-91/15244
【特許文献3】欧州公開公報EP-A-0554213
【特許文献4】国際公開公報WO-A-94/09829
【特許文献5】国際公開公報WO-A-95/16467
【非特許文献1】"Quantification of Myocardial Blood Flow With Ultrasound-Induced Destruction of Microbubbles Administered as a Constant Venous Infusion," Wei, K., Jayaweera, A. R., Firoozan, S., Linka, A., Skyba, D. M., and Kaul, S., Circulation, vol. 97 1998
【非特許文献2】"Quantification of perfusion of liver tissue and metastases using a multivessel model for replenishment kinetics of ultrasound contrast agents", Martin Krix, Christian Plathow, Fabian Kiessling, Felix Herth, Andreas Karcher, Marco Essig, Harry Schmitteckert, Hans-Ulrich Kauczor, and Stefan Delorme, Ultrasound in Med. & Biol., Vol. 30, No. 10, pp. 1355-1363, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の技術における課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、コントラスト剤がボーラスとして投与されたとき、破壊に続くコントラスト剤の再灌流を記載する数学的モデルが提供される。
【0013】
特に、本発明の1つの観点では、灌流評価システムが提供される。このシステムは、(コントラスト剤が、ボーラスとして投与されていて、身体部分を通る間に破壊を受けているコントラスト剤について)解析対象の身体部分におけるコントラスト剤の灌流を示すエコーパワー信号を提供する信号提供手段を含む。モデル関数に上記エコーパワー信号を関連する関連手段が提供され、このモデル関数は、(上記破壊なしでの上記コントラスト剤の通過を示す)ボーラス関数と、(上記コントラスト剤の実質的に一定の流入に対応する破壊に続く、上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示す)再灌流関数との積を含む。このシステムは、さらに、上記ボーラス関数および/または再灌流関数から少なくとも1つの灌流指標を概算する(推定する)概算手段を含む。
【0014】
提案された解決は、コントラスト剤の一定の流入を確認する必要をなくす。したがって、灌流過程は、非常に簡単に(たとえば、手で操作される注射器を用いて)実行でき、また、少量のコントラスト剤を用いて実行できる。これらは、灌流過程の費用を大きく下げる。
【0015】
こうして、(ボーラスとして投与されている)コントラスト剤の再灌流の間に測定されるエコーパワー信号から直接に灌流過程の定量的指標を抽出できる。
【0016】
この結果は、患者への追加の操作なしに、1つのボーラス投与で達成される。
【0017】
以下に説明されるこの発明の異なる複数の実施形態は、さらなる効果を提供する。
【0018】
たとえば、再灌流関数は、S字形状をもつ。このS字形状は、実質的に0の1次微分係数を有する初期部分と、実質的に0の1次微分係数を有する最終部分と、上記初期部分の値から上記最終部分の値まで単調に変化する中間部分とを含む。
【0019】
こうして、これらの結果は、使用される装置やその設定に依存しない。したがって、この情報は、異なる研究者の間で(異なる装置は設定を用いていても)比較でき、絶対的な定量的評価に適している。
【0020】
好ましくは、エコーパワー信号は、(たとえば、対数圧縮化された像の線形化により)身体部分におけるコントラスト剤の濃度に比例させる。
【0021】
こうして、エコーパワー信号を直接に(たとえば、曲線適合(fitting)処理により)(S字形状)再灌流関数に関連づけることができる。
【0022】
好ましくは、再灌流関数は累積対数正規関数である。
【0023】
この選択は、身体部分についての血行力学的情報を提供するのに有益であることがわかった。血行力学的パラメータの例は、たとえば、血液量、血液の速度および血流速度である。発明の他の実施形態では、再灌流関数は、S字形状の複数の(それぞれ、灌流パラメータの対応する1以上の値についての)基本再灌流関数に基づく。これらの基本再灌流関数は、灌流パラメータの確率密度関数により重みづけられている。灌流指標は、確率密度分布の形状指標からなる。
【0024】
この考えられた技術は、身体部分の微小血管ネットワークの形態(morphology)についての情報を提供する。
【0025】
好ましくは、各基本再灌流関数は、(エコーパワー信号を測定するために使用された装置のあらかじめ決められたパラメータに基づく)累積正規分布関数である。発明の特定の具体化において、(たとえば通過時間の)確率密度分布は、対数正規分布であると仮定される。この場合、(対数正規関数で乗算された基本再灌流関数積分を含む)再灌流関数は、対応する適合パラメータにより表される。形状指標は、適合パラメータから計算できる。
【0026】
提案された技法は、比較的単純であるが、同時に効果的である。
【0027】
そのかわりに、確率密度関数は、確率のベクトルで表されるので、再灌流関数は、対応する確率と乗算された基本灌流関数の和を含む。この場合、形状指標は確率のベクトルから計算できる。
【0028】
この具体化は、確率密度関数の実際の性質を概算できる。
【0029】
さらなる強調のため、ボーラス関数は、複数の基本ボーラス関数の和を含む。
【0030】
これは、灌流評価処理が完了する前に、身体部分におけるコントラスト剤の再灌流を考慮できる。
【0031】
好ましくは、ボーラス関数と各々の基本ボーラス関数は対数正規関数である。
【0032】
本発明は、また、上述のシステムに基づく(かつ、エコーパワー信号を取得する超音波手段を含む)診断撮像装置を提供する。
【0033】
この解決をさらに改善する方法は、エコーパワー信号の最大値の検出に応答してコントラスト剤の破壊をトリガーすることである。
【0034】
これは、(再灌流関数の概算のため)ボーラス関数と重要なエコーパワー信号の両方のよい概算を得ることを可能にする。
【0035】
本発明の他の観点では、対応する灌流評価法を提供する。
【0036】
本発明の別の観点では、この灌流評価法を行うためのコンピュータプログラムが提供される。
【0037】
本発明のさらに別の観点では、このプログラムを具体化する製品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の特徴は、添付の請求項に記載されている。しかし、発明自体は、そのさらなる特徴や効果とともに、純粋に非限定的な説明により与えられる添付の詳細な説明を添付の図面を参照して読むことにより最もよく理解される。
【0039】
特に図1を参照して説明すると、診断撮像装置100が示される。特に、この装置100は、携帯発信・受信アレイプローブ(直線型またはマトリクス型)110を含む中央ユニット105を備える超音波スキャナを備える。このプローブ110は、(たとえば2〜10MHzの中の中心周波数をもつ)超音波パルスを発信し、(解析対象の身体部分120のエリアにおいて患者の皮膚と接触するとき)その超音波パルスの反射から生じるエコーパワー信号を受信する。この目的のため、プローブ110は発信/受信マルチプレクサを備え、これを用いてプローブ110を上述のパルスエコーモードにおいて使用できる。
【0040】
中央ユニット105は、マザーボード125を中に備え、マザーボード125の上に、スキャナ100の動作を制御する電子回路(マイクロプロセッサ、作業メモリ、ハードディスクドライブなど)が取り付けられる。さらに、1以上のドーターボード(全体を130で示す)がマザーボード125に差し込まれる。ドーターボード130は、プローブ110を駆動する電子回路とその信号を処理する電子回路を提供する。また、スキャナ100は、リムーバブルディスク(たとえばフレキシルブルディスク)を読むためのドライブ135を備える。モニター145は、解析対象の身体部分120を表す像を表示するために用いられる。さらに、キーボード150が、中央ユニット105に通常の形態で接続される。キーボード150は、トラックボール155を備え、トラックボール155は、モニター145の画面の上でポインタ(図示しない)の位置を操作するために用いられる。
【0041】
超音波スキャナ100は、身体部分120における血液灌流を評価するために用いられる。この目的のため、コントラスト剤が患者115に、連続的投与(適当なポンプを用いて)として、または、ボーラス(典型的には注射器を用いて手動で)として投与される。コントラスト剤が身体部分120を満たしたことを確実にするあらかじめ決められた期間(たとえば数秒)の後で、高い超音波エネルギーの1以上の超音波パルス(フラッシュ)が印加される。超音波エネルギーは、微小気泡の大きな部分(たとえば少なくとも50%)の破壊を起こすのに十分(たとえば1〜2の力学的指数(mechanical index)を備える)でなければならない。これは、この破壊パルスの印加のすぐ後に測定された値と、身体部分がコントラスト剤で補充されたときの値との間の実質的な変化の検出を可能にする。次に、コントラスト剤のさらなる破壊を含まないように、低い音響エネルギー(0.01〜0.1の力学的指数をもつ)の1連の超音波パルスが印加される。生じた超音波像は、身体部分120の中へのコントラスト剤の再灌流の流れを追跡するため、連続的に(たとえば30〜80msの時間間隔で)記録される。
【0042】
図2aに移って説明すると、コントラスト剤が連続的投与として提供されるとき、身体部分の再灌流の間にエコーパワー信号の時間変化が曲線200aにより図式的に(任意の単位(a.u.)で)提示できる。図から分かるように、再灌流曲線200aは、コントラスト剤の一定の注入により、(部分205で)定常値をもつ。破壊パルスの印加は、エコーパワー信号の瞬間的な増加を生じるが(図示されない)、これは解析には無関係であり、0の値を割り当てられる。破壊パルスが印加されたすぐ後では、エコーパルス信号の値が実質的に0である(部分210)。次に、コントラスト剤が身体部分を補充するので、エコーパワー信号はゆっくりと(破壊パルスの印加の前(部分220)のa値に等しい)その漸近値に向かって増加する(部分215)。
【0043】
他方、図2bに示されるように、ボーラス投与の間のエコーパワー信号の時間変化(コントラスト剤の破壊なし)は、図式的に曲線200bで表される。曲線200bは、初期部分225をもち、そこでは、エコーパワー信号は、(コントラスト剤の投与に続く流入期の間に)まるいピーク227に向かって増加する。エコーパワー信号がその極大値に達すると、コントラスト剤の流出期の結果として、減少し始める。
【0044】
次に図2cを考慮すると、コントラスト剤がボーラスとして投与されるが、破壊パルスに曝されるときのエコーパルス信号の時間的変化は、図式的に、曲線200c(実線)で表現できる。この場合、ボーラス再灌流曲線200cは、ボーラス曲線200b(破線)に対応する初期部分235をもつ。この場合でも、破壊パルスの印加は、エコーパワー信号の瞬間的な増加を生じるが(図示されない)、これは解析には無関係であり、0の値を割り当てられる。破壊パルスが印加されたすぐ後では、エコーパルス信号の値が実質的に0である(部分240)。十分な量のコントラスト剤が身体部分を養う血管の中に残っていると仮定すると、ボーラス再灌流曲線200cの部分245において、エコーパワー信号は、コントラスト剤が身体部分を再灌流するので、丸いピークに向かって増加する。次に、コントラスト剤の流出期の結果として、減少し始める(ボーラス曲線200bに向かって漸近的に移動する)。
【0045】
ボーラスの流出期の完了の前にコントラスト剤が身体部分内で再循環するとき、より複雑な状況が生じる。実際、患者に投与されたコントラスト剤は、血液の循環の通常のサイクルに従うので、各々の血液サイクルの後で解析対象の身体部分の中でふたたび通過する。しかし、微小気泡は、血液中でしだいに薄くなるので、身体部分内でのコントラスト剤の流入は、血液循環サイクルごとに減少する(たとえば1回または2回の血液循環サイクルの後で実質的に消える)。この場合、図2dに示されるように、再循環を伴う(コントラスト剤の破壊なしでの)ボーラス投与の間のエコーパワー信号の時間的変化は、図式的に曲線200rb(破線)で表現できる。この再循環ボーラス曲線200rbは、上述のボーラス曲線と似ていて、(流入期に対応する)部分225rの終わりで(第1の)ピーク227をもつ。しかし、(第1のピークより低い強度の)第2のまるいピーク227sが、(流出期に対応する)部分230rに存在する。この第2のピーク227sは、コントラスト剤の再循環によるエコーパワー信号の一時的な増加により生じる。もし(強度は次第に減少する)1以上のさらなる第2のピークが身体部分内でのコントラスト剤のさらなる再循環により生じるならば、同様な考慮が適用される。
【0046】
したがって、ボーラスとして投与されたコントラスト剤についてのエコーパワー信号の時間的変化は、再循環はあるが破壊パルスにさらされるとき、図式的に曲線200d(実線)で表現できる。また、この場合、再循環ボーラス再灌流曲線200dは、曲線200rbに対応する初期部分250と、値0の部分255(破壊パルスの印加に対応する像シーケンスの「無視される」部分)をもつ。この再循環ボーラス再灌流曲線200dは、部分260を含み、そこでは、エコーパワー信号は、コントラスト剤が身体部分を補充するとき、まるいピークに向かって増加し、次に、その流出期の結果としてふたたび減少する(再循環ボーラス再灌流曲線200rbに向かって漸近的に移動する)。コントラスト剤の再循環により、より低い強度の別のまるいピークが生じる。
【0047】
いずれの場合でも、発明者らは観察したように、コントラスト剤がボーラスとして投与されたときの(再循環ありでもなしでも)再循環処理の間のエコーパワー信号の変化が、数学的には、ボーラス投与に関連する1つのモデルとコントラスト剤の一定の注入を伴う再灌流過程に関連するもう1つのモデルとで表現できる。
【0048】
特にボーラス投与(再循環なし)を考慮すると、ボーラス関数B(t)(プローブにより測定される音響パワーの時間変化を表す)についての現実的モデルは、下記の対数正規関数(すなわち、独立変数の自然対数の正規分布関数)である。
【0049】
【数1】

ここで、値tは、ボーラス投与の瞬間と解析のための時間原点の選択との間の任意の時間間隔を表し(ボーラス関数はt>toで定義される)、Aは、強度パラメータ(身体部分内での血液体積として解釈できる)である。さらに、パラメータmBとsBは、それぞれ、(t−to)の自然対数の分布の平均と標準偏差である。
【0050】
他方、図3に示されるように、コントラスト剤が身体部分内で再循環するとき、ボーラス関数B(t)は、連続的なボーラス通過の組み合わせとして表現できる。この場合、身体部分内でのコントラスト剤の第1の通過は、上述の形状の(第1の)基本ボーラス関数Bo(t)で表現できる。同様に、コントラスト剤の次の通過は、同様な(第2の)基本ボーラス関数Bi(t)で表現できる。この第2の基本ボーラス関数Bi(t)は、(再循環の遅延のため)時間が変位され、(コントラスト剤の希釈により)より低い強度を示す。同様な考慮が、さらなるいずれの再循環に適用される。したがって、ボーラス関数B(t)は、数学的には、基本ボーラス関数Bh(t)の和として表現できる。ここで、h=0...Rであり、Rは、考慮されるべき再循環の数を表し、たとえば2〜4である。)
【数2】

上述の場合におけるように、パラメータmBhとsBhは、それぞれ、h番目の対数正規関数の(時間間隔tohに基づく)tの自然対数の分布の平均と標準偏差である。
【0051】
その代わりに、コントラスト剤の一定の流入に対応する再灌流過程を参照して、その処理の間に測定されるビデオグレイレベルを表す再灌流関数I(t)は、一般的に単一指数関数で表される。
【数3】

ここで、Aは、定常状態の強度であり、βは、単一指数関数の「速度」項であり、時間の原点は、最後の破壊パルスにすぐ続く瞬間とする。従来技術(たとえば上述のWeiらの論文)では、A、βおよびAβは、共通して、解析対象の身体部分内での「血液体積」、「血液速度」および「血流」に比例する量として解釈されている。
【0052】
しかし、発明の1つの好ましい実施形態では、その代わりに、再灌流関数E(t)が、S字形状を持つ異なる関数で表現される。このS字形状関数は、実質的に一定の初期値をもつ初期部分と、実質的に一定の最終値をもつ最終平坦部分(高原)とを含む。初期部分と最終部分の間の中央部分では、S字形状関数は、初期値から最終値まで単調に変化する。すなわち、S字形状関数は、初期部分と最終部分で本質的に0の1次微分係数をもつ。さらに、好ましくは、S字形状関数は、その中央部分で、1以上の0の2次微分係数をもつ。
【0053】
この選択の理論的理由を説明するために、図4bに示されるように、上記再灌流過程は、撮像面405が方向410にそって超音波ビームにより急速にスキャンされるという断層撮影アプローチに基づいていることが考慮されねばならない。座標系は、撮像面405における伝播方向410に直交するx軸、撮像面405に直交するy軸(上下方向)および伝播方向410にそうz軸(奥行き方向)で定義される。微小気泡はスライス415で破壊される。このスライスは、撮像面405の両側で対称的に存在する。スライス415は、超音波ビームによるスキャンされるエリアによって決定される拡がりと、上下方向yでのその圧力分布により決定される厚さDをもつ。
【0054】
微小気泡によりスライス415の再灌流の間に測定されるエコーパワー信号は、一方では、血液の局所的流速(概算(estimate)されるべき未知の灌流パラメータを定義する)により支配され、他方では、本質的に上下方向yでのプローブの音響感度パターンにより支配される。この音響感度パターンは、発信モードと受信モードのそれぞれにおけるその空間的分布(一般的には異なる)の組み合わされた効果により決定できる。
【0055】
特に、発信モードでは、(矩形形状のプローブの焦点開口を仮定して)上下方向yでの音響圧力分布pTx(y)は、次の関数
【数4】

により近似的に表される。ここで、Γは、任意単位の比例定数であり、関数sinc(u)は、一般的な変数uについて、sinc(u)=sin(πu)/πuを表す。さらに、KTx=2a/λzであり、ここにaは上下方向でのプローブの半開口であり、λは超音波の波長(λ=c/f、ここでcは身体部分内での音速であり、fは超音波の波長である)であり、zは、プローブからの奥行き方向の距離である。上述の関数は、連続波モードにおける励起に適用される。パルスモードにおける1つの励起の場合、一般的に超音波スキャナにおける場合におけるように、ピーク圧力分布の主ローブは、音響パルス波形の中心(または平均)周波数の近くの1つの周波数で連続波長の場合によく一致する。
【0056】
対応する音響パワー分布PTx(y)は、圧力分布数pTx(y)の平方により近似的に決定される。すなわち、
【数5】

実際には、音響分布関数PTx(y)は、
【数6】

にしたがって正規関数(すなわちガウス関数)により近似できる。
【0057】
受信モードでは、音響パワー分布PRx(y)の同様な近似が下記のようになる。
【数7】

ここで、パラメータKRxは、上に示されたように、しかし、受信条件にしたがって決定される。
【0058】
y方向におけるプローブの音響パワー感度分布PE(y)は、第1近似では、送信モードにける音響パワー分布PTx(y)と、受信モードにおける音響パワー分布PRx(y)との積により決定される。したがって、パワー感度分布PE(y)は、正規関数により
【数8】

として決定される。ここで、パラメータK2=KTx2+KRx2は、送信・受信条件により決定される。また、この関数は、無次元量
【数9】

の値について
【数10】

として表現できる。実際には、値Kは、上で説明したように理論的に決定できる。その代わりに、値Kは、上下方向yに撮像面405を横切って小反射体をスキャンし、次に、記録されたエコーパワー信号を上述の関数に最もよく合わせることにより、実験的に決定でき。
【0059】
図4bに示されるように、音響パワー分布PE(Y)は、Y=0で最大値1をとる。位置y'=Y'/Kまで微小気泡がスライス215を再灌流したときにプローブにより測定されるエコーパワー信号の音響パワーE(Y')は、値Y'についての音響パワー感度分布PE(Y)の積分として表現できる。すなわち、
【数11】

図から分かるように、音響パワー感度分布PE(Y')の積分は、S字形状の関数により表される。特に、いま説明しているこの例では、S字形状関数は、初期部分で一定値0をもち、最終部分で一定値1をもち、初期部分と最終部分の間の中心部分では、初期値から最終値まで単調に変化する(Y=0のとき半分の強度0.5に達する)。
【0060】
たとえば、音響パワー感度分布PE(Y')の積分により定義されるS字形状関数は、任意の変数qの関数
【数12】

として、累積正規分布関数(ここではperf関数という)により表せる。さらに、perf関数は、誤差関数erf(q)を用いて、下記のように簡単に表せる。
【数13】

ここで、
【数14】

【0061】
図5に示されるように、再灌流過程の間、微小気泡は、スライス415を速度vで補充する。速度bの上下方向yの成分は、次のとおりである。
【数15】

ここで、
【数16】

は、速度vと上下方向yの間の角度である。補充スライス415における微小気泡の位置は、時間の関数として、次のように表される。
【数17】

ここで、τ=D/2νは、スライス415内での微小気泡の通過時間を表し、微小気泡がスライス415の端からその中央部分(撮像面405に対応する)へ進むのに要する時間遅れとして定義される。したがって、再灌流過程の間に測定される音響パワーの時間変化は、次の式
【数18】

により表される。ここで、OとAは、それぞれ、オフセットパラメータと強度パラメータである。再灌流関数E(t)は、また、通過時間
【数19】

を用いて(ν
【数20】

で置き換えて)以下の再灌流関数E(t)により表現でき、
【数21】

または、速度νを用いて(
【数22】

をD/2νで置き換えて)以下の再灌流関数R(t)
【数23】

により表現できる。
【0062】
実際には、厚さDの値は、各々の超音波スキャナについて適当な近似における深さの関数として表にできる。好ましくは、厚さDは、異なる深さで実験的に決定される。たとえば、この結果は、ゲルの中に微小気泡を埋め込み、次に直接の光学的観察により、破壊された微小気泡の拡がりを見積もることにより達成できる。別の方法では、もう1つの超音波スキャナを(低い音響パワーで)用いて、破壊された微小気泡の拡がりを音響的に(イン・ビボまたはイン・ビトロで)決定するように、撮像面を問題の超音波スキャナの撮像面に垂直にする。また、厚さDは、発信ビームのプロファイルと微小気泡の破壊の音響圧におけるしきい値の知識とに基づいて理論的に概算できる。厚さDの値についての深さとの相関因子は、次に、組織の減衰を考慮して適用される。
【0063】
実際には、微小気泡は、スライス415を多くの方向に種々の速度で再灌流する。この場合、再灌流関数E(t)は、異なる分布を組み合わせることにより得られる。特に、微小気泡がNの速度νyi(i=0...N)でそれぞれ方向
【数24】

に(通過時間τi=D/2νyiで)流れるとき、再灌流関数E(t)は、連続的形式で以下のように表現できる。
【数25】

または
【数26】

ここで、関数
【数27】

は、微小気泡の相対的濃度を表す。同様に、再灌流関数E(t)は、離散的形式で以下のように表現できる。
【数28】

または
【数29】

ここで、Cは、通過時間
【数30】

または速度νyiをもつ微小気泡の相対的濃度を表す。この相対濃度関数
【数31】

と相対濃度のベクトルC=[C0,...,CN]は、対応する通過時間または速度の確率密度分布を表す。(ここで、
【数32】

であり、かつ
【数33】

であり、または、
【数34】

であり、かつ
【数35】

である。)
【0064】
再灌流関数E(t)は、S字形状関数によりグラフで表現される。そのような場合、再灌流関数E(t)は、平均通過時間または平均速度を用いて表現できる(単純化のため、
【数36】

とνで一般的に表す)。この目的のため、累積対数正規関数(ここではlogperf関数という)を用いるのが便利であることが分かった。再灌流関数E(t)は、通過時間
【数37】

により表現されるとき(速度νについても同様に考慮して)、次の式が得られる。
【数38】

ここで、mとsは、それぞれ通過時間
【数39】

の自然対数の平均値と標準偏差である。
【0065】
したがって、図6aに示されるように、コントラスト剤の実際の再灌流過程の間に測定された音響パワーを表すモデル関数M(t)の時間変化は、(コントラスト剤をボーラスとして投与した後に破壊パルスが印加されるとき)上述のボーラス関数B(t)と再灌流関数E(t)の積として表現できる。次に、モデル関数M(t)は、測定される音響パワーの時間変化から概算(推定)される。この結果は、異なる時間t(j=0...M)での音響パワーのサンプルのベクトルE'=[E'(t0),...,E'(tM)]をモデル関数M(t)により合わせることにより達成される。好ましくは、この演算は、破壊パルスの印加の間に測定されたサンプルを無視することにより行われる。血液灌流の異なる定量的指標は、こうして得られたモデル関数M(t)から抽出できる。
【0066】
特に、解析対象の身体部分の血行力学的パラメータが要求されるときはいつでも、モデル関数M(t)は、logperf関数により表される再灌流関数E(t)を用いて表現される。単純さのためにボーラス関数B(t)が単独の対数正規関数からなると仮定すると(上記身体部分におけるコントラスト剤の再灌流の効果が考慮されるならば同様のことが提供される)、通過時間
【数40】

によって表したモデル関数M(t)は次のようになる。t<toにおいて、
【数41】

<t<tflashにおいて、
【数42】

t>0において、
【数43】

ここで、時間の原点t=0で終わると仮定して、tflashは破壊パルスの開始時間を表す。サンプルベクトルE'[]は、パラメータO、A、mB、SB、mおよびsを概算するように、得られるモデル関数M(t)により適合される(いいかえれば合わせられる)。この結果は、Byrd, R.H., R.B. SchnabelおよびG. A. Shultzの論文("Approximate Solution of the Trust Region Problem by Minimization over Two-Dimensional Subspaces", Mathematical Programming, Vol. 40, pp 247-263, 1988)に説明されているTrust region法(たとえば、Matlab(登録商標)プログラム言語の曲線適合ツールボックスにより実行される)を用いて達成できる。
【0067】
適合パラメータAの値は、スライスの中の血液体積の比較的よい概算値を提供し、適合パラメータm、sの値は、微小気泡の平均通過時間(
【数44】

)のよい概算値の決定を可能にする。こうして、微小気泡の平均流速も
【数45】

として計算できる。平均速度(νymean)が概算されるとき、同様な考慮が適用される。
【0068】
logperf関数の解析から概算された複数の(血行力学的)パラメータは、それらの実際の値に関して高い線形性を示す。さらに、従来技術(すなわち単調指数関数)ととても対照的であるが、そうして得られた適合パラメータは、使用された超音波スキャナに依存しない。さらに、適合パラメータは物理量と関連できる。
【0069】
さらに、通過時間
【数46】

の確率密度分布を概算することにより解析対象の身体部分の脈管質の形態について情報を得ることができる。この情報は、(再灌流関数E(t)が連続的形式であるとき)確率密度関数
【数47】

により、または、(再灌流関数E(t)が離散的形式であるとき)その対応する離散確率ベクトルC[]により、提供される。この目的のために、モデル関数M(t)は、対応する再灌流関数E(t)(確率密度関数
【数48】

または離散確率ベクトルC[]によりそれぞれ重み付けられた多重perf関数の積分または和を含む)により表現されねばならない。
【0070】
特に、発明の第1の実施形態(再灌流関数E(t)の連続的形状に関連する)において、確率関数
【数49】

は、対数正規分布をとると仮定する。これは下記の一般的に受け入れられているモデルである。
【数50】

ここで、mとsは、それぞれ、
【数51】

の自然対数の分布の平均と標準偏差である。次に、サンプルベクトルE'[]は、下記の生じたモデル関数M(t)(t>toにおいて)
【数52】

により、適合パラメータであるO、A、mB、sB、mおよびsを概算するように、合わせられる。また、この場合、強度パラメータAの値は、解析対象の身体部分における相対的な局所的血液量に関連できる。しかし、いま、確率密度関数
【数53】

の任意の所望の統計指標、たとえば、その平均値、分散及び歪度
【数54】

【数55】

【数56】

を計算できる。
【0071】
いくつかの指標は、確率密度関数
【数57】

の形状についての情報を提供する。たとえば、分散
【数58】

は確率密度関数
【数59】

の拡がりを計量する。一方、歪度
【数60】

は、その非対称性を計量する。特に、最も重要な形状指標は、歪度
【数61】

である。なぜなら、歪度は、測定されている実際の値に依存しない純粋な数からなる。
【0072】
そうして得られた複数の形状指標は、(その血行力学パラメータにかかわらず)解析対象の身体部分の脈管質の形態を特徴付けるために使える。たとえば、図6bに示されるように、2つの異なる再灌流関数E(t)(任意の単位(a.u.)で示される)は610sと610aで示される。2つの再灌流関数E(t) 610s、610aは、同じ通過時間(
【数62】

)とパラメータAの同じ値をもつけれども、それらは形状において非常に異なる。特に、再灌流関数610sは、perf関数にちかく、その1/2強度の値(この例では5)の近くで高いレベルの対称性をもつ。逆に、再灌流関数610aは、歪んだ形状(最初のより鋭い上昇と最後のよりゆるやかな肩をもつ)をもち、1/2強度値の近くで明らかに非対称的である。
【0073】
図6cに移ると、上述の(対称的及び非対称的)再灌流関数は、その代わり、まったく異なる確率密度関数
【数63】

と関連付けられる。特に、対称的再灌流関数は、正規の確率密度関数に非常に近い確率密度関数620sを提供し、この関数は狭くまたほとんど対称的である。この形状は、その分散と歪度の低い値(この例では
【数64】


【数65】

)により特徴づけられる。逆に、非対称の再灌流関数は、広くて非対称的な確率密度関数620aに対応する。この形状は、その分散と歪度の高い値(この例では
【数66】


【数67】

)により特徴づけられる。
【0074】
このように、解析対象の身体部分の病理学的条件を同定できる。たとえば、ほとんど対称的な確率密度関数
【数68】

(低い歪度
【数69】

を伴う)は、健康な組織(非常に秩序のある微小血管ネットワークを有する)と関連づけられる。逆に、非対称的な確率密度関数
【数70】

(高い歪度
【数71】

を伴う)は、病的な組織(秩序のない微小血管ネットワークを有する)と関連づけられる。たとえば、高い歪度
【数72】

は、がんの中の脈管形成処理(すなわち新しい血管の発生を含む組織の血管新生)または冠動脈における虚血を示唆する。
【0075】
さらに、形状指標(および特に歪度
【数73】

)の連続的測定により病理学的条件の時間変化または処理への応答を監視できる。歪度
【数74】

の変化は、身体部分の脈管質の形態における変化を示す。たとえば、歪度
【数75】

の減少または増加は、それぞれ、反脈管形成薬処理または親脈管形成薬処理の有効性を示す。
【0076】
発明の異なる実施形態では、確率密度分布はその性質についての仮定なしに概算される。この目的のため、同じ時間tで(あらかじめ定義された通過時間のベクトル
【数76】

について)モデル関数M(t)の評価により与えられる、対応するモデルベクトルM=[M(t0),...,M(tM)]によりサンプルベクトルE'[]を合わせることが必要である。好ましくは、通過時間ベクトル
【数77】

は、数差数列または等比数列により、関心のある間隔でNの値を選択することにより定義される。
【0077】
上述の演算を実行するため、規格化された確率ベクトル
【数78】

を定義する。ここで、
【数79】

であり、また、
【数80】

である。さらに、因子のベクトルP=[p0,...,pN]を定義する。ここで、
【数81】

である。モデルベクトルM[](単純化のためオフセットパラメータが0であると仮定して)は、因子ベクトルP[]のみの関数である。したがって、モデルベクトルM[]とサンプルベクトルE'[]の間の誤差関数を因子ベクトルP[]により定義できる。たとえば、
【数82】

因子ベクトルP[]は、pi≧0の条件のもとで誤差関数err(P)を最小化することにより概算できる。規格化確率ベクトルC[]の各要素は、
【数83】

として計算される。ここで上述の式
【数84】

を適用することにより強度パラメータAを概算でき、さらに、確率ベクトルC[]=CA[]/Aを得ることができる。
【0078】
この結果は、Coleman, T.F. and Y. Li,の論文("An Interior, Trust Region Approach for Nonlinear Minimization Subject to Bounds", SIAM Journal on Optimization, Vol. 6, pp. 418-445, 1996 and in Coleman, T.F. and Y. Li, "On the Convergence of Reflective Newton Methods for Large-Scale Nonlinear Minimization Subject to Bounds", Mathematical Programming, Vol. 67, Number 2, pp. 189-224, 1994)に記載されているinterior-reflectiveニュートン法(たとえばMatlab(登録商標)プログラム言語の最適化ツールボックスにより実行される)を用いて達成できる。この技法は、因子ベクトルP[]の初期概算値の設定を要求する。因子ベクトルP[]の初期概算値の選択は、かなり重要である。なぜなら、誤差関数err(P)は、因子ベクトルP[]のではなく灌流関数E(t)のよい近似を見出すことを可能にする局所的な極小をもつことがあるためである。この場合、因子ベクトルの各要素を、
=1/N
または
【数85】

として設定することにより得られる。
【0079】
いま、確率ベクトルC[]の所望の統計的指標、たとえば平均値、分散または歪度
【数86】

【数87】

【数88】

を計算できる。また、この場合、そうして得られた形状指標は、解析対象の身体部分の脈管質の形態を特徴付けるために使用できる。さらに、また、概算された確率密度分布を対数正規関数(健康な組織を特徴づける)と比較することにより、解析対象の身体部分の脈管質の形態の異常を検出できる。
【0080】
実験によるテストは、低雑音のエコーパワー信号についてよい結果を提供した。しかし、無視できない雑音がエコーパワー信号に重なるとき、結果の精度は損なわれる。
【0081】
この場合、さらなる概算ステップを用いることが好ましいことが分かった。たとえば、発明の1つの実施形態では、上述のとおり、因子ベクトルP[]の、そして、規格化確率ベクトルCA[]の第1の概算が、通過時間の比較的低い第1の数Nについて得られる。たとえば、通過時間の第1の数Nは4から16までであり、好ましくは、6から10まで(たとえば8)である。規格化確率ベクトルCA[]の第2の概算は、通過時間のより高い第2の数Nについて、第1の概算から外挿される。通過時間の第2の数Nは8から64までであり、好ましくは、16から48まで(たとえば32)である。たとえば、この結果は、規格化確率ベクトルCA[]の第1の概算に3次スプライン外挿を適応することにより得られる。詳細を説明すると、規格化確率ベクトルCA[]の第1の概算は、通過時間領域において(たとえば、Metlab(登録商標)プログラム言語のcsaps関数を用いて)3次平滑スプライン関数を適用することにより達成される。3次平滑スプライン関数は、通過時間の第2の数Nで(たとえばふたたび関心のある間隔で一様に分散されて)評価される。因子ベクトルP[]の各要素の第2の概算は
【数89】

として得られる。
【0082】
因子ベクトルP[]のこの第2の概算は、第3の概算ステップを行うニューラルネットワークを初期化するために使用される。当業者に知られているように、ニューラルネットワークは、人の脳の動作を近似するデータ処理システムである。ニューラルネットワークは、複数の(ニューロンという)基本処理素子からなる。ニューロンは、単一方向性のチャネル(シナプスという)によって接続される。ニューロン(および、対応するシナプス)は、(入力ベクトルIN[]を受け取り、出力ベクトルOUT[]を出力する)ニューラルネットワークの入力と出力の間の1以上の層に組織化される。各々のk番目のニューロンに関連するシナプスは、対応する入力ベクトルINk[]を(他のニューロンから、または、ニューラルネットワークの入力から)受け取る。シナプスは、入力ベクトルINk[]を、対応する重み因子Wk[]と乗算し、次に、バイアス値bkを加える。生じたベクトル
【数90】

は、関連するニューロンに送られ、このニューロンは、あらかじめ決められた移転(transfer)関数(たとえばシグモイド関数または同定関数)
【数91】

によりスカラー値OUTk[]を出力する。重み因子Wk[]とバイアス因子bkは、利用可能な例に合うように、反復して調節される。たとえば、出力ベクトルOUT[]と入力ベクトルIN[]の間の平均自乗誤差(mse)からなる性能(performance)関数を最小化することにより学習処理が行われる。
【0083】
この文脈では、(同定関数に等しい移転関数を実行する)単純なシナプス/ニューロンを有する単純なニューラルネットワークが使用される。この素子(N個の要素の重みベクトルW[]とバイアス値bを有する)は、入力ベクトルIN[]を受け取り、出力ベクトルOUT[]を直接に出力する(どちらもM個の要素からなる)。したがって、最小化されるべき性能関数mse()は、以下のようになる。
【数92】

もし、出力ベクトルOUT[]がサンプルベクトルE'=[]に設定されるならば、重みベクトルW[]は因子ベクトルP[]に設定され、入力ベクトルIN[]は、対応するbolus-perfベクトルBolusPerf[]に設定される。このbolus-perfベクトルBolusPerf[]は、(通過時間ベクトル
【数93】

について)時間tiでのperf関数とボーラス関数B(t)の間の積の評価により与えられる。こうして、最小化されるべき性能関数mse()は以下のようになる。
【数94】

したがって、bolus-perf関数ベクトルBolusPerf[]とサンプルベクトルE'[]を用いて上述のニューラルネットワークを学習して得られる重みベクトルW[]は、(バイアス値bができるだけ0に保たれると仮定して)因子ベクトルP[](および確率ベクトルC[])の所望の概算を与える。この目的のため、重み因子W[]は、因子ベクトルP[]の上述の第2の概算に初期化される。さらに、重みベクトルW[]の要素が正でなければならないという制限と、バイアス値bが実質的に0でなければならないという制限を満足するため、それらは周期的に0に再設定される。(反復数を用いる)再設定操作の周期は、目標関数mse()を、再設定操作により生じる鋭い減少の前に(学習過程の間に)著しく減少させるため、十分高くなければならない。経験的には、10より高い周期、より好ましい25より高い周期、もっと好ましい50より高い周期(たとえば200まで)たとえば100で、よい結果が得られる。
【0084】
学習過程は、目標関数mse()があらかじめ決められたしきい値より低くなるときに終わる。この点で、許容可能な結果は、0.01と0.001の間のしきい値で得られた。特に、学習過程の高い精度を維持するため、好ましくは、確率密度分布の複雑さが増加するにつれ、または、再設定操作の周期が減少するにつれて、しきい値を減少する。好ましくは、停止条件が、学習過程の各々の反復ごとにではなく、再設定操作の前だけで確認される。したがって、学習過程の反復の全体の数は、常に、再設定操作の周期の整数倍である。
【0085】
たとえば、この結果は、Matlab(登録商標)プログラム言語を用いて達成できる。特に、ニューラルネットワークは、newlin関数を用いて生成される。(関数net.performFcnにより定義される)性能関数は、関数traingdxで最小化される。この関数は、(各々の反復で、全部のサンプルがニューラルネットワークに適用された後でのみ重みとバイアス値が更新される)バッチモードで勾配降下アルゴリズムを実行する。また、この関数は、(局所的な変化を無視させる低域通過フィルタとして動作する)モーメンタム技法と(勾配降下アルゴリズムの速度を動的に更新する)適応学習技法を適用する。
【0086】
図7に移って説明すると、本発明の1実施形態による灌流評価法を実行するために用いる主要なソフトウェア部品は、全体を参照記号700で示される。情報(プログラムとデータ)は、典型的にはハードディスクに格納され、プログラムが動くときに、オペレーティグシステムは他のアプリケーションプログラム(図示しない)とともに、作業メモリに(少なくとも部分的に)ロードされる。プログラムは、初めに、CD-ROMから、たとえばハードディスクにインストールされる。
【0087】
特に、モジュール705は、コントラスト剤の灌流過程の間にスキャンされている身体部分により反射されるエコーパワー信号を測定するように、プローブを駆動するために使用される。たとえば、プローブ駆動部705は、超音波を発生するためのビーム形成部とパルス発生部を含む。測定されたエコーパワー信号は、プロセッサ710に送られる。プロセッサ710は、エコーパワー信号を前置増幅し、予備的な時間利得保証(TGC)を適用する。典型的には、(アナログ)エコーパワー信号は、次に、アナログデジタル変換器(ADC)によりデジタル値に変換され、受信ビーム形成部を通して焦点を合わされた信号に結合される。また、エコーパワー信号は、デジタルフィルター(たとえばバンドパスフィルタ)と他の信号コンディショナ(conditioners)(たとえば後の(post)ビーム形成TGC)を通して扱われる。さらに、エコーパワー信号は、(エコーエンベロープの強度を抽出する)復調部と(プローブの形状を処理する)対数圧縮部などの非線形コンディショナにより扱われる。エコーパワー信号は、オプションでさらに圧縮され、次に、ビデオフォーマットに変換される。この処理は、コントラスト剤の灌流過程の間での身体部分の1シーケンスの連続的像Iを生じる。これらの像Iは、対応する記憶場所715に格納される。各々の像は、身体部分のデジタル表現からなる。像は、可視化素子の行列(たとえば、512行と512列)によって定義され、各々は、基本画素(画素)または体積素子(ボクセル)に関連するエコーパワー信号の強度を表す。
【0088】
セレクタ720は、上述の像について灌流過程のための関心領域(ROI)を制限するために用いられる。典型的には、ROIは、解析対象の身体部分の重要な部分を同定する。ROIに対応するマスクは、灌流過程のみに関連する情報を用いて、縮小された像Irのシーケンスを得るように、縮小部(reducer)725により上述の像Iのシーケンスに適用される。線形化モジュール730は、縮小された像Irのシーケンスを処理して、各々の可視化素子を、対応する画素またはボクセルにおける微小気泡の局所的濃度に比例させる。たとえば、この結果は、逆対数圧縮を適用し、次に、そうして得られた可視化素子の値を平方することにより達成できる。線形化された像Ilの得られたシーケンスは、統合部(consolidator)735に送られる。各々の線形化された像について、統合部735は、複数の可視化素子を、その時点での全体のROIの音響パワーを示す1つの値に結合する。たとえば、この値は、可視化素子の平均として計算される。この演算は、所望のROIについてサンプルベクトルE'[]を提供する。好ましくは、統合部735は、雑音による負の効果を現状するように、(たとえば、Matlab(登録商標)プログラム言語の関数medfilt1により実行される)サンプルベクトルE'[]にメディアンフィルタを適用する。
【0089】
このサンプルベクトルE'[]は、次に、検出器736に送られる。検出器736は、サンプルベクトルE'[]の要素が(ボーラス関数の1次ピークに対応する)絶対値の最大値に達するときを決定する。たとえば、この結果は、(過渡的な現象を濾波するのに十分な時間で)勾配が負になったときに最大値に達したことを検出するように、サンプルベクトルE'[]の勾配を監視することにより達成できる。そうして得られた情報は、活性化部737に送られ、それに対応して、活性化部737は、プローブ駆動部705を制御して、破壊パルスを印加する。こうして、ボーラスカーブの1次ピークに達した直後に破壊パルスは自動的に印加される。したがって、(その全流入期が完了するので)ボーラスカーブのよい概算値を得ることが可能になる。同時に、多い量のコントラスト剤が、解析対象の身体部分の中になお存在する(このため背景雑音より高いエコーパワー信号が重要な情報を提供する)。
【0090】
線形化像Ilのシーケンスは、また、血行力学的概算部(estimator)738により入力される。このモジュール738は、線形化された像IIのシーケンスにおける、対応する可視化素子により定義されるサンプルベクトルE'[]により、各画素または各ボクセルについて所望の血流力学的パラメータを概算する。この目的のために、概算部738は、適合(fitting)モジュール740をアクセスし、このモジュール740は、モデル関数M(t)がlogperf関数として表される再灌流関数E(t)により表現されるとき、モデル関数M(t)の適合(fitting)パラメータを決定する。これは、(各画素または各ボクセルに、対応する血行工学的パラメータの値を関連づける)1以上のパラメトリック像PIの生成を生じる。
【0091】
さらに、全体の関心領域(ROI)のサンプルベクトルE'[]は、統合部735により形態概算部743に送られる。このモジュール743は、対応する確率密度関数
【数95】

または確率のベクトルC[]により重み付けられた連続的perf関数またはperf関数の離散的な組み合わせを用いて表現されたとき、それぞれ、選択されたROIの所望の形態パラメータをモデル関数M(t)から概算する。この目的のため、概算部743は、適合モジュール740を利用して、確率密度関数
【数96】

を、対数正規分布をもつと仮定されたとき、計算する。この場合、適合モジュール740は、KとDの値を格納する表745にアクセスする。KとDの値の先験的知識が必要である。さらに、または、その代わりに、概算部743は、最適化部755と接続できる。最適化部755は、確率関数C[]の第1の概算を作るために使用される。この確率関数C[]の第1の概算は外挿部760に送られ、外挿部760はその第2の概算を決定する。この確率関数C[]の第2の概算は、次に、ニューロンネットワークモジュール765に送られる。ニューロンネットワークモジュール765は、対応する学習モジュール766に接続される。リセットモジュール767は、ニューラルネットワークの重みとバイアス値を周期的にゼロに強制するために使用される。ニューラルネットワークモジュール765により与えられる確率関数C[]の第3の概算は、概算部743に戻される。適合パラメータは、確率密度関数
【数97】

または確率のベクトルC[]についての形状(shape)指標(たとえば歪度
【数98】

)を計算するために使用される。そうして得られた形態指標は、オプションの解析部775に送られる。解析部775は、たとえば、現在のエコーパワー信号についての歪度
【数99】

を、対応する記憶部780にログされる1以上のあらかじめ決められた値(典型的には、健康であるとされる身体部分に関連するエコーパワー信号について得られた歪度
【数100】

または同じ身体部分について前に測定されたエコーパワー信号について得られた歪度
【数101】

を格納する)と比較する。さらに、比較器775は、知識ベース785にアクセスできる。知識ベース785は、比較の結果を評価するためにあらかじめ決められた基準を格納する。たとえば、各々の組織について、知識ベース785は、歪度
【数102】

のしきい値(越えられないときに健康な条件を示す)を提供し、歪度
【数103】

の異なる範囲を、対応する病理学的条件と関連付け、または、異なる治療のための歪度
【数104】

の満足な時間的傾向を確証できる。
【0092】
血行力学的概算部738により得られる結果(すなわちパラメトリック像PI)、および/または、形態概算部743により(すなわち歪度γに基づいて)得られる結果は、結果ファイル790に格納される。結果ファイル790に格納される情報は、(たとえば、その表示を生じる)出力駆動部795をとおして操作者に提供される。
【0093】
変形例.
【0094】
本来、局所的で特定の要求を満足するために、当業者は上述の解に、多くの変形を適用できる。特に、本発明は、その好ましい実施形態に関してある程度の特殊性で説明されたけれども、理解されるべきことは、形状や詳細における種々の省略、置換及び変化及び他の実施形態が可能である。さらに、本発明のいずれかの実施形態と結びつけて説明された特定の要素および/または方法のステップは、設計における選択の一般的事項として、他の実施形態にも組み込める。
【0095】
たとえば、超音波スキャナが異なる構造をもつとしても、または他のユニットを含むとしても、または、同等なコントラスト剤が使用されるならば、同様な考慮がなされる。同じく、ボーラス投与および/またはコントラスト剤の破壊は、同様な手順で実行される。さらに、発明の原理は、上述のモデル関数には限定されない(発明の原理は、一般的に任意のボーラス関数の任意の再灌流関数による積を含むどのモデル関数にも適用できる。)。
【0096】
どの場合でも、エコーパワー信号は、モデル関数と別の方法で関連付けられる。たとえば、発明の別の具体化において、ボーラス関数B(t)のみが、(流入期の最初の部分と流出期の最後の部分とに対応するエコーパワー信号のみを用いて)概算される。次に、エコーパワー信号は、(概算された)ボーラス関数B(t)の対応する値で除算される。これは、変形されたサンプルベクトルEm'=[Em(t0),...,Em'(tM)]を生じる。ここで、E'm(t)=E'(tj)/B(Tj)である。こうして、ボーラス投与の効果は実質的に除去される。したがって、変形されたサンプルベクトルEm'=[](破壊パルスの印加の後で)は再灌流関数によって直接に合わせられる。この点で、留意されるべきであるが、(サンプルベクトルE'=[]のボーラス関数B(t)による)上述の除算は、変形されたサンプルベクトルEr'=[](および対応する再灌流関数E(t))の各要素の強度を1に正規化する。再灌流関数E(t)の実際の強度を再格納するため(もし要求されるならば)、解析対象の身体部分における血液体積を概算することが必要である。この情報は、(
【数105】

を仮定して)ボーラス関数B(t)のtから
【数106】

までの積分として強度パラメータAを計算することにより得られる。灌流関数E(t)は、次に、その実際の値を再格納するように、強度パラメータAと乗算される。任意の所望の血行力学的指標または形態指標は、上述のように概算できる。この実行は、ここに説明された発明の好ましい実施形態と同じ結果(精度はやや低いとしても)を提供する。
【0097】
同じく、提案される解は、灌流過程のどの指標を概算するために(画素/ボクセルのレベルで、選択された関心領域ROIのレベルで、または、可視化素子のグループのレベルで)適用できる。
【0098】
エコーパワー信号を線形化する(身体部分におけるコントラスト剤の濃度にエコーパワー信号を比例させる)ための異なる技法は維持できる。たとえば、音圧に比例する生のエコーパワー信号を扱うとき、この結果は、エコー信号の強度を自乗することにより単純に達成できる。
【0099】
どの場合でも、歪度
【数107】

は、異なる公式で計算できる。さらに、他の形状指標(歪度
【数108】

に加えて、または、その代わりに)の使用は、排除されない。
【0100】
さらに、perf関数は、同等の形で定義できる。
【0101】
(連続的形式または離散的形式で再灌流関数E(t)を用いる)モデル関数M(t)にサンプルを合わせるための他の手法により確率密度分布が概算される場合にも、同様な考慮がなされる。たとえば、通過時間の初期ベクトル
【数109】

は、他の方法で選択でき、確率ベクトルC[]は、直接に(規格化確率ベクトルCA[]の代わりに、強度パラメータAがサンプルベクトルE'[]の漸近値であると仮定して)概算できる。その代わりに、確率ベクトルC[]の概算は、異なる数(1まで)のステップで行え、または、他のアルゴリズム(たとえば、ウェーブレット分解に基づいて)を用いて行える。
【0102】
どの場合でも、発明の解は、それ自体異なるように構成され、または、追加のモジュールまたは関数を用いて、実行されるのに役立つ。同じく、異なるメモリ構造は、異なる種類であってもよく、また、同等な(必ずしも物理的記憶媒体からなっていない)もので置き換えてもよい。さらに、提案された解は、同等な方法(たとえば、同様なステップまたは追加のステップを用いて)実行できる。
【0103】
どの場合でも、コンピュータにより読み取り可能は他の記録媒体(たとえばDVD)においてプログラムを配布できる。
【0104】
さらに、当業者には明らかであるが、さらなる効果を生じるこれらの追加の特徴は、発明の実施において本質的ではなく、省略してもよく、他の特徴と置き換えてもよい。
【0105】
たとえば、なにものも、他の再灌流関数(たとえば、単一指数関数)を用いての、提案された解の実行を妨げることはない。
【0106】
さらに、この提案された解は、それ自体、非線形化のエコーパワー信号(たとえば像)についてさえ適用されるのに役立つ。この非線形エコーパワー信号は、身体部分内のコントラスト剤の濃度に比例しない。この場合、再灌流関数は、非線形性を生じる処理と同じ処理(たとえば自乗平方と対数圧縮)により変形される。
【0107】
同様に、上述の説明では、logperf関数とperf関数が参照されたけれども、これらへの限定が意図されているのではない。実際に再灌流関数または基本再灌流関数は、任意の他のS字形状関数(たとえば双曲線正接関数、シグモイド関数、またはその任意の三角法近似または多項近似)で表せる。たとえば、perf関数の可能な近似は、
【数110】

【数111】

【数112】

を含む。ここで、q>0においてsign(n)=1であり、q<0においてsign(q)=−1であり、また、a=0.278393、a=0.330389、a=0.000972、a=0.078108である。
【0108】
さらに、対数正規関数のほかの分布を仮定する確率密度関数
【数113】

の概算も排除されない。
【0109】
どの場合でも、提案された解は、常に(コントラスト剤の再循環が存在しても)、単純なボーラス関数を用いて実行されるのに役立つ。
【0110】
さらに、同等なボーラス関数(たとえばガンマ変量関数)の使用は、本発明の範囲内である。
【0111】
本発明の考えは、また、他の検出スキームに基づいて超音波スキャナに、または他の測定技法を用いて適用される。
【0112】
どの場合でも、破壊パルスの手動のトリガー操作は、(たとえば、モニターの像を見る操作者によって)熟慮される。
【0113】
別の方法では、診断撮像装置は、超音波スキャナと、別個のコンピュータ(または任意の同等はデータ処理システム)からなる。この場合、測定データは、超音波スキャナからコンピュータへその処理のために(たとえば、リムーバブルディスク、メモリペン/キーまたはネットワーク接続をとおして)移送される。
【0114】
もしこれらのプログラムがハードディスクにあらかじめロードされ、ネットワークを介してシステムに送られ、ブロードキャストされ、またはより一般的に、システムの作業メモリに直接にロード可能な任意の他の形態で提供されるならば、同様の考慮が適用される。
【0115】
最後に、本発明による方法は、それ自体、ハードウェア構造(たとえば、半導体材料のチップの中に集積される)で実行でき、また、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態による解決が適用可能な診断撮像装置を示す図
【図2a】1秒間隔で印加される破壊フレームを用いたコントラスト剤の連続的投与に基づき灌流過程におけるエコーパワー信号の時間変化の1例を示すグラフ
【図2b】ボーラス投与の間(コントラスト剤の破壊なし)でのエコーパワー信号の時間変化の1例を示すグラフ
【図2c】ボーラス投与とコントラスト剤の破壊とに基づく灌流過程におけるエコーパワー信号の時間変化の1例を示すグラフ
【図2d】コントラスト剤の再循環を伴うボーラス投与に基づく灌流過程における エコーパワー信号の時間変化の1例を示すグラフ
【図3】本発明の1実施形態によるボーラス関数のグラフ
【図4a】診断撮像装置の撮像面の図式的な提示の図
【図4b】診断撮像装置の音響パワー分布とその対応する積分の1例のグラフ
【図5】典型的な灌流過程の解析の図式的な説明の図
【図6a】本発明の1実施形態によるモデル関数による実験データの適合を示すグラフ
【図6b】再灌流関数の異なる例と、対応する確率密度分布のグラフ
【図6c】再灌流関数の異なる例と、対応する確率密度分布のグラフ
【図7】本発明の1実施形態による灌流評価法のために使用できる主なソフトウェア構成要素の図
【符号の説明】
【0117】
105 灌流評価システム、 705-735 エコーパワー信号提供手段、 740,755,767 関連づけ手段、 738,743 概算手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流評価システム(105)であって、
ボーラスとして投与されていて、解析対象の身体部分を通る間に破壊を受けているコントラスト剤について、上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示すエコーパワー信号を提供するエコーパワー信号提供手段(705-735)と、
上記破壊をうけない上記コントラスト剤の通過を表すボーラス関数と、上記コントラスト剤の実質的に一定の流入に対応する破壊に続く、上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を表す再灌流関数との積を含むモデル関数に上記エコーパワー信号を関連づける関連付け手段(740,755,767)と、
上記ボーラス関数および/または再灌流関数から少なくとも1つの灌流指標を概算する概算手段(738,743)と
からなる灌流評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記再灌流関数はS字形状であり、このS字形状は、実質的に0の1次微分係数を有する初期部分と、実質的に0の1次微分係数を有する最終部分と、上記初期部分の値から上記最終部分の値まで単調に変化する中間部分とを含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記信号提供手段(705-735)は、上記身体部分の中で上記コントラスト剤の濃度に比例するエコーパワー信号を処理する処理手段(730)を備えることを特徴とする灌流評価システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記再灌流関数は、1組の適合パラメータにより表される累積対数正規関数であり、上記概算手段(738,743)は、上記適合パラメータから、上記身体部分の血行力学特性を表す少なくとも1つの灌流指標を導出する導出手段(738)を含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項5】
請求項2または3に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記再灌流関数は、上記S字形状の複数の基本再灌流関数に基づいていて、各基本再灌流関数は、上記少なくとも1つの灌流パラメータの確率密度分布により重み付けられていて、上記概算手段は、上記確率密度分布の、上記身体部分の形態特性を表す少なくとも1つの形状指標を計算する計算手段(743)を含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項6】
請求項5に記載された灌流評価システム(105)であって、
各々の基本再灌流関数は、エコーパワー信号測定感度を示す第1のあらかじめ決められたパラメータ(K)と、コントラスト剤の破壊の程度を示す第2のあらかじめ決められたパラメータ(D)とに基づく累積正規分布関数であることを特徴とする灌流評価システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記確率密度分布は、上記少なくとも1つの灌流パラメータの対数正規関数であり、上記再灌流関数は上記対数正規関数と乗算される上記基本再灌流関数の積分を含み、上記対数正規関数は、1組の適合パラメータにより表され、上記計算手段(743)は、上記適合パラメータから上記少なくとも1つの形状指標を導出する導出手段を含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項8】
請求項5に記載された灌流評価システム(105)であって、
上記確率密度分布は、確率のベクトルにより表され、上記再灌流関数は、上記対応する確率と乗算される上記基本再灌流関数の和を含み、上記計算手段(743)は、上記ベクトルまたは確率から上記少なくとも1つの形状指標を抽出する抽出手段を含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された灌流評価システム(105)であって、上記ボーラス関数は、複数の基本ボーラス関数の和を含むことを特徴とする灌流評価システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載された灌流評価システム(105)であって、上記ボーラス関数と各々の上記基本ボーラス関数は対数正規関数であることを特徴とする灌流評価システム。
【請求項11】
エコーパワー信号を取得するための超音波手段(110)と、請求項1から10のいずれかに記載された灌流評価システム(105)とを備えることを特徴とする診断撮像装置(100)。
【請求項12】
請求項11に記載された診断撮像装置(100)であって、さらに、
上記エコーパワー信号が最大値に達したことを検出する検出手段(736)と、上記最大値の検出に対応して上記破壊をトリガーするトリガー手段(737)とを含むことを特徴とする診断撮像装置。
【請求項13】
灌流評価法(700)であって、
ボーラスとして投与されていて、身体部分を通る間に破壊を受けているコントラスト剤について、解析対象の身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示すエコーパワー信号を提供するステップ(705-735)と、
上記破壊なしでの上記コントラスト剤の通過を示すボーラス関数と、上記コントラスト剤の実質的に一定の流入に対応する破壊に続く、上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示す再灌流関数との積を含むモデル関数に上記エコーパワー信号を関連づけるステップ(740,755,767)と
上記ボーラス関数および/または再灌流関数から少なくとも1つの灌流指標を概算するステップ(738,743)と
からなる灌流評価法。
【請求項14】
データ処理システム(105)の作業メモリに直接にロード可能であり、
ボーラスとして投与されていて、身体部分を通る間に破壊を受けているコントラスト剤について、解析対象の身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示すエコーパワー信号を提供するステップと、
上記破壊なしでの上記コントラスト剤の通過を示すボーラス関数と、上記コントラスト剤の実質的に一定の流入に対応する破壊に続く、上記身体部分における上記コントラスト剤の灌流を示す再灌流関数との積を含むモデル関数に上記エコーパワー信号を関連づけるステップと
上記ボーラス関数および/または再灌流関数から少なくとも1つの灌流指標を概算するステップと
をデータ処理システムに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525074(P2008−525074A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547529(P2007−547529)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057065
【国際公開番号】WO2006/067201
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(398063065)ブラッコ・リサーチ・ソシエテ・アノニム (13)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】