説明

ボーリングマシンの発電機構及びそれを用いた計測機構

【課題】 大深度の場合であっても、各種計測機器に電力を継続的に供給する。
【解決手段】本発明に係るボーリングマシンの発電機構1は、ボーリングロッド2内にタービン3を配置するとともに、該タービンに対向するようにボーリングロッド2にコイル4を埋設してある。タービン3は、ロータ21の周縁で環状溝8に案内されながら、ボーリングロッド2の材軸廻りに回転できるようになっている。タービンブレード22は、ボーリングロッド2の中空空間6を流下する泥水の流れを受けて、タービン3全体がボーリングロッド2の回転方向とは逆方向に回転するように、ボーリングロッド2の材軸に対する傾斜角度を調整してある。磁石23は、90゜ごとに計4つがロータ21から放射方向に向けて突設してあるとともに、該磁石に対向するように、同じく90゜ごとに計4つのコイル4が環状溝8の背後においてボーリングロッド2に埋設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として大深度掘削を行うボーリングマシンの発電機構及びそれを用いた計測機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング工事は、地質調査や地下資源探査あるいは土壌汚染調査といったさまざまな目的で行われており、使用されるボーリングマシンも、目的や用途あるいは掘削深度によってさまざまなものが開発されている。
【0003】
最近では、孔曲がりを計測するための傾斜計をはじめ、掘削中にさまざまなデータを計測する計測機器がボーリングロッドの下端近傍に装備されるとともに、計測されたデータを地上に送信するシステムも開発されている。
【0004】
ここで、これらの計測機器を作動させるにあたっては、バッテリーで駆動させるほか、ボーリングロッド内を流れる泥水の流れを利用した発電機器をボーリングロッド内に内蔵する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−150919号公報
【特許文献2】特開平7−294658号公報
【特許文献3】特開平5−094848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バッテリーによる電力供給の場合、充電容量に応じて作動時間が制限されるため、大深度掘削には適さない。
【0007】
また、内蔵された発電機器による電力供給の場合、ロッド径がある程度大きくないと発電機器をボーリングロッド内に装備することは困難であるとともに、コア採取を目的としたボーリングの場合には、コアを随時抜き取るためのコアバーレルのインナーチューブをボーリングロッド内で昇降自在としなければならない関係上、ボーリングロッド内に内蔵することがそもそも難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、大深度の場合であっても、各種計測機器に電力を継続的に供給可能なボーリングマシンの発電機構及びそれを用いた計測機構を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、大深度かつコア削孔の場合であっても、各種計測機器に電力を継続的に供給可能なボーリングマシンの発電機構及びそれを用いた計測機構を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は請求項1に記載したように、ボーリングロッド内の泥水流によって該ボーリングロッドの材軸廻りに回転自在となるように該ボーリングロッド内にタービンを配置するとともに、該タービンに磁石を取り付け、前記ボーリングロッドと前記タービンとの相対回転に伴って前記磁石による誘導電流が励起されるように前記ボーリングロッドにコイルを配置したものである。
【0011】
また、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、前記ボーリングロッドの内面に環状溝を形成して該環状溝の背後に前記コイルを位置決めするとともに、前記タービンを、その周縁が前記環状溝に案内されるように環状に形成したものである。
【0012】
また、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、前記ボーリングロッド内に昇降自在に配置されるコア採取手段のくびれ箇所に前記タービンを取り付けたものである。
【0013】
また、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、前記コア採取手段を本体と該本体から延びる軸部と該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雌部に着脱自在に連結される雄部とで構成するとともに、前記軸部を前記コア採取手段のくびれ箇所としたものである。
【0014】
また、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、前記コア採取手段を本体と該本体から延びる軸部と該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雄部に着脱自在に連結される雌部とで構成するとともに、前記軸部を前記コア採取手段のくびれ箇所としたものである。
【0015】
また、本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、前記ボーリングロッドの少なくとも一部を非磁性材で形成するとともに該非磁性材に前記コイルを埋設したものである。
【0016】
また、本発明に係るボーリングマシンの計測機構は請求項6に記載したように、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のボーリングロッドにAC−DC変換器及び計測機器を配置するとともに、該AC−DC変換器を介して前記コイルを前記計測機器に電気接続したものである。
【0017】
本発明に係るボーリングマシンの発電機構においては、ボーリングロッドの中空空間に泥水を送り込みながら該ボーリングロッドを回転させることで、孔壁を泥水で保護しつつ、ボーリングロッドの先端に取り付けられたビットで地盤を穿孔していくが、ボーリングロッド内を流れる泥水は、その泥水流によってタービンを回転させる。
【0018】
したがって、タービンがボーリングロッドと相対回転するように、すなわち互いに逆方向又は速度差を持った同一方向に回転するよう構成しておくことにより、ボーリングロッド側に配置されたコイルには、タービンに取り付けられた磁石によって誘導電流が励起され、かくして上述のコイルから交流電力を取り出すことが可能となる。
【0019】
また、磁石が取り付けられたタービンをボーリングロッドの中空空間に配置し、該磁石によって誘導電流が励起されるコイルをボーリングロッド側にそれぞれ設けるようにしたので、発電機構全体をボーリングロッドに内蔵する場合に比べ、より小さなロッド径にも適用が可能となる。
【0020】
本発明に係るボーリングマシンの発電機構は、コアを採取しないボーリング、いわゆるノンコア削孔にはもちろん、コアを採取するコアボーリングにも適用が可能である。
【0021】
すなわち、ノンコア削孔の場合においては例えば、ボーリングロッドの内面に環状溝を形成して該環状溝の奥に上述のコイルを位置決めし、タービンを、その周縁が環状溝に案内されるように環状に形成して構成することができる。
【0022】
また、コアボーリングの場合においては例えば、ボーリングロッド内に昇降自在に配置されるコア採取手段のくびれ箇所にタービンを取り付けるようにすればよい。
【0023】
コア採取手段のくびれ箇所は、ボーリングロッドの内面と干渉しないようにタービンを配置することができるのであれば、先端近傍、中央近傍、下端近傍といったコア採取手段の任意位置に設けることが可能である。例えばコア採取手段の本体から上方に延びる軸部をコア採取手段のくびれ箇所とすることができる。なお、コア採取手段にタービンを取り付けるようにすれば、コア採取手段を地上に吊り上げたときにタービンを保守点検することができる。
【0024】
本発明でいうボーリングロッドは、いわゆるコアバーレルのアウターチューブを含む概念で用いるものとする。すなわち、コア削孔に用いられるコアバーレルは一般的には、下端にビットが設けられたアウターチューブと、該アウターチューブ内に昇降自在に配置されるインナーチューブと、該インナーチューブを昇降させるためのオーバーショットとで構成してあるとともに、アウターチューブをその上端でボーリングロッドの下端に連結することで該ボーリングロッドと一体化できるようになっており、かかる構成によって、ボーリングロッドに一体化されたアウターチューブが該ボーリングロッドとともに回転し、アウターチューブ下端に設けられたビットで地盤を掘削できるようになっているが、本発明は、コア削孔のみならず、ノンコア削孔にも適用することができる技術思想であるため、技術用語の整合性と理解容易性の観点で、ボーリングロッドに一体化して用いられるアウターチューブもボーリングロッドの一部と考えるとともに、該アウターチューブ内に昇降自在に配置されるインナーチューブは、本発明に係るコア採取手段の概念に包摂されるものとする。
【0025】
コイルは、ボーリングロッドとタービンとが相対回転する際、磁石による誘導電流が励起されるようにボーリングロッドに配置すればよいが、ボーリングロッドの少なくとも一部を非磁性材で形成するとともに該非磁性材にコイルを埋設したならば、コイルにおける誘導電流の励起作用にコイル周辺の磁性材が影響を及ぼす懸念がなくなる。
【0026】
上述したように、コイルからは交流電力が出力されるが、ボーリングロッドにAC−DC変換器及び計測機器を埋設するとともに、該AC−DC変換器を介してコイルを計測機器に電気接続したならば、バッテリーを用いた場合のように、時間制限を懸念することなく計測を続けることが可能となり、大深度掘削に最適な計測機構となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るボーリングマシンの発電機構1を示した略図であり、(a)はボーリングロッドの材軸を含む縦断面図、(b)は該材軸に直交するA−A線に沿った横断面図。
【図2】タービン3を示した部分斜視図。
【図3】ボーリングマシンの発電機構1を用いた計測機構31の縦断面図。
【図4】同じくブロック図。
【図5】第2実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51を示した略図であり、(a)はボーリングロッドの材軸を含む縦断面図、(b)は該材軸に直交するB−B線に沿った横断面図。
【図6】ボーリングマシンの発電機構51を用いた計測機構81のブロック図。
【図7】変形例に係るボーリングマシンの発電機構を示した略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るボーリングマシンの発電機構及びそれを用いた計測機構の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構を、ボーリングロッドの材軸を含む縦断面と該材軸に直交する横断面で示した略図である。これらの図に示すように、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構1は、ボーリングロッド2内にタービン3を配置するとともに、該タービンに対向するようにボーリングロッド2にコイル4を埋設してある。
【0030】
ボーリングロッド2は、中空空間6を有する円形鋼管で構成してあり、その上端で地上に設置されたボーリング機械(図示せず)に回転自在に保持されているとともに、その下端にはボーリングビット(図示せず)を取り付けてあり、ボーリング機械からの回転駆動力をボーリングビットに伝達させることにより、地盤を鉛直下方に穿孔できるようになっている。
【0031】
また、ボーリングロッド2は、地上に設置された圧送ポンプ(図示せず)からの泥水を中空空間6を介して鉛直下方に送り込むことができるようになっている。ここで、ボーリングロッド2の中空空間6を流下した泥水は、ボーリングビットに形成された水溝からボーリングロッド2の外側に流出し、該ボーリングロッドの外周面と孔壁との隙間に流入することによって、掘削孔の孔壁を保護する役割を果たすとともに、地上で回収された後、再びボーリングロッド2内に送り込まれて循環使用される。
【0032】
タービン3は、その一部を斜視図で示した図2でよくわかるように、開放側が放射方向(径方向)を向くように形成されたコの字断面をなす環状のロータ21と、開放側とは反対の側であってロータ21の全体中心方向に向けて突設されたタービンブレード22と、ロータ21の開放側において放射方向に向けて突設された磁石23とからなる。
【0033】
ロータ21は、その周縁がボーリングロッド2の内面に形成された環状溝8に嵌り込むようにその外径寸法を定めてあるとともに、環状溝8の天井面に取り付けられた軸受7aと該軸受に対向する底面位置に取り付けられた軸受7bの間に挟持してあり、かかる構成により、タービン3は、ロータ21の周縁で環状溝8に案内されながら、ボーリングロッド2の材軸廻りに回転できるようになっている。
【0034】
タービンブレード22は、ボーリングロッド2の中空空間6を流下する泥水の流れを受けて、タービン3全体がボーリングロッド2の回転方向(図1(b)では時計廻り)とは逆方向(図1(b)では反時計廻り)に回転するように、ボーリングロッド2の材軸に対する傾斜角度θ(図2参照)を調整してある。
【0035】
磁石23は、90゜ごとに計4つがロータ21から放射方向に向けて突設してあるとともに、該磁石に対向するように、同じく90゜ごとに計4つのコイル4が環状溝8の背後においてボーリングロッド2に埋設してある。
【0036】
ここで、ボーリングロッド2のうち、環状溝8の背後を非磁性材5で形成するとともに、該非磁性材にコイル4を埋設することで、磁石23による磁束がコイル4の周辺で乱されることがないように構成してある。
【0037】
本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構1においては、ボーリングロッド2の中空空間6に泥水を送り込みながら、該ボーリングロッドを回転させることで、孔壁を泥水で保護しつつ、ボーリングロッド2の先端に取り付けられたボーリングビットで地盤を穿孔していくが、タービン3は、ボーリングロッド2内を流れる泥水の流れによって、該ボーリングロッドとは逆方向に回転する。
【0038】
そのため、ボーリングロッド2側に配置されたコイル4には、タービン3を構成するロータ21に取り付けられた磁石23によって誘導電流が励起される。
【0039】
図3は、ボーリングマシンの計測機構31を示した縦断面図、図4はそのブロック図である。
【0040】
これらの図でわかるように、計測機構31は、ボーリングマシンの発電機構1と、ボーリングロッド2に埋設されたAC−DC変換器32と、同じくボーリングロッド2に埋設された計測機器である傾斜計33とで構成してあるとともに、傾斜計33は、AC−DC変換器32を介してコイル4に電気接続してあり、ボーリングロッド2に対して相対回転するタービン3の磁石23によってコイル4に励起された誘導電流を該コイルから交流電力として取り出し、これをAC−DC変換器32で直流に変換した後、傾斜計33に電力供給できるようになっている。
【0041】
AC−DC変換器32は、例えばスイッチング電源で構成することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構1及びそれを用いた計測機構31によれば、ボーリングロッド2の中空空間6を流れる泥水によってタービン3が回転し、該タービンに取り付けられた磁石23によってボーリングロッド2側に配置されたコイル4に誘導電流が励起されるので、かかるコイル4から交流電力を取り出すことが可能となる。
【0043】
したがって、バッテリーの充電容量に応じた作動時間の制約を受けることなく、傾斜計33による計測を継続的に行うことができるとともに、バッテリー充電のためにボーリングロッド2を引き抜く必要がないので、掘削効率に何ら影響を及ぼさない。
【0044】
そのため、掘削深度が大きいボーリング工事の場合には、きわめて有効な電力供給手段となる。
【0045】
また、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構1によれば、タービン3をボーリングロッド2の中空空間6に配置するとともに、該タービンに取り付けられた磁石23によって誘導電流が励起されるように、コイル4をボーリングロッド2の側に配置するようにしたので、発電機構全体をボーリングロッドに内蔵する場合に比べ、より小さなロッド径にも適用が可能となる。
【0046】
本実施形態では、計測機器を傾斜計33とする例を挙げたが、かかる傾斜計33に代えて、ボーリングロッドの下端近傍に装備される任意の計測機器に適用することが可能である。
【0047】
また、本実施形態では、傾斜計33をボーリングロッド2に埋設するようにしたが、計測機器が例えば薄型であるためにボーリングロッドの内面に取り付けることができるようになっているものであれば、必ずしも計測機器をボーリングロッドに埋設する必要はない。
【0048】
また、本実施形態では、AC−DC変換器及び計測機器を別体で構成した例を説明したが、これに代えて両者が一体に構成されたものを用いるようにしてもかまわない。
【0049】
また、本実施形態では、コイル4周辺の磁性材が磁石23からの磁束に影響を与えることがないように、換言すれば、コイル4における誘導電流の励起作用にコイル周辺の磁性材が影響を及ぼさないように、ボーリングロッド2に非磁性材5で形成された領域を設け、該領域内にコイル4を埋設するようにしたが、上述した影響を懸念する必要がない場合には、非磁性材5を省略し、ボーリングロッドに直接埋設するようにしてもかまわない。
【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るボーリングマシンの発電機構を説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図5は、第2実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51を、ボーリングロッドとしてのアウターチューブ2aの材軸を含む縦断面と該材軸に直交する横断面で示した略図である。これらの図に示すように、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51は、アウターチューブ2a内にタービン53を配置するとともに、該タービンに対向するようにアウターチューブ2aにコイル54を埋設してある。
【0052】
タービン53は、ホイール61と、該ホイールの放射方向に向けて突設されたタービンブレード62と、同じくホイール61の放射方向に向けて突設された磁石63とからなる。
【0053】
ここで、アウターチューブ2aは、該アウターチューブ内に昇降自在に配置されるコア採取手段としてのインナーチューブ71及び該インナーチューブを昇降させるためのオーバーショット(図示せず)とともにコアバーレルを構成する。
【0054】
インナーチューブ71は、本体72、該本体から上方に延びる軸部73及び該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雌部に着脱自在に連結される雄部74とで構成されてなり、上述したホイール61は、タービン53がアウターチューブ2aの材軸廻りに回転自在となるように、くびれ箇所であるインナーチューブ71の軸部73に取り付けてある。
【0055】
軸部73は、雄部74をオーバーショット下端の雌部に連結する操作において、タービン53が干渉しないよう、その長さを適宜定める。
【0056】
タービンブレード62は、タービンブレード22と同様、アウターチューブ2aの中空空間6を流下する泥水の流れを受けて、タービン53全体がアウターチューブ2aの回転方向(図5(b)では時計廻り)とは逆方向(図1(b)では反時計廻り)に回転するように、アウターチューブ2aの材軸に対する傾斜角度を調整してある。
【0057】
磁石63は、90゜ごとに計4つがホイール61から放射方向に向けて突設してあるとともに、該磁石に対向するように、同じく90゜ごとに計4つのコイル54がアウターチューブ2aに埋設してある。
【0058】
ここで、インナーチューブ71は、掘削時においては、図示しない係合機構によってアウターチューブ2aの所定位置に保持されるが、その掘削保持位置においてタービン53と対向する領域のアウターチューブ2aには非磁性材5を設けてあるとともに、該非磁性材にコイル54を埋設することで、磁石63による磁束がコイル54の周辺で乱されることがないように構成してある。
【0059】
本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51においては、アウターチューブ2aの中空空間6に泥水を送り込みながら、該アウターチューブをその上端で連結されたボーリングロッド2とともに回転させることで、孔壁を泥水で保護しつつ、アウターチューブ2aの先端に取り付けられたボーリングビットで地盤を穿孔していくが、タービン53は、アウターチューブ2a内を流れる泥水の流れによって、該アウターチューブとは逆方向に回転する。
【0060】
そのため、アウターチューブ2a側に配置されたコイル54には、タービン53を構成するホイール61に取り付けられた磁石63によって誘導電流が励起される。
【0061】
図6は、ボーリングマシンの計測機構81を示したブロック図である。同図でわかるように、計測機構81は、ボーリングマシンの発電機構51と、アウターチューブ2aに埋設されたAC−DC変換器32と、同じくアウターチューブ2aに埋設された計測機器である傾斜計33とで構成してあるとともに、傾斜計33は、AC−DC変換器32を介してコイル54に電気接続してあり、アウターチューブ2aに対して相対回転するタービン53の磁石63によってコイル54に励起された誘導電流を該コイルから交流電力として取り出し、これをAC−DC変換器32で直流に変換した後、傾斜計33に電力供給できるようになっている。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51及びそれを用いた計測機構81によれば、アウターチューブ2aの中空空間6を流れる泥水によってタービン53が回転し、該タービンに取り付けられた磁石63によってアウターチューブ2a側に配置されたコイル54に誘導電流が励起されるので、かかるコイル54から交流電力を取り出すことが可能となる。
【0063】
したがって、バッテリーの充電容量に応じた作動時間の制約を受けることなく、傾斜計33による計測を継続的に行うことができるとともに、バッテリー充電のためにインナーチューブ71を吊り上げる必要がないので、掘削効率には何ら影響を及ぼさない。
【0064】
そのため、掘削深度が大きいボーリング工事の場合には、きわめて有効な電力供給手段となる。
【0065】
また、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51によれば、タービン53をアウターチューブ2aの中空空間6に配置するとともに、該タービンに取り付けられた磁石63によって誘導電流が励起されるように、コイル54をアウターチューブ2aの側に配置するようにしたので、発電機構の構成要素が分散配置されることとなり、比較的ロッド径が小さな場合にも適用が可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係るボーリングマシンの発電機構51によれば、タービン53のホイール61をインナーチューブ71に取り付けるようにしたので、インナーチューブ71を地上に吊り上げる際、該インナーチューブとともにタービン53を吊り上げることができる。
【0067】
そのため、ボーリング工事の掘削効率に何ら影響を及ぼすことなく、タービン53を保守点検することが可能となる。
【0068】
本実施形態では、計測機器を傾斜計33とする例を挙げたが、かかる傾斜計33に代えて、ボーリングロッドあるいはアウターチューブの下端近傍に装備される任意の計測機器に適用することが可能である。
【0069】
また、本実施形態では、傾斜計33をアウターチューブ2aに埋設するようにしたが、計測機器が例えば薄型であるためにアウターチューブの内面に取り付けることができるようになっているものであれば、必ずしも計測機器をアウターチューブに埋設する必要はない。
【0070】
また、本実施形態では、AC−DC変換器及び計測機器を別体で構成した例を説明したが、これに代えて両者が一体に構成されたものを用いるようにしてもかまわない。
【0071】
また、本実施形態では、コイル54周辺の磁性材が磁石63からの磁束に影響を与えることがないように、換言すれば、コイル54における誘導電流の励起作用にコイル周辺の磁性材が影響を及ぼさないように、アウターチューブ2aに非磁性材5で形成された領域を設け、該領域内にコイル54を埋設するようにしたが、上述した影響を懸念する必要がないのであれば、非磁性材5を省略し、アウターチューブに直接埋設するようにしてもかまわない。
【0072】
また、本実施形態では、インナーチューブ71を、本体72、該本体から上方に延びる軸部73及び該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雌部に着脱自在に連結される雄部74とで構成した場合を説明したが、インナーチューブとオーバーショットとの雄雌構造が上述の実施形態と逆になっていてもかまわない。
【0073】
図7は、変形例に係るボーリングマシンの発電機構を示したものであり、上述の実施形態と同様、アウターチューブ2a内にタービン53を配置するとともに、該タービンに対向するようにアウターチューブ2aにコイル54を埋設してあり、アウターチューブ2aは、該アウターチューブ内に昇降自在に配置されるコア採取手段としてのインナーチューブ91及び該インナーチューブを昇降させるためのオーバーショット(図示せず)とともにコアバーレルを構成するが、本変形例に係るインナーチューブ91は、本体92、該本体から上方に延びる軸部93及び該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雄部に着脱自在に連結される雌部96a,96aとを備えており、タービン53のホイール61は、該タービンがアウターチューブ2aの材軸廻りに回転自在となるように、くびれ箇所であるインナーチューブ91の軸部93に取り付けてある。
【0074】
ここで、雌部96a,96aは、オーバーショットの雄部に係合自在に構成してあり、コア採取中においては、アウターチューブ2aに対してインナーチューブ91が押し込まれることがないよう、ラッチプレート95a,95aの先端がアウターチューブ2aの内周面に形成された係合溝に係止されているが、オーバーショットを用いてインナーチューブ91を吊り上げる際には、該オーバーショットの雄部と雌部96a,96aとの係合動作に連動してラッチプレート95a,95aが閉じ、該ラッチプレートの先端がアウターチューブ2aの内周面に形成された係合溝から外れるようになっている。
【0075】
また、本実施形態では、アウターチューブ、インナーチューブ及びオーバーショットからなるコアバーレルを用いてコア削孔を行う場合を説明したが、コア削孔は、かかる構成のコアバーレルを用いた場合に限定されるものではなく、コア採取手段をボーリングロッド内に昇降自在に配置するすべての場合に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,51 ボーリングマシンの発電機構
2 ボーリングロッド
2a アウターチューブ(ボーリングロッド)
3,53 タービン
4,54 コイル
5 非磁性材
6 ボーリングロッド又はアウターチューブの中空空間
8 環状溝
23,63 磁石
31,81 ボーリングマシンの計測機構
32 AC−DC変換器
33 傾斜計(計測機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッド内の泥水流によって該ボーリングロッドの材軸廻りに回転自在となるように該ボーリングロッド内にタービンを配置するとともに、該タービンに磁石を取り付け、前記ボーリングロッドと前記タービンとの相対回転に伴って前記磁石による誘導電流が励起されるように前記ボーリングロッドにコイルを配置したことを特徴とするボーリングマシンの発電機構。
【請求項2】
前記ボーリングロッドの内面に環状溝を形成して該環状溝の背後に前記コイルを位置決めするとともに、前記タービンを、その周縁が前記環状溝に案内されるように環状に形成した請求項1記載のボーリングマシンの発電機構。
【請求項3】
前記ボーリングロッド内に昇降自在に配置されるコア採取手段のくびれ箇所に前記タービンを取り付けた請求項1記載のボーリングマシンの発電機構。
【請求項4】
前記コア採取手段を本体と該本体から延びる軸部と該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雌部に着脱自在に連結される雄部とで構成するとともに、前記軸部を前記コア採取手段のくびれ箇所とした請求項3記載のボーリングマシンの発電機構。
【請求項5】
前記コア採取手段を本体と該本体から延びる軸部と該軸部の先端に設けられオーバーショットの下端に設けられた雄部に着脱自在に連結される雌部とで構成するとともに、前記軸部を前記コア採取手段のくびれ箇所とした請求項3記載のボーリングマシンの発電機構。
【請求項6】
前記ボーリングロッドの少なくとも一部を非磁性材で形成するとともに該非磁性材に前記コイルを埋設した請求項1記載のボーリングマシンの発電機構。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一記載のボーリングロッドにAC−DC変換器及び計測機器を配置するとともに、該AC−DC変換器を介して前記コイルを前記計測機器に電気接続したことを特徴するボーリングマシンの計測機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62688(P2012−62688A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207785(P2010−207785)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)