説明

ボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法

【課題】複雑なシステムを要することもなく、簡便に掘削工程で用いる掘削水中の生菌数を減少させることができ、微生物汚染が低減されたコアや地下水試料の採取が可能なボーリング孔掘削方法を提供する。
【解決手段】本発明のボーリング孔掘削システム10は、岩盤のコアを採取するボーリングマシン100と、ボーリングマシン100へ前記掘削水を供給する掘削水循環手段400とで構成する掘削システム10であり、掘削水循環手段400には、掘削水の殺菌を行う紫外線殺菌装置600と、掘削水循環経路においてボーリング孔内部への掘削水供給の有無の切替を行う掘削水切替部Rと、を備えている。また、掘削水切替部Rは、ボーリング孔掘削作業の準備段階においては、予め定められた期間、掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるボーリング孔掘削システム10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリングマシンを用いた掘削システムにおいて、微生物汚染の低減化技術を用いた掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下における微生物学的調査に用いる岩芯試料(コア)や地下水試料を採取することを目的とするボーリングマシンを用いた掘削システムが知られている。このような掘削システムでは、タンクに溜められた水を、ボーリングマシンを介して掘削最先端部に放出しつつ、掘削最先端部におけるコアチューブ内にコアを採取するようにしている。掘削作業の間、継続的に新しい掘削水を供給することが困難な場合には、掘削孔から溢れ出る、掘削最先端部で放出した掘削水(湧水を含む場合もあり)は、掘削孔において回収され、さらに土砂が除かれ、再び掘削に利用されるようになっている。
【0003】
微生物学的調査を行うためのコアや地下水試料の採取、特に花崗岩のような亀裂性媒体のコアの採取において、上記のようなボーリングマシンで放水される掘削水については無菌であることが理想である。そこで、コア採取におけるボーリング工程で用いる掘削水を無菌水とする技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2008−8066号公報)には、原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成工程と、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成工程と、前記懸濁気泡水生成工程で生成した前記懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取工程と、前記コア採取工程で採取された前記コアを加工するコア加工工程とを備えるコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程は、第1フィルタにより原水をろ過して第2原水を生成する第2原水生成工程と、前記第2原水生成工程で生成された前記第2原水を、逆浸透膜製の第2フィルタによりろ過して前記無菌水を生成する無菌水生成工程と、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水により、前記第2フィルタを洗浄する洗浄工程とを備えることを特徴とするコア採取加工方法が開示されている。
【特許文献1】特開2008−8066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、原水を処理して無菌水を生成し、さらにこの無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成して、この懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するものであるが、無菌水の生成においては、原水をろ過して第2原水を生成する第1フィルタと、第1フィルタにより生成された第2原水をろ過して無菌水を生成する、逆浸透膜製の第2フィルタと、第2フィルタを無菌水により洗浄する洗浄ラインなどが必要であり、システムが非常に複雑で高価である、という問題があった。
【0006】
発明者らは、地下数100mに設けられた研究用地下坑道から、水平に掘削を行ってコアや地下水試料の採取を試みているが、地下数100mに特許文献1に記載されているようなシステムを持ち込むことは不可能であり、より簡便な微生物汚染の低減化技術を用いたボーリング孔掘削方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような問題点を解決するために、本発明の第1の発明は、岩盤よりコアを採取す
るボーリングマシンと、前記ボーリングマシンへ掘削水を供給する掘削水循環手段とで構成する掘削システムであって、前記掘削水循環手段には、掘削水の殺菌を行う紫外線殺菌装置と、掘削水循環経路においてボーリング孔内部への掘削水供給の有無の切替を行う掘削水切替部と、を備えているボーリング孔掘削システムである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記掘削水切替部は、ボーリング孔掘削作業の準備段階においては、予め定められた期間、前記掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるようにしたボーリング孔掘削システムである。
【0009】
第3の発明は、掘削水循環手段によって掘削水を供給し、岩盤よりコアを採取するボーリング孔掘削システムであって、前記掘削水は、掘削水循環の途中に配設された紫外線殺菌装置によって殺菌を行い、かつ、前記掘削水は、掘削水切替部によってボーリング孔内部への掘削水供給の切替を行うことを特徴とするボーリング孔掘削方法である。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、ボーリング孔掘削作業の準備段階においては、前記掘削水切替部によって、予め定められた期間、前記掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるようにしたボーリング孔掘削方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法においては、掘削システム内を循環させる掘削水は、紫外線殺菌装置を動作させた上で、さらに試錐ポンプと循環ポンプとを動作させてから所定の経過を待って生菌数を減少させるようにしている。このような本発明のボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法によれば、複雑なシステムを要することもなく、簡便に掘削工程で用いる掘削水中の生菌数を減少させることができ、微生物汚染が低減されたコアや地下水試料の採取が可能となる。
【0012】
また、予め定められた期間、掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるようにして、その間に、循環掘削水の紫外線殺菌を行うことによって、準備段階の作業が基準化でき、安定した準備段階の作業が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法で用いる掘削システム10の概要を示す図である。
【図2】紫外線殺菌装置600の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法におけるボーリング孔掘削開始時の準備手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法における掘削水の補給時の準備手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法における作業一時停止後の再開時の準備手順を示すフローチャートである。
【図6】掘削システム10で掘削を行うボーリング孔掘削開始時における準備段階における掘削水の循環を示す図である。
【図7】掘削システム10で掘削を行う掘削水の補給時および作業一時停止後の準備段階における掘削水の循環を示す図である。
【図8】掘削システム10による掘削水中の生菌数の減少効果を説明する図である。
【図9】掘削システム10による紫外線殺菌装置600を通過した周回数に応じた掘削水中の生菌数の減少効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係
るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法で用いる掘削システム10の概要を示す図であり、掘削システム10の平面図である。図1において、100はボーリングマシン、200はボーリングロッド、300は沈殿タンク、400は循環ポンプ、500はサクションタンク、600は紫外線殺菌装置、700は試錐ポンプをそれぞれ示しており、また白抜き矢印は配管(不図示)を通しての掘削水の流れを示すものであり、実線矢印は、掘削孔及び掘削水切替部Rにおける細部の掘削水の流れを示すものである。
【0015】
図1に示す例では、地下数100mに設けられた研究用地下坑道から、ボーリングマシン100により、水平に掘削を行うボーリング孔掘削システムを模式化しているが、本発明に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法は、このような水平方向のボーリングのみならず、鉛直方向のボーリングにも対応することが可能である。
【0016】
ボーリングマシン100は、先端に掘削用ビットおよびコアチューブ(不図示)が配されたボーリングロッド200によって地盤を掘り進めていき、コアチューブ内に地盤のコアの採取を行う構成となっている。また、ボーリングマシン100は、掘削時においてボーリングロッド200を介して掘削孔の最先端部に掘削水を放出するようになっている。このため、ボーリングにより形成された掘削孔の開口部からは、この最先端部に放出された掘削水が溢れ出る。なお、掘削を進めていくと、掘削孔には湧水が発生する場合があるが、この場合、前記開口部からはボーリングマシン100から放出された掘削水に加え、湧水が溢れ出ることとなる。
【0017】
ボーリングマシン100から掘削孔先端部に放出される掘削水は、沈殿タンク300を経由してサクションタンク500に貯水されている。試錐ポンプ700は、サクションタンク500に貯水された掘削水を吸引し、ボーリングマシン100に圧送するものである。
【0018】
このサクションタンク500と、試錐ポンプ700との間には紫外線殺菌装置600が設けられており、この紫外線殺菌装置600により掘削水中の一般細菌やカビなどの微生物の殺菌を行う。図2は紫外線殺菌装置600の概略構成を示す図である。紫外線殺菌装置600における掘削水の流路は、円筒状の第1反応槽610と、円筒状の第2反応槽620と、これらの反応槽との間に設けられた連結部615とから構成されている。第1反応槽610に設けられた給水口601から掘削水が装置内に給水され、第2反応槽620に設けられた出水口621から掘削水が装置外へと出水される。
【0019】
第1反応槽610及び第2反応槽620の双方には、石英ジャケット管630に収納された紫外線ランプ640が長手方向にわたって設けられており、紫外線ランプ640の照射により、第1反応槽610及び第2反応槽620を流れる掘削水中の微生物の殺菌が行われる。
【0020】
給水口601から給水された掘削水は、第1反応槽610を左から右へと流れ、さらに連結部615を経て第2反応槽620に流れ込み、第2反応槽620の右から左へと流れて、出水口621から出水する。そして、第1反応槽610及び第2反応槽620を流れる間に、紫外線ランプ640からの照射を受けて殺菌処理がなされるようになっている。
【0021】
ボーリングにより形成された掘削孔の開口部からは、ボーリングマシン100から放出された掘削水、そして、場合により湧水が溢れ出るが、溢れ出た水は沈殿タンク300に回収され貯溜される。沈殿タンク300で回収される掘削水は泥水であるが、その土砂成分は沈殿タンク300で沈殿するようになっている。
【0022】
沈殿タンク300で貯溜されている掘削水は、循環ポンプ400の動作により、沈殿タ
ンク300からサクションタンク500に供給されるようになっている。サクションタンク500の掘削水は、再び紫外線殺菌装置600を経て、試錐ポンプ700によりボーリングマシン100に圧送されることとなる。
【0023】
以上に説明したように、掘削システム10では、紫外線殺菌装置600を経由して掘削水がシステム内を循環するようになっている。
【0024】
以上のように構成される掘削システム10で、掘削を開始する前の段階で準備(いわゆる準備段階)を行う手順について図3〜5を参照して説明する。準備段階は、ボーリング孔掘削開始時、掘削水の補給時、および作業一時停止後の再開時の3つのパターンに分けられる。図3〜5は本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法におけるそれぞれの準備手順を示すフローチャートである。尚、図3〜5のフローチャートで同一処理内容の場合には、同一ステップ番号を付与して表示している。
【0025】
図3に示すフローチャートは、ボーリング孔掘削開始時における準備段階の手順である。ステップS100で手順が開始されると、ステップS101においては、ボーリングマシン100からの放水が沈殿タンク300に流れるようにセッティングする。このセッティングの様子を図6に示す。図6に示すように、ボーリングロッド200の先端部から放出される掘削水は、直接的に沈殿タンク300に流れ込むようにする。次のステップS102においては、サクションタンク500への注水を開始する。サクションタンク500に注水する水は湧水であってもよいし、水道水であってもよい。続く、ステップS103では、試錐ポンプ700の上流側(サクションタンク500より下流側の配管〜紫外線殺菌装置600〜配管)を掘削水で満たす。ステップS104では、紫外線殺菌装置600をオンとして、掘削水の殺菌準備を行う。ステップS105では、試錐ポンプ700及び循環ポンプ400をオンとして、掘削水の圧送動作、及び、掘削水の循環動作を開始する。ステップS106では、全てのタンク(沈殿タンク300及びサクションタンク500)が満水となったか否かを判定する。ステップ106における判定がYESとなると、ステップS107に進み、サクションタンク500への注水を停止する。ステップS108では、ポンプ動作後所定時間が経過したか否かを判定する。このような判定を行うのは、システム内で循環する全ての掘削水が、少なくとも1回は紫外線殺菌装置600を通過して、減菌されたことを確認するためである。なお、紫外線殺菌装置600の能力(紫外線ランプ640の照度)によっては、システム内で循環する全ての掘削水が、2回以上紫外線殺菌装置600を通過することを確認する場合もあり得る。ステップS109で、準備手順を終了する。
【0026】
図4に示すフローチャートは、掘削水の補給時における準備段階の手順である。ステップS200で手順が開始されると、ステップS201においては、試錐ポンプ700からの掘削水が沈殿タンク300に流れるように経路を切り替える。このセッティングの様子を図7に示す。図7におけるRで囲まれているように、試錐ポンプ700からの掘削水を、例えば三方弁により切替え、直接的に沈殿タンク300に流れるようにする。ここで、前記の試錐ポンプ700から圧送される掘削水を直接的に沈殿タンク300に流し込む方法、いわゆる、図7の掘削水切替部Rについて説明する。本発明においては、ボーリング孔掘削を開始し、殺菌処理された掘削水により掘削を進めていくと、ボーリングマシン100およびボーリングロッド200内部は、その殺菌処理された掘削水の通過により微生物汚染の低減がなされているとみなす。このことから、図示しないが、試錐ポンプ700の下流側に三方弁を設置し、ボーリング掘削中は、掘削水がボーリングマシン100の方へ流れ、作業準備段階には、ボーリングマシン100ではなく沈殿タンク300へ流れるようにすることによって実現できる。三方弁については、一般的に利用されている三方弁を利用し、電気的に三方弁の開閉を制御できる機能を掘削システム10に組み込むこと、あるいは、直接的に三方弁の切り替えスイッチを設けることによって実現できる。次のス
テップS102においては、サクションタンク500への注水を開始する。続く、ステップS104では、紫外線殺菌装置600をオンとして、掘削水の殺菌準備を行う。ステップS105では、試錐ポンプ700及び循環ポンプ400をオンとして、掘削水の圧送動作、及び、掘削水の循環動作を開始する。ステップS106では、全てのタンク(沈殿タンク300及びサクションタンク500)が満水となったか否かを判定する。ステップ106における判定がYESとなると、ステップS107に進み、サクションタンク500への注水を停止する。ステップS108では、ポンプ動作後所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS209で、準備手順を終了する。
【0027】
最後に、作業一時停止後の再開時における準備段階の手順を図5に示す。S300で手順が開始されると、続く、ステップS201においては、試錐ポンプ700からの掘削水が沈殿タンク300に流れるように経路を切り替える。このセッティングは、図4のステップS201と同様である。次のステップS104においては、紫外線殺菌装置600をオンとして、掘削水の殺菌準備を行う。ステップS105では、試錐ポンプ700及び循環ポンプ400をオンとして、掘削水の圧送動作、及び、掘削水の循環動作を開始する。ステップS108では、ポンプ動作後所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS109で、準備手順を終了する。
【0028】
以上のような図3〜図5のステップS109、S209およびS309の終了後におい
ても、紫外線殺菌装置600、及び、試錐ポンプ700との循環ポンプ400の動作は継続させ続けることが好ましい。本発明に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法においては、上記の3つの作業開始パターンに応じて、各ステップが終了した後に、本番の掘削の作業を行うようにする。
【0029】
以上のように、本発明に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法においては、掘削システム10内を循環させる掘削水は、紫外線殺菌装置600を動作させた上で、さらに試錐ポンプ700との循環ポンプ400とを動作させてから所定の経過を待って生菌数を減少させるようにしている。このような本発明のボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法によれば、複雑なシステムを要することもなく、簡便に掘削工程で用いる掘削水中の生菌数を減少させることができ、微生物汚染が低減されたコアや地下水試料の採取が可能となる。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係るボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法で用いた掘削システム10の効果を説明する。図8(A)は水平方向にボーリングを行ったときにおける、掘進長と湧水量との関係を示すグラフである。また、図8(B)は図8(A)と同じボーリング時において、所定の掘進長で、掘削孔開口部から採取した掘削水試料を一般微生物用培地(LB培地)の希釈倍率1倍の培地、及び10分の1の希釈培地で培養した後の生菌数を示すグラフである。生菌数の単位は1mlあたりのコロニー形成単位で示されている。
【0031】
図8(A)における(1)に示すように、約20mabhから約35mabhで湧水量が著しく増加し、(2)に示すように、約35mabh以後の掘進長では湧水量の変化がない。図8(B)における(1)に示すように、湧水量の増加に伴い、生菌数が減少している。
【0032】
図8における測定では、さらに、掘進長が40mabhを越えたところで、紫外線殺菌装置600の動作を開始した。この紫外線殺菌装置600による効果は、図8(B)の(2)において示されるものであり、これによれば紫外線殺菌装置600の動作の開始に伴い、生菌数が減少することがわかる。また、図8(B)の(2)における生菌数の減少は、図8(B)の(1)における生菌数の減少より顕著であることから、湧水量の増加によ
る効果以上に紫外線殺菌装置600の効果があることが確認できる。
【0033】
図9は紫外線殺菌装置600を通過した周回数に応じた掘削水中の生菌数の減少効果を説明する図である。掘削システム10内で循環する掘削水が紫外線殺菌装置600を周回した周回数(推定値)と、生菌数との対応関係を示す図である。図9における生菌数は、掘削孔開口部から採取した掘削水試料を1倍培地、及び希釈培地で培養した後のものである。
【0034】
図9によれば、掘削システム10内で循環する掘削水は、紫外線殺菌装置600を通過する回数が増えれば増えるほど、掘削水中に含まれる生菌数が減少することがわかる。
【0035】
以上、本発明のコア採取方法においては、掘削システム内を循環させる掘削水は、紫外線殺菌装置を動作させた上で、さらに試錐ポンプと循環ポンプとを動作させてから所定の経過を待って生菌数を減少させるようにしている。このような本発明のボーリング孔掘削システム及びボーリング孔掘削方法によれば、複雑なシステムを要することもなく、簡便に掘削工程で用いる掘削水中の生菌数を減少させることができ、微生物汚染が低減されたコアや地下水試料の採取が可能となる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・掘削システム
100・・・ボーリングマシン
200・・・ボーリングロッド
300・・・沈殿タンク
400・・・循環ポンプ
500・・・サクションタンク
600・・・紫外線殺菌装置
601・・・給水口
610・・・第1反応槽
615・・・連結部
620・・・第2反応槽
621・・・出水口
630・・・石英ジャケット管
640・・・紫外線ランプ
700・・・試錐ポンプ
R・・・・・掘削水切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤のコアを採取するボーリングマシンと、前記ボーリングマシンへ掘削水を供給する掘削水循環手段とで構成する掘削システムであって、
前記掘削水循環手段には、掘削水の殺菌を行う紫外線殺菌装置と、掘削水循環経路においてボーリング孔内部への掘削水供給の有無の切替を行う掘削水切替部と、を備えていることを特徴とするボーリング孔掘削システム。
【請求項2】
前記掘削水切替部は、ボーリング孔掘削作業の準備段階においては、予め定められた期間、前記掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のボーリング孔掘削システム。
【請求項3】
掘削水循環手段によって掘削水を供給し、岩盤のコアを採取するボーリング孔掘削システムであって、
前記掘削水は、掘削水循環の途中に配設された紫外線殺菌装置によって殺菌を行い、かつ、前記掘削水は、掘削水切替部によってボーリング孔内部への掘削水供給の切替を行うことを特徴とするボーリング孔掘削方法。
【請求項4】
ボーリング孔掘削作業の準備段階においては、前記掘削水切替部によって、予め定められた期間、前記掘削水をボーリング孔内部へは供給せず、掘削水循環経路へ還流させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のボーリング孔掘削方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−233325(P2012−233325A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101399(P2011−101399)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)