説明

ボールコンベヤベルトおよびボールコンベヤ装置

【課題】フリーボールを大きくし、高密度に配置可能で、重量が大きな物品を載荷しても物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく、円滑な搬送が可能であるとともに、簡単な作業で個々のフリーボールを別々にメンテナンス可能なボールコンベヤベルトを提供すること。
【解決手段】多数のフリーボール120の上端を一部突出して回転自在に支持して走行駆動されるボールコンベヤベルト100であって、フリーボール120を個別に収容するユニット本体111を複数連結してなるボールユニット110の両端部が、平行に配置された駆動チェーン140に連結されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦な底面を備えた箱状、板状等の物品を載荷して搬送するのに適したコンベヤおよびボールコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を載荷して搬送するボールコンベヤベルトとして、フリーボールの上端を一部突出して回転自在に支持し、走行駆動されるボールコンベヤベルトおよびボールコンベヤ装置が公知である。
【0003】
例えば、前方端縁と後方端縁から千鳥状に突出する複数のヒンジ部とを一体成形した多数のチェーンリンクがヒンジピンを介してチェーン長手方向にそれぞれ連結され、フリーボールを上下一対のリテーナに挟み込んで保持してなるボールユニットが、チェーンリンクのヒンジ部間に設けられたユニット装着領域にチェーン長手方向からそれぞれ装着されているボールコンベヤベルトが知られている(特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4173151号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような公知のボールコンベヤベルトは、スプロケットに掛け回されて駆動する際に、チェーンリンク自体が引張方向の強度メンバーとなる必要があるため、ユニット装着領域の大きさに制限があり、フリーボールを大きくしたり、密度を高くすることが困難であるという問題があった。
【0006】
このため、ボールコンベヤベルトの走行速度を高めた場合、フリーボールの回転数が大きくなり、摩耗によってガタつきが生じたり、寿命が短くなるとともに、重量の大きな物品を載置した際、変形により物品に悪影響を与えたり、底面がチェーンリンクと摺動して傷ついたり、搬送に支障が生じたりするという問題があった。
【0007】
また、フリーボールをチェーンリンク自体に直接回転自在に保持するボールコンベヤベルトも従来から周知であり、上記特許文献1に記載の公知のボールコンベヤベルトと比較すると、フリーボールの大きさ、密度の点では有利となる。
【0008】
しかしながら、チェーンリンク自体が引張方向の強度メンバーとなることでフリーボールの大きさ、密度には限界があり、また、個々のフリーボールを別々にメンテナンスするための作業が複雑となるとともに、チェーンリンク自体にも摩耗が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、フリーボールを大きくし、高密度に配置可能で、重量が大きな物品を載荷しても物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく、円滑な搬送が可能であるとともに、簡単な作業で個々のフリーボールを別々にメンテナンス可能なボールコンベヤベルトおよびボールコンベヤ装置を提供することである。
【0010】
本請求項1に係る発明は、多数のフリーボールの上端を一部突出して回転自在に支持して走行駆動されるボールコンベヤベルトであって、前記フリーボールを個別に収容する支持凹部が設けられたユニット本体と、該ユニット本体を複数連結してなるボールユニットを有し、前記ユニット本体が、前記支持凹部の上下に、前記フリーボールの上端を一部突出する上部開口部と、前記フリーボールの下端を一部突出する下部開口部を有するとともに、前記支持凹部と重ならない位置に、前記フリーボールの突出する上下方向と直角の方向に貫通する貫通孔を有し、前記ボールユニットが、前記ユニット本体に設けられた貫通孔に挿通される連結軸によって複数連結して構成され、前記ボールユニットの両端部が、平行に配置された駆動チェーンに連結されてなることにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
本請求項2に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1に記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記ボールユニットの両端部に、前記連結軸によって連結金具が固定され、該連結金具が、前記駆動チェーンのリンクプレートに固定されてなることにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
本請求項3に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項2に記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記駆動チェーンのリンクプレートが、上面にL字状の取付基部を有し、前記連結金具が、前記取付基部の上方から載置されて固定されるように構成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0013】
本請求項4に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記貫通孔が、前記ユニット本体に平行に2箇所設けられ、2箇所の前記貫通孔が、支持凹部を挟んだ両側に位置することにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
本請求項5に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記フリーボールが、前記ユニット本体の支持凹部に複数の副球を介して支持されるように構成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0015】
本請求項6に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記ユニット本体が、前記下部開口部を有する本体基部と、前記上部開口部を有する本体蓋部とを有し、前記フリーボールの下部開口部からの突出量が、前記フリーボールの上部開口部からの突出量より少ないことにより、前記課題を解決したものである。
【0016】
本請求項7に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記ユニット本体が、前記フリーボールの突出する上下方向への投影形状を矩形となるように形成され、前記貫通孔が、前記ユニット本体の矩形の1辺と平行に設けられていることにより、前記課題を解決したものである。
【0017】
本請求項8に係る発明のボールコンベヤベルトは、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のボールコンベヤベルトの構成に加え、前記ユニット本体が、合成樹脂材料で形成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0018】
本請求項9に係る発明のボールコンベヤ装置は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のボールコンベヤベルトと、該ボールコンベヤベルトの駆動チェーンを無端状に掛け回す複数のスプロケットと、該スプロケットのいずれかを駆動する駆動手段とを有するとともに、前記ボールコンベヤベルトが水平に走行する区間に、前記ボールコンベヤベルトのフリーボールの下端と接触して転動させる平面部材を有することにより、前記課題を解決したものである。
【0019】
本請求項10に係る発明のボールコンベヤ装置は、請求項9に記載のボールコンベヤ装置の構成に加え、前記平面部材が、前記ボールコンベヤベルトとは独立して、同一方向あるいは交差する方向に走行駆動可能に構成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0020】
本請求項1に係る発明のボールコンベヤベルトは、多数のフリーボールの上端を一部突出して回転自在に支持して走行駆動されるボールコンベヤベルトであって、フリーボールを個別に収容する支持凹部が設けられたユニット本体と、該ユニット本体を複数連結してなるボールユニットを有し、ユニット本体が、支持凹部の上下に、フリーボールの上端を一部突出する上部開口部と、フリーボールの下端を一部突出する下部開口部を有するとともに、支持凹部と重ならない位置に、フリーボールの突出する上下方向と直角の方向に貫通する貫通孔を有し、ボールユニットがユニット本体に設けられた貫通孔に挿通される連結軸によって複数連結して構成されていることにより、個々のフリーボールをユニット本体ごと別々に取り外して交換、メンテナンス可能となる。
【0021】
また、貫通孔に連結軸を挿入する組立作業のみで複数のユニット本体を高さ方向に揃えることが可能となるため、簡単な作業で複数のユニット本体をフリーボールの上端を同一高さに揃えて配置することができる。
【0022】
さらに、複数のユニット本体を連結したボールユニットの両端部が平行に配置された駆動チェーンに連結されてなることにより、駆動チェーンをスプロケットに掛け回されて駆動する際の引張方向の強度メンバーとすることができるため、ボールユニットの引張方向の強度を大きくする必要がなく、フリーボールを大きくし、高密度に配置することが可能となり、重量が大きな物品を載荷しても物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく、円滑な搬送が可能となる。
【0023】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明が奏する効果に加え、複数のユニット本体を連結したボールユニットの両端部に、連結軸によって連結金具が固定され、該連結金具が、駆動チェーンのリンクプレートに固定されてなることにより、ユニット本体を複数連結したボールユニットごとに分解・組立が可能となり、簡単な作業でメンテナンスが可能となる。
【0024】
本請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明が奏する効果に加え、駆動チェーンのリンクプレートが上面にL字状の取付基部を有し、連結金具が取付基部の上方から載置されて固定されるように構成されていることにより、複数のユニット本体を連結したボールユニットと駆動チェーンの分解・組立作業を上方から簡単に行うことが可能となり、さらに簡単な作業でメンテナンスが可能となる。
【0025】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る発明が奏する効果に加え、貫通孔が、ユニット本体に平行に2箇所設けられ、2箇所の貫通孔が、支持凹部を挟んだ両側に位置することにより、貫通孔に連結軸を挿入する組立作業によってより正確に複数のユニット本体を高さ方向に揃えることができるとともに、荷重や摩耗による位置の変化を減少させることができる。
【0026】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る発明が奏する効果に加え、フリーボールがユニット本体の支持凹部に複数の副球を介して支持されるように構成されていることにより、フリーボールの回転抵抗を小さくすることができるため、重量が大きな物品を載荷しても、フリーボールの回転抵抗が大きくなることがさらに防止され、支持凹部や副球の摩耗や損傷の発生を防止することができる。
【0027】
また、フリーボールの直径を大きく設定してもフリーボールの回転抵抗の増大を抑制することが可能となるため、載荷した物品の端部とフリーボールとの接触時の衝撃を小さくすることができ、円滑に搬送することが可能となる。
【0028】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに係る発明が奏する効果に加え、ユニット本体が、下部開口部を有する本体基部と、上部開口部を有する本体蓋部とを有し、フリーボールの下部開口部からの突出量がフリーボールの上部開口部からの突出量より少ないことにより、下端側でフリーボールを支持凹部によって摺動支持する面積を確保し、上端側でフリーボールと載荷した物品との接触面積を確保することができる。
【0029】
このことで、載荷した物品下面が下方に変形した場合でもフリーボールと確実に接触するとともに、本体蓋部との接触を防止することができ、物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく円滑に搬送することが可能となる。
【0030】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに係る発明が奏する効果に加え、ユニット本体が、フリーボールの突出する上下方向への投影形状を矩形となるように形成され、貫通孔が、ユニット本体の矩形の1辺と平行に設けられていることにより、貫通孔に連結軸を挿入して締め付けるだけで、複数のユニット本体を強固に固定することが可能となり、簡単な作業で複数のユニット本体をフリーボールの上端を同一高さに揃えて配置することができるとともに、荷重や摩耗による位置の変化を減少させることができる。
【0031】
本請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに係る発明が奏する効果に加え、ユニット本体が合成樹脂材料で形成されていることにより、載荷した物品がユニット本体と接触しても、衝撃や摺動抵抗を低減することが可能で、物品に与える損傷を防止することができる。
また、小型軽量化が図れると同時に、形状設計の自由度が向上する。
【0032】
本請求項9に係る発明のボールコンベヤ装置は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のボールコンベヤベルトと、該ボールコンベヤベルトの駆動チェーンを無端状に掛け回す複数のスプロケットと、該スプロケットのいずれかを駆動する駆動手段とを有するとともに、ボールコンベヤベルトが水平に走行する区間に、前記ボールコンベヤベルトのフリーボールの下端と接触して転動させる平面部材を有することにより、重量が大きな物品を載荷した場合でも、支持凹部が全ての重量を受けることがなく、フリーボールの回転抵抗が大きくなることが防止され、支持凹部や副球の摩耗や損傷の発生を防止することができる。
【0033】
本請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明が奏する効果に加え、フリーボールをボールコンベヤベルトの走行と独立して回転駆動することができるため、物品をボールコンベヤベルトの側方に搬送したり、ボールコンベヤベルト上で姿勢を変更したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施例であるボールコンベヤ装置の平面図。
【図2】図1に示すボールコンベヤ装置の側面図。
【図3】本発明の第1実施例であるボールコンベヤベルトの一部分解平面図。
【図4】図3の斜視図。
【図5】図3に示すボールコンベヤベルトのユニット本体の上方からの斜視図。
【図6】図3に示すボールコンベヤベルトのユニット本体の下方からの斜視図。
【図7】図3に示すユニット本体の断面図。
【図8】図3に示すユニット本体の分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、多数のフリーボールの上端を一部突出して回転自在に支持して走行駆動されるボールコンベヤベルトであって、前記フリーボールを個別に収容する支持凹部が設けられたユニット本体と、該ユニット本体を複数連結してなるボールユニットを有し、前記ユニット本体が、前記支持凹部の上下に、前記フリーボールの上端を一部突出する上部開口部と、前記フリーボールの下端を一部突出する下部開口部を有するとともに、前記支持凹部と重ならない位置に、前記フリーボールの突出する上下方向と直角の方向に貫通する貫通孔を有し、前記ボールユニットが、前記ユニット本体に設けられた貫通孔に挿通される連結軸によって複数連結して構成され、前記ボールユニットの両端部が、平行に配置された駆動チェーンに連結され、フリーボールを大きくし、高密度に配置可能で、重量が大きな物品を載荷しても物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく、円滑な搬送が可能であるとともに、簡単な作業で個々のフリーボールを別々にメンテナンス可能なものであれば、その具体的態様は如何なるものであっても構わない。
【0036】
すなわち、本発明のボールコンベヤベルト全体に配置されるフリーボール、ユニット本体、ボールユニットの個数は、いかなる個数であっても良い。
また、フリーボール、ユニット本体および副球は、フリーボールが安定して回転可能に支持されるものであればいかなる材質でも良い。
【0037】
例えば、フリーボールとユニット本体の一方がポリアセタールで形成され、他方がポリアミドまたはポリエステルで形成されることで、自己潤滑性に優れ、しかも、異種材料の接触となるため、同種材料同士のよりも摩擦係数を小さくでき、摺動摩耗を抑制できる。
【0038】
ポリアセタールとしては、ホモポリマー、コポリマーあるいはブロックコポリマーのいずれであっても良く、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66等いずれであっても良く、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等いずれでも良い。
【実施例】
【0039】
本発明の一実施例であるボールコンベヤ装置150は、図1、図2に示すように、ボールコンベヤベルト100の幅方向両側部の駆動チェーン140が、それぞれ幅方向両側部に平行して配置された駆動スプロケット151および従動スプロケット152に掛け回され、上方のボールコンベヤベルト100が水平に走行する区間に物品が載置されるように構成されている。
駆動スプロケット151は、駆動モータ153によって回転駆動される。
【0040】
上方のボールコンベヤベルト100が水平に走行する区間には、ボールコンベヤベルト100のフリーボール120の下端と接触して転動させる平面部材154が設けられており、ボールコンベヤベルト100に載置された物品はフリーボール120の回転力を受けて、ボールコンベヤベルト100の走行速度の倍の速度で搬送される。
【0041】
なお、平面部材154を、例えば走行駆動されるベルトコンベヤとし、ボールコンベヤベルト100の走行と独立して同一方向あるいは異なる方向に駆動可能としたり、回転テーブルとして、水平面内で回転可能に構成し、物品をボールコンベヤベルト100の側方に搬送可能としたり、ボールコンベヤベルト100上で物品の姿勢を変更可能としても良い。
【0042】
本発明の一実施例であるボールコンベヤベルト100は、図3示すように、フリーボール120の上端および下端を一部突出して回転自在に支持した複数のユニット本体111がボールユニット110を構成し、該ボールユニット110が複数設けられてフリーボール120が多列多行に多数配置されるように構成されている。
【0043】
各列の複数のユニット本体111からなるボールユニット110は、2本の連結軸131が貫通して、両端に配された連結金具130の間で固定ナット132によって固定され、両端の連結金具130は、図3、図4に示すように、駆動チェーン140に固定される。
【0044】
駆動チェーン140は、多数のリンクプレート141が内外交互に並行して配置され、その前後を連結ピン142により屈曲可能に連結されてなり、該連結ピン142が前述の駆動スプロケット151および従動スプロケット152と噛み合って駆動力が伝達される。
【0045】
連結ピン142部の構造は、中空ブシュと連結ピンを嵌合させたいわゆるブシュチェーン、あるいは、ブシュまたはピンにローラを外嵌したローラーチェーンの形態であっても良い。
【0046】
該駆動チェーン140の並行して配置される一方側のリンクプレート141の上面には、L字状に形成された取付基部143が設けられており、該取付基部143には連結金具130をネジ等で固定するための取付孔144が設けられている。
【0047】
複数のユニット本体111からなるボールユニット110の両端に固定される連結金具130は、2本の連結軸131が貫通する側面部135と、その上面から外方に延びる上面部133を有している。
連結金具130の上面部133は、駆動チェーン140のリンクプレート141上面の取付基部143に載置され、上面部133に設けられた固定孔134と取付基部143の取付孔144とを貫通するネジ等によって、連結金具130とリンクプレート141上面の取付基部143が固定される。
【0048】
すなわち、複数のユニット本体111からなるボールユニット110が両端の連結金具130とともに2本の連結軸131によって1列ずつに固定され、これらを並べて、それぞれの両端を並行する2本の駆動チェーン140のリンクプレート141上面の取付基部143に載置するように固定することで、ボールコンベヤベルト100が構成される。
【0049】
以上の構成により、個々のフリーボール120を含むユニット本体111を取り外す際に、当該列のボールユニット110のみを駆動チェーン140から外して取り外すことが可能なため、ユニット本体111やフリーボール120、後述する副球121等が損傷や摩耗等により交換する場合でも、不良の発生したユニット本体111を当該ボールユニット110のみ分解して交換することが可能となる。
【0050】
さらに、連結金具130の上面部133がリンクプレート141上面の取付基部143に載置されて固定されているため、ボールユニット110の分解・組立作業をボールコンベヤ装置150に組み込まれた状態で上方から簡単に行うことが可能となり、据付後の現場においても簡単な作業でメンテナンスが可能となる。
【0051】
ユニット本体111は、図5乃至図8に示すように、本体基部112と本体蓋部116からなり、ユニット本体111の支持凹部113には複数の副球121を介して支持されるフリーボール120を有している。
本体蓋部116は、支持凹部113の上部にフリーボール120の上端を一部突出する上部開口部117を有している。
【0052】
本体基部112は、支持凹部113の下部にフリーボール120の下端を一部突出する下部開口部114を有するとともに、支持凹部113と重ならない位置にフリーボール120の突出する上下方向と直角の方向に貫通する貫通孔115を有している。
本体基部112と本体蓋部116は、支持凹部113にフリーボール120と複数の副球121を収容して蓋部固定ネジ118によって固定される。
【0053】
本体蓋部116の上部開口部117は、本体基部112の下部開口部114よりも大きく形成されており、フリーボール120の下部開口部114からの突出量が、フリーボール120の上部開口部117からの突出量より少なくなるように形成されている。
【0054】
このことで、下端側でフリーボール120を支持凹部113によって摺動支持する面積を確保し、上端側でフリーボール120と載荷した物品との接触面積を確保することができ、載荷した物品下面が下方に変形した場合でもフリーボール120と確実に接触し円滑に搬送することが可能となる。
【0055】
なお、複数の副球121は、フリーボール120が円滑に回転できるように、支持凹部113とフリーボール120との隙間で自由に転動可能となるよう適宜の個数が収容されている。
【0056】
本体蓋部116の上部開口部117および本体基部112の下部開口部114は、フリーボール120の突出は許容しつつ、複数の副球121が脱落しないようにそれぞれ縁部119が設けられている。
【0057】
上部開口部117の縁部119とフリーボール120の間隔は、支持凹部113内への異物の混入を抑制するために可能な限り狭くすることが好ましい。
下部開口部114の縁部119とフリーボール120の間隔は、複数の副球121が脱落せず、かつ、支持凹部113内に混入した細かい異物等が排出可能なように適宜設定される。
【0058】
また、複数の副球121は、支持凹部113とフリーボール120との隙間での自由な転動をより円滑とするため、複数の直径のものを混在させても良い。
さらに、支持凹部113が直接フリーボール120を回転可能に摺動支持する形状に構成し、複数の副球121を介在させずに直接接触摺動させても良い。その場合、当然、縁部119を設ける必要はない。
【0059】
本体基部112と本体蓋部116からなるユニット本体111は、図3、図4に示すように、平面視の外形が長方形に形成され、多数のユニット本体111が縦横に並べて配置されるように構成されており、このことで、単位面積あたりのフリーボール120の個数が増大させるように構成されている。
【0060】
ユニット本体111の本体基部112には、図3乃至図8に示すように、その長方形の外形の短辺と平行に延びる2箇所の貫通孔115が、支持凹部113を挟んだ両側に形成されている。
【0061】
貫通孔115は、全てのユニット本体111に同じ位置に設けられており、図3に示すように、複数のユニット本体111の長辺を隣接させ、それぞれの貫通孔115に2本の連結軸131を挿入することによって、高さ方向に揃えることが可能となるため、簡単な作業でフリーボール120の上端を同一高さに揃えることが可能となる。
【0062】
ユニット本体111の短辺の長さを、支持凹部113が形成できる最低限の長さとし、ユニット本体111の長辺の長さも、支持凹部113と貫通孔115が形成できる最低限の長さとすることで、面積当たりのフリーボール120の数を減らすことなく、フリーボール120の直径を大きくすることが可能となる。
【0063】
なお、図示する実施例では、連結金具130をユニット本体111の長辺と同一の長さとして1列ごとに設けているが、ユニット本体111の長辺の整数倍の長さとして、連結金具130に複数の列のユニット本体111を固定するように構成しても良い。
【0064】
また、連結軸131は、全体にネジ山を設けたネジ軸とするか、両端にネジ山を設けて固定ナット132により締め付けても良く、一方の端部に鍔部を設け他方の端部にのみネジ山を設けて固定ナット132により締め付けても良い。
【0065】
また、ボールユニット110のフリーボール120の下部開口部114からの突出量と上部開口部117からの突出量は、載荷する物品の重量、大きさ、材質や、平面部材154の材質、表面状態、駆動速度等の諸条件によっては、上下等しくしたり、上記実施例と逆に下部開口部114からの突出量を大きくしたものであっても良い。
【0066】
また、フリーボール120とユニット本体111の材質についても同様に、載荷する物品の重量、大きさ、材質や、平面部材154の材質、表面状態、駆動速度等の諸条件、また、副球121の有無やその材質によっては、どちらか一方、あるいは両方が、鉄、アルミ等の金属製であっても良い。
【0067】
また、上記実施例では、ボールユニット110のユニット本体111が長方形のものについて説明したが、台形のものを長辺、短辺交互に配置しても良く、略三角形のものとしても良い。
さらに、各角部分に大きなR曲線を有するものでも良く、該曲線部分を多くした長円形、さらには全周囲を曲線とした楕円形、円形等の形状としても良い。
【0068】
以上のように、本発明のボールコンベヤベルトおよびボールコンベヤ装置によれば、フリーボールを大きくし、高密度に配置可能で、重量が大きな物品を載荷しても物品やコンベヤの摩耗や損傷の発生が少なく、円滑な搬送が可能であるとともに、簡単な作業で個々のフリーボールを別々にメンテナンス可能となるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0069】
100 ・・・ボールコンベヤベルト
110 ・・・ボールユニット
111 ・・・ユニット本体
112 ・・・本体基部
113 ・・・支持凹部
114 ・・・下部開口部
115 ・・・貫通孔
116 ・・・本体蓋部
117 ・・・上部開口部
118 ・・・蓋部固定ネジ
119 ・・・縁部
120 ・・・フリーボール
121 ・・・副球
130 ・・・連結金具
131 ・・・連結軸
132 ・・・固定ナット
133 ・・・上面部
134 ・・・固定孔
135 ・・・側面部
140 ・・・駆動チェーン
141 ・・・リンクプレート
142 ・・・ピン
143 ・・・取付基部
144 ・・・取付孔
150 ・・・ボールコンベヤ装置
151 ・・・駆動スプロケット
152 ・・・従動スプロケット
153 ・・・駆動モータ
154 ・・・平面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のフリーボールの上端を一部突出して回転自在に支持して走行駆動されるボールコンベヤベルトであって、
前記フリーボールを個別に収容する支持凹部が設けられたユニット本体と、該ユニット本体を複数連結してなるボールユニットを有し、
前記ユニット本体が、前記支持凹部の上下に、前記フリーボールの上端を一部突出する上部開口部と、前記フリーボールの下端を一部突出する下部開口部を有するとともに、前記支持凹部と重ならない位置に、前記フリーボールの突出する上下方向と直角の方向に貫通する貫通孔を有し、
前記ボールユニットが、前記ユニット本体に設けられた貫通孔に挿通される連結軸によって複数連結して構成され、
前記ボールユニットの両端部が、平行に配置された駆動チェーンに連結されてなることを特徴とするボールコンベヤベルト。
【請求項2】
前記ボールユニットの両端部に、前記連結軸によって連結金具が固定され、
該連結金具が、前記駆動チェーンのリンクプレートに固定されてなることを特徴とする請求項1に記載のボールコンベヤベルト。
【請求項3】
前記駆動チェーンのリンクプレートが、上面にL字状に取付基部を有し、
前記連結金具が、前記取付基部の上方から載置されて固定されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のボールコンベヤベルト。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記ユニット本体に平行に2箇所設けられ、
2箇所の前記貫通孔が、支持凹部を挟んだ両側に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のボールコンベヤベルト。
【請求項5】
前記フリーボールが、前記ユニット本体の支持凹部に複数の副球を介して支持されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のボールコンベヤベルト。
【請求項6】
前記ユニット本体が、前記下部開口部を有する本体基部と、前記上部開口部を有する本体蓋部とを有し、
前記フリーボールの下部開口部からの突出量が、前記フリーボールの上部開口部からの突出量より少ないことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のボールコンベヤベルト。
【請求項7】
前記ユニット本体が、前記フリーボールの突出する上下方向への投影形状を矩形となるように形成され、
前記貫通孔が、前記ユニット本体の矩形の1辺と平行に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のボールコンベヤベルト。
【請求項8】
前記ユニット本体が、合成樹脂材料で形成されていることを特徴と請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のボールコンベヤベルト。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のボールコンベヤベルトと、該ボールコンベヤベルトの駆動チェーンを無端状に掛け回す複数のスプロケットと、該スプロケットのいずれかを駆動する駆動手段とを有するとともに、
前記ボールコンベヤベルトが水平に走行する区間に、前記ボールコンベヤベルトのフリーボールの下端と接触して転動させる平面部材を有することを特徴とするボールコンベヤ装置。
【請求項10】
前記平面部材が、前記ボールコンベヤベルトとは独立して、同一方向あるいは交差する方向に走行駆動可能に構成されていることを特徴とする請求項9に記載のボールコンベヤ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−121693(P2012−121693A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274040(P2010−274040)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】