説明

ボールジョイント、そのベアリングシート及びボールジョイントのベアリングシートの製造方法

【課題】軽量化しつつ応力を効果的に吸収できるボールシートを提供する。
【解決手段】ボールシート18は、ソケットに保持する外面54と、ボール部の外周面と摺接する摺動面53との間に空間部55を密閉状に区画する。ボールシート18の一部が中空状となり、ボールシート18を軽量化できるとともに、空間部55の弾性的な変形によってボール部の摺動時などの応力を効果的に吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持するボールジョイントのベアリングシート、これを備えたボールジョイント及びボールジョイントのベアリングシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いるボールジョイントは、ハウジングであるソケット、このソケットの内部に収容されたベアリングシートであるボールシート、このボールシートの内部に回動(摺動)可能に保持されるボール部を備えたボールスタッドなどを有している。
【0003】
ボールシートは、例えば合成樹脂などにより円筒状に成形されており、外部にソケットの内室に保持される外面が形成されているとともに、内部にボール部の外周面と摺接する球面状の摺動面が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上述のボールシートの場合、ボール部の外周面と摺接する摺動面の耐摩耗性を考慮すると、ボールシートを高剛性の部材により形成せざるを得ず、摺動面に加わる応力をより緩和する構成とすることが容易でない。
【0005】
また、上述のボールシートは中実であるため、特にボールジョイントのボール部の寸法が大きくなると、すなわちボールジョイントが大型化すると、軽量化が容易でないという問題点を有している。また、樹脂成形品は、一般に大きさが大きくなると樹脂の成形収縮が大きくなり、寸法精度が低下する傾向にあるため、特に大型化に対応して軽量化を図るために薄肉部を設けたボールシートの場合、充分な寸法精度を得ることが容易でない。そして、このようなボールシートの寸法精度は、組み付け後のトルクのばらつきに影響を与えるとともに、摺動面に局所的な高面圧部分が生じると潤滑性(摺動性)にも影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−27237号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、ボールシートのより一層の軽量化及び応力の緩和が望まれている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、軽量化しつつ応力を効果的に吸収できるボールジョイントのベアリングシート及びボールジョイントを提供することを第1の目的とし、寸法精度が良好なボールジョイントのベアリングシートを得ることができるボールジョイントのベアリングシートの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートは、ハウジングに収容され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持するボールジョイントのベアリングシートであって、前記ハウジングに保持される外面と、前記ボール部の外周面と摺接する摺動面と、この摺動面と前記外面との間に密閉状に区画された空間部とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載のボールジョイントのベアリングシートは、請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートにおいて、ボールスタッドのボール部からの荷重が他部よりも大きい荷重受け部を具備し、空間部は、前記荷重受け部に対応する位置に配置されているものである。
【0011】
請求項3記載のボールジョイントは、ハウジングと、このハウジングに外面が保持されて収容された請求項1または2記載のベアリングシートと、このベアリングシートの摺動面と外周面が摺接して回動可能に保持されるボール部を備えたボールスタッドとを具備したものである。
【0012】
請求項4記載のボールジョイントのベアリングシートの製造方法は、内部にキャビティを形成する複数の金型を用いる請求項1または2記載のボールジョイントのベアリングシートの製造方法であって、前記キャビティに溶融樹脂を射出する射出工程と、前記ベアリングシートの空間部に対応する位置にガスを注入するガス注入工程と、前記溶融樹脂の注入圧力を維持しつつ前記溶融樹脂を冷却して固化させる冷却工程とを具備したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートによれば、ハウジングに保持される外面と、ボール部の外周面と摺接する摺動面との間に密閉状に空間部を区画することにより、一部が中空状となり、軽量化できるとともに、空間部の弾性的な変形によってボール部の摺動時などの応力を効果的に吸収できる。
【0014】
請求項2記載のボールジョイントのベアリングシートによれば、請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートの効果に加えて、空間部を、ボールスタッドのボール部からの荷重が他部よりも大きい荷重受け部に対応する位置に配置することにより、ボール部からの荷重による応力を、空間部の弾性的な変形によって、より効果的に吸収できる。
【0015】
請求項3記載のボールジョイントによれば、請求項1または2記載のベアリングシートを備えることにより、軽量化及び応力の効果的な吸収が可能なボールジョイントを提供できる。
【0016】
請求項4記載のボールジョイントのベアリングシートの製造方法によれば、金型の内部のキャビティに溶融樹脂を射出し、ベアリングシートの空間部に対応する位置にガスを注入し、溶融樹脂の注入圧力を維持しつつ溶融樹脂を冷却して固化させることにより、ガスの圧力によって金型の型締め力を補助でき、寸法精度が良好なボールジョイントのベアリングシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態のベアリングシートを示す断面図である。
【図2】同上ベアリングシートを備えたボールジョイントを示す断面図である。
【図3】同上ベアリングシートの製造方法を(a)ないし(d)の順に模式的に示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
【0019】
図2において、11はボールジョイントであり、このボールジョイント11は、例えば自動車の懸架装置に用いられるものである。このボールジョイント11は、ハウジングであるソケット16と、ボールスタッド17と、このボールスタッド17の一部を摺動(回動)可能に保持してソケット16に収容されるベアリングシートとしての略円筒状のボールシート18と、ソケット16の外周面からボールスタッド17の外周面に亘って配置されたダストカバー19とを備え、ソケット16側を上側とする、いわゆる倒立型のものである。なお、以下、図1及び図2中の下側を一端側である下側、上側を他端側である上側として説明する。
【0020】
ソケット16は、例えば(冷間)鍛造、あるいは鋳造などにより形成された金属製であり、ボールシート18が嵌着される円筒内周面状の内室21を内部に備え、下端部に内室21に連通する開口部としての下部開口部22が開口形成され、この下部開口部22と反対側、すなわち上端部に内室21に連通する連通開口部としての上部開口部23が開口形成されている。また、このソケット16の外周面には、下端部側にダストカバー19が取り付けられるカバー固定溝25が周方向に沿って設けられている。そして、上部開口部23には、この上部開口部23を閉塞する抜け防止部材としての保持部材であるプラグ26が取り付けられている。
【0021】
このプラグ26は、キャップとも呼ばれ、例えば金属により略円板状である蓋状に形成され、上部開口部23の周縁部に設けられた段差部31に下側の周縁部が嵌合されているとともに、ソケット16の上部開口部23の外周縁部に設けられたかしめ部32により上側の周縁部が下方向に向けて押圧された状態でボールシート18の上端部に当接することで、このボールシート18を介してボールスタッド17のソケット16の内室21からの抜けを防止するものである。
【0022】
一方、ボールスタッド17は、例えば鋼鉄製などであり、球状のボール部41と、このボール部41に連結された軸状のスタッド部42とを一体に備えている。
【0023】
ボール部41は、外周面の一部がボールシート18に摺動(回動)可能に保持されている。すなわち、ボール部41は、ボールシート18とともにソケット16の内室21に収容されている。
【0024】
スタッド部42は、図示しない外部の被接続部材に接続されて荷重が加わる部分であり、ソケット16の下部開口部22から外方(図2中の下方)へと突出している。なお、このスタッド部42は、ボール部41と一体に成形してもよいし、ボール部41と別体で成形した後、ボール部41に溶接などにより一体化してもよい。
【0025】
ボールシート18は、図1及び図2に示すように、例えば耐摩耗性に優れ弾性率が高い合成樹脂製などにより円筒状に形成され、ソケット16の内室21に嵌着保持されて収容されている。このボールシート18の下端部には、開口51が形成されているとともに、上端部には、連通開口52が形成されており、これら開口51及び連通開口52に連通する内部にボール部41の外周面を保持する摺動面53が形成されている。さらに、このボールシート18の摺動面53と外面54との間には、空間部55が区画されている。すなわち、ボールシート18は、空間部55の位置で中空状となっている。
【0026】
ここで、ボールシート18の外面54は、ボールシート18の外周に位置し内室21に密着して保持される円筒面状の外面本体54aと、ボールシート18の上端を構成しプラグ26に密着して保持される外端面54bとを一体に有している。なお、この外面54には、例えばボールシート18をソケット16に対して回り止めするための突起部などを適宜突設してもよい。
【0027】
外端面54bは、外面本体54aの上端から上部開口部23の周縁に亘って連続しており、この上部開口部23の周縁へと、すなわち中心軸に向かう方向へと徐々に上方に傾斜して形成されている。
【0028】
また、開口51は、ボールシート18が内室21に嵌着された状態でソケット16の下部開口部22に連通するものである。換言すれば、この開口51は、ボールスタッド17の一部であるボール部41の一部(下部)とスタッド部42とを外方へと突出させるものである。
【0029】
また、連通開口52は、ボールシート18をソケット16の内室21に収容した状態でこの内室21の天井部(底部)に対向しており、この天井部(底部)との間に、図示しない潤滑剤すなわちグリースを収容する空間であるグリース溜め部57を区画している。
【0030】
また、摺動面53は、ボールシート18の下端すなわち開口51の縁部から、このボールシート18の軸方向の中央部よりも上側の位置に亘って連続する摺動面部53aと、この摺動面部53aの上端に連続する離間部53bと、この離間部53bの上端から連通開口52の縁部へと連続する対向摺動面部53cとを一体に有している。
【0031】
摺動面部53aは、ボールシート18の摺動面53にボール部41を回動可能に保持した状態で、このボール部41の赤道位置Eの上下に亘る部分と摺接する位置となっている。なお、ボール部41の赤道位置Eとは、ボール部41の軸方向に交差(直交)する方向に径寸法が最大になる位置の外周面をいう。また、摺動面部53aは、ボール部41の赤道位置Eに対応する位置よりも上側の部分が上方へと徐々に縮径されるように形成されている。さらに、この摺動面部53aには、複数の溝部59が上下方向に亘って連続して形成されている。これら溝部59は、ボール部41の外周面と摺動面部53aとの間に位置するグリースを保持するとともに、このグリースを摺動面53(摺動面部53a)の軸方向に行き渡らせるためのものであり、ボールシート18(摺動面53)の周方向に互いに離間されて配置されている。
【0032】
また、離間部53bは、ボールシート18の摺動面53にボール部41を回動可能に保持した状態で、ボール部41の外周面に対して離間され、このボール部41の外周面との間にグリースを保持する潤滑剤保持部すなわちグリース保持部61を周方向に連続して区画している。
【0033】
また、対向摺動面部53cは、離間部53bから上方である連通開口52の周縁へと徐々に縮径されるように傾斜状に形成されており、ボールシート18の摺動面53にボール部41を回動可能に保持した状態で、ボール部41の上側の外周面に対向する位置となっている。さらに、この対向摺動面部53cは、ボールシート18の外面54の外端面54bの下方に位置しており、この外端面54bと対向摺動面部53cとの間が、ボール部41に対して軸方向(上下方向)に対向しこのボール部41からの荷重がボールシート18の他部よりも大きい荷重受け部としての傾斜部62となっている。この傾斜部62は、ボールシート18の他部よりも厚肉に形成されており、内部に空間部55が区画されている。したがって、空間部55は、摺動面53の対向摺動面部53cと外面54の外端面54bおよび外面本体54aの上端側との間に位置している。そして、対向摺動面部53cには、ボール部41の外周面を保持する複数の保持部63が径方向に沿って放射リブ状に突設されている。これら保持部63は、ボールシート18(摺動面53)の周方向に互いに離間されている。
【0034】
また、空間部55は、例えばガスインジェクション(ガスアシスト)成形により形成されるもので、内部にガスGが充填されて密閉状となっている。なお、密閉状とは、空間部55が摺動面53及び外面54に対して完全に隔離された、完全な密閉状態だけでなく、空間部55が僅かな孔部などを介して摺動面53あるいは外面54(ボールシート18の外部)に連通していても実質的に密閉されている状態なども含むものとする。さらに、この空間部55は、摺動面53に保持されたボール部41の上側の外周面に対して、対向摺動面部53cを介してボールシート18の軸方向に対向して位置している。また、ガスGは、例えばボールシート18を構成する樹脂材料と反応しない不活性ガスであり、例えば窒素などが用いられる。
【0035】
さらに、ダストカバー19は、ダストシール、あるいはブーツなどとも呼ばれ、ボールスタッド17の揺動に拘らずソケット16の下部開口部22を覆い、ソケット16あるいはボールシート18の内部への水分及び塵埃などの侵入を阻止するものである。このダストカバー19は、例えば合成樹脂により略円筒状に形成され、下端側がボールスタッド17のスタッド部42の外周面に固定され、上端側がソケット16のカバー固定溝25に嵌着され、この上端側の外周面に取り付けられたリング状の固定部材65により締め付け固定されている。
【0036】
次に、上記一実施の形態のボールシート18の製造方法を説明する。
【0037】
ボールシート18の製造の際には、図3(a)に示す対をなす(複数の)金型71,72を用いる。これら金型71,72は、例えば一方が固定型で他方が移動型であって、開閉可能であるとともに、閉じた状態で、互いの間に成形空間であるキャビティ73を区画するものである。また、この金型71,72には、ボールシート18の原料となる溶融樹脂Rを注入するための図示しないノズルと、空間部55に射出するガスGを注入するためのガス注入ノズル75とがそれぞれ設けられている。なお、ガス注入ノズル75は、ボールシート18に設ける空間部55の位置及び個数に応じて任意の位置に任意の個数で設けることができる。
【0038】
そして、図3(b)に示すように、金型71,72を閉じた状態で、ノズルを介して溶融樹脂Rをキャビティ73に射出する(射出工程)。このとき、溶融樹脂Rは、キャビティ73に充填(フルショット)してもよいし、後工程でのガスGの注入量に応じてキャビティ73の容積よりも若干少なく(ショートショット)してもよい。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、溶融樹脂Rが固化する前に、ガス注入ノズル75から高圧のガスGを空間部55に対応する所定の位置、本実施の形態では傾斜部62に対応する位置に注入する(ガス注入工程)。このガスGの注入圧力により、金型71,72の型締め力が補助(アシスト)され、溶融樹脂Rがキャビティ73の内面に押圧される。
【0040】
そして、溶融樹脂Rの注入圧力を維持(保圧)して冷却することにより、溶融樹脂Rが固化し、図3(d)に示すように、密閉状の空間部55を備えたボールシート18が成形される(冷却工程)。この後、金型71,72を開いてボールシート18を取り外す。
【0041】
次に、上記一実施の形態のボールジョイント11の組み立て作業を説明する。
【0042】
完成したボールシート18は、グリースを予め外周面に塗布したボールスタッド17のボール部41を回動可能に保持した状態でソケット16に対して上部開口部23からボールスタッド17とともに、スタッド部42を下側として挿入し、内室21に嵌着する。この状態で、ボールシート18の開口51が下部開口部22と連通してスタッド部42が下部開口部22から下方に突出するとともに、連通開口52が上部開口部23と連通する。
【0043】
次いで、ソケット16の段差部31に対してプラグ26を載置し、ソケット16の上端部を中心側へとかしめ変形させてかしめ部32を形成してプラグ26をソケット16に係止固定することで、ボールシート18をボール部41とともにソケット16に収容保持する。
【0044】
そして、ダストカバー19をボールスタッド17のスタッド部42に対して挿通し、ダストカバー19の上端部をソケット16のカバー固定溝25に嵌着して固定部材65により固定するとともに、ダストカバー19の下端部をスタッド部42の外周に固定することで、ボールジョイント11が完成する。
【0045】
次に、上記一実施の形態のボールジョイント11の作用を説明する。
【0046】
外部と接続されたスタッド部42に荷重が加わると、ボールスタッド17がボール部41を軸として前後あるいは左右方向に回動する。
【0047】
このとき、ボール部41と摺動面53との間に配置されたグリースの作用により、ボール部41が摺動面53において、円滑に回動(摺動)する。
【0048】
また、ボール部41からボールシート18の摺動面53に伝達された応力は、ガスGが充填された空間部55が圧縮される方向に弾性的に変形することによりクッションとなることで、効果的に吸収される。
【0049】
このように、上記一実施の形態によれば、ソケット16に保持される外面54と、ボール部41の外周面と摺接する摺動面53との間に密閉状に空間部55を区画することにより、ボールシート18の一部が中空状となるため、軽量化できるとともに、空間部55の弾性的な変形によってボール部41の摺動時などの応力を効果的に吸収できる。
【0050】
また、空間部55を、ボールスタッド17のボール部41からの荷重が他部よりも大きい(最も大きい)傾斜部62に対応する位置に配置することにより、ボール部41からの荷重による応力を、空間部55の弾性的な変形によって、より効果的に吸収できる。
【0051】
さらに、ボールシート18は、金型71,72の内部のキャビティ73に溶融樹脂Rを射出し、空間部55に対応する位置にガスGを注入し、溶融樹脂Rの注入圧力を維持しつつ溶融樹脂Rを冷却して固化させることにより、すなわちガスインジェクション成形(ガスアシスト成形)により形成することにより、ガスGの圧力によって金型71,72の型締め力を補助できるとともに、ガスGの圧力によって溶融樹脂Rがキャビティ73の内面に押圧されるため、特に、大型のボール部41、すなわち大型のボールジョイント11に用いる大型のボールシート18の場合などでも、その寸法(大きさ)に拘らず、金型71,72の設計精度(設計難易度)を必要以上に増加させることなく、摺動面53などを含む全体の寸法精度が良好で安定したボールシート18を安価に得ることができる。したがって、ボールシート18は、組み付け後のボール部41のトルクのばらつきを軽減できるとともに、摺動面53において局所的な面圧の高まりが生じにくく、耐久性(潤滑性)を向上でき、かつ、成形によるボールシート18の内部歪みを緩和でき、クラックの発生を抑制できる。
【0052】
そして、ガスGの注入によって溶融樹脂Rの冷却も補助できるので、成形時の保圧(冷却)時間を短縮でき、より短時間でのボールシート18の成形が可能になる。
【0053】
この結果、軽量化及び応力の効果的な吸収が可能で低コストのボールジョイント11を提供できる。
【0054】
なお、上記一実施の形態において、空間部55は、ボールシート18の摺動面53と外面54との間に密閉状に形成すれば、任意の位置に任意の形状で形成することが可能である。
【0055】
また、ボールスタッド17は、スタッド部42を有しないものでもよい。
【0056】
さらに、ボールジョイント11は、倒立型のものでなくてもよく、また、車両の操舵装置あるいは懸架装置に限らず、任意の接続箇所に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自動車の懸架装置用、あるいは操舵装置用のボールジョイントおよびそのベアリングシートとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
11 ボールジョイント
16 ハウジングであるソケット
17 ボールスタッド
18 ベアリングシートとしてのボールシート
41 ボール部
53 摺動面
54 外面
55 空間部
62 荷重受け部としての傾斜部
71,72 金型
73 キャビティ
G ガス
R 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収容され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持するボールジョイントのベアリングシートであって、
前記ハウジングに保持される外面と、
前記ボール部の外周面と摺接する摺動面と、
この摺動面と前記外面との間に密閉状に区画された空間部と
を具備したことを特徴とするボールジョイントのベアリングシート。
【請求項2】
ボールスタッドのボール部からの荷重が他部よりも大きい荷重受け部を具備し、
空間部は、前記荷重受け部に対応する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントのベアリングシート。
【請求項3】
ハウジングと、
このハウジングに外面が保持されて収容された請求項1または2記載のベアリングシートと、
このベアリングシートの摺動面と外周面が摺接して回動可能に保持されるボール部を備えたボールスタッドと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項4】
内部にキャビティを形成する複数の金型を用いる請求項1または2記載のボールジョイントのベアリングシートの製造方法であって、
前記キャビティに溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記ベアリングシートの空間部に対応する位置にガスを注入するガス注入工程と、
前記溶融樹脂の注入圧力を維持しつつ前記溶融樹脂を冷却して固化させる冷却工程と
を具備したことを特徴とするボールジョイントのベアリングシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189146(P2012−189146A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53327(P2011−53327)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】