説明

ボールタップ装置

【課題】凍結防止のための流動弁の操作力の入力部の位置を自由に設定でき、また流動弁を給水弁の1次側に設けた場合においても軽い操作で容易に開閉操作することのできるボールタップ装置を提供する。
【解決手段】流動水を生ぜしめて凍結防止する流動弁110と、その操作部138とを備えて成るボールタップ装置において、操作部138を、操作力の入力部となる摘みと、長尺のインナケーブル144及びこれを移動案内するアウタケーブル146を有する操作力の伝達部材142とを有する遠隔操作式のものとなすとともに、摘みをねじ送りで進退させるようになしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は便器洗浄用の洗浄タンク内に給水を行うボールタップ装置に関し、詳しくは凍結防止のための機構を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄用の洗浄タンクへの給水装置として、洗浄タンク(以下単にタンクとする)内に給水を行う給水弁と、タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、フロートと給水弁とを連繋し、フロートの下降により給水弁を開弁させてタンク内に給水させ、フロートの上昇により給水弁を閉弁させて給水停止させる連繋アームとを備えたボールタップ装置が広く用いられている。
【0003】
ところで、寒冷地においては配管内や便器のトラップ部の水が凍結を起す問題があり、そこで寒冷地に用いられるボールタップ装置としては、小量で流動水を連続的に生ぜしめて便器に給水する流動弁を備えたものが用いられている。
例えば下記特許文献1に、この種の流動弁を備えたボールタップ装置が開示されている。
【0004】
図11はその具体例を示している。
図11(A)において、300はタンク(洗浄タンク)、302はその内部に設けられたボールタップ、304は給水弁を備えたボールタップ本体で、306はフロート、308は連繋アームである。
309はオーバーフロー管で、310はフロート弁から成る排水弁、312はタンク300内部の洗浄水を排水弁310の下流側に導くホース、314はホース312の上端部に水没状態に設けられた流動弁で、316はその操作部である。
ここで流動弁314は、オーバーフロー管309に取り付けられたアーム318にて保持されている。
【0005】
図11(B)は流動弁314の構成を示しており、図中322は流動弁314のボデー324に形成された流動水路で、この流動水路322は、タンク300に貯えられている洗浄水内で開口している。
326はこの流動水路322を開閉する弁体で、洗浄水の水圧を図中下向きの開弁方向に向ける向きでボデー324内部に設けられている。
弁体326は、復帰ばね328によって上側の弁座330に向けて閉弁方向に付勢されている。
【0006】
流動弁314は、弁体326が洗浄水の水圧を受けながら図中下向き、即ち流動水路322に沿って下流側に移動し、弁座330から離れることで開弁する。
この流動弁314の操作部316は、図11(C)に示しているように押ボタン式の入力部332と、操作力を弁体326に伝達する伝達部材334とを有している。
【0007】
伝達部材334は、インナケーブル(インナ部材)336と、その移動案内をなすアウタケーブル(アウタチューブ)338とを有している。
インナケーブル336は一端側が入力部332の軸部344に連結され、また他端側が図11(B)の弁押棒340に連結されている。
また入力部332は、図11(C)の復帰ばね342にて図中右方向の突出し方向に付勢されている。
【0008】
この図11に示すボールタップ装置では、押ボタン式の入力部を図11(C)中左向きにストローク一杯まで押し込むと、これとともにインナケーブル336が押し出され、そしてその先端に固定された弁押棒340が図11(B)中下向きに押し出される。これにより弁体326が図中下向きに押されて開弁する。
【0009】
このとき流動水路322は開放状態となって、タンク300内部に貯えられている洗浄水が、流動水路322を通じて便器へと連続的に供給される。
尚入力部332は、押込位置でこれを90°回転させると軸部344に設けられたストッパ346が、固定側のストッパ348に軸方向に当接することで戻り防止される。
この状態において弁体326は開弁状態に維持され、流動水路322を開放状態に保つ。
【0010】
一方、入力部332を上記と逆方向に90°回転させると、ストッパ346と348との当接が外れて、入力部332が復帰ばね342の付勢力で原位置まで右方向に突き出される。ここにおいて弁押棒340が弁体326から図中上向きに離間して、弁体326が復帰ばね328の付勢力によって上向きに押し上げられ、弁座330に着座して閉弁し、流動水路322を閉鎖する。
【0011】
この図11に示すものにあっては、弁体326が洗浄水の水圧を開弁方向に受けるものであり、従って弁体326を開弁させるために入力部332に加える操作力は小さな力で済む。
従って操作部316は、入力部332を図11(C)中左方向の軸方向の押込式としておくことでも、容易に弁体326を開弁操作することができる。
【0012】
また弁体326を閉弁させる際には、弁体326は復帰ばね328の付勢力によって自動的に閉弁するため、入力部332に対しては弁体326を閉弁位置まで強制的に引き戻すための力を特に加える必要はない。
入力部332は、弁体326の閉弁時には図11(C)の復帰ばね342の付勢力によって原位置の突出し位置に復帰するが、このときにはインナケーブル336から弁体326に対し閉弁方向に力が加えられることはない。
【0013】
ところでこの図11に示すボールタップ装置では、流動弁314を経由して洗浄水が流れ、タンク300内の洗浄水が減少して水位が所定水位まで下がると、ボールタップ302が給水弁を開いてタンク300内に給水を行い、そしてその給水により洗浄水が満水状態になると、そこで給水弁を閉じて給水停止する。そしてこれを間欠的に繰返し行って、減少したタンク内の洗浄水を補給する。
このため給水弁を開いて多量の水を一挙にタンク300内に給水するごとに大きな給水音が発生し、これが騒音となってしまう問題を生ずる。
【0014】
そこでボールタップの給水弁の1次側から流動水路を分岐して延び出させて、その流動水路に流動弁を設け、流動弁の開弁により1次側の水を連続的に小量でタンク内に給水し、そして給水した水をタンク内のオーバーフロー管を通じて便器に連続的に給水することも行われている。
【0015】
例えば下記特許文献2に、この種給水方式のボールタップ装置が開示されている。
図12はその具体例を示している。
同図において350は、ボールタップにおける給水弁の1次側から分岐して延び出した流動水路322を開閉する流動弁で、ここでは流動弁350がシリンダ弁とされている。
流動弁350は、円筒状の弁ハウジング354と、その内部に回転可能に嵌合された円筒状の弁体352とを有しており、それぞれの筒壁に開口356と358とが形成されている。
【0016】
この流動弁350では、入力部となる旋回アーム360に対して回転方向の操作力を加えると、弁体352が回転運動して開口358を弁ハウジング354の開口356に合致させ、流動水路322を開いて、1次側の水をタンク内に給水する。
【0017】
この特許文献2に開示のボールタップ装置では、給水弁の1次側の水をタンクを経由して便器に連続供給するため、即ちタンク内の洗浄水は便器への給水によって減少しないため、ボールタップの給水弁が間欠的に給水及び給水停止を繰り返すといったことはなく、従ってその際に騒音を発生する問題は生じない。
【0018】
但し図12に示すものにあっては、1次側の給水圧の作用する流動水路322を流動弁350にて開閉するものであるため、その際に、詳しくは1次側の強い給水圧に抗して弁体を開弁させることを特に要しないシリンダ式の弁として給水弁350を構成している。
しかしながらこの図12に示すものでは、操作部における操作力の入力部の位置が必然的に制約されてしまう問題がある。
【0019】
図11に示したボールタップ装置においては、操作部がインナケーブル336とアウタケーブル338とを備えた伝達部材334を有する遠隔操作式のものであるため、入力部332の配置位置を自由に設定することができる利点を有するが、この図12に示すものにおいては入力部となる旋回アーム360の位置が特定の位置に限定されてしまう問題がある。
また図12に示すものは、流動弁350がシリンダ式の弁であるために必然的にボールタップ装置の構造が複雑且つ大型化してしまう問題を有する。
【0020】
以上は凍結防止のための手段として流動弁を備えたボールタップ装置の例であるが、給水弁の背圧室内で水が凍結するのを防止のための水抜機構をボールタップ装置に備えることも行われている。
【0021】
詳しくは、給水弁がダイヤフラム弁体から成る主弁体と、主弁体に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、背圧室に連通したパイロット水路と、パイロット水路の開閉によって主弁体を開閉させるパイロット弁体とを有するものである場合において、弁押棒の前進移動により主弁体を背圧室側に押して、背圧室の水を外部に排出させるとともに主弁体を開弁させる凍結防止用の水抜機構と、その水抜機構の弁押棒を操作する操作部とをボールタップ装置に備えることも行われている。
【0022】
例えば下記特許文献3に、この種のボールタップ装置が開示されている。
この場合において、弁押棒により主弁体を背圧室側に押して、背圧室の水を小孔から成るパイロット水路を通じて押し出し、外部に排出させようにすると、パイロット水路で大きな抵抗が発生するために強い操作力が必要となって、操作が重くなってしまうといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平11−324060号公報
【特許文献2】特開2005−213906号公報
【特許文献3】特開平8−311955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は以上のような事情を背景とし、流動弁を操作するための入力部の位置を自由に設定することができ、また流動水路及びこれを開閉する流動弁を給水弁の1次側に設けた場合においても軽い操作で容易に開閉操作することのできるボールタップ装置を提供することを目的としてなされたものである。
また本発明の他の目的は、パイロット式且つダイヤフラム式の給水弁における背圧室の水を強制排出するとともにダイヤフラム弁体から成る主弁体を強制開弁させる水抜機構を設けた場合において、その操作を軽い操作で容易に行うことができ且つ入力部の配置を自由に設定することのできるボールタップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
而して請求項1のものは、(イ)給水弁と、(ロ)洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、(ハ)該フロートと該給水弁とを連繋し、該フロートの下降により該給水弁を開弁させて該タンク内に給水させ、該フロートの上昇により該給水弁を閉弁させて給水停止させる連繋アームと、(ニ)流動水を生ぜしめて凍結防止する流動弁と、(ホ)該流動弁を操作する操作部と、を備えて成るボールタップ装置において、前記操作部を、操作力の入力部と、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有し、該入力部の軸線方向の進退移動を該インナ部材の移動により前記流動弁の弁体に伝えて、該弁体を該入力部に加えた操作力で強制的に開弁方向及び閉弁方向に移動させる伝達部材とを有する遠隔操作式のものとなすとともに、前記入力部を回転式とし、且つ該入力部の進退機構を該入力部の回転によりねじ送りで該入力部を進退させるねじ式の進退機構となしてあることを特徴とする。
【0026】
請求項2のものは、請求項1において、前記流動弁が、前記給水弁の1次側から分岐し延び出して流動水吐水口に到る流動水路を開閉する弁となしてあり、且つ軸状の弁体を1次側の給水圧に抗して閉弁位置から前記流動水路に沿って上流側に軸方向に押し出して開弁するものとなしてあることを特徴とする。
【0027】
請求項3のものは、(イ)(a)ダイヤフラム弁体から成る主弁体と、(b)該主弁体に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(c)該背圧室に連通したパイロット水路と、(d)該パイロット水路の開閉により前記主弁体を開閉させるパイロット弁体とを備えた給水弁と、(ロ)洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、(ハ)該フロートと該給水弁とを連繋し、該フロートの下降により該給水弁を開弁させて該タンク内に給水させ、該フロートの上昇により該給水弁を閉弁させて給水停止させる連繋アームと、(ニ)弁押棒の前進移動により前記主弁体を前記背圧室側に押し、該背圧室の水を前記パイロット水路を通じて外部に排出させるとともに該主弁体を開弁させる凍結防止用の水抜機構と、(ホ)該水抜機構の前記弁押棒を操作する操作部と、を備えて成るボールタップ装置において、前記操作部を、操作力の入力部と、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有し、該入力部の軸線方向の進退移動を該インナ部材の移動により前記弁押棒に伝えて、該弁押棒を該入力部に加えた操作力で強制的に前進及び後退方向に移動させる伝達部材とを有する遠隔操作式のものとなすとともに、前記入力部を回転式とし、且つ該入力部の進退機構を該入力部の回転によりねじ送りで該入力部を進退させるねじ式の進退機構となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0028】
以上のように請求項1のものは、小量で流動水を生ぜしめて凍結防止する流動弁と、その流動弁を操作する操作部とを備えて成るボールタップ装置において、その操作部を、操作力の入力部と、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及びこれを移動案内するアウタチューブを有し、入力部の軸線方向の進退移動をインナ部材の移動により流動弁の弁体に伝えて、弁体を入力部に加えた操作力で強制的に開弁方向及び閉弁方向の両方向に移動させる伝達部材とを有する遠隔操作式のものとなし、そして入力部を回転式としてその進退機構を、入力部の回転によりねじ送りで入力部を進退させるねじ式の進退機構となしたものである。
【0029】
この請求項1のボールタップ装置にあっては、操作部における入力部の配置位置を自由に設定することができる。
また入力部を回転式とし且つその進退機構をねじ送りで入力部を進退させるねじ式の進退機構となしてあるために、入力部に対して僅かな操作力を加えるだけで、弁体を前進方向と後退方向との両方向とに強い力で移動させることができる。
【0030】
尚入力部に対して伝達部材のインナ部材を一体回転状態に固定しておくと、入力部の回転によってインナ部材に回転力即ちねじり力が働いてしまう。
従ってここでは回転式の入力部と挟持部材とでインナ部材の端部を入力部に対し相対回転可能に挟持しておき、インナ部材の端部を入力部及び挟持部材と一体に軸線方向に移動させるようになす一方、回転方向においては入力部とインナ部材の端部とを切り離して、入力部の回転方向の動きがインナ部材に伝わらないようになしておくのが望ましい。
【0031】
請求項1のものは、流動弁が給水弁の2次側、例えば洗浄タンク内の洗浄水を便器側へと流すものである場合に適用することもできるが、この請求項1のものは、入力部に僅かな操作力を加えるだけで弁体を強い力で強制的に開弁方向と閉弁方向とに移動可能なものであることから、流動弁が給水弁の1次側から分岐して延び出した流動水路を開閉するものである場合に適用して特に有効である。
【0032】
この場合において給水弁は、1次側の給水圧に抗して軸状の弁体を閉弁位置から流動水路に沿ってその上流側に軸方向に押し出して開弁させるものとなしておくことができる(請求項2)。
【0033】
このように軸状の弁体を1次側の給水圧に抗して閉弁位置から流動水路の上流側に軸方向に押し出し開弁させる場合、弁体を開弁させるために強い力が必要であるが、本発明では入力部を回転させることでねじ送りでこれを前進させ弁体を開弁させるものであるため、入力部に対して僅かな操作力を加えるだけで弁体を強い力で容易に閉弁状態から開弁させることができる。
またそのようにすることによって流動弁及びボールタップ装置を簡単な構造でコンパクトに構成することが可能となる。
【0034】
尚本発明ではねじ送りで入力部を原位置に戻すことができるため、特許文献1に開示のもののように入力部を原位置に戻すための復帰ばねは必要とせず、操作部のための所要部品点数を少なくでき、コストを低減することができる。
加えて本発明では入力部を回転操作した分だけ弁体を前進及び後退移動させることができるため、弁体の開弁量を自在に調節することが可能である利点も有する。
【0035】
次に請求項3は、上記操作部をパイロット式且つダイヤフラム式の給水弁の強制開弁用の操作部として適用したもの、詳しくは給水弁がダイヤフラム弁体から成る主弁体と、主弁体に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、背圧室に連通したパイロット水路と、パイロット水路の開閉により主弁体を開閉させるパイロット弁体とを有し、またボールタップ装置が弁押棒の前進移動により主弁体を背圧室側に押し、背圧室の水をパイロット水路を通じて外部に排出させるとともに主弁体を開弁させる凍結防止用の水抜機構と、その水抜機構の弁押棒を操作する操作部とを備えたものである場合において、その水抜機構の操作部に上記の伝達部材を有する遠隔操作式の操作部を適用したものである。
【0036】
このボールタップ装置においては、弁押棒により主弁体を背圧室側に押し、背圧室内の水をパイロット水路を通じて外部に抜き出す際に、小孔から成るパイロット水路による大きな抵抗が働くため、弁押棒を強い力で主弁体に対し押すことが必要となる。
【0037】
ここにおいて本発明では、入力部の回転によりねじ送りでこれを前進させ、伝達部材具体的にはインナ部材を介して弁押棒を押すものであるため、軽い操作で容易に弁押棒にて主弁体を背圧室側に押し、背圧室内の水をパイロット水路を通じて外部に抜き出すことができ、また同時にダイヤフラム弁体から成る主弁体を開弁させることができる。
【0038】
この請求項3においても、入力部を開弁時とは逆方向に回転させることで原位置に復帰させることができ、前進移動した入力部を元の位置に戻すための復帰ばね等の部材は不要であり、所要部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態のボールタップ装置を洗浄タンクの内部構造とともに示した図である。
【図2】同実施形態のボールタップ装置を示した図である。
【図3】同実施形態のボールタップ装置の給水弁と周辺部を示した図である。
【図4】図3の給水弁を閉弁状態と開弁状態とで示した図である。
【図5】同実施形態のボールタップ装置における流動弁を周辺部とともに拡大して示した図である。
【図6】図5の流動弁の操作部の要部を示した図である。
【図7】図5の流動弁と周辺部を図5とは異なる方向から示した図である。
【図8】同実施形態の作用説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態の図である。
【図10】図9の実施形態の作用説明図である。
【図11】従来のボールタップ装置の一例を示した図である。
【図12】図11とは異なる従来のボールタップ装置の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンク(以下単にタンクとする)で樹脂製のアウタタンク12と、その内側の樹脂製のインナタンク14との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク12の上部には、その蓋を兼用した樹脂製の手洗鉢16が設けられており、この手洗鉢16から起立する形態で手洗吐水管18が手洗鉢16に設けられている。
手洗鉢16の底部には排水口20が設けられており、手洗吐水管18から吐水された手洗水が、この排水口20からタンク10内部へと落下する。
【0041】
22は、タンク10内部に配設されたボールタップで、ボールタップ本体24を有しており、そのボールタップ本体24がインナタンク14に取り付けられ、そしてそのボールタップ本体24に対して給水管26が接続されている。
給水管26を通じて供給された水は、ボールタップ22の後述の図2に示す給水弁58の開弁によってタンク10内部に給水され、また給水弁58の閉弁によって給水停止される。
【0042】
ボールタップ22は、タンク10内部の洗浄水の水位に連動して昇降するフロート28と、フロート28と給水弁58とを連繋する連繋アーム30とを有している(フロート28及び連繋アーム30は何れも樹脂製)。
また連繋アーム30は、アーム部32と、その先端から下向きに延びる軸部34とを有しており、その軸部34に対してフロート28が組み付けられている。
【0043】
タンク10の壁部には、洗浄ハンドル36が回転可能に設けられている。
38は、タンク10内部において洗浄ハンドル36に連動して回動する、L字状をなす作用レバーで、その先端が鎖40を介して図示を省略する排水弁に連結されている。
その排水弁は、洗浄ハンドル36の回転操作によって閉弁状態から開弁させられ、これによりタンク10内部に貯えられている洗浄水が、タンク10底部の排出口から便器に向けて勢い良く排出せしめられる。
【0044】
図2において、44はボールタップ本体24の本体ボデーで全体として筒状をなしている。
この本体ボデー44の図2中左端部には図1の給水管26が接続され、また右端部には、本体ボデー44とは別体をなし且つボールタップ本体24の一部を成す筒状のソケット状の分岐管46の左端部が外嵌状態に接続されている。
更にこの分岐管46の図中右端部には、補給水管48が接続されている。
補給水管48は便器に補給水を供給するためのもので、図1に示しているようにその先端側がアダプタを介して洗浄タンク10内部のオーバーフロー管42に組み付けられ、補給水管48からの補給水がオーバーフロー管42内に流入するようになっている。
この実施形態において、補給水管48はゴムチューブから成っている。
【0045】
分岐管46には、本体ボデー44からの水を洗浄タンク、具体的にはインナタンク14内に吐水する筒状のタンク内吐水口50と、図1の手洗吐水管18に向けて供給するための筒状の手洗用給水口52とが斜め下向きに一体に設けられている。
この実施形態では、手洗用給水口52に対して、本体ボデー44からの水を図1に示す手洗吐水管18に導くための導水管54の一端側が接続されている。
ここで導水管54は蛇腹管から成っており、その先端側が手洗吐水管18に接続されている。
【0046】
図2に示しているように、ボールタップ本体24には水路56を連通及び連通遮断する給水弁58が設けられている。この給水弁58は、フロート28の昇降に伴って連繋アーム30が軸60周りに回動することで開弁及び閉弁せしめられる。
具体的には、フロート28の上昇により連繋アーム30が軸60周りに反時計回りに回動することで、給水弁58が閉弁せしめられ、またフロート28の下降に伴って連繋アーム30が軸60周りに図中時計回りに回動運動することで、給水弁58が開弁せしめられる。
【0047】
而して給水弁58が開弁すると水路56が連通状態即ち開放状態となって、給水管26からの水が本体ボデー44から分岐管46へと流れ込み、そしてその分岐管46のタンク内吐水口50からタンク10内に向けて吐水され、また手洗用給水口52を通じて手洗吐水管18に給水される。
また分岐管46に流れ込んだ水が、更に補給水管48を通じてオーバーフロー管42から便器へと流れ込み、便器に対して補給水が供給される。
【0048】
本実施形態において、給水弁58はダイヤフラム式且つパイロット式の弁とされている。
図3にその構成が具体的に示してある。
図3において、62は給水弁58における主弁体でダイヤフラム弁体から成っている。
この主弁体62は、ゴム等の弾性材から成るダイヤフラム膜66と、これよりも硬質の(ここでは樹脂製)ダイヤフラムホルダ68とから成っている。
【0049】
ダイヤフラム膜66は外周部70が厚肉とされており、この外周部70が、本体ボデー44とカップ状をなすダイヤフラム押え72とによって上下に挟持されている。そしてそれらによる挟持によってダイヤフラム膜66の外周部70が、本体ボデー44に固定されている。
ここでダイヤフラム膜66の外周部70は同時にシール部としての働き、即ち水路56と外部とを水密に遮断し、シールする働きをなしている。
【0050】
このカップ状をなすダイヤフラム押え72は、本体ボデー44に一体に構成された円筒部74に対して、図中下側から上向きに内嵌状態に嵌入せしめられ、そして円筒部74の外周面の雄ねじ76に対して、固定ナット80の内周面の雌ねじ78が螺合されることによって、ダイヤフラム押え72が円筒部74に即ち本体ボデー44に固定されている。
【0051】
即ちこの実施形態では、固定ナット80を図中上向きにねじ込むことで、円筒部74に内嵌状態に嵌入されたダイヤフラム押え72が上向きに押し上げられて、かかるダイヤフラム押え72が本体ボデー44と協働してダイヤフラム膜66の外周部70を所定の締代で弾性圧縮状態に締め付ける構造となっている。
【0052】
カップ状をなすダイヤフラム押え72は、背圧室形成部材としての働きも有しており、ダイヤフラム弁体から成る主弁体62の図中下側の背後に背圧室82を形成している。
この背圧室82は内部の圧力を主弁体62に対して図中上向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0053】
一方、主弁体62には中心から偏心した位置において、水路56における1次側と背圧室82とを連通させる貫通の導入小孔84が設けられている。
この導入小孔84は、水路56における1次側の水を背圧室82に流入させて背圧室82の圧力を増大させる働きをなす。
【0054】
一方、ダイヤフラム押え72にはその中心部にこれを貫通する水抜水路としてのパイロット水路86が設けられている。
このパイロット水路86は、背圧室82内の水を抜いて背圧室82の圧力を減少させる働きをなす。
【0055】
上記連繋アーム30のアーム部32の基端部にはパイロット弁体88が設けられ、このパイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座することでパイロット水路86が閉鎖される。
【0056】
この実施形態において、給水弁58は次のように作用する。
即ち、図4(A)に示すように給水弁58が閉弁状態の下で、図2のフロート28の下降により連繋アーム30が軸60周りに回動してパイロット弁体88がパイロット弁座92から図中下向きに離間し開弁すると、図3の背圧室82内の水がパイロット水路86を通じて流出し、背圧室82の圧力が減少する。
すると水路56における1次側の圧力が背圧室82の圧力に打ち勝つに到って、主弁体62が図3(A)及び図4(A)に示す状態から下向きに離間し開弁する。
【0057】
そして主弁体62が開弁することで水路56が連通状態となり、本体ボデー44から図2の分岐管46及び補給水管48に向けて水が流れ込む。
ここにおいてタンク内吐水口50,手洗用給水口52から水が吐水され、更に補給水管48を通じてオーバーフロー管42から便器内に補給水が供給される。
【0058】
一方、フロート28の上昇に連動して連繋アーム30が図2の軸60周りに反時計回りに回動運動すると、フロート28が上昇端に到ったところで、即ちタンク内の水が設定した満水状態になったところでパイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座して閉弁し、ここにおいて背圧室82からの水の流出が停止する。
【0059】
すると導入小孔84を通じての背圧室82への水の流入により背圧室82の圧力が上昇し、そしてその圧力上昇によってダイヤフラム弁体から成る主弁体62が主弁座64に上向きに着座し、閉弁する。
ここにおいて水路56の水の流れが停止し、タンク10及び手洗吐水管18への給水が停止する。
【0060】
図3(A)及び図4に示しているように、背圧室82の内部には金属製のコイルばね95が設けられている。
コイルばね95は、その上端を主弁体62に当接させ、またその下端をダイヤフラム押え72の底部に当接させている。
【0061】
コイルばね95の図中下端からは上向きにクリーニングピン97が延び出しており、このクリーニングピン97が、主弁体62における上記の導入小孔84を挿通して上向きに突き出している。
このクリーニングピン97は、主弁体62が図3及び図4中上下に移動する際に導入小孔84内を相対摺動運動して、導入小孔84内に微細なゴミや異物が詰まるのを防止する働きを有している。
この実施形態において、クリーニングピン97はコイルばね95の下端から図中上向きにストレート形状で延びた後、主弁体62の上側で僅かに折り曲げられている。図中98はその折曲部を表している。
【0062】
図5において、110は水路56における給水弁58よりも上流側の1次側から分岐して延び出す流動水路102を開閉する流動弁で、流動水路102を内側に形成するための円筒状の筒壁104の内部に設けられている。尚図7において108はその流動水路102の分岐口を表している。
ここで筒壁104は、上向きに起立する形態でボールタップ本体24、詳しくは本体ボデー44に一体に構成されている。
【0063】
図7において、106は流動水路102の末端の流動水吐水口で、筒壁104の付根よりも所定距離上側位置で、筒壁104を貫通して横向き(径方向外向き)に設けられている。
流動水路102に導かれた1次側の水は、流動弁110の開弁により、この流動水吐水口106から小量で連続してタンク10内に供給される。
供給された流動水はタンク10内のオーバーフロー管42を通じて便器へと連続的に給水される。
【0064】
流動弁110は、円筒状の弁ハウジング112と、軸状の弁体114とを有しており、その弁ハウジング112が筒壁104の内部に嵌合状態に固定されている。
またこの弁ハウジング112の内部に弁体114が軸方向(上下方向)に摺動可能に嵌合されている。
【0065】
ここで弁ハウジング112と筒壁104との間はOリング116にて水密にシールされ、また弁体114と弁ハウジング112との間はOリング118にて水密にシールされている。
尚、弁ハウジング112の下端部の内側には、流動水路102に流入する1次側の水の流れを定流量化する定流量弁120が設けられている。
【0066】
この流動弁110における弁ハウジング112の外面と筒壁104の外面とには、それぞれ係合溝132,134が設けられており、それら係合溝132,134にまたがって平面形状が略U字状をなす固定クリップ136が嵌め込まれている。
弁ハウジング112は、この固定クリップ136により筒壁104に対し軸方向(上下方向)に固定されている。
【0067】
軸状をなす弁体114は下端側に弁部122を、上端側に連結部124を有し、その連結部124に対して後述の操作部138における伝達部材142の先端部、詳しくはインナケーブル144の先端部が連結されている。
図中130は、その下端側の弁部122と上端側の連結部124との間の中間部を表しており、この中間部130は横断面形状が十字状をなしている。
【0068】
下端側の弁部122は、円環状のシール部材(Oリング)126を有している。
弁部122は、このシール部材126を弁ハウジング112の内周側に形成された弁座128に水密に嵌合させることで閉弁する。
また一方、弁体114が図中下向き即ち流動水路102に沿って1次側の給水圧に抗しその上流側に前進移動し、シール部材126が弁座128から下向きに離間することで開弁する。その開弁状態において流動水路102が開放され、水路56における1次側から流動水路102に流入した水(流動水)が上記の流動水吐水口106から外部に吐水される。
【0069】
図5において、138は流動弁110の操作部で、この操作部138は、図6に示しているように操作力の入力部となる回転式の摘み140と、加えられた操作力を流動弁110に、詳しくは弁体114に伝達して、これを図5,図6中上下方向に進退移動させる伝達部材142とを有している。
【0070】
伝達部材142は、可撓性を有し且つ軸方向に非伸縮性のインナケーブル(インナ部材)144と、これを移動案内するアウタケーブル(アウタチューブ)146とを有しており、そのアウタケーブル146内部にインナケーブル144が摺動可能に挿通されている。
【0071】
図6において、148は摘み140を保持する保持筒でフランジ部150を有しており、そのフランジ部150と、保持筒148の先端部の雄ねじ部152に螺合されたナット154とで、リング状の中間部材156を介しタンク12の側壁12Wを内外両側から挟み付ける状態に、タンク12の側壁12Wに固定されている。
この保持筒148は内周面に雌ねじ158を有し、また一方摘み140の外周には雄ねじ160が設けられていて、それらが螺合されている。
摘み140は、回転によりねじ送りで図6中左右方向に前進後退移動せしめられる。
【0072】
上記インナケーブル144の図中左端部には、大径の端部材162が固定されており、この端部材162が摘み140の図中右側の端面に当接せしめられている。
164は、摘み140とともに端部材162を図中左右方向に挟持する挟持部材で筒状をなしており、その左端側には爪166が設けられていて、この爪166が、摘み140に形成された係合孔168に弾性的に係合され、摘み140に一体回転状態に組み付けられている。
【0073】
この状態で、端部材162は摘み140と挟持部材164とでそれら摘み140及び挟持部材164に対し相対回転する状態に挟持された状態となり、摘み140の回転に伴ってかかる摘み140と挟持部材164とが一体に図6中左右方向に進退移動したとき、インナケーブル144が非回転でともに左右方向に進退移動せしめられる。
【0074】
尚アウタケーブル142は、図中左端部が筒状の固定部材170を介して保持筒148に固定状態とされている。
また固定部材170は、図中左端のフランジ部172と止め輪174とで保持筒148の図中右端部を挟持する状態に、保持筒148に固定されている。
【0075】
伝達部材142は、図5に示しているように右端側(先端側)が曲り管176の内部に挿入されており、伝達部材142の先端部が、曲り管176によって図中下向きに保持された状態で組付ナット178により流動弁110に組み付けられている。
【0076】
詳しくは、組付ナット178の雌ねじ部180が、流動弁110における弁ハウジング112の雄ねじ部182にねじ込まれることで、アウタケーブル146の下端を受ける受部材184のフランジ部と、曲り管176のフランジ部とが組付ナット178の内向きのフランジ部186と弁ハウジング112とで上下に挟持され、そしてそのことによって受部材184と曲り管176の下端部とが固定され、併せてアウタケーブル146の下端が弁ハウジング112に固定されている。
またインナケーブル144に固定された端部材188が、流動弁110における弁体114の係合凹部190に係合されることで、インナケーブル144の先端部が弁体114に一体移動状態に固定され、連結されている。
【0077】
この実施形態では、図6の摘み140を回転させて同図中右向きに前進させると、伝達部材142におけるインナケーブル144が右向きに押し出されて、図5の下端部が流動弁110の弁体114を1次側の給水圧に抗してこれを図中下向きに押し出し、開弁させる。
すると水路56における1次側の水が流動水路102に流れ込んで流動水路102を流通し、そして末端の図7に示す流動水吐水口106から外部に吐水される。
【0078】
一方、摘み140を上記とは逆方向に回転させてこれを図6中左向きに後退させると、インナケーブル144が同図において左向きに引き込まれ、弁体114が図5において上向きに後退移動せしめられる。そして弁体114が後退移動することによって、弁部122のシール部材126が弁ハウジング112の弁座128に水密に嵌合した状態となり、ここにおいて弁部122が閉弁する。
但し凍結防止を図る必要があるときには弁体114は開弁状態に維持され、従って水路56における1次側の水は小量で連続的に流動水路102を流れて、流動吐水口106から連続的にタンク10内に吐水される。
【0079】
本実施形態において、上記組付ナット178には、下向きに垂下して上記流動水吐水口106から径方向に離隔した位置で流動水吐水口106に対向し、これを外側から覆う円筒状のカバー壁192が一体に構成されている。
ここでカバー壁192は、流動水吐水口106よりも下側まで延びており、上記筒壁104との間に下向きの開口を形成している。
【0080】
このカバー壁192は次のような働きを有する。
このようなカバー壁192が設けられていないと、流動水吐水口106からの水は横向きに噴き出して、以後放物線を描きながらタンク10内の洗浄水中に落下する。そのときに大きな着水音を発生させてしまう。
【0081】
しかるにこの実施形態ではカバー壁192が流動水吐水口106を径方向に離隔した位置で外側から覆っているため、流動水吐水口106から吐水された水は、図8に示しているようにカバー壁192に当って下向きの流れに変えられるとともに、少なくとも一部が筒壁104の外面側に案内され、筒壁104の外面を伝って下向きに流下して行く。
【0082】
以上のような本実施形態のボールタップ装置にあっては、操作部138の入力部となる摘み140の配置位置を自由に設定することができる。
また摘み140の進退機構をねじ送りで摘み140を進退させるねじ式の進退機構となしてあるために、摘み140に対して僅かな操作力を加えるだけで、弁体114を前進方向と後退方向との両方向とに強い力で移動させることができる。
【0083】
また本実施形態では軸状の弁体114を1次側の給水圧に抗して閉弁位置から軸方向に押し出し開弁させるように給水弁110が構成してあるため、流動弁110及びボールタップ装置を簡単な構造でコンパクトに構成することができる。
【0084】
更に本実施形態では、ねじ送りで入力部(摘み140)を原位置に戻すことができるため、入力部を原位置に戻すための復帰ばねは必要とせず、操作部のための所要部品点数を少なくでき、コストを低減することができる。
加えて本実施形態では摘み140を回転操作した分だけ弁体114を前進及び後退移動させることができるため、弁体114の開弁量を自在に調節できる利点も有する。
【0085】
図9は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態は、凍結防止用として水抜機構200を設けた例である。
ここで水抜機構200は、筒壁104の内部に嵌合状態に固定されたハウジング202と、そのハウジング202の内部に図中上下方向即ち軸方向に摺動可能に嵌合された弁押棒204とを有している。
この実施形態においてハウジング202は上記流動弁110におけるハウジング112と同形状のものである。
【0086】
水抜機構200において、ハウジング202と筒壁104との間はOリング116にて水密にシールされ、また弁押棒204とハウジング202との間はOリング118にて水密にシールされている。
弁押棒204には、上下方向の中間部に環状溝が設けられていてそこにOリング206が保持され、弁押棒204が図中上側の後退端に位置したときに、弁押棒204とハウジング202との間がOリング206にて水密にシールされるようになっている。
【0087】
弁押棒204は、本体ボデー44に形成された孔208を貫通して水路56における2次側に突出せしめられ、主弁体62に対して図中下向きに対向せしめられている。
ここで弁押棒204と主弁体62とは、その中心の軸線が一致せしめられている。
【0088】
210は水抜機構200を操作するための操作部で、その構成については上記流動弁110の操作部138と同一である。
また操作部210における伝達部材142と弁押棒204との連結構造その他の構成については、図5に示したものと同一であり、ここでは対応する部分について同一の符号を示して詳しい説明は省略する。
但しこの実施形態では上記実施形態における流動水路102,流動水吐水口106等は設けられていない。
【0089】
この実施形態では、水路56による1次側に設けた元栓を締めた上で、更に1次側の別の個所に設けた水抜栓を開いて水路56の水を抜いた状態としておく。
またタンク10内の洗浄水は排水弁を開いて排出し、タンク10内部を空の状態としておく。
このときフロート28の下降によるパイロット弁体88の開弁によって、パイロット水路86は開放された状態となる。
【0090】
但しそのようにしても背圧室82内の水は抜けることはできず、背圧室82内には水が充満した状態にある(導入小孔84は微細な孔で、水の表面張力により空気が背圧室82内に入り込めず、背圧室82内の水はそこに留まったままとなる)。
そこで本実施形態では摘み140を回転させて、これを図6中右方向に前進させ、インナケーブル144を介して弁押棒204を図9中下向きに押し、前進移動させる。すると図10に示すように弁押棒204によって給水弁58における主弁体62が背圧室82側に強く押し下げられる。
【0091】
そしてその押下げの圧力によって背圧室82内の水がパイロット水路86を通じて外部に排出される。
このときパイロット水路86で水の排出に対する抵抗が発生するが、弁押棒204は強い力で主弁体62を下向きに押すために、背圧室82内の水は強制的にパイロット水路86から外部に排出される。
これにより、背圧室82内の水が凍結を生じてその際の体積膨張により給水弁58や周辺部が損傷するのが有効に防止される。
【0092】
尚、背圧室82内の水はその全部を外部に抜き出すことは必ずしも必要でなく、背圧室82内に水が多少残っていても支障はない。このときには背圧室82内の水が凍結を生じて体積膨張を起しても給水弁58その他が損傷することはない。
【0093】
また主弁体62の開弁により、ダイヤフラム膜66が凍結により主弁座64に固着するのを防止することができ、更に水路56における1次側と2次側とが連通した状態となることによって、上記の水抜栓で抜け切れなかった1次側の水を2次側を通じてタンク10内に排出させることができる。
【0094】
一方摘み140を上記とは逆方向に回転させると、摘み140のねじ送りによる後退移動によって、弁押棒204が図10中上向きに引き上げられ、主弁体62に対する弁押棒204からの下向きの押圧力が解除される。
【0095】
この実施形態のボールタップ装置においても、摘み140に対する軽い操作で容易に弁押棒204にて主弁体62を背圧室82側に押し、背圧室82内の水を、パイロット水路86の抵抗に抗して外部に抜き出すことができ、同時にダイヤフラム弁体から成る主弁体62を開弁させることができる。
【0096】
また摘み140は開弁時とは逆方向に回転させることで原位置にねじ送りで復帰させることができ、前進移動した摘み140を原位置に戻すための復帰ばね等の部材は不要であり、所要部品点数を少なくすることができる。
【0097】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 洗浄タンク
22 ボールタップ
28 フロート
30 連繋アーム
58 給水弁
62 主弁体
82 背圧室
86 パイロット水路
102 流動水路
106 流動水吐水口
110 流動弁
114 弁体
138,210 操作部
140 摘み
142 伝達部材
144 インナケーブル(インナ部材)
146 アウタケーブル(アウタチューブ)
200 水抜機構
204 弁押棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)給水弁と、(ロ)洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、(ハ)該フロートと該給水弁とを連繋し、該フロートの下降により該給水弁を開弁させて該タンク内に給水させ、該フロートの上昇により該給水弁を閉弁させて給水停止させる連繋アームと、(ニ)流動水を生ぜしめて凍結防止する流動弁と、(ホ)該流動弁を操作する操作部と、を備えて成るボールタップ装置において、
前記操作部を、操作力の入力部と、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有し、該入力部の軸線方向の進退移動を該インナ部材の移動により前記流動弁の弁体に伝えて、該弁体を該入力部に加えた操作力で強制的に開弁方向及び閉弁方向に移動させる伝達部材とを有する遠隔操作式のものとなすとともに、
前記入力部を回転式とし、且つ該入力部の進退機構を該入力部の回転によりねじ送りで該入力部を進退させるねじ式の進退機構となしてあることを特徴とするボールタップ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記流動弁が、前記給水弁の1次側から分岐し延び出して流動水吐水口に到る流動水路を開閉する弁となしてあり、且つ軸状の弁体を1次側の給水圧に抗して閉弁位置から前記流動水路に沿って上流側に軸方向に押し出して開弁するものとなしてあることを特徴とするボールタップ装置。
【請求項3】
(イ)(a)ダイヤフラム弁体から成る主弁体と、(b)該主弁体に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(c)該背圧室に連通したパイロット水路と、(d)該パイロット水路の開閉により前記主弁体を開閉させるパイロット弁体とを備えた給水弁と、(ロ)洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、(ハ)該フロートと該給水弁とを連繋し、該フロートの下降により該給水弁を開弁させて該タンク内に給水させ、該フロートの上昇により該給水弁を閉弁させて給水停止させる連繋アームと、(ニ)弁押棒の前進移動により前記主弁体を前記背圧室側に押し、該背圧室の水を前記パイロット水路を通じて外部に排出させるとともに該主弁体を開弁させる凍結防止用の水抜機構と、(ホ)該水抜機構の前記弁押棒を操作する操作部と、を備えて成るボールタップ装置において、
前記操作部を、操作力の入力部と、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有し、該入力部の軸線方向の進退移動を該インナ部材の移動により前記弁押棒に伝えて、該弁押棒を該入力部に加えた操作力で強制的に前進及び後退方向に移動させる伝達部材とを有する遠隔操作式のものとなすとともに、
前記入力部を回転式とし、且つ該入力部の進退機構を該入力部の回転によりねじ送りで該入力部を進退させるねじ式の進退機構となしてあることを特徴とするボールタップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−184907(P2011−184907A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49967(P2010−49967)
【出願日】平成22年3月6日(2010.3.6)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】