説明

ボールタップ

【課題】便器に向けて補給水を供給するための補給水管の側に回り込む水量が、手洗吐水管の有無によって異なってしまう問題を解決することのできるボールタップを提供する
【解決手段】フロートの昇降により給水弁を開閉して、洗浄タンクへの給水及び給水停止を自動的に行うボールタップにおいて、給水弁の下流部に、手洗水を手洗吐水管に向けて流出させる手洗水の出口部64を設けるとともに、出口部64に、手洗水の流路を全開状態から流路を部分的に塞ぐことによって流路の開度を小に切り替え、流路の抵抗を増大させる絞り弁96を抵抗部材として設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗浄タンクへの給水及び給水停止を自動的に行うボールタップに関し、詳しくは手洗吐水部の有無に対応するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄用の装置として、フロートの昇降により給水弁を開閉して、洗浄タンクへの給水及び給水停止を自動的に行うボールタップが広く用いられている。
例えば下記特許文献1に、この種のボールタップが開示されている。
【0003】
図10はその具体例を示している。
図において、200は洗浄タンク(以下単にタンクとする場合がある)で、アウタタンク202とインナタンク204との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク202の上部には、その蓋を兼用した手洗鉢206が設けられており、この手洗鉢206に手洗吐水管(手洗吐水部)208が、手洗鉢206から起立する形態で設けられている。
手洗鉢206の底部には排水口210が設けられており、手洗吐水管208から吐水された手洗水が、この排水口210からタンク200内部へと落下する。
【0004】
212は、タンク壁に回転可能に設けられた洗浄ハンドルで、この洗浄ハンドル212から、L字状をなすレバーアーム214がタンク10の内方に向って延び出している。
そしてその先端部とタンク底部の排水弁216とが、鎖218にて連結されている。
排水弁216は、洗浄ハンドル212の回転操作により鎖218にて引き上げられ開弁する。
そしてその開弁によって、タンク200底部の排出口が開放され、タンク200内の洗浄水がその排出口から便器に向けて勢い良く放出される。
【0005】
220は、タンク200内部に配設されたボールタップで、給水弁を内蔵したボールタップ本体222を有している。
ボールタップ220はまた、タンク200内の水位に連動して昇降するフロート224と、フロート224及び上記の給水弁を連繋する連繋アーム226とを有しており、フロート224の下降により給水弁を開いてタンク内吐水口228からタンク200内に給水を行い、またフロート224の上昇により給水弁を閉じて給水停止する。
【0006】
ボールタップ220には、給水弁の下流部において、手洗水を手洗吐水管208に向けて流出させる手洗水の出口部230が上向きに設けられており、そこに手洗水を手洗吐水管208に導くための蛇腹管から成る導水管232の一端側が接続されている。
このボールタップ220では、給水弁が開くと下流部のタンク内吐水口228からタンク内に給水が行われるのと併せて、手洗吐水管208に手洗水が供給され、そこから手洗鉢206に向けて手洗水が吐水される。
【0007】
図10に示すタンク200は、手洗吐水管208付きのものであるが、タンクによっては手洗吐水管208を有しないものもある。
手洗吐水管208を有しないものに対しては、手洗水の出口部230が上向きに設けられたボールタップ220では対応することができず、そのため従来にあっては、手洗吐水管208を有しないものに対しては手洗水の出口部230を設けていないボールタップにて対応していた。即ち手洗吐水管208の有無に対して、別々のボールタップを用いて対応していた。
しかしながらこの場合、ボールタップが2種類必要となってしまう。
【0008】
この場合、手洗水の出口部を例えば斜め下向きとして、手洗吐水管208を有しない場合には、手洗水の出口部に導水管を接続しないで出口部をそのまま開放状態とし、タンク内への給水時にその出口部を第2のタンク内吐水口として、そこからタンク内に水を流出させる一方、手洗吐水管を有する場合には導水管をそこに接続して、出口部からの水を手洗吐水管へと導くようにし、以て同じボールタップにて手洗吐水管がある場合と無い場合とに対応できるようにするといったことが考えられる。
【0009】
ところで、手洗水の出口部よりも下流側においてボールタップに補給水管を備えておき、その補給水管を通じて補給水を便器に向けて供給するといったことが従来から行われている。
この補給水は、便器洗浄時に便器内の溜水が排出された後、再び便器内に溜水を一定水位で溜めるために便器に向けて補給されるものであるが、上記のように手洗水の出口部に導水管を接続したり接続しなかったりすることで、手洗吐水管208の有無に対して同じボールタップで対応しようとしたとき、補給水の水量が異なってしまうといった困難な問題が生ずる。
【0010】
手洗水の出口部に導水管を接続して、タンク内給水時に導水管を通じて手洗吐水管に手洗水を送り、そこから手洗水を吐水させるときには、手洗吐水管の吐水口に到る手洗水の流路に発生する大きな抵抗によって(手洗吐水管は手洗水の出口よりも上方にあり、出口部から手洗吐水管の吐水口に水を押し上げて送るには大きな抵抗が生ずる)、補給水管側に回り込む水の比率が大きくなり、便器への補給水量が多くなってしまう。
【0011】
逆にタンクが手洗吐水管を備えておらず、手洗水の出口部に導水管を接続せずに、その出口部から直接タンク内に給水を行う場合には、出口部からの水の流出に対する抵抗が小さくなるために、補給水管の側に回り込む水の比率が小となり、便器に向けての補給水の水量が少なくなってしまう。
而して補給水の水量が少ないときには、便器の中に必要な水が十分に溜まらなくなってしまう。
【0012】
これを防止するためには、常に必要量よりも多めに便器に向けて補給水を流すように設定しておくことが必要となり、この場合、必要量以上に補給水が便器に供給されてしまうことによって、水が無駄に消費されてしまうこととなる。
【0013】
尚、本発明に関連する先行技術として下記特許文献2,特許文献3に開示されたものがある。
但しこれら特許文献に開示のものは、補給水管の側に回り込む水量を安定化するといったことのできないもので、本発明とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−167838号公報
【特許文献2】特開2000−160625号公報
【特許文献3】実開平6−30277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、便器に向けて補給水を供給するための補給水管の側に回り込む水量が、手洗吐水部の有無によって異なってしまう問題を解決することのできるボールタップを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、フロートの昇降により給水弁を開閉して、洗浄タンクへの給水及び給水停止を自動的に行うボールタップにおいて、前記給水弁の下流部に、手洗水を手洗吐水部に向けて流出可能な手洗水の出口部を設けるとともに、該手洗水の出口部に、手洗水の流路の抵抗を増大させる抵抗部材を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記抵抗部材として絞り弁が設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項2において、前記絞り弁は、それぞれ通水用の弁開口を備えた固定弁体と可動弁体とを有していて、該固定弁体に対する該可動弁体の回転により、該固定弁体の前記弁開口と該可動弁体の前記弁開口との重なり面積を大から小へと変化させることで前記流路の抵抗を増大させるものであることを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項3において、前記手洗水の出口部は、上下方向に回転可能な回転部を有していて、該回転部の先端側に手洗水の流出口を有しているとともに、該回転部の一部が前記可動弁体を成していることを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項4において、前記回転部を回転させることによって、前記手洗吐水部に手洗水を流出させる手洗有りと、該手洗吐水部に手洗水を流出させず直接前記タンク内に流出させる手洗無しとに切り替えるものとなしてあり、該手洗無しとしたときには前記重なり面積を小とし、手洗有りとしたときには該重なり面積を大とすることを特徴とする。
【0021】
請求項6のものは、請求項4,5の何れかにおいて、前記回転部がエルボ管から成っていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0022】
以上のように本発明は、ボールタップにおいて、給水弁の下流部に手洗水を手洗吐水部に向けて流出可能な手洗水の出口部を設けるとともに、その出口部に、手洗水の流路の抵抗を増大させる抵抗部材を設けたものである。
【0023】
本発明によれば、手洗吐水部を有しない場合において、手洗水の出口部に導水管を接続しないときには、抵抗部材により手洗水の流路の抵抗を増大させることで、手洗水の出口部に導水管を接続して手洗水を手洗吐水部に導くときと流路の抵抗を同等とすることが可能となる。
その結果として、補給水管の側に回り込む水量を手洗吐水部の有無に拘らず一定の水量とすることが可能となる。
これにより補給水管を通じて便器に供給する補給水の水量を多めに設定することを不要となし得、節水を図ることができる。
【0024】
本発明では、上記の抵抗部材として手洗水の流路の開度を絞る絞り弁を設けておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、容易に、手洗水の流路を開度が大の状態から流路を部分的に塞ぐことで流路の開度を小に切り替えることができる。
【0025】
この場合において、絞り弁は、固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対する可動弁体の回転により、固定弁体の弁開口と可動弁体の弁開口との重なり面積を大から小へと変化させることで、流路の抵抗を増大させるものとなしておくことができる(請求項3)。
この場合には可動弁体を単に回転させるだけで、簡単に流路の抵抗を増大させるようになすことができる。
【0026】
本発明では、上記手洗水の出口部を、上下方向に回転可能な回転部を有するものとなし、そしてその回転部の先端側に手洗水の流出口を備えておくとともに、回転部の一部をもって上記の可動弁体を構成しておくことができる(請求項4)。
この請求項4によれば、手洗吐水部を有していない場合において導水管を手洗水の出口部に接続しないとき、つまり手洗水の出口部を開放ままとしておくときには、回転部を回転させて手洗水の流出口を下方向きとしておくことで、開放ままの手洗水の出口部から流出した水を円滑にタンク内に給水することができる。
【0027】
この場合において、回転部を回転させることによって、手洗吐水部に手洗水を流出させる手洗有りと、手洗吐水部に手洗水を流出させず直接タンク内に流出させる手洗無しとに切り替えるものとなし、そして手洗無しとしたときには上記の重なり面積を小とし、手洗有りとしたときには重なり面積を大とするようになしておくことができる(請求項5)。
このようにすれば、回転部の回転により手洗有りと手洗無しとに切り替えることによって、自動的に流路の抵抗を変えることができ、ボールタップを含む洗浄タンク装置の施工性を良くすることができる。
【0028】
これらの場合において、その回転部はエルボ管にて構成しておくことができる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態のボールタップを洗浄タンクの内部構造とともに示した図である。
【図2】図1におけるボールタップと手洗吐水管との接続部分を示した図である。
【図3】同実施形態のボールタップを示した部分断面図である。
【図4】同実施形態のボールタップにおける手洗水の出口部と周辺部の分解斜視図である。
【図5】同実施形態のボールタップにおける手洗水の出口部の断面図である。
【図6】同実施形態のボールタップにおける絞り弁の動作説明図である。
【図7】同実施形態のボールタップを、手洗吐水管を有しないタンクに適用した場合の説明図である。
【図8】同実施形態のボールタップを、手洗吐水管を有するタンクに適用した場合の説明図である。
【図9】同実施形態のボールタップを、図8とは異なる位置に手洗吐水管を有するタンクに適用した場合の説明図である。
【図10】従来のボールタップを洗浄タンクの内部構造とともに示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンク(以下単にタンクとする場合がある)で、アウタタンク12とインナタンク14との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク12の上部には、その蓋を兼用した手洗鉢16が設けられており、この手洗鉢16に手洗吐水管(手洗吐水部)18が、手洗鉢16から起立する形態で設けられている。
具体的には、図2に示しているように手洗吐水管18は、手洗鉢16の鉢面から上側に露出した上部18Aと、鉢面の下側の下部18Bとを有しており、その下部18Bには外周面に雄ねじ部21が設けられていて、そこにナット23がねじ込まれることで手洗吐水管18が手洗鉢16に取り付けられている。
手洗鉢16の底部には排水口20が設けられており、手洗吐水管18の吐水口19から吐水された手洗水が、この排水口20からタンク10内部へと落下する。
【0031】
22は、タンク壁に回転可能に設けられた洗浄ハンドルで、この洗浄ハンドル22から、L字状をなすレバーアーム24がタンク10の内方に向って延び出している。
そしてその先端部と図示を省略するタンク底部の排水弁とが、玉鎖26にて連結されている。
排水弁は、洗浄ハンドル22の回転操作により玉鎖26にて引き上げられ開弁する。
そしてその開弁によって、タンク10底部の排出口が開放され、タンク10内に貯えられている洗浄水が、その排出口から便器に向けて勢い良く放出される。
【0032】
28は、タンク10内部に配設されたボールタップで、30はボールタップ本体であり、このボールタップ本体30に対して給水管32が接続されている。このボールタップ本体30には給水弁34が備えられている。
このボールタップ28では、給水弁34が開弁すると、給水管32を通じて送られて来た水が給水弁34の下流部のタンク内吐水口36からタンク10内に給水される。
【0033】
ボールタップ28は、タンク10内の洗浄水による浮力によって洗浄水の水位に連動して昇降するフロート40、及びこのフロート40と給水弁34とを連繋する連繋アーム42を有している。
連繋アーム42は、給水弁34から下向きに延びた後略水平方向に延びるアーム部44と、アーム部44の先端部から下向きに立ち下がるねじ軸部46とを有しており、そのねじ軸部46に対して、フロート40が高さ調節可能に取り付けられている。
尚、図1において48はオーバーフロー管である。
【0034】
給水弁34は、図3に示しているように主弁座50と、主弁座50への着座及び離座によって水路51を遮断及び開放する、ダイヤフラム弁から成る主弁52と、主弁52の図中下側に形成され、主弁52に対して図中上向きの閉弁方向の押圧力を作用させる背圧室54と、主弁52を貫通して設けられ、水路51における1次側と背圧室54とを連通させて、1次側の水を背圧室54に導入し、背圧室54の圧力を増大させる導入小孔(図示省略)と、背圧室54に連通し、背圧室54の水を抜いて背圧室54の圧力を減少させるパイロット孔56と、パイロット弁座58とを有している。
【0035】
この給水弁34は次のように動作する。
即ち、フロート40が下降することによって、アーム部44の基端部に設けられたパイロット弁60がパイロット弁座58から離座し、パイロット孔56が開放されると、ここにおいて背圧室54の圧力が減少して、主弁52が1次側の給水圧により主弁座50から図中下向きに離座して開弁し、水路51を開放状態とする。
そして水路51の開放によって、給水管32を通じて送られて来た水が給水弁34を通過して下流側のタンク内吐水口36へと送られ、そこからタンク10内に給水される。
【0036】
一方タンク10内への給水により洗浄水が満水状態になると、フロート40の上昇によりパイロット弁60がパイロット弁座58に着座してパイロット孔56を閉鎖する。
ここにおいて背圧室54の圧力が上昇し、そしてその背圧室54の圧力が水路51における1次側の給水圧に打ち勝つに到って主弁52が閉弁し、水路51を遮断してタンク内吐水口36からの吐水を停止させる。
【0037】
図3に示しているように、ボールタップ28はボールタップ本体30に接続された接続管62を有している。
上記タンク内吐水口36は、この接続管62に設けられている。
この接続管62には、また、図4,図5及び図7(B)に示しているように、手洗水を手洗吐水管18へと流出させる手洗水の出口部64が設けられている。
ここで手洗水の出口部64は給水弁34の下流部に設けられている。この手洗水の出口部64については後に詳しく説明する。
【0038】
66は、便器に向けて補給水を供給するための補給水管で、この補給水管66は、接続管62における上記の出口部64の下流部68と、これに接続されたチューブ70とで構成されている。
ここで下流部68は、先端部が下向きに直角に折れ曲っており、そこに取り付けられた接続部材71を介してチューブ70が下流部68に接続されている。
この補給水管66は、給水弁34の開弁により補給水をオーバーフロー管48へと流し、かかるオーバーフロー管48を通じて補給水を便器へと供給する。
【0039】
上記手洗水の出口部64は、図5に示しているように接続管62の管軸方向と直角方向に突出した固定部72と、回転部となるエルボ管74とを有している。
固定部72は、その全体が雄管部とされており、一方エルボ管74は雌管部76と、これより直角に屈曲した屈曲部78とを有しており、その雌管部76が、雄管部をなす固定部72に対して抜止クリップ80により抜止状態に且つOリング82による水密シール状態で回転可能に嵌合されている。
【0040】
ここで抜止クリップ80は、図4に示しているように基部84と、これから延び出した一対の円弧形状の弾性アーム86とを有している。
この抜止クリップ80は、エルボ管74における雌管部76の開口88(図5参照)を通じて弾性アーム86側からその内部に挿入され、そして一対の弾性アーム86が固定部72側の環状溝90に弾性的に嵌め合されることで、雄管部となる固定部72とエルボ管74の雌管部76とを抜止めする。
【0041】
この実施形態において、エルボ管74は雌管部76が固定部72に対して回転することにより、屈曲部78が上下方向に回転運動する。
この屈曲部78の先端側には、図4に示しているように手洗水の流出口92が備えられている。
ここで屈曲部78の先端部には接続部79が設けられており、そこに蛇腹部106を有する蛇腹管から成る導水管108Aの一端側が接続されるようになっている。
【0042】
この手洗水の出口部64には、手洗水の流路94(図5参照)を部分的に塞ぐことによって流路94の抵抗を増大させる、抵抗部材としての絞り弁96が設けられている。
この実施形態において、絞り弁96は、固定部72の先端部にて構成された固定弁体98と、この固定弁体98に対して固定部72の軸方向に対向した、エルボ管74の側の可動弁体100とで構成されている。
【0043】
固定弁体98には、図4に示しているように通水用の固定側の弁開口102が備えられており、また一方可動弁体100には、通水用の可動側の弁開口104が備えられている。
ここで固定側の弁開口102は平面視形状が略長方形状をなしており、また一方可動側の弁開口104は平面視形状がD字形状をなしている。
またこれら固定側の弁開口102と可動側の弁開口104とは次のような関係とされている。
【0044】
図4及び図6に示しているように、固定側の弁開口102は、固定部72の先端面に対する図4中右側からの正面視において、中心部から左斜め上方に延びる形状をなしており、図6(A)に示しているように、エルボ管74における屈曲部78がこれと反対方向、つまり右斜め下向きをなしているときには、固定側の弁開口102のほぼ半分が、可動弁体100にて塞がれるようになっている。
【0045】
そしてこの状態からエルボ管74の屈曲部78が、図6(B)に示しているように図(A)の位置から角度θ(ここではθ=120°)時計方向に回転して、屈曲部78が図中左方向に横向き(水平方向向き)となったときには、固定側の弁開口102の全体が、可動側の弁開口104に対して重なり合った状態、つまり絞り弁96が全開状態となり、更にこの状態から屈曲部78が、図(A)に示す位置から角度θ(ここではθ=250°)まで時計方向に回転して、屈曲部78が右斜め上向きとなったときにも、固定側の弁開口102が可動側の弁開口104に対して全体的に重なった状態、つまり絞り弁96が全開状態を保つように、固定側の弁開口102及び可動側の弁開口104の形状が定められている。
【0046】
尚この絞り弁96では、図6(A)に示す状態から図6(B)に示す状態までエルボ管74の屈曲部78が回転する途中、詳しくは可動側の弁開口104の直線部104Aが、固定側の弁開口102の一対の側辺のうちの一方の側辺の直線部102Aに合致したところで、固定側の弁開口102の全体が、可動側の弁体104に対して全体的に重なる状態となり、その後屈曲部78の回転に伴って可動側の弁開口104の直線部104Aが、固定側の弁開口102の他方の側辺の直線部102Bに合致するまで、固定側の弁開口102の全体が、可動側の弁開口104に対し重なり状態に維持される。即ち絞り弁96が全開状態に維持される。
【0047】
従って図6(B)に示す状態で、図4及び図8に示しているようにエルボ管74の接続部79に導水管108Aの一端側を接続し、また他端側を図2に示しているように吐水管18の下部18B内に挿入して、手洗吐水管18に接続したときには、絞り弁96が全開状態の下で、つまり手洗水の流路94が最大開状態の下で、手洗水が出口部64から流出して、手洗吐水管18へと到り、吐水口19から手洗鉢16に向けて吐水される。
【0048】
また図6(C)に示す状態で、エルボ管74の接続部79に図9に示す蛇腹管から成る導水管108Bの一端側を接続し、また他端側を手洗吐水管18に接続して、出口部64から手洗水を手洗吐水管18に導水した場合においても、絞り弁96全開状態の下で手洗水が手洗吐水管18に到って吐水口19から吐水される。
【0049】
尚、図8に示すようにして導水管108Aを用いたり、図9に示すようにして導水管108Bを用いたりするのは、タンクの種類によって手洗吐水管18の位置が異なる場合があり、そのような手洗吐水管18の位置の相違に対応して、手洗水を円滑に手洗吐水管18に導くためである。
【0050】
一方タンク10が手洗吐水管18を有しないものである場合には、手洗水の出口部64(具体的にはエルボ管74)に導水管を接続することなく、出口部64を開放ままとして、これを図6(A)に示しているように斜め下向きとしておく。
このときには、給水弁34の開弁により下流側に流れて来た水は、タンク内吐水口36と出口部64のエルボ管74先端の流出口92から下方に落下して、タンク10へと給水される。
【0051】
このときには、図6(A)に示しているように固定側の弁開口102の略半分が塞がれた状態で、給水管32からの水が絞り弁96を経てタンク10へと給水される。
その際、図5の手洗水の流路94の抵抗が大となることによって、手洗吐水管18に手洗水を導く場合と同じ流量で出口部64からタンク10内に給水が行われる。
固定弁体98と可動弁体100との形状が予めそのように定められている。
従ってこの実施形態では、手洗吐水管18がある場合と無い場合とで、補給水管66に回り込む水の比率は一定となり、等しい流量で補給水管66を通じて補給水が便器へと供給される。
【0052】
以上のような本実施形態によれば、手洗水の出口部64に導水管108A,108Bを接続して手洗水を手洗吐水管18に導くときには、手洗水の流路94を最大開度とし、また一方、手洗吐水管18を有しない場合において、手洗水の出口部64に導水管108A,108Bを接続せず、出口部64を開放ままとするときには、絞り弁96により流路94を部分的に塞ぐことで流路94の開度を小に切り替え、流路94の抵抗を増大させる。
そしてこのことによって、手洗吐水管18のある場合と無い場合とで、出口部64からの手洗水の流出に対する抵抗を同等とすることができ、補給水管66の側に回り込む水量を一定水量とすることができる。
これにより、補給水管66を通じて便器に供給する補給水の水量を多めに設定することを不要となし得、節水を図ることができる。
【0053】
また本実施形態では流路94の抵抗を増大させるための抵抗部材として、流路94の開度を絞る絞り弁96を設けてあるため簡単な操作で流路94に抵抗を与えることができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上例では絞り弁における可動弁体を、エルボ管と一体に回転させるようにしているが、可動弁体をエルボ管とは別に構成して、可動弁体を単独で回転させるようになすことも可能であるし、また絞り弁を上記形態とは異なった形態で構成し、或いは絞り弁に代えて他の抵抗部材を設けておくといったこと、その抵抗部材を後付けで設けておくこと、またその際に回転動作によらないで手洗水の流路の開度を部分的に塞ぐようになすことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 洗浄タンク
18 手洗吐水管(手洗吐水部)
28 ボールタップ
34 給水弁
40 フロート
64 出口部
66 補給水管
74 エルボ管
92 流出口
94 流路
96 絞り弁
98 固定弁体
100 可動弁体
102,104 弁開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートの昇降により給水弁を開閉して、洗浄タンクへの給水及び給水停止を自動的に行うボールタップにおいて、
前記給水弁の下流部に、手洗水を手洗吐水部に向けて流出可能な手洗水の出口部を設けるとともに、該手洗水の出口部に、手洗水の流路の抵抗を増大させる抵抗部材を設けたことを特徴とするボールタップ。
【請求項2】
請求項1において、前記抵抗部材として絞り弁が設けてあることを特徴とするボールタップ。
【請求項3】
請求項2において、前記絞り弁は、それぞれ通水用の弁開口を備えた固定弁体と可動弁体とを有していて、該固定弁体に対する該可動弁体の回転により、該固定弁体の前記弁開口と該可動弁体の前記弁開口との重なり面積を大から小へと変化させることで前記流路の抵抗を増大させるものであることを特徴とするボールタップ。
【請求項4】
請求項3において、前記手洗水の出口部は、上下方向に回転可能な回転部を有していて、該回転部の先端側に手洗水の流出口を有しているとともに、該回転部の一部が前記可動弁体を成していることを特徴とするボールタップ。
【請求項5】
請求項4において、前記回転部を回転させることによって、前記手洗吐水部に手洗水を流出させる手洗有りと、該手洗吐水部に手洗水を流出させず直接前記タンク内に流出させる手洗無しとに切り替えるものとなしてあり、該手洗無しとしたときには前記重なり面積を小とし、手洗有りとしたときには該重なり面積を大とすることを特徴とするボールタップ。
【請求項6】
請求項4,5の何れかにおいて、前記回転部がエルボ管から成っていることを特徴とするボールタップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−177259(P2012−177259A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40813(P2011−40813)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】