説明

ボールペンレフィル

【課題】インキ収容筒の先端装着部に圧入装着したボールペンチップ又はチップホルダーが容易に抜けることのなく、インキ収容筒に積層した第2樹脂層が、剥離や破損し難い、ボールペンレフィルを提供する。
【解決手段】インキ収容筒2の先端装着部H1に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップ5を圧入装着し、インキ収容筒2内に、ボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィル1において、インキ収容筒2が、ポリプロピレンからなる第1樹脂層3と、該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い樹脂からなる第2樹脂層4を積層した積層構造からなるとともに、先端装着部H1の第2樹脂層を、他の部分の第2樹脂層より薄く、或いは、先端装着部H1を、ポリプロピレンからなる第1樹脂層の単層構造とし、他の部分を第1樹脂層と該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い第2樹脂層4を積層した積層構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンレフィルに関し、さらに詳しくは、インキ収容筒が、軟質樹脂と硬質樹脂を積層した積層構造からなるボールペンレフィルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ収容部材の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを具備し、インキ収容筒内にボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィルについてはよく知られている。こうしたボールペンレフィルのインキ収容筒には、耐インキ性、耐水性、成形性、ビジブル性等を考慮し、水蒸気難透過性樹脂としてよく知られるポリプロピレンで形成している。一方、出没機構部や軸筒等の外装部材には、耐衝撃性、耐摩擦性等を考慮し、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアセタール等、引張強度、曲げ弾性率等、ポリプロピレンより機械的強度の高い樹脂で形成している。
【0003】
ところで、従来のボールペン用インキは、油性ボールペン用インキ、水性ボールペン用インキ、ゲルインキボールペン用インキに大別され、油性ボールペン用インキの多くは、書き味や筆跡乾燥性の要請により、そのインキ粘度が20℃において10,000〜30,000mPa・sの範囲に設定され、ベンジルアルコール、フェニルグリコール等の20℃における蒸気圧が0.1mmHg以下という有機溶剤を用いている。
【0004】
また、水性ボールペン用インキは、筆跡の滲みや裏抜け防止のため、そのインキ粘度が20℃において5mPa・s未満に設定され、溶剤として水と、エチレングリコールやグリセリン等の20℃における蒸気圧が1.0mmHg以下の有機溶剤を用いている。ゲルインキボールペン用インキは油性ボールペン用インキと同様に、ベンジルアルコール、フェニルグリコール等の20℃における蒸気圧が0.1mmHg以下という高沸点の有機溶剤を用いている油性タイプと、溶剤として水と、エチレングリコールやグリセリン等の20℃における蒸気圧が1.0mmHg以下の有機溶剤を用いている水性タイプとがある。
【0005】
また、ボールペンレフィル性能としては、書き味良好で、筆跡に滲みや裏抜けがなく、筆跡乾燥性の良好なものが望まれる。従来の油性ボールペンのようにインキ粘度が高いと、自ずと筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、書き味が非常に重く良好とならない。そのため、書き味の向上を目的とし、特開平8−134392号公報「低粘度油性ボールペンインキ及び低粘度油性ボールペン」では、溶剤中に蒸気圧0.1mmHg(20℃)以下の有機溶媒を60重量%以上含有し、インキの粘度が剪断速度400S−1において200mPa・s以下でかつ、剪断速度5s−1において300mPa・s以上である低粘度油性ボールペンインキが開示されている。
【0006】
確かにインキ粘度を低くするなどして、インキ吐出量を多くすることにより書き味は良好となるが、筆跡乾燥性が悪化するという不具合が生じてしまうことも事実である。筆跡乾燥性を良好にする技術としては、特開2004−82707号公報「ボールペン」では、5.0〜50mmHg(20℃)と揮発性の高い有機溶剤を採用し、筆跡乾燥性を良好にすることが提案されている。
【0007】
また、揮発性の高い有機溶剤を採用する筆記具としては、筆端部が繊維束で形成されたマーキングペンが例示できる。このマーキングペンは、水性溶剤を採用した水性タイプと油性溶剤を採用した油性タイプと2つに大別され、太字筆記や前記非浸透面への筆記に際して広範に愛用されている。マーキングペンは、前述のように筆端部を繊維束としており、太字筆記や非浸透面への良好筆記を具現化するため、筆端部からのインキ吐出量を多く設計しているが、揮発性の高い有機溶剤を採用することで、筆跡乾燥性や筆跡滲み、裏抜けについて好適に対処している。
【0008】
こうした揮発性の高い有機溶剤を採用する場合には、従来のボールペンレフィルに用いられているポリプロピレンだけでは、ボールペンレフィル内での揮発性の高い有機溶剤の蒸発を完全に防止できないため、特開平5−92528号公報「密封容器」、特開2003−266986号公報「筆記具用インキ収容部材」等でポリビニルアルコール樹脂やエチレンビニルアルコール共重合樹脂等の空気難透過性樹脂を積層し、揮発性の高い有機溶剤の蒸発を防止した容器が開示されている。
【0009】
また、特開2004−130652号「ボールペン」では、前記したボールペンチップの圧入装着によるインキ収容筒の割れを防止するため、インキ収容筒の先端装着部の内径と、対応するボールペンチップの外径との関係が開示されている。
【特許文献1】「特開平8−134392号公報」
【特許文献2】「特開2004−82707号公報」
【特許文献3】「特開平5−92528号公報」
【特許文献4】「特開平9−192582号公報」
【特許文献5】「特開2003−266986号公報」
【特許文献6】「特開2004−130652号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したエチレンビニルアルコール共重合樹脂等の空気難透過性樹脂を積層するには、2色成形や共押し出し成形等が考えられるが、前記したエチレンビニルアルコール共重合樹脂は、前述したポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアセタールに比べても、曲げ弾性率、引張強度等、機械的強度が非常に高く優れている樹脂材料であることはよく知られている。また、エチレンビニルアルコール共重合樹脂は、使用するインキ中の溶剤の蒸発を防止するためには、エチレンビニルアルコール共重合樹脂の厚さが、厚ければ厚いほど溶剤の蒸発防止効果は向上する等、樹脂層の厚さが厚いほど機械的強度は向上し、その結果、厚さに比例して曲げ弾性率は向上する。
【0011】
しかし、曲げ弾性率が高い樹脂は、弾性変形を起こし難い樹脂であり、圧入装着などの形状変化をもたらす部分には不向きである。
【0012】
ボールペンレフィルにおいては、インキ収容筒の先端装着部に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップを、容易に抜けないように圧入装着する必要があり、先端装着部に少なからず応力が加わっている。そのため、インキ収容筒の先端装着部において、ポリプロピレンからエチレンビニルアルコール共重合樹脂等の第2樹脂層が剥離したり、第2樹脂層が破損することがあった。
【0013】
前記課題を解決するため、ボールペンレフィルに用いる第2樹脂層には、曲げ弾性率等を考慮し、0.1μm〜50μm以下のフィルム状の薄い層とし、圧入装着等による形状変化に対応したり、インキ収容筒の先端装着部の内径と、対応するボールペンチップの外径、及び先端装着部の長さを特定し、圧入力を低下させているのが現実である。
【0014】
本発明はこうした問題を鑑み、インキ収容筒の先端装着部に圧入装着したボールペンチップ又はチップホルダーが容易に抜けることのなく、インキ収容筒に積層した第2樹脂層が、剥離や破損し難い、ボールペンレフィルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、インキ収容筒の先端装着部に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップを圧入装着し、前記インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィルにおいて、前記インキ収容筒が、ポリプロピレンからなる第1樹脂層と、該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い樹脂からなる第2樹脂層を積層した積層構造からなるとともに、前記先端装着部の第2樹脂層を、他の部分の第2樹脂層より薄くする。
【0016】
また、前記先端装着部の第2樹脂層の厚さを0.1μm以上、100μm未満とし、他の部分の第2樹脂層の厚さを100μm以上、500μm以下とする。
【0017】
また、前記先端装着部を、後端に向かって外径が縮径する傾斜状に形成する。
【0018】
また、インキ収容筒の先端装着部に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップを圧入装着し、前記インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィルにおいて、前記インキ収容筒が、前記先端装着部を、ポリプロピレンからなる第1樹脂層の単層構造とし、他の部分をポリプロピレンからなる第1樹脂層と、該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い樹脂からなる第2樹脂層を積層した積層構造とする。
【0019】
また、前記第2樹脂層が、空気難透過性樹脂である。
【0020】
また、前記インキ収容筒の先端外径と後端外径が、略同一になるように、前記第2樹脂層を積層する。
【0021】
また、前記インキ収容筒内に、20℃の蒸気圧が3.0mmHg以上である有機溶剤を含有したボールペン用インキを直詰めする。
【0022】
本発明の第2樹脂層には、ポリプロピレンより曲げ弾性率の高い、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリアセタール、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂等を適宜選択して使用することができるが、その中でもインキ中の溶剤の蒸発を考慮し、空気難透過性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ポリプロピレンの曲げ弾性率が1,000〜1,500kgf・cm−2であるのに対し、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ナイロンが2,000〜4,000kgf・cm−2、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂が25,000〜35,000kgf・cm−2である。
【0023】
空気難透過性樹脂層には、空気透過度が、20℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atm以下の樹脂を用いる。空気透過度が、25℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atmを越えるものであると、20℃における蒸気圧が3.0mmHg以上の有機溶剤の蒸発を防止できず、初期のボールペンレフィル性能を維持しにくくなる。また、前記した厚さ20μmにおいて、20℃、ドライにおける空気透過度が2.0cc/m2・24hr/atm以下の材料を厚さ50μm以上とする及び/又は厚さ20μmにおいて、25℃、ドライにおける空気透過度が、0.5cc/m2・24hr/atm以下とし、更に優れた透過遮断性を発揮せしめることが好ましい。
【0024】
空気難透過性樹脂としては、上記特性を有するものの中から選ばれる少なくとも1種から形成することができるが、空気透過度が極めて低いエチレンビルアルコール共重合体樹脂が最も好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、インキ収容筒の先端装着部に圧入装着したボールペンチップ又はチップホルダーが容易に抜けることのなく、インキ収容筒に積層した第2樹脂層が、剥離や破損し難い、ボールペンレフィルを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に図面を参照しながら、本発明のボールペンレフィルの実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1から図4に示す、本発明のボールペンレフィル1は、インキ収容筒2のインキ収容部S1に下記配合により得られたボールペン用インキ(図示せず)を直詰めし、インキ収容筒2の先端装着部H1に、チップ本体のボール抱持室の底壁にボール6を載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボール6を回転自在に抱持し、底壁の中央にインキ流通孔とインキ流通孔から放射状に延びる放射状溝を有するボールペンチップ5の圧入装着部7をインキ収容筒の先端装着部H1に圧入装着して得ている。インキ収容筒2の先端装着部H1にボールペンチップを圧入装着するため、インキ収容筒2の先端装着部H1の内径Nに対して、対応するボールペンチップの圧入装着部7の外径Mを大きくしてある。(N<M)
【0028】
インキ収容筒2は、曲げ弾性率が500〜1,500kgf・cm−2のポリプロピレンからなる第1樹脂層3に、曲げ弾性率が25,000〜35,000kgf・cm−2のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(株式会社クラレ製、エバール)からなる第2樹脂層4を、二色成型により積層して形成してある。尚、曲げ試験は、ASTM D−790により測定する。
【0029】
インキ収容筒2の先端装着部H1では、内側の第1樹脂層3に対し、厚さa1の第2樹脂層4を積層し、先端装着部H1以外のインキ収容部B1では、第1樹脂層3に対し、先端装着部H1の第2樹脂層の厚さa1より厚い、厚さa2の第2樹脂層4を積層してある。(a1<a2)
【0030】
インキ収容筒2の先端装着部H1では、内側の第1樹脂層3に対し、外側に曲げ弾性率が高い第2樹脂層4をインキ収容部S1に積層した第2樹脂層4より薄く(a1<a2)積層してあるので、先端装着部H1にボールペンチップ5を圧入装着し、先端装着部H1に応力が加わっても、第2樹脂層4による影響が少なく、従来のボールペンレフィルと同様の圧入力で装着でき、容易に脱落することはない。また、剥離しにくく、割れも発生しにくい。
【0031】
インキ収容筒2の先端装着部H1の第2樹脂層4は、薄ければ薄い程好ましく、100μmを超えると、インキ収容筒2の先端装着部H1にボールペンチップなど装着した時の応力により、第2樹脂層4が剥離したり、割れが発生する恐れがあるため、100μm未満、好ましくは50μm以下とする。先端装着部H1を通過して蒸発するインキ中の溶剤量は極々微少であるため、先端装着部H1の空気難透過性樹脂である第2樹脂層4が薄く設けてあっても問題はない。
【0032】
インキ収容部S1には、空気難透過性樹脂である第2樹脂層4を厚く積層してあるため、インキ収容部S1を通過する、インキ中の溶剤の蒸発を防止することができ、インキ収容筒2の先端から後端まで空気難透過性樹脂である第2樹脂層4を設けることにより、インキ中の溶剤の蒸発防止効果が向上する。
【0033】
インキ収容筒2のインキ収容部S1の空気難透過性樹脂である第2樹脂層4の厚さが100μm未満では、インキ中の有機溶剤の蒸発を防止しにくく、500μmを超えると、第1樹脂層と第2樹脂層を積層した部分の肉厚が厚くなり過ぎるとともに、インキ収容量を従来のボールペンレフィルと同一にするには、インキ収容筒の内径N寸法を変更できず、その結果、外径寸法が大きくなり過ぎるため、100μm以上、500μm以下にする。尚、第1及び第2樹脂層の厚さは、軸方向で等間隔に離間した、例えば0.1mmピッチで、先端装着部A1の先端から後端及びインキ収容部の先端から後端までの肉厚を測定し、その平均を算術した数値を示す。
【0034】
第1樹脂層3の厚さは、使用するインキ組成やインキ収容量等に応じて適宜選択することができるが、インキ収容筒2の内径N等や外径を考慮し、対応する第2樹脂層の厚さに反比例させることが必要となるが、比較的厚く、300μm以上、1,000μm以下が好ましい。
【実施例2】
【0035】
図5から図7に示す、本発明の実施例2のボールペンレフィル11は、インキ収容筒12の先端装着部H2は、ポリプロピレンからなる第1樹脂層13の外径を後端に向かって外径が縮径する傾斜状に形成し、この傾斜した先端装着部A3にエチレンビニルアルコール共重合体樹脂からなる厚さがb1の第2樹脂層14を積層してある。また、先端装着部H2以外のインキ収容部S2では、第1樹脂層13に対し、先端装着部H2の第2樹脂層の厚さb1より厚い、厚さb2の第2樹脂層14を積層し(b1<b2)、インキ収容筒12の先端外径G1と後端外径G2が、略同一になるように形成した以外は、実施例1と同様にしてボールペンレフィルを得ている。
【0036】
インキ収容筒12の先端装着部H2を、第1樹脂層13の外径を後端に向かって外径が縮径する傾斜状に形成し、この傾斜した第1樹脂層13に第2樹脂層14を積層することで、第2樹脂層14は、急激な径差がなくなるため、ボールペンチップ5の圧入装着部7が圧入する寸法変化に対して、構造的に強化することができる。また、インキ収容筒12の先端外径G1と後端外径G2を略同一としてあるため、ボールペンとして使用する場合に、軸筒や口金等、その他部品寸法を変更せずに使用することができる。
【実施例3】
【0037】
図8から図10に示す、本発明の実施例3のボールペンレフィル21は、インキ収容筒22の先端装着部H3を、ポリプロピレンからなる第1樹脂層23の単層構造とし、インキ収容筒12の先端装着部H3以外のインキ収容部S3にのみ、厚さc2のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂からなる第2樹脂層24を積層した以外は実施例1と同様にしてボールペンレフィルを得ている。
【0038】
インキ収容筒12の先端装着部H3は、第1樹脂層23の単層構造であり、先端装着部H3にボールペンチップ5の圧入装着部7を圧入し、先端装着部H3に応力が加わっても、第2樹脂層24に影響を与えず、その結果、第2樹脂層24が剥離したり、割れが発生することはない。また、インキ収容筒22の先端装着部H3以外のインキ収容部S3には、第1樹脂層23に、厚さc2の第2樹脂層24を積層してあるため、インキ中の溶剤の蒸発を防止できる。
【実施例4】
【0039】
図11から図13に示す、本発明の実施例4のボールペンレフィル31は、インキ収容筒32の先端装着部H4を、先端装着部H4以外のインキ収容部S4より厚くした、ポリプロピレンからなる第1樹脂層33の単層構造とし、インキ収容部S4にのみ、第1樹脂層33に、厚さd2のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂からなる第2樹脂層34を積層し、インキ収容筒32の先端外径G3と後端外径G4を略同一となるようにした以外は、実施例1と同様にしてボールペンレフィルを得ている。
【0040】
インキ収容筒32の先端装着部H4の肉厚をインキ収容部S4より厚くした第1樹脂層33の単層構造とすることで、実施例3と同様に、先端装着部H4にボールペンチップ5の圧入装着部7を圧入し、先端装着部H4に応力が加わっても、第2樹脂層34に影響を与えない。その結果、第2樹脂層34が剥離したり、割れが発生することはない。また、インキ収容筒32の先端外径G3と後端外径G4を略同一とすることで、実施例2と同様に、従来のボールペンに使用することができる。
【0041】
本実施例では便宜上、内側に第1樹脂層、外側に第2樹脂層を積層してあるが、先端装着部の第2樹脂層を、インキ収容部の第2樹脂層より薄く、或いは、先端装着部は第1樹脂層の単層構造とし、インキ収容部に、第1樹脂層と第2樹脂層を積層した構造としてあれば、第1樹脂層と第2樹脂層との間に接着剤層や他の層を介在させてもよい。また、インキ収容筒の先端装着部の外側でボールペンチップ等を装着する場合には、外側に第1樹脂層、内側に第2樹脂層を設ける等、装着する部材と接触する樹脂層に第1樹脂層を設けてあればよい。
【0042】
また、本実施例では、第2樹脂層として空気難透過性樹脂であるエチレンビニルアルコール共重合体樹脂を積層しているが、使用するインキやノック式ボールペンレフィル用、キャップ式ボールペンレフィル用等、使用条件に応じて、第2樹脂層を適宜選択して使用することができる。
【0043】
また、本実施例では、ボールペンチップを直接、インキ収容筒の先端装着部に圧入装着してあるが、ボールペンチップを、チップホルダーを介して装着してもよい。また、インキ収容筒の後端部に尾栓を装着する場合には、この後端装着部も先端装着部と同様に、後端装着部の第2樹脂層を、インキ収容部の第2樹脂層より薄く、或いは後端装着部を第1樹脂層の単層構造とすることが好ましい。特に、ボールペンチップ等の金属製部品をインキ収容筒の先端装着部に圧入装着する場合には、金属製部品は圧入装着時に弾性変形せず、インキ収容筒側のみが弾性変形するので、本発明の効果は顕著である。
【0044】
本発明のボールペンチップの形状や構造は前記実施例に限定されるものではないが、非使用時にはチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接または押圧体を介して、ボールの後端に当接させ、チップ先端縁の内壁面に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備してもよい。
【0045】
本発明に用いるボールペン用インキも水性インキ、油性インキ、ゲルインキ修正液等、特に限定されるものではないが、本発明のボールペンレフィルは、筆跡乾燥性を向上させる等、20℃の蒸気圧が3.0mmHg以上の揮発性の高い有機溶剤の採用が可能である。
【0046】
蒸気圧が3.0mmHg以上(20℃)の有機溶剤としては、グリコールエーテル類又はアルコール類が好ましい。グリコールエーテル類としてはエチレングリコールモノメチルエーテル(6.0mmHg/20℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(3.8mmHg/20℃)、エチレングリコールジメチルエーテル(48mmHg/20℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(8.0mmHg/20℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(4.0mmHg/20℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(30mmHg/20℃)等が挙げられる。また、アルコール類としてはエタノール(60mmHg/25℃)、1−プロパノール(20mmHg/24.6℃)、2−プロパノール(44mmHg/25℃)、t−ブタノール(31mmHg/20℃)、イソプロピルアルコール(32.4mmHg/20℃)、イソブチルアルコール(8.9mmHg/20℃)、プロパギルアルコール(11.6mmHg/20℃)、アリルアルコール(20mmHg/20℃)、3−メチル−1−ブチン−3−オール(10mmHg/16℃)等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0047】
また、従来、油性ボールペンでは筆跡の乾燥性を考慮し、筆記先端ボールのボール径がφ0.5mmの場合では約10mg、φ0.7mmの場合では約20mg、φ1.0mmの場合では約30mg、ボール径をXmmとし、100m当たりのインキ吐出量をY(mg)とした場合に、Y≦30Xの関係、インキ吐出量を多く設定してもY<35Xであるものが一般的であるのに対し、前述した揮発性の高い有機溶剤を採用することが可能であるため、ボールペンチップの筆記先端ボールのボール径がX(mm)である100m当たりのインキ吐出量Y(mg)を、Y≧40X、好ましくはY≧60Xの関係とし、筆跡濃度を高めたボールペンレフィルとしても使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のボールペンレフィルは、使用するボールペン用インキに限定されることなく使用可能であり、キャップ式ボールペンやノック式ボールペン等、ボールペンとして広く使用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1のボ−ルペンレフィルを示す縦断面図である。
【図2】図1における、一部省略した要部拡大縦断面図である。
【図3】図1におけるA1−A1、A2−A2断面図である。
【図4】実施例1のボ−ルペンレフィルのボールペンチップの嵌合前を示す縦断面図である。
【図5】実施例2のボ−ルペンレフィルを示す縦断面図である。
【図6】図5における、一部省略した要部拡大縦断面図である。
【図7】図5におけるB1−B1、B2−B2断面図である。
【図8】実施例3のボ−ルペンレフィルを示す縦断面図である。
【図9】図8における、一部省略した要部拡大縦断面図である。
【図10】図8におけるC1−C1、C2−C2断面図である。
【図11】実施例4のボ−ルペンレフィルを示す縦断面図である。
【図12】図11における、一部省略した要部拡大縦断面図である。
【図13】図11におけるD1−D1、D2−D2断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1、11、21、31 ボールペンレフィル
2、12、22、32 インキ収容筒
3、13、23、33 第1樹脂層
4、14、24、34 第2樹脂層
5 ボールペンチップ
6 ボール
7 圧入装着部
H1、H2、H3、H4 先端装着部
S1、S2、S3、S4 インキ収容部
M 圧入装着部外径
N 先端装着部内径
a1、b1 先端装着部の第2樹脂層の肉厚
a2、b2、c2、d2 インキ収容部の第2樹脂層の肉厚
G1、G3 インキ収容筒の先端外径
G2、G4 インキ収容筒の後端外径


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ収容筒の先端装着部に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップを圧入装着し、前記インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィルにおいて、前記インキ収容筒が、ポリプロピレンからなる第1樹脂層と、該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い樹脂からなる第2樹脂層を積層した積層構造からなるとともに、前記先端装着部の第2樹脂層を、他の部分の第2樹脂層より薄くしたことを特徴とするボールペンレフィル。
【請求項2】
前記先端装着部の第2樹脂層の厚さを0.1μm以上、100μm未満とし、他の部分の第2樹脂層の厚さを100μm以上、500μm以下としたことを特徴とする、請求項1に記載のボールペンレフィル。
【請求項3】
前記先端装着部を、後端に向かって外径が縮径する傾斜状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のボールペンレフィル。
【請求項4】
インキ収容筒の先端装着部に、直接またはチップホルダーを介してボールを回転自在に抱持したボールペンチップを圧入装着し、前記インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めしてなるボールペンレフィルにおいて、前記インキ収容筒が、前記先端装着部を、ポリプロピレンからなる第1樹脂層の単層構造とし、他の部分をポリプロピレンからなる第1樹脂層と、該第1樹脂層より曲げ弾性率の高い樹脂からなる第2樹脂層を積層した積層構造としたことを特徴とするボールペンレフィル。
【請求項5】
前記第2樹脂層が、空気難透過性樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項にボールペンレフィル。
【請求項6】
前記インキ収容筒の先端外径と後端外径が、略同一になるように、前記第2樹脂層を積層したことを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
【請求項7】
前記インキ収容筒内に、20℃の蒸気圧が3.0mmHg以上である有機溶剤を含有したボールペン用インキを直詰めしたことを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載のボールペンレフィル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−35559(P2006−35559A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217082(P2004−217082)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】