説明

ボールペン用インキ組成物

【課題】ボールペンを用いて筆記したときに極めて軽く滑らかな書き味を与えるボールペン用インキ組成物を提供する。
【解決手段】ボールペン用インキの媒体として、又は、添加材として下記一般式(化1)で示される化合物を含有するボールペン用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてボールをボールホルダーの先端より一部突出して抱持した所謂ボールペンチップを使用したボールペンに好適に使用されるボールペン用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽くて滑らかな書き味のボールペン用インキを得るために、従来よりインキの粘度を調整したり、潤滑性を付与する材料をインキに添加したりする試みがなされてきた。
例えば、特定の微粒子シリカを添加しペン先からのインキの漏れ出しを防止することで、増粘剤の添加量を調整してインキ粘度を1000〜5000mPa・sとし、書き味を軽くしたもの(特許文献1)、剪断減粘性付与剤を添加して、筆記時に付与されるボールの回転による剪断力にて、インキの粘度を大きく低下させ、書き味を軽くしたもの(特許文献2)などが知られている。
【0003】
また、滑らかな書き味を得るために、リン酸エステル(特許文献3)や、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(特許文献4)などの潤滑剤を添加し、金属製のボールペンチップ壁面に吸着させることで潤滑効果を得たものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−204368号公報
【特許文献2】特開2003−105245号公報
【特許文献3】特開2002−201398号公報
【特許文献4】特開平10−279876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2に記載の発明では筆記時の粘度が低いため軽い書き味は得られるが、インキが低粘度であるために、ボールとボールホルダーの内壁、特に受け座との間に形成されているインキの膜が筆圧などによって簡単に移動してしまい、筆記時などのボールとボールホルダー内壁との直接的な接触が避けられず、滑らかさを損なう要因を除去できていないものであった。
【0006】
特許文献3、特許文献4に記載されている液状の潤滑剤は、インキの粘度が低粘度の場合は、上述の低粘度インキと同様にボールとボールホルダー内壁との直接接触による影響を受け、インキが高粘度である場合には、潤滑剤の添加によっても高粘度であることによる筆記感の重さを解消することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、ボールペンを用いて筆記したときに極めて軽く滑らかな書き味を与えるボールペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、着色剤と下記一般式(化1)で示される化合物とを少なくとも含有するボールペン用インキ組成物を第1の要旨とし、更に、樹脂、有機溶剤、水、潤滑剤から選ばれる1種若しくは2種以上を含有するボールペン用インキ組成物を第2の要旨とし、また、前記樹脂としてアミド基及び/又はアミノ基を有する曳糸性樹脂を含むボールペン用インキ組成物を第3の要旨とする。
【0009】
【化1】

【発明の効果】
【0010】
本発明で使用する上記(化1)で示される化合物は、構造中に分極して負電荷を帯びたアミド基とエーテル結合を持っているので、他の配合物に対する溶解性に優れていると共に金属表面に吸着し易い性質を備えており、インキ組成物中で偏在せずに直ぐに均一な状態を形成し、ボールやボールペンチップ内部の金属表面にまんべんなく吸着層を形成する。自身の潤滑作用に加えて、樹脂やその他の有機潤滑材成分を併用すれば、それらが溶解した状態の被膜層が均一に形成されるので、ボールとボール受座との金属同士の直接接触が緩和され、ボールの回転を阻害しなく、また、潤滑成分の効果を効率的に発揮させることができるものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
着色剤は、従来ボールペン用インキ組成物に使用されている染料および/または顔料を用いることができ、染料、顔料は単独で用いても、併用しても良い。
油溶性染料の具体例としては、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株)製)、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株)製)、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.社製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、BASF社製、独国)、バリファーストイエロー#3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー#3105(C.I.18690)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック#3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー#1109、バリファーストオレンジ#2210、バリファーストレッド#1320、バリファーストブルー#1605、バリファーストバイオレット#1701、バリファーストバイオレット#1704、オイルブルー#613、オイルイエロ−#129、ニグロシンベースEX(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーBPNH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)、ネオスーパーブルーC−555(以上、中央合成化学(株)製)等が挙げられる。
【0012】
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料等のいずれも用いることができる。水溶性染料の具体例としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199等の直接染料や、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56等の酸性染料、C.I.フードイエロー3等の食用染料、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)、ローダミン6GCP(C.I.45160)等の塩基性染料等が挙げられる。
【0013】
また、着色剤として顔料を用いる場合は、従来公知の有機顔料と無機顔料を使用することができる。
有機顔料の具体例としては、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同202、同206、同207、同209、同216、同245、同254、同255、同256、同272、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、同61、同64、同71、同73、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 23、同25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同83、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同128、同139、同147、同151、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36、同37、C.I.PIGMENT BLACK 7等の有機顔料等が挙げられる。
【0014】
また、無機顔料として、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、硫酸バリウム、カドミウムレッド、クロムイエロー、黄土、カドミウムイエロー、バリウム黄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等が挙げられる。
【0015】
カーボンブラックの具体例としては、三菱カーボンブラック#10B、同#20B、同#14、同#30、同#33、同#40、同#44、同#45、同#45L、同#50、同#55、同#95、同#260、同#900、同#1000、同#2200B、同#2300、同#2350、同#2400B、同#2650、同#2700、同#4000B、同CF9、同MA8、同MA11、同MA77、同MA100、同MA220、同MA230、同MA600及びMCF88(以上、三菱化学(株)製)、モナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500及びリーガル660R(以上、米国、キャボット コーポレーション社製)、プリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、プリンテックス35、プリンテックス40、プリンテックス45、プリンテックスプリンテックス85、ナインペックス35、スペシャルブラック4,スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6,スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、スペシャルブラック350、スペシャルブラック550、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170(以上、デグサ ジャパン(株)製)、ラーベン5000ウルトラII、ラーベン2500ウルトラ、ラーベン1250、ラーベン760ウルトラ(以上、コロンビアカーボン日本(株)製)等が挙げられる。
これらの着色剤は、1種又は2種以上混合して使用することができ、使用量は全インキ組成物に対し3重量%〜50重量%が好ましい。
【0016】
着色剤に顔料を用いる場合、分散剤を使用すると経時的な顔料の沈降を防止でき、目詰まり等の不具合を防止することができる。顔料分散剤としては、従来公知の顔料分散剤が界面活性剤、高分子型界面活性剤、樹脂分散剤の別なく使用できる。具体例としては、高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、リン酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリグルタミン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、トール油変性マレイン酸樹脂、ベタイン型アクリル酸樹脂、ベタイン型メタクリル酸樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。
その他、市販品の分散剤として、ジョンクリル67、同68、同678、同680、同682、同550、同586、B−36(BASFジャパン(株)製)、ディスパロンDA325、同DA375、同1800シリーズ(以上、楠本化成(株)社製)、ソルスパース12000、同17000、同20000、同24000、同27000、同28000(以上、Lubrizol(株)社製)、ディスパビッグ2000、同2001、同180番シリーズ(以上、ビッグケミ−(株)社製)、エフカ4010、同5054(以上、エフカ・アディティブ、仏、社製)、キャリボンB、同L400、サンセパラー100(以上、三洋化成(株)社製)などが知られており、これらを使用することもできる。
これらの分散剤の使用量は顔料10重量部に対し0.5重量部以上20重量部以下で使用するのが好ましい。
【0017】
従来からボールペン用インキに添加されている、定着性、分散性、粘度調整、耐水性、曳糸性などを付与する樹脂を添加することも出来る。
例えば、セラック、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、
ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられ、これらは単独もしくは複数種を併用することも出来る。合計の使用量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜30重量%範囲が好ましい。
【0018】
また、一部の樹脂は、従来知られている一般的な有機溶剤中で顔料と併用すると、相互作用によって顔料の分散性や樹脂の溶解性が阻害され、顔料の凝集・沈降や樹脂の析出が起こるものがあるが、上記(化1)で示される化合物を使用すると、顔料、樹脂のそれぞれに対する親和性、溶解性に優れているため、顔料と樹脂の相互作用が起こらず、経時的な分散安定、溶解安定性を得ることができる。極めて軽く滑らかな書き味を損なわず、経時的な分散安定性、溶解安定性を得るためには、曳糸性を示す様な高分子量の樹脂であり、かつ上記(化1)で示される化合物と好適に結合できる樹脂でなければならない。上記(化1)で示される化合物と好適に結合できる樹脂としては、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂および分子内分極により弱いカチオン性、アニオン性を示す樹脂が挙げられる。このような樹脂は、アミド基及び/又はアミノ基を有する曳糸性樹脂であり、アミド系樹脂、トリメチルアンモニウム系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ビニルアセトアミド系樹脂、ブチラール系樹脂等が挙げられる。具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルカプロラクタム、メチルビニルイミダゾリウムメチル硫酸塩/N−ビニルピロリドン/N−ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール/メチルビニルイミダゾリウムメチル硫酸塩共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルレート共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、ポリ−N−ビニルアセトアミド、塩化O−〔2−ヒドロキシン−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0019】
本発明で使用する溶剤としては水、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては従来ボールペン用インキに使用されるものなら特に限定なく使用でき、特に、安全性や臭気の問題から、アルコール、グリコール、グリコールエーテルが好ましい。
アルコールの具体例としては、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等が使用できる。
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
その他、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用できる。
これらの溶剤は単独あるいは2種以上使用することができ、使用量は全インキ組成物に対し35重量%〜80重量%が好ましい。
【0020】
上記一般式(化1)で示される化合物は、アミド基とアルキル基を有する無色透明で安全性の高いアミド系の液状物であり、市販されているものとしては、エクアミドM100、同B100(以上、出光興産(株)製)が挙げられる。
上記一般式(化1)で示される化合物の使用量は、全インキ組成物に対し0.1重量%〜90重量%が好ましい。
【0021】
また、上記成分の他に必要に応じて、pH調節剤、防腐剤もしくは防黴剤、防錆剤、潤滑剤もしくは湿潤剤、受け座摩耗防止剤等の添加剤を加えることができる。pH調節剤として、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパンジオールなどの塩基性物質や、硫酸などの酸性物質、トリポリ燐酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど炭酸やリン酸のアルカリ金属塩など、防腐剤もしくは防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、モルホリン、モルホリン誘導体、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、2,3,5,6‐テトラクロロ‐4(メチルスルフォニル)ピリジン、安息香酸ナトリウムなど安息香酸やソルビン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物など、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、トリルトリアゾールなど、潤滑剤もしくは湿潤剤としては、ひまし油、ひまし油のポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、二硫化モリブデン、尿素、エチレン尿素、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンもしくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの誘導体、テトラグリセリルジステアレートなどグリセリンやジグリセリン或いはポリグリセリンの誘導体、ソルビタンモノオレートなどソルビタン誘導体、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどフッ素化アルキル基を有する界面活性剤、ジメチルポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物などのポリエーテル変成シリコーン、受け座摩耗防止剤の一例としては、アルミナ、炭化珪素、酸化クロム、炭化ホウ素、ジルコン、セン晶石、ヒスイ石、フッ化カルシウム、タングステンカーバイド、シリカ、ダイヤ、ザクロ石、窒化アルミニウム、窒化珪素などが挙げられる。
【0022】
本発明のボールペン用インキ組成物の調製は、従来公知のインキ組成物の製造方法を適用することができる。即ち、顔料を使用する場合は、分散混合機で顔料を他の成分と共に分散させることによってボールペン用インキ組成物を得ることができる。なお、製造時、染料などの固形物を溶解させる為に加熱することや、顔料などの粗大粒子を除去する為にフィルターや遠心分離を用いることなどは特に好ましい方法である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明は実施例を示して具体的に説明する。なお、以下の配合数値は重量部を示す。
実施例1
Printex 35(顔料、デグサ・ヒュルスジャパン(株)製) 30.00
エスレック BL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学(株)製) 4.00
ヘキシレングリコール 43.48
ハイラック 901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 3.00
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン(株)製) 0.25
PVP K−120(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン(株)製) 0.25
AKP−30(高純度アルミナ粉末、住友化学工業(株)製) 0.02
プライサーフA208B(リン酸エステル、潤滑剤、第一工業製薬(株)製) 2.00
ナイミーンL−201(オキシエチレンドデシルアミン、潤滑剤、日油(株)製)
2.00
エクアミドM100(上記(化1)にて示される化合物、出光興産(株)製)
15.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0024】
実施例2
FUJI SP BLACK 8922(カーボンブラック20%分散液、冨士色素(株)製) 25.00
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン(株)製) 1.00
イオン交換水 14.41
PNVA GE191(ポリ−N−ビニルアセトアミド、昭和電工(株)製) 0.87
グリセリン 6.00
エチレングリコール 6.00
ベンゾトリアゾール 0.50
プロクセル GXL(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、防腐剤、ICI(株)
製) 0.20
ペミュレン TR−1(架橋型のアクリル酸とアクリル酸エステル共重合体、B.F.Goodrich社製) 0.30
水酸化ナトリウム 0.70
AKP−20(高純度アルミナ粉末、住友化学工業(株)製) 0.02
エクアミドM100(前述) 45.00
上記成分中、ペミュレン TR−1の全量と水10部とをラボミキサーにて1時間撹拌してペミュレン TR−1水溶液を調整した。次いでAKP−20とグリセリンの全量を混合し、均一に撹拌した後ホモジナイザーで15分撹拌し、アルミナ分散液を調整した。残りの各成分を混合して均一になるまで1時間撹拌した液に、ペミュレン TR−1水溶液とアルミナ分散液を加え、さらに2時間混合撹拌して黒色のボールペン用インキを得た。
【0025】
実施例3
Printex 35(前述) 25.00
エスレック BL−1(前述) 4.00
ヘキシレングリコール 16.40
エチレングリコールモノフェニルエーテル 45.00
ケトンレジン K−90(ケトン樹脂、荒川化学工業(株)製) 6.00
ルビスコール VA55(酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、BASFジャパン(株)
製) 0.60
エクアミドB100(上記(化1)にて示される化合物、出光興産(株)製) 3.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0026】
実施例4
スペシャルブラック#4(顔料、デグサ・ヒュルスジャパン(株)製) 15.00
オイルブラックHBB(染料、オリエント化学工業(株)製) 10.00
ソルスパース #20000(分散剤、Lubrizol社製、米国) 7.00
ベンジルアルコール 34.00
ハイラック 901(前述) 6.00
プライサーフA208B(前述) 1.50
ナイミーンL−201(前述) 1.50
エクアミドM100(前述) 25.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0027】
実施例5
スペシャルブラック#4(前述) 10.00
三菱カーボンブラック MA220(顔料、三菱化学(株)製) 15.00
ソルスパース #20000(前述) 15.00
ヘキシレングリコール 18.30
エチレングリコールモノフェニルエーテル 36.00
ハイラック 901(前述) 2.00
ハイラック 111(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 2.50
エクアミドM100(前述) 0.60
エクアミドB100(前述) 0.60
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0028】
実施例6
Printex 35(前述) 21.00
ベンジルアルコール 16.50
ベンジルグリコール 2.50
エクアミドM100(前述) 60.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0029】
比較例1
Printex 35(前述) 25.00
エスレック BL−1(前述) 4.00
ヘキシレングリコール 16.40
エチレングリコールモノフェニルエーテル 45.00
ケトンレジン K−90(前述) 6.00
ルビスコール VA55(前述) 0.60
N−メチル−2−ピロリドン 3.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0030】
比較例2
スペシャルブラック#4(前述) 15.00
オイルブラックHBB(前述) 10.00
ソルスパース #20000(前述) 7.00
ベンジルアルコール 34.00
ハイラック 901(前述) 6.00
プライサーフA208B(前述) 1.50
ナイミーンL−201(前述) 1.50
N−メチル−2−ピロリドン 25.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0031】
比較例3
Printex 35(前述) 21.00
ベンジルアルコール 16.50
ベンジルグリコール 2.50
N−メチル−2−ピロリドン 60.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0032】
比較例4
スペシャルブラック#4(前述) 10.00
三菱カーボンブラック MA220(顔料、三菱化学(株)製) 15.00
ソルスパース #20000(前述) 15.00
ヘキシレングリコール 18.50
エチレングリコールモノフェニルエーテル 36.00
ハイラック 901(前述) 2.00
ハイラック 111(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 2.50
(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10 1.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0033】
比較例5
スペシャルブラック#4(前述) 10.00
三菱カーボンブラック MA220(顔料、三菱化学(株)製) 15.00
ソルスパース #20000(前述) 15.00
ヘキシレングリコール 16.30
エチレングリコールモノフェニルエーテル 35.20
ハイラック 901(前述) 2.00
ハイラック 111(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 2.50
LB−400(リン酸エステル) 4.00
上記の各成分の混合物をプロペラ攪拌機にて60℃で4時間撹拌し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0034】
比較例6
FUJI SP BLACK 8922(前述) 25.00
イオン交換水 60.28
グリセリン 6.00
エチレングリコール 6.00
ベンゾトリアゾール 0.50
プロクセル GXL(前述) 0.20
ペミュレン TR−1(前述) 0.30
水酸化ナトリウム 0.70
AKP−20(前述) 0.02
ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸 1.00
上記成分中、ペミュレン TR−1の全量と水10部とをラボミキサーにて1時間撹拌してペミュレン TR−1水溶液を調整した。次いでAKP−20とグリセリンの全量を混合し、均一に撹拌した後ホモジナイザーで15分撹拌し、アルミナ分散液を調整した。残りの各成分を混合して均一になるまで1時間撹拌した液に、ペミュレン TR−1水溶液とアルミナ分散液を加え、さらに2時間混合撹拌して黒色のボールペン用インキを得た。
【0035】
以上、実施例、比較例で得たインキについて、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
【0036】
試験サンプルの作成
上記実施例1〜6及び比較例1〜6で得た各ボールペン用インキを、直径0.7mmの超硬製のボールを、それぞれステンレス製のボールホルダーにて、ボールホルダーの先端開口部より一部突出した状態で抱持したボールペンチップと、押出成形により成形したポリプロピレン製パイプとを接続したリフィル体を収容するノック式ボールペン(Rolly、製品符号BP127、ぺんてる(株)製、ボール径φ0.7mm)のインキ収容管に0.25g充填し、市販の遠心機(H−103NR、株式会社コクサン)を用い、回転速度1700rpmで10分間遠心を行い、試験用ボールペンサンプルとした。また、本発明で使用するボールペンチップのボール径は、φ1.0mm以上やφ0.3mm以下などのφ0.7mm以外のものも使用できる。
【0037】
書き味の滑らかさ評価(書き味抵抗値の標準偏差)
書き味の滑らかさは、一定速度でペンを動かしたときのペンを持つ手にかかる抵抗値の最大値と最小値のバラツキ、すなわち、抵抗値の標準偏差の大きさで表される。
測定条件:実施例1〜6および比較例1〜6のインキを充填した各ボールペンサンプルをn=3本ずつ用意し、静・動摩擦測定機(Tribo−master Type TL201Sa、(株)トリニティーラボ製)を用い、ペン作成後未筆記のボールペンサンプルを、筆記荷重を150g、筆記角度70度、筆記速度7cm/secで15cm筆記させたときの筆記抵抗値を測定した。
筆記抵抗値の測定は、測定周波数200Hzにて10秒間測定を行った。測定開始0.5秒から2.0秒までの間で得られた筆記抵抗値のデータから、各ボールペンサンプルの筆記抵抗値の標準偏差を算出し、実施例、比較例の滑らかさの代表値とした。
標準偏差の値が小さいほど、得られた各点の筆記抵抗値にバラツキが少ないこととなり、筆記抵抗値の増減が少なく一定に近い筆記抵抗値と考えられる。よって、急に筆記抵抗値が増加するような点がなく、滑らかな筆記感触と感じられるものである。
【0038】
書き味の滑らかさ評価(官能試験):モニター20人で手書きによる官能試験を、実施例1〜6および比較例1〜6のインキを充填した各ボールペンサンプルの未筆記の状態のものを用い、筆記圧測定機(LABORATORY POLYGRAPH SYSTEM、日本光電工業(株)製)上にて高筆圧(100g〜200g)で筆記し、書き味を評価した。評価基準は、重いもしくは滑らかでない(1点)、軽いが滑らかでない、もしくは滑らかだが重い(2点)、軽くて滑らか(3点)、非常に軽くて滑らか(4点)で評価し、20人の平均値を算出した。
【0039】
分散安定性、溶解安定性評価
上記実施例1〜6および比較例1〜6のインキをガラス瓶に入れ、密封し、50℃の恒温室内に静置し、1カ月、3カ月静置後のインキ流動性を目視比較した。評価基準は、流動性が静置前とほとんど変化していない場合は○、増粘しているが流動する場合は△、流動しない場合は×で評価した。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1〜6のボールペン用インキ組成物は、上記一般式(化1)で示される化合物を含有しているので、他の配合物の優れた溶解性と金属表面への高い吸着性により、ボールとボールペンチップ内部の金属表面にまんべんなく吸着層を形成し、ボールとボール受座との金属同士の直接接触が緩和され、ボールの回転を阻害しなく、また、潤滑成分の効果を効率的に発揮させることができたため、極めて軽く滑らかな書き味を得ることができた。
【0042】
また、実施例1〜3のボールペン用インキ組成物は、上記一般式(化1)で示される化合物とアミド基及び/又はアミノ基を有する曳糸性樹脂とを併用しているので、インキ組成中の顔料、樹脂のそれぞれに対する優れた親和性、溶解性により、顔料と樹脂の相互作用が起こらず、良好な分散安定、溶解安定性を得ることができた。
【0043】
これに対して、比較例1〜6のボールペン用インキ組成物は、上記一般式(化1)で示される化合物を含有していないので、ボールとボールペンチップ内部の金属表面にまんべんなく吸着層を形成することができず、ボールとボール受座との金属同士の直接接触が緩和されないため、軽く滑らかな書き味を得ることはできない。
以上、詳細に説明したように本発明のボールペン用インキは、ボールペンを用いて筆記したときに極めて軽く滑らかな書き味を与えるボールペン用インキ組成物に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と下記一般式(化1)で示される化合物とを少なくとも含有するボールペン用インキ組成物。
【化1】

【請求項2】
更に、樹脂、有機溶剤、水、潤滑剤から選ばれる1種若しくは2種以上を含有する請求項1に記載のボールペン用インキ組成物。
【請求項3】
前記樹脂としてアミド基及び/又はアミノ基を有する曳糸性樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載のボールペン用インキ組成物。

【公開番号】特開2012−77102(P2012−77102A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220437(P2010−220437)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】