説明

ボールペン用水性インキ組成物

【課題】高湿度環境下でペン先を下向きに放置しても、インキが漏れない、書き出し時のかすれがないボールペン用水性インキ組成物を提供する。
【解決手段】水と、各種公知の染料、顔料である着色剤と、固形分量がインキ全量に対して2重量%以上5重量%以下のポリエチレンエマルジョンなどの樹脂エマルジョンと、この樹脂エマルジョンの固形分量に対して1重量%以上5重量%以下のフッ素含有界面活性剤とから少なくともなるボールペン用水性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高湿度環境下でペン先を下向きに放置しても、インキが漏れず、書き出し時のかすれがないボールペン用水性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンは、主に、ボールホルダーの先端から一部突出したボールの回転に伴って、ボール表面に付着したインキが紙などの被筆記面に転写され筆跡を形成するものである。比較的細い筆跡が得られると共に、繊維製ペン先や樹脂製ペン先を有する筆記具と異なり、長時間使用してもペン先の潰れなどによる筆跡幅の変化が少ないことから、多く使用されている。特に、ペン先が出没式の所謂ノック式ボールペンでは、筆記する際にキャップを取る手間が要らないので、好まれている。
ボールペンには水を主溶剤にした水性インキと、高沸点有機溶剤を主溶剤にした油性インキがあり、水性インキを使用したボールペンは油性インキを使用したボールペンより、ボールとボールホルダーの隙間を広げ、インキ吐出量を多くして滑らかな筆記感を得ている。
ノック式ボールペンでは、筆記しない状態でもペン先は常に外気に晒されているため、水性インキを使用したノック式ボールペンでは、ボールとボールホルダーの隙間が広いために、高湿度の環境にペン先を下向きに放置するとペン先からインキが漏れ出てしまったりすることがあった(以下、「インキの漏れ出し」と称する)。これはノック式ボールペンを胸ポケットに挿して汗をかいた状況などに相当するもので、実使用上問題になっている。インキの漏れ出しを防止する方法としては、インキ中に樹脂エマルジョンを入れること(特許文献1〜3)や、インキ中に溶解性の樹脂を加えること(特許文献4、5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−278586号公報
【特許文献2】特開2004−352909号公報
【特許文献3】特開2005−029729号公報
【特許文献4】特開平08−225762号公報
【特許文献5】特開平08−311148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂エマルジョンを入れたインキは、ペン先でインキが乾燥する際に、インキに分散していた樹脂粒子が集まり、チップ小口に被膜を形成してインキの漏れ出しを防止するものである。高湿度の環境でもインキの漏れがないようにするためには、インキ中の樹脂エマルジョンの添加量を多くして被膜を厚くする必要があるが、厚い被膜は書き出し時の筆記力ではすぐには壊れないので、インキが出なかったり出ても量が少なかったりして、筆記かすれになってしまう問題があった。
溶解性の樹脂を入れたインキは、ペン先でインキが乾燥する際に、インキに溶解していた樹脂が集まり、チップ小口に被膜を形成してインキの漏れ出しを防止するものである。溶解型の樹脂は水に溶けるように極性を持たせるので、その被膜は水分と親和性があり高湿度では膨潤してペン先の密着性が低下してインキ漏れし易い。そのため、高湿度でもインキ漏れを防ぐためにはインキ中の樹脂濃度を高くして厚い被膜を形成させる必要であるが、厚い被膜は書き出し時の筆記力ではすぐには壊れないので、インキが出なかったり出ても量が少なかったりして、筆記かすれになってしまう問題が顕著であった。
本発明の課題は、高湿度環境下でペン先を下向きに放置しても、インキが漏れず、書き出し時のかすれがないボールペン用水性インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、水と、着色剤と、固形分量がインキ全量に対して2重量%以上5重量%以下の樹脂エマルジョンと、この樹脂エマルジョンの固形分量に対して1重量%以上5重量%以下のフッ素含有界面活性剤とから少なくともなるボールペン用水性インキ組成物を要旨とする。
尚、ここで樹脂エマルジョンとは、媒体中に微粒子状の樹脂成分の分散質が分散したものであり、筆跡が乾燥する過程では粒子同士が合一して被膜を作成し、乾燥した筆跡中では粒子の形状を保持していないものである配合時は微粒子状でもインキ中の溶剤に溶解してしまい粒子形態とならないような物質や、乾燥した筆跡において配合時の粒子形状を維持するような硬度を備えた物質が分散した分散液は含まない。
【発明の効果】
【0006】
樹脂エマルジョンとフッ素含有界面活性剤を併用すると、高湿度環境下でペン先を下向きに放置してもインキが漏れず、書き出し時のかすれがない理由は以下の様に考える。
樹脂エマルジョンが形成する被膜は、微粒子状に分散した樹脂が、ペン先で乾燥して濃度が高くなり、互いに接触して形成されるものである。
インキ中には着色剤などの、乾燥すると固体になる親水性物質を含んでおり、樹脂エマルジョンが被膜を形成する際に、それらの親水性物質を樹脂粒子間に挟んだまま乾燥すると、被膜の中に被膜化しない物質を含んでしまう。この被膜が高湿度の状態に置かれると、被膜化しない親水性物質が吸湿して膨潤したり溶解したりして被膜が変形して、被膜とチップ小口の密着性が下がってインキの漏れ出しが生じる。
樹脂エマルジョンの固形分量に対して1重量%以上5重量%以下のフッ素含有界面活性剤を併用すると、樹脂エマルジョンが形成する被膜の島の中に、フッ素含有界面活性剤のミセルが混在した被膜を形成する。
被膜中に乾燥すると固体になる親水性物質を含んだ場合は、それらの物質は被膜形成の際に、樹脂エマルジョンが形成する皮膜の島の中に、乾燥すると固体になる親水性物質の島が混在した被膜を形成する。
フッ素含有界面活性剤と乾燥して固体になる親水性物質は、どちらも樹脂エマルジョンの樹脂粒子が作る被膜の島の間に存在するので、被膜形成時に溶剤が蒸発するに従い、フッ素含有界面活性剤のミセルと乾燥して固体となる親水性物質は互いに接することになり、親水性物質の表面はフッ素含有界面活性剤で覆われる。
このため、被膜中の親水性の物質は表面が撥水性になるので、被膜を高湿度の状態に置いても、親水性物質が吸湿して膨潤したり溶解したりして被膜が変形したりすることがないので、被膜とチップ小口の密着性が下がってインキの漏れ出しが生じることがない。
1重量%未満ではフッ素含有界面活性剤が溶解してしまいミセルを形成しないので、被膜を高湿度の状態に置くと、親水性物質が吸湿して膨潤したり溶解したりして被膜が変形したりするので、被膜とチップ小口の密着性が下がってインキの漏れ出しが生じる。
5重量%より多い時は、被膜中にフッ素含有界面活性剤の大きな海ができて、被膜の強度が大幅に低下する。そのため、ペン先を下向きにすると被膜はインキの自重で変形してチップ小口との密着性が下がり、インキの漏れ出しを生じる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
水はインキの主溶剤である。
【0008】
着色材は、従来インキに用いられている各種公知の染料、顔料が使用可能である。
染料の例を挙げると、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトエロー4、同26、同44、同50、ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199)などの直接染料や、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56などの酸性染料、C.I.フードエロー3、C.I.フードレッド14、C.I.アシッドブルー74、C.I.アシッドグリーン5などの食用染料、C.I.42000、C.I.44045、C.I.42535、C.I.45160、C.I.45160などの塩基性染料がある。
【0009】
顔料の例を挙げると、ファーネストブラック、コンタクトブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉、錫粉等の金属粉顔料、雲母系顔料、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同206、同207、同209、同216、同245、C.I.PIGMENT ORANGE
5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同139、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36等がある。これらは、1種もしくは2種以上混合して用いることが出来る。また、顔料を水性媒体に分散した分散顔料の例を挙げると、チバスペシャリティケミカルズ(株)製のunisperseシリーズ、クラリアントジャパン(株)製のHostfineシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製のDisperseシリーズ、Ryudyeシリーズ、富士色素(株)製のFuji.SPシリーズ、山陽色素(株)製のEmacolシリーズ、Sandyeシリーズ、オリエント化学工業(株)製のMicroPigmoシリーズ、MicroJetシリーズ、東洋インキ(株)製のRio Fastシリーズ、EM Colorシリーズ、住化カラー(株)製のPoluxシリーズ、(以上、無機、有機顔料の分散体)、日本蛍光化学(株)製のNKWシリーズ、東洋ソーダ(株)製のコスモカラーシリーズ、シンロイヒ(株)製のシンロイヒ・カラーベースシリーズ(以上、蛍光顔料の分散体)等がある。これらは1種もしくは2種以上混合して用いることが出来る。
尚、上記染料、顔料、分散顔料は混合して使用することもできる。
【0010】
樹脂エマルジョンは、ペン先で被膜をつくり、インキ漏れを防ぐもので、各種公知のものが使用できる。一例として、樹脂としては、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと高級アクリル酸エステルとの共重合体等の酢酸ビニル系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン等の合成ゴム系、ポリウレタン等が挙げられる。
これらの樹脂のエマルジョンとして、ニカゾールシリーズ(日本カーバイド工業(株)製)、セビアン−Aシリーズ(ダイセル化学工業(株)製)等の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、モビニールシリーズ(ニチゴー・モビニール(株)製)、デンカEVAテックス(電気化学工業(株)製)、スミカフレックスシリーズ(住友化学(株)製)、ポリゾール(昭和高分子(株)製)等のエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョン、ジョンクリルシリーズ(BASFジャパン(株)製)、リカボンドシリーズ(中央理化工業(株)製)、ポリマロンシリーズ(荒川化学(株)製)等のスチレン−アクリル共重合体系樹脂エマルジョン、ボンロンシリーズ(三井化学(株)製)、プライマルシリーズ(ウィルバー・エリス(株)製)、マイクロジェルシリーズ(日本ペイント工業用コーティング(株)製)等のアクリル系樹脂エマルジョン、アクアブリッド(ダイセル化学(株)製)等のアクリル酸エステル樹脂エマルジョン、JSRシリーズ(JSR(株)製)等のカルボキシル変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、スーパーフレックスシリーズ(第一工業製薬(株)製)ポリウレタンエマルジョン等が挙げられる。
また、吸水率が低い樹脂であるポリエチレンやポリプロピレンは有用である。これらの樹脂のエマルジョンとして、HYTEC Eシリーズ(東邦化学工業(株)製)等のポリエチレンエマルジョン、HYTEC Pシリーズ(東邦化学工業(株)製)等のポリプロピレンエマルジョンがある。
これらの樹脂エマルジョンは、1種、または2種以上を使用することができる。
【0011】
フッ素含有界面活性剤は被膜に撥水性を付与するものである。
例を挙げると、ノベック FC−4430、同4432(以上、住友スリーエム(株))、メガファック F−114、同410、同443、同470、同477、同479、同493(以上、DIC(株)製)、フタージェントFT−100、同110、同140A、同150、同250、同251、同300、同310、同400S(以上、(株)ネオス製)、エフトップ EF−101、同105、同204(以上、ジェムコ製)等がある。
【0012】
低温時でのインキの凍結防止、染料の可溶化剤、顔料の分散媒等、インキの種々の品質を担うインキ溶媒として、従来公知の水溶性有機溶媒が使用できる。具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。
【0013】
インキの適切な流動特性を得るために剪断減粘性を付与する水溶性高分子化合物を用いることができる。例えば、アラビアガム、トラガカントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、キサンテンガム、デキストラン、ウェランガム、ラムザンガム、アルカガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒドロキシプロピル化グァーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、アクリル樹脂塩、アクリル酸とアルキルメタクリレートの共重合体又はそれらの塩を1種または2種以上を併用して使用できる。
【0014】
着色剤を紙面に定着させるためなどで各種樹脂を併用することもできる。例えば、セラック、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂やその水素添加物、ケトン樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物などが挙げられる。
【0015】
黴の発生を防止するために、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、モルホリン、モルホリン誘導体などの防腐防黴剤を適宜加えることもできる。
【0016】
インキのpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパンジオールなどの塩基性物質や、硫酸などの酸性物質を添加してもよい。
【0017】
ペン先の防錆のためにベンゾトリアゾール、エチレンジアミン四酢酸などを、さらに各種の香料などを必要に応じて1種又は2種以上混合して用いることもできる。
【0018】
インキの製造方法としては従来知られている種々の方法が採用できる。例えば、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ニーダー等の装置を使用して作ることが出来る。濾過や遠心分離を行い粗大粒子や気体を除いても良い。製造時に加熱や冷却や加圧や減圧や不活性ガス置換をしても良い。動力は電気でも加圧空気でも良い。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、組み合わせて使用しても良い。
【0019】
インキを収容するインキ収容体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、シリコン樹脂等のインキの残量を確認できる透明又は半透明な高分子化合物を使用しても良いが、不透明高分子化合物や金属を使用しても差し支えない。また、インキがインキ収容体の内壁に付着することを抑制するためなど、必要に応じてインキ収容体内面にシリコン樹脂やフッ素樹脂などを塗布して撥インキ処理をすることもできる。後端開口するインキ収容体の場合には、インキの洩れや乾燥を抑制するためにインキ後端の界面に接触させてインキ逆流防止体を配置してもよい。インキ逆流防止体としては不揮発性液体をゲル化したものの他にスポンジ状のものなど各種公知のものが使用でき、不揮発性液体をゲル化したインキ逆流防止体にプラスチック製のフロートを入れてもよい。
【0020】
ボールペンのボールを回転自在に抱持するボールホルダーの材質には金属や合成樹脂が使用できる。金属としては洋白、真鍮、ステンレス等が、また合成樹脂としてはポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ナイロン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアクリレート樹脂等が用いられる。
【0021】
ボールペンのボールは、基材としてタングステンカーバイド等からなるいわゆる超硬合金、ステンレス、セラミックス、ルビーなど、ボールホルダーより硬い材料が好適に選択され、更に酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素から選ばれる1種もしくは2種以上を少なくとも表面に有するものである。
【0022】
ボールの直径は0.1mmから2.0mm程度までがよく使用されているがこれに限定するものではない。またペン先の密閉性を高めるために、ボールホルダー内にコイルスプリング等の弾性体を配置しても良い。
【0023】
ボールやボールホルダーの表面を撥水撥油剤で被覆してもよい。撥水撥油剤としては撥水または撥油効果を持たせるものであれば何を使用してもよく、具体的にはフッ素やシリコンを含有したものが好適に使用できる。撥水撥油剤にて被覆する際、ボールをボールホルダーに抱持させたボールペンチップの状態で被覆処理してもよく、あるいはボールやボールホルダーそれぞれを被覆処理してもよい。
撥水撥油剤の一例を挙げると、フッ素を含有したものでは、フッ素含有界面活性剤、フッ素樹脂、熱可塑性フッ素樹脂、フッ素系ポリマー、フッ素オイル、フッ素含有シランカップリング剤、フッ素含有芳香族化合物、有機溶剤、乳化剤、界面活性剤等を含有してなるフッ素樹脂塗料、合成樹脂溶液にフッ素樹脂を分散させた変性フッ素樹脂塗料、フッ素を含有しためっき液などが使用できる。
【0024】
これらの、ボールやボールホルダー表面に撥水撥油剤を被覆させる方法には、浸積、プレー噴霧、めっき、超臨界二酸化炭素処理などが挙げられる。浸積の際にプロペラ攪拌やボールミル、超音波振動の付与などの機械的な力を付与してもよい。更にボールやボールホルダー表面に被覆した撥水撥油剤の固着処理として、電気炉や高周波誘導装置などを使用した焼き付け、紫外線照射などをしてもよい。
【0025】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
【0026】
(インキ逆流防止体)
モービルSHF1001(α−オレフィンオリゴマー、米国、モービル・ケミカル・プロダクト・インク製) 30.0部
ルーカントHC−100(エチレン−α−オレフィンコポリマー、三井石油化学工業(株
)製) 25.5部
ルーカントHC−40(エチレン−α−オレフィンコポリマー、三井石油化学工業(株)
製) 39.5部
アエロジルR−972(疎水性シリカ、日本アエロジル(株)製) 3.5部
KF410(メチルスチリル変性シリコーンオイル、信越シリコン(株)製)1.5部
上記成分を混合し、プロペラ攪拌機を用いて160℃で2時間混練した。その後KF410を加え160℃でさらに1時間混練して、インキ逆流防止体を得た。
【0027】
実施例1
水 36.7部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)
製) 5.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.1部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン (水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン (キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0028】
実施例2
水 18.7部
UNISPERSE RED 2030S2 (赤色顔料分散液、チバスペシャリティミカルズ(株)製) 30.0部
HYTEC P−5300(ポリプロピレンエマルジョン、固形分30%、東邦化学工業(株)製) 33.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.1部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して赤色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0029】
実施例3
水 31.5部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
ジョンクリル 7001 (スチレン−アクリル共重合体エマルジョン、固形分42%、BASFジャパン(株)製) 10.0部
フタージェント FT−250(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、(株)ネオス製) 0.3部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0030】
実施例4
水 31.6部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
セビアン−A 215(酢酸ビニルエマルジョン、固形分50%、ダイセル化学工業(株)製) 10.0部
メガファック F−410(フッ素含有界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、DIC(株)製) 0.2部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0031】
比較例1
水 41.8部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン (水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン (キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0032】
比較例2
水 36.8部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)製) 5.0部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン (水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン (キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0033】
比較例3
水 41.7部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.1部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン (水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン (キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0034】
比較例4
水 38.005部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)製) 3.75部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.045部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0035】
比較例5
水 26.62部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)
製) 15.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.18部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン (水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン (キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0036】
比較例6
水 34.276部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)製) 7.5部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.024部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0037】
比較例7
水 34.12部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)
製) 7.5部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.18部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0038】
比較例8
水 38.038部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)製) 3.75部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.012部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0039】
比較例9
水 26.44部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
HYTEC E−4000(ポリエチレンエマルジョン、固形分40%、東邦化学工業(株)
製) 15.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.36部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0040】
比較例10
水 29.8部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
ジョンクリル PDX−6102B(溶解性樹脂、アクリル酸重合体塩、固形分34%、BASFジャパン(株)製) 12.0部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA(ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0041】
比較例11
水 29.68部
Water Black 100L(黒色染料溶液、オリエント化学工業(株)製)
40.0部
ジョンクリル PDX−6102B(溶解性樹脂、アクリル酸重合体塩、固形分34%、BASFジャパン(株)製) 12.0部
フタージェント FT−110(フッ素含有界面活性剤、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(株)ネオス製) 0.12部
エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 10.0部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 5.0部
ケルザン(キサンタンガム、剪断減粘性付与性多糖類、三晶(株)製) 0.5部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(防黴剤) 0.2部
ペプタイド PRA (ペン先乾燥防止剤、ポリペプチド、平均分子量 約5000、(株)
ニッピ製) 2.0部
水20部をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、ケルザンを徐々に加えて1時間攪拌する。その中に残りの材料を加え、更に1時間攪拌する。更に水冷しながらホモジナイザーを用いて20分攪拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して黒色ボールペン用水性インキ組成物を得た。
【0042】
試験用ボールペンの作成
上記実施例1〜4、比較例1〜11で得たインキをステンレス製のボールホルダーにタングステンカーバイト製の直径0.5mmのボールを抱持したボールペンチップを備えるボールペン(ぺんてる(株)製ハイブリッド(製品符号K105))のリフィルに約0.7g充填した。リフィル後端にインキ逆流防止体を約0.1g充填した後、ボールペンチップを外向きにして遠心機にて300gの遠心力を10分間加えてインキを脱気して、試験用ボールペンを作成した。夫々のボールペンサンプルを上質紙(JIS P3201 筆記用紙)に筆記速度7cm/秒、筆記角度70゜、筆記荷重100gの条件で、200mmの直線筆記を行い、初期筆記線とした。また各サンプルの重量を測定し、初期重量W1とした。
【0043】
インキ漏れ出し評価
ペン先を下向きにして、40℃湿度80%の環境に24時間靜置した後、室温に戻し、濾紙でペン先に付着したインキを拭き取って、重量W2を測定した。
W1−W2をインキ漏れ出し量として評価した。少ない方が良く、0.2mg以下なら実用上問題がない。
【0044】
筆記カスレ
ペン先を横向きにして、25℃湿度40%の環境に24時間、及び30日間靜置した後、上質紙(JIS P3201 筆記用紙)に筆記速度7cm/秒、筆記角度70゜、筆記荷重100gの条件で、200mmの直線筆記を繰り返した。初期筆記線と同じ濃度になるまで要した筆記距離をカスレ長さとして測定した。筆跡の濃度比較は目視でおこなった。カスレ長さが短い方ほど良いと判断するが、カスレが1mmを越えると筆記不良と感じる。
【0045】
【表1】

【0046】
以上のように、本発明のボールペン用水性インキ組成物は、高湿度環境下でペン先を下向きに放置しても、インキが漏れず、書き出し時のかすれがない優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、着色剤と、固形分量がインキ全量に対して2重量%以上5重量%以下の樹脂エマルジョンと、この樹脂エマルジョンの固形分量に対して1重量%以上5重量%以下のフッ素含有界面活性剤とから少なくともなるボールペン用水性インキ組成物。

【公開番号】特開2010−235852(P2010−235852A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87130(P2009−87130)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】