説明

ボールミル

【目的】 ボールミルにおいて、ボールミルの運転を止めることなしに、粉砕物の投入と排出を可能にすること。
【構成】 粉砕室内に粉砕媒体と粉砕材料を入れて密閉し、前記粉砕室をその回転中心線をほぼ水平にして回転させて前記粉砕材料を粉砕するボールミルにおいて、前記粉砕室の前記回転中心側の一方の側板の開口部に開閉弁を二重に取り付け、前記二重の開閉弁のうち内側の開閉弁を流通孔付開閉弁としたことを特徴とするボールミル。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はボールミルに関し、特にセラミックス原料・顔料などを微粉砕するのに広く用いられるバッチ式ボールミルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のボールミルにおいては、円筒型(又は多角形筒型)の粉砕室の回転軸方向の両方の側板を平面又は穏やかな球面とし、この側板の一方に開口部を設け、他方の側板にはボールミルの粉砕室を支えて回転駆動する回転軸を設けている。この開口部は粉砕材料の投入口であり、粉砕時にはこの開口部は蓋により密閉される。また前記粉砕室の内部の全面は、耐磨耗性のライナ(例えばセラミツクス・ゴム)で被われている。更に前記粉砕室の前記回転軸は軸受に回転可能に支えられ、この軸受には前記回転中心方向に直交する方向両側面に一対の支軸が突設され、この一対の支軸が水平架台に設けられた一対の軸受上に回転自在に載置されて開口部を真上方向から真下方向まで移動できるようになっている。また前記回転軸を回転中心として前記粉砕室を回転可能な回転駆動手段が配設されている。開口部を真上にした上で前記蓋を開いて前記粉砕室の内部に粉砕媒体(例えばセラミックスボール)と粉砕材料や分散液などを投入した後、前記蓋を閉じて開口部を水平方向に戻し、前記粉砕室を回転させることによって前記粉砕室内の粉砕材料を粉砕することができる。粉砕終了後、開口部を真上にした上で前記開口部から前記蓋を外して、前記開口部に前記粉砕媒体の径よりも小さい幅のスリット付蓋をセットする。湿式粉砕したときは、前記開口部を下にむけて、前記スリット付蓋によって前記粉砕媒体を前記粉砕室内部に止めながら、流動状の粉砕物のみを前記粉砕室から流出させていた。また乾式粉砕したときは、同様にスリット付蓋を前記開口部にセットした後、前記開口部を斜め下に向けて、前記粉砕室を継続して回転させて粉状の粉砕物を前記スリット付蓋により粉砕媒体と分離して前記粉砕室から少しずつ排出させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この粉砕材料の投入や排出には、ボールミルの運転を止めて前記開口部を開いてスリット付蓋を取付たり、逆にスリット付蓋を取り外して、前記開口部を蓋で閉じたりすることや、また前記蓋もしくはスリット付蓋の着脱・交換の度に前記開口部を正しく上に向け、更に前記流動性粉砕物の排出のために、前記開口部を正しく下に向けて止めるなどの操作が必要であった。これらの操作は、殆ど人力によって行われるため、多大な体力と熟練とが必要とされる困難な作業であった。したがって本発明の課題は、上述の従来例の欠点をなくし、多大な体力と熟練が不要で、ボールミルの運転を止めることなしに、粉砕物の投入と排出が可能なボールミルを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の構成は、粉砕室内に粉砕媒体と粉砕材料を入れて密閉し、前記粉砕室をその回転中心線をほぼ水平にして回転させて前記粉砕材料を粉砕するボールミルにおいて、前記粉砕室の前記回転中心側の一方の側板の開口部に開閉弁を二重に取り付け、前記二重の開閉弁のうち内側の開閉弁を流通孔付開閉弁としたことである。
【0005】
【作用】上記構成のボールミルでは、粉砕室の回転中心側の一方の側板の開口部に開閉弁を二重に取り付け、この二重の開閉弁のうち内側の開閉弁を流通孔付開閉弁としているので、前記開口部を上向きにしてこの二重の開閉弁を開いたときは、大きな塊の粉砕材料を粉砕室に入れることができ、一方前記開口部を下向きにしてこの二重の開閉弁のうち外側の開閉弁のみを開いたときは、前記内側の開閉弁の流通孔によって粉砕媒体の排出を阻止しつつ粉砕された粉砕材料を排出することができる。
【0006】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は第1実施例の一部切欠正面を示し、図2R>2〜図4はこの第1実施例を使用した状態の粉砕室の断面を示し、図5はこの第1実施例の流通孔付開閉弁の正面を示している。図1〜図5において、粉砕室1は、その後述する側板13に垂直に固定された回転軸11を回転中心111として回転可能に配設されている。粉砕室1の前記回転中心111側に側板12、13が設けられている。また円筒状側壁14が前記側板12、13で挟まれるように設けられ、これら側板12、13及び円筒状側壁14は粉砕室1の外殻を形成している。側板12には開口部121が形成され、また円筒状側壁14の上端には開口部141が形成されている。この開口部141は開閉可能な蓋142で密閉されている。前記側板12、13、円筒状側壁14及び蓋142の内側の全面にはライナー15が張り付けられている。また前記開口部121には二重の開閉弁21、22が設けられている。このうち外側の開閉弁21は流通孔のない蝶型弁であり、内側の開閉弁22は流通孔付蝶型弁である。図5は流通孔付開閉弁22の平面を示している。図5において流通孔付開閉弁22には多数の幅5mmのスリット221が平行に形成されている。更に開閉弁22の内側にはスリツト16が設けられている。このスリット16は後述する粉砕時に流通孔付開閉弁22を保護するためのものである。なおスリツト16のスリット幅は前記流通孔付開閉弁22のスリット221の幅よりも広く形成されている。開閉弁21、22は空気圧式アクチュエータによって開閉される方式のものである。このため開閉弁21にはコンプレッサー29の圧縮空気がバルブ26、エアパイプ23及びロータリージョイント25を介して供給される。一方開閉弁22にはコンプレッサー29の圧縮空気がバルブ27、エアパイプ24及びロータリージョイント25を介して供給される。またコントローラー28がバルブ26及びバルブ27の開閉を制御する。したがってコントローラー28がバルブ26を開くと開閉弁21が開き、コントローラー28がバルブ27を開くと開閉弁22が開くことになる。なお5は粉砕室1内に投入された粉砕材料及び粉砕媒体である。
【0007】基台3の上端に一対の軸受33が固定されている。この一対の軸受33は軸受31の両側面に突設された一対の支軸32を回動可能に支持している。また軸受31は前記粉砕室1の回転軸11を回動可能に支持している。軸受31の上端には、モーター34が固定されている。このモーター34の回転軸にはプーリー35が取り付けられ、一方前記粉砕室1の回転軸11の先端にはプーリー17が取り付けられ、このプーリー17とプーリー35とをベルト36が連結している。したがってモーター34は粉砕室1を回転可能に配設されている。ブレーキ付で正逆転可能なモーター41が基台3の側面に固定されている。ウォーム減速機42はこのモーター41の回転出力を減速して低速高トルクにするように配設されている。更にスプロケット43がこのウォーム減速機42の回転出力によって駆動されるように配置されている。一方スプロケット45が前記支軸32に固定され、このスプロケット45とスプロケット43とをチェーン44が連結している。したがってモーター41が粉砕室1を支軸32を回転中心として回動可能に配設されている。しかも減速機42によってモーター41の回転が減速されているので、粉砕室1の回動は極めて低速になる。また減速機42がウォームギヤ方式なので、粉砕室1の姿勢による回転力によって、粉砕室1がモーター41を駆動することがない。またスプロケツト43及びスプロケット45とチェーン44との間にスリツプが発生しない。このためモーター41が粉砕室1の姿勢を安定に制御可能である。
【0008】以上の構成により、図2〜図4に示す動作をする。まず図2において粉砕室1の開口部121を上向きにして、コントローラー28により開閉弁21及び開閉弁22を開く。この状態にて粉砕材料(例えばセラミックス、研磨材、顔料、ガラスの原料)を開口部121より粉砕室1内に投入する。なお湿式粉砕のときは分散液も粉砕室1内に投入する。その後コントローラー28により開閉弁21及び開閉弁22を閉じる。なお粉砕室1内には、10〜30mm径の粉砕媒体(例えばアルミナボール、シャコ石、磁器ボール、フランス玉石、スチールボール)があらかじめ開口部141から投入されている。つぎに図3に示すようにモーター41により粉砕室1の回転中心111をほぼ水平にして、モーター34により粉砕室1を回転させて前記粉砕材料を粉砕する。この時の最適回転数Nは、粉砕室1の大きさ、粉砕媒体の大きさ、粉砕方式等によって異なる。普通最適回転数Nは臨界回転数Ncに対する割合で表現される。臨界回転数Ncとは、粉砕室1の回転数を増加させていく上で、粉砕媒体が遠心力で粉砕室1の円筒状側壁14のライナー15に圧着されて、粉砕室1内に落下しなくなるときの回転数をいう。すなわちNcはNc=42.3×(D−d)-1/2〔rpm〕
となる。ただしDは粉砕室1の内径〔m〕、dは粉砕媒体径〔m〕、rpmは1分間の回転数である。また最適回転数割合N/Ncは、乾式で70〜80%、湿式で60〜70%である。なお矢印18は粉砕室1の回転方向を示している。このようにして粉砕が終了したのちに図4R>4に示すように、モーター34により粉砕室1を回転させつつ、モーター41により粉砕室1の開口部121を下側にする。この場合の回転中心111は重力方向19と所定の角度がある。このときコントローラー28により開閉弁21を開くと、粉砕された粉砕材料(湿式粉砕のときは流動状の粉砕物、乾式粉砕のときは粉状の粉砕物)が開閉弁22のスリット221を通り抜けて粉砕室1の外側に排出される。なお粉砕媒体はこのスリット221を通り抜けできないので、粉砕室1内に保持される。
【0009】図6は、本発明の第2実施例を示している。図6において、前記流通孔付開閉弁22の変形例として流通孔付開閉弁22aが示されている。流通孔としての多数の5mm径の円形孔222がこの流通孔付開閉弁22aの全面に形成されている。図7は、本発明の第3実施例を示している。図7において、前記流通孔付開閉弁22の変形例として流通孔付開閉弁22bが示されている。流通孔としての多数の5mm幅の長孔223がこの流通孔付開閉弁22bの全面に同心円状に形成されている。なお、上記の流通孔221、222、223の幅又は径は、5mmに限らず、粉砕媒体の最小径より小さいものであればよい。
【0010】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明のボールミルによれば、粉砕室の投入口の蓋を付け替える必要がないので、ボールミルの運転を止めることなしに、粉砕物の投入と排出が可能であり、しかもその際に多大な体力と熟練が不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の正面図である。
【図2】前記第1実施例の動作説明図である。
【図3】前記第1実施例の動作説明図であり、図2の続きを示すものである。
【図4】前記第1実施例の動作説明図であり、図3の続きを示すものである。
【図5】前記第1実施例の流通孔付開閉弁の正面図である。
【図6】本発明の第2実施例の流通孔付開閉弁の正面図である。
【図7】本発明の第3実施例の流通孔付開閉弁の正面図である。
【符号の説明】
1 粉砕室
111 回転中心
12 側板
121 開口部
21 開閉弁
22 流通孔付開閉弁
22a 流通孔付開閉弁
22b 流通孔付開閉弁
221 スリット
222 円形孔
223 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粉砕室内に粉砕媒体と粉砕材料を入れて密閉し、前記粉砕室をその回転中心線をほぼ水平にして回転させて前記粉砕材料を粉砕するボールミルにおいて、前記粉砕室の前記回転中心側の一方の側板の開口部に開閉弁を二重に取り付け、前記二重の開閉弁のうち内側の開閉弁を流通孔付開閉弁としたことを特徴とするボールミル。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平6−134330
【公開日】平成6年(1994)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−307674
【出願日】平成4年(1992)10月20日
【出願人】(000155001)株式会社マキノ (2)