説明

ボール

【課題】 シューズとの良好な特性だけでなく、空気中における良好な特性を有するボールを提供し、プレーを正確なものにする。サッカーボールにおいては、足でのボールコントロールおよびキーパーによるキャッチングを向上させる。
【解決手段】 複数のパネル(30,40)を備えた外皮を有する膨らませ式ボール(20)を提供する。パネル(30,40)はシーム(50)により相互に接続されている。各パネル(30,40)は、これらのパネル(30,40)の少なくとも外面上に延在する少なくとも1つの偽シーム(60)を備える。偽シーム(60)は、2枚のパネル(30,40)の間のシーム(50)の断面に実質的に対応する断面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルからなる外皮を有する膨らませ式ボール、特にサッカーボールに関する。
【背景技術】
【0002】
サッカーボールだけでなく、他の膨らませ式ボールは、典型的に以下のように製造される。第1の工程において、ラテックスから製造することのできる内袋が、カーカスで、または内袋の周りに巻き付けられたナイロン糸により補強される。次いで、外皮がカーカス上またはナイロンの巻付け上に配置される。
【0003】
単純なボールでは、外皮はプラスチック材料から一体成形でき、またはボールの外皮の2つの予備成形された外皮の半分が、例えば、特許文献1の図5に開示されたように、接着または封着により互いに接続される。本発明は、高品質のボールに関する。しかしながら、高品質のボールでは、外皮は多数の予め製造されたパネルからなる。ボールの外皮におけるこれらの2種類の根本的に異なる構造を明らかに区別するために、以下において、パネルは、ボール外皮の半分未満しか形成しない別々に予め製造された部分と解釈される。
【0004】
パネルは、例えば、その縁の公知の縫い付けにより、またはカーカスの表面への接着により、互いに対して適切に取り付けられなければならない。パネルの縁の互いへの直接の接着または(レーザ)溶着も考えられる。便宜上、2枚の隣接パネルが互いに接触する領域は、パネルが標準的な様式で互いに実際に縫われるか、またはそれらがボールの外皮を提供するために任意の他の様式で互いに対して固定されるか否かに無関係に、以下の説明において、単に「シーム(seam)」と呼ばれる。
【0005】
これまでは、サッカーボールの外皮は、一般に、32枚の五角形および/または六角形のパネルからなっていた。しかしながら、ごく最近のボールデザインは、従来より少なく大きいパネルを有する。新たなデザインにより、競技者によるボールコントロールが改善される。何故ならば、シューズに、シーム区域で蹴られたときと、パネルの中心で蹴られたときで異なってボールが反応するように、各シームは、外皮に不均一性、特に、局部的な剛性を生じさせるからである。シームの製造中のやむを得ない製造のばらつきは、さらに一層大きな不均一性をもたらし、競技者が完全にはボールをコントロールできず、蹴られたボールが正確な飛行軌跡にしたがわない別の理由である。さらに、多くのシームを配置すると、完全な球形度から逸脱してしまう。
【0006】
より大きなパネルを使用するとこれらの問題が減少する。何故ならば、同じサイズのボールの場合、外皮全体の製造に必要なシームの数が少なくなるからである。その上、パネルを相互に接続するおよび/またはカーカス上にパネルを配置するのに必要な労力が少なくなるので、パネルが大きくなると、製造コストが減少する。また、製造中に欠陥のあるシームを形成する可能性が少なくなるので、製造のばらつきが小さくなる。このことは、発生頻度並びにそのような製造のばらつきの程度にも当てはまる。
【0007】
しかしながら、本出願人は、大きなパネルを有するボールには、マイナスの飛行特性があり、例えば、不安定な傾向があり得ることに気付いた。図1に示したように、空力効果のために、ボールが意図しない予期せぬ動揺(flutter)動作をし得る。これらの空力効果のために、コントロールされたプレーおよび正確なシュートが実質的に損なわれることが直ちに明らかである。ハンドボールおよびバレーボールなどの他のスポーツのための膨らませ式ボールについても、同様の問題が生じる。
【0008】
空気力学的性質を改善するために、サッカーボールに、ボールの完成した外皮の上に均一な五角形の配置で延在する7本の平行な溝を設けることが特許文献2から知られている。この配置は、ボール外皮のあるパネル上には溝がないのに対し、他のパネル上では7本の平行な溝の3つの群までが互いに接触するようなものである。
【0009】
この配置によりボールの飛行特性は改善されるかもしれないが、競技中の正確さは改善されない。パネルの極めて異なる表面デザインにより、シューズによるボールの挙動が非常に異なる。ドリブル中だけでなく、狙いを定めたシュートについても、ボールは、競技者のシューズが、7本の平行な溝が設けられたパネルに当たったか、どのような隆線もない標準的なパネルに当たったかに依存して、異なって挙動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0011878号明細書
【特許文献2】米国特許第4318544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、シューズとの良好な特性だけでなく、空気中における良好な特性を有するボール、特にサッカーボールを提供する課題に基づき、したがって、本発明によって、より正確なプレーが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項1によるボールによってこの課題を解決する。ある実施の形態において、ボールは、シームにより相互に接続された複数のパネルを有する外皮を備えている。各パネルは少なくとも1つの偽シーム(pseudo-seam)を有し、この偽シームは、パネルの外面の少なくとも一部に亘り延在する。
【0013】
本発明の偽シームおよび各パネル上のそれらの分布のために、本発明のボールのパネルは、外皮のシームの数と長さが減少するように大きく製造することができる。本物のシームとは対照的に、偽シームは、パネルの変形特性と接触特性には実際的な影響を与えない。しかしながら、偽シームには、本物のシームとほぼ同じ空力効果があり、それによって、飛行経路における意図せぬ動揺動作が避けられる。このことは、特に、偽シームが、2枚のパネルの間のシームの交差作用に実質的に対応する断面、例えば、1〜3mm、好ましくは2mmの幅、および0.5〜2mm、好ましくは1mmの深さを有する実質的にV字形またはU字形の断面を有する場合に当てはまる。
【0014】
「実質的に」という用語は、この文脈において、並びに一般にこの説明内で、製造のばらつきの範囲内での精度を意味する。
【0015】
上述した特許文献2による従来技術とは対照的に、各パネルは、空力特性への効果が、全てのパネルに、それによって、完全な外皮に亘り均一に分布するように少なくとも1つの偽シームを含む。これにより、飛行特性が改善される。また、偽シームによる変形特性および接触特性の局部的な変化は、わずかしかなく、各パネル上に均一に分布している。その結果、シューズにより、空気中で完全にコントロールでき、非常に正確なプレーが可能になるボールが提供される。
【0016】
より均一な変形特性と接触特性並びにより良好な飛行特性以外に、本発明のボールは、外皮が、より少ない数のより大きなパネルから組み立てられるので、より費用効率的であり得る。したがって、これらのパネルを相互に接続するための接着、縫い付けまたは任意の他の方法には、より少ないプロセス工程と作業時間しか必要なく、これらの方法は、より小さい製造のばらつきで実施することができる。
【0017】
偽シームが、各パネルが少なくとも2つの副パネルに分割されるように外面に延在することが好ましい。したがって、ボールは、空力学的な観点から、まるで、複数の小さなパネルから製造されたように見え、どのような動揺動作もなく正確な飛行経路を可能にする。
【0018】
外面の均一な分布のために、パネルの外面において偽シームが平行ではないことが好ましい。これに対して、好ましい実施の形態において、各偽シームは、2本のシームと実質的に相互に連結されるか、またはパネルの外面上に閉じた曲線を形成する。しかしながら、各パネルが3本の弓状偽シームにより4つの副パネルに分割された他の実施の形態および/または少なくとも表面の一部に亘り副パネルの縁に対して平行に延在する1つ以上の追加の偽シームが予見される変更例も考えられる。
【0019】
既に述べたように、本発明のボールの外皮は、少ない数のパネルから製造することができる。外皮が12枚以下、好ましくは8枚のパネルからなることが好ましい。その結果、競技者のシューズにより正確にコントロールできるように、実質的により均一な変形特性と接触特性を有するボールが提供される。
【0020】
現在、外皮が第1群と第2群のパネルからなり、第1群の各パネルが、凸状の縁を有する丸みを帯びた三角形の形状を有し、第2群の各パネルが、凹状の縁と実質的に真っ直ぐな縁が交互になった、6つの角部を有する配置が特に好ましい。第1群のパネルの凸状の縁は、第2群のパネルの凹状の縁とシームを形成できる。大規模なテストにより、これらのパネル形状とその結果形成されたシームの分布が、ボールの特性にとって特に都合よいことが示された。包括的テストにより、このパネル形態とそれから生じたシームの分布は、ボールのプレー特性にとって特に有益であることが判明した。
【0021】
外皮において過剰の張力を避けるために、パネルが、外皮を形成するためにそれらを相互に接続する前に、三次元のドーム形を構成することがさらに好ましい。このことは、ドーム形成形型を用いた深絞りなどの、パネルに用いられる材料の適切な製造方法により行うことができる。しかしながら、ほとんど労力なく複雑なデザインを製造するために、パネルの射出成形も考えられる。
【0022】
空力特性を改善するように働く偽シームに加え、各パネルが、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.05mm以下の高さを有する表面テキスチャーをさらに含むことが好ましい。これらのひだは、偽シームよりも十分に小さく、したがって、ボールの空力特性にとってはそれほど関連しない。しかしながら、それらの波形は、特に濡れたときに、ボールのグリップを改善し、したがって、ボールコントロールおよびゴールキーパーによるボールのキャッチングまたは止める動作が容易になる。
【0023】
本発明の現在特に好ましい実施の形態において、各パネルは少なくとも1つの裏打ち材料および少なくとも1つの表面材料を備え、偽シームが、裏打ち材料と表面材料の両方に設けられることが好ましい。
【0024】
裏打ち材料は発泡材料を含み、表面材料は少なくとも1つのTPUフイルムを含むことが好ましい。例えば、PU、PA、またはPVUなどの他の材料をプラスチックフイルムに用いることもできる。例えば、TPUフイルムおよび/または裏打ち材料の(多成分)射出成形、真空成形、深絞りおよび/またはレーザエッチングによる表面材料および/または裏打ち材料のマスター成形などの、多くの異なる様式で偽シームおよび/または表面テキスチャーを形成することができる。
【0025】
本発明のボールのさらに別の改変が、従属請求項に定義されている。
【0026】
以下、本発明の態様が、添付の図面を参照して、より詳しく記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】空力効果によるボールの動揺動作を表す平面図
【図2a】本発明によるボールの現在好ましい実施の形態を示す概略図
【図2b】本発明によるボールの現在好ましい実施の形態を示す概略図
【図3】図2a,bの実施の形態における第1群のパネルの内の1つのパネルを示す詳細図
【図4】図2a,bの実施の形態における第2群のパネルの内の1つのパネルを示す詳細図
【図5】図2a,bの実施の形態におけるパネルの全てを示す二次元図
【図6】2枚のパネル間のシームを示す断面図
【図7】偽シームを示す断面図
【図8】異なる外形と品質のシームを有するボールの動揺動作を比較したグラフ
【図9】偽シームを有するボールの実施の形態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下において、本発明の好ましい実施の形態と変更例を、サッカーボールを参照して説明する。しかしながら、本発明はサッカーボールに制限されないことが理解されよう。反対に、ハンドボール、バスケットボール、バレーボール、アメリカンフットボールなどの他の膨らませ式ボールが、本発明の特徴を備えてもよい。
【0029】
図1は、ボールの動揺動作の基本的な問題を示している。空力効果の無い場合、ボール1の飛行経路は、ゴール10の右角に真っ直ぐな軌道2にしたがうであう。しかしながら、空力効果のために、ある条件下で、ボールに横力が作用するかもしれない。これらの横力の方向は、ボール1が結局は湾曲した軌道3に沿って動くように飛行経路上で変化し得る。そのような飛行挙動は正確なプレーを損なうことが明らかである。
【0030】
風洞における本出願人の多大な実験結果により、揺動動作が生じる可能性は数多くのパラメータによることが示された。重要なパラメータは、ボールの表面がどれくらい「滑らか」であるかである。32枚の五角形および/または六角形からなる、図1に示されたボールなどの、複数の小さなパネルから製造された外皮を有するボールは、より少なくより大きいパネルからなる外皮を有するボールよりも、動揺動作の傾向が一般に低い。公知のボールの表面に多数のシームがあると、乱流の非対称剥離が避けられ、それによって、ボールの動揺動作が避けられる。明らかに、ボールの周りの気流がいくつのシームと触れるかが決め手となる。
【0031】
しかしながら、冒頭に既に述べたように、複数のシームの配置により、外皮についてのボールの不均一変形特性と接触特性、高い製造コストおよび大きな製造のばらつきなどの、他の難点が生じてしまう。後者の難点は、そのようなボールの良好な飛行特性に悪影響を与え得る。シームの全てが完全とは限らない場合には、これにより、真っ直ぐな飛行経路からボールが相当逸れてしまうかもしれない。
【0032】
図2aおよび2bは、これらの難点を克服をするだけでなく、著しい動揺動作のない飛行経路を可能にする、本発明によるボール20の実施の形態を示している。図示されたボール20は、図3および4に個別に示されている、2つの群のパネル30,40を備えている。第1群のパネル30は、実質的に丸味を帯びた三角形の形状を有し、三角形の角が丸味を帯びているだけでなく、3つの側縁に凸状の曲率が設けられている。第2群のパネル40は6つの角を有し、これらの角は、交互になった凹状の縁と真っ直ぐな縁により接続されている。
【0033】
ボール20は、パネル30,40の縁が互いに接触するところに、シーム50を有する。これらのシーム50は多くの異なる様式で設けることができる。本実施の形態において、パネル30,40はカーカス(図示せず)に接着されている。それと同時に、パネル30,40の側縁は、シーム50が接着シームとして設けられるように互いに接着されている。しかしながら、シーム50に沿った任意の他の様式により、例えば、公知の縫い付けにより、または適切なプラスチック材料などの溶着により、パネル30,40を相互に接続することも考えられる。別の選択肢は、接触しているパネル30,40の間にどのような接着剤または他の直の相互接続なく、パネル30,40をカーカスだけに接着することである。この場合、シーム50は、2枚の隣接したパネル30,40の間の接触面積または移行領域だけにより画成される。
【0034】
本出願人は、より少ない数のより大きいパネルの使用による飛行特性の悪化が、偽シーム60をパネル30,40の表面に配置した場合に避けることができることを見出した。図6および7に示され、以下に詳しく説明するように、パネル30,40の表面上の偽シーム60は、上述したシーム50と実質的に同じ断面を有する。その結果、ボール20は、相当多い数のパネルを有するボールに相当する空力特性を得る。特に、ボールの上述した動揺動作は大幅に防がれる。
【0035】
図2aおよび2bから分かるように、好ましい実施の形態において、3つの偽シーム60が、パネル40の表面上に弓状に延在している。それゆえ、パネル40は、実質的に同じサイズの4つの副パネルに分割されている。偽シーム60は、互いから別々に延在し、パネル40の表面の少なくとも一部で平行ではない。さらに、それらの偽シームは、実質的に垂直な配置でシーム50と触れているが、シーム50と交差はしていない。しかしながら、別の実施の形態において、偽シーム60が本物のシームと実際に交差することも可能である。
【0036】
好ましい実施の形態において、他の群のパネル30の表面も偽シーム60を備えている。この偽シーム60は、閉じた曲線を形成し、パネル30を制限しているシーム50に対して実質的に平行に延在している。また、パネル30は、偽シーム60の配列により、2つの副パネルに分割されている。これらの副パネルがほぼ同じサイズであるのが理想である。
【0037】
図3および4は、それぞれ、パネル30(図3)および40(図4)の詳細図を示している。既に説明した偽シーム60以外に、これらの図面は、ボール20の個々のパネル30,40が、製造後であるが接着前に、ドーム形の三次元形状を有することが好ましいことを示している。例えば、(人工)皮革などの平らな外皮材料から一般に打ち抜かれ、ボールのカーカス/内袋上だけで三次元形状にされる、32枚の五角形および/または六角形から製造される標準的なサッカーボールのパネルとは異なり、パネル30,40には、ボール20に取り付けられる前に、図3および4に示される形状がすでに設けられている。その結果、ボール20の変形特性に悪影響を及ぼし得る、外皮への組立て後のパネル30,40における過剰な張力が避けられる。このことは、非常な大きいパネルを有するボール20にとって特に重要である。しかしながら、上述したドーム形は、より小さいパネルにとっても好ましい。ドーム形の三次元パネルの例示の製造方法が、本出願人によりモルテン社(Molten Corporation)と共に出願された、参照する欧州特許出願公開第1424105A1号明細書に開示されている。
【0038】
図3および4は、さらに、2枚のパネル30,40の縁の好ましい形状を示している。パネル30は凸状の縁31を有し、この縁は、ボール20(図示せず)のカーカスへの取付後に、パネル40の対応する凹状の縁41と共に、シーム50を形成する。長くわずかに湾曲したシーム50が、最終的なボール20(図2aおよび2b参照)の球状に特にうまく適合し、それゆえ、シーム50に沿った堅い区域の形成と張力が避けられる。図4は、さらに、実質的に真っ直ぐな縁42を示しており、この縁は、凹状の縁41と交互になっている。
【0039】
図5は、パネル30,40の好ましい形状、およびボール20の外皮を「展開した」後のそれらの相対的な配置の説明図を示している。外皮の全体が、8枚のパネル30,40だけから製造され、そのパネルの内の4枚が上述したパネル30の形状を有し、残りの4枚が上述したパネル40の形状を有するのが分かる。そのような少数のパネルの場合、労力だけでなく、シームの製造のばらつきが、標準的な32枚の五角形および/または六角形の場合におけるよりも、実質的に少なくなるのが明らかである。しかしながら、上述したパネルの形状も、正確に8枚のパネルの使用も、本発明に必須ではない。他のパネルの形状と数、例えば、12枚によっても、都合の良いボール特性がもたらせられ得る。別の好ましい実施の形態において、6枚の均一なパネルが用いられる。
【0040】
図5は、さらにもう一度、パネル30,40上に延在する偽シーム60を示している。特に、パネル30上の偽シーム60の閉じた曲線が見られ、これは、パネル30の縁に対して実質的に平行に延在している。また、パネル40上の3つの個々の偽シーム60が、表面に弓状にパネル40の縁から実質的に垂直に始まり、それによって、パネル40を4つの副パネルに分割しているのが分かる。風洞内でのテストにより、パネル30,40および図5の偽シームの分布により、ボールの特に都合の良い飛行特性がもたらされ、最小量の動揺動作を示すことが分かった。
【0041】
図9は、さらに好ましい実施の形態を示している。閉じた曲線の形態にある偽シームの代わりに、ここでは、各パネル30が各パネル40に似た4つの副パネルに分割されるように、実質的にシーム50から別のシーム50まで延在している偽シーム60’がパネル30にも配置されている。この実施の形態の変更例(図示せず)において、さらに別の偽シームが、パネル30,40上の湾曲した偽シームに対して平行に延在する。これらの湾曲した偽シームは、パネル30,40の偽シームよりわずかに短い長さとわずかに浅い深さを有することが好ましい。
【0042】
上述した偽シーム60,60’以外に、図5における陰影は、パネル40上の表面テキスチャー70をさらに示している。好ましい実施の形態において、パネル30,40の縁領域および偽シーム60の領域以外に、表面テキスチャー70は、各パネル30,40の全区域を覆っている。その結果、ボール20のグリップが改善され、それにより、足によるボールコントロールだけでなく、ゴールキーパーによりボールのキャッチングも容易になる。表面テキスチャー70は、1〜10mmの長さおよび0.5〜2mmの幅を有することが好ましく、パネル30,40上の多数の個々の突起または凹部により設けられることが好ましい。それらの突起または凹部は、パネル30,40にある外円と同心円に配置されている。あるいは、個々の突起は、円錐形、ドーム形、ピラミッド形などに形成されていて差し支えない。
【0043】
重要な態様は、これらの突起が、パネルの表面を越えて過剰には延在しないことであり、そうでないと、ボールの空力効果に相当な影響がもたらされてしまう。したがって、表面テキスチャー70の突起の高さは0.5mm以下であることが好ましい。好ましい実施の形態において、その高さはたった0.05m以下である。
【0044】
パネル30,40の偽シーム60並びに表面テキスチャー70は、様々な製造方法により形成できる。上述した欧州特許出願公開第1424105A1号明細書に開示されている方法において、各パネル30,40は、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から製造された表面材料、並びに例えば、PU発泡体であってよい裏打ち材料を含む。他の例示の裏打ち材料が、本出願人の欧州特許出願公開第0894514A2号明細書に開示されている。欧州特許出願公開第1424105A1号明細書に開示されている方法によれば、ボール20の製造のために、表面材料は、成形型内で深絞りにより成形され、それゆえ、上述した三次元ドーム形および偽シーム60と所望であれば表面テキスチャー70が与えられる。
【0045】
同様に、表面材料に同時に相互に接続されていてもよい、裏打ち材料が発泡せしめられる。製造されたパネル30,40は、2mmから10mmまでの範囲の厚さを有し、現在好ましい実施の形態は、3mmから6mmまでの範囲の厚さを有する。完成したパネルの表面材料は、裏打ち材料の周りの縁に延在し、したがって、接着、溶着、縫い付けなどにより、シーム50を提供するために使用できる(図6参照)。
【0046】
上述した深絞り以外に、パネル30,40を製造するために、真空成形などの、当業者に公知の好ましいプラスチック材料に関する他の成形方法を用いても差し支えない。この場合、TPUフイルムまたは別の適切なプラスチック材料から製造されたフイルムを加熱し、成形型および真空により、所望の形状にされる。また、この方法において、その表面には、既に成形中に、偽シーム60および所望であれば、上述した表面テキスチャー70を設けることができる。
【0047】
パネルのマスター成形のために射出成形も考えられる。そのようにするために、パネルの表面材料および裏打ち材料は、連続して、マスター成形し、接着するか、二成分射出成形として同時に射出成形するか、またはある形態において層状に挿入物を入れて直ぐに連続して射出成形しても差し支えない。好ましい材料としては、異なる密度または異なる色を有する材料の二成分発泡体が挙げられる。表面材料としての透明なTPUフイルムと並べてパネル内に配置された異なる色の発泡体が、新たなデザインの可能性を開いた。例えば、完全には硬化されていない射出成形部品を、エンボス加工または他の方法により追加に変形させられる場合、混成タイプのマスター成形および整形も考えられる。
【0048】
さらに、例えば、レーザによるエッチングによって、または適切な機械装置によるエンボス加工によって、後に表面を加工処理することも可能である。偽シーム60の場合のように(以下参照)、形成した構造の精度が重要である場合、レーザによるエッチングが特に都合よい。パネル30,40の表面の要素のいくつかが成形中に既に形成されており、他の要素が、後に表面材料および/または裏打ち材料を加工処理することによって形成される、複合製造方法も考えられる。
【0049】
使用した製造方法に関係なく、パネル30,40は、異なる裏打ち材料から製造されたいくつかの層並びに表面材料のいくつかの層を含んでもよい。裏打ち材料のいくつかの層の複合体が、上述した欧州特許出願公開第0894514A2号明細書に模範的に説明されている。表面材料に異なる色を有するTPU層をいくつか使用することにより、後にレーザで上側TPU層の部分をエッチングで除去して、異なる色の下側TPU層を露出すれば、特別な光学的デザインを形成することが可能になる。これにより、製造から長い時間が経過した後に、個人情報またはグラフィックアートが、例えば、重要な競技の後に、レーザにより作成されれば、例えば、単純なボールの個人化が可能になる。
【0050】
図6および7は、シーム50および偽シーム60の形状の類似性を示している。これらの図面は、実際の縮尺ではない説明図である。シーム50および偽シーム60は、約2mmの幅を持つ断面を有することが好ましいのが分かる。シーム50の形状にできるだけ似ているように、また同様の空力効果を生じるために、偽シーム60は、好ましくは1mmの深さを持つ実質的にV字形またはU字形の断面を有する(図7参照)。パネル30,40の長期安定性のために、図7に示されているように、偽シーム60が、表面材料71だけでなく、裏打ち材料72にも設けられていることが都合よい。
【0051】
約2mmの幅と約1mmの深さの好ましい値は、本発明にとって必須ではないが、それらの値は、ボール20の飛行特性の最適化に寄与する。
【0052】
図8は、同じシームと偽シームを有するが、それぞれ、異なるシーム断面および不十分に加工処理されたシームを有するボールについての、動揺動作による、完全な飛行経路からのそれの比較を示している。
【0053】
図8は、2mmの幅と約1mmの深さを持つ完全な(偽の)シームを有するボールが、最小量の動揺それを生じることを示している。平均のそれは、シーム内に接着剤が残っているボールから、それぞれ、15%および20%の「不完全な」(偽)シームを有するボール、全ての(偽)シームが4mmの幅と1mmの深さを有するボールへと、増加している。この比較により、1mmから3mm、好ましくは2mmの幅、および0.5mmから2mm、好ましくは1mmの深さの請求項に示された値は実際に、飛行経路の精度における相当な改善に寄与することが示されている。
【符号の説明】
【0054】
1、20 ボール
2 真っ直ぐな軌跡
3 湾曲した軌跡
30、40 パネル
50 シーム
60、60’ 偽シーム
70 表面テキスチャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル(30,40)を備えた外皮を有する膨らませ式ボール(20)であって、
a. 前記パネル(30,40)がシーム(50)により相互に接続されており、
b. 各パネル(30,40)が、該パネル(30,40)の少なくとも外面上に延在する少なくとも1つの偽シーム(60)を備える、
ことを特徴とする膨らませ式ボール(20)。
【請求項2】
前記偽シーム(60)が、2枚のパネル(30,40)の間の前記シーム(50)の断面に実質的に対応する断面を有することを特徴とする請求項1記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項3】
前記偽シーム(60)が、1mmから3mmの幅および0.5mmから2mmの深さを持つ実質的にV字形またはU字形の断面を有することを特徴とする請求項2記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項4】
前記偽シーム(60)が、各パネル(30,40)が少なくとも2つの副パネルに分割されるように前記パネル(30,40)の外面上に延在することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項5】
前記偽シーム(60)が、パネル(40)の外面上で平行ではないことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項6】
各偽シーム(60)が、2つのシーム(50)と実質的に相互に接続しているか、または前記パネル(30)の外面上で閉じた曲線を形成していることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項7】
各偽シーム(60)が、2つのシーム(50)を実質的に相互に接続しており、前記2つのシーム(50)と実質的に垂直に触れていることを特徴とする請求項6記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項8】
各偽シーム(60)が、閉じた曲線を形成し、前記それぞれのパネル(30)に対応する前記シーム(50)に対して実質的に平行に延在することを特徴とする請求項6または7記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項9】
前記外皮が12枚以下のパネル(30,40)を備えることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項10】
前記外皮が第1群と第2群のパネル(30,40)を備え、前記第1群の各パネル(30)が、凸状の縁(31)を持つ丸味を帯びた三角形であり、前記第2群の各パネル(40)が、凹状(41)と実質的に真っ直ぐ(42)とが交互になった縁により接続された6つの縁を有することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項11】
前記第1群のパネル(30)の前記凸状の縁(31)が、前記第2群のパネル(40)の前記凹状の縁(41)と共にシーム(50)を形成することを特徴とする請求項10記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項12】
前記パネル(30,40)が、前記外皮を形成するために相互に接続される前に、三次元のドーム形を有することを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項13】
各パネル(30,40)が表面テキスチャー(70)をさらに備えることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項14】
前記表面テキスチャー(70)が0.05mm以下の高さを有することを特徴とする請求項13記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項15】
各パネル(30,40)が少なくとも1つの裏打ち材料(72)および少なくとも1つの表面材料(71)を含むことを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項16】
前記偽シーム(60)が前記裏打ち材料(72)および/または前記表面材料(71)に設けられていることを特徴とする請求項15記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項17】
前記偽シーム(60)および/または前記表面テキスチャー(70)が、前記表面材料(71)の真空成形により形成されていることを特徴とする請求項15または16記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項18】
前記偽シーム(60)および/または前記表面テキスチャー(70)が、前記表面材料(71)の深絞りにより形成されていることを特徴とする請求項15または16記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項19】
前記偽シーム(60)および/または前記表面テキスチャー(70)が、前記表面材料(71)および/または前記裏打ち材料(72)のレーザエッチングにより形成されていることを特徴とする請求項15または16記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項20】
前記偽シーム(60)および/または前記表面テキスチャー(70)が、前記表面材料(71)および/または前記裏打ち材料(72)のエンボス加工により形成されていることを特徴とする請求項15または16記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項21】
前記偽シーム(60)および/または前記表面テキスチャー(70)が、前記表面材料(71)および/または前記裏打ち材料(72)のマスター成形により形成されていることを特徴とする請求項15または16記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項22】
前記表面材料(71)のマスター成形が、前記表面材料(71)および/または前記裏打ち材料(72)の射出成形を含むことを特徴とする請求項21記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項23】
前記裏打ち材料(72)が発泡材料を含むことを特徴とする請求項15から21いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。
【請求項24】
前記表面材料(71)が少なくともプラスチックフイルムを含むことを特徴とする請求項15から21いずれか1項記載の膨らませ式ボール(20)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−240427(P2010−240427A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86772(P2010−86772)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(398032441)アディダス アーゲー (6)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋