説明

ポジションセンサ

【課題】 シフトレバーが選択したレンジを電気的な接点の接触によって検知する場合、接点の短絡又は断線等の異常が発生したときには異常の発生を検知できるポジションセンサを提供する。
【解決手段】 ポジションセンサ1は、5つのレンジP,R,N,D,Bのうち1つを選択するシフトレバー2と、各レンジP,R,N,D,Bに対応した複数の接点111〜113,131〜135,141,142,151,152とを備える。第1バックアップ固定接点141,142及び第2バックアップ固定接点151,152は、可動接点112,113の可動方向における長さを、バックアップ固定接点141,142,151,152に対応する通常固定接点132,134,135の長さより長く構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトレバーが選択した変速機のレンジを検知するポジションセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載される変速機は、入力された駆動力を当該変速機の出力側に伝達しないニュートラル、車両を後退させるリバース、車両を前進させるドライブ等のレンジを有しており、車両の運転者が運転に合わせてレンジを適宜選択している。
【0003】
このような変速機では、油圧によって作動する油圧作動機構としてのクラッチやブレーキ等を複数備えているものがある。これらの油圧作動機構は、駆動力を伝達する伝達状態と伝達状態を断つ開放状態の2つの状態を、油圧が供給されるか否かに応じて切り替えることができるように構成されている。
【0004】
そして、変速機は、当該変速機のレンジ毎に、これらの油圧作動機構のそれぞれの状態をいずれにするかが設定されている。具体的には、車両に搭載されたシフトレバーにより変速機のレンジが選択されたときに、変速機のレンジが当該選択されたレンジに切り替わるように、各油圧作動機構の状態を予め設定された状態に切り替えることで、変速機のレンジが切り替わる。
【0005】
従来、このように選択された変速機のレンジに応じて、各油圧作動機構のそれぞれの状態を切り替えるものとして、マニュアルバルブが用いられている。このようなマニュアルバルブは、変速機の各レンジにそれぞれ対応した出力ポートを有している。マニュアルバルブは、ワイヤー等によってシフトレバーに機械的に接続されており、シフトレバーの操作に連動して動く。このとき、マニュアルバルブは、運転者がシフトレバーを操作して選択したレンジに応じた出力ポートから油圧を出力する。
【0006】
このようなマニュアルバルブは、シフトレバーのレンジの数に応じてランドを設ける必要があり、レンジの数が増加するに従いマニュアルバルブを長く形成する必要があるため、小型化が難しい。
【0007】
近年では、車両の小型化の要求が強まっており、このように小型化が難しいマニュアルバルブを使用せずに、変速機の各レンジを切り替えることが検討されている。このようなマニュアルバルブを使用しない車両として、特許文献1に示されるように、油圧を供給するか否かを切り替えるソレノイドバルブを4つ備え、シフトレバーが選択したレンジに応じて、これらのソレノイドバルブのそれぞれのオン状態/オフ状態を切り替えている車両が知られている。この車両では、シフトレバーに連動するマニュアルバルブを使用していないので、シフトレバーに連動するスイッチの状態をECUが検知して、各ソレノイドバルブのオン状態/オフ状態を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2666645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のマニュアルバルブを使用する場合には、シフトレバーに連動するので、シフトレバーによって選択されたレンジと、当該レンジに応じた油圧作動機構に対する油圧の供給は必ず一致する。しかしながら、特許文献1に記載の車両では、電気的なスイッチの状態をECUが検知する場合、スイッチの接点の短絡異常又は断線異常等により、必ずしもシフトレバーによって選択されたレンジと同じレンジをECUが検知できるとは限らない。
【0010】
このようにシフトレバーによって選択されたレンジとは異なるレンジをECUが検知してしまうと、運転者が選択したレンジとは異なるレンジで車両が作動する恐れがある。例えば、運転者が前進するレンジを選択したにも拘らず、接点の異常によりECUが、後退するレンジが選択されたと誤検知して車両が後退する場合や、運転者がニュートラルレンジを選択したにも拘らず、接点の異常によりECUが、前進するレンジが選択されたと誤検知して車両が前進する場合等が考えられる。このような事態を防止するためには、接点に異常があることを検知することが必要である。
【0011】
本発明は、以上の事情に鑑み、シフトレバーが選択したレンジを電気的接点の接触によって検知する場合に、接点の短絡又は断線等の異常が発生したときには、そのような異常の発生を検知できるポジションセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のレンジのうち1つのレンジを選択するように操作されるシフトレバーと、前記複数のレンジに応じた複数の接点とを備え、前記複数の接点は、可動接点と固定接点とで構成され、前記可動接点は、前記シフトレバーの操作に連動して動くように構成され、前記固定接点は、前記連動して動く可動接点と接触したときに当該可動接点と導通し、導通した前記可動接点と前記固定接点に対応する前記レンジが、前記シフトレバーによって選択されたと検知するポジションセンサであって、
前記複数の接点は、前記複数のレンジのそれぞれに対応する1又は複数の通常接点と、前記通常接点とは別に前記複数のレンジのうち1又は複数の所定のレンジのそれぞれに対応する1又は複数のバックアップ接点とに分けられ、
前記1又は複数のバックアップ接点のそれぞれは、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、前記可動接点と前記固定接点とが導通していない状態である非導通状態から前記可動接点と前記固定接点とが導通している状態である導通状態に遷移する以前に、当該バックアップ接点が非導通状態から導通状態に遷移し、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、導通状態から非導通状態に遷移した以降に、当該バックアップ接点が導通状態から非導通状態に遷移することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、シフトレバーによって所定のレンジが選択される場合には、当該所定のレンジに対応する通常接点が導通状態であるときには、当該所定のレンジに対応するバックアップ接点は必ず導通状態であるように構成されている。このため、通常接点が導通状態であるときにバックアップ接点が非導通状態である場合には、通常接点に短絡異常が発生しているか、又はバックアップ接点に断線異常が発生しているかのいずれかの状態であることが分かる。通常接点が導通状態であるときに、当該通常接点が対応するレンジに対応するバックアップ接点が必ず導通状態であるように構成されていない場合には、接点長さの製造誤差(「接点の設計上の長さ」と「製造された接点の実際の長さ」との差)によって、通常接点が導通状態であるときにバックアップ接点が非導通状態である場合に、いずれかの接点に異常があるとは判定できない。このように、本発明により、異常があるか否かを検知することができる。
【0014】
本発明において、前記1又は複数のバックアップ接点のそれぞれは、互いに同一のレンジに対応する第1バックアップ接点と第2バックアップ接点の2つからなることが好ましい。これにより、所定のレンジのそれぞれは、通常接点に加え、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点の3つの接点により3重系となる。このため、1つの接点に異常が発生した場合であっても、残りの2つの接点によりシフトレバーが選択したレンジを正しく検知できる可能性が高くなる。
【0015】
本発明において、前記レンジは、車両を走行させるときに用いられる少なくとも2つの走行レンジと、車両が停車しているときに用いられる少なくとも2つの非走行レンジとであり、前記所定のレンジは、前記走行レンジのレンジのみからなることが好ましい。シフトレバーが選択しているレンジとは異なる挙動をする場合、大まかに分けて、非走行レンジを選択しているときに車両が走行する場合と、走行レンジを選択しているときに車両が走行しない(すなわち、停車状態を維持又は慣性走行している)場合とが考えられる。特に後者の場合は、運転者の意図に反して車両が走行する恐れがあるため、前者に比べて後者のような場合の発生を抑制することが望まれる。このため、バックアップ接点が設けられる所定のレンジを走行レンジとすることで、より抑制すべき場合を抑制することができると共に、各レンジに対してバックアップ接点を設ける場合に比べて部品点数を少なくすることができる。
【0016】
本発明において、前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第1対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、前記第1対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、前記非走行レンジのいずれか1つに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、前記第1対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態に遷移した場合には前記シフトレバーによって前記第1対象レンジが選択されたと検知することが好ましい。
【0017】
上述したように、バックアップ接点(詳細には、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点)は、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する通常接点が導通状態である場合には、必ず導通状態であるように構成されている。従って、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が導通状態の場合であっても、当該バックアップ接点に対応するレンジに対応する通常接点が非導通状態の可能性がある。
【0018】
このため、第1対象レンジに対応する第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が導通状態であり、第1対象レンジに対応する通常接点が非導通状態であり、非走行レンジのいずれか1つに対応する通常接点が導通状態である場合には、「第1対象レンジに対応する第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点に短絡異常が発生している」か、又は「非走行レンジのいずれか1つに対応する通常接点に短絡異常が発生している」かは不明である。このとき、導通状態となっている第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点に対応したレンジが選択されていると検知するようにした場合、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点に短絡異常が発生していた場合には、運転者はシフトレバーによって非走行レンジを選択しているにも拘らず車両が走行してしまう。従って、この段階では、シフトレバーによって非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知する。
【0019】
そして、この後に、第1対象レンジに対応する通常接点が導通状態に遷移したときには、第1対象レンジに対応する通常接点、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が導通状態となる。この場合には、「第1対象レンジに対応する通常接点、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点の全ての接点に短絡異常が発生している」か、又は「非走行レンジのいずれか1つに対応する通常接点に短絡異常が発生している」かのいずれかとなるが、全ての接点に短絡異常が発生する可能性は限りなく小さいと考えられ、非走行レンジのいずれか1つに対応する通常接点に短絡異常が発生していると考えられる。従って、このような場合には、シフトレバーによって第1対象レンジが選択されていると検知する。
【0020】
これにより、非走行レンジが選択されている可能性が小さくない場合には、シフトレバーによって非走行レンジが選択されていると検知することで、運転者の意図に反して車両が走行する可能性を低減している。また、非走行レンジが選択されている可能性が限りなく小さい場合には、車両を走行させることで、運転者の意図に反して車両が停止したままとなる可能性を低減している。
【0021】
本発明において、前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第2対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、前記第2対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、前記非走行レンジのいずれか1つのレンジである第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、前記第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態から非導通状態に遷移し、且つ前記非走行レンジのうち前記第3対象レンジ以外のレンジである第4対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態に遷移した場合には、前記シフトレバーによって前記第2対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に異常があると検知することが好ましい。
【0022】
これにより、第2対象レンジに対応する第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が導通状態であり、第2対象レンジに対応する通常接点が非導通状態であり、第3対象レンジに対応する通常接点が導通状態である場合には、上述したように、非走行レンジを選択している運転者の意図とは異なり車両が走行してしまうことを抑制するためにシフトレバーによって非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知する。
【0023】
そして、この後に、第3対象レンジに対応する通常接点が導通状態から非導通状態に遷移し、且つ第4対象レンジに対応する通常接点が非導通状態から導通状態に遷移した場合には、当該状態が遷移した2つの通常接点は、一方の通常接点が断線異常となり且つ他方の通常接点が短絡異常となる可能性は限りなく低く、シフトレバーの操作によって状態が遷移したものと考えられるので、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点に短絡異常があると検知する。このとき、第3対象レンジに対応する通常接点と第4対象レンジに対応する通常接点との状態の遷移は同時である必要はない。
【0024】
このように、比較的に可能性の高いバックアップ接点の短絡異常と検知することで、運転者がシフトレバーによって非走行レンジを選択したにも拘らず車両が走行することを抑制できる。
【0025】
本発明において、前記第3対象レンジが前記車両の車輪が固定されるレンジであり、前記第4対象レンジが前記車両の車輪が固定されないレンジであり、前記第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態から非導通状態となり、且つ前記第4対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態となった場合には、前記シフトレバーによって前記第4対象レンジが選択されたと検知することが好ましい。これにより、車両の車輪が固定されないレンジが選択されたと検知することで、車両の車輪を固定する制御をする必要がなく、制御をより高速に処理できる。
【0026】
本発明において、前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、前記第5対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、前記レンジのうち前記第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に対応する1又は複数のレンジ以外のいずれか1つのレンジに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、前記第5対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態となった場合には、前記シフトレバーによって前記第5対象レンジが選択されたと検知することが好ましい。
【0027】
これにより、第5対象レンジに対応する第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が導通状態であり、第5対象レンジに対応する通常接点が非導通状態であり、第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に対応する1又は複数のレンジ以外のレンジ(例えば、前進レンジ用の2つのレンジに対して共通の第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点がある場合には、当該2つのレンジ以外のレンジ)のうちいずれか1つのレンジに対応する通常接点が導通状態である場合には、上述したように、非走行レンジを選択している運転者の意図とは異なり車両が走行してしまうことを抑制するためにシフトレバーによって非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知する。
【0028】
そして、この後に、第5対象レンジに対応する通常接点が導通状態になった場合には、第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に対応する1又は複数のレンジ以外のいずれか1つのレンジに対応した導通状態である通常接点が短絡異常であるとして、シフトレバーによって第5対象レンジが選択されたと検知する。
【0029】
これにより、第5対象レンジに対応する第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点が短絡異常であるような場合において、シフトレバーの操作により導通状態となる通常接点が切り替わるときに、一時的に全ての通常接点が非導通状態となったときには、導通状態である接点が、短絡異常である第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点のみとなる。そこで、このような場合を考慮して、あるレンジに対応する3つの接点(通常接点、第1バックアップ接点、第2バックアップ接点)の全てが導通状態となったときに、第5対象レンジが選択されたと検知することで、非走行レンジを選択している運転者の意図とは異なり車両が走行してしまうことを、より可能性を高く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の本実施形態のポジションセンサを含む車両を示す図。
【図2】ポジションセンサの各接点の構造について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態のポジションセンサについて説明する。図1は、ポジションセンサ1を搭載した車両80の構成について説明するブロック図である。車両80は、ポジションセンサ1と、シフトレバー2と、蓄電池81と、電動機82と、車輪83と、発電機84と、エンジン85と、車両制御装置86とを備える。
【0032】
シフトレバー2は、車両80の運転者が運転中に操作可能に配置されており、当該車両80に設定された後述する5つのレンジ(パーキングP,リバースR,ニュートラルN,ドライブD,ブレーキB)のうち1つのレンジを選択する。
【0033】
ポジションセンサ1は、各種演算処理を実行する中央演算処理装置(図示省略)と、この中央演算処理装置で実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果等を記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(図示省略)とを備えた制御装置10を備える。
【0034】
制御装置10は、シフトレバー2が選択したレンジを検知して、当該選択されたレンジに応じた電気信号をポジションセンサ1の外部に出力する。この制御装置10によるレンジの検知については後述する。
【0035】
蓄電池81は、二次電池として構成されている。電動機82は、蓄電池81から供給された電力によって出力軸(図示省略)を正転方向又は逆転方向に回転駆動するように構成され、当該出力軸の回転駆動が減速機(図示省略)などを介して車輪83に伝達されることで当該車両80が走行する。以下、電動機82の出力軸を正転方向に回転駆動することを「電動機82を正転駆動する」といい、電動機82の出力軸を逆転方向に回転駆動することを「電動機82を逆転駆動する」という。
【0036】
発電機84は、発電用モータで構成されており、入力軸(図示省略)が、エンジン85の出力軸(図示省略)と接続されている。発電機84は、エンジン85により当該発電機84の入力軸が回転駆動されることで発電し、当該発電した電力を蓄電池81に供給することで、蓄電池81は電力を蓄えることができる。
【0037】
車両制御装置86は、各種演算処理を実行する中央演算処理装置(図示省略)と、この中央演算処理装置で実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果等を記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(図示省略)とを備える。車両制御装置86には、ポジションセンサ1(若しくは制御装置10)からの出力信号(シフトレバー2が選択したレンジに応じた電気信号)が入力される。車両制御装置86は、この入力された信号に応じて電動機82又は車両80の各種装置を制御する。
【0038】
車両制御装置86は、ポジションセンサ1から入力された信号によりシフトレバー2によって選択されたレンジがいずれであるかを判定したときには、電動機82又は車両80の各種装置を次のように制御する。
【0039】
(1)シフトレバー2によってニュートラルNが選択されているという信号が入力されたときには、電動機82の駆動力を車輪83に伝達しないように遮断する。
【0040】
(2)シフトレバー2によってパーキングPが選択されているという信号が入力されたときには、ニュートラルNが選択されているという信号が入力されたときと同様に、電動機82の駆動力を車輪83に伝達しないように遮断する。これに加えて、車輪83が回転不能となるように、パーキングギヤ(図示省略)とパーキングポール(図示省略)とを噛み合わせることで機械的にロックする。
【0041】
(3)シフトレバー2によってドライブDが選択されているという信号が入力されたときには、車両80のアクセルペダル(図示省略)の操作量に応じて、電動機82を正転駆動して車両を前進方向に走行させる(前進させる)。
【0042】
(4)シフトレバー2によってブレーキBが選択されているという信号が入力されたときには、ドライブDが選択されているという信号が入力されたときと同様に、車両80のアクセルペダルの操作量に応じて、電動機82を正転駆動して車両を前進させる。これに加えて、「車両80のアクセルペダルの操作が停止されたとき(アクセル開度が0若しくは0付近)」又は「車両80のブレーキペダル(図示省略)が操作されたとき」には、ドライブDが選択されているときよりも回生量が大きくなるように制御する。
【0043】
ここで、「回生」とは、慣性で走行するときに回転させられる車輪83から電動機82の出力軸に伝達される駆動力により発電し、この発電によって得られた電力を蓄電池81に蓄えることをいう。すなわち、回生によって、車両80が走行する運動エネルギーを電気エネルギーに変換することで、車両80を制動するように力が作用することとなる。また、「回生量が大きくなるように制御する」とは、回生による制動力を大きくすること、若しくは「車両80に搭載させた機械的な制動装置による制動力」に対する「回生による制動力」の割合を大きくすることをいう。
【0044】
(5)シフトレバー2によってリバースRが選択されているという信号が入力されたときには、車両80のアクセルペダルの操作量に応じて、電動機82を逆転駆動して車両を後退方向に走行させる(後退させる)。
【0045】
以上のように、本実施形態の車両80には、走行するためのレンジである走行レンジとしてリバースR,ドライブD,ブレーキBの3つのレンジがあり、停車するためのレンジである非走行レンジとしてパーキングP,ニュートラルNの2つのレンジがある。また、走行レンジのうち、ドライブD,ブレーキBの2つのレンジは前進レンジであり、リバースRのレンジは後退レンジである。
【0046】
次に、図2を参照して、ポジションセンサ1の詳細な構造について説明する。ポジションセンサ1は、電気的接点として、3つの可動接点111〜113と、9つの固定接点131〜135,141,142,151,152とを備える。
【0047】
3つの可動接点111〜113は基板(図示省略)に貼着されており、当該基板はシフトレバー2とワイヤー(図示省略)で機械的に連結されている。このため、可動接点111〜113のそれぞれは、シフトレバー2が操作されることで、互いに相対的な位置関係を保ったまま、当該操作に連動して動く。また、可動接点111〜113のそれぞれは、可動方向に対して垂直方向を長手方向とする長方形状の金属板として構成されており、可動方向に対して垂直な方向に間隔を設けて配置されている。3つの可動接点111〜113は、本発明における通常接点の一部を構成する接点である通常可動接点111、本発明における第1バックアップ接点の一部を構成する接点である第1バックアップ可動接点112及び本発明における第2バックアップ接点の一部を構成する接点である第2バックアップ可動接点113からなる。
【0048】
9つの固定接点131〜135,141,142,151,152は、基板(図示省略)に貼着されており、当該基板は車両80を構成する部材の一部に固定されている。これらの固定接点のうちいずれか1又は複数の固定接点といずれかの可動接点111〜113とが接触することで、当該互いに接触した固定接点と可動接点とが導通(電気的に接続)される。
【0049】
可動接点111〜113のそれぞれは、シフトレバー2に連動することで、9つの固定接点131〜135,141,142,151,152のうち導通する1又は複数の固定接点が切り替わる。換言すると、シフトレバー2の位置に応じて可動接点111〜113の位置も決まり、ひいては当該位置において可動接点と導通する1又は複数の固定接点も決まる。従って、可動接点と導通状態となっている固定接点に応じて、シフトレバー2が選択しているレンジを検知することができる。以下、固定接点が可動接点と導通している状態を導通状態といい、固定接点が可動接点と導通していない状態を非導通状態という。
【0050】
9つの固定接点131〜135,141,142,151,152は、大まかに、本発明における通常接点の一部を構成する接点である「5つの通常固定接点131〜135」、本発明における第1バックアップ接点の一部を構成する接点である「2つの第1バックアップ固定接点141,142」及び本発明における第2バックアップ接点の一部を構成する接点である「2つの第2バックアップ固定接点151,152」に分けられる。
【0051】
ここで、シフトレバー2に連動して動く通常可動接点111は、通常固定接点131〜135のいずれか1つと導通するように構成されている。以下、パーキング用固定接点131が通常可動接点111と導通している状態をPONといい、パーキング用固定接点131が通常可動接点111と導通していない状態をPOFFといい、リバース用固定接点132が通常可動接点111と導通している状態をRONといい、リバース用固定接点132が通常可動接点111と導通していない状態をROFFといい、ニュートラル用固定接点133が通常可動接点111と導通している状態をNONといい、ニュートラル用固定接点133が通常可動接点111と導通していない状態をNOFFといい、ドライブ用固定接点134が通常可動接点111と導通している状態をDONといい、ドライブ用固定接点134が通常可動接点111と導通していない状態をDOFFといい、ブレーキ用固定接点135が通常可動接点111と導通している状態をBONといい、ブレーキ用固定接点135が通常可動接点111と導通していない状態をBOFFという。
【0052】
シフトレバー2に連動して動く第1バックアップ可動接点112は、第1バックアップ固定接点141,142のいずれか1つと導通するように構成されている。以下、第1後退用バックアップ固定接点141が第1バックアップ可動接点112と導通している状態をR1ONといい、第1後退用バックアップ固定接点141が第1バックアップ可動接点112と導通していない状態をR1OFFといい、第1前進用バックアップ固定接点142が第1バックアップ可動接点112と導通している状態をF1ONといい、第1前進用バックアップ固定接点142が第1バックアップ可動接点112と導通していない状態をF1OFFという。
【0053】
シフトレバー2に連動して動く第2バックアップ可動接点113は、第2バックアップ固定接点151,152のいずれか1つと導通するように構成されている。以下、第2後退用バックアップ固定接点151が第2バックアップ可動接点113と導通している状態をR2ONといい、第2後退用バックアップ固定接点151が第2バックアップ可動接点113と導通していない状態をR2OFFといい、第2前進用バックアップ固定接点151が第2バックアップ可動接点113と導通している状態をF2ONといい、第2前進用バックアップ固定接点151が第2バックアップ可動接点113と導通していない状態をF2OFFという。
【0054】
5つの通常固定接点131〜135のそれぞれは、車両80に設定されたレンジP,R,N,D,Bに対応した接点であり、図2に示されるように、「パーキングPに応じた接点であるパーキング用固定接点131」→「リバースRに応じた接点であるリバース用固定接点132」→「ニュートラルNに応じた接点であるニュートラル用固定接点133」→「ドライブDに応じた接点であるドライブ用固定接点134」→「ブレーキBに応じた接点であるブレーキ用固定接点135」の順番に間隔を設けて直線状に並べられている。5つの通常固定接点131〜135のそれぞれは、その並び方向を長手方向とする長方形状の金属板として形成されている。
【0055】
5つの通常固定接点131〜135のそれぞれは、接点の長さがLP,LR,LN,LD,LBとなるように設計されている。このとき、5つの通常固定接点131〜135のそれぞれは、製造誤差(「接点の設計上の長さ」と「製造された接点の実際の長さ」との差)によって変化する接点の長さに対する最小許容寸法(許容される長さの最小値)がLPmin,LRmin,LNmin,LDmin,LBminとされ、製造誤差によって変化する接点の長さに対する最大許容寸法(許容される長さの最大値)がLPmax,LRmax,LNmax,LDmax,LBmaxとされている。
【0056】
2つの第1バックアップ固定接点141,142は、5つの通常固定接点131〜135のうち走行レンジR,D,Bに対応する接点である。2つの第1バックアップ固定接点141,142のそれぞれは、通常固定接点131〜135の並び方向に対して法線方向に間隔を設けて、通常固定接点131〜135の並び方向と平行になるように図2の右側から左側に向かって「後退レンジRに応じた接点である第1後退用バックアップ固定接点141」→「前進レンジD,Bに応じた接点である第1前進用バックアップ固定接点142」の順番に間隔を設けて直線状に並べられている。第1バックアップ固定接点141,142は、その並び方向を長手方向とする長方形状の金属板として形成されている。
【0057】
2つの第1バックアップ固定接点141,142のそれぞれは、長さがLR1,LF1となるように設計され、最小許容寸法がLR1min,LF1minとされ、最大許容寸法がLR1max,LF1maxとされている。
【0058】
2つの第2バックアップ固定接点151,152は、第1バックアップ固定接点141,142と同様に、5つの通常固定接点131〜135のうち走行レンジR,D,Bに対応する接点である。2つの第2バックアップ固定接点151,152のそれぞれは、第1バックアップ固定接点141,142の並び方向に対して法線方向の通常固定接点131〜135とは反対側に間隔を設けて、通常固定接点131〜135及び第1バックアップ固定接点141,142の並び方向と平行になるように図2の右側から左側に向かって「後退レンジRに応じた接点である第2後退用バックアップ固定接点151」→「前進レンジD,Bに応じた接点である第2前進用バックアップ固定接点152」の順番に間隔を設けて直線状に並べられている。第2バックアップ固定接点151,152は、その並び方向を長手方向とする長方形状の金属板として形成されている。
【0059】
2つの第2バックアップ固定接点151,152のそれぞれは、長さがLR2,LF2となるように設計され、最小許容寸法がLR2min,LF2minとされ、最大許容寸法がLR2max,LF2maxとされている。
【0060】
第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151は、その長さが「LR1min≧LRmax」及び「LR2min≧LRmax」となるように設定されている。そして、当該接点141,151は、図2の左端が、リバース用固定接点132が最大許容寸法LRmaxである場合の、リバース用固定接点132の左端よりも左側に配置されると共に、当該接点141,151の右端が、リバース用固定接点132が最大許容寸法LRmaxである場合の、リバース用固定接点132の右端よりも右側に配置される。
【0061】
なお、当該接点141,151の左端が、リバース用固定接点132が最大許容寸法LRmaxである場合の、リバース用固定接点132の左端と一致するように配置してもよいし、当該接点141,151の右端が、リバース用固定接点132が最大許容寸法LRmaxである場合の、リバース用固定接点132の右端と一致するように配置してもよい。このとき、いずれの端も一致するように配置した場合においては、第1後退用バックアップ固定接点141又は第2後退用バックアップ固定接点151が最小許容寸法(LR1min又はLR2min)である場合には、当該最小許容寸法であるバックアップ接点(141又は151)の両端のそれぞれは最大許容寸法LRmaxであるリバース用固定接点132の両端のそれぞれと一致する(すなわち、同じ長さとなる)。
【0062】
第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152は、図2の左端が、ブレーキ用固定接点135の左端と一致するように配置されると共に、当該接点142,152の右端が、ドライブ用固定接点134が最大許容寸法LDmaxである場合の、ドライブ用固定接点134の右端よりも右側に配置される。
【0063】
なお、当該接点142,152の右端が、ドライブ用固定接点134が最大許容寸法LDmaxである場合の、ドライブ用固定接点134の右端と一致するように配置してもよい。このとき、第1前進用バックアップ固定接点142又は第2前進用バックアップ固定接点152が最小許容寸法(LF1min又はLF2min)である場合には、当該最小許容寸法であるバックアップ接点(142又は152)の右端は最大許容寸法LDmaxであるドライブ用固定接点134の右端と一致する。
【0064】
以上のように、可動接点111〜113及び固定接点131〜135,141,142,151,152が構成されているので、第1バックアップ固定接点141,142及び第2バックアップ固定接点151,152のそれぞれは、それぞれが対応するレンジ(R又はD,B)に応じた通常固定接点(132又は134,135)が通常可動接点111と導通状態になるときには、必ず第1バックアップ可動接点112及び第2バックアップ可動接点113と導通状態になっているように設定されている。
【0065】
詳細には、シフトレバー2の操作によって通常可動接点111が、パーキング用固定接点131側又はニュートラル用固定接点133側からリバース用固定接点132に移動する場合には、「R1ON及びR2ONとなり、その後にRON」となるか又は「同じタイミングでR1ON、R2ON及びRON」となる。このように、R1ON及びR2ONとなる前にRONとならないように、接点の長さ及び配置が設定されている。
【0066】
また、シフトレバー2の操作によって通常可動接点111が、リバース用固定接点132側からパーキング用固定接点131又はニュートラル用固定接点133に移動する場合には、「ROFFとなり、その後にR1OFF及びR2OFF」となるか又は「同じタイミングでROFF、R1OFF及びR2OFF」となる。このように、R1OFF及びR2OFFとなる前にROFFとならないように、接点の長さ及び配置が設定されている。
【0067】
同様に、シフトレバー2の操作によって通常可動接点111が、ニュートラル用固定接点133側からドライブ用固定接点134に移動する場合には、「F1ON及びF2ONとなり、その後にDON」となるか又は「同じタイミングでF1ON、F2ON及びDON」となる。このように、F1ON及びF2ONとなる前にDONとならないように、接点の長さ及び配置が設定されている。
【0068】
また、シフトレバー2の操作によって通常可動接点111が、ドライブ用固定接点134側からニュートラル用固定接点133に移動する場合には、「DOFFとなり、その後にF1OFF及びF2OFF」となるか又は「同じタイミングでDOFF、F1OFF及びF2OFF」となる。このように、F1OFF及びF2OFFとなる前にDOFFとならないように、接点の長さ及び配置が設定されている。
【0069】
ここで、本実施形態において、走行レンジR,D,Bが、本発明における「所定のレンジ」に相当する。また、本実施形態において以上のように、通常固定接点131〜135、第1バックアップ固定接点141,142及び第2バックアップ固定接点151,152のそれぞれの長さ及び配置が設定されていることが、本発明における「前記1又は複数のバックアップ接点のそれぞれは、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、前記可動接点と前記固定接点とが導通していない状態である非導通状態から前記可動接点と前記固定接点とが導通している状態である導通状態に遷移する以前に、当該バックアップ接点が非導通状態から導通状態に遷移し、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、導通状態から非導通状態に遷移した以降に、当該バックアップ接点が導通状態から非導通状態に遷移する」に相当する。
【0070】
次に、制御装置10によるシフトレバー2が選択しているレンジの判定(検知)について説明する。
【0071】
制御装置10は、リバースRに対応する3つの接点リバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つのうち2つ以上の接点が導通状態であると共に、これらの3つ以外の固定接点(131,133,134,135,142及び152)が非導通状態である場合には、シフトレバー2によってリバースRが選択されていると判定する。
【0072】
また、リバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つの接点が導通状態である場合には、これらの3つ以外の固定接点(131,133,134,135,142及び152)のうちいずれか1つが導通状態であっても、シフトレバー2によってリバースRが選択されていると判定する。
【0073】
制御装置10は、ドライブ用固定接点134、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つのうち2つ以上の接点が導通状態であると共に、これらの3つ以外の固定接点(131,132,133,135,141及び151)が非導通状態である場合には、シフトレバー2によってドライブDが選択されていると判定する。
【0074】
また、ドライブ用固定接点134、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つの接点が導通状態である場合には、これらの3つ以外の固定接点(131,132,133,135,141及び151)のうちいずれか1つが導通状態であっても、シフトレバー2によってドライブDが選択されていると判定する。
【0075】
制御装置10は、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つのうち2つ以上の接点が導通状態であると共に、これらの3つ以外の固定接点(131,132,133,134,141及び151)が非導通状態である場合には、シフトレバー2によってブレーキBが選択されていると判定する。但し、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の2つのみが導通状態である場合には、本実施形態ではドライブDが選択されていると判定する。なお、この2つのみが導通状態である場合に、ブレーキBが選択されていると判定してもよい。
【0076】
また、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つの接点が導通状態であると共に、これらの3つとドライブ用固定接点134以外の固定接点(131,132,133,141及び151)のうちいずれか1つが導通状態である場合には、シフトレバー2によってブレーキBが選択されていると判定する。
【0077】
なお、ドライブ用固定接点134、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152に加え、ブレーキ用固定接点135が導通状態である場合には、シフトレバー2によってブレーキBが選択されていると判定してもよい。この場合に、ドライブD及びブレーキBのうちどちらをシフトレバー2によって選択されている状態とするかは、車両80の商品性、走行状態等の条件に応じて適宜設定すればよい。
【0078】
制御装置10は、後退レンジRに対応した固定接点であるリバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つの接点が導通状態であると共に、前進レンジD,Bに対応した固定接点であるドライブ用固定接点134、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の4つのうち2つの接点が導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。
【0079】
なお、この場合において、本実施形態のポジションセンサ1の制御装置10は、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定しているが、これに限るものではなく、3つの接点(132,141,151)が導通状態であることより、シフトレバー2によってリバースRが選択されていると判定してもよい。
【0080】
制御装置10は、前進レンジD,Bに対応した固定接点であるドライブ用固定接点134、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の4つの接点のうちいずれか3つが導通状態であると共に、後退レンジRに対応した固定接点であるリバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つのうち2つの接点が導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。
【0081】
なお、この場合において、本実施形態のポジションセンサ1の制御装置10は、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定しているが、これに限るものではない。例えば、制御装置10は、ドライブ用固定接点134、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つの接点が導通状態であると共に、リバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つのうち2つの接点が導通状態である場合には、シフトレバー2によってドライブDが選択されていると判定してもよい。同様に、制御装置10は、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つの接点が導通状態であると共に、リバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つのうち2つの接点が導通状態である場合には、シフトレバー2によってブレーキBが選択されていると判定してもよい。
【0082】
制御装置10は、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の2つが導通状態であると共に、ニュートラル用固定接点133が導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。なお、この場合には、本実施形態のポジションセンサ1の制御装置10は、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定しているが、これに限るものではなく、パーキングPが選択されていると判定してもよい。
【0083】
また、制御装置10は、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の2つが導通状態である場合に、パーキング用固定接点131が導通状態から、パーキング用固定接点131が非導通状態になると共にニュートラル用固定接点133が導通状態に変化した場合には、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151に短絡異常が発生していると判定する。
【0084】
また、制御装置10は、リバース用固定接点132、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の3つが導通状態である場合には、パーキング用固定接点131及びニュートラル用固定接点133のいずれかが導通状態であったとしても、シフトレバー2によってリバースRが選択されていると判定する。
【0085】
制御装置10は、ドライブ用固定接点134、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の4つのうちいずれか2つが導通状態であると共に、パーキング用固定接点131及びニュートラル用固定接点133のいずれかが導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。この場合、本実施形態のポジションセンサ1の制御装置10は、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定しているが、これに限るものではなく、パーキングPが選択されていると判定してもよい。
【0086】
また、制御装置10は、ドライブ用固定接点134、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つが導通状態である場合には、パーキング用固定接点131及びニュートラル用固定接点133のいずれかが導通状態であったとしても、シフトレバー2によってドライブDが選択されていると判定する。同様に、制御装置10は、ブレーキ用固定接点135、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の3つが導通状態である場合には、パーキング用固定接点131及びニュートラル用固定接点133のいずれかが導通状態であったとしても、シフトレバー2によってブレーキBが選択されていると判定する。
【0087】
制御装置10は、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の2つが導通状態であると共に、パーキング用固定接点131が導通状態である場合には、シフトレバー2が操作されることで所定時間(例えば10[msec])内にニュートラル用固定接点133が導通状態に変化したときには、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。
【0088】
制御装置10は、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の2つが導通状態であると共に、パーキング用固定接点131が導通状態である場合には、シフトレバー2が操作されることで所定時間(例えば10[msec])内にニュートラル用固定接点133が導通状態に変化したときには、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。
【0089】
制御装置10は、第1後退用バックアップ固定接点141及び第2後退用バックアップ固定接点151の2つが導通状態であると共に、パーキング用固定接点131、ニュートラル用固定接点133、ドライブ用固定接点134及びブレーキ用固定接点135のいずれか1つが導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。なお、このとき、シフトレバー2によってパーキングPが選択されていると判定してもよい。
【0090】
この状態の後、導通状態になっていた通常接点(131,133,134又は135)が非導通状態になり、リバース用接点132が導通状態となった場合には、リバースRがシフトレバー2によって選択されていると判定する。
【0091】
制御装置10は、第1前進用バックアップ固定接点142及び第2前進用バックアップ固定接点152の2つが導通状態であると共に、パーキング用固定接点131、リバース用固定接点132及びニュートラル用固定接点133のいずれか1つが導通状態である場合には、シフトレバー2によってニュートラルNが選択されていると判定する。なお、このとき、シフトレバー2によってパーキングPが選択されていると判定してもよい。
【0092】
この状態の後、導通状態になっていた通常接点(131,132又は133)が非導通状態になり、ドライブ用接点134及びブレーキ用接点135のいずれかが導通状態となった場合には、当該導通状態になった接点(134又は135)に対応するレンジ(ドライブD又はブレーキB)がシフトレバー2によって選択されていると判定する。
【0093】
以上のように、本実施形態のポジションセンサ1では、通常固定接点131〜135に比べて第1バックアップ固定接点141,142及び第2バックアップ固定接点151,152が長く形成されているので、シフトレバー2によって所定のレンジが選択される場合には、当該所定のレンジに対応する通常接点が導通状態であるときには、当該所定のレンジに対応するバックアップ接点は必ず導通状態であるように構成されている。これにより、ポジションセンサ1は、異常があるか否かを可能な限り検知することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、固定接点131〜135,141,142,151,152を直線状に並べたが、これに限るものではない。例えば、各固定接点131〜135,141,142,151,152を扇形の円弧部分に沿うように配置してもよい。このとき、可動接点111〜113の可動方向は、当該円弧に沿うように可動する。この場合において、当該円弧を弧の一部とする円の中心からの距離に応じて、一番外側に通常接点を配置し、その内側に第1バックアップ接点を配置し、更に内側に第2バックアップ接点を配置するときには、円弧の中心に近いほど可動接点111〜113の移動距離が短いため、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点の固定接点は、必ずしも本実施形態の通常固定接点131〜135より長く形成しなくてもよい。これであっても、「シフトレバーによって所定のレンジが選択される場合には、当該所定のレンジに対応する通常接点が導通状態であるときには、当該所定のレンジに対応するバックアップ接点は必ず導通状態であるように構成されている」こととなる。
【0095】
また、本実施形態の通常接点、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点の構成に限るものではなく、例えば、通常接点、第1バックアップ接点及び第2バックアップ接点を一直線上に並べたものであってもよいし、通常接点と第1バックアップ接点の各接点が互い違いに並ぶようなものであってもよい。
【0096】
また、レンジの種類は本実施形態に限るものではなく、ブレーキBの代わりに、前進用の第2走行レンジであるセカンド2、ローLなどのレンジがあったものであってもよい。
【0097】
また、本実施形態の車両は、シリーズハイブリッド車両としているがこれに限るものではなく、複数のレンジを有する変速機において、シフトレバーの選択するレンジを電気的な接点で検知するものであれば適用できる。
【符号の説明】
【0098】
1…ポジションセンサ、2…シフトレバー、80…車両、83…車輪、P,R,N,D,B…レンジ、R,D,B…走行レンジ、P,N…非走行レンジ、111…通常可動接点(可動接点、通常接点)、112…第1バックアップ可動接点(可動接点、バックアップ接点、第1バックアップ接点)、113…第2バックアップ可動接点(可動接点、バックアップ接点、第2バックアップ接点)、131〜135…通常固定接点(固定接点、通常接点)、141,142…第1バックアップ固定接点(固定接点、バックアップ接点、第1バックアップ接点)、151,152…第2バックアップ固定接点(固定接点、バックアップ接点、第2バックアップ接点)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンジのうち1つのレンジを選択するように操作されるシフトレバーと、前記複数のレンジに応じた複数の接点とを備え、前記複数の接点は、可動接点と固定接点とで構成され、前記可動接点は、前記シフトレバーの操作に連動して動くように構成され、前記固定接点は、前記連動して動く可動接点と接触したときに当該可動接点と導通し、導通した前記可動接点と前記固定接点に対応する前記レンジが、前記シフトレバーによって選択されたと検知するポジションセンサであって、
前記複数の接点は、前記複数のレンジのそれぞれに対応する1又は複数の通常接点と、前記通常接点とは別に前記複数のレンジのうち1又は複数の所定のレンジのそれぞれに対応する1又は複数のバックアップ接点とに分けられ、
前記1又は複数のバックアップ接点のそれぞれは、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、前記可動接点と前記固定接点とが導通していない状態である非導通状態から前記可動接点と前記固定接点とが導通している状態である導通状態に遷移する以前に、当該バックアップ接点が非導通状態から導通状態に遷移し、当該バックアップ接点が対応するレンジに対応する前記通常接点が、導通状態から非導通状態に遷移した以降に、当該バックアップ接点が導通状態から非導通状態に遷移することを特徴とするポジションセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のポジションセンサにおいて、前記1又は複数のバックアップ接点のそれぞれは、互いに同一のレンジに対応する第1バックアップ接点と第2バックアップ接点の2つからなることを特徴とするポジションセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載のポジションセンサにおいて、
前記レンジは、車両を走行させるときに用いられる少なくとも2つの走行レンジと、車両が停車しているときに用いられる少なくとも2つの非走行レンジとであり、
前記所定のレンジは、前記走行レンジのレンジのみからなることを特徴とするポジションセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のポジションセンサにおいて、
前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第1対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、
前記第1対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、
前記非走行レンジのいずれか1つに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、
前記第1対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態に遷移した場合には前記シフトレバーによって前記第1対象レンジが選択されたと検知することを特徴とするポジションセンサ。
【請求項5】
請求項3に記載のポジションセンサにおいて、
前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第2対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、
前記第2対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、
前記非走行レンジのいずれか1つのレンジである第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、
前記第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態から非導通状態に遷移し、且つ前記非走行レンジのうち前記第3対象レンジ以外のレンジである第4対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態に遷移した場合には、前記シフトレバーによって前記第2対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に異常があると検知することを特徴とするポジションセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のポジションセンサにおいて、
前記第3対象レンジが前記車両の車輪が固定されるレンジであり、前記第4対象レンジが前記車両の車輪が固定されないレンジであり、
前記第3対象レンジに対応する前記通常接点が導通状態から非導通状態となり、且つ前記第4対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態となった場合には、前記シフトレバーによって前記第4対象レンジが選択されたと検知することを特徴とするポジションセンサ。
【請求項7】
請求項3に記載のポジションセンサにおいて、
前記1又は複数の所定のレンジのうちいずれか1つのレンジである第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点が導通状態であり、
前記第5対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態であり、
前記レンジのうち前記第5対象レンジに対応する前記第1バックアップ接点及び前記第2バックアップ接点に対応する1又は複数のレンジ以外のいずれか1つのレンジに対応する前記通常接点が導通状態である場合には、前記シフトレバーによって前記非走行レンジのいずれか1つが選択されたと検知し、
前記第5対象レンジに対応する前記通常接点が非導通状態から導通状態となった場合には、前記シフトレバーによって前記第5対象レンジが選択されたと検知することを特徴とするポジションセンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−113392(P2013−113392A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261027(P2011−261027)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】