説明

ポジ型レジスト組成物およびパターン形成方法

【課題】微細加工のためのフォトリソグラフィー、特にKrFレーザー、極短紫外線、電子線、X線などを露光源として用いたリソグラフィーにおいて、エッチング耐性及び解像性に優れ、基板界面において良好なパターン形状を与えるポジ型レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】(A)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂であって、該酸不安定基が脱離したときにアルカリ可溶性となるベース樹脂、(B)酸発生剤、(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物、を含有するレジスト組成物であって、ベース樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、一般式(2)及び/又は(3)で表される繰り返し単位を1種あるいは2種以上含有し、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を70モル%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められていることはよく知られている。これに伴って露光方法やレジスト材料も大きく変化しており、特に0.2μm以下のパターンのリソグラフィーを行う場合、露光光源にはKrFやArFエキシマレーザー光、あるいは電子線等が用いられ、フォトレジストにはそれらの高エネルギー線に良好な感度を示し、高い解像度を与える化学増幅型のものが使用されている。
【0003】
レジスト組成物には露光部が溶解するポジ型と露光部がパターンとして残るネガ型があり、それらは必要とするレジストパターンに応じて使いやすい方のものが選択される。化学増幅ポジ型レジスト組成物は、通常、水性アルカリ性現像液に対して不溶または難溶性であるが酸により分解でアルカリ現像液に溶解するよう変化する高分子化合物と、露光光により分解して酸を発生する酸発生剤を含有しており、更に通常露光で発生した酸の拡散を制御するための塩基性化合物が加えられる。
【0004】
上記水性アルカリ性現像液に溶解する高分子化合物を構成するアルカリ可溶性単位として、フェノール単位を使用するタイプのネガ型レジスト組成物は、特にKrFエキシマレーザー光による露光用として多数が開発された。これらは、露光光が150〜220nmの波長である場合、フェノール単位が光の透過性を持たないため、ArFエキシマレーザー光用のものとしては使用されなかったが、近年、より微細なパターンを得るための露光方法である、EB、EUV露光用のネガ型レジスト組成物として再び注目されており、特許文献1や特許文献2、特許文献3等が報告されている。
【0005】
また、上述のようなレジストの開発において、レジスト組成物に要求される特性としては、レジストの基本的性能である高解像性のみならず、より高いエッチング耐性に対する要求もある。これは、パターンがより微細化するに従ってレジスト膜を薄くしていく必要があるためである。この高いエッチング耐性を得るための一つの方法として、インデンやアセナフチレンのような、芳香環と非芳香環を含む多環状の化合物で、非芳香環に芳香環に共役する炭素−炭素二重結合を持つ化合物をヒドロキシスチレン単位を持つポリマーの副成分として導入してやる方法が知られており、特許文献3にも開示されている。
【0006】
また、ポジ型レジスト用のポリマーとしては、特許文献4のような、インデン骨格のみを持つポリマーを使用することが提案され、また特許文献5では、アセナフチレン骨格を持つ単位をヒドロキシスチレン誘導体と組み合わせて使用する方法も提案されている。
【0007】
しかし、現在最先端の加工技術として要求されている線幅間の間隙が50nmに達するような微細加工を行おうとした場合、ポジ型レジスト組成物用として、従来発表されてきたようなポリマー系を用いて種々の微調整を行ってみても、パターン間にブリッジが発生し、微細なパターン形成が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−201532号公報
【特許文献2】特開2006−215180号公報
【特許文献3】特開2008−249762号公報
【特許文献4】特開2004−149756号公報
【特許文献5】特開2006−169302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来このようなパターン間のブリッジの問題は、レジスト組成物に添加する塩基成分量を上げ、酸のコントラストを上げる方法をとることで、一定の範囲の解決が行われる。しかし、この解決方法によれば、塩基成分の増量によってレジストの感度が必然的に低下することになる。また、従来の方法によれば、感度低下は酸発生剤の添加量の増量で対処することが一般的であるが、大量に用いた場合には、パターン露光のエネルギー源が光である場合には露光光の膜中での減衰が問題になり、電子線の場合には、すでにかなり大量に加えられているため、更に量を増やすことができない場合もある。
また、微細パターンを形成するため、レジストを100nm以下の膜厚で使用する場合、エッチング耐性に優れた材料でなければならない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、微細加工のためのフォトリソグラフィー、特にKrFレーザー、極短紫外線、電子線、X線などを露光源として用いたリソグラフィーにおいて、エッチング耐性および解像性に優れ、基板界面においても良好なパターン形状を与えるポジ型レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、
(A)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂であって、該酸不安定基が脱離したときにアルカリ可溶性となるベース樹脂、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物、
を含有するレジスト組成物であって、前記ベース樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、下記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するものであることを特徴とするポジ型レジスト組成物を提供する。
【化1】

(式中、Xは酸不安定基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、X及びRは複数種類が選択されても良い。)
【0012】
このように、ベース樹脂として用いる樹脂が、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するものであれば、それを用いて調整したポジ型レジスト組成物は、アセナフチレン誘導体繰り返し単位が高い割合を占めることにより、高いエッチング耐性が得られ、かつ50nm以下の高い解像性が同時に得られるレジスト膜を形成することができるものとなる。
【0013】
また、前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)並びに下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであることが好ましい。
【化2】

(式中、Y及びZは酸不安定基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Y、Z及びRは複数種類が選択されても良い。)
【0014】
このように、前記ベース樹脂が、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)、(4)、(5)及び(6)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであれば、レジストが露光された場合に現像液に対する溶解性を変化させることができ、また、樹脂の剛直性をわずかに下げて解像性やパターン形状を調整する等、反応性の調整を容易に行うことが可能となる。
【0015】
また、前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、下記一般式(5−1)で表される繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。Zは下記一般式(7)及び(8)より選ばれる。
【化4】

(式中、
【化5】

は、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜12の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基、あるいはR、Rはそれらの結合する炭素原子とともに環を形成しても良く、その場合RとRを合せて炭素数4〜12のアルキレン基を表す。aは1又は2を示す。また、(O)はカルボキシル基の酸素原子であり、一般式(7)および(8)の結合位置を示すために記入したものである。))
【0016】
このように、前記酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(5−1)で表される繰り返し単位を含有するものであれば、酸に対する反応性が高くなり、高解像性を与えることができる。
【0017】
また、前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)並びに下記一般式(4)及び(5−1)で表される繰り返し単位を含有し、更に前記酸不安定基Xがアセタール基、下記酸不安定基Yが炭素数4〜15の第三級アルキル基であることが好ましい。
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。Yは酸不安定基を示し、Zは下記一般式(7)及び(8)より選ばれる。
【化7】

(式中、
【化8】

は、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜12の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基、あるいはR、Rはそれらの結合する炭素原子とともに環を形成しても良く、その場合RとRを合わせて炭素数4〜12のアルキレン基を表す。aは1又は2を示す。また、(O)はカルボキシル基の酸素原子であり、一般式(7)および(8)の結合位置を示すために記入したものである。))
【0018】
このように、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)、(4)及び(5−1)で表される繰り返し単位を含有し、更に前記酸不安定基Xがアセタール基、前記酸不安定基Yが炭素数4〜15の第三級アルキル基である樹脂をポジ型レジスト組成物のベース樹脂として用いれば、好ましいコントラストが得られ、より高い解像性が期待できる。
【0019】
また、前記ベース樹脂が、更に下記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであることが好ましい。
【化9】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、Rは複数種類が選択されても良い。)
【0020】
このように、前記ベース樹脂が、更に上記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであれば、Rを露光前後いずれにおいても水酸基を与えない基とした場合は、ベース樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を制御する役割を有すると同時に、レジストの剛直性を高め、現像時の膨潤を抑制し、解像性とエッチング耐性を改善することができ、また、Rを水酸基とした場合には、基板への密着性や現像液への溶解性を高めることができる、というように、Rの選択により、解像性やパターン形状の調整を容易に行うことができる。
【0021】
また、前記(B)成分である酸発生剤として下記一般式(10)で表される酸発生剤を含むことが好ましい。
【化10】

(式中、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、もしくはオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、もしくはアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が単結合または酸素原子を介するエーテル結合により相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Rは芳香環あるいは炭素数5以上の脂環式炭化水素構造を有する一価の炭化水素基を示す。nは1〜3を示す。)
【0022】
このように、上記一般式(10)で表される酸発生剤を使用したレジスト組成物によるレジスト膜は、パターン形成において矩形のパターン形状を与えるため、高解像性だけでなくエッチング耐性に対しても有利である。
【0023】
また、前記(C)成分である塩基性成分として、少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物のうち少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0024】
このように、(C)成分の塩基性成分として、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物のうち少なくとも1種以上を用いることにより、基板界面において裾引きを強く抑制することができる。この効果は、SiNやTiNのような窒化膜上でのパターン形成に有利であり、更にそれらより裾引きが起こり易いブランクスのクロム化合物膜上でのパターン形成に特に有利に使用される。
【0025】
この場合、前記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物として、下記一般式(11)〜(13)で表される化合物を少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【化11】

(式中、R13、R14は、それぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR13とR14が結合して環構造を形成してもよい。R15は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、又は水酸基であり、結合する炭素及びそれに隣接する炭素と共に環を形成してもよい。R16は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等を1つ又は複数含んでいてもよい。)
【化12】

(式中、R13、R14、R15、R16は上記と同様である。)
【化13】

(式中、R17は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R18は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0026】
このように、前記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素原子を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物として、上記一般式(11)〜(13)で表される化合物を少なくとも1種以上含有することにより、高解像性と基板界面での垂直性に優れたパターン形状を達成可能にできる。
【0027】
また、本発明は、リソグラフィーによりレジストパターンを形成する方法であって、少なくとも、前記ポジ型レジスト組成物を用いて被加工基板上にレジスト膜を形成し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得ることを特徴とするレジストパターンの形成方法を提供する。
【0028】
このような本発明のレジストパターンの形成方法を用いることにより、50nmのラインアンドスペースパターンを形成した場合にも、スペース部でのブリッジ発生を防止することができ、欠陥の少ない微細なレジストパターンを形成することができる。
【0029】
また、前記被加工基板として、フォトマスクブランクを用いることができる。更に、前記フォトマスクブランクの最表層上に、クロム化合物膜が成膜されていることが好ましい。
1枚のフォトマスクは、それを用いて製造した半導体全ての性能に係るため、高解像性が要求され、また、エッチング加工においてもスパッタリングにより成膜された遷移金属を含有するケイ素化合物膜や遷移金属化合物膜、特にクロム化合物膜のような比較的エッチング速度の遅い膜のエッチングに用いられるため、高いエッチング耐性を要求される。そこで、本発明のようなレジストパターンの形成方法が有利に使用される。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明のポジ型レジスト組成物を用いることにより、微細加工のためのフォトリソグラフィー、特にKrFレーザー、極短紫外線、電子線、X線などを露光源として用いたリソグラフィーにおいて、エッチング耐性および解像性に優れ、基板界面においても良好なパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、ポジ型化学増幅型レジスト用ポリマーとして、主にヒドロキシスチレン単位とその水酸基が酸不安定基で保護されたスチレン単位を繰り返し単位として含むベース樹脂を用い、アルカリ現像液に対して不溶性又は難溶性であるが、該酸不安定基が酸と反応した際に脱離したときにアルカリ可溶性とする方法は、最先端の紫外線によるリソグラフィー方法がArFにシフトした後も、電子線露光用や極短紫外線露光用のレジストポリマーとして用いられてきており、例えば特許文献3のように、電子線によるパターン露光で240nmのレジスト膜厚で80nmといった良好な形状を持つ微細なパターン形成に成功している。
【0032】
しかし、上記のような高解像性を達成した化学増幅型レジスト組成物を濃度のみ変更したものを用いて、薄膜化したレジスト膜で最小線幅50nm以下のパターン形成を試みたところ、微細なパターンが倒壊するか、あるいはパターン間にブリッジを生じ、高解像性が達成できないという問題が生じた。本発明者らは、この高解像性を阻む原因は、上記のようなレジストに使用されたレジスト膜のアルカリ現像液による現像時の機械的強度不足によるものであるとの作業仮説を持った。
【0033】
そこで、上記考えから、ベース樹脂として剛直な構造を有するポリマーの導入を検討した結果、ポリマーを構成する主たるモノマーユニットを、スチレン単位に変えてアセナフチレン単位を使用することにより、より剛直なベース樹脂とすることを試みた。そして、ポリマーの剛直性を上げるためのユニットとしてアセナフチレン誘導体を有する繰り返し単位を、従来試みられていた導入量(40モル%程度以下)よりも大幅に高め、70モル%以上とすることにより、ブリッジの発生が防止できることを見出した。この剛直なポリマーは単位当たりの炭素密度が高いため、エッチング耐性にも優れるので、レジスト膜を薄膜で使用できる利点があり、高解像性パターン形成に有利である。
【0034】
ところで、上述のインデンやアセナフチレンのような重合によってポリマー主鎖に環構造を導入できるモノマーの使用はエッチング耐性の向上に有力なものであったが、得られるポリマーの品質管理には不安が持たれていた。即ち、特許文献3の実施例に見る通り、インデン誘導体とヒドロキシスチレン誘導体を重合する際、重合に用いるインデン誘導体のモノマー添加量に対し、重合で得られるポリマーに含まれるインデン誘導体由来の単位は非常に少ない。また、特許文献4の実施例に見る通り、インデン誘導体のみによる重合においても、使用したモノマー量と重合で得たポリマーに含まれる繰り返し単位の比に、置換基の種類によってかなりの差が見られる。このため、もしポリマーの主たる繰り返し単位、例えば繰り返し単位の50モル%以上をインデン誘導体とした場合には、得られるポリマーに含まれる繰り返し単位比が、各ポリマー間、例えば重合初期にできるものと重合後期でできるものの間で品質の差がでてしまう可能性が高い。また、特開2003−246825号公報では、(メタ)アクリル酸誘導体間ですら重合のばらつきがあり、それがレジストの性能に問題を与えることを開示しているが、そのようなばらつきのあるポリマーを現在求められているような極めて微細なパターンを形成するためのレジスト組成物に用いた場合、パターン形成において、部分的溶解性による残渣の問題を引き起こす危険性があることが強く示唆される。そこで、インデンのような、芳香環と非芳香環による多環化合物で重合に関与する二重結合が非芳香環の中に含まれているような化合物を重合に用いた場合には、解像性関連機能に主要な役割を果たす繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン誘導体のような安定した重合が行えるモノマーとし、インデンのような単位はエッチング耐性の向上に必要なだけの少量が入れられるという設計が中心的に行われてきた。
【0035】
一方、上述のように用いる繰り返し単位が共重合に不向きな場合でも、ポジ型レジスト用のベース樹脂を、ヒドロキシスチレンを用いて得たポリヒドロキシスチレンのように、ヒドロキシインデンの重合によりホモポリマーを得、そのフェノール性水酸基の一部を酸不安定基で保護してポジ型レジストとして用いるという設計も可能であるが、上述のようにインデン骨格の重合性があまり高くないことから重合収率が低く、材料コストが高くなるばかりでなく、得られる樹脂の分子量分散度を下げることが難しいという問題がある。この分散度は、大きくなるとパターンエッジラフネス(LER)に好ましくない影響を与えるため、50nm以下のパターンを形成することを目的とするような場合、大きな問題となる。
【0036】
しかし今回、本発明者らは、上記観点より更に共重合におけるモノマーの重合性の検討を含めた研究を進めたところ、アセナフチレン誘導体の場合には、異なる置換基を有する2種以上のモノマーを主たる構成成分となるよう混合して使用したり、あるいは補助機能を持つモノマー単位としてスチレン誘導体のようなモノマーとの間で共重合を行った場合には、モノマー仕込み量とポリマーに導入される繰り返し単位の間に大きな乖離が生じないことを見出した。これは、アセナフチレン誘導体であれば、共重合の際、主たる機能を芳香環と非芳香環による多環化合物で重合に関与する二重結合が環の中に含まれるような化合物に与えるポリマーの設計をしても、品質の管理が可能であることを示すものである。また更に、アセナフチレン誘導体の場合は、重合により得られるポリマーの分子量分散度も、インデン誘導体のホモポリマーの重合で見られたような分散度を下げることの困難さもないことが判明した。
【0037】
そこで、本発明者らは、ヒドロキシル基を官能基として持つアセナフチレン誘導体、または該ヒドロキシル基及び保護されたヒドロキシル基等を官能基として持つアセナフチレン誘導体を主要構成成分(70モル%以上)として含有するアセナフチレン誘導体の混合物、あるいは補助機能を持つモノマーとして少量のスチレン誘導体やメタクリル酸エステルを更に含有するモノマー混合物を、単独重合または共重合してポジ型レジスト用ポリマーとし、それを用いてポジ型レジスト組成物を調製したところ、高い解像性を持ち、ブリッジ問題を引き起こさないレジスト膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
なお、上記作業仮説は、本発明に至る経過を単に説明するものであり、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【0038】
即ち、本発明のポジ型レジスト組成物は、少なくとも、
(A)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂であって、該酸不安定基が脱離したときにアルカリ可溶性となるベース樹脂、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物、
を含有するレジスト組成物であって、
前記ベース樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、下記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するものであることを特徴とする。
【化14】

(式中、Xは酸不安定基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、X及びRは複数種類が選択されても良い。)
【0039】
このように、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するポリマーであれば、ポリマー主鎖に環構造が導入されているため、剛直な構造を有するポリマーとすることができ、該ポリマーをベース樹脂としてポジ型レジスト組成物を調整すれば、エッチング耐性に優れ、高解像性を有するレジスト膜を形成することができるポジ型レジスト組成物とすることができる。
さらに、上記一般式(1)〜(3)のように、アセナフチレン骨格を有するものであれば、モノマーの使用量と共重合組成比との間に大きな乖離が生じることもなく、重合により得られるポリマーの分子量分散度を下げることの困難さもない。
【0040】
以下、まず、本発明のポジ型レジスト組成物に使用する(A)成分である、酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂であって、該酸不安定基が脱離したときにアルカリ可溶性となるベース樹脂について説明する。
【0041】
本発明のポジ型レジスト組成物に使用する(A)成分のベース樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、下記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有する樹脂である。
【化15】

(式中、Xは酸不安定基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、XおよびRは複数種類が選択されても良い。)
【0042】
上述の通り、ベース樹脂を構成する繰り返し単位としてアセナフチレン誘導体単位が70モル%以上を占めることにより高いエッチング耐性を示すと共に、ベース樹脂に剛直性が与えられ、パターン形成時の現像工程で、微細なスペースにブリッジが形成されることが防止される。
【0043】
上記Xで示される酸不安定基は、レジスト膜中で酸発生剤より発生した酸を触媒として結合が開裂する、水酸基の酸反応性保護基である。酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位は、酸と反応する前には水性アルカリ性現像液に対して難溶性を示し、酸と反応することによって酸不安定基が脱離し、上記現像液に対して溶解性を示すようになる。具体的にはアセタール、3級アルキル基、t−ブトキシカルボニル基等に属するものが常用されるが、多数の公知例(例えば特許文献4および5にも例示されている)があり、それらより適宜選択して使用することができる。また、異なる酸不安定基を組み合わせて使用しても良い。なお、これは後述の酸不安定基YおよびZについても同様である。
【0044】
上記Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、この基が繰り返し単位に置換されることにより、樹脂の現像液に対する溶解速度の抑制効果を示す。
【0045】
本発明のポジ型レジスト組成物の(A)成分である上記樹脂は、上述の通り、高解像性および高エッチング耐性を得るためにアセナフチレンユニットの占める割合を全体の70モル%以上とされるが、樹脂を構成する繰り返し単位の配合は、種々の組み合わせが可能である。
上記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)で表されるアセナフチレン誘導体を含ませることにより、全ての構成単位を上記一般式(1)〜(3)で示されるようなアセナフチレン誘導体としても良いが、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、解像性やパターン形状を調整するため、樹脂の剛直性をわずかに下げたい場合や、その他の反応性の調整を行う場合に、下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有する樹脂であってもよい。
【化16】

(式中、Y及びZは酸不安定基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Y、Z及びRは複数種類が選択されても良い。)
【0046】
上記一般式(4)〜(6)は、特許文献4および5に用いられる多数の好ましい例が挙げられており、基本的にはそれらの何れも使用することができる。
【0047】
ここでも上述のアセナフチレン誘導体繰り返し単位の場合と同様、芳香環に水酸基を有する繰り返し単位によって樹脂のアルカリ可溶性が得られ、その水酸基が酸不安定基で保護された芳香環を有する繰り返し単位でアルカリ不溶あるいは難溶性となると共に、酸により保護基(酸不安定基)の脱離反応が生じた時にはアルカリ溶解性に変化する。
【0048】
中でも上記一般式(5)のうち、下記一般式(5−1)は、酸不安定基である3級アルキル基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位としては酸に対する反応性が高く、高解像性を与える傾向にあることから好ましい副成分である。
【化17】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。Zは下記一般式(7)及び(8)より選ばれる。
【化18】

(式中、
【化19】

は、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜12の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基、あるいはR、Rはそれらの結合する炭素原子とともに環を形成しても良く、その場合RとRを合せて炭素数4〜12のアルキレン基を表す。aは1又は2を示す。また、(O)はカルボキシル基の酸素原子であり、一般式(7)および(8)の結合位置を示すために記入したものである。))
特に、上記一般式(2)の酸不安定基であるXがアセタール基であるものと組み合わせると、高い解像性が得られる。
【0049】
また、レジスト膜の使用態様によって、上記繰り返し単位および酸不安定基の選択は、適宜異なる設計がされるが、特に本発明のポジ型レジスト組成物が目的とする微細パターンの形成を行うために複数の繰り返し単位の組み合わせを用いる場合、酸不安定基で保護された酸性官能基を有する繰り返し単位とそれに用いられる酸不安定基の選択として、ベース樹脂としては、少なくとも上記一般式(1)に加えて、(2)、(4)および(5−1)を含有し、上記酸不安定基Xはアセタール基、上記酸不安定基Yは炭素数4〜15の第三級アルキル基とすることが好ましい。この組み合わせによれば、好ましいコントラストが得られ、より高い解像性が期待できる。
【0050】
また、本発明ポジ型レジスト組成物の(A)成分であるベース樹脂には、基板への密着性や現像液への溶解性を調整するために、更に下記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位のうち、少なくとも1種以上を含有させることができる。
【化20】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、Rは複数種類が選択されても良い。)
上記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位は、上述の通り、Rの選択により、基板への密着性や現像液への溶解性を調整することができる。
【0051】
本発明のポジ型レジスト組成物の(A)成分である上記樹脂は、上述の通り、高解像性および高エッチング耐性を得るためにアセナフチレンユニットの占める割合を全体の70モル%以上とされるが、樹脂を構成する繰り返し単位の配合は、種々の組み合わせが可能である。
例えば、基板への密着性や現像液への溶解性を高めるためには、芳香族に置換した保護されていない水酸基を持つ繰り返し単位、即ち上記一般式(1)並びにRが水酸基である上記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位を、レジストが露光された場合に現像液に対する溶解性を変化させるためには、酸不安定基で保護された酸性官能基を有する繰り返し単位、即ち上記一般式(2)、(4)、(5)、(5−1)及び(6)で表される繰り返し単位を、ベース樹脂を構成する繰り返し単位として含有させれば良い。
【0052】
上記繰り返し単位の具体的導入量として、上記一般式(1)で表される、水酸基を有するアセナフチレン誘導体繰り返し単位の占める割合は樹脂全体の繰り返し単位に対して60モル%以上90%以下が好ましい。60モル%以上のポリマーを用いたレジストでは現像後に欠陥が発生する恐れがなく、90モル%以下であれば未露光部のアルカリ溶解速度が大きくなり過ぎることもなく、パターン形成に問題が生じることもない。
【0053】
上記一般式(2)で表される、水酸基が酸不安定基で保護されたアセナフチレン誘導体繰り返し単位は、用いる酸不安定基の大きさや脂溶性によっても異なるが、目安として全体の5モル%から30モル%とすれば解像度が悪くなったり、現像後に欠陥が発生する恐れがない。
【0054】
露光前後いずれにおいても水酸基を与えない芳香環を有する繰り返し単位、即ち上記一般式(3)並びにRが水酸基以外である上記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位は、ベース樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を制御する役割を有すると同時に、レジストの剛直性を高め、現像時の膨潤を抑制し解像性とエッチング耐性の改善に寄与する。また、導入比率を制御することによりレジストコントラストを高める効果がある。しかし、現像後の欠陥の発生を抑制するためには15モル%以下が好ましい。
【0055】
上記一般式(4)及びRが水酸基である上記一般式(9)で表される、スチレン誘導体繰り返し単位や、上記一般式(5)、(5−1)で表される、メタクリル酸エステル誘導体繰り返し単位の導入は、エッチング耐性や樹脂の剛直性を落とすが、LER(ラインエッジラフネス)の改善に有利な場合がある。そのため、本発明の効果と両方の観点から、その導入量は樹脂全体の繰り返し単位に対して30モル%以下であり、好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下とすることが好ましい。
【0056】
本発明のポジ型レジスト組成物の(A)成分である上述の酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂の合成は、単独重合でも共重合でもよく、上述の通り、いずれの場合にも、アセナフチレンを用いたメリットが享受できる。
【0057】
重合は、特許文献4や5に開示されているような公知の重合方法を用いて容易に行うことができる。特に共重合において重要な点である、繰り返し単位が各ポリマー分子により均一に、即ちよりランダムな選択性をもって重合するためには、ラジカル重合が有利であるが、重合に用いるモノマー混合物の70モル%以上をアセナフチレン誘導体が占めた本発明においても、高収率で安定した重合を行うことができる。
【0058】
水酸基を有するヒドロキシアセナフチレンユニットを有するポリマーの合成では、水酸基を無保護で共重合に使用することができるが、金属不純物の除去等を行う上で、保護した単量体を重合した後、脱保護した方が効率的である場合もある。重合時におけるフェノール性水酸基の保護と脱保護については、ヒドロキシスチレンのケースで広く知られている方法であり、詳細な説明は行わないが、アシル基保護あるいはアセタール保護を用いる公知の方法(特許文献4、5や特開2002−234910号公報等参照)で行うことができる。
【0059】
一方、酸不安定基の導入は、上記一般式(2)、(4)、(5)、(5−1)及び(6)の場合、重合時に酸不安定基保護したモノマーを用いて直接樹脂に導入しても良いが、重合後に水酸基を持つ上記一般式(1)又はRが水酸基である上記一般式(9)もしくは(6’)に対して、修飾を行う方法を用いても良い。この方法についても多数の例が公知であり、例えば特許文献4および5等に記述されている方法を用いることができる。
【0060】
上記本発明のポジ型レジスト組成物の(A)成分である樹脂は、好ましい解像性を得るために、質量平均分子量(測定はポリスチレンを標準サンプルとしたゲルパーミエションクロマトグラフィー:HLC−8120GPC東ソー(株)によるもの)が1,000から50,000であることが好ましい。
質量平均分子量が1、000以上であればポジ型レジスト組成物の耐熱性が十分なものとなり、50,000以下であれば、現像後レジストパターンの解像性の低下や、あるいは欠陥を生じるということもない。
【0061】
さらに、本発明のポジ型レジスト組成物に使用するベース樹脂においては、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が狭い場合、低分子量や高分子量のポリマーが存在することが原因となって露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする恐れが少ない。パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する重合体の分子量分布は2.5以下であることが好ましく、特に1.8以下と分散度が低いことが好ましい。
【0062】
本発明のポジ型レジスト組成物に用いる上記(B)成分である酸発生剤は、基本的には化学増幅型レジストに用いることができる公知の酸発生剤(例えば特許文献3〜5等に記載されたもの)を何れも使用することができる。
【0063】
好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤等があり、それらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、上記塩あるいは化合物より発生するスルホン酸の持つ好適なカウンターアニオンは、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン等を挙げることができる。
【0064】
本発明のポジ型レジスト組成物における(B)成分である酸発生剤の添加量は特に制限されないが、(A)成分であるベース樹脂100質量部に対して好ましくは0.4〜20質量部、更に0.8〜15質量部添加することが好ましい。
ここで、酸発生剤添加量と後述する塩基性成分(C)の添加量を同時に増加させることで感度の確保と解像性の向上が期待できる。一般に(B)成分である酸発生剤の添加量が20質量部以下であれば、効率的に感度向上効果が得られ、不経済となるおそれがない。また、0.4質量部以上であれば、要求感度を満たすために塩基性物質量を低く抑える必要がないため、形成されるレジストパターンの解像性が低下するおそれがない。
特に放射線照射用や電子線照射用のレジスト膜とする場合には、酸発生剤の添加によるレジスト膜中での照射線のエネルギー減衰が問題にならない一方、高感度が得難いため、酸発生剤の添加量はエキシマレーザー光を使用する場合に比べて高濃度に添加され、2.0〜20質量部程度加えられることが好ましい。
【0065】
上記酸発生剤のうち、下記一般式(10)で表される酸発生剤が、特に好ましく用いられる。
【化21】

(式中、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、もしくはオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、もしくはアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が単結合または酸素原子を介するエーテル結合により相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Rは芳香環あるいは炭素数5以上の脂環式炭化水素構造を有する一価の炭化水素基を示す。nは1〜3を示す。)
【0066】
一般に電子線レジストに使用されているトリフェニルスルホニウム−置換ベンゼンスルホン酸の場合、酸の拡散が小さいと解像性が優れているが、反応性が低下するため、感度は低くなる欠点があった。しかし、上記一般式(10)で表される酸発生剤は高解像性で矩形のパターンが得られる上に、感度が高いことが明らかになった。この理由は明らかでないが、アルキルスルホン酸がカルボン酸エステルになっている構造が関係していると考えられる。本発明でも同様に、上記一般式(10)の酸発生剤を用いることで、同様の効果が得られる。
ただ、酸発生剤はカチオン部の構造により溶解禁止効果が大きく変化することがわかっているので、ポリマーの溶解性にあわせて酸発生剤の構造を選択することが好ましい。例えば、ベンゼン核にアルキル基を導入するとレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下することがわかっているので、酸発生剤によりレジスト膜のアルカリ溶解性を制御することが出来る。ポリマーの溶解速度が低い場合にはアルキル基が導入されたトリフェニルスルホニウム系の酸発生剤が有効である。
【0067】
本発明のポジ型レジスト組成物に含まれる(C)成分である塩基性成分は、上述した酸発生剤と同様、基本的には化学増幅型レジストに用いることができる公知の塩基性成分を使用することができる。その例としては、上記特許文献3〜5に挙げられているような、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0068】
前記(C)成分である塩基性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部、特に0.01〜1質量部を混合したものが好適である。0.01〜2質量部であると、配合効果が表れ、感度が低下しすぎる恐れがない。
【0069】
前記(C)成分として配合される塩基性成分のうち、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、(A)成分であるベース樹脂をポジ型レジストに用いた場合、他の塩基性成分を使用した場合には、基板付近のパターン端部に未反応部が発生(いわゆる裾引き)してしまうような場合に、その解消を可能にすることから、特に有利な材料である。
このような裾引きを発生し易い基板としては、TiN、SiN、SiON等の窒素化材料基板等があるが、特に表面が金属クロムや窒素および/または酸素を含有するクロム化合物の場合には極めて発生し易く、その解消に強い効果を示す。
【0070】
上記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物の具体的な化学構造例としては、好ましいものとして、下記一般式(11)〜(13)で表される化合物を挙げることができるが、これらに限られない。
【化22】

(式中、R13、R14は、それぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR13とR14が結合して環構造を形成してもよい。R15は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、又は水酸基であり、結合する炭素及びそれに隣接する炭素と共に環を形成してもよい。R16は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等を1つ又は複数含んでいてもよい。R17は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R18は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0071】
上記一般式(11)〜(13)中、炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基を、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基を、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基としては具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、t−アミロキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基を、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基を、炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、t−ブチルチオメチル基、t−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
また、炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、テトラヒドロナフチレン基等を例示できるが、これらに限定されない。また、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、メチルメチン基、エチルメチン基、プロピルメチン基、イソプロピルメチン基、ブチルメチン基、sec−ブチルメチン基、イソブチルメチン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ペンテン基、1,2−ヘキセン基、1,6−ヘキセン基や、1,2−シクロヘキセン基、1,4−シクロへキシレン基等が例示できるが、これらに限定されない。
【0072】
上記一般式(11)で表されるアミン化合物の好ましい具体例としては、o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジイソプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
上記一般式(12)で表されるアミンオキシド化合物の好ましい具体例としては、上記一般式(11)の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものを挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
上記一般式(13)で表されるアミン化合物の好ましい具体例としては、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
上記一般式(12)で示されるアミンオキシド構造を有する化合物は、化合物の構造に応じた最適な方法を選択して製造される。例として、窒素含有化合物の酸化剤を使用した酸化反応を用いる方法、あるいは含窒素化合物の過酸化水素水希釈溶液中での酸化反応を用いる方法を例示できるが、これらに限定されない。
【0076】
上記一般式(12)で表されるアミンオキシド化合物の合成は、例えば下記に示すとおりである。
【化23】

(式中、R13、R14、R15、R16は上記と同様である。)
本反応は酸化剤(m−クロロ過安息香酸)を用いたアミンの酸化反応であり、酸化反応の常法となる他の酸化剤を用いて反応を行うこともできる。反応後は、反応混合物を必要に応じて蒸留、クロマトグラフフィー、再結晶などの常法により精製することができる。
【0077】
これらの分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物において、窒素原子に置換された官能基の存在により発生酸の速やかな捕捉を実現せしめ、一方カルボキシル基が基板側に配列され発生酸が基板へ拡散して失活することを防止すると予想され、これらの結果として、高解像性と基板界面での垂直性に優れたパターン形状を達成可能にするものと考えられる。
そこで、上記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物を、揮発性、塩基性度、酸の捕捉速度、レジスト中での拡散速度などの物性に従い、用いる(A)レジストポリマー及び(B)酸発生剤の組み合わせに応じて適当に調節することで、より好ましいパターン形状を得ることができるポジ型レジスト組成物を調整することができる。
【0078】
このように、最大限に裾引きの改善効果を得るためには、カルボキシル基を有していても、第1級アミンのように塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有するアミン化合物又はアミンオキシド化合物よりも、塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含まない第3級アミンが好ましい。
また、弱塩基である2−キノリンカルボン酸やニコチン酸のような塩基性中心が芳香環に含まれる窒素であるアミン化合物又はアミンオキシド化合物以外の、塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含まない塩基性成分であれば、カルボキシル基が基板側にうまく配列され、発生酸が基板へ拡散して失活することを防止することができる。
【0079】
なお、上記塩基性成分の効果は、膜厚には無関係に得られ、100nm以上の膜厚のレジスト膜用の樹脂として3級アルキル基保護のものを使用する場合にも有利な効果を与える。
【0080】
また、上記分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物の裾引き形状抑制効果は、上述のように、カルボキシル基によって基板付近により偏在するようにしたものであることから、その効果を得るためには(C)成分全てが分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物である必要は必ずしもなく、上述の分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物ではない常用される塩基性成分と組み合わせて用いることができる。
【0081】
上記常用される塩基性成分の好ましいものとしては、下記一般式(14)および(15)を挙げることができ、その具体例は特許文献3〜5に多数例示されている。
【化24】

(両式中、R19、R20、R21は、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。また、R19、R20、R21のいずれか2個が結合して環構造又は芳香族環を形成してもよい。)
【0082】
また、上述のようにカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物と常用のカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物でないアミンを混合して用いる場合、上述のカルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物と、その他のアミン化合物又はアミンオキシド化合物の配合比(質量比)は100:0〜10:90の範囲であることが好ましい。
【0083】
本発明のポジ型レジスト組成物は、有機溶剤を使用して調整することができ、調整に使用される有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、塗布時の成膜性に優れるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを主要溶剤とし、それらを含有する混合溶剤が好ましく使用される。特に乳酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルより選ばれる1以上の溶剤とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合したものを80質量%以上含む溶剤は多用され、更に沸点等の調整用の溶剤成分を追加する場合もある。
【0084】
本発明のポジ型レジスト組成物が特に有用に用いられる薄膜レジストの成膜用のものとしては、有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して1,000〜10,000部、特に2000〜9700部が好適である。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が10〜100nmのレジスト膜を安定して平坦度良く得ることができる。
【0085】
本発明のポジ型レジスト組成物には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(D)を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0086】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30、R90、R94(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,S−386,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられる。また、フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤は添加量が変化してもレジストの塗布性への影響が小さい利点があり、好ましく用いられる。たとえば、PF−636(オムノバ社製)がある。
これらの界面活性剤は単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0087】
本発明のポジ型レジスト組成物中の界面活性剤の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂(A)100部に対し2部以下、好ましくは1部以下である。
【0088】
また、本発明は、リソグラフィーによりレジストパターンを形成する方法であって、少なくとも、前記本発明のポジ型レジスト組成物を用いて被加工基板上にレジスト膜を形成し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得ることを特徴とするレジストパターンの形成方法を提供する。
【0089】
この場合、前記被加工基板として、フォトマスクブランクを用いることが好ましい。また、前記フォトマスクブランクの最表層上に、クロム化合物膜が成膜されていることが好ましい。
【0090】
まず、本発明のポジ型レジスト組成物を使用した被加工基板上へのレジスト膜の形成は、被加工基板上への本発明のポジ型レジスト組成物の塗付工程、ついでプリベーク工程を経て行うが、これらはいずれも公知の方法を用い、目的に応じて、膜厚が10〜100nmのレジスト膜を形成することができる。
【0091】
塗付工程は、スピンコーティング以外にもいくつかの方法が知られているが、レジスト膜厚が10〜100nmである薄い膜を形成する場合、均一な膜厚を得るためはスピンコーティングを用いることが好ましい。
【0092】
被加工基板が半導体ウエハである場合、スピンコーティング時の塗布条件はウエハの大きさ、目標の膜厚、レジスト組成物の組成等により条件を調整する必要があるが、8インチウエハを用いて、レジスト膜厚が100nm程度のものを得る場合には、レジスト組成物をウエハ上にキャストした後、回転数4000〜5000rpmで40秒間回転させることで、均一性の高いレジスト膜が得られる。ここで、レジスト組成物を調製する際に使用する溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して1,400〜1,600部である。
【0093】
さらに、上記の方法で得られたレジスト膜は、膜中に残存する過剰の溶剤を除去するため、プリベークが行われる。被加工基板が半導体ウエハである場合、プリベークの条件は、ホットプレート上で行った場合、通常80〜130℃で1〜10分間、より好ましくは90〜110℃で3〜5分間行われる。
【0094】
また、被加工基板がフォトマスクブランクである場合、同様に塗布条件はブランクの大きさ、目標の膜厚、レジスト組成物の組成等により条件を調整する必要があるが、15.2cmx15.2cmの角型ブランク上でレジスト膜厚が100nm程度のものを得る場合には、レジスト組成物をブランク上にキャストした後、回転数1000〜3000rpmで2秒間、その後800rpm以下で30秒間回転させることで均一性の高い膜が得られる。ここで、レジスト組成物を調製する際に使用する溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して2000〜9,700部である。
【0095】
さらに、上記の方法で得られたレジスト膜は、膜中に残存する過剰の溶剤を除去するため、プリベークが行われる。被加工基板がフォトマスクブランクである場合、プリベークの条件は、ホットプレート上で行った場合、通常80〜130℃で4〜20分間、より好ましくは90〜110℃で8〜12分間行われる。
【0096】
次いで上記で得たレジスト膜に対し、目的のパターンを形成するためにパターン露光を行う。露光方法としては、半導体加工を行う場合には、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜100μC/cm2、好ましくは10〜100μC/cm2となるように照射する。露光は通常の露光法の他、必要に応じて投影レンズとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。
【0097】
また、フォトマスクブランクの加工を行う場合には、加工によって同一のものを多数製造するものではないため、通常ビーム露光によってパターン露光が行われる。使用される高エネルギー線は一般的には電子線であるが、上述のその他の光源をビームとしたものも同様に使用可能である。
【0098】
通常露光後に、酸を拡散させて化学増幅反応を行うため、例えばホットプレート上で、60〜150℃、4〜20分間、好ましくは80〜140℃、8〜12分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。
【0099】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは、2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。また必要に応じて現像後に更に加熱処理を行ってパターンサイズの調整を行うこと(thermal flow)も可能である。なお、本発明のポジ型レジスト組成物は、特に高エネルギー線の中でも250〜120nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、極短紫外線、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。
【0100】
本発明のポジ型レジスト組成物を用いたパターンの形成方法を適用するリソグラフィーの対象となる被加工基板は、例えば半導体ウエハや半導体製造中間体基板、フォトマスク基板等のフォトレジストによるリソグラフィーを用いるものであれば何れでも良いが、特に金属化合物をスパッタリング等の方法で成膜した基板においては本発明の効果を有利に得ることができる。
【0101】
中でも最表面に遮光膜あるいはエッチングマスク膜としてクロム化合物膜を成膜したフォトマスクブランクでは、レジストパターンの基板界面における形状制御が難しく、本発明の効果が特に有用である。上記本発明が有用に適用される基板最表面材料のクロム化合物の例としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化炭化クロム、窒化炭化クロム、酸化窒化炭化クロム等が挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
[合成例1]
3Lのフラスコに5−アセトキアセナフチレン361.2g、アセナフチレン37.7g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、上記と同様に水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、ポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレンの共重合体248gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:14.9gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体54.0gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=74.9:10.7:14.4
重量平均分子量(Mw)=4900
分子量分布(Mw/Mn)=1.62
これを(Polymer−1)とする。
【0103】
[合成例2]
合成例1において、アセナフチレン37.7gに代えて、インデン75.9gを用い合成例1と同じ方法でポリヒドロキシアセナフチレン、インデンの共重合体240gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシアセナフチレン、インデンの共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、アセタール化剤−A:14.9gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体54.0gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:インデン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=74.3:9.9:15.8
重量平均分子量(Mw)=4800
分子量分布(Mw/Mn)=1.76
これを(Polymer−2)とする。
【0104】
[合成例3]
合成例1において、アセタール化剤−Aにかえて、下記アセタール化剤−Bを等モル用いて同様の方法でポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン共重合体をアセタール化した。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:5−トリシクロデカンオキシイソブトキシアセナフチレン=75.4:10.8:13.8
重量平均分子量(Mw)=4400
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
これを(Polymer−3)とする。
【0105】
[合成例4]
合成例2において、アセタール化剤−Aにかえて、アセタール化剤−Bを等モル用いて同様の方法でポリヒドロキシアセナフチレン、インデン共重合体をアセタール化した。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:インデン:5−トリシクロデカンオキシイソブトキシアセナフチレン=75.4:10.8:13.8
重量平均分子量(Mw)=4500
分子量分布(Mw/Mn)=1.72
これを(Polymer−4)とする。
【0106】
[合成例5]
3Lのフラスコに5−アセトキアセナフチレン361.2g、アセナフチレン25.1g、p−アミロキシスチレン40.2g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、上記と同様に水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、ポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン、アミロキシスチレンの共重合体240gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン、アミロキシスチレン共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:8.2gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体53.0gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:p−アミロキシスチレン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=76.2:6.9:9.6:7.3
重量平均分子量(Mw)=4600
分子量分布(Mw/Mn)=1.66
これを(Polymer−5)とする。
【0107】
[合成例6]
合成例5におけるアセナフチレン25.1gをインデン50.5gに代えて同様の方法で合成した。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
5−ヒドロキシアセナフチレン:インデン:p−アミロキシスチレン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=76.5:6.0:9.7:7.8
重量平均分子量(Mw)=4400
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
これを(Polymer−6)とする。
【0108】
[合成例7]
3Lのフラスコに5−アセトキアセナフチレン361.2g、アセナフチレン25.1g、下記一般式(14)で表されるメタクリル酸エステル65.5g、溶媒としてトルエンを675g添加した。
【化25】

この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層をメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、上記と同様に水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、ポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン、メタクリル酸エステルの共重合体242gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシアセナフチレン、アセナフチレン、メタクリル酸エステル共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:8.2gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体51.5gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:
【化26】

:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=76.4:6.8:9.7:7.1
重量平均分子量(Mw)=4400
分子量分布(Mw/Mn)=1.62
これを(Polymer−7)とする。
【0109】
[合成例8]
合成例7において一般式(14)のメタクリル酸エステル65.5gに代えて、下記一般式(15)のメタクリル酸エステル73.4gを用いて、同様の方法で合成した。
【化27】

得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:
【化28】

:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=76.4:6.8:9.7:7.1
重量平均分子量(Mw)=4500
分子量分布(Mw/Mn)=1.58
これを(Polymer−8)とする。
【0110】
[合成例9]
3Lのフラスコに5−アセトキアセナフチレン361.2g、p−アミロキシスチレン42.2g、上記一般式(14)で表されるメタクリル酸エステル65.5g、インデン75.6g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、上記と同様に水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、ポリヒドロキシアセナフチレン、アミロキシスチレン、メタクリル酸エステル、インデンの共重合体243gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシアセナフチレン、アミロキシスチレン、メタクリル酸エステル、インデン共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:8.2gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体54.1gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
5−ヒドロキシアセナフチレン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン:p−アミロキシスチレン:
【化29】

:インデン=62.9:7.1:12.8:10.8:6.4
重量平均分子量(Mw)=4700
分子量分布(Mw/Mn)=1.65
これを(Polymer−9)とする。
【0111】
[比較合成例1]
3Lのフラスコに4−アセトキシスチレン279.0g、アセナフチレン37.7g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を攪拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに攪拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに攪拌中ヘキサンを1030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、上記と同様に水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、ポリヒドロキシスチレン、アセナフチレンの共重合体243.5gを得た。
1Lのフラスコにポリヒドロキシスチレン、アセナフチレン共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:14.9gを1時間かけて滴下注入し、室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体52.0gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:アセナフチレン::4−メトキシイソブトキシスチレン=74.9:10.2:14.9
重量平均分子量(Mw)=4200
分子量分布(Mw/Mn)=1.78
これを(比較Polymer−1)とする。
【0112】
[比較合成例2]
3Lのフラスコに4−アセトキシスチレン140.0g、5−アセトキアセナフチレン220.8g、アセナフチレン37.7g、溶媒としてトルエンを675g添加した。
比較合成例1同様の方法で合成し、アセタール化した共重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:5−ヒドロキシアセナフチレン:アセナフチレン:4−メトキシイソブトキシスチレン:5−メトキシイソブトキシアセナフチレン=34.9:39.5:10.1:9.9:5.6
重量平均分子量(Mw)=4300
分子量分布(Mw/Mn)=1.62
これを(比較Polymer−2)とする。
【0113】
[比較合成例3]
3Lのフラスコに6−アセトキシインデン350g、インデン36.0g、溶媒としてトルエンを675g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−65)を40.5g加え、45℃まで昇温後20時間反応させ、次に55℃まで昇温後、更に20時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール15.0L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、ポリヒドロキシインデン、インデン共重合体154gを得た。アセナフチレンユニットをベースとした重合の収率62%と比較して収率が悪い(40%)。
1Lのフラスコにポリヒドロキシインデン、インデン共重合体50.0g、溶媒としてテトラヒドロフランを400g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、5℃まで冷却し、トリエチルアミン31.0gを添加後、下記アセタール化剤−A:14.9gを1時間かけて滴下注入した。室温まで昇温後4時間反応させた。この反応溶液を濃縮し、アセトン200gに溶解後、酢酸を用いて中和洗浄のため、水7.0Lの溶液中に晶出沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体50.2gを得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
6−ヒドロキシインデン:インデン:6−メトキシイソブトキシインデン=71.9:14.2:13.9
重量平均分子量(Mw)=4300
分子量分布(Mw/Mn)=1.78
これを(比較Polymer−3)とする。
【0114】
比較合成例3より、インデンユニットをベースとしたポリマーの合成は、収率が悪く、さらに、モノマーの使用量と共重合組成比の乖離が大きいことがわかる。一方、例えば合成例1におけるアセナフチレンをベースとしたポリマーは使用量と共重合組成比がほぼ同じであり、重合の制御がしやすいことがわかる。
また、例えば合成例2に示すように、インデンは共重合反応性が悪いため、アセナフチレンと比較してモル数で約3倍量の仕込みが必要であった。
【0115】
尚、上記合成例及び比較合成例で用いたアセタール化剤A及びBは以下に示すものである。
【化30】

【0116】
[実施例1〜9、比較例1〜3]
実施例及び比較例で使用したレジスト組成物構成材料、溶剤等を以下に示す。
実施例で使用したベース樹脂は上記合成例1〜9で得られたPolymer−1〜9である。比較例で使用したベース樹脂は上記比較合成例1〜3で得られた比較Polymer−1〜3である。
【0117】
実施例及び比較例で使用した酸発生剤は、
【化31】

である。
【0118】
実施例及び比較例で使用した有機溶剤は、
溶剤A:プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)
溶剤B:乳酸エチル(EL)
溶剤C:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
である。
【0119】
実施例及び比較例で使用した、カルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物もしくはアミンオキシド化合物、又はカルボキシル基を含有しない塩基性化合物(Quencher)は、以下の化合物である。
Quencher−1:p-ジエチルアミノベンゾイックアシッド
Quencher−2:p-ジブチルアミノベンゾイックアシッド
Quencher−3:p-ジブチルアミノベンゾイックアシッドの酸化物
Quencher−4:1-ピペリジンプロピオン酸
Quencher−5:トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン
Quencher−6:トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミンの酸化物
Quencher−7:N-2-(アセトキシ)エチル-イミダゾール
【0120】
実施例及び比較例で使用した界面活性剤AはPF−636(オムノバ社製)である。
【0121】
上記ベース樹脂、酸発生剤、塩基性成分、有機溶剤、及び界面活性剤を下記表1のように調整して、実施例1〜9及び比較例1〜3のポジ型レジスト組成物を得た。
【表1】

【0122】
得られたポジ型レジスト組成物を0.04μmのナイロン樹脂製フィルターで濾過した後、このレジスト液を152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上へ1700rpmの回転数でスピンコーティングし、厚さ90nmに塗布した。
【0123】
次いで、このマスクブランクを90℃のホットプレートで10分間ベークした。
膜厚の測定は光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81ケ所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0124】
更に、電子線露光装置(NuFLARE社製 EBM5000 加速電圧50keV)を用いて露光し、90℃で10分間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液でスプレー現像を行うと、ポジ型のパターン(実施例1〜9、比較例1〜3)を得ることができた。
【0125】
得られたレジストパターンを次のように評価した。
200nmのライン・アンド・スペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているライン・アンド・スペースの最小線幅を評価レジストの解像度とした。また、解像したレジストパターンの形状は、特に基板界面における裾引きの有無を走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察した。
【0126】
ラインエッジラフネス(LER)は100nmのラインパターンの長手方向5μmを50ポイント測定(日立製S−8840)し3σを算出した。値が小さいほど良好性能であることを示す。
また、レジスト材料のドライエッチング耐性は、東京エレクトロン社製TE8500Sを用いて実際にエッチングを行い、その後のパターン形状を、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面を観察し、比較例1のレジストのエッチング後の膜厚減少量を1.0とした時の、他のレジストは減少量の相対比率で示した。即ち、数値が小さいほどエッチング耐性に優れたレジストであることを示す。また、エッチングは以下に示した条件で行った。
Prees:250mJ,RF Power:800W,Gas:1)CHF3 20sccm 2)CF4 20sccm 3)Ar 400sccm,エッチング時間:2分30秒
【0127】
解像性およびパターンの断面形状とエッチング耐性の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0128】
表2より、まず、エッチング耐性について、比較例1のスチレンユニットをアセナフチレンユニットに代えた実施例1はエッチング後の膜厚減少量が0.7倍と小さな値を示した。同様に比較例1のスチレンユニットの一部をアセナフチレンに代えた比較例2はエッチング後の膜厚減少量が比較例1より小さな値であり、アセナフチレンがエッチング耐性に優れることがわかる。
さらに、実施例1〜9はアセナフチレン誘導体が全体に占める割合が70モル%以上であるため、比較例1のエッチング量の0.8倍より小さい値であった。
このことからスチレンユニットをアセナフチレンユニットに代えることでエッチング耐性が改善され、さらに、アセナフチレン誘導体の全体に占める割合を70モル%以上とすることで、より一層エッチング耐性を向上させることができることがわかる。
5−ヒドロキシアセナフチレン単位にアルカリ溶解性の機能を持たせたPolymer−1〜9(実施例1〜9)は、50nmのパターンが裾引きもブリッジもなく解像できた。それに対し、4−ヒドロキシスチレン単位にアルカリ溶解性の機能を持たせたレジスト(比較例1)、アセナフチレン誘導体の占める割合が70モル%未満のレジスト(比較例2)はカルボキシル基を有するアミン(Quencher1と4)の効果で裾引きは防止できているが、パターン間にブリッジが発生し50nmのパターンが解像できなかった。実施例1〜9では、アセナフチレンユニットを有する繰り返し単位を主要構成成分とし、かつ、その割合が全繰り返し単位中70モル%以上であるため、ベース樹脂は剛直となり、アルカリ現像の時、パターンの膨潤が抑制されると考えられる。
比較例3は50nmのパターンが解像でき、エッチング耐性に優れたインデンをベースにしたレジストなので、エッチング耐性も比較例1のエッチング量の0.8倍に抑えられてはいるが、アセナフチレンをベースにした実施例1よりはエッチング耐性は悪かった。
また、(0114)段落で述べたように、インデンユニットをベースとした場合、単量体の重合性が良好でないため分子量分散度がやや高めとなり、LERが劣化傾向となる。さらに、安定してポリマーを合成できない問題も残る。
【0129】
[実施例10〜15]
本発明のポジ型レジスト組成物について、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物およびカルボキシル基を含有しないアミン化合物を配合した下記表3に示すレジスト材料を調製し、実施例1〜9と同様にして、ポジ型パターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った。その結果を表4に示す。
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
表4に示すように、カルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物、Quencher−1〜4とカルボキシル基を含有しないアミン化合物、Quencher−5〜7の何れ組み合わせの実施例においても裾引きの無い50nmのパターンが形成できた。
【0132】
[実施例16〜21]
本発明のポジ型レジスト組成物について、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物およびカルボキシル基を含有しないアミン化合物を配合した下記表5に示すレジスト材料を調製し、実施例1〜9と同様にして、ポジ型パターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った。その結果を下記表6に示す。電子線感度は表5の最下行に示した。
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
表5、表6に示すように、アミン化合物(Quencher)が増加した場合、感度は低下するが、解像性を損なうことはない。いずれの実施例においても裾引きの無い50nmのパターンが形成できた。プロセスで要求される感度は、このように、アミン化合物の量で調整できることが確認できた。
【0135】
[実施例22〜30]
本発明のポジ型レジスト組成物について、酸発生剤としてPAG−2に代えてPAG−1を使用した下記表7に示すレジスト材料を調製し、実施例1から9と同様にして、ポジ型パターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った結果を下記表8に示す。
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
表8に示すように、PAG−2を使用した実施例1から9の結果と比較すると若干頭は丸いが、いずれの実施例においても裾引きおよびブリッジのない50nmのパターンが形成できた。
【0138】
以上のように、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するポリマーを、ポジ型レジスト組成物のベース樹脂として用いれば、ポジ型レジストのエッチング耐性や解像性の要求性能を満たしつつ、基板界面においても良好なパターンを形成することができることが認められた。
【0139】
特に、アセナフチレン誘導体を有する繰り返し単位が70.0モル%であるPolymer−9を用いた実施例(実施例9及び30)においても、エッチング耐性や解像性の要求性能を満たしつつ、基板界面においても良好なパターンを形成することが実証されたので、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、上記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するものであるとする本発明には大いに意義があることが実証された。
【0140】
即ち、本発明のポジ型レジスト組成物を用いれば、エッチング耐性及び解像性に優れるポジ型レジストを形成することができ、また、本発明のポジ型レジスト組成物を用いることで、基板に高精度のパターンを形成でき、特に基板界面においても良好なパターン形状を形成することができることが確認された。
【0141】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)酸不安定基で保護された酸性官能基を有するアルカリ不溶性又は難溶性の樹脂であって、該酸不安定基が脱離したときにアルカリ可溶性となるベース樹脂、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物、
を含有するレジスト組成物であって、前記ベース樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有するポリマーであるか、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すると共に、下記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含有するポリマーであり、更に、前記ベース樹脂を構成する全繰り返し単位中、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位を合計で70モル%以上含有するものであることを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

(式中、Xは酸不安定基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、X及びRは複数種類が選択されても良い。)
【請求項2】
前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)並びに下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】

(式中、Y及びZは酸不安定基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Y、Z及びRは複数種類が選択されても良い。)
【請求項3】
前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、下記一般式(5−1)で表される繰り返し単位を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。Zは下記一般式(7)及び(8)より選ばれる。
【化4】

(式中、
【化5】

は、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜12の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基、あるいはR、Rはそれらの結合する炭素原子とともに環を形成しても良く、その場合RとRを合わせて炭素数4〜12のアルキレン基を表す。aは1又は2を示す。また、(O)はカルボキシル基の酸素原子であり、一般式(7)および(8)の結合位置を示すために記入したものである。))
【請求項4】
前記ベース樹脂は、酸不安定基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位として、上記一般式(2)並びに下記一般式(4)及び(5−1)で表される繰り返し単位を含有し、更に前記酸不安定基Xがアセタール基、下記酸不安定基Yが炭素数4〜15の第三級アルキル基であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。Yは酸不安定基を示し、Zは下記一般式(7)及び(8)より選ばれる。
【化7】

(式中、
【化8】

は、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜12の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基、あるいはR、Rはそれらの結合する炭素原子とともに環を形成しても良く、その場合RとRを合わせて炭素数4〜12のアルキレン基を表す。aは1又は2を示す。また、(O)はカルボキシル基の酸素原子であり、一般式(7)および(8)の結合位置を示すために記入したものである。))
【請求項5】
前記ベース樹脂が、更に下記一般式(9)及び(6’)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化9】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、又は酸により脱離しない炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアシル基であり、Rは複数種類が選択されても良い。)
【請求項6】
前記(B)成分である酸発生剤として下記一般式(10)で表される酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化10】

(式中、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、もしくはオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、もしくはアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が単結合または酸素原子を介するエーテル結合により相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Rは芳香環あるいは炭素数5以上の脂環式炭化水素構造を有する一価の炭化水素基を示す。nは1〜3を示す。)
【請求項7】
前記(C)成分である塩基性成分として、少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物のうち少なくとも1種以上を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
前記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物及びアミンオキシド化合物として、下記一般式(11)〜(13)で表される化合物を少なくとも1種以上含有するものであることを特徴とする請求項7に記載のポジ型レジスト組成物。
【化11】

(式中、R13、R14は、それぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR13とR14が結合して環構造を形成してもよい。R15は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、又は水酸基であり、結合する炭素及びそれに隣接する炭素と共に環を形成してもよい。R16は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等を1つ又は複数含んでいてもよい。)
【化12】

(式中、R13、R14、R15、R16は上記と同様である。)
【化13】

(式中、R17は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R18は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【請求項9】
リソグラフィーによりレジストパターンを形成する方法であって、少なくとも、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物を用いて被加工基板上にレジスト膜を形成し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得ることを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
前記被加工基板として、フォトマスクブランクを用いることを特徴とする請求項9に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
前記フォトマスクブランクの最表層上に、クロム化合物膜が成膜されていることを特徴とする請求項10に記載のレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2011−13419(P2011−13419A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156784(P2009−156784)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】