説明

ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】高エネルギー線、特に電子線、X線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、特に電子線使用時における真空中PED特性、ラインエッジラフネスおよびパターン形状を同時に満足し、またEUV光使用時における感度、溶解コントラストに優れたポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する、星型ポリマーまたはハイパーブランチドポリマー、(B)特定の活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物、及び、(C)界面活性剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトパブリケーションプロセスに好適に用いられるポジ型レジスト組成物に関するものである。さらに詳しくは、特に電子線、X線、EUV光(Extreme Ultraviolet:波長13nm付近)等を使用して高精細化したパターン形成し得るポジ型レジストに関するものであり、電子線、X線、EUV光等を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、レジスト組成物を用いたリソグラフィによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、さらにKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。さらには、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィも開発が進んでいる。
【0003】
かかる電子線、X線あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型レジストが用いられており、ポジ型レジストに対しては主成分として、アルカリ水溶液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ水溶液には可溶となる性質を有するポリマー(以下、酸分解性樹脂と略すことがある)、及び酸発生剤からなる化学増幅型組成物が有効に使用されている。
【0004】
電子線又はX線用のポジ型レジストに関しては、例えば特許文献1(特開平4−219757号公報)には、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)のフェノール性ヒドロキシ基の20〜70%がアセタール基で置換されたポリマーを含有するレジスト組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2000-66382号)には、p−ヒドロキシスチレンと(
メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献3(特開2001−33970号)には、特定の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4(特開2002−55457号)には、酸発生剤を5質量%以上含む
フォトレジスト組成物を用いて短波長(約160nm未満)の放射線あるいは電子線によりパターンを形成する方法が開示されている。
また、特許文献5(特開2002−323768号)には、特定のアセタール構造を有する樹脂を含むポジ型電子線、X線又はEUV用レジスト組成物が開示されている。
また、特許文献6(特開2003−177537号)には、エーテル連結基を有するアセタール構造を有する樹脂を含むポジ型電子線、X線又はEUV用レジスト組成物が開示されている。
また、特許文献7(特開2003−57819号)には、重合性末端基を有する分岐ポリマーを含有するフォトレジスト組成物が開示されている。
また、特許文献8(特開2000−347412号)には、ヒドロキシスチレン誘導体のデンポリマーまたはハイパーブランチポリマーを含有するレジスト材料が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記技術でも、解像力、ラインエッジラフネス、真空中PED特性およびパターン形状は同時に満足できていないのが現状である。
ラインエッジラフネスとは、レジスト組成物の特性に起因して、レジスト組成物のラインパターンと基板界面のエッジが、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動した形状を呈することを言う。このパターンを真上から観察するとエッジが凸凹(±数十nm程度)に見える。この凸凹は、エッチング工程により基板に転写されるため、凸凹が大きいと電気特性不良を引き起こし、歩留まりを低下させる原因となっている。レジストパターンサイズがクオーターミクロン以下になるに伴い、ラインエッジラフネスの改善要求が高まってきている。
【0007】
また、真空中の露光後引き起きにおける画像性能安定性(真空中PED)は、電子線やX線、EUV光のような真空中での露光を行う場合に非常に重要な性能であり、真空中PED特性が悪いと、電子線やX線描画の際に、描画の初期と描画の終了時とで性能が大きく変化し、結果として描画パターンの面内均一性が大きくばらつき、歩留りの著しい低下を引き起こしてしまう。
また、上述のラインエッジラフネスに関しても真空中の引き置きで悪化するという問題があった。
【0008】
パターン形状とは、作成したパターンの矩形性であり、パターン断面を横から観察した場合、パターン上部のみが出っ張る形状(T−top)や、パターン上面が丸くなる形状(ラウンドトップ)、パターン幅が上部から下部に行くにつれ広がる形状(テーパー)およびパターン幅が上部から下部につれ狭まる形状(逆テーパー形状)が見られると、エッチングによるパターン転写が忠実に行われなくなってしまう。
【0009】
また、EUVを光源とする場合、光の波長が極紫外領域に属し、高エネルギーを有するため、EUV光に起因するネガ化等の光化学反応が協奏することによるコントラスト低下等の問題があった。
従来知られている技術の組合せにおいては、電子線又はX線照射下で充分良好なラインエッジラフネスと良好な真空中PED特性(ラインエッジラフネス変動)、良好なパターン形状を併せ持つことは困難であり、これらの両立が望まれていた。また、EUV照射下においても、充分良好な感度とコントラストを併せ持つことが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−219757号公報
【特許文献2】特開2000-66382号公報
【特許文献3】特開2001−33970号公報
【特許文献4】特開2002−55457号公報
【特許文献5】特開2002−323768号公報
【特許文献6】特開2003−177537号公報
【特許文献7】特開2003−57819号公報
【特許文献8】特開2000−347412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高エネルギー線、特に電子線、X線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、特に電子線使用時における真空中PED特性、ラインエッジラフネスおよびパターン形状を同時に満足し、またEUV光使用時における感度、溶解コントラストに優れたポジ型レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明に係わるポジ型レジスト組成物は下記構成である。
(1)(A)少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する、星型ポリマーまたはハイパーブランチドポリマー、
(B)下記一般式(PAG1)、(PAG2)又は(PAG4)で表される、活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物、及び、
(C)界面活性剤
を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(PAG1)または(PAG2)において、
Ar1及びAr2は、各々独立に、アリール基を示す。
201、R202及びR203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール
基を示す。
-は置換ベンゼンスルホン酸アニオンを表す。
201、R202及びR203のうちの2つ及びAr1及びAr2はそれぞれ単結合又は置換
基を介して結合してもよい。
一般式(PAG4)において、
204はアリール基を示す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を示す。
【0015】
(2)ポリマー(A)を形成するポリマー鎖のうち少なくとも1つが、ビニル型の繰り返し単位からなることを特徴とする上記(1)に記載のポジ型レジスト組成物。
(3)該ビニル型繰り返し単位として、スチレン誘導体に由来する繰り返し単位または/および(メタ)アクリル酸誘導体に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする上記(2)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0016】
更に好ましい態様として、以下の構成を挙げることができる。
(4)上記(C)界面活性剤の量が、該組成物中の固形分100質量%当たり0.01質量%〜2質量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(5)ポリマー(A)が、酸の作用により分解し、脂環及び芳香環の少なくともいずれかを有する基が脱離し、アルカリ可溶性基を生じる基を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(6)電子線、X線又はEUVにより露光されることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0017】
(7)更に有機塩基性化合物を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか
に記載のポジ型レジスト組成物。
(8)さらに、(B2)活性光線または放射線の作用によりカルボン酸を発生する化
合物を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(9)さらに、溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の
ポジ型レジスト組成物。
(10)上記溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(11)上記溶剤としてさらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することを特徴とする(10)に記載のポジ型レジスト組成物。
(12)更に、下記一般式(A)で表されるアセタール化合物及び/又は一般式(B)で表されるアセタール化合物を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(A)及び(B)中、R1’及びR2’は、各々独立に、炭素数1〜30個の有機基を表す。
【0020】
(13)さらに、含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物を含有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(14)さらに、下記一般式(T)で表される両親媒性化合物を含有することを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(T)中、
A部は、−OH基、−COOH基、−SO3H基及び−OPO32基から選ばれるいず
れかの基を有する親水部を表す。
B部は、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、カルボニル基及びエステル基から選ばれる連結基を表す。
C部は、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる疎水部を表す。
即ち、両親媒性化合物は、親水部と疎水部とを有する。
【0023】
(15)上記(d)界面活性剤として、少なくとも2種の界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、電子線、EUV光によるパターン形成においても、良好な性能を示すポジ型レジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のポジ型レジスト組成物について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0026】
〔1〕(A)少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有し、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解性が増大するポリマー(以下、「酸分解性ポリマー(A)」ともいう)
酸分解性ポリマー(A)は、少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有するとともに、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(酸分解性樹脂)であり、後述するような酸の作用により分解し、カルボキシ基、水酸基などのアルカリ可溶性基を生じる基(酸分解性基)を有する繰り返し単位を含有する。
【0027】
本発明で使用される酸分解性ポリマー(A)は、少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有している、いわゆる分岐ポリマーであり、従来用いられている、1つのポリマー鎖のみで構成されている直鎖状ポリマーとはその構造が異なる。分岐ポリマーに関しては石津浩二編著「分岐ポリマーのナノテクノロジー」(アイピーシー)第1章、第6章、第7章、および野瀬卓平、中浜精一、宮田清蔵編「大学院 高分子化学」(講談社)p.39に記載されている。一般に分岐ポリマーは枝分かれ(分岐)構造に由来した物性を有するため、通常の直鎖状ポリマーとは、溶液、固体物性が大きく異なることが知られている。
各ポリマー鎖の分子量は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは200以上である。
【0028】
上記分岐ポリマーとして、星型ポリマーとは原子あるいは原子団を核とし、3つ以上の複数の分岐鎖が放射状に伸びた構造の分岐ポリマーであり、ハイパーブランチドポリマーとは一分子中に二種類の置換基を合計含む3個以上もつ、いわゆるABx型分子の重合により得られる多重分岐ポリマーである。星型およびハイパーブランチドポリマーに関しては上記「大学院 高分子化学」p.39〜43に記載されている。
【0029】
上記分岐ポリマーの分岐鎖の有無を確認する方法としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)−光散乱測定による方法が挙げられる。すなわち、ポリマーのGPC/MALLS(多角度光散乱)測定を行い、各溶出位置において、散乱光強度の傾きより<R21/2 (半径Rの2乗平均の平方根)を求め、散乱光強度の切片より重量平均分子量Mwを求め、<R21/2とMwの対数をプロットして最小2乗法によりその傾きαを計算する。あるポリマーXの傾きαxと、該ポリマーXと単量体種が同一で共重合組成の類似した直鎖ポリマー(例えば、共重合組成の誤差が10%以内、即ち、2種のポリマー各々における最も多く含有する同一の繰り返し単位の含有量(モル%)の差が10モル%以内)の場合の傾きαlを比較すると、(αl/αx )> 1となる場合、ポリマーXに分岐鎖が存在し、(αl /αx )の値が1より大きいほどポリマーXの分子中の分岐の割合が大きく、(αl/αx )≦ 1の場合、ポリマーXは分岐鎖を有していないと評価する。本発明の分岐ポリマーを用いた場合に上記プロットで得られる傾きをαbとすると、(αl /αb )の値は、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.03以上、更に好ましくは1.04以上、最も好ましくは1.05以上である。
【0030】
上記分岐ポリマーを形成する各ポリマー鎖(幹部、枝部に限らず)の重合に関しては従来の技術(ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、またはリビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合といった連鎖重合や縮合重合)を適用することができるが、連鎖重合が好ましい。すなわち、上記分岐ポリマーを形成する各ポリマー鎖は、ビニル型の繰り返し単位からなることが好ましい。また、重合法としては連鎖重合の中でもラジカル重合およびリビングラジカル重合が特に好ましい。
【0031】
なお、該ビニル型繰り返し単位としては下記式(I)で示されるスチレン誘導体または下記式(II)で示される(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
式(I)中、Zは水素原子または(酸分解性または非酸分解性の)有機基を示す。Yは水素原子または(酸分解性または非酸分解性の)有機基を示す。R1は水素原子、ハロゲ
ン原子、アルキル基を示す。a、b、cは整数であり、a≧0、b≧0、c≧0、0≦a+b+c≦5を満たす。
Zの有機基のうち酸分解性基としては、−C(R11)(R12)(R13)、−C(R14)(R15)(OR16)、−〔C(R17)(R18)〕n−CO−OC(R11)(R12)(R13)が好ましい。R11〜R13は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。R14、R15、R17、R18は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。R16は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。尚、R11、R12、R13のうちの2つ、R14、R15、R16のうちの2つまたはR17、R18の2つが結合して環を形成してもよい。
該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、該アラルキル基は、それぞれのアルキレン鎖中に−O−、−S−、−CO2−、−CO−、―CONH―、−SO2−、−SO−、又はこれらの組み合わせを有していても良い。
Yの有機基のうち酸分解性基としては、−C(R11)(R12)(R13)、−C(R14)(R15)(OR16)が好ましい。
【0034】
【化5】

【0035】
式(II)中、R2は水素原子またはアルキル基を示す。X1は―ORa、―SRbまたは―N(Rc)Rbを示す。Raは水素原子または(酸分解性または非酸分解性の)有機基を
示す。Rbは水素原子または非酸分解性の有機基を示す。Rcは水素原子またはアルキル基を示す。
Raの有機基のうち酸分解性基としては−C(R11)(R12)(R13)、−C(R14)(
15)(OR16)が好ましい。
【0036】
Ra またはRbの非酸分解性の有機基とは、酸の作用により分解することのない有機基
であり、例えば、酸の作用により分解することのない、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、シアノ基等を挙げることができる。アルキル基及びシクロアルキル基は、炭素数1〜10個が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。アリール基は、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を挙げることができる。アラルキル基は、炭素数6〜12個のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、クミル基等を挙げることができる。アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基に於けるアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等を挙げることができる。
2及びRcのアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を好ましく挙げることができる。
【0037】
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の活性水素を有するものや、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、チオエーテル基、アシル基(アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基等)、アシロキシ基(アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0038】
式(I)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
式(II)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化8】

【0043】
次に、各分岐ポリマーの合成法について説明する。
【0044】
星型ポリマーの(A2)の合成法は、先に分岐鎖(枝)となるポリマーを合成した後、核となる原子または原子団(以降コアと呼ぶ)に結合させるarm-first法と、先にコアと
なる多官能開始剤を合成した後、枝となるポリマーを合成するcore-first法の二種に大別できるが、どちらの方法を用いても良い。星型ポリマー(A2)の合成法に関しては石津浩二編著「分岐ポリマーのナノテクノロジー」(アイピーシー)第1章に記載されている。
ハイパーブランチドポリマー(A3)の合成法は、縮合重合を用いる場合、直鎖状ポリマー合成で使われている縮合反応を多官能性分子(ABx型モノマー)に適用する方法、
連鎖重合を用いる場合、二重結合を持つ化合物に開始剤となる反応点を持たせたモノマーのカチオン重合やラジカル重合で合成する方法が挙げられるが、後者が好ましい。ハイパーブランチドポリマー(A3)の合成法に関しては石津浩二編著「分岐ポリマーのナノテクノロジー」(アイピーシー)第6章に記載されている。
なお、通常の直鎖状ポリマーをラジカル重合により合成しようとする際に連鎖移動の影響などで突発的に発生する、一分子中に二つ以上のラジカル活性点を有する生長ラジカルから生成するようなポリマーは、その分岐鎖の構造や分岐鎖が生成する度合いが完全に不規則であり構造が規定できないため、本発明の分岐ポリマーとは全く異なる。そのようなポリマーは本発明の分岐ポリマーには含まない。
【0045】
また、本発明の酸分解性ポリマー(A)はデンドリマーを含まないものとする。本発明の酸分解性ポリマー(A)は枝分かれ(分岐)単位と線状単位の混合を含むが、デンドリマーは世代を問わず枝分かれ繰り返し単位のみを含む。また本発明の酸分解性ポリマー(A)は多分散性であり、少なくとも1.08以上の分子量分散度を示すが、デンドリマー
は単分散型(一般に分散度が約1.02未満)の、極めて明確な輪郭を有している。よっ
て、本発明の酸分解性ポリマー(A)とデンドリマーは区別することができる。
【0046】
以下に、星型ポリマー(A2)、ハイパーブランチドポリマー(A3)の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
〔星型ポリマー(A2)〕
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
〔ハイパーブランチドポリマー(A3)〕
【0054】
【化14】

【0055】
m1は0より大きい数であり、m2、m、n1、n2、nの各々は0以上の数である。
【0056】
酸分解性ポリマー(A)は、全繰り返し単位中、一般式(I)または一般式(II)で示される繰り返し単位を5モル%以上含有することが好ましく、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。また、必要に応じて併せて他の繰り返し単位を含有してもよい。該他の繰り返し単位に相当するモノマーとしては、例えば、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0057】
酸分解性ポリマー(A)は、全繰り返し単位中、酸分解性基を有する繰り返し単位を5〜90モル%含有することが好ましく、より好ましくは7〜80モル%、さらに好ましくは10〜70モル%である。酸分解性基を有する繰り返し単位としては、式(I)でZが−C(R14)(R15)(OR16)の構造、または式(II)でXが―ORaでありさらにRaが−C(R11)(R12)(R13)または−C(R14)(R15)(OR16)の構造が好ましい。
【0058】
また、酸分解性ポリマー(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、酸の作用で脂環及び芳香環の少なくともいずれかを有する基が脱離し、アルカリ可溶性基を生じる基を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。
このような繰り返し単位としては、一般式(I)及び(II)で表される繰り返し単位については、一般式(I)におけるY及びZとしての酸分解性の有機基及び一般式(II)におけるRaとしての酸分解性の有機基が、脂環及び芳香環の少なくともいずれかを有する基である場合が挙げられる。
酸分解性ポリマー(A)は、酸の作用により分解し、脂環及び芳香環の少なくともいずれかを有する基が脱離し、アルカリ可溶性基を生じる基を有する繰り返し単位の含有量は、酸分解性ポリマー(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常3〜95モル%、好ましくは5〜80モル%である。
また、一般式(I)におけるY及びZとしての酸分解性の有機基及び一般式(II)におけるRaとしての酸分解性の有機基は、総炭素数が4〜50が好ましく、5〜45がより好ましく、6〜40が特に好ましい。
【0059】
酸分解性ポリマー(A)中の酸分解性基の導入法としては、フェノール性水酸基やカルボキシル基などのアルカリ可溶性基をあらかじめ酸分解性基で保護したモノマーを共重合して導入する方法と、アルカリ可溶性基を含有するポリマー骨格を構築した後に該アルカリ可溶性基を酸分解基保護して導入する方法があるが、どちらの方法でも良い。後者の方法の例としては、フェノール性水酸基を有するポリマーのそのフェノール性水酸基の一部を、該当するビニルエーテル化合物と酸触媒とを用いてアセタール化反応させることにより得る方法であり、例えば、特開平5−249682、特開平8−123032、特開平10−221854に記載の方法でアセタール基を導入することができる。また、J. Photopolym. Sci. Tech., 11(3) 431 (1998)に記載された S. Malikのアセタール交換反応を用いて所望のアセタール基を導入することも可能である。
【0060】
即ち、フェノール性水酸基を有するポリマーと下記一般式(C)で表されるビニルエーテル化合物および下記一般式(D)で表されるアルコール化合物とを酸触媒下反応させる方法である。ここで、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩等を用いることができる。この方法は、例えば下記反応式に示すように、フェノール性水酸基を有する樹脂と、下記一般式(C)で示されるビニルエーテル化合物及び下記一般式(D)で示されるアルコール化合物とを酸触媒存在下反応させることによりR3'およびR4'、もしくはR4'のみを下記一般式(F)に示すようにアセタール基として導入することができる。
【0061】
【化15】

【0062】
また、酸分解性ポリマー(A)中の酸分解性基の種類は1種であっても複数であっても良い。
【0063】
酸分解性ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは2000〜200,000であり、2,500〜20,000が特に好ましい。即ち、溶解性、解像力の点から分子量200000以下が好ましい。ここで、重量平均分子量とは、光散乱検出によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められた値である。
酸分解性ポリマー(A)の分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)の下限は上記の通り1.1である。上限に関しては、酸分解性ポリマー(A)の分子量分散度が大きいほど、ラインエッジラフネスが悪くなる傾向が見られるため、一般に3.0以下であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、最も好ましくは1.3以下である。
【0064】
このような分子量分散度の小さいポリマーは、ポリマーの合成条件(重合溶媒の量、重合開始剤の量)やポリマーの精製条件(再沈溶剤の種類・量、再沈操作の回数)を種々変更することによって得ることができる。例えば、重合溶剤や開始剤の量を変えることで分子量を調節することができ、また再沈溶剤を変えたり再沈操作の回数を増やすことで樹脂の分散度を減らすことができる。再沈溶剤としては、2種以上の溶剤を混合して用いるか、または再沈操作を2回以上行うことが好ましく、2種以上の溶剤を混合した再沈溶剤を用いて再沈操を2回以上行うことがより好ましい。あるいは、リビングアニオン、リビングラジカル、またはリビングカチオン重合法を経由することによっても分子量分散度の低いポリマーを合成することができる。
【0065】
(A2)星型ポリマーの場合、コア部分から伸びる分岐鎖(枝)の数の平均をyとすると、定義上yは3以上である。yの上限としてはy≦20が好ましく、より好ましくはy≦17、さらに好ましくはy≦14である。また、各分岐鎖の平均重合度をnhとすると
、nhはポリマーの重量平均分子量が上記の範囲に収まることを前提に5≦nh≦1000が好ましく、より好ましくは10≦nh≦800、さらに好ましくは15≦nh≦600である。また、コア部分の分子量は2000以下が好ましく、より好ましくは1800以下
、さらに好ましくは1500以下である。コア部分の分子量の下限に関しては特に限定されないが、上記yの値が4以上になる場合には、コア部に複数存在する分岐鎖との連結部分が離れていて互いに近づけない構造のものが好ましい。具体的には単環もしくは多環の芳香環を1つあるいは複数有する構造が好ましい。
【0066】
(A3)ハイパーブランチドポリマーの場合、ポリマー1分子中の分岐点を有する繰り返し単位と分岐点を有さない繰り返し単位とのモル比の平均(例えば、先に例示したハイパーブランチドポリマーの構造においては(m1+m2+....):(n1+n2+....)の平均)は、通常1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5、さらに好ましくは10:90〜90:10である。
【0067】
酸分解性ポリマー(A)の組成物中の含有量としては、該組成物の全固形分の質量に対して通常70〜98質量%であり、好ましくは75〜96質量%であり、より好ましくは80〜96質量%である。
【0068】
〔2〕活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる、遠紫外線、X線、電子線、EUVなどの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」と呼ぶ場合がある。)について以下に説明する。
【0069】
本発明においては、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物として、下記一般式(PAG1)、(PAG2)又は(PAG4)で表される、活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物を用いる。
【0070】
(1)下記の一般式(PAG1)で表されるヨードニウム塩、又は一般式(PAG2)で表されるスルホニウム塩。
【0071】
【化16】

【0072】
Ar1及びAr2は、各々独立に、アリール基を示す。アリール基に対する好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒロドキシ基、メルカプト基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0073】
201、R202及びR203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール
基を示す。好ましくは、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基及びそれらの置換誘導体である。
アリール基に対する好ましい置換基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒロドキシ基及びハロゲン原子であり、アルキル基及びシクロアルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル
基、アルコシキカルボニル基である。
【0074】
-は置換ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0075】
201、R202及びR203のうちの2つ及びAr1及びAr2はそれぞれ単結合又は置換
基を介して結合してもよい。
【0076】
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート。
【0078】
トリフェニルスルホニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネート。
【0079】
一般式(PAG1)又は(PAG2)で示される上記オニウム塩は公知であり、例えば米国特許第2807648号及び同4247473号、特開昭53−101331号等に記載の方法により合成することができる。
一般式(PAG1)又は(PAG2)で示される酸発生剤のうち、上記具体例以外のものを以下に挙げる。
【0080】
【化17】

【0081】
(2)下記一般式(PAG4)で表されるイミノスルホネート誘導体。
【0082】
【化18】

【0083】
204は、アリール基を示す。Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を示す。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【化19】

【0085】
(B)成分として、上記一般式(PAG1)、(PAG2)又は(PAG4)で表される、活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物((B1)成分)に加えて、さらに活性光線または放射線の作用によりカルボン酸を発生する化合物〔以下(B2)成分と呼ぶ場合もある〕を含有することが好ましい。(B1)成分と(B2)成分を併用することにより、感度、解像力等の諸性能を向上させることができる。(B2)成分としては、一般式(PAG1)、または(PAG2)における対アニオンZ-又はX-がカルボン酸アニオンとなっているものが挙げられる。
【0086】
(B1)成分/(B2)成分の質量比は、通常1/1〜100/1、好ましくは1/1〜10/1である。
【0087】
(B1)成分および(B2)成分の化合物は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
活性光線または放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の添加量は、組成物中の固形分を基準として、総量として、通常0.001〜40質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%の範囲で使用される。活性光線または放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の添加量が、感度の点から0.001質量%以上が好ましく、膜形状、プロファイルの点から40質量%以下が好ましい。
【0089】
〔3〕アルカリ可溶性樹脂
本発明のレジスト組成物には、樹脂成分として前記酸分解性ポリマー(A)以外に酸分解性基を含有していないアルカリ可溶性樹脂を配合することができ、これにより感度が向上する。
【0090】
酸分解基を含有していないアルカリ可溶性樹脂(以下単に「アルカリ可溶性樹脂」という)は、アルカリ現像液に可溶な樹脂であり、本発明の酸分解性ポリマー(A)中の酸分解性基が形式上全て脱保護された樹脂を初め、ポリヒドロキシスチレン、ノボラック樹脂及びこれらの誘導体を好ましくあげることができる。またこれら以外にp−ヒドロキシスチレン単位を含有する共重合樹脂もアルカリ可溶性であれば用いることができる。
【0091】
本発明において、上記酸分解性基を含有しないアルカリ可溶性樹脂の組成物中の添加量としては、組成物の固形分の全質量に対して、好ましくは2〜60質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
【0092】
〔4〕アセタール化合物
本発明の組成物は、一般式(A)で表されるアセタール化合物及び一般式(B)で表されるアセタール化合物の少なくともいずれかを含有することがラインエッジラフネスの点で好ましい。
【0093】
【化20】

【0094】
一般式(A)、(B)中、R1’及びR2’はそれぞれ独立して、炭素数1〜30個の有機基を表す。この有機基の炭素数としては、好ましくは2〜20個であり、より好ましくは4〜16個である。R1’およびR2’の炭素数1〜30個の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基が挙げられる。
【0095】
アルキル基及びシクロアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチルエチル基等の炭素数1〜12個のアルキル基及びシクロアルキル基があげられる。これらのアルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい更なる置換基としては、水酸基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、アルコキシ基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、アリールオキシ基、スルホニル基を有する置換基等が挙げられる。ここで、カルボニル基としては、アルキル置換カルボニル基、芳香族置換カルボニル基が好ましく、エステル基としてはアルキル置換エステル基、芳香族置換エステル基が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基等が好ましい。シクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル基、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基等が挙げられ、ヘテロ原子を含むものとしては、オキソラニル基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基等が挙げられ、このアリール基には置換基を有していてもよい。スルホニル基を有する置換基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基等が挙げられる。
【0096】
アリール基としては、芳香環の骨格としてベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン骨格等が挙げられ、具体的には炭素数6〜30個のものが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらのアリール基には、アルキル基についての更なる置換基として記載したものを置換基として有することができる。アラルキル基としては、芳香環の骨格としてベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン骨格等が挙げられ、具体的には炭素数7〜30個のものが挙げられ、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、ナフチルメチル基等があげられる。これらのアラルキル基には、アルキル基の更なる置換基で記載したものを置換基として有することができる。R1’およびR2’の炭素数1〜30個の有機基としては、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルエチル基、フェニル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニルメチル基、3,4,5−トリメトキシフェニルメチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、9−アンスリルメチル基、10−メトキシ−1−アンスリル基、9−フェナンスレン基、1−ピレニルメチル基である。
【0097】
上記アセタール化合物の合成法としては、ビニルエーテル化合物と、対応するアルコール化合物とを適当な溶剤に溶解し、酸触媒存在下反応させることにより合成することができる。ここで酸触媒としてはp−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩等を用いることができる。反応はアセタール交換反応を伴うことがあり、複数のアセタール化合物の混合物として得られることがあるが、単体でも、混合物であっても本発明の目的に好適に用いることができる。
【0098】
ビニルエーテル化合物及びアルコール化合物としては、一般式(C)で表されるビニルエーテル化合物及び一般式(D)で表されるアルコール化合物を挙げることができる。
【0099】
【化21】

【0100】
式(C)中、R3’は炭素数1〜30の有機基を表す。式(D)中、R4’は炭素数1〜30の有機基を表す。
一般式(C)及び(D)中のR3’及びR4’の炭素数1〜30個の有機基としては、一般式(A)又は一般式(B)のR1’及びR2’の炭素数1〜30個の有機基と同様ものを挙げることができる。
なお、式(A)および/または式(B)で示されるアセタール化合物は、本発明の酸分解性ポリマー(A)を上記のアセタール交換反応を用いて合成する際に副生する場合もある。
以下、本発明に好適に用いられるアセタール化合物の例を示す。尚、以下の具体例において、Meはメチル基、t−Buはt−ブチル基、iso-Buはイソブチル基を表す。
【0101】
【化22】

【0102】
アセタール化合物は単独であるいは2種以上一緒に用いられる。アセタール化合物の組成物中の含有量としては、該組成物の全固形分の質量に対して通常0.001〜10質量
%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0103】
〔5〕含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物
本発明の組成物は、含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物を含有することがラインエッジラフネス及び真空中PEDの点で好ましい。
含窒素塩基性基としては、例えば、次の一般式(CA)〜(CE)の部分構造を有する基及びアンモニウム基を挙げることができる。尚、(CB)〜(CE)の部分構造は、環構造の一部であってもよい。
【0104】
【化23】

【0105】
一般式(CA)中、RC1及びRC2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、RC1とRC2は互いに結合して環を形成してもよい。
【0106】
【化24】

【0107】
一般式(CE)中、RC3、RC4、RC5及びRC6は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。
【0108】
C1〜RC6としてのアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等を挙げることができる。尚、アルキル基及びシクロアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子を含有していてもよ
い。
アルキル基及びシクロアルキル基が有してもよい置換基としては、アミノ基又はヒドロキシ基が好ましい。
【0109】
C1及びRC2のアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
C1とRC2とが互いに結合して形成する環としては、例えば、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子又は2重結合を有していてもよい5〜10員環を挙げることができ、多環構造であってもよい。また、RC1とRC2とが互いに結合して形成された環に酸性基が結合していてもよい。
【0110】
酸性基としては、カルボキシル基、スルホニルオキシ基等が好ましい。
【0111】
含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物の分子量は、50〜2000とすることが好ましく、100〜1000とすることがより好ましい。
【0112】
含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物は、一般に下記のような分子内塩との平衡状態を形成しており、このような分子内塩の状態も含むものである。式中、Rx1〜Rx3は、水素原子、アルキル基等を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基等の2価の連結基を表す。
【0113】
【化25】

【0114】
以下、含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0115】
【化26】

【0116】
【化27】

【0117】
【化28】

【0118】
含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物は、単独で或いは2種以上使用することができる。
含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物の含有量は、本発明の組成物の固形分を基準にして、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0119】
〔6〕両親媒性化合物
本発明の組成物には、下記一般式(T)で表される両親媒性化合物を含有することがラインエッジラフネス及びパターンプロファイルの点で好ましい。
【0120】
【化29】

【0121】
一般式(T)中、
A部は、−OH基、−COOH基、−SO3H基及び−OPO32基から選ばれるいず
れかの基を有する親水部を表す。
B部は、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、カルボニル基及びエステル基から選ばれる連結基を表す。
C部は、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる疎水部を表す。
両親媒性化合物は、親水部と疎水部とを有する。
【0122】
一般式(T)で表される化合物は、A部が、糖アルコール、単糖類及び多糖類から選ばれることが好ましい。
糖アルコールとしては、例えば、イノシトール類を挙げることができ、単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース等を挙げることができ、多糖類としては、例えば、スクロース、マルトース等を挙げることができる。
一般式(T)で表される化合物は、A部が、2つ以上の環状糖構造により構成され、環状糖構造がグリコシド結合により連結されていることが好ましい。
【0123】
C部のアルキル基は、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
C部のシクロアルキル基としては単環型でも良く、多環型でも良い。単環型としては炭素数3〜20個のものであって、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基を好ましく挙げることができる。多環型としては炭素数6〜20個のものであって、例えばアダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を好ましく挙げることができる。但し、上記の単環又は多環のシクロアルキル基中の炭素原子が、酸素原子等のヘテロ原子に置換されていても良い。
【0124】
両親媒性化合物は、非イオン性化合物であることが好ましい。
両親媒性化合物は、アミドアルキル基を有する化合物であることが好ましい。
両親媒性化合物は、チオエーテル結合を有する化合物であることが好ましい。
【0125】
両親媒性化合物は、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニルアミノ基又はアルキルカルボニルオキシ基で置換された糖類誘導体であることが好ましい。
アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルカルボニルオキシ基に於けるアルキル基は、炭素数5〜20個のアルキル基が好ましい。
糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース等を挙げることができる。
【0126】
以下、両親媒性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
【化30】

【0128】
両親媒性化合物の分子量は、通常200〜2000であり、好ましくは300〜1000である。
【0129】
両親媒性化合物は、単独で或いは2種以上使用することができる。両親媒性化合物の添加量は、組成物の全固形分を基準として、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0130】
両親媒性化合物は、市販の試薬を使用することができる。
【0131】
〔7〕 溶剤
本発明の組成物は、上記各成分及び後述する成分を溶解する溶剤に溶かして支持体上に塗布する。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が好ましい。これらの有機溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0132】
上記の中でも、好ましい有機溶剤としては2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、エチ
レングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランを挙げることができる。
【0133】
上記の中でも、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することがより好ましい。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに加えさらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することがラインエッジラフネス、真空中PEDによる性能変化低減の点で好ましい。
【0134】
〔8〕界面活性剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、界面活性剤を含有する。
【0135】
界面活性剤としては、フッ素系及び/またはシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤及びフッ素原子、シリコン原子の両方を含む界面活性剤)が挙げられる。これらの界面活性剤として、例えば特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746
号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号、米国特許第5405720,5360692,5529881, 5296330, 5436098, 5576143, 5294511, 5824451号公報記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0136】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル社製)等のフ
ッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いること
ができる。
【0137】
また、上記フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0138】
これらの界面活性剤は1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のレジスト組成物では、2種以上の界面活性剤を含有するとラインエッジラフネスがさらに良好となる。2種以上併用する場合、少ない界面活性剤の量は、多い界面活性剤の0.005質量%以上であることが好ましい。
【0139】
これらの界面活性剤の配合量は、本発明の組成物中の固形分100質量%当たり、通常0.01質量%〜2質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%である。
【0140】
〔9〕その他の添加剤
本発明のポジ型レジスト組成物には、必要に応じて更に酸分解性溶解促進化合物、染料、可塑剤、光増感剤、塩基性化合物、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0141】
本発明のポジ型レジスト組成物には、塩基性化合物、より好ましくは有機塩基性化合物を用いることができる。これにより、保存時の安定性向上を図ることができる。
【0142】
本発明において好ましい有機塩基性化合物は、フェノールよりも塩基性の強い化合物である。中でも含窒素塩基性化合物が好ましい。
好ましい化学的環境として、下記式(A)〜(E)構造を挙げることができる。
【0143】
【化31】

【0144】
ここで、R250 、R251 及びR252 は、同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20個のアルキル基、炭素数1〜20個のシクロアルキル基又は炭素数6〜20個のアリール基を表し、ここで、R251とR252は、互いに結合して環を形成してもよい。
上記置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0145】
【化32】

【0146】
式中、R253、R254、R255及びR256は、同一または異なり、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0147】
更に好ましい化合物は、窒素含有環状化合物あるいは一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する含窒素塩基性化合物である。
【0148】
窒素含有環状化合物としては、多環構造であることがより好ましい。窒素含有多環環状化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(F)で表される化合物が挙げられる。
【0149】
【化33】

【0150】
式(F)中、Y及びZは、各々独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖、分岐、環状アルキレン基を表す。
【0151】
ここで、ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数2〜10個が好ましく、より好ましくは2〜5個のものである。アルキレン基の置換基としては、炭素数1〜6個のアルキル基、アリール基、アルケニル基の他、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。更に、一般式(F)で示される化合物の具体例としては、下記に示す化合物が挙げられる。
【0152】
【化34】

【0153】
上記の中でも、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンが特に好ましい。
【0154】
一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する含窒素塩基性化合物としては、特に好ましくは、置換もしくは未置換のアミノ基と窒素原子を含む環構造の両方を含む化合物もしくはアルキルアミノ基を有する化合物である。特に好ましい化合物として、グアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1,3,3,−テトラメチルグアニジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2
−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン、N−(2−アミノエチル)モルフォリン、トリメチルイミダゾール、トリフェニルイミダゾール、メチルジフェニルイミダゾール等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0155】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。塩基性化合物の使用量は、組成物の全固形分に対し、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。即ち、充分な効果を得る点で0.001質量%以上が好ましく、感度、非露光部の現像性の点から10質量%以下が好ましい。
【0156】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物としては、フェノール性水酸基を2個以上、またはカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は上記と同じ理由で脂環族または脂肪族化合物が好ましい。
【0157】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、本発明におけるポリマーに対して2〜50質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。現像残渣、また現像時のパターン変形の点から50質量%以下が好ましい。
【0158】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4916210号明細書、欧州特許第219294号明細書等に記載の方法を参考にして、当業者に於て容易に合成することが出来る。
【0159】
フェノール化合物の具体例を以下に示すが、本発明で使用できる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0160】
レゾルシン、フロログルシン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3′,4′,5′−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、アセトン−ピロガロール縮合樹脂、フロログルコシド、2,4,2′,4′−ビフェニルテトロール、4,4′−チオビス(1,3−ジヒドロキシ)ベンゼン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシジフェニルスルフォキシド、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4−(α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,2,2−トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(ヒドロキシフェニル)ブタン、パラ〔α,α,α′,α′−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)〕−キシレン等を挙げることができる。
【0161】
好適な染料としては油性染料及び塩基性染料がある。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS,オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等を挙げることができる。
【0162】
露光による酸発生率を向上させる為、さらに下記に挙げるような光増感剤を添加することができる。好適な光増感剤としては、具体的にはベンゾフェノン、p,p'−テトラメ
チルジアミノベンゾフェノン、p,p'−テトラエチルエチルアミノベンゾフェノン、2
−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン1,2−ベンズアンスラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3'−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルク
マリン)及びコロネン等であるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
また、光源が遠紫外光である場合、これらの光増感剤は、吸光剤としても使用可能である。この場合、吸光剤は基板からの反射光を低減し、レジスト膜内の多重反射の影響を少なくさせることで、定在波改良の効果を発現する。
【0164】
〔10〕パターン形成方法
本発明に係わるポジ型レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布した後、乾燥又はプリベークを行いレジスト膜を形成し、所定のマスクを通して、露光し、好ましくはポストベークを行い、現像することにより良好なレジストパターンを得ることができる。
ここで露光光としては、例えば、250nm以下の波長の遠紫外線、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキ
シマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、電子ビーム等が挙げられ、特に好ましくは、電子線、X線又はEUVが挙げられる。
【0165】
本発明のポジ型レジスト組成物によるパターン形成において、現像に使用するアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
【0166】
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0167】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0168】
(合成例3)多官能開始剤1の合成
【0169】
【化35】

【0170】
反応容器中に2,2−6,6−テトラメチル−1−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエトキシ)−ピペリジン73.10g(0.2mol)、テトラヒドロフランmlを加え、攪拌しながら系中に窒素ガスを流し、溶液を−40℃に冷却した。そこに水素化ナトリウム4.8g(0.2mol)を添加し、さらに20分攪拌した。その後1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン20.24g(0.045mol)を添加し、反応溶液を徐々に室温まで昇温した。その後飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止・中和し、酢酸エチル300mlと蒸留水100mlで抽出操作を行った。酢酸エチル層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、溶媒を留去した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い多官能開始剤1を185.3g得た。
なお、上記の2,2−6,6−テトラメチル−1−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエトキシ)−ピペリジンは、原料をスチレンからp−(1−エトキシエチル)スチレンに変更する以外はJournal of American Chemical Society 1994, Vol. 116, p.11185と同様の方法で合成できる。
【0171】
2,2−6,6−テトラメチル−1−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエトキシ)−ピペリジンの構造は以下の通りである。
【0172】
【化36】

【0173】
(合成例4)ポリマーA−2の合成
【0174】
【化37】

【0175】
反応容器中に多官能開始剤1を3.18g(0.002mol)、p−(1−エトキシエチル)スチレン(東ソー製)38.45g(0.2mol)を添加し、攪拌しながら系中に窒素ガスを流し、反応溶液を130℃に加熱した。10時間加熱攪拌した後反応溶液を室温まで放冷し、さらに酢酸エチル100ml、メタノール20ml、蒸留水5ml、p−トルエンスルホン酸0.5gを加え反応溶液を60℃に加熱し2時間攪拌した。その後反応溶液を蒸留水2L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン100mlに溶解し、再度蒸留水2L中に滴下、ろ過した後減圧乾燥して粉体を23.7g得た。この粉体65.1gをPGMEA300gに溶解し、この溶液を60℃、20mmHgまで減圧して約60gの溶剤を系中に残存している水と共に留去した。20℃まで冷却し、2−シクロヘキサンエタノール16.03g、t−ブトキシビニルエーテル12.52g、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.5gを添加し、室温にて4時間撹拌した。その後、トリエチルアミン0.4gを添加して中和し、酢酸エチル100g、水100gにより洗浄操作を3回行った。その後、溶媒量を調整して30質量%のポリマー溶液を得た。このポリマーをA−2とする。GPC/MALLS(多角度光散乱)測定による重量平均分子量は18000、1Hおよび13C−NMR解析から、フェノール性OHのアセタール保護率が14.5%であった。よって、上述のy(コア部分から伸びる分岐鎖(枝)の数の平均)は4、nh(各分岐鎖の平均重合度)は、31.3、コア部分の分子
量は194である。
【0176】
(合成例5)中間体1の合成
【0177】
【化38】

【0178】
反応容器中で5−ブロモ−2−ヒドロキシベンジルアルコール203.0g(1.0mol)を四塩化炭素500mlに溶解し、さらにトリフェニルホスフィン314.75g(1.2mol)を加えて時間加熱還流を行った。反応溶液を室温まで放冷した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水を用いて洗浄・分液操作を行った。有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した後溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体1を197.6g得た。
【0179】
(合成例6)中間体2の合成
【0180】
【化39】

【0181】
反応容器中に合成例5で得られた中間体1を177.18g(0.8mol)、ピリジン200mlを加え、さらに無水酢酸163.34g(1.6mol)を1時間かけて滴下した。滴下後さらに2時間攪拌した後、さらに酢酸エチル500mlを加え、0.1N−HCl水溶液で2回洗浄を行い、有機層をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と蒸留水で洗浄・分液を行った。有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した後溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体2を202.38g得た。
【0182】
(合成例7)モノマー1の合成
【0183】
【化40】

【0184】
反応容器中で、合成例6で得られた中間体2を131.76g(0.5mol)を脱水テトラヒドロフラン250mlに溶解させ、系中を窒素置換した。中間体2に対しそれぞれ5モル%、10モル%のニッケル(II)クロリド、トリフェニルホスフィンを加えて撹拌し、さらにビニルマグネシウムブロミド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)を500ml加え、60℃に加熱して4時間撹拌した。室温まで戻した後、酢酸エチル-水で洗浄、
抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムgを用いて脱水し、溶媒を留去した後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、モノマー1を84.26g得た。
【0185】
(合成例8)ポリマーA−3の合成
【0186】
【化41】

【0187】
反応容器中で合成例7で得られたモノマー1を42.13g(0.2mol)をクロロベンゼン100mlに溶解し、攪拌しながら系中に窒素ガスを流した。そこに、モノマー1に対してそれぞれ0.2当量、0.1当量の2,2’−ビピリジル、CuClを加え、115℃に加熱して4時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、テトラヒドロフラ
ン100mlを加えさらに2時間攪拌した。その後反応溶液をアルミナを通してろ過し、ろ液をメタノール3L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン100
mlに溶解し、再度メタノール3L中に滴下、ろ過した後減圧乾燥して粉体を27.81g得た。この粉体を反応容器に加え、さらにメタノール100ml、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.91g(0.01mol)を加えて3時間加熱還流を行った。その後1N−HCl水溶液を加え中和し、蒸留水2L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン50mlに溶解し、再度蒸留水2L中に滴下、ろ過した後減圧乾燥
して粉体を19.37g得た。この粉体をPGMEA100gに溶解し、この溶液を60℃、20mmHgまで減圧して約20gの溶剤を系中に残存している水と共に留去した。20℃まで冷却し、2−フェノキシエチルビニルエーテル3.77g、p−トルエンスルホン酸1.0gを添加し、室温にて1時間撹拌した。その後、トリエチルアミン1.16gを添加して中和し、酢酸エチル40g、水40gにより洗浄操作を3回行った。その後、溶媒量を調整して30質量%のポリマー溶液を得た。このポリマーをA−3とする。GPC/MALLS(多角度光散乱)測定による重量平均分子量は26000であった。また、1Hおよび13C−NMR解析から、ポリマー1分子中の分岐点を有する繰り返し単位と分岐点を有さない繰り返し単位とのモル比の平均は76:24であった。また、フェノール性OHのアセタール保護率が21.5%であった。
【0188】
(合成例8)ポリマーA−4の合成
下記構造のポリマーA−4を、合成例4におけるビニルエーテルを変更する以外は同様の方法で合成した。重量平均分子量は15000、フェノール性水酸基の保護率は37.6%であった。y=4、nh=25.5、コア部の分子量は194であった。
【0189】
【化42】

【0190】
(合成例9)ポリマーT−2〜T−4の合成
既存の方法を用いて、本発明のポリマーA−2〜A−4とモノマー組成・重量平均分子量が同等である、下記に示す直鎖状ポリマーT−2〜T−4を合成し、30質量%のPGMEA溶液を得た。
T−4:重量平均分子量15000、フェノール性水酸基の保護率:37.5%
【0191】
【化43】

【0192】
【化44】

【0193】
(分岐度の確認)
ポリマーA−2〜A−4およびT−2〜T−4のGPC/MALLS(多角度光散乱)測定による重量平均分子量(Mw)と、αl/αx の値を表1に示す。ここでαx 、αl
は以下の定義で求められる。
αx:本発明のポリマーA−2〜A−4のGPC/MALLSから求められる<R21/2(半径Rの2乗平均の平方根)とMwの対数とのプロットから最小2乗法で求めた傾き
αl:A−2〜A−4それぞれに対応する直鎖状ポリマーT−2〜T−4について、上
記αxと同様の要領で求めた傾き
【0194】
【表1】

【0195】
表1の結果から、本発明のポリマーA−2〜A−4はいずれも(αl /αx)> 1となり、ポリマーに分岐鎖が存在していることがわかる。
【0196】
〔レジスト組成物の調製〕
表2に示すポリマー〔プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAと省略)30質量%溶液〕:3.16g、酸発生剤:0.05g、界面活性剤:下記表に示す量、有機塩基性化合物:0.003g、場合によりアセタール化合物、含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物または両親媒性化合物:それぞれ0.003g、を下記表に示す溶剤16.79gに溶解させ、固形分濃度が5.0質量%の溶液を調製した。この溶液を0.1μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過し、ポジ型レジスト液を得た。
【0197】
〔パターン作製および評価(EB)〕
上記のように調製したポジ型レジスト液をスピンコータを利用して、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハー上に均一に塗布し、120℃90秒間加熱乾燥を行い、膜厚0.3μmのポジ型レジスト膜を形成した。このレジスト膜に対し、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて電子線照射を行った。照射後に110℃、90秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。得られたパターンを下記の方法で評価した。
【0198】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製 S−4300)
を用いて観察した。150nmライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小
照射エネルギーを感度とした。
【0199】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像)を解像力とした。
【0200】
〔ラインエッジラフネス〕
上記の感度を示す照射量における150nmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子鞍微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。
【0201】
〔パターンプロファイル〕
ライン幅150nm(ライン/スペース=1:1)の部分の断面をSEM((株)日立製作所製S−8840)で観察し、以下の基準で評価した。
【0202】
A:パターン側壁と基板との角度が90±2度であり、かつパターン側壁とパターン表面との角度が90±2度である場合
B:パターン側壁と基板との角度が85度以上88度未満あるいは92度以上95度未満であり、かつパターン側壁とパターン表面との角度が85度以上88度未満あるいは92度以上95度未満である場合
C:パターン側壁と基板との角度が85度未満あるいは95度以上である場合、T−トップ形状が見られる場合またはパターン表面全体が丸くなっている場合
【0203】
〔真空中PEDにおけるラインエッジラフネスの評価(EB)〕
上記のように作製したポジ型レジスト膜を塗布したシリコンウエハーを真空チャンバー内にをセットし、上記電子線描画装置を用いて上記感度を示す照射量にて電子線照射、照射直後又は3時間後に、上記のように110℃、90秒ベーク(加熱処理)した後、現像処理を行いラインパターンを得た。そして、電子線照射直後にベークを行い現像処理し得られた150nmラインパターンと、電子線照射3時間後にベークを行い現像処理をし得
られた150nmラインパターンについて、上記と同様にラインエッジラフネスを評価した。以下の式からラインエッジラフネスの変化を算出した。
【0204】
真空中PEDにおけるラインエッジラフネス変化
=(電子線照射直後にベークを行い現像処理し得られた150nmラインパターンのラインエッジラフネス)−(電子線照射3時間後にベークを行い現像処理をし得られた150nmラインパターンのラインエッジラフネス)
【0205】
結果を表2に示す。
【0206】
【表2】

【0207】
〔酸発生剤〕
【0208】
【化45】

【0209】
〔界面活性剤〕
D−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)
D−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)
D−3:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
D−4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル
【0210】
〔溶剤〕
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0211】
〔塩基性化合物〕
N−1:トリオクチルアミン
N−2:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン
N−3:2,4,6−トリフェニルイミダゾール
【0212】
アセタール化合物G−1:
【0213】
【化46】

【0214】
含窒素塩基性基及び酸性基を有する化合物H−1:
【0215】
【化47】

【0216】
両親媒性化合物T−1:スクロース
【0217】
表2の結果から、本発明のポジ型レジスト組成物は、電子線の照射によるパターン形成に関し、比較例の組成物に比べて、高解像力であり、ラインエッジラフネス、パターン形状に優れ、真空中PEDによるラインエッジラフネスの変化も小さいことが分かる。
【0218】
〔パターン作製および評価(EUV)〕
上記実施例6及び8の各レジスト組成物を先の実施例と同様の方法でレジスト膜を得た。但し、レジスト膜厚は0.15μmとした。得られたレジスト膜にEUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJの範囲で0.5mJづつ変えながら面露光を行い、さらに110℃、90秒ベークした。その後2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、感度曲線を得た。この感度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また感度曲線の直線部の勾配から溶解コントラスト(γ値)を算出した。γ値が大きいほど溶解コントラストに優れている。これらの結果をそれぞれ実施例15〜16とし、表3に示す。
【0219】
【表3】

【0220】
表3の結果から、本発明のポジ型レジスト組成物は、EUV光の照射による特性評価において、比較例の組成物に比べて、高感度で高コントラストであり、優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つの分岐部を介してポリマー鎖を3つ以上有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する、星型ポリマーまたはハイパーブランチドポリマー、
(B)下記一般式(PAG1)、(PAG2)又は(PAG4)で表される、活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物、及び、
(C)界面活性剤
を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

一般式(PAG1)または(PAG2)において、
Ar1及びAr2は、各々独立に、アリール基を示す。
201、R202及びR203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール
基を示す。
-は置換ベンゼンスルホン酸アニオンを表す。
201、R202及びR203のうちの2つ及びAr1及びAr2はそれぞれ単結合又は置換
基を介して結合してもよい。
一般式(PAG4)において、
204はアリール基を示す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を示す。
【請求項2】
ポリマー(A)を形成するポリマー鎖のうち少なくとも1つが、ビニル型の繰り返し単位からなることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
該ビニル型繰り返し単位として、スチレン誘導体に由来する繰り返し単位または/および(メタ)アクリル酸誘導体に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物によりレジスト膜を形成し、該レジスト膜を露光、現像することを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−163259(P2009−163259A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96985(P2009−96985)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2004−89365(P2004−89365)の分割
【原出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】