説明

ポジ型レジスト組成物及びパターン形成方法。

【課題】高解像性と共に、良好なパターン形状を与えることができるポジ型レジスト組成物、該ポジ型レジスト組成物を使用した、保護膜を形成して行う液浸リソグラフィーにおけるパターン形成方法の提供。
【解決手段】(A)酸不安定基として、3級炭素にアダマンチルを含むメタアクリル系繰り返し単位及び3級炭素が環状構造を形成してるメタアクリル系繰り返し単位を有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤を含有するポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.35にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示されている(非特許文献1)。
【0003】
この液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜上に水が存在することによる様々な問題が指摘された。例えば、レジスト材料中の光酸発生剤や、光照射により発生した酸、クエンチャーとしてレジスト膜に添加されているアミン化合物が接触している水に溶出してしまうこと(リーチング)によるパターン形状変化、露光装置の投影レンズへの汚染等の問題である。
【0004】
それを防止するためにレジスト膜上にリーチングを抑制する保護膜を形成する方法がある。ところが、保護膜によってリーチングは抑制されるものの、パターン形状や解像性を劣化させる問題が浮上してきた。パターン形状に関しては、頭が丸くなるトップロスが生じる問題があった。
【0005】
また、高解像性の要望がさらに高まるにつれ、種々のリソグラフィー特性の向上が求められている。なかでも、パターン形成の際のプロセスマージン等の向上のため、焦点深度(DOF)特性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5040 p724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、解像性、特には焦点深度(DOF)特性に優れると共に、良好なパターン形状を与えることができるポジ型レジスト組成物、保護膜を形成し水を介して露光を行う液浸リソグラフィーにおけるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、(A)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤を含有するものであることを特徴とするポジ型レジスト組成物を提供する。
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化2】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0009】
このような本発明のポジ型レジスト組成物を用いれば、解像性に優れ、特に、抜き(トレンチパターン)性能や残し(孤立パターン)性能のDOF特性が向上する。また、良好なパターン形状を与えることができるレジスト膜を形成することができる。
【0010】
また、前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)の繰り返し単位を含むものであることが好ましい。
【化3】

【0011】
このように、本発明の(A)成分の樹脂が、更に、ラクトン環を有する、上記一般式(4)及び/又は上記一般式(5)の繰り返し単位を含むものであれば、レジスト膜が密着性に優れるものとなり、更に好ましい形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0012】
また、前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むものであることが好ましい。
【化4】

【0013】
このように、前記(A)成分の樹脂が、更に、ヒドロキシル基を有する、上記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むものであれば、酸拡散を抑制し良好な解像性を得ることができる。
【0014】
また、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0015】
このような(C)成分の含有量であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0016】
また、本発明では、(A)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤
を含有するポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、加熱処理してフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜上に保護膜を設ける工程と、
水を介して波長180−250nmの高エネルギー線で液浸露光する工程と、
アルカリ現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【化5】

【化6】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【0017】
このように、上記のようなポジ型レジスト組成物を用いた本発明のパターン形成方法であれば、従来の保護膜を形成して液浸露光を行った場合に生じる可能性があるパターン形状の劣化や解像性の劣化を抑制することができる。具体的には、矩形性の高いパターン形状を得ることができ、また、焦点深度(DOF)に優れ、具体的にはトレンチパターンや孤立パターンのDOF特性に優れる。
【0018】
また、前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化7】

【0019】
このように、本発明で用いる(A)成分の樹脂が、更に、ラクトン環を有する、上記一般式(4)及び/又は上記一般式(5)の繰り返し単位を含むものであれば、レジスト膜が密着性に優れるものとなり、得られるパターン形状が更に好ましいものとなる。
【0020】
また、前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化8】

【0021】
このように、本発明の(A)成分の樹脂が、更に、ヒドロキシル基を有する、上記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むものであれば、酸拡散を抑制し、良好な解像性を得ることができる。
【0022】
また、前記(C)成分の化合物の含有量を、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜10質量部とすることが好ましい。
【0023】
このような(C)成分の含有量であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポジ型レジスト組成物は、解像性に優れ、特には孤立パターン、トレンチパターンのいずれにおいても良好なDOF特性が得られる。また、本発明においては、良好な形状のレジストパターンが形成されるという効果も得られる。特に、このようなポジ型レジスト組成物は、保護膜を形成して、水を介して露光を行う液浸リソグラフィーにおいて非常に有用である。また、本発明のパターン形成方法であれば、従来の保護膜を形成して液浸露光を行った場合に生じる可能性があるパターン形状の劣化や解像性の劣化を抑制することができる。具体的には、矩形性の高いパターン形状を得ることができ、また、焦点深度(DOF)に優れ、具体的にはトレンチパターンや孤立パターンのDOF特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記のように、例えば保護膜を形成した場合にもトップロス等の問題が生じることなく、パターン形状や解像性、特には焦点深度(DOF)特性の劣化を抑制することができるポジ型レジスト組成物が求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アダマンタン環を有する酸不安定基で、溶解性基であるカルボン酸を保護した繰り返し単位(後述する一般式(1)で表される繰り返し単位)、及び、特定の単環構造の酸不安定基で、溶解性基であるカルボン酸を保護した繰り返し単位(後述する一般式(2)で表される繰り返し単位)を有する樹脂(A)と、後述する一般式(3)で表される化合物(C)、光酸発生剤(B)、溶剤(D)を含有するポジ型レジスト組成物であれば、解像性やパターン形状の矩形性に優れるため、レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
特に、本発明のポジ型レジスト組成物を用いれば、孤立パターン、トレンチパターンのいずれにおいても良好なDOF特性が得られることを見出した。尚、「DOF」とは、同一露光量において、焦点を上下にずらして露光した際に、ターゲット寸法に対するずれが所定の範囲内となる寸法でレジストパターンを形成できる焦点深度の範囲、すなわちマスクパターンに忠実なレジストパターンが得られる範囲のことであり、DOFは大きいほど好ましい。
【0026】
本発明のポジ型レジスト組成物は、(A)成分として、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂を含有する。
【化9】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化10】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0027】
酸不安定基を含む繰り返し単位である、上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、アダマンタン環を有する酸不安定基で、溶解性基であるカルボン酸を保護した繰り返し単位である。この繰り返し単位を(A)成分の酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂の構成要素に導入することで、高解像性を得ることができる。
【0028】
酸不安定基を含む繰り返し単位である、上記一般式(2)で表される繰り返し単位は、特定の単環構造の酸不安定基で、溶解性基であるカルボン酸を保護した繰り返し単位である。このように、(A)成分の酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂の構成要素に、単環構造ユニットを導入することで、脂溶性を低減させ、かつ、レジスト溶解コントラストを高めることができ、後述する(C)成分との組み合わせにより、解像性、特には焦点深度(DOF)特性に優れると共に、良好なパターン形状を与えることができるポジ型レジスト組成物となる。
【0029】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位のうち、下記で表される繰り返し単位が特に好ましい。
【化11】

【0030】
本発明のポジ型レジスト組成物に含まれる(A)成分の樹脂は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位に加え、更に水酸基及び/又はラクトン環を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。このように、(A)成分の樹脂が、水酸基やラクトン環を有する繰り返し単位を含むことで、微細なパターンにおいても十分な矩形性を得ることができる。
【0031】
密着性基としてラクトン環を有する繰り返し単位としては、下記のものが挙げられる。
【化12】

【0032】
【化13】

【0033】
特に、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)の繰り返し単位が好ましい。
【化14】

【0034】
また、水酸基を有する繰り返し単位としては、下記のものが挙げられる。
【化15】

【0035】
【化16】

【0036】
特に、下記一般式(6)で示される繰り返し単位が好ましい。
【化17】

【0037】
本発明のポジ型レジスト組成物中の(A)成分の樹脂は、上記一般式(1)及び(2)で示される構造の繰り返し単位、水酸基及び/又はラクトン環含有単位以外の繰り返し単位も必要に応じて含んでもよく、例えばカルボキシル基、フルオロアルキル基を含む単位を挙げることができる。
しかしながら、カルボキシル基を含む繰り返し単位の含有率は全繰り返し単位合計に対して10モル%以下が好ましい。この範囲であれば、パターンの矩形性が損なわれたり、膨潤によりパターン倒れ耐性が劣化する恐れがなく、溶解速度制御の点で有効な場合がある。
また、更に有橋環式構造を有した単位を含むこともできる。
この単位の含有率は全繰り返し単位合計に対し、10モル%未満で加えると現像時に生じるパターン倒れをより確実に解消することが認められ、LWRが悪化する恐れがないために好ましい。
【0038】
これらカルボキシル基又はフルオロアルキル基を含む単位、有橋環式構造を有した単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化18】

【0039】
(A)成分の樹脂を合成する場合、必須の繰り返し単位である上記一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位や、任意の繰り返し単位である(4)〜(6)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0040】
本発明のポジ型レジスト組成物中の(A)樹脂を構成する各繰り返し単位の組成比について、上記一般式(1)式で示される繰り返し単位の合計の含有率をaモル%、上記(2)式で示される繰り返し単位の合計の含有率をbモル%、水酸基を含む繰り返し単位の合計の含有率をcモル%、ラクトン環を有する繰り返し単位の合計の含有率をdモル%とした場合、
a+b+c+d=100
0<a≦50
10≦b≦60
0≦c≦50
20≦d≦70
を満たすことが好ましく、特に、
a+b+c+d=100
0<a≦40
10≦b≦60
0≦c≦30
20≦d≦60
を満たす組成比が好ましい。
【0041】
本発明のポジ型レジスト組成物中の(A)樹脂の分子量について、重量平均分子量(Mw)が小さすぎると水への溶解が起こり易くなるが、重量平均分子量が大きすぎるとアルカリ溶解性の低下やスピンコート時の塗布欠陥の原因になる可能性が高い。その観点から、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量において1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000であることが望ましい。
【0042】
本発明のポジ型レジスト組成物は、(B)成分として光酸発生剤を含有する。この光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば特開2011−95662号公報記載のものを用いることができる。
なお、本発明のポジ型レジスト組成物に好ましく用いられる光酸発生剤は、スルホニウム塩、ビススルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド等が挙げられる。また、光酸発生剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
(B)成分の含有量は、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜25質量部であることが好ましい。
【0043】
本発明のポジ型レジスト組成物には、(C)成分として、下記一般式(3)で表される化合物が含有される。
【化19】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0044】
特に、(C)成分としてはRが炭素数10〜20の直鎖状のものが好ましく、更には、下記の構造を有する化合物が好ましい。
【化20】

【0045】
前記(C)成分の含有量は、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。このような(C)成分の含有量であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0046】
本発明のポジ型レジスト組成物は、(D)成分として溶剤を含有する。
(D)溶剤としては、(A)成分の樹脂、(B)成分の光酸発生剤、(C)成分の化合物、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。有機溶剤を配合することによって、例えば、レジスト組成物の基板等への塗布性を向上させることができる。このような有機溶剤としては、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0047】
(D)成分の溶剤の使用量は、ポジ型レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して200〜5,000質量部、特に400〜4,000質量部が好適である。
【0048】
また、本発明のポジ型レジスト組成物に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については特開2009−269953号公報を参照できる。
本発明のレジスト組成物における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。2質量部以下であれば、酸拡散の制御が難しくなる恐れがなく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる恐れがないために好ましい。
【0049】
また、本発明のポジ型レジスト組成物に、有機酸誘導体や酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解制御剤)を添加してもよく、上記各成分と同様に特開2009−269953号公報に記載の化合物を参照できる。溶解制御剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。
【0050】
本発明のポジ型レジスト組成物に上述の(C)成分とは別に塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を配合することによって、解像度を一層向上させることができる。塩基性化合物としては特開2008−111103号公の段落(0146)〜(0164)に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特開2001−166476号公報記載のカーバメート基を有する化合物を挙げることができ、添加量としてはベース樹脂100質量部に対し0〜4質量部が好ましい。
【0051】
本発明のポジ型レジスト組成物中には界面活性剤成分を添加することができ、界面活性剤成分としては特に限定されないが、例えば特開2008−1229338号記載のアルカリ可溶型界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加することによってレジスト組成物の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
また、界面活性剤を混合して使用してもよく、その合計の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。
【0052】
上記のようなポジ型レジスト組成物は、通常のパターン露光、現像等のリソグラフィー技術(多層レジスト法等も含む)によっても上記のような優れた解像性やパターン形状を得ることができるが、特に、保護膜を上に形成し、水を介して露光を行う液浸リソグラフィーにおいて非常に有用である。
【0053】
本発明では、(A)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤
を含有するポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、加熱処理してフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜上に保護膜を設ける工程と、
水を介して波長180−250nmの高エネルギー線で液浸露光する工程と、
アルカリ現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【化21】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化22】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0054】
以下、本発明のパターン形成方法について詳述する。
本発明のポジ型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜付基板等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にポジ型レジスト組成物をスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間加熱処理(プリベーク)してフォトレジスト膜を形成する。
【0055】
次いで、得られたフォトレジスト膜上に水に不溶な保護膜を設ける。
水に不溶な保護膜はフォトレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はフォトレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
【0056】
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。また、上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0057】
次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、マスクと基板の間に水を介して遠紫外線、エキシマレーザー等の波長180−250nmの高エネルギー線で液浸露光する(Immersion法)。露光量は、1〜200mJ/cm、特には10〜100mJ/cmとなるように照射するのが好ましい。本発明のポジ型レジスト組成物は、このような波長180nm〜250nmの遠紫外線又はエキシマレーザーによる微細パターニングに最適である。
【0058】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
本評価に用いた樹脂を構成する繰り返し単位の組成比(モル比)と分子量(Mw)を表1に示す。なお、分子量(Mw)はポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。また、各繰り返し単位の構造を表2に示す。表1中の樹脂のうちP01〜P09は本発明のポジ型レジスト組成物の必須成分である(A)樹脂に相当する。
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
(レジスト組成物の調製)
次に、下記表3中の配合比(質量部)で、上記樹脂の他、各種光酸発生剤、各種クエンチャー(塩基性化合物)を溶剤に溶解し、溶解後にテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)を用い濾過し、レジスト組成物を調製した。表3中の酸発生剤、塩基性化合物の構造を表4に示す。表4中の塩基のうちQ1〜Q5は本発明のポジ型レジスト組成物の必須成分の(C)化合物に相当する。即ち、表3中のレジスト組成物のうち、R01〜R09、R17〜R20は本発明のポジ型レジスト組成物に該当する。R10〜R16、R21〜R25は比較レジスト組成物である。
【表3】

【0062】
【表4】

また、表3中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
【0063】
(レジスト保護膜の調製)
下記に示した組成で、ベース樹脂(TC用ポリマー1、TC用ポリマー2)、有機溶剤を混合、溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、保護膜材料(TC-1、TC-2)を調製した。
【0064】
TC−1
混合組成:下記式で示されるTC用ポリマー1(100質量部)、有機溶剤1(2600質量部)、有機溶剤2(260質量部)
TC−2
混合組成:下記式で示されるTC用ポリマー2(100質量部)、有機溶剤1(2600質量部)、有機溶剤2(260質量部)
【0065】
TCポリマー(以下構造式参照)
TC用ポリマー1(分子量7500)
【化23】

TC用ポリマー2(分子量8200)
【化24】

有機溶剤1:イソアミルエーテル
有機溶剤2:2−メチル−1−ブタノール
【0066】
(評価方法:実施例1〜13、比較例1〜12)
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液(R01〜R25)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、100nm膜厚のフォトレジスト膜を作製した。
さらにこの上にレジスト保護膜材料(TC−1,TC−2)を塗布し100℃で60秒間ベークして50nmの保護膜を形成した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、σ0.85,3/4輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光し、任意の温度(表5、6に記載)で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行いパターンを形成した。
【0067】
レジストの評価は、70nmライン/150nmピッチのパターンを対象とし、電子顕微鏡にてライン幅45nmで仕上がる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm)とした。その際のパターン断面結果をパターン形状として比較した。また、上記最適露光量において焦点を上下ずらし、上記のトレンチパターンがターゲット寸法45nm±10%(すなわち41nm−50nm)の寸法で解像している焦点の範囲を求め、DOF1(nm)とした。この値が大きい程、焦点のずれに対するマージンが広い良好な性能といえる。また、65nmトレンチ/160nmピッチのパターンも同時に観察し仕上がり45nmトレンチ/160nmピッチになる露光量で同様にターゲット寸法45nm±10%(すなわち41nm−50nm)の寸法で解像している焦点の範囲を求め、DOF2(nm)とした。上記表に示した本発明のレジスト組成物(R01〜R09、R17〜R20)の評価結果(実施例1〜13)を表5に示す。また、比較用レジスト組成物(R10〜R16、R21〜R25)の評価結果(比較例1〜12)を表6に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
表5、表6に示した結果により本発明のポジ型レジスト組成物が優れたパターン形状とDOF特性を示すことが明らかになった。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤を含有するものであることを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化2】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)の繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

【請求項3】
前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポジ型レジスト組成物。
【化4】

【請求項4】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜10質量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項5】
(A)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を、酸不安定基を含む繰り返し単位として有し、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)下記一般式(3)で表される化合物、及び(D)溶剤
を含有するポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、加熱処理してフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜上に保護膜を設ける工程と、
水を介して波長180−250nmの高エネルギー線で液浸露光する工程と、
アルカリ現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【化5】

(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。)
【化6】

(式中、Rは、エーテル結合及びエステル結合を有してもよい炭素数10〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項6】
前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)の繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【化7】

【請求項7】
前記(A)成分の樹脂は、更に、下記一般式(6)で示される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のパターン形成方法。
【化8】

【請求項8】
前記(C)成分の化合物の含有量を、前記(A)成分の樹脂の含有量100質量部に対し、0.5〜10質量部とすることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−41126(P2013−41126A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178205(P2011−178205)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】