説明

ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法、並びに高分子化合物

【課題】解像性に優れ、良好な形状のレジストパターンを形成できるポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法、並びに高分子化合物を提供すること。
【解決手段】酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物であって、前記基材成分(A)は、一般式(a0−0−1)[式中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]で表される基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法、並びに高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長のFエキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジストが用いられている。たとえばポジ型の化学増幅型レジストは、ベース樹脂として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂と酸発生剤とを含有しており、レジストパターン形成時に、露光により酸発生剤から酸が発生すると、露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。
【0004】
これまで、化学増幅型レジストのベース樹脂としては、KrFエキシマレーザー(248nm)に対する透明性が高いポリヒドロキシスチレン(PHS)やその水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護した樹脂(PHS系樹脂)が用いられてきた。しかし、PHS系樹脂は、ベンゼン環等の芳香環を有するため、248nmよりも短波長、たとえば193nmの光に対する透明性が充分ではない。そのため、PHS系樹脂をベース樹脂成分とする化学増幅型レジストは、たとえば193nmの光を用いるプロセスでは解像性が低いなどの欠点がある。
そのため、現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)が主に用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸と、α位にメチル基が結合したメタクリル酸の一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−241385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、レジストパターンの微細化はますます進み、従来の化学増幅型のポジ型レジスト組成物により形成されるレジストパターンにおいては、解像性のさらなる向上が求められている。
また、たとえば電子線やEUVによるリソグラフィーでは数十nmの微細なパターン形成を目標としていることから、このようにレジストパターン寸法が小さくなるほど、良好な形状のレジストパターンを形成することが非常に重要となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、解像性に優れ、良好な形状のレジストパターンを形成できるポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法、並びに高分子化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物であって、前記基材成分(A)は、下記一般式(a0−0−1)で表される基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物である。
【0009】
【化1】

[式(a0−0−1)中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【0010】
本発明の第二の態様は、支持体上に、前記第一の態様のポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0011】
本発明の第三の態様は、下記一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)と、当該構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が下記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)とを有する高分子化合物である。
【0012】
【化2】

[式(a5−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【0013】
【化3】

[式(a0−0−1)中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【0014】
本明細書および本特許請求の範囲において、「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
また、「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「低級アルキル基」は、炭素原子数1〜5のアルキル基である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「構成単位」とは、高分子化合物(重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、解像性に優れ、良好な形状のレジストパターンを形成できるポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法、並びに高分子化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪ポジ型レジスト組成物≫
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)(以下「(A)成分」という。)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」という。)を含有する。
本発明のポジ型レジスト組成物において、(A)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して不溶性であり、露光により前記(B)成分から発生した酸が作用すると、(A)成分全体のアルカリ現像液に対する溶解性が増大し、アルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化する。そのため、レジストパターンの形成において、ポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないため、アルカリ現像によりレジストパターンを形成することができる。
【0017】
ここでいう「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
前記分子量が500以上の有機化合物は、分子量が500以上2000未満の低分子量の有機化合物(以下「低分子化合物」という。)と、分子量が2000以上の高分子量の樹脂(高分子材料)とに大別される。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。樹脂(重合体、共重合体)の場合は、「分子量」としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000以上の樹脂を示すものとする。
【0018】
<(A)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物において、(A)成分は、前記一般式(a0−0−1)で表される基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」という。)を含有する。
また、(A)成分は、前記(A1)成分に加えて、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する低分子化合物成分(A2)(以下「(A2)成分」ということがある。)を含有してもよい。
【0019】
[(A1)成分]
(A1)成分は、前記構成単位(a0)を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分である。
(A1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポジ型レジスト組成物においては、特に、(A1)成分が、後述の一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)と、当該構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)とを有することが好ましい。
また、(A1)成分は、構成単位(a0)に加えて、上記構成単位(a5)以外の他の構成単位を有していてもよい。
【0020】
・構成単位(a0)について
構成単位(a0)は、前記一般式(a0−0−1)で表される基を含む構成単位である。
前記一般式(a0−0−1)中、R’およびR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。
’、R’の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
本発明においては、R’、R’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。
【0021】
前記一般式(a0−0−1)中、Yは、エーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表す。
は、炭素数2〜15であり、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜10であることがより好ましく、炭素数2〜9がさらに好ましく、Yが直鎖状のアルキレン基である場合は炭素数2(エチレン基)であることが最も好ましい。
【0022】
のアルキレン基として具体的には、たとえばメチレン基[−CH−];−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CHCH−];−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CHCHCH−];−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CHCHCHCH−];−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CHCHCHCHCH−]、ヘキサメチレン基[−CHCHCHCHCHCH−]、ヘプタメチレン基[−CHCHCHCHCHCHCH−]、オクタメチレン基[−CHCHCHCHCHCHCHCH−]、ノナメチレン基[−CHCHCHCHCHCHCHCHCH−]、デカメチレン基[−CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−]等が挙げられる。
【0023】
また、Yのアルキレン基は、環状のアルキレン基(以下「Rc」と表記する。)であってもよく、Rcと鎖状のアルキレン基との組合せであってもよい。
がRc又は Rcと鎖状のアルキレン基との組合せの場合、Yは、炭素数が3〜15であることが好ましく、炭素数5〜12であることがより好ましく、6〜10であることが特に好ましい。Rcは単環式基であっても多環式基であってもよい。
かかるYとして具体的には、たとえば−Rc−、−CH−Rc−CH−、−CH−Rc−CHCH−、−CHCH−Rc−CH−、−CHCH−Rc−CHCH−、−CH−Rc−CHCHCHCH−等が挙げられる。なかでも、−CH−Rc−CH−が好ましい。
Rcは、炭素数5〜6の単環式基であることが好ましい。
【0024】
がエーテル結合(−O−)を有する場合、酸素原子数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
として具体的には、たとえば−(CHCHO)CHCH−、−[CH(CH)CHO]CHCH−、−[CH(CH)CH(CH)O]CHCH−、−[C(CHCHO]CHCH−、−[CH(CHCH)CHO]CHCH−;−(CHCHCHO)CHCH−、−[CH(CH)CHCHO]CHCH−、−[CHCH(CH)CHO]CHCH−;−(CHCHCHCHO)CHCH−、−[CH(CH)CHCHCHO]CHCH−、−[CHCH(CH)CHCHO]CHCH−;−[CHCHCHCHCHO]CHCH−、又はこれらを組み合わせたもの若しくはこれらを繰り返したもの等が挙げられる。前記Yの具体例において、gは繰り返し数であって1〜4の数を示す。
【0025】
のアルキレン基は、置換基を有していてもよい。
アルキレン基が「置換基を有する」とは、当該アルキレン基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の原子または基で置換されていることを意味する。
アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0026】
前記一般式(a0−0−1)中、Xは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
Xの炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜20であり、5〜20であることが好ましく、6〜15がより好ましく、6〜12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
上記のなかでも、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が好ましく、アリールアルキル基としてベンジル基が好ましい。
【0027】
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0028】
Xにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
Xにおいて、脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
Xにおける「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
炭素原子の一部を置換する置換基として、具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0029】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が1〜20であり、1〜15であることが好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が3〜20であり、3〜15であることが好ましく、3〜10がより好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
上記のなかでも、直鎖状の飽和炭化水素基が好ましく、デシル基が特に好ましい。
【0030】
不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5がより好ましく、2〜4が特に好ましく、3が最も好ましい。
直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。
分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0031】
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。その炭素数は3〜20であり、5〜20が好ましく、6〜15がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
具体的には、たとえば、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、たとえば下記式(L1)〜(L5)、(S1)〜(S4)等が挙げられる。
【0032】
【化4】

[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R94−または−S−R95−であり、R94およびR95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0033】
式中、Q”、R94およびR95におけるアルキレン基としては、それぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH−];−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CHCH−];−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CHCHCH−];−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CHCHCHCH−];−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CHCHCHCHCH−]等が挙げられる。
【0034】
Xにおける脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記アルコキシ基、ハロゲン原子は、それぞれ前記水素原子の一部または全部を置換する置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0035】
本発明において、Xは、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましい。該環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。Xが置換基を有していてもよい環式基であると、より高い解像性が得られやすくなる。また、膜減り等が抑制され、より良好な形状のレジストパターンが形成されやすくなる。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。Xが芳香族炭化水素基であると、高い感度が得られやすくなる。また、スループットが速く、生産性がより向上する。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。該多環式の脂肪族環式基としては、前記ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記(L2)〜(L5)、(S3)〜(S4)等が好ましい。
【0036】
前記一般式(a0−0−1)で表される基の好適な具体例を以下に示す。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

[式(a0−0−11)〜(a0−0−31)中、R’は前記と同じであり、R14は置換基であり、vは2〜15の整数であり、v1は1〜4の整数であり、uは0〜3の整数である。式(a0−0−17)〜(a0−0−19)中、tは0〜5の整数を表す。]
【0044】
前記式(a0−0−11)〜(a0−0−31)中、R’は前記と同じであり、水素原子又はメチル基が好ましい。
14は置換基であり、上記Xにおいて、脂肪族環式基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
vは2〜15の整数であり、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、2であることが最も好ましい。
v1は1〜4の整数であり、1〜2であることがより好ましい。
uは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがさらに好ましい。
前記式(a0−0−17)〜(a0−0−19)中、tは0〜5の整数を表し、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0045】
構成単位(a0)における主鎖は、特に限定されず、たとえばヒドロキシスチレンから誘導される構成単位、アクリル酸エステルから誘導される構成単位、ビニルナフトールから誘導される構成単位、ビニル安息香酸から誘導される構成単位、主鎖が環状型の構成単位(以下「主鎖環状型構成単位」という。)が好適なものとして挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位、アクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましく、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位が特に好ましい。
【0046】
ここで、本明細書および本特許請求の範囲において「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニルナフトールから誘導される構成単位」とは、ビニルナフトールのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
また、本明細書において「主鎖環状型構成単位」とは、単環または多環式の環構造を有し、該環構造の環上の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の炭素原子が主鎖を構成する構成単位をいう。
【0047】
「ヒドロキシスチレン」とは、ヒドロキシスチレン、およびヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
ヒドロキシスチレンにおいて、α位の置換基としてのアルキル基として、具体的には炭素数1〜5の低級アルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0048】
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。置換基としては、低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことを意味する。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としての低級アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
また、ハロゲン化低級アルキル基として、具体的には、上記「α位の置換基としての低級アルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
本発明において、アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であることが好ましく、水素原子、低級アルキル基またはフッ素化低級アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0049】
「ビニルナフトール」とは、ビニルナフトール、およびビニルナフトールのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、ビニルナフトールから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ナフタレン環が結合している炭素原子のことを意味する。
ビニルナフトールにおいて、α位の置換基としてのアルキル基としては、上記「ヒドロキシスチレン」のα位の置換基としてのアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0050】
「ビニル安息香酸」とは、ビニル安息香酸、およびビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、ビニル安息香酸から誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合しかつエチレン性二重結合を形成している炭素原子のことを意味する。
ビニル安息香酸において、α位の置換基としてのアルキル基としては、上記「ヒドロキシスチレン」のα位の置換基としてのアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0051】
構成単位(a0)のなかで好適なものとして具体的には、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位として、たとえば、後述の一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)が挙げられる。
また、構成単位(a0)のなかで好適なものとしては、アクリル酸エステルから誘導される構成単位として、たとえば、後述の一般式(a0−1−1)で表される構成単位(a0−1)も挙げられる。
また、構成単位(a0)のなかで好適なものとしては、ビニル安息香酸から誘導される構成単位として、たとえば、後述の一般式(a0−8−1)で表される構成単位(a0−8)も挙げられる。
【0052】
・・構成単位(a0−5)について
構成単位(a0−5)は、後述の一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位、すなわち、下記一般式(a0−5−1)で表される構成単位である。
【0053】
【化12】

[式(a0−5−1)中、R’、R’、YおよびXは、それぞれ、上記一般式(a0−0−1)におけるR’、R’、YおよびXと同じである。Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【0054】
前記式(a0−5−1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基である。
の低級アルキル基は、上記ヒドロキシスチレンのα位に結合していてよい低級アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0055】
前記式(a0−5−1)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。
のハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
の低級アルキル基は、上記ヒドロキシスチレンのα位に結合していてよい低級アルキル基と同様のものが挙げられる。
のハロゲン化アルキル基は、上記Rの低級アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられ、フッ素化低級アルキル基であることが好ましい。
【0056】
前記式(a0−5−1)中、pは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
水酸基の結合位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。pが1である場合は、容易に入手可能で低価格であることからp−位が好ましい。pが2または3の場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。
【0057】
前記式(a0−5−1)中、qは0〜4の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることが好ましく、特に工業上、0であることが好ましい。
の置換位置は、qが1である場合はo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。qが2である場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。複数のRは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
ただし、p+qは、1以上5以下である。
【0058】
・・構成単位(a0−1)について
構成単位(a0−1)は、下記一般式(a0−1−1)で表される構成単位である。
【0059】
【化13】

[式(a0−1−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化低級アルキル基である。R’、R’、YおよびXは、それぞれ、上記一般式(a0−0−1)におけるR’、R’、YおよびXと同じである。]
【0060】
前記式(a0−1−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化低級アルキル基である。
Rの低級アルキル基又はハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基又はハロゲン化低級アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0061】
・・構成単位(a0−8)について
構成単位(a0−8)は、下記一般式(a0−8−1)で表される構成単位である。
【0062】
【化14】

[式(a0−8−1)中、R’、R’、YおよびXは、それぞれ、上記一般式(a0−0−1)におけるR’、R’、YおよびXと同じである。Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【0063】
前記式(a0−8−1)中、R、R、pおよびqについては、それぞれ、上記式(a0−5−1)におけるR、R、pおよびqの説明と同じである。
【0064】
前記式(a0−8−1)で表される構成単位(a0−8)を誘導する化合物(a0−8−1−0)は、例えば、下記一般式(a0−8−0)で表される化合物を、酸性条件下において、下記一般式(a0−8−0’)で表される化合物と反応させる方法により合成できる。
【0065】
【化15】

[式中、R’、R’、Y、X、R、R、pおよびqは、それぞれ、上記一般式(a0−8−1)におけるR’、R’、Y、X、R、R、pおよびqと同じである。]
【0066】
得られた化合物の構造は、H−核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、13C−NMRスペクトル法、19F−NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0067】
以下に、参考例として化合物(a0−8−1−0)の具体的な合成例を示す。
4−ビニル安息香酸(4.7g)を、1,3−ジオキソラン(23.7g)に溶解して氷冷した後、トリフルオロ酢酸(0.17g)を加えた。その後、そこへ、化合物5’(10.5g)のジオキソラン25質量%溶液をゆっくりと滴下した。次いで、30℃で5時間反応した後、1質量%アンモニア水(5.2g)を加え、室温で10分間撹拌した。その反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分取し、目的の化合物(a0−8−1−0−1)を得た。
【0068】
【化16】

【0069】
得られた化合物に対してNMRによる分析を行った結果、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=8.05(d,2H,ArH)、7.45(d,2H,ArH)、6.76(t,1H,CH=C)、5.87(d,1H,CH=C)、5.45(q,1H,acetal−CH)、5.36(d,1H,CH=C)、3.80−3.92(m,2H,CH)、3.45−3.58(m,2H,CH)、0.94−1.95(m,28H,Admantane+Cyclohexyl+CH)。
異性体比 : 18.5/81.5(mol%,cis/trans)measured by H−NMR。
【0070】
(A1)成分において、構成単位(a0)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、構成単位(a0)は、構成単位(a0−5)、構成単位(a0−1)および構成単位(a0−8)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、構成単位(a0−5)が特に好ましい。
【0071】
(A1)成分中の前記構成単位(a0)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して5〜60モル%の範囲内であることが好ましく、10〜55モル%がより好ましく、15〜50モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることによって、より高い解像性が得られる。また、より良好な形状のレジストパターンが形成される。前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0072】
・構成単位(a5)について
構成単位(a5)は、下記一般式(a5−1)で表される構成単位である。
(A1)成分が当該構成単位(a5)を有することにより、本発明の効果に加えて、ドライエッチング耐性が向上する。さらに、構成単位(a5)は、原料であるヒドロキシスチレンが容易に入手可能で低価格である等の利点も有する。
【0073】
【化17】

[式(a5−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【0074】
前記式(a5−1)中、R、R、pおよびqは、それぞれ、上記式(a0−5−1)におけるR、R、pおよびqと同じである。
【0075】
(A1)成分において、構成単位(a5)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分中の前記構成単位(a5)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して45〜90モル%であることが好ましく、50〜85モル%がより好ましく、55〜80モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることによって、適度なアルカリ溶解性が得られる。また、構成単位(a5)を含有させることによる効果が充分に得られる。前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0076】
・他の構成単位について
(A1)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a0)および構成単位(a5)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
他の構成単位は、上述の構成単位(a0)および構成単位(a5)に分類されない他の構成単位であれば特に限定されるものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
他の構成単位としては、たとえば、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)(ただし、前記構成単位(a0−1)を除く。)、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)、酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)、スチレンから誘導される構成単位(a6)、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が置換基により保護された構成単位(a7)等が挙げられる。
【0077】
・・構成単位(a1)について
構成単位(a1)は、上記構成単位(a0−1)に該当しない、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は(A1)成分全体をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、酸により解離してこの(A1)成分全体のアルカリ現像液に対する溶解性を増大させるものであり、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基;アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性溶解抑制基などが広く知られている。
【0078】
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
【0079】
ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。
「脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされず、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、炭素数4〜8の第3級アルキル基が好ましく、具体的にはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
【0080】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基又は多環式基であることを示す。
構成単位(a1)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数1〜5の低級アルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされず、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。「脂肪族環式基」は、多環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0081】
脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、下記一般式(a1”−1)〜(a1”−6)で示す構成単位において、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の酸素原子に結合した基のように、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0082】
【化18】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;R15、R16はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜5である)を示す。]
【0083】
一般式(a1”−1)〜(a1”−6)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
【0084】
「アセタール型酸解離性溶解抑制基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のアルカリ可溶性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性溶解抑制基と、当該アセタール型酸解離性溶解抑制基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0085】
【化19】

[式中、R’,R’はそれぞれ上記と同じである。nは0〜3の整数を表し、Yは低級アルキル基または脂肪族環式基を表す。]
【0086】
前記式中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
’,R’の低級アルキル基としては、上記Rの低級アルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
本発明においては、R’,R’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。すなわち、酸解離性溶解抑制基(p1)が、下記一般式(p1−1)で表される基であることが好ましい。
【0087】
【化20】

[式中、R’、n、Yは上記と同様である。]
【0088】
前記式中、Yの低級アルキル基としては、上記Rの低級アルキル基と同様のものが挙げられる。
Yの脂肪族環式基としては、従来ArFレジスト等において多数提案されている単環又は多環式の脂肪族環式基の中から適宜選択して用いることができ、たとえば上記「脂肪族環式基」と同様のものが例示できる。
【0089】
また、アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0090】
【化21】

[式中、R17、R18はそれぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または水素原子であり、R19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。または、R17およびR19がそれぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であって、R17の末端とR19の末端とが結合して環を形成していてもよい。]
【0091】
17、R18において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特にR17、R18の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、炭素数は、好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
19が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
19が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。なかでも、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R17及びR19が、それぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基)であってR19の末端とR17の末端とが結合していてもよい。
この場合、R17とR19と、R19が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR17が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0092】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位および下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0093】
【化22】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示す。]
【0094】
【化23】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示し;Yは2価の連結基を示す。]
【0095】
一般式(a1−0−1)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
は、酸解離性溶解抑制基であれば特に限定されることはなく、例えば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基、アセタール型酸解離性溶解抑制基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基が好ましい。
【0096】
一般式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。
は、式(a1−0−1)中のXと同様である。
【0097】
の2価の連結基としては、アルキレン基、2価の脂肪族環式基またはヘテロ原子を含む2価の連結基が挙げられる。
該脂肪族環式基としては、水素原子が2個以上除かれた基が用いられること以外は前記「脂肪族環式基」の説明と同様のものを用いることができる。
がアルキレン基である場合、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1〜3であることが最も好ましい。
が2価の脂肪族環式基である場合、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンから水素原子が2個以上除かれた基であることが特に好ましい。
がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−、「−A−O(酸素原子)−B−(ただし、AおよびBはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。)」等が挙げられる。
【0098】
が−NH−の場合における置換基(アルキル基、アシル基等)の炭素数としては1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。
が「A−O−B」である場合、AおよびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。
炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されていることを意味する。
【0099】
Aにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
【0100】
Aにおける脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
Aにおける脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0101】
直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、2〜5がさらに好ましく、2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0102】
環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。
多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0103】
Aとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0104】
Bにおける炭化水素基としては、前記Aで挙げたものと同様の2価の炭化水素基が挙げられる。
Bとしては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基またはアルキルメチレン基が特に好ましい。
アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0105】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0106】
【化24】

[式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基を表し、Yは炭素数1〜5の低級アルキル基、または脂肪族環式基を表し;nは0〜3の整数を表し;Yは2価の連結基を表し;Rは前記と同じであり、R’、R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0107】
前記式中、X’は、前記Xにおいて例示した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基と同様のものが挙げられる。
’、R’、n、Yとしては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性溶解抑制基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR’、R’、n、Yと同様のものが挙げられる。
は、上述の一般式(a1−0−2)におけるYと同様のものが挙げられる。
【0108】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
なお、下記式中のRαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
【化27】

【0112】
【化28】

【0113】
【化29】

【0114】
【化30】

【0115】
【化31】

【0116】
構成単位(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、一般式(a1−1)又は(a1−3)で表される構成単位が好ましく、具体的には(a1−1−1)〜(a1−1−4)、式(a1−1−16)〜(a1−1−17)、(a1−1−20)〜(a1−1−23)および(a1−3−25)〜(a1−3−28)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜式(a1−1−3)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるもの、式(a1−1−16)〜(a1−1−17)および式(a1−1−20)〜(a1−1−23)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)で表されるものも好ましい。
【0117】
【化32】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R11は低級アルキル基を示す。R12は低級アルキル基を示し、hは1〜6の整数を表す。)
【0118】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。
11の低級アルキル基は、Rにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0119】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。
12の低級アルキル基は、Rにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基が最も好ましい。hは1又は2が好ましく、2が最も好ましい。
【0120】
(A1)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0121】
・・構成単位(a2)について
構成単位(a2)は、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
ここでいう「ラクトン含有環式基」とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、水を含有する現像液との親和性を高めたりする上で有効なものである。
【0122】
構成単位(a2)としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
【0123】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0124】
【化33】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R’は水素原子、低級アルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−COOR”であり、前記R”は水素原子、または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基であり、mは0または1の整数であり、A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。]
【0125】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは、前記構成単位(a1)におけるRと同様である。
R’の低級アルキル基としては、前記構成単位(a1)におけるRの低級アルキル基と同じである。
R”が直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
A”の酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、−O−CH−、−CH−O−CH−、−S−CH−、−CH−S−CH−等が挙げられる。
以下に、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位の具体例を示す。なお、下記式中のRαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0126】
【化34】

【0127】
【化35】

【0128】
【化36】

【0129】
【化37】

【0130】
【化38】

【0131】
(A1)成分において、構成単位(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、構成単位(a2)としては、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。そのなかでも、化学式(a2−1−1)、(a2−2−1)、(a2−2−7)、(a2−3−1)および(a2−3−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0132】
(A1)成分中の構成単位(a2)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることにより、構成単位(a2)を有することによる効果が充分に得られ、前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0133】
・・構成単位(a3)について
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
(A1)成分が構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該多環式基の炭素数は7〜30であることが好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0134】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)で表される構成単位、下記式(a3−2)で表される構成単位、下記式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0135】
【化39】

[式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。]
【0136】
式(a3−1)中、jは、1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0137】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基はノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0138】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0139】
構成単位(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、5〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、構成単位(a3)を有することによる効果が高く、前記範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0140】
・・構成単位(a4)について
構成単位(a4)は、酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
該多環式基は、たとえば、上記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特に、トリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)で表される構造のものを例示することができる。
【0141】
【化40】

[式中、Rは前記と同じである。]
【0142】
構成単位(a4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分が構成単位(a4)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a4)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
【0143】
・・構成単位(a6)について
構成単位(a6)は、スチレンから誘導される構成単位である。
本発明において構成単位(a6)は必須ではないが、これを含有させると、アルカリ現像液に対する溶解性を調整することができる。また、ドライエッチング耐性が向上するため、好ましい。
本明細書において「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
「スチレンから誘導される構成単位」とは、スチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。スチレンは、フェニル基の水素原子が炭素数1〜5のアルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
構成単位(a6)のなかで好適なものとしては、下記一般式(a6−1)で表される構成単位が例示できる。
【0144】
【化41】

[式(a6−1)中、Rは前記と同じであり;Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;rは0〜3の整数である。]
【0145】
前記一般式(a6−1)中、Rは、上記式(a5−1)におけるRと同じである。
は、上記式(a5−1)におけるRと同様のものが挙げられる。
rは0〜3の整数であり、0又は1であることが好ましく、工業上、0であることが特に好ましい。
rが1である場合、Rの置換位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
rが2又は3である場合には、任意の置換位置を組み合わせることができる。複数のRは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0146】
構成単位(a6)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分が構成単位(a6)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a6)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜20モル%が好ましく、3〜15モル%がより好ましく、5〜15モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、構成単位(a6)を有することによる効果が高く、前記範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0147】
・・構成単位(a7)について
構成単位(a7)は、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が置換基により保護された構成単位である。
構成単位(a7)において、前記置換基としては、たとえば、第3級アルキル基含有基、アルコキシアルキル基、酸解離性溶解抑制基(ただし、前記式(a0−0−1)で表される基を除く。)、酸解離性溶解抑制基を含む有機基が挙げられる。
【0148】
・・・第3級アルキル基含有基について
本明細書において「第3級アルキル基」は、第3級炭素原子を有するアルキル基を示す。「アルキル基」は、上述のように、1価の飽和炭化水素基を示し、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)のアルキル基および環状構造を有するアルキル基を包含する。
「第3級アルキル基含有基」は、その構造中に第3級アルキル基を含む基を示す。第3級アルキル基含有基は、第3級アルキル基のみから構成されていてもよく、第3級アルキル基と、第3級アルキル基以外の他の原子または基とから構成されていてもよい。
第3級アルキル基とともに第3級アルキル基含有基を構成する前記「第3級アルキル基以外の他の原子または基」としては、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アルキレン基、酸素原子等が挙げられる。
【0149】
構成単位(a7)において、第3級アルキル基含有基としては、環状構造を有さない第3級アルキル基含有基、環状構造を有する第3級アルキル基含有基等が挙げられる。
環状構造を有さない第3級アルキル基含有基は、第3級アルキル基として分岐鎖状の第3級アルキル基を含有し、かつ、その構造内に環状構造を有さない基である。
分岐鎖状の第3級アルキル基としては、たとえば下記一般式(I)で表される基が挙げられる。
【0150】
【化42】

【0151】
式(I)中、R21〜R23は、それぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。該アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
また、一般式(I)で表される基の全炭素数は、4〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが最も好ましい。
一般式(I)で表される基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が好ましく挙げられ、tert−ブチル基がより好ましい。
【0152】
環状構造を有さない第3級アルキル基含有基としては、上述した分岐鎖状の第3級アルキル基;上述した分岐鎖状の第3級アルキル基が直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基に結合してなる第3級アルキル基含有鎖状アルキル基;第3級アルキル基として上述した分岐鎖状の第3級アルキル基を有する第3級アルキルオキシカルボニル基;第3級アルキル基として上述した分岐鎖状の第3級アルキル基を有する第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基等が挙げられる。
第3級アルキル基含有鎖状アルキル基におけるアルキレン基としては、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数〜2のアルキレン基がさらに好ましい。
鎖状の第3級アルキルオキシカルボニル基としては、たとえば下記一般式(II)で表される基が挙げられる。式(II)中のR21〜R23は、前記式(I)中のR21〜R23と同様である。鎖状の第3級アルキルオキシカルボニル基としては、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)、tert−ペンチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0153】
【化43】

【0154】
鎖状の第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基としては、たとえば下記一般式(III)で表される基が挙げられる。式(III)中のR21〜R23は、前記式(I)中のR21〜R23と同様である。fは1〜3の整数であり、1または2が好ましい。鎖状の第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基としては、tert−ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチルオキシカルボニルエチル基が好ましい。
これらの中で、環状構造を有さない第3級アルキル基含有基としては、第3級アルキルオキシカルボニル基または第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基が好ましく、第3級アルキルオキシカルボニル基がより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0155】
【化44】

【0156】
環状構造を有する第3級アルキル基含有基は、その構造内に、第3級炭素原子と環状構造とを有する基である。
環状構造を有する第3級アルキル基含有基において、環状構造は、環を構成する炭素数が4〜12であることが好ましく、5〜10であることがより好ましく、6〜10であることが最も好ましい。環状構造としては、例えばモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0157】
環状構造を有する第3級アルキル基含有基としては、例えば、第3級アルキル基として下記(1)または(2)の基を有する基等が挙げられる。
(1)環状のアルキル基(シクロアルキル基)の環を構成する炭素原子に、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が結合し、該炭素原子が第3級炭素原子となっている基。
(2)シクロアルキル基の環を構成する炭素原子に、第3級炭素原子を有するアルキレン基(分岐鎖状のアルキレン基)が結合している基。
【0158】
前記(1)の基における直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
(1)の基としては、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−1−シクロアルキル基、1−エチル−1−シクロアルキル基等が挙げられる。
【0159】
前記(2)において、分岐鎖状のアルキレン基が結合しているシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
(2)の基としては、たとえば下記化学式(IV)で表される基が挙げられる。
【0160】
【化45】

【0161】
式(IV)中、R24は、置換基を有していてもよく有していなくてもよいシクロアルキル基である。該シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
25、R26は、それぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。
該アルキル基としては、前記式(I)中のR21〜R23のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0162】
・・・アルコキシアルキル基について
構成単位(a7)において、アルコキシアルキル基としては、たとえば下記一般式(V)で表される基が挙げられる。
【0163】
【化46】

【0164】
式(V)中、R51は、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。
51が直鎖状、分岐鎖状の場合は、炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
51が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。たとえば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
52は直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。該アルキレン基は、炭素数1〜5であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましく、炭素数1〜2であることがさらに好ましい。
上記のなかでも、アルコキシアルキル基としては、特に、下記一般式(VI)で表される基が好ましい。
【0165】
【化47】

【0166】
式(VI)中、R51は前記と同じであり、R53、R54はそれぞれ独立して直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または水素原子である。
53、R54において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
特に、R53、R54の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
【0167】
・・・酸解離性溶解抑制基について
構成単位(a7)において、酸解離性溶解抑制基としては、前記式(a0−0−1)で表される基以外であれば特に限定されず、たとえばKrFエキシマレーザー用、ArFエキシマレーザー用等のレジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、下記酸解離性溶解抑制基(VII)に例示するもの等が挙げられる。
【0168】
酸解離性溶解抑制基(VII)としては、下記一般式(VII−a)で表される基、下記一般式(VII−b)で表される基が挙げられる。
【0169】
【化48】

[式(VII−a)中、R27は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し;Xは脂肪族環式基、芳香族環式炭化水素基又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。式(VII−b)中、Xは前記式(VII−a)におけるXと同じであり;Rは水素原子若しくは炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、又は、XおよびRがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であって、Xの末端とRの末端とが結合していてもよく;Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0170】
前記一般式(VII−a)中、R27は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。
該アルキレン基は、炭素数1〜5であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましく、炭素数1〜2であることがさらに好ましい。
【0171】
前記式(VII−a)および(VII−b)中、Xは、それぞれ独立して、脂肪族環式基、芳香族環式炭化水素基又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。
における脂肪族環式基は1価の脂肪族環式基である。脂肪族環式基は、たとえば、従来のArFレジストにおいて多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。脂肪族環式基の具体例としては、たとえば、炭素数5〜7の脂肪族単環式基、炭素数10〜16の脂肪族多環式基が挙げられる。
炭素数5〜7の脂肪族単環式基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が例示でき、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサンなどから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
炭素数10〜16の脂肪族多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデシル基が工業上好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
の芳香族環式炭化水素基としては、炭素数10〜16の芳香族多環式基が挙げられる。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、1−ピレニル基等が挙げられ、2−ナフチル基が工業上特に好ましい。
の低級アルキル基としては、上記ヒドロキシスチレンのα位に結合していてよい低級アルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0172】
前記式(VII−b)中、Rの低級アルキル基としては、上記Xの低級アルキル基と同様のものが挙げられる。工業的にはメチル基又はエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
は、低級アルキル基または水素原子を表す。Rの低級アルキル基としては、Rの低級アルキル基と同様のものが挙げられる。Rは、工業的には水素原子であることが好ましい。
特に、RおよびRのいずれか一方が水素原子であって、他方がメチル基であることが好ましい。
【0173】
また、前記一般式(VII−b)においては、XおよびRが、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であって、Xの末端とRの末端とが結合していてもよい。
この場合、前記一般式(VII−b)においては、Rと、Xと、Xが結合した酸素原子と、該酸素原子およびRが結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0174】
酸解離性溶解抑制基(VII)としては、レジストパターン形状等に優れることから、Rが水素原子であり、かつ、Rが水素原子または低級アルキル基であることが好ましい。
酸解離性溶解抑制基(VII)の具体例としては、たとえばXが低級アルキル基である基、すなわち1−アルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、iso−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基等が挙げられる。
また、Xが脂肪族環式基である基としては、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−(2−アダマンチル)オキシメチル基、下記式(VII−a−1)で表される1−(1−アダマンチル)オキシエチル基等が挙げられる。
が芳香族環式炭化水素基である基としては、下記式(VII−b−1)で表される1−(2−ナフチル)オキシエチル基等が挙げられる。
これらの中でも、1−エトキシエチル基が特に好ましい。
【0175】
【化49】

【0176】
・・・酸解離性溶解抑制基を含む有機基について
本明細書において、「酸解離性溶解抑制基を含む有機基」とは、酸解離性溶解抑制基と、酸で解離しない基又は原子(すなわち酸により解離せず、酸解離性溶解抑制基が解離した後も(A1)成分に結合したままの基又は原子)とから構成される基を意味する。
【0177】
酸解離性溶解抑制基を含む有機基としては、特に限定されず、たとえばKrFエキシマレーザー用、ArFエキシマレーザー用等のレジスト組成物用樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、上記で挙げた酸解離性溶解抑制基を有する有機基が挙げられ、たとえば、酸解離性溶解抑制基(VII)を有する有機基として下記酸解離性溶解抑制基を有する有機基(VIII)が挙げられる。
【0178】
酸解離性溶解抑制基を有する有機基(VIII)としては、下記一般式(VIII)で表される基が挙げられる。
かかる構造を有する有機基(VIII)においては、露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸により、Qに結合した酸素原子と、RおよびRが結合した炭素原子との間の結合が切れて、−C(R)(R)−OXが解離する。
【0179】
【化50】

[式(VIII)中、Xは脂肪族環式基、芳香族環式炭化水素基または炭素数1〜5の低級アルキル基を表し;Rは水素原子若しくは低級アルキル基を表し、又は、XおよびRがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であって、Xの末端とRの末端とが結合していてもよく;Rは低級アルキル基または水素原子を表し;Qは2価の脂肪族環式基を表す。]
【0180】
前記一般式(VIII)中、X、R、Rとしては、上記一般式(VII−b)中のX、R、Rとそれぞれ同じである。
Qにおける2価の脂肪族環式基としては、上記Xにおける脂肪族環式基からさらに水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0181】
上記のなかでも、構成単位(a7)の水酸基における水素原子は、第3級アルキル基含有基で置換されることによって保護されていることが好ましく、前記一般式(II)で表される基で置換されることによって保護されていることがより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)で置換されることによって保護されていることが特に好ましい。
【0182】
構成単位(a7)のなかで好適なものとしては、特に、下記一般式(a7−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0183】
【化51】

[式(a7−1)中、R、Rおよびqは上記と同じであり、p’は1〜3の整数である。ただし、p’+qは1以上5以下である。Zは第3級アルキル基含有基、アルコキシアルキル基、酸解離性溶解抑制基(ただし、前記式(a0−0−1)で表される基を除く。)又は酸解離性溶解抑制基を含む有機基である。]
【0184】
前記式(a7−1)中、R、Rおよびqは、それぞれ、上記式(a5−1)におけるR、Rおよびqと同じである。
p’は1〜3の整数であり、好ましくは1である。
−OZの結合位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。pが1である場合は、容易に入手可能で低価格であることからp−位が好ましい。pが2または3の場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。
ただし、p’+qは1以上5以下である。
Zは、第3級アルキル基含有基、アルコキシアルキル基、酸解離性溶解抑制基(ただし、前記式(a0−0−1)で表される基を除く。)又は酸解離性溶解抑制基を含む有機基であり、上述したものとそれぞれ同様のものが挙げられる。なかでも、第3級アルキル基含有基が好ましく、前記一般式(II)で表される基がより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が特に好ましい。
【0185】
構成単位(a7)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分が構成単位(a7)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a7)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜40モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることがより好ましく、15〜40モル%であることがさらに好ましく、20〜40モル%が最も好ましい。前記範囲の下限値以上とすることにより、有機溶剤への溶解性が向上し、前記範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0186】
本発明において、(A1)成分は、構成単位(a0)を有する重合体であり、かかる重合体としては、たとえば、構成単位(a0−5)を有する重合体、構成単位(a0−1)を有する重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a0−1)とを有する共重合体が挙げられる。
【0187】
構成単位(a0−5)を有する重合体として具体的には、たとえば、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)と構成単位(a1)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)と構成単位(a1)と構成単位(a6)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)と構成単位(a7)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)と構成単位(a6)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a5)と構成単位(a7)と構成単位(a6)とを有する共重合体が挙げられる。
【0188】
構成単位(a0−1)を有する重合体として具体的には、たとえば、構成単位(a0−1)と構成単位(a1)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a2)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a3)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a1)と構成単位(a2)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a1)と構成単位(a3)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a5)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a5)と構成単位(a6)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a5)と構成単位(a1)とを有する共重合体、構成単位(a0−1)と構成単位(a5)と構成単位(a1)と構成単位(a6)とを有する共重合体が挙げられる。
【0189】
構成単位(a0−5)と構成単位(a0−1)とを有する共重合体として具体的には、たとえば、構成単位(a0−5)と構成単位(a0−1)と構成単位(a6)とを有する共重合体、構成単位(a0−5)と構成単位(a0−1)と構成単位(a7)と構成単位(a6)とを有する共重合体が挙げられる。
【0190】
(A)成分中、(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、(A1)成分としては、本発明の効果が特に良好なことから、構成単位(a5)と構成単位(a0−5)とを有するものが好ましく、構成単位(a5)と構成単位(a0−5)とを有する共重合体が特に好ましく、構成単位(a5)と構成単位(a0−5)とからなる共重合体が最も好ましい。
本発明において、(A1)成分は、特に下記の様な構成単位の組み合わせを含むものが好ましい。
【0191】
【化52】

【0192】
【化53】

【0193】
【化54】

【0194】
【化55】

【0195】
【化56】

【0196】
【化57】

【0197】
【化58】

【0198】
【化59】

【0199】
【化60】

【0200】
【化61】

【0201】
【化62】

【0202】
[式(A1−11)〜(A1−29)中、R’は水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、vは2〜15の整数であり、wはそれぞれ独立に1〜4の整数である。R21、R22、R23およびRはそれぞれ上記と同じである。]
【0203】
前記式(A1−11)〜(A1−29)中、R’は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
vは2〜15の整数であり、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、2が最も好ましい。
wは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、2〜4であることが好ましい。
21、R22、R23は上記と同じであり、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が好ましく挙げられ、tert−ブチル基がより好ましい。
は上記と同じであり、水素原子またはメチル基であることが好ましい。複数のRは、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0204】
(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、(A1)成分には、上記重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、LWR(ラインワイズラフネス:ラインパターンの線幅が不均一になる現象)の低減に有効である。また、現像欠陥の低減や、LER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
また、(A1)成分は、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位を有する場合、たとえば、ポリヒドロキシスチレンと、「−Y−O−C(=O)−X」構造を含むビニルエーテル化合物とを反応することによっても得ることができる。
【0205】
(A1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、2000〜50000が好ましく、3000〜30000がより好ましく、5000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
また、(A1)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.5が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0206】
[(A2)成分]
(A2)成分としては、分子量が500以上2000未満であって、上述の(A1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基と、親水性基とを有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部が上記酸解離性溶解抑制基で置換されたものが挙げられる。
(A2)成分は、たとえば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や、耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
かかる低分子量フェノール化合物としては、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
酸解離性溶解抑制基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
【0207】
(A)成分において、(A2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0208】
本発明のポジ型レジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポジ型レジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0209】
<(B)成分>
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0210】
オニウム塩系酸発生剤として、例えば下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0211】
【化63】

[式中、R”〜R”,R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよく;R”は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0212】
式(b−1)中、R”〜R”は、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。なお、式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
また、R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基であることが特に好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R”〜R”は、それぞれ、フェニル基またはナフチル基であることが好ましい。
【0213】
式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。
式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つは、アリール基であることが好ましい。前記アリール基は、前記R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0214】
式(b−1)で表される化合物のカチオン部として、好ましいものとしては、下記式(I−1−1)〜(I−1−10)で表されるカチオン部が挙げられる。これらの中でも、式(I−1−1)〜(I−1−8)で表されるカチオン部等の、トリフェニルメタン骨格を有するものが好ましい。
下記式(I−1−9)〜(I−1−10)中、R、R10は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基または炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、水酸基である。
dは1〜3の整数であり、1または2が最も好ましい。
【0215】
【化64】

【0216】
”は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表す。
【0217】
”におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
【0218】
”におけるハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
たとえば、R”がフッ素化アルキル基の場合、炭素数は1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
”のハロゲン化アルキル基において、当該ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子および水素原子の合計数に対するハロゲン原子の数の割合(ハロゲン化率(%))は、10〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましく、100%が最も好ましい。該ハロゲン化率が高いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。
たとえば、R”がフッ素化アルキル基の場合、フッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基(パーフルオロアルキル基)が、酸の強度が強くなるので好ましい。
【0219】
前記R”におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
前記R”におけるアルケニル基は、炭素数2〜10のアルケニル基であることが好ましい。
【0220】
前記R”において、「置換基を有していてもよい」とは、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の他の原子または基)で置換されていてもよいことを意味する。
”における置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0221】
前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子、アルキル基、式:X−Q−[式中、Qは酸素原子を含む2価の連結基であり、Xは置換基を有していてもよい炭素数3〜30の炭化水素基である。]で表される基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子、アルキル基としては、R”において、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、アルキル基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0222】
−Q−で表される基において、Qは、酸素原子を含む2価の連結基である。
は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合;−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。
該組み合わせとしては、たとえば、−R91−O−、−R92−O−C(=O)−、−C(=O)−O−R93−O−C(=O)−(式中、R91〜R93はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。
91〜R93におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH−];−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CHCH−];−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CHCHCH−];−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CHCHCHCH−];−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CHCHCHCHCH−]等が挙げられる。
としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−R91−O−、−R92−O−C(=O)−または−C(=O)−O−R93−O−C(=O)−が好ましい。
【0223】
−Q−で表される基において、Xの炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0224】
における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0225】
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0226】
における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
において、脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
における「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
炭素原子の一部を置換する置換基として、具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0227】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0228】
不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0229】
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。その炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。
具体的には、たとえば、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、たとえば上記式(a0−0−1)におけるXについての説明で例示した、式(L1)〜(L5)、(S1)〜(S4)で表される基等が挙げられる。
これらの脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記アルコキシ基、ハロゲン原子はそれぞれ前記水素原子の一部または全部を置換する置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0230】
上記のなかでも、かかるXとしては、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましい。該環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。該多環式の脂肪族環式基としては、前記ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(L2)〜(L5)、(S3)〜(S4)で表される基等が好ましい。
【0231】
本発明において、R”は、置換基としてX−Q−を有することが好ましい。この場合、R”としては、X−Q−Y−[式中、QおよびXは前記と同じであり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基である。]で表される基が好ましい。
−Q−Y−で表される基において、Yのアルキレン基としては、前記Qで挙げたアルキレン基のうち炭素数1〜4のものと同様のものが挙げられる。
のフッ素化アルキレン基としては、該アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
として、具体的には、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CF(CF)CF−、−CF(CFCF)−、−C(CF−、−CFCFCFCF−、−CF(CF)CFCF−、−CFCF(CF)CF−、−CF(CF)CF(CF)−、−C(CFCF−、−CF(CFCF)CF−、−CF(CFCFCF)−、−C(CF)(CFCF)−;−CHF−、−CHCF−、−CHCHCF−、−CHCFCF−、−CH(CF)CH−、−CH(CFCF)−、−C(CH)(CF)−、−CHCHCHCF−、−CHCHCFCF−、−CH(CF)CHCH−、−CHCH(CF)CH−、−CH(CF)CH(CF)−、−C(CFCH−;−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−CHCHCHCH−、−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−CH(CHCHCH)−、−C(CH)(CHCH)−等が挙げられる。
【0232】
としては、フッ素化アルキレン基が好ましく、特に、隣接する硫黄原子に結合する炭素原子がフッ素化されているフッ素化アルキレン基が好ましい。このようなフッ素化アルキレン基としては、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CF(CF)CF−、−CFCFCFCF−、−CF(CF)CFCF−、−CFCF(CF)CF−、−CF(CF)CF(CF)−、−C(CFCF−、−CF(CFCF)CF−;−CHCF−、−CHCHCF−、−CHCFCF−;−CHCHCHCF−、−CHCHCFCF−、−CHCFCFCF−等を挙げることができる。
これらの中でも、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、又はCHCFCF−が好ましく、−CF−、−CFCF−又は−CFCFCF−がより好ましく、−CF−が特に好ましい。
【0233】
前記アルキレン基またはフッ素化アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が「置換基を有する」とは、当該アルキレン基またはフッ素化アルキレン基における水素原子またはフッ素原子の一部または全部が、水素原子およびフッ素原子以外の原子または基で置換されていることを意味する。
アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0234】
式(b−2)中、R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のすべてがアリール基であることが好ましい。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”は、すべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては、上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0235】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。
また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート、d−カンファー−10−スルホネート、ベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0236】
また、これらのオニウム塩のアニオン部を、下記式(b1)〜(b8)のいずれかで表されるアニオンに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0237】
【化65】

[式中、yは1〜3の整数であり、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、t3は1〜3の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、iは1〜20の整数であり、Rは置換基であり、m1〜m5はそれぞれ独立に0または1であり、v2〜v6はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、Q”は前記と同じである。]
【0238】
の置換基としては、前記Xにおいて、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基、芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
に付された符号(r1〜r2、w1〜w5)が2以上の整数である場合、当該化合物中の複数のRはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0239】
また、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオンに置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)におけるカチオン部と同様)。
【0240】
【化66】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0241】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0242】
また、前記一般式(b−1)または(b−2)において、アニオン部(R”SO)を、R”−COO[式中、R”はアルキル基またはフッ素化アルキル基である。]に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)または(b−2)と同様)。
”としては、前記R”と同様のものが挙げられる。
上記「R”−COO」の具体例としては、トリフルオロ酢酸イオン、酢酸イオン、1−アダマンタンカルボン酸イオンなどが挙げられる。
【0243】
また、下記一般式(b−5)または(b−6)で表されるカチオンをカチオン部に有するスルホニウム塩をオニウム塩系酸発生剤として用いることもできる。
【0244】
【化67】

[式中、R41〜R46はそれぞれ独立してアルキル基、アセチル基、アルコキシ基、カルボキシ基、水酸基またはヒドロキシアルキル基であり;n〜nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
【0245】
41〜R46において、アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、なかでも直鎖または分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、又はtert−ブチル基であることが特に好ましい。
アルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、なかでも直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
ヒドロキシアルキル基は、上記アルキル基中の一個又は複数個の水素原子がヒドロキシ基に置換した基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
41〜R46に付された符号n〜nが2以上の整数である場合、複数のR41〜R46はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
およびnは、好ましくはそれぞれ独立して0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
【0246】
式(b−5)または(b−6)で表されるカチオンをカチオン部に有するスルホニウム塩のアニオン部は、特に限定されず、これまで提案されているオニウム塩系酸発生剤のアニオン部と同様のものであってよい。
かかるアニオン部としては、たとえば上記一般式(b−1)または(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤のアニオン部(R”SO)等のフッ素化アルキルスルホン酸イオン;上記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン等が挙げられる。これらの中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンが好ましく、炭素数1〜4のフッ素化アルキルスルホン酸イオンがより好ましく、炭素数1〜4の直鎖状のパーフルオロアルキルスルホン酸イオンが特に好ましい。具体例としては、トリフルオロメチルスルホン酸イオン、ヘプタフルオロ−n−プロピルスルホン酸イオン、ノナフルオロ−n−ブチルスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0247】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0248】
【化68】

(式(B−1)中、R31、R32はそれぞれ独立に有機基を表す。)
【0249】
31、R32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
31の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0250】
32の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R32のアルキル基、アリール基としては、前記R31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0251】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0252】
【化69】

[式(B−2)中、R33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R34はアリール基である。R35は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0253】
【化70】

[式(B−3)中、R36はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R37は2または3価の芳香族炭化水素基である。R38は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p”は2または3である。]
【0254】
前記一般式(B−2)において、R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
【0255】
34のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、及びこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
【0256】
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0257】
前記一般式(B−3)において、R36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p”は、好ましくは2である。
【0258】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号パンフレット(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0259】
【化71】

【0260】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0261】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、中でも(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
本発明のポジ型レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜60質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0262】
<(D)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物は、さらに、任意の成分として含窒素有機化合物成分(D)(以下「(D)成分」という。)を含有することが好ましい。
(D)成分としては、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(B)成分から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものであれば特に限定されず、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いればよく、環式アミン、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。ここで、脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−オクチルアミンが最も好ましい。
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、中でも(D)成分として炭素数5〜10のトリアルキルアミンを用いることが好ましい。
本発明のポジ型レジスト組成物において、(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いることが好ましい。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0263】
<任意成分>
[(E)成分]
本発明のポジ型レジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、ならびにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポジ型レジスト組成物において、(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いることが好ましい。
【0264】
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0265】
[(S)成分]
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤(以下「(S)成分」という。)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは1.5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0266】
本発明のポジ型レジスト組成物は、解像性に優れ、良好な形状のレジストパターンを形成できる、という効果を有する。かかる効果が得られる理由としては以下のように推測される。
本発明において、樹脂成分(A1)は、前記一般式(a0−0−1)で表される基を含む構成単位(a0)を有する。当該一般式(a0−0−1)で表される基は、いわゆるアセタール型酸解離性溶解抑制基である。かかる構成単位(a0)は、当該基が「−Y−O−C(=O)−」を含むことにより、連結基の長さが長く、末端の酸解離性溶解抑制基が解離しやすくなるため、当該酸解離性溶解抑制基の解離効率が向上する。これにより、未露光部と露光部とのアルカリ現像液に対する溶解性の差(溶解コントラスト)が、従来のポジ型レジスト組成物と比べて大幅に大きくなると考えられる。また、前記一般式(a0−0−1)で表される基は「−O−C(=O)−X」を含むことにより、従来のアセタール型酸解離性溶解抑制基に比べて嵩高くバルキーな構造を有するため、パターン倒れや膜減り等が抑制され、良好な形状のレジストパターンが形成されやすいと考えられる。
【0267】
また、本発明のポジ型レジスト組成物においては、アウトガスの発生を抑制できるという効果も得られる。これにより、露光装置の汚染なども低減される。かかる効果が得られる理由としては、前記一般式(a0−0−1)で表される基が「−O−C(=O)−X」を含む構造であることにより、従来のアセタール型酸解離性溶解抑制基に比べて、当該酸解離性溶解抑制基が解離した後に気化しにくいことが考えられる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、高い感度が得られやすく、また、優れたネガ化マージンも得られる。
したがって、本発明のポジ型レジスト組成物は、EBまたはEUV用レジストとして好適なものである。
【0268】
さらに、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、ラインワイズラフネス(LWR)等のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンを形成できる。
【0269】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第二の態様であるレジストパターン形成方法は、支持体上に、上記本発明のポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
本発明のレジストパターン形成方法は、例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まず支持体上に、前記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えば電子線描画機などにより、電子線(EB)を所望のマスクパターンを介して選択的に描画(露光)した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いで、これをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いてアルカリ現像処理し、好ましくは純水を用いて水リンスを行い、乾燥を行う。また、場合によっては、上記アルカリ現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
【0270】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0271】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
本発明のポジ型レジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUVに対してより有効であり、EBまたはEUVに対して特に有効である。
【0272】
レジスト膜の露光は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光であってもよい。
液浸露光では、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光を行う。
より具体的には、液浸露光は、上記のようにして得られたレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で、所望のマスクパターンを介して露光(浸漬露光)することによって実施できる。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ当該浸漬露光によって露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
【0273】
≪高分子化合物≫
本発明の第三の態様である高分子化合物は、下記一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)と、当該構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が下記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)とを有するものである。
【0274】
【化72】

[式(a5−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【0275】
【化73】

[式(a0−0−1)中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【0276】
かかる構成単位(a5)と構成単位(a0−5)は、上記本発明の第一の態様であるポジ型レジスト組成物についての説明における構成単位(a5)と構成単位(a0−5)とそれぞれ同じである。
本発明の高分子化合物における構成単位(a5)の割合は、当該高分子化合物を構成する全構成単位の合計に対して45〜90モル%であることが好ましく、50〜85モル%がより好ましく、55〜80モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることによって、レジスト組成物に用いた際、適度なアルカリ溶解性が得られる。また、ドライエッチング耐性が充分に得られる。前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
本発明の高分子化合物における構成単位(a0)の割合は、当該高分子化合物を構成する全構成単位の合計に対して5〜60モル%の範囲内であることが好ましく、10〜55モル%がより好ましく、15〜50モル%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上とすることによって、レジスト組成物に用いた際、より高い解像性が得られる。また、より良好な形状のレジストパターンが形成される。前記範囲の上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0277】
本発明の高分子化合物は、上記本発明の第一の態様であるポジ型レジスト組成物についての説明における(A1)成分のうち、構成単位(a5)と構成単位(a0−5)とを有する共重合体と同じものが挙げられる。
【0278】
本発明の高分子化合物は、たとえば、ポリヒドロキシスチレンと、「−Y−O−C(=O)−X」構造を含むビニルエーテル化合物とを反応することにより合成できる。
得られた高分子化合物の構造は、H−核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、13C−NMRスペクトル法、19F−NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0279】
本発明の高分子化合物は、従来知られていない新規なものである。
また、本発明の高分子化合物を用いたレジスト組成物は、解像性に優れ、良好な形状のレジストパターンを形成できることから、レジスト組成物用の樹脂成分として有用である。
【実施例】
【0280】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0281】
<基材成分(A)>
実施例3〜6および比較例1〜5において、それぞれ(A)成分として用いた樹脂は、下記合成例に示す方法により合成した。
【0282】
[合成例1:樹脂(A3−1)の合成]
窒素導入口、撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEAを入れ、撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。次に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、モノマー(1)/モノマー(2)=3/1(モル比)とを仕込んだ単量体PGMEA溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後、反応溶液を室温に戻した。次いで、得られた反応溶液を、約30倍量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、無色の析出物の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、該沈殿を、重合に使用した単量体に対して約30倍量のメタノール中で洗浄した。そして、この沈殿を濾別し、THFに溶解した後、該溶解液に80質量%ヒドラジン水溶液を滴下し、25℃で1時間撹拌した。反応終了後、大量の水中に滴下して析出物を得た。該析出物を濾別、洗浄、および減圧下、50℃で約40時間乾燥することにより樹脂(A3−1)を得た。
【0283】
【化74】

【0284】
樹脂(A3−1)の構造を下記に示す。
なお、樹脂(A3−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は10000であり、分散度(Mw/Mn)は1.8であった。
また、組成比はカーボンNMRにより算出した。化学式中、構成単位の右下に付した符号は、共重合体中の各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0285】
【化75】

【0286】
[合成例2:樹脂(A3−2)の合成]
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)とアダマンチルビニルエーテルを、酸触媒下で、公知の手法により反応させることにより樹脂(A3−2)を得た。
樹脂(A3−2)の構造を下記に示す。
この樹脂(A3−2)のアセタール導入率については、H−NMRで分析した結果、p−ヒドロキシスチレンの水酸基の数に対する、上記式(VII−a−1)で表されるアセタール型酸解離性溶解抑制基の数の割合は35%であった。これより、当該アセタール導入率(水酸基の保護割合)は35モル%であると認められた。
また、樹脂(A3−2)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は13000であり、分散度(Mw/Mn)は1.3であった。
下記化学式中、構成単位の右下に付した符号は、共重合体中の各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0287】
【化76】

【0288】
(実施例1)
[合成例3:樹脂(A1−11−1)の合成]
窒素雰囲気下、三口フラスコに、化合物1(5.83g) 及び1,3−ジオキソラン(27.4g)を加えて溶解させた。その溶液を15℃まで冷却し、そこへ35質量%塩酸(0.01g)を加えた後、化合物2(5.47g)のジオキソラン溶液をゆっくりと滴下した。その後、30℃で5時間反応した後、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.09g)を加え、室温で10分間撹拌した。その反応溶液を純水(820g)へ滴下し、得られた粉体(重合体湿粉)をろ過し、その後、真空乾燥することによって目的物である樹脂(A1−11−1)8.0gを得た。
この樹脂(A1−11−1)のアセタール導入率については、H−NMRの分析により、アセタール部位のメチンプロトンと芳香族プロトンとの積分比によって算出した。その結果、当該アセタール導入率は39.3mol%であった。
また、樹脂(A1−11−1)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は12,000であり、分散度(Mw/Mn)は1.06であった。
【0289】
得られた樹脂(A1−11−1)についてNMRによる分析を行った結果、以下の通りであった。
H−NMR(Acetone−d6,400MHz):δ(ppm)=7.91(br s,OH),6.61(m,ArH),5.39(br s,acetal−methine),4.19(br s,OCH),3.71−3.90(m,OCH),1.26−2.11(m,CH+CH+Adamantane).
上記の結果から、得られた樹脂が下記化学式[樹脂(A1−11−1)]に示す構造を有することが確認された。
なお、化学式中、構成単位の右下に付した符号は、共重合体中の各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0290】
【化77】

【0291】
(実施例2)
[合成例4:樹脂(A1−20−1)の合成]
i)化合物5の合成
化合物3(37g)とジクロロメタン(112g)を10℃にて撹拌し、そこへピリジン(14.9g)を加え、5分間撹拌した。そこへ化合物4(37.35g)とジクロロメタン(32g)とを混合したものを、系内10℃以下に保ちながら滴下した。
滴下終了後、25℃で5時間撹拌した後、反応液を純水(288g)へ添加し、当該反応液を洗浄した。洗浄後に得られた有機層を1質量%HCl水溶液にて2回、純水にて4回、それぞれ洗浄を行った。その後、有機層を濃縮し、乾燥させることによって化合物5(55g)を得た。
【0292】
得られた化合物5について、NMRによる分析を行った結果、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=6.45−6.51(m, 1H,vinyl)、4.11−4.17(m,1H,vinyl)、3.80−3.92(m,3H,vinyl+CH)、3.45−3.58(d,2H,CH)、0.94−1.95(m,25H,Adamantane+Cyclohexyl)
異性体比 18.46/81.54(cis/trans)by NMR
上記の結果から、得られた化合物5が下記に示す構造を有することが確認された。
【0293】
【化78】

【0294】
ii)樹脂(A1−20−1)の合成
窒素雰囲気下、三口フラスコに、化合物1(24.76g)及び1,3−ジオキソラン(92.47g)を加えて溶解させた。その溶液を15℃まで冷却し、そこへ35質量%塩酸(5.64g)を加えた後、化合物5(22.06g)のジオキソラン25質量%溶液をゆっくりと滴下した。その後、30℃で5時間反応した後、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.37g)を加え、室温で10分間撹拌した。その反応溶液を純水(2300g)へ滴下し、得られた粉体をろ過し、その後、真空乾燥することによって目的物である樹脂(A1−20−1)43.12gを得た。
この樹脂(A1−20−1)のアセタール導入率については、H−NMRの分析により、アセタール部位のメチンプロトンと芳香族プロトンとの積分比によって算出した。その結果、当該アセタール導入率は29.12mol%であった。
また、樹脂(A1−20−1)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は15600であり、分散度(Mw/Mn)は1.12であった。
【0295】
得られた樹脂(A1−20−1)についてNMRによる分析を行った結果、以下の通りであった。
H−NMR(Acetone−d6,400MHz):δ(ppm)=8.15(br peak,OH),7.97(Br peak,ArH),5.36(br peak,acetal−methine),3.37−3.95(br peak,CH),1.01−2.06(br peak,Adamantane+Cyclohexyl).
上記の結果から、得られた樹脂(A1−20−1)が下記に示す構造を有することが確認された。
【0296】
【化79】

【0297】
<ポジ型レジスト組成物の調製−1>
(実施例3〜4、比較例1〜2)
表1に示す各成分を混合し、溶解してポジ型レジスト組成物を調製した。
【0298】
【表1】

【0299】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:前記樹脂(A3−1)。
(A)−2:前記樹脂(A3−2)。
(A)−3:前記樹脂(A1−11−1)。
(A)−4:前記樹脂(A1−20−1)。
(B)−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート。
(D)−1:トリ−n−オクチルアミン。
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。
【0300】
<リソグラフィー特性の評価−1>
得られたポジ型レジスト組成物を用いて、感度・解像性、レジストパターン形状の各評価を行った。
[レジストパターン形成]
各例のポジ型レジスト組成物を、90℃にて30秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、表2に示す温度にて60秒間のベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚60nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70keVにて描画(露光)を行い、表2に示す温度にて60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて30秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
【0301】
[感度・解像性の評価]
上記レジストパターン形成において、ライン幅100nm、ピッチ200nmのL/Sパターンが形成される最適露光量Eop(μC/cm)を求め、該Eopにおける限界解像度(nm)を求めた。その結果を表2に示す。
【0302】
[レジストパターン形状の評価]
上記Eopにて形成された各例のライン幅100nm、ピッチ200nmのL/Sパターンを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、その断面形状および真上から見た形状を評価した。
【0303】
【表2】

【0304】
表2の結果から、本発明に係る実施例3、4のポジ型レジスト組成物は、比較例1、2のポジ型レジスト組成物に比べて、解像性に優れることが確認できた。
【0305】
また、本発明に係る実施例3、4のポジ型レジスト組成物を用いて形成されたレジストパターンは、比較例1、2のポジ型レジスト組成物を用いて形成されたものに比べて、パターン倒れを起こしにくく、形状が良好であることが確認できた。
【0306】
さらに、本発明に係る実施例3、4のポジ型レジスト組成物は、比較例1のポジ型レジスト組成物に比べて高感度であることが確認できた。
【0307】
<リソグラフィー特性の評価−2>
得られたポジ型レジスト組成物を用いて、ネガ化マージンの評価を行った。
[レジストパターン形成]
実施例3および比較例1〜2のポジ型レジスト組成物を、90℃にて30秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、120℃で60秒間のベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚60nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、KrF露光装置NSR−S203B(ニコン社製;NA(開口数)=0.68,σ=0.60)により、KrFエキシマレーザー(248nm)を、露光量を0〜300mJ/cmの範囲で変えて、それぞれ大面積(0.5cm×0.5cm)露光を行った。
その後、100℃で60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて30秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスしてレジストパターンを形成した。
【0308】
[ネガ化マージンの評価]
各露光量の異なる露光部において、現像後に残存するレジスト膜厚を測定し、レジスト膜厚がゼロとなる露光量と、再びレジスト膜が残存し始め、ネガ化が起こり始める露光量とを求めることによりネガ化マージンを評価した。
【0309】
その結果、本発明に係る実施例3のポジ型レジスト組成物においては、レジスト膜厚がゼロとなった後、再びレジスト膜が残存し始めること(ネガ化)はほとんど起こらないことが確認できた。
一方、比較例1のポジ型レジスト組成物は若干のネガ化が起こること、比較例2のポジ型レジスト組成物はレジスト膜厚がゼロとなった後に膜厚約35nmまでのネガ化が起こることがそれぞれ確認された。したがって、本発明のポジ型レジスト組成物は、優れたネガ化マージンが得られることも確認できた。
【0310】
<ポジ型レジスト組成物の調製−2>
(実施例5〜6、比較例3〜5)
表3に示す各成分を混合し、溶解してポジ型レジスト組成物を調製した。
【0311】
【表3】

【0312】
表3中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。 (A)−1:前記樹脂(A3−1)。
(A)−3’:前記式(A1−11−1)で表される樹脂(ただし、保護率30モル%、Mw10000、Mw/Mn1.1)。
(A)−4’:前記式(A1−20−1)で表される樹脂(ただし、保護率30モル%、Mw10000、Mw/Mn1.1)。
(A)−5:下記式(A)−5で表される樹脂(m/n=70/30(モル比)、Mw10000、Mw/Mn1.1)。
(A)−6:下記式(A)−6で表される樹脂(m/n=70/30(モル比)、Mw10000、Mw/Mn1.1)。
【0313】
【化80】

【0314】
(B)−2:下記式(b3−1)で表される化合物。
【0315】
【化81】

【0316】
(D)−1:トリ−n−オクチルアミン。
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。
【0317】
<リソグラフィー特性の評価−3>
得られたポジ型レジスト組成物を用いて、感度、ラインワイズラフネス(LWR)、アウトガスの各評価を行った。
[レジストパターン形成]
各例のポジ型レジスト組成物を、90℃にて36秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、表4に示す温度にて60秒間のベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚60nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70keVにて描画(露光)を行い、表4に示す温度にて60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて60秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、寸法100nm、ピッチ200nmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
【0318】
[感度の評価]
上記レジストパターン形成における最適露光量Eop(μC/cm)を求めた。その結果を表4に示す。
【0319】
[LWRの評価]
上記レジストパターン形成により形成された各L/Sパターンのライン幅を、測長SEM(走査型電子顕微鏡、商品名:S−9220、日立製作所製)により、ラインの長手方向に5箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を、LWRを示す尺度(nm)として算出した。
この3sの値が小さいほど線幅のラフネスが小さく、より均一幅のL/Sパターンが得られたことを意味する。その結果を表4に示す。
【0320】
[アウトガスの評価]
実施例5,6および比較例4,5のポジ型レジスト組成物を用いてアウトガス測定を行った。
アウトガス測定は圧力上昇法を用いて実施され、真空チャンバー内で各試料薄膜をEUV露光したときのチャンバー圧力変化量をモニターすることにより測定した。その結果(比較例4の測定値を基準とした相対値)を表4に併記する。当該相対値は小さいほど、アウトガスの発生が少なく良好であることを意味する。
なお、試料薄膜の露光に伴うチャンバー圧力上昇は、EUV光を被爆した有機薄膜が分解物をガスとして放出するために引き起こされると一般に考えられている。
【0321】
【表4】

【0322】
表4の結果から、本発明に係る実施例5、6のポジ型レジスト組成物は、比較例3〜5のポジ型レジスト組成物に比べて、LWRに優れることが確認できた。また、実施例5、6のポジ型レジスト組成物は、比較例3、5のポジ型レジスト組成物に比べて、感度も同等以上に優れることが確認できた。
比較例4のポジ型レジスト組成物は、感度が良好であったが、チャンバー圧力変化量が最も多く、アウトガス発生の抑制効果が実施例5,6のポジ型レジスト組成物より劣っていた。
以上より、本発明に係るポジ型レジスト組成物は、種々のリソグラフィー特性について良好な性質をバランスよく有しているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)、および露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記基材成分(A)は、下記一般式(a0−0−1)で表される基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

[式(a0−0−1)中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記樹脂成分(A1)中の前記構成単位(a0)の割合が、前記樹脂成分(A1)を構成する全構成単位の合計に対して5〜60モル%の範囲内である請求項1記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分(A1)が、
下記一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)と、
当該構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)とを有する請求項1又は2記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】

[式(a5−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【請求項4】
さらに、含窒素有機化合物成分(D)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項6】
下記一般式(a5−1)で表される構成単位(a5)と、
当該構成単位(a5)の水酸基における水素原子の少なくとも一部が下記一般式(a0−0−1)で表される基により置換された構成単位(a0−5)とを有する高分子化合物。
【化3】

[式(a5−1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;pは1〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。ただし、p+qは1以上5以下である。]
【化4】

[式(a0−0−1)中、R’およびR’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Yはエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜15のアルキレン基を表し、Xは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]

【公開番号】特開2010−181857(P2010−181857A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185960(P2009−185960)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】