説明

ポジ型平版印刷版原版及びその製版方法

【課題】本発明は、ベーキング後においても、良好な画像コントラストを有するCTPポジ型平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】基板上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び光熱変換材料を含有する画像形成層を有して成るポジ型平版印刷版原版であって、
前記画像形成層が、着色剤として酸性染料を含有することを特徴とするポジ型平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びその製版方法に関し、特に、デジタル信号に基づいて固体レーザー又は半導体レーザーから赤外線を照射することにより直接画像を形成できる、いわゆるCTP(computer to plate)版として用いられる赤外線感受性又は感熱性の平版印刷版原版、特にポジ型平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版原版として、感光性画像形成層を持つ平版印刷版原版(PS版)が知られている。PS版には、基本的にネガ型版とポジ型版の2種類がある。ネガ型版は露光時にネガフィルムを使用し、露光され、現像されると、未露光部の画像形成層が除去され、露光により不溶化した部分が画像として残る。ポジ型版は露光時にポジフィルムを使用し、露光され、現像されると、露光により可溶化された露光部の画像形成層が除去され、未露光部分が画像として残る。
【0003】
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、フィルムを通しての画像形成の必要性を除いて、デジタル信号に対応した光照射により画像形成層に直接画像を書き込むCTPシステムが注目されている。光照射の光源として、近赤外線又は赤外線領域に最大強度を有する高出力レーザーを用いるCTPシステムは、短時間の露光で高解像度の画像が得られること、そのシステムに用いる平版印刷版原版が明室での取り扱いが可能であること、などの利点を有している。
【0004】
一般に、ポジ型平版印刷版原版は、現像処理により画像形成層の露光部が除去されアルミニウム基板が露出する。通常、画像が形成されているかどうかを容易に判別する(コントラスト)ため、画像形成層中に着色剤を添加する。しかし、露光、現像されたポジ型平版印刷版を、耐刷性向上を目的として、高温加熱処理(ベーキング又はバーニングともいう)すると、添加された着色剤が熱により退色して、画像濃度が低下し画像コントラストが悪くなることがあった。
【0005】
画像形成層が、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有する樹脂を含む場合は、ベーキングによって、ノボラック樹脂自体の色が変化するので、画像コントラスト低下の問題は起こりにくいが、フェノール性水酸基を有していない樹脂を使用する場合は、そのような樹脂は色変化を起こさないので、着色剤の添加が必須であった。
【0006】
アルミニウム基板上に形成された画像の濃度が低下する問題は、多色印刷において見当合わせの目印となるトンボ(レジスタマーク)の濃度が低下することにつながり、印刷作業に障害が生じる。ベーキング後においても、良好な画像コントラストを提供する着色剤が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ベーキング後においても、良好な画像コントラストを有するCTPポジ型平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポジ型平版印刷版原版の画像形成層中に着色剤として酸性染料を加えることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、基板上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び光熱変換材料を含有する画像形成層を有して成るポジ型平版印刷版原版であって、
前記画像形成層が、着色剤として酸性染料を含有することを特徴とするポジ型平版印刷版原版を提供する。
【0010】
また、本発明は、基板上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有する下層、及び水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有する上層から成る画像形成層を有し、前記下層及び/又は前記上層に光熱変換材料を有して成るポジ型平版印刷版原版であって、
前記下層及び/又は前記上層が、着色剤として酸性染料を含有することを特徴とするポジ型平版印刷版原版を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上述の本発明に係るポジ型平版印刷版原版を像様露光し、露光された版を現像液で現像し、その後ベーキングすることを含むポジ型平版印刷版原版の製版方法も提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポジ型平版印刷版原版は、ベーキング後においても、良好な画像コントラストを有している。特に、フェノール性水酸基を有していない樹脂を使用するポジ型平版印刷版原版において良好な画像コントラストを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポジ型平版印刷版原版は、現像時、印刷中に画像部を可視化させるために、画像形成層に着色剤として酸性染料を用いることを必須とする。本明細書で用いる「酸性染料」とは、酸性基を含む色素酸の塩であり、水に溶けて負に荷電する染料を意味する。酸性基には、スルホン酸基又はカルボキシル基等が挙げられる。本発明のポジ型平版印刷版原版において着色剤として用いる酸性染料は、以下に記載する「光熱変換材料」とは異なり、電磁波を熱エネルギーに変換する作用を実質的に有さない酸性染料である。
【0014】
本発明のポジ型平版印刷版原版を着色するのに用いることができる酸性染料としては、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)のp.393〜526の酸性染料の項目に記載されている公知のものを用いることができる。本発明の酸性染料は、例えば、キサンテン系、インジゴイド系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アゾ系、シアニン系、フタロシアニン系構造を有するものを挙げることができる。
【0015】
本発明に用いることができる好ましい酸性染料は、カルボン酸塩部分又はスルホン酸塩部分を有する一塩基性酸性染料である、特に好ましい染料は、キサンテン系染料であり、具体的には、アシッドレッド52、アシッドレッド87、アシッドレッド91、アシッドレッド92、アシッドレッド94、エリスロシンB(アシッドレッド51)等が挙げられる。
【0016】
これらの好ましい染料の構造式を以下に示す。
【化1】

【0017】
本発明のポジ型平版印刷版原版を着色するのに用いる酸性染料の量は、現像時及びベーキング後に良好な画像コントラストを得るためには、画像形成層の全質量に基づいて、0.05〜10質量%となることができる。酸性染料の量が、画像形成層の0.05質量%未満であると、ベーキング後の画像コントラストが不十分となり好ましくなく、また10質量%を超えると耐刷性が低下するため好ましくない。特に好ましい酸性染料の量は、0.1〜5質量%である。
【0018】
以下に説明するように、画像形成層が下層と上層とから成る2層構造を成している場合であっても、使用する酸性染料の使用量は、下層と上層の使用量を併せて0.05〜10質量%となることができる。本発明に係る酸性染料は、画像形成層の下層もしくは上層のいずれか一方、又は下層及び上層の両方に用いることができる。特に、好ましくは、下層と上層の使用量を併せて0.1〜5質量%である。
【0019】
本発明では、着色剤として酸性染料を用いることを必須とするが、必要に応じて塩基性染料も併せて用いることができる。塩基性染料は、ベーキングすることによって色を失う傾向が大きいが、画像形成された平版印刷版を現像した後であって、この版をベーキングするまでは、良好な可視性を提供する。
【0020】
本発明において、酸性染料と併用することができる塩基性染料として、具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、の塩基性染料を挙げることができる。
【0021】
酸性染料と塩基性染料とを併用する場合、塩基性染料の使用量は着色剤の全質量に対し、99.5質量%未満である。
【0022】
本発明の平版印刷版原版は基板上に水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び光熱変換材料を含有する画像形成層を有する。
【0023】
<水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂>
本発明に係る画像形成層に用いる水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、水には溶解せず、アルカリ性化合物の溶液に溶解する樹脂である。本明細書で用いる場合、「アルカリ可溶性樹脂」の用語には、アルカリ分散性樹脂の意味を含まれる。このようなアルカリ可溶性樹脂は、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、活性イミノ基等のアルカリ可溶性基を有する共重合体等が挙げられる。これらのうち、ノボラック樹脂又はポリビニルフェノール系樹脂が好ましい。ノボラック樹脂としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール、ビスフェノール−A、トリスフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等の芳香族炭化水素類の少なくとも1種を、酸性触媒下、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類から選ばれた少なくとも1種のアルデヒド類又はケトン類と重縮合させたものが挙げられる。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの代わりに、それぞれパラホルムアルデヒド及びパラアルデヒドを使用してもよい。
【0024】
ノボラック樹脂の芳香族炭化水素類としては、より好ましくは、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシンから選ばれる少なくとも1種のフェノール類をホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類の中から選ばれる少なくとも1種と重縮合したノボラック樹脂が挙げられる。中でも、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシンの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。又は、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールの混合物割合がモル比で、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。又は、フェノール:m−クレゾール、p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。
【0025】
ノボラック樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは500〜30000である。500未満であると、未露光部の耐現像液性が低下する場合があり、30000を超えると露光部の現像性が低下する場合がある。
【0026】
ポリビニルフェノール系樹脂としては、ヒドロキシスチレン類の単独又は2種以上の重合体が挙げられる。ヒドロキシスチレン類としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等が挙げられる。ヒドロキシスチレン類は芳香環に塩素、臭素、ヨウ素、フッ素などのハロゲンあるいはC1〜C4のアルキル置換基を有していてもよい。ポリビニルフェノール系樹脂は、通常、ヒドロキシスチレン類を単独又は2種以上ラジカル重合又はカチオン重合して合成される。このようなポリビニルフェノール系樹脂は、一部水素添加が行われていてもよい。また、t−ブトキシカルボニル基、ピラニル基、フラニル基などでポリビニルフェノール類の一部のOH基を保護した樹脂でもよい。
【0027】
ポリビニルフェノール系樹脂の中でも、ポリビニルフェノール樹脂が好ましい。このポリビニルフェノールの芳香環にはC1〜C4のアルキル置換基を有していてもよいが、置換基を有さないポリビニルフェノールが特に好ましい。ポリビニルフェノール樹脂の重量平均分子量は、1000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、十分な塗膜を形成させることができない場合があり、100,000を超えると露光部分のアルカリ現像液に対する溶解性が小さくなり、パターンが得られない傾向にある。
【0028】
上述した水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の中には、ベーキングによって、樹脂自体の色が変化するものがあり、この場合画像コントラストの問題は起こりにくい。一般的には、フェノール樹脂は、ベーキングによって褐変するものが多い。画像形成層に用いる水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂が、フェノール樹脂でない場合、又はフェノール樹脂の含有率が小さい場合は、ベーキングによって、樹脂自体の色が変化しないか、又は色の変化が小さいので、ベーキング後の画像コントラストの問題が生じる。このような場合、画像形成層に酸性染料を添加すると、画像濃度の低下が防止され、良好な画像コントラストが得られる。したがって、画像形成層にフェノール樹脂を含まない場合、又はフェノール樹脂の含有率が小さい場合に、酸性染料を添加することが、特に好ましい。
【0029】
このようなフェノール樹脂の例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、変性ノボラック樹脂等のノボラック樹脂、並びにビスフェノールAレゾール樹脂、クレゾールレゾール樹脂、フェノールレゾール樹脂等のレゾール樹脂、が挙げられる。
【0030】
画像形成層に用いる水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂中のフェノール樹脂の含有量に関わらず、ベーキング後の画像コントラストが高めるために、着色剤として酸性染料を添加することができるが、フェノール樹脂の含有量が、画像形成層に用いる水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の全質量に基づいて50質量%未満である場合に、酸性染料を添加することにより画像コントラスト向上の効果が著しく、40質量%未満となると、さらに画像コントラスト向上の効果が著しい。
【0031】
本発明の平版印刷版原版の別の態様として、画像形成層が、下層と上層とから成る2層構造となる構成を採ることができる。画像形成層の下層と基板の間には必要に応じて中間層が形成されてもよいが、下層と上層との間には中間層が無いことが好ましい。基板の裏面には必要に応じてバックコート層が形成されていてもよい。原版製造を簡略化する観点から、基板の表面に下層が接触して形成され、当該下層表面に上層が接触して形成されることが好ましい。
【0032】
<下層>
本発明の平版印刷版原版を構成する下層は、水不溶性且つアルカリ性可溶性樹脂を含む。アルカリ性水溶液に可溶性であるためには、前記樹脂が少なくとも、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、活性イミノ基、スルホンアミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、下層に用いる、アルカリ性水溶液に可溶性の樹脂は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、活性イミノ基、スルホンアミド基及びその組合せ等の官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を重合することによって好適に生成することができる。
【0033】
前記エチレン性不飽和モノマーは下式:
【化2】

【0034】
(式中、R1は、水素原子、C1-22の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基、C1-22の直鎖状、分枝状、又は環状置換アルキル基、C6-24のアリール基又は置換アリール基であって、置換基はC1-4アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ケト基、エステル基、アルコキシ基、又はシアノ基から選択され;Xは、O、S、及びNR2であり、R2は水素、C1-22の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基、C1-22の直鎖状、分枝状又は環状置換アルキル基、C6-24のアリール基又は置換アリール基であって、置換基はC1-4アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ケト基、エステル基、アルコキシ基、又はシアノ基から選択され;Yは、単結合、或いは、C1-22の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン、アルキレンオキシアルキレン、ポリ(アルキレンオキシ)アルキレン、アルキレン−NHCONH−であり;Zは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、−C64−SO2NH2、−C63−SO2NH2(−OH)、−OPO32、−PO32、又は下式
【0035】
【化3】

【0036】
又は
【0037】
【化4】

【0038】
で表される基である)
で表される化合物又はその混合物となることができる。
【0039】
前記エチレン性不飽和モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が含まれる。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
前記モノマー混合物は、その他のエチレン性不飽和コモノマーを含むことができる。その他のエチレン性不飽和コモノマーとしては、例えば、以下のモノマーが挙げられる。
【0044】
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-t-オクチル、クロロエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、テトラヒドロアクリレートのようなアクリル酸エステル類;
【0045】
フェニルアクリレート、フルフリルアクリレートのようなアリールアクリレート類;
【0046】
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;
【0047】
フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートのようなアリールメタクリレート類;
【0048】
N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−ヘプチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミドのようなN−アルキルアクリルアミド類;
N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ナフチルアクリルアミド、N−ヒドロキシフェニルアクリルアミドのようなN−アリールアクリルアミド類;
【0049】
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジイソブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルヘキシルアクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシルアクリルアミドのようなN,N−ジアルキルアクリルアミド類;
【0050】
N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミドのようなN,N−アリールアクリルアミド類;
【0051】
N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−エチルヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドリキシエチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミドのようなN−アルキルメタクリルアミド類;
【0052】
N−フェニルメタクリルアミド、N−ナフチルメタクリルアミドのようなN−アリールメタクリルアミド類;
【0053】
N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジプロピルメタクリルアミド、N,N−ジブチルメタクリルアミドのようなN,N−ジアルキルメタクリルアミド類;
【0054】
N,N−ジフェニルメタクリルアミドのようなN,N−ジアリールメタクリルアミド類;
【0055】
N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルメタクリルアミドのようなメタクリルアミド誘導体;
【0056】
酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルチミン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル、アリルオキシエタノールのようなアリル化合物類;
【0057】
ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテルのようなビニルエーテル類;
【0058】
ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニルのようなビニルエステル類;
【0059】
スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ドデシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレンのようなスチレン類;
【0060】
クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、クロトン酸、グリセリンモノクロトネートのようなクロトン酸エステル類;
【0061】
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルのようなイタコン酸ジアルキル類;
【0062】
ジメチルマレート、ジブチルフマレートのようなマレイン酸あるいはフマール酸のジアルキル類;
【0063】
N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミドのようなマレイミド類;
【0064】
N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。
【0065】
これらの他のエチレン性不飽和コモノマー単量体のうち、好適に使用されるのは、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル類である。
【0066】
水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、20,000〜100,000の範囲が好ましい。水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が20,000未満では、耐溶剤性や耐摩耗性が劣る傾向にある。一方、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が100,000を超えると、アルカリ現像性が劣る傾向にある。
【0067】
下層における、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の含有量は当該層の固形分に対して20〜95質量%の範囲が好ましい。水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の含有量が20質量%未満では、耐薬品性の点で不都合であり、95質量%を超えると、露光スピードの点で好ましくない。また、必要に応じて、2種以上の水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を併用してもよい。
【0068】
<上層>
本発明の平版印刷版原版を構成する上層は、水不溶性且つアルカリ性可溶性樹脂を含む。上層に用いることができる水不溶性且つアルカリ性可溶性樹脂は、カルボン酸基又は酸無水物基を有する樹脂が好ましく、不飽和カルボン酸、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物を含むモノマー混合物を重合して得られる共重合体、酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。共重合可能なエチレン性不飽和モノマー単位としては、前記のその他のエチレン性不飽和コモノマーを挙げることができる。
また、酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタンとしては、その酸性水素原子は、カルボキシル基、−SO2NHCOO−基、−CONHSO2−基、−CONHSO2NH−基、−NHCONHSO2−基等の酸性官能基に属することができるが、特にカルボキシ基に由来する酸性水素原子が好ましい。
【0069】
酸性水素原子を有するポリウレタンは、例えば、カルボキシ基を有するジオールと、必要に応じて他のジオールと、ジイソシアナートとを反応させる方法;ジオールと、カルボキシ基を有するジイソシアナートと、必要に応じて他のジイソシアナートとを反応させる方法;又は、カルボキシ基を有するジオールと、必要に応じて他のジオールと、カルボキシ基を有するジイソシアナートと、必要に応じて他のジイソシアナートとを反応させる方法によって合成することができる。
【0070】
カルボキシ基を有するジオールとしては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸などが挙げられるが、特に、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸がイソシアネートとの反応性の点でより好ましい。
【0071】
他のジオールとしては、ジメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。
【0072】
カルボキシ基を有するジイソシアナートとしては、ダイマー酸ジイソシアナートなどが挙げられる。
【0073】
他のジイソシアナートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソソアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートなどが挙げられる。
【0074】
ジイソシアネートとジオールとのモル比は、0.7:1〜1.5:1が好ましく、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0075】
不飽和カルボン酸単位、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体の質量平均分子量は、800〜10,000の範囲が好ましい。不飽和カルボン酸単位、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体の質量平均分子量が800未満では、画像形成して得られる画像部が弱く、現像液耐性が劣る傾向にある。一方、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体の質量平均分子量が10,000を超えると、感度が劣る傾向にある。酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタンの質量平均分子量は、2,000〜100,000の範囲が好ましい。ポリウレタンの質量平均分子量が2,000未満では、画像形成して得られる画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、ポリウレタンの質量平均分子量が100,000を超えると、感度が劣る傾向にある。
【0076】
上層における、不飽和カルボン酸単位、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体の含有量は当該層の固形分に対して10〜100質量%の範囲が好ましい。不飽和カルボン酸単位、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体の含有量が10質量%未満では、現像液耐性の点で不都合であり、好ましくない。一方、不飽和カルボン酸単位、及び/又は、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体又は酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタンの含有量は当該層の固形分に対して2〜90質量%の範囲が好ましい。酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタンの含有量が2質量%未満では、現像スピードの点で不都合であり、90質量%を超えると、保存安定性の点で好ましくない。また、必要に応じて、2種以上の酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタンを併用してもよい。更には、不飽和カルボン酸無水物単位を有する共重合体、不飽和カルボン酸単位を有する共重合体又は酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタンを2種類以上併用してもよい。
【0077】
<光熱変換材料>
本発明の平版印刷原版の画像形成層は光熱変換材料を含有する。画像形成層が、下層と上層の2層からなる場合は、下層及び/又は上層に光熱変換材料を含有する。光熱変換材料が、下層のみに存在する場合は、本発明の平版印刷原版をレーザーで画像書き込みすると、下層の光熱変換材料が、レーザーの光を熱に変換し、その熱が上層に伝達されることにより最上部層のアルカリ可溶性樹脂の一部の分子構造が崩壊し、上層に孔を生じせしめ、現像液の下層への浸透を可能にすると考えられる。
【0078】
光熱変換材料とは、電磁波を熱エネルギーに変換することのできる任意の材料を意味しており、最大吸収波長が近赤外線から赤外線領域にある材料、具体的には最大吸収波長が760nm〜1200nmの領域にある材料である。このような材料としては、例えば、種々の顔料又は染料が挙げられる。
【0079】
本発明で使用される顔料としては、市販の顔料、及び、カラーインデックス便覧「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)等に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、その他ポリマー結合顔料等が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染め付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0080】
これらの中でも、特に、近赤外線から赤外線領域の光を効率よく吸収し、しかも経済的に優れた材料として、カーボンブラックが好ましく用いられる。また、このようなカーボンブラックとしては、種々の官能基を有する分散性のよいグラフト化カーボンブラックが市販されており、例えば、「カーボンブラック便覧第3版」(カーボンブラック協会編、1995年)の167ページ、「カーボンブラックの特性と最適配合及び利用技術」(技術情報協会、1997年)の111ページ等に記載されているものが挙げられ、いずれも本発明に好適に使用される。
【0081】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、また公知の表面処理を施して用いてもよい。公知の表面処理方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等の反応性材料を顔料表面に結合させる方法などが挙げられる。これらの表面処理方法については、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている。本発明で使用される顔料の粒径は、0.01〜15μmの範囲にあることが好ましく、0.01〜5μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0082】
本発明で光熱変換材料として使用される染料としては、公知慣用のものが使用でき、例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編、1970刊)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編、朝倉書店、1989年刊)、「工業用染料の技術と市場」(シーエムシー、1983年刊)、「化学便覧応用化学編」(日本化学会編、丸善書店、1986年刊)に記載されているものが挙げられる。より具体的には、アゾ染料、金属鎖塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、インジゴ染料、キノリン染料、ニトロ系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、アジン染料、オキサジン染料等の染料が挙げられる。
【0083】
また、近赤外線又は赤外線を効率よく吸収する染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム染料、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料、特開2002−079772号の[0096]〜[0103]で示されている化合物を挙げることができる。
【0084】
光熱変換材料としては、特に、下記式:
【0085】
【化8】

【0086】
【化9】

【0087】
(式中、Phはフェニル基を表す)
を有する染料が好ましい。
【0088】
光熱変換材料は、下層又は上層の質量に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%の割合で添加することができる。添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生するおそれがある。光熱変換材料を下層及び上層に添加する場合は、下層及び上層の添加量の合計が、画像形成層の合計質量に対して、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%となることができる。これらの光熱変換材料は、上述したものを単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0089】
<画像形成層のその他の構成成分>
本発明の平版印刷版原版の画像形成層には、上述した成分以外に、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、可塑剤、安定性向上剤、現像促進剤、現像抑制剤、滑剤(シリコンパウダー等)を加えることができる。
【0090】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0091】
可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリ(2−クロロエチル)、クエン酸トリブチル等が挙げられる。
【0092】
さらに、公知の安定性向上剤として、例えば、リン酸、亜リン酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、ジピコリン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等も併用することができる。
【0093】
その他の安定性向上剤として、公知のフェノール性化合物、キノン類、N−オキシド化合物、アミン系化合物、スルフィド基含有化合物、ニトロ基含有化合物、遷移金属化合物を挙げることができる。具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0094】
現像促進剤としては、酸無水物類、フェノール類、有機酸類が挙げられる。酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては無水酢酸などが挙げられる。フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2'−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0095】
更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0096】
現像抑制剤としては、前記アルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成し、未露光部においては該アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させ、且つ、露光部においては該相互作用が弱まり、現像液に対して可溶となり得るものであれば特に限定はされないが、特に4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール系化合物等が好ましく用いられる。また前述の赤外線吸収剤、着色剤のなかにも現像抑制剤として機能する化合物があり、それらもまた好ましく挙げられる。そのほか、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性であり、且つ、分解しない状態では、アルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質も挙げられる。
【0097】
これら各種の添加剤の添加量は、その目的によって異なるが、通常、画像形成層の固形分の0〜30質量%の範囲が好ましい。
【0098】
その他、本発明の平版印刷版原版の画像形成層には、必要に応じて他のアルカリ可溶性又は分散性の樹脂を併用することもできる。他のアルカリ可溶性又は分散性の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂などが挙げられる。
【0099】
本発明の平版印刷版原版は、合紙剥離性向上や自動給版装置の版搬送性向上を目的に、最上部層中にマット剤を含有しても良く、或いは、最上部層上にマット層を設けても良い。
【0100】
<基板>
基板としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス、鉄等の金属板;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエチレン等のプラスチックフィルム;合成樹脂を溶融塗布あるいは合成樹脂溶液を塗布した紙、プラスチックフィルムに金属層を真空蒸着、ラミネート等の技術により設けた複合材料;その他印刷版の基板として使用されている材料が挙げられる。これらのうち、特にアルミニウム及びアルミニウムが被覆された複合基板の使用が好ましい。
【0101】
アルミニウム基板の表面は、保水性を高め、下層層もしくは必要に応じて設けられる中間層との密着性を向上させる目的で表面処理されていることが望ましい。そのような表面処理としては、例えば、ブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学的エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト等の粗面化処理、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、特に電解エッチングの使用を含む粗面化処理が好ましい。
【0102】
電解エッチングの際に用いられる電解浴としては、酸、アルカリ又はそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられる。これらの中でも、特に、塩酸、硝酸、又はそれらの塩を含む電解液が好ましい。
【0103】
さらに、粗面化処理の施されたアルミニウム基板は、必要に応じて酸又はアルカリの水溶液にてデスマット処理される。このようにして得られたアルミニウム基板は、陽極酸化処理されることが望ましい。特に、硫酸又はリン酸を含む浴で処理する陽極酸化処理が望ましい。
【0104】
また、陽極酸化処理後、必要に応じて、更に、親水化処理又は下塗層を設けることができる。例えば、ケイ酸塩処理(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、フッ化ジルコニウム酸カリウム処理、ホスホモリブデート処理、アルキルチタネート処理、ポリアクリル酸処理、ポリビニルスルホン酸処理、ポリビニルホスホン酸処理、ビニルホスホン酸・メタクリル酸コポリマー処理、ビニルホスホン酸・アクリルアミドコポリマー処理、フィチン酸処理、親水性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、縮合アリールスルホン酸塩処理(英国特許出願公開第2,098,627号明細書、特開昭57−195697公報)、スルホン酸基を有する水溶性重合体の下塗りによる親水化処理、シリケート電着等の処理等を行うことができる。
【0105】
また、粗面化処理(砂目立て処理)及び陽極酸化処理後、封孔処理が施されたアルミニウム基板も好ましい。封孔処理は、熱水、及び無機塩又は有機塩を含む熱水溶液へのアルミニウム基板の浸漬、又は水蒸気浴等によって行われる。
【0106】
本発明の平版印刷版原版は、画像形成層の構成成分を有機溶剤に溶解又は分散させ、画像形成層が2層からなる場合には、下層及び上層の構成成分を有機溶剤に溶解又は分散させ、これらの溶液又は分散液を基板上に順次に塗布する。その後、これらを乾燥して基板上に画像形成層を形成させることによって製造される。
【0107】
画像形成層の構成成分を溶解又は分散させる有機溶剤としては、公知慣用のものがいずれも使用できる。中でも、沸点40℃〜220℃、特に60℃〜160℃の範囲のものが、乾燥の際における有利さから選択される。
【0108】
有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−又はイソ−プロピルアルコール、n−又はイソ−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の炭化水素類;エチルアセテート、n−又はイソ−プロピルアセテート、n−又はイソ−ブチルアセテート、エチルブチルアセテート、ヘキシルアセテート等の酢酸エステル類;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼン等のハロゲン化物;イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メトキシエトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の多価アルコールとその誘導体;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル等の特殊溶剤などが挙げられる。これらは単独であるいは混合して使用される。また、これら有機溶剤と共に、水も併用することができる。そして、塗布する溶液又は分散液中の固形分の濃度は、2〜50質量%とするのが適当である。本明細書でいう固形分とは、有機溶剤及び水を除く成分のことである。
【0109】
画像形成層の構成成分の溶液又は分散液の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング等の方法が用いられる。塗布量は、10ml/m2〜100ml/m2の範囲が好適である。
【0110】
基板上に塗布された前記溶液又は分散液の乾燥は、通常、加熱された空気によって行われる。乾燥温度(加熱された空気の温度)は30℃〜200℃、特に、40℃〜140℃の範囲が好適である。乾燥方法としては、乾燥温度を乾燥中一定に保つ方法だけでなく、乾燥温度を段階的に上昇させる方法も行うことができる。
【0111】
また、乾燥風は除湿することによって好ましい結果が得られる場合もある。加熱された空気は、塗布面に対し0.1m/秒〜30m/秒、特に0.5m/秒〜20m/秒の風速で供給するのが好ましい。
【0112】
画像形成層の被覆量は、単層の場合、約0.1〜約10g/m2 の範囲であり、画像形成層が2層構造の場合、下層及び上層の被覆量は、それぞれ独立して、乾燥質量で通常、約0.1〜約5g/m2 の範囲である。
【0113】
<露光・現像>
本発明の平版印刷版原版は、コンピュータ等からのデジタル画像情報を基に、レーザーを使用して直接版上に画像書き込みができる、いわゆるCTP版として使用できる。
【0114】
本発明で用いられるレーザー光源としては、近赤外線から赤外線領域に最大強度を有する高出力レーザーが最も好ましく用いられる。このような近赤外線から赤外線領域に最大強度を有する高出力レーザーとしては、760nm〜1200nmの近赤外線から赤外線領域に最大強度を有する各種レーザー、例えば、半導体レーザー、YAGレーザー等が挙げられる。
【0115】
露光後に現像するための現像液としてはアルカリ水溶液が好ましく用いられる。アルカリ水溶液に用いられるアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム等の無機アルカリ化合物;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン等の有機アミン類等の水溶液が挙げられる。また、現像液には、必要に応じて、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤や有機溶剤を添加することができる。現像液に添加することができる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノブチルアセテート、乳酸ブチル、レブリン酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、メチルフェニルカルビトール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロロベンゼン、などが挙げられる。現像液に有機溶媒を添加する場合の有機溶媒の添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0116】
本発明の平版印刷版原版は、現像を終えた後、耐刷性の向上を目的として、現像処理後、平版印刷版にベーキング処理が施される。
【0117】
ベーキング処理は、まず、(i)前述の処理方法によって得られた平版印刷版を水洗し、リンス液やガム液を除去したのちスキージし、(ii)次いで、整面液を版全体にムラなく引き伸ばし、乾燥させ、(iii)オーブンで180℃〜300℃の温度条件下、1分〜30分間ベーキングを行い、(iv)版が冷めた後、整面液を水洗により除去し、ガム引きして乾燥する、という工程により実施される。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0119】
基板の親水化処理用材料の合成
<ポリマー1>ビニルホスホン酸/アクリルアミドコポリマー(モル比1:9)
攪拌器、コンデンサー、滴下装置を有する10リットルフラスコ中に、エタノール3500gを入れ70℃に加熱した。ビニルホスホン酸モノマー231.1g(2.14mol)とアクリルアミド1368.9g(19.26mol)、AIBN52gを、エタノール1000g中に溶解させ、この溶液を反応装置中に4時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下中、白色の沈殿が生成した。70℃に保温したまま、さらに2時間加熱攪拌を行った後、加熱を止め室温まで冷却した。沈殿した白色粉末を濾過により分離し、エタノール1000gで洗浄し乾燥した。
【0120】
基板作成
厚さ0.24mmのアルミニウム板を水酸化ナトリウム水溶液にて脱脂し、これを2%塩酸浴中で電解研磨処理して、中心平均粗さ(Ra)0.5μmの砂目板を得た。次いで、20%硫酸浴中、電流密度2A/dm2で陽極酸化処理して、2.7g/m2の酸化皮膜を形成し、水洗乾燥後アルミニウム基板を得た。このようにして得られた基板を、60℃に加熱したポリマー1の0.5g/L水溶液中に10秒間浸漬し、水洗乾燥した。このようにして平版印刷版原版用の基板を得た。
【0121】
画像形成層用アルカリ可溶性樹脂の合成
<樹脂合成例>
攪拌器、コンデンサー、滴下装置を有する10リットルフラスコ中に、ジメチルアセトアミド2990gを入れ、90℃に加熱した。フェニルマレイミド740.5g、メタクリルアミド1001g、メタクリル酸368g、アクリロニトリル643g、ホスマーM(ユニケミカル製)203.6g、スチレン222.5g、AIBN10.6g、n−ドデシルメルカプタン16gをジメチルアセトアミド2670g中に溶解させ、この溶液を2時間かけて反応装置中に滴下した。滴下終了後、AIBNを5.3g入れ、温度を100℃まで上昇させて、更に4時間攪拌した。その間、1時間おきにAIBN5.3gを加えて反応させた。
【0122】
反応終了後、加熱を止め、室温まで冷却した。反応溶液を50リットルの水中に落とし、生じた沈殿を減圧濾過により収集し、水洗により洗浄し、50℃24時間真空乾燥して、樹脂1を得た。収量は、2873g(収率90%)であった。
【0123】
2層型画像形成層の調製
下層用塗布液の調製
以下の表1に示す、下層用塗布液B−1〜B−8を調製した。B−1、B−2、B−7には、着色剤として酸性染料を添加し、B−3〜B−6、B−8には塩基性染料を添加した。
【0124】
【表1】

【0125】
【化10】

【0126】
上層用塗布液の調製
表2に示す上層用塗布液T−1〜T−10を調製した。T−1〜T−4には、着色剤として酸性染料を添加し、T−5〜T−10には塩基性染料を添加した。
【表2】

【0127】
平版印刷版原版の作成
上記基板作成の方法で得られた基板上に、ロールコーターを用いて、表1で調製した下層用塗布液をコーティングし、100℃で2分間乾燥して第1の画像形成層を得た。この時の乾燥塗膜量は1.5g/m2であった。それぞれの第1の画像形成層の上に、表2で調製した上層用塗布液を、ロールコーターを用いてコーティングし、100℃で2分間乾燥して2層型平版印刷原版を得た。メチルイソブチルケトンで、上層の画像形成層のみを剥離して、上層の画像形成層の乾燥塗膜量を求めた。この時の上層の画像形成層の乾燥塗膜量は0.5g/m2であった。このようにして、2層型の平版印刷版原版を作製した。
【0128】
また、実施例9、比較例7は、基板上に表1で調製した下層用塗布液のみをコーティングし、単層型の平版印刷版原版を作製した。作製した2層型及び単層型の平版印刷版原版を表3に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
実施例1〜8は、画像形成層の下層と上層の少なくとも一層、または両層に酸性染料が添加されている。実施例9は、酸性染料を添加したB−7塗布液を、単層で塗布した。比較例1〜6は、画像形成層の下層と上層いずれにも酸性染料は添加されておらず、塩基性染料のみが添加されている。比較例7は、塩基性染料のみを添加したB−8塗布液を、単層で塗布した。
【0131】
現像液の調製
表4の組成で現像液を調製した。pHは11.5、電導度は1.2mS/cmであった。
【表4】

【0132】
画像形成
得られた平版印刷版原版について、PTR4300(大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて150mJ/cm2で露光し、現像は自動現像機(P−940X、コダック株式会社製)、及び表4で得られた現像液を水で5倍希釈した現像液を用いて、30℃15秒にて現像処理を行った後、フィニッシングガムPF2(コダック株式会社製)でガム引きを行い、平版印刷版を得た。
【0133】
ベーキング
作製した平版印刷版を水洗し、セルローススポンジでベーキング整面液UT−2(コダック株式会社製)を版全面に塗布し、乾燥させた後、ベーキング用オーブンでベーキング処理(240℃、10分間)を行った。
【0134】
評価方法
(トンボ検出)
画像部と非画像部のコントラストの評価手段の一つとして、「トンボ」(レジスタマーク)を用いた。多色印刷において見当合わせの目印となるトンボを検出できるか否かは印刷作業にとって特に重要である。トンボ画像を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:目視で支障なく検出できる
○:目視で検出可能
×:目視で検出が困難
【0135】
(コントラスト)
それぞれの光学濃度(OD)は、マクベス濃度計により測定を行った。コントラストは、画像部ODと非画像部ODの差より求めた(コントラスト=画像部OD−非画像部OD)。評価結果を表5に示す。コントラスト0.9以上のものは、目視で支障なくトンボを検出でき、コントラスト0.3未満のものについては、目視でのトンボ検出が困難であった。コントラスト0.3以上であれば、トンボの目視検出が可能であったが、特にコントラスト0.5以上であることがトンボ検出には好ましい。
【0136】
【表5】

【0137】
ノンベーキング版は、実施例、比較例いずれのサンプルも十分な画像部と非画像部とのコントラストを維持しており、トンボ検出には全く問題なかった。
画像形成層の下層と上層の少なくとも一層に酸性染料を加えた実施例1〜8と、単層で酸性染料を加えた実施例9は、ベーキング後においても、退色が少ないため、画像部と非画像部とのコントラストが大きく、トンボ検出が容易だった。
しかし、画像形成層の下層と上層に、塩基性染料のみを添加した比較例1〜6と、単層で塩基性染料のみを添加した比較例7のベーキング版は、添加した塩基性染料が、ベーキング後に退色してしまい、画像部と非画像部とのコントラストが非常に小さくなってしまった。そのため、トンボ検出は非常に困難となった。
【0138】
本発明によれば、コンピュータ等のデジタル情報から直接製版可能であり、ベーキングした後でも、トンボ検出が容易な画像識別性に優れたプレートの提供が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び光熱変換材料を含有する画像形成層を有して成るポジ型平版印刷版原版であって、
前記画像形成層が、着色剤として酸性染料を含有することを特徴とするポジ型平版印刷版原版。
【請求項2】
基板上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有する下層、及び水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有する上層から成る画像形成層を有し、前記下層及び/又は前記上層に光熱変換材料を有して成るポジ型平版印刷版原版であって、
前記下層及び/又は前記上層が、着色剤として酸性染料を含有することを特徴とするポジ型平版印刷版原版。
【請求項3】
前記酸性染料が、キサンテン系、インジゴイド系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アゾ系、シアニン系、フタロシアニン系から選ばれる、請求項1又は2に記載のポジ型平版印刷版原版。
【請求項4】
前記酸性染料が、アシッドレッド52、アシッドレッド87、アシッドレッド91、アシッドレッド92、アシッドレッド94、エリスロシンB(アシッドレッド51)から成る群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポジ型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記水不溶性且つアルカリ可用性樹脂が、フェノール樹脂を含み、該フェノール樹脂の前記水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂に占める割合が、50質量%未満である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型平版印刷版原版。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポジ型平版印刷版原版を像様露光し、露光された版を現像液で現像し、その後ベーキングすることを含むポジ型平版印刷版原版の製版方法。