説明

ポジ型感光性組成物

【構成】 (1)下記一般式(I)で示されるジアゾニウム塩とアルカリ可溶性ポリマーとを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】


式中、R1 は炭素数3〜18のアルキル基又は置換アルキル基を示し、R2 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、置換フェノキシ基又はハロゲン原子を示す。Aは有機基をX- は対アニオンを示す。nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示し、n+m=4である。
【効果】 高い感光性を有し、鮮明な画像形成が可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、平版印刷版、多色印刷の校正刷、オーバーヘッドプロジェクター用図面、さらには半導体素子の集積回路を製造する際に微細なレジストパターンを形成することが可能なポジ型感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来平版印刷版等の用途において、活性光線により可溶化するいわゆるポジティブに作用する感光性組成物として種々の提案が行われ、たとえば(イ)卵白又はグルーなどの天然高分子またはポリビニルアルコールと重クロム酸塩とを配合した感光性組成物、(ロ)オルトキノンジアジド化合物を含有する感光性組成物、(ハ)ジアゾニウム塩を含有する感光性組成物等が知られている。しかしながら上述した感光性組成物は一長一短を有するもので充分満足できるものではなかった。上記(イ)の感光性組成物は安価であるため、経済性の点からは有利であるが、保存安定性が悪く、更に原料として重クロム酸塩を用いるため廃棄その他の取扱いに問題があった。上記(ロ)のオルトキノンジアジド化合物はポジティブ画像形成材料として優れており、実際に平版印刷版等に広く利用されてきた。
【0003】このようなオルトキノンジアジド化合物としては、例えば米国特許第2,766,118 号、同第2,767,092 号、同第2,772,972 号、同第2,859,112 号、同第2,907,665 号、同第3,046,110 号、同第3,046,111 号、同第3,046,115 号、同第3,046,118 号、同第3,046,119 号、同第3,046,120 号、同第3,046,121 号、同第3,046,122 号、同第3,046,123 号、同第3,061,430 号、同第3,102,809 号、同第3,106,465 号、同第3,635,709 号、同第3,647,443 号の各明細書をはじめ、多数の刊行物に記されている。これらのオルトキノンジアジド化合物は、活性光線の照射により分解を起こして5員環のカルボン酸を生じ、アルカリ可溶性となることを利用したものであるが、いずれも十分な感度を示すものではなかった。これは、オルトキノンジアジド化合物によっては、光化学的な増感を達成するのが困難であり、本質的にその量子収率が1を越えないことに起因するものである。また感光波長が固定化される為、光源適性に乏しく、白燈安全性付与が困難であり、更にDeep UV領域での吸収が大きいため、低波長光使用によるフォトレジストの解像力向上を目的とした用途には適さない。
【0004】これらの欠点を克服するために、例えば特公昭48−12242号、特開昭52−40125号、米国特許第4,307,173 号などの各公報および明細書に記載の方法が試みられているが、いずれも不十分な改良に留まっている。上記(ハ)のジアゾ化合物を含有するポジティブ組成物としては、例えば、米国特許第3,219,447 号、同第3,211,553 号、特公昭39−7663号、特開昭第52−2519号等に記載されているものがあげられるが、低感度であり、画像形成の安定性に欠けているため、実用に供することができなかった。また最近、これらのポジ型感光性化合物に替わる新規材料の開発を目的として、いくつかの提案がなされている。その1つとして、例えば特公昭56−2696号の公報に記載されているオルトニトロカルビノールエステル基を有するポリマー化合物が挙げられる。しかし、この場合においても十分な感度が得られなかった。
【0005】一方、半導体素子、磁気バブルメモリ、集積回路等の電子部品を製造するためのパターン形成法として、フォトレジストを利用して作成する方法が一般に行われている。フォトレジストには、光照射により被照射部が現像液に不溶化するネガ型と、反対に可溶化するポジ型とがある。ネガ型はポジ型に比べて感度が良く、湿式エッチングに必要な基板との接着性及び耐薬品性にも優れていることから、近年までフォトレジストの主流を占めていた。しかし、半導体素子等の高密度化、高集積化に伴い、パターンの線幅や間隔が極めて小さくなり、また、基板のエッチングにはドライエッチングが採用されるようになったことから、フォトレジストには高解像度および高ドライエッチング耐性が望まれるようになり、現在ではポジ型フォトレジストが主流となっている。特に、ポジ型フォトレジストの中でも、感度、解像力、ドライエッチング耐性に優れることから、例えばジェー・シー・ストリエータ著、コダック・マイクロエレクトロニクス・セミナー・プロシーディングス・第116頁(1976年)(J. C. Strieter、Kodak Microelectoronics Seminar Proceedings,116(1976))等に記載されているアルカリ可溶性のノボラック樹脂をベースにしたアルカリ現像型のポジ型フォトレジストが現在広く使用されている。
【0006】しかしながら、近年電子機器の多機能化、高感化に伴い、さらに高密度ならびに高集積化を図るべくパターンの微細化が強く要請されている。これらの要求に対し、従来のオルトキノンジアジド感光性に、アルカリ可溶性を付与したポリシロキサン又は、ポリシルメチレン等のシリコンポリマーを組み合わせた感光性組成物、例えば特開昭61−256347号、同61−144639号、同62−159141号、同62−191849号、同62−220949号、同62−229136号、同63−90534号、同63−91654号等の各公報に記載の感光性組成物、特開昭62−136638号の公報記載のポリシロキサン/カーボネートのブロック共重合体に有効量のオニウム塩を組み合わせた感光性組成物が提示されている。しかしながら、これらのシリコンポリマーは、アルカリ可溶性の機能付与等の為にその製造が著しく困難となり、また経時安定性も十分ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点が解決された新規なポジ型感光性組成物を提供することにある。即ち、高い感光性を有し、かつ鮮明な画像形成が可能な新規なポジ型感光性組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記目的を達成すべく、オルトキノンジアジドに代わる新規なポジ型感光性組成物の探索を行った結果、クレゾール樹脂のようなアルカリ可溶性ポリマー中に特定の構造を有するジアゾニウム塩を含有させることにより、高感度でかつ鮮明なポジ画像が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、下記一般式(I)で示されるジアゾニウム塩とアルカリ可溶性ポリマーを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
【0009】
【化3】


【0010】式中R1 は炭素数3〜18のアルキル基又は置換アルキル基を示し、R2 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、置換フェノキシ基又はハロゲン原子を示す。Aは有機基を、X- は対アニオンを示す。nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示し、n+m=4である。
【0011】現在のところ、鮮明なポジ画像が得られる理由は明らかでないが、未露光部では、一般式(I)で示されるジアゾニウム塩とアルカリ可溶性ポリマーが相互作用をなし、感光層のアルカリ現像液に対する溶解性を低下させ、一方露光部では、光照射されることにより、、一般式(I)で示されるジアゾ化合物が分解し、アルカリ現像液に対する溶解性が増加するためと推定される。
【0012】以下本発明のポジ型感光性組成物について詳細に説明する。本発明における一般式(I)で示されるジアゾニウム塩はジアゾ基に直結したベンゼン環の水素が少なくとも1つの長鎖のアルコキシ基、置換アルコキシ基で置換された化合物であり、この長鎖のアルコキシ基又は置換アルコキシ基の効果で、たとえばクレゾールノボラック樹脂のようなアルカリ可溶性バインダーと強く相互作用し、アルカリ現像液に不溶となる。このような効果を溶解阻止効果というが、炭素数3以下のアルコキシ基ではこの効果が小さい。又一般式(I)で示されるジアゾニウム塩は、光照射により速やかに分解し、溶解阻止効果が解除され、その結果高感度で鮮明なポジ画像が形成される。その中で特に有効なジアゾニウム塩としては、一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で示されるジアゾニウム塩を挙げることができる。
【0013】
【化4】


【0014】式中R1 は炭素数3〜18のアルキル基又は置換アルキル基を示し、R2 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、置換フェノキシ基又はハロゲン原子を示す。X- は対アニオンを示す。nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示し、n+m=4である。R3 、R4 は各々独立にアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を示す。又R3 とR4 は互いに結合してモルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピロリジニル基等の複素環式基を形成しても良い。Yは酸素原子、硫黄原子、−NH−、−CH2 −又は−C(CH3)2 −を示す。Zは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アルキルカルボニル基、置換アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換アリールカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。kは1〜5の整数を示す。Qは二価の連結基を示す。
【0015】一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)におけるR1 のアルキル基は、3〜18の炭素原子を有するものであれば、直鎖、分枝、環状のもののいずれでも良い。例えばプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。R1 の置換アルキル基は炭素数1〜10のアルキル基が、例えば塩素原子のようなハロゲン原子、例えばメトキシ基のような炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルチオ基などで置換された基であり、置換アルキル基全体の炭素数が3〜18のものであればよい。具体的には、4−クロロブチル基、4−エトキシブチル基、2−ブトキシエチル基、4−フェノキシブチル基、2−ベンジルチオエチル基などが含まれる。R2 のアルキル基は直鎖、分枝、環状のもののいずれでも良く、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する。例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。R2 の置換アルキル基は上記のようなアルキル基が、例えば塩素原子のようなハロゲン原子、例えばメトキシ基のような炭素原子数1〜5のアルコキシ基などで置換された基である。具体的には2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基などが含まれる。
【0016】またR2 のアリール基は好ましくは単環および2環のものであって、例えばフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基などが含まれる。R2 の置換アリール基は、上記のようなアリール基に、例えばメチル基、エチル基などの炭素原子数1〜5のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜5のアルコキシ基、例えば塩素原子などのハロゲン原子が置換したものが含まれる。具体的にはメチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシナフチル基等があげられる。R2 のアルコキシ基は直鎖、分岐、環状のもののいずれでもよく、好ましくは1〜18の炭素原子を有する。例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R2 の置換アルコキシ基としては上記のアルコキシ基が、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルチオ基等で置換された基であり、たとえば4−クロロブトキシ基、4−エトキシブトキシ基、2−ブトキシエトキシ基、4−フェノキシブトキシ基、2−ベンジルチオエトキシ基などが含まれる。
【0017】X- は対アニオンを示し、たとえば BF4- 、AsF6- 、 PF6- 、SbF6- 、SiF6- 、ClO4- 、CF3SO3- 、BPh4- 、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン、9、10−ジエトキシアントラセン−2−スルホン酸アニオン等の縮合多核芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノン−2−スルホン酸アニオン等の多核縮合芳香族キノンのスルホン酸塩、ベンゾフェノン−1−スルホン酸等の芳香族ケトンのスルホン酸塩、スルホン酸基含有染料等をあげることができるがこれに限定されるものではない。一般式(II)のR3 、R4 のアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基は上記R2 のアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基と同じ範囲のものを使用することができる。又R3 、R4 は互いに結合して、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピロリジニル基等の複素環式基を形成しても良い。
【0018】一般式(III)、(IV)のZのアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基は、R2 と同じ範囲のものを使用することができる。Zのアルキルカルボニル基、置換アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換アリールカルボニル基は上記アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基がカルボニル基に連結したものを使用することができる。更に置換基が修飾されていても良い。一般式(V)のQは2つのジアゾ基含有フェニル基を結合する2価の連結基であり、たとえば以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
【化5】


【0020】R5 はアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、pは1〜10の整数を示す。下記に本発明に使用される一般式(I)の化合物の例を列挙するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化6】


【0022】
【化7】


【0023】
【化8】


【0024】
【化9】


【0025】
【化10】


【0026】
【化11】


【0027】
【化12】


【0028】
【化13】


【0029】
【化14】


【0030】一般式(I)で示される化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。感光性組成物中の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)で示される化合物の添加量は、好ましくは感光性組成物全固形分に対し、1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%の範囲である。本発明で使用されるアルカリ可溶性ポリマーは、好ましくはフェノール性ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、イミド基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、N−スルホニルウレタン基、活性メチレン基等のpKa 11以下の酸性基を有するポリマーである。好適なアルカリ可溶性ポリマーとしては、ノボラック型フェノール樹脂、具体的にはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレノール−ホルムアルデヒド樹脂またはこれらの共縮合物などがある。更に、特開昭50−125806号公報に記されている様に上記の様なフェノール樹脂と共に、t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基で置換されたフェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物とを併用してもよい。またN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドのようなフェノール性ヒドロキシ基含有モノマーを共重合成分とするポリマー、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール等の単独または共重合ポリマー、更にこれらのポリマーの部分エーテル化もしくは部分エステル化したポリマーも使用できる。
【0031】更に、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシ基含有モノマーを共重合成分とするポリマー、特開昭61−267042号公報記載のカルボキシ基含有ポリビニルアセタール樹脂、特開昭63−124047号公報記載のカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂も好適に使用される。更にまた、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−フェニルスルホニルメタクリルアミド、マレイミドを共重合成分とするポリマー、特開昭63−127239号公報記載の活性メチレン基含有ポリマーも使用できる。これらのアルカリ可溶性ポリマーは単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。感光性組成物中のアルカリ可溶性ポリマーの添加量は、好ましくは感光性組成物全固形分に対し、10〜90重量%、更に好ましくは30〜80重量%の範囲である。
【0032】本発明のポジ型感光性組成物には必要に応じて、更に染料、顔料、可塑剤等を添加することができる。本発明に着色剤として用いられる染料を公知の種々の染料を用いることができるが、油溶性染料および塩基性染料が好適に使用される。具体的には、例えばオイルイエロー#101、オイルイエロー#130、オイルピンク#312、オクルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエンタル化学工業(株)製)、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることかできる。
【0033】これらの染料は、感光性組成物全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で感光性組成物中に添加することができる。本発明の組成物中には、更に感度を高めるために環状酸無水物、その他のフィラーなどを加えることができる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128 号明細書に記載されているような無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、ピロメリット酸等がある。これらの環状酸無水物を好ましくは感光性組成物全固形分に対し1〜15重量%含有させることによって感度を最大3倍程度まで高めることができる。
【0034】本発明のポジ型感光性組成物は、平版印刷版用の材料として使用する場合には上記各成分を溶解する溶剤に溶かして、支持体上に塗布する。また、半導体等のレジスト材料用としては、溶媒に溶解したままで使用する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、乳酸エチルなどがあり、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用する。そして溶媒中の上記成分(添加物を含む全固形分)の濃度は、好ましくは2〜50重量%である。また、塗布して使用する場合、塗布量は用途により異なるが、例えば感光性平版印刷版についていえば一般的に固形分として0.5〜3.0g/m2、またフォトレジストについていえば一般的に固形分として0.1〜3.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、感光性は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
【0035】本発明のポジ型感光性組成物を用いて平版印刷版を製造する場合、その支持体としては、例えば、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などのような金属板、例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルム、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルムなどが含まれる。これらの支持体のうち、アルミニウム板は寸度的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。更に特公昭48−18327号公報に記されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。アルミニウム板の表面をワイヤブラシングレイニングで研磨粒子のスラリーを注ぎながらナイロンブラシ粗面化するブラシグレイニング、ボールグレイニング、液体ホーニングによるグレイニング、バフグレイニング等の機械的方法、HFやAlCl3 、HCl をエッチャントとするケミカルグレイニング、硝酸または塩酸を電解液とする電解グレイニングやこれらの粗面化法を複合させて行った複合グレイニングによって表面を砂目立てした後、必要に応じて酸またはアルカリによりエッチング処理し、引き続き硫酸、リン酸、ホウ酸、クロム酸、スルファミン酸またはこれらの混酸中で直流または交流電源にて陽極酸化を行い、アルミニウム表面に強固な不動態皮膜を設けたものが好ましい。このような不動態皮膜自体でアルミニウム表面は親水化されてしまうが、更に必要に応じて米国特許第2,714,066 号明細書や米国特許第3,181,461 号明細書に記載されている珪酸塩処理(珪酸ナトリウム、珪酸カリウム)、米国特許第2,946,638 号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559 号明細書に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,443 号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093 号明細書や英国特許第1,230,447 号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951 号明細書に記載されているフイチン酸処理、特開昭58−16893号や特開昭58−16291号の各公報に記載されている水溶性有機高分子化合物と2価の金属イオンとの錯体による下塗処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホン酸基を有する水溶性重合体の下塗によって親水化処理を行ったものは特に好ましい。その他の親水化処理方法としては、米国特許第3,658,662 号明細書に記載されているシリケート電着を挙げることができる。
【0036】また砂目立て処理、陽極酸化後、封孔処理を施したものが好ましい。かかる封孔処理は熱水および無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬並びに水蒸気浴などによって行われる。本発明のポジ型感光性組成物をフォトレジストとして使用する場合には銅板又は銅メッキ板、シリコン板、ステンレス板、ガラス板等の種々の材質の基板を支持体として用いることができる。本発明のポジ型感光性組成物は公知の塗布技術により上記の支持体上に塗布される。上記の塗布技術の例としては、回転塗布法、ワイヤーバー塗布法、ディップ塗布法、エアーナイフ塗布法、ロール塗布法、ブレード塗布法、カーテン塗布法及びスプレー塗布法等を挙げることができる。
【0037】上記のようにして塗布されたポジ型感光性組成物層は、40〜150℃で30秒〜10分間、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いて乾燥される。本発明のポジ型感光性組成物を含む感光性平版印刷版及びフォトレジスト等は、通常、像露光、現像工程を施される。像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯などがある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠紫外線などがある。フォトレジスト用の光源としては、g線、i線、Deep−UV光が好ましく使用される。また高密度エネルギービーム(レーザービームまたは電子線)による走査露光も本発明に使用することができる。このようなレーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザーなどが挙げられる。
【0038】本発明のポジ型感光性組成物の現像に用いる現像液としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤およびテトラアルキルアンモニウムハイドライドなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当であり、それらの濃度が0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%になるように添加される。また、該アルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やアルコールなどのような有機溶媒を加えることもできる。
【0039】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
〔実施例1〜15〕厚さ0.24mmの2Sアルミニウム板を80℃に保った第三燐酸ナトリウムの10%水溶液に3分間浸漬して脱脂し、ナイロンブラシで砂目立てした後、アルミン酸ナトリウムで約10分間エッチングして、硫酸水素ナトリウム3%水溶液でデスマット処理を行った。このアルミニウム板を20%硫酸中で電流密度2A/dm2 において2分間陽極酸化を行った。次に下記表1に示される化合物を用いて、下記処方のとおりに15種類の感光液〔A〕−1〜〔A〕−15を調製した。この感光液を陽極酸化されたアルミニウム板上に塗布し、100℃で2分間乾燥して、それぞれの感光性平版印刷版を作製した。このとき塗布量は全て乾燥重量で1.5g/m2になるように調整した。
【0040】
感光液処方〔A〕
一般式(I)の化合物 0.2g クレゾールホルムアルデヒドノボララック樹脂 1.0g オイルブルー#603(オリエント工業(株)製) 0.01g メチルエチルケトン 5g メチルセロソルブ 15g得られた平版印刷版の感光層上に濃度差0.15のグレースケールを密着させ、2KWの高圧水銀灯で50cmの距離から2分間露光を行った。露光した平版印刷版をDP−4(商品名:富士写真フィルム(株)製)の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間浸漬現像したところ、すべて鮮明なポジ画像が得られた。結果を表1に示す。
【表1】
表 1─────────────────────────────────── 実施例 感光液 一般式(I) の化合物 グレースケールの段数─────────────────────────────────── 1 〔A〕−1 化合物1 5 2 〔A〕−2 化合物4 6 3 〔A〕−3 化合物5 6 4 〔A〕−4 化合物7 7 5 〔A〕−5 化合物8 8 6 〔A〕−6 化合物10 8 7 〔A〕−7 化合物11 9 8 〔A〕−8 化合物12 8 9 〔A〕−9 化合物13 7 10 〔A〕−10 化合物14 7 11 〔A〕−11 化合物18 8 12 〔A〕−12 化合物21 4 13 〔A〕−13 化合物22 8 14 〔A〕−14 化合物24 6 15 〔A〕−15 化合物27 8───────────────────────────────────
【0041】〔実施例16〜20〕厚さ2mmのシリコンウェハー上に下記感光液〔B〕をスピンナーで塗布し、ホットプレート上で90℃において2分間乾燥させ、乾燥時の膜厚が1μになるように調整した。
感光液処方〔B〕 一般式(I)の化合物 0.2g クレゾールホルムアルデヒドノボラック樹脂 1.0g ペリレン 0.003g エチルセロソルブアセテート 7.5g
【表2】
表 2 ───────────────────────── 実施例 感光液 一般式(I)の化合物 ───────────────────────── 16 〔B〕−1 化合物4 17 〔B〕−2 化合物8 18 〔B〕−3 化合物13 19 〔B〕−4 化合物24 20 〔B〕−5 化合物27 ─────────────────────────
【0042】次に得られたレジストを波長436nmの単色光を用いた縮小投影露光装置(ステッパー)を用いて露光し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.4%水溶液で60秒間現像することにより、レジストパターンを形成させた。その結果、すべてのサンプルにおいて0.8μmのライン&スペースの良好なパターンが得られた。
【0043】〔実施例21〕実施例17のレジストにガラスマスクを通して、密着露光方式で254nmの紫外線を照射し、その後実施例17と同様に現像を行ったところ、0.7μmのライン&スペースの良好なパターンが得られた。
〔比較例1〜3〕実施例1の化合物1を表3に記載の化合物に変えた他は、実施例1と全く同様の操作を繰り返し感光液〔A〕−16〜〔A〕−18を作成し、陽極酸化されたアルミニウム板上に塗布し、100℃で2分間乾燥して感材を作成した。得られた感材上に濃度差0.15のグレースケールを密着させ、2KWの高圧水銀灯で50cmの距離から2分間露光を行った。その後DP−4の8倍希釈水溶液で25℃において60秒間現像したところ、露光部及び未露光部がともに溶解し、鮮明な画像を作成することができなかった。
【0044】
【化15】


【0045】
【発明の効果】本発明のポジ型感光性組成物は高い感光性を有し、かつ鮮明な画像形成が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)下記一般式(I)で示されるジアゾニウム塩とアルカリ可溶性ポリマーとを含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】


式中、R1 は炭素数3〜18のアルキル基又は置換アルキル基を示し、R2 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、置換フェノキシ基又はハロゲン原子を示す。Aは有機基を、X- は対アニオンを示す。nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示し、n+m=4である。
【請求項2】 一般式(I)で示されるジアゾニウム塩が一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で示されることを特徴とする請求項(1)記載のポジ型感光性組成物。
【化2】


式中R1 は炭素数3〜18のアルキル基又は置換アルキル基を示し、R2 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、置換フェノキシ基又はハロゲン原子を示す。X- は対アニオンを示す。nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を示し、n+m=4である。R3 、R4 は各々独立にアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を示す。又R3 とR4 は互いに結合してモルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピロリジニル基等の複素環式基を形成しても良い。Yは酸素原子、硫黄原子、−NH−、−CH2 −又は−C(CH3)2 −を示す。Zは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アルキルカルボニル基、置換アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換アリールカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。kは1〜5の整数を示す。Qは二価の連結基を示す。