説明

ポジ型感放射線性樹脂組成物、層間絶縁膜及びその形成方法

【課題】放射線感度、現像マージンが高く、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性、耐ドライエッチング性が優れた層間絶縁膜を形成可能なポジ型感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂、並びに[B]1,2−キノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物である。[A]成分は、好ましくは、(a1)不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物から選ばれる1種以上を含む単量体、並びに(a2)ヒンダードアミン及び/またはヒンダードフェノール構造を含むアクリル酸エステル単位、(a1)及び(a2)の化合物に加えて、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物を含む単量体から得られる共重合体であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(LCD)等の層間絶縁膜を形成するための材料として好適なポジ型感放射線性樹脂組成物、その組成物から形成された層間絶縁膜、及びその層間絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す。)型液晶表示素子、磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なく、しかも十分な平坦性を有するものが好ましいことから、ポジ型感放射線性樹脂組成物が幅広く使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記電子部品のうち、例えば、TFT型液晶表示素子は、層間絶縁膜の上に透明電極膜を形成し、その上に液晶配向膜を形成する工程を経て製造される。このようなTFT型液晶表示素子の製造では、層間絶縁膜は、透明電極膜の形成工程において高温条件に曝されたり、電極のパターン形成に使用されるレジストの剥離液に曝されたり、様々な波長の光に晒されることになるため、十分な耐熱性、耐溶剤性及び耐光性が必要となる。また、層間絶縁膜は、ドライエッチング工程にかけられる場合もあるため、ドライエッチングに対する十分な耐性が必要となる(特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
また近年、TFT型液晶表示素子は、大画面化、高輝度化、高精細化、高速応答化、薄型化等の動向にある。そのため、TFT型液晶表示素子に用いられる層間絶縁膜形成用の感放射線性樹脂組成物としては放射線に対して高感度であると共に、形成される層間絶縁膜としては低誘電率、高光線透過率などにおいて、従来にも増して優れた性能が要求されている。また、層間絶縁膜を形成する際の現像工程においては、現像時間が最適時間よりわずかでも過剰となると、パターンと基板との間に現像液が浸透し、基板からのパターンの剥がれが生じやすくなる。従って、層間絶縁膜形成の際の現像工程においては、現像時間を厳密に制御する必要があり、製品の歩留まりの点で問題があった。
【0005】
このように、感放射線性樹脂組成物から層間絶縁膜を形成するにあたり、組成物としては、放射線に対して高感度であることが要求され、また、層間絶縁膜の形成時の現像工程においては、現像時間が所定時間より過剰となった場合でも、パターンの剥がれが生じずに良好な密着性を示し、かつ形成される層間絶縁膜としては、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性、耐ドライエッチング性などにおいて優れていることが要求される。しかし、そのような要求を全て満足する感放射線性樹脂組成物は、従来知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2000−241832号公報
【特許文献3】特開2005−345757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、放射線感度、及び現像工程におけるパターンの基板からの剥がれに対する耐性が高いと共に、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性及び耐ドライエッチング性に優れた層間絶縁膜を形成することが可能なポジ型感放射線性樹脂組成物、その組成物から得られた層間絶縁膜、並びにその層間絶縁膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂、並びに
[B]1,2−キノンジアジド化合物
を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物である。
【0009】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物は、[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂と、[B]1,2−キノンジアジド化合物とを含有するため、放射線感度、及び現像工程におけるパターンの基板からの剥がれに対する現像時間の許容範囲(現像マージン)が高く、また、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性及び耐ドライエッチング性が優れた層間絶縁膜を形成することが可能である。なお、ここでの「ヒンダードアミン構造を有するアルカリ可溶性樹脂」とは、アミノ基の窒素原子に隣接する少なくとも1つの炭素原子が3級の基を構成しているアミン構造含有アルカリ可溶性樹脂を意味し、「ヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂」とは、フェノール性水酸基の結合部位に隣接する少なくとも1つのベンゼン環炭素原子に3級の基が結合しているフェノール構造含有アルカリ可溶性樹脂を意味する。
【0010】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において、[A]アルカリ可溶性樹脂は、(a1)不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物から選ばれる1種以上を含む単量体、並びに(a2)下記式(1)で表わされる化合物、下記式(2)で表わされる化合物又は下記式(3)で表わされる化合物から選ばれる1種以上を含む単量体から得られる共重合体であることが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、mは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。
式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜R10は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRの少なくとも一方がt−ブチル基又はt−ペンチル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、nは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。
式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R11は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、tは1〜4の整数であり、R15〜R18は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R15及びR16の少なくとも一方がt−ブチル基又はt−ペンチル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、Bは、単結合、−CO−、−S−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−であり、kは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。)
【0011】
[A]アルカリ可溶性樹脂の共重合体の構成成分として、これらのヒンダード構造を有する化合物を用いることによって、当該ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成される層間絶縁膜の耐熱性、耐光性及び耐ドライエッチング性をさらに向上させることができる。
【0012】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において、[A]アルカリ可溶性樹脂は、上記(a1)及び(a2)で表される化合物に加えて、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物を含む単量体から得られる共重合体であることが好ましい。[A]アルカリ可溶性樹脂の共重合体の構成成分として、エポキシ基含有不飽和化合物を用いることによって、当該ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成される層間絶縁膜の耐熱性及び耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0013】
また、本発明の層間絶縁膜の形成方法は、
(1)当該ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程
を含んでいる。
【0014】
当該方法においては、優れた放射線感度を有する上記ポジ型感放射線性組成物を用い、感放射線性を利用した露光・現像・加熱によってパターンを形成することによって、微細かつ精巧なパターンを有する層間絶縁膜を容易に形成することができる。こうして形成された層間絶縁膜は、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性及び耐ドライエッチング性において優れている。また、このような層間絶縁膜は、TFT型液晶表示素子をはじめとして、磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品に幅広く用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、高い感放射線感度を有し、現像工程において最適現像時間を越えてもなお良好なパターン形状を形成できるような現像マージン(現像工程における高い密着性)を有する。また、当該ポジ型感放射線性樹脂組成物からは、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性及び耐ドライエッチング性において優れた電子部品の層間絶縁膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂、[B]1,2−キノンジアジド化合物、並びにその他の任意成分([C]感熱性酸生成化合物又は感熱性塩基生成化合物、[D]少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物等)を含有する。
【0017】
[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物に用いられる[A]成分のアルカリ可溶性樹脂は、ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を含有し、かつ当該成分を含むポジ型感放射線性樹脂組成物の現像処理工程において用いられるアルカリ現像液に対して可溶性を有する樹脂であれば、特に限定されるものではない。[A]成分のアルカリ可溶性樹脂としては、ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有すると共に、カルボキシル基又は無水カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましい。また、[A]成分のアルカリ可溶性樹脂としては、(a1)不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物(以下、「化合物(a1)」と称することもある)から選ばれる1種以上を含む単量体、並びに(a2)上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物又は上記式(3)で表わされる化合物から選ばれる1種以上(以下、「化合物(a2)」と称することもある)を含む単量体から得られる共重合体が、特に好ましい。このようなアルカリ可溶性樹脂(以下、共重合体[A]と称することもある)は、化合物(a1)及び(a2)を含む単量体を、重合開始剤の存在下、溶媒中でラジカル重合することによって製造することができる。
【0018】
また、アルカリ可溶性樹脂[A]としては、上記の化合物(a1)及び(a2)に加えて、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物(以下、「化合物(a3)」と称することもある)を含む単量体から得られる共重合体[A]を用いることもできる。さらに、アルカリ可溶性樹脂[A]としては、化合物(a1)、(a2)及び(a3)と共に、化合物(a4)として、これらの化合物以外の不飽和化合物を含む単量体から得られる共重合体[A]を用いることもできる。
【0019】
共重合体[A]を得るために用いられる化合物(a1)は、ラジカル重合性を有する不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物である。化合物(a1)の具体例としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル、両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する多環式化合物及びその無水物などを挙げることができる。
【0020】
これらの化合物(a1)の具体例は、
モノカルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸など;
ジカルボン酸として、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸など;
ジカルボン酸の無水物として、上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物など;
多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとして、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕など;
両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとして、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなど;
カルボキシル基を有する多環式化合物及びその無水物として、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物などがそれぞれ挙げられる。
【0021】
これらの化合物(a1)の中でも、モノカルボン酸、ジカルボン酸の無水物が好ましく使用される。特に、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性から好ましく使用される。これらの化合物(a1)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
共重合体[A]は、化合物(a1)から誘導される繰り返し単位を、共重合体[A]を構成する繰り返し単位の合計に基づいて、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは5〜25質量%含有している。共重合体[A]において、化合物(a1)から誘導される繰り返し単位を5〜40質量%の範囲内とすることによって、現像工程時における共重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化することができる。
【0023】
共重合体[A]を得るために用いられる化合物(a2)は、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物又は上記式(3)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
【0024】
上記式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル、(メタ)アクリル酸(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−n−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−i−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−n−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−i−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、(メタ)アクリル酸(1−t−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)、メタクリル酸[1−(2−フェニルプロピル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]などを挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル、(メタ)アクリル酸(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)が特に好ましい。
【0025】
上記式(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、2−t−ブチル−5−メチル−4−ビニルフェノール、2−t−ペンチル−5−メチル−4−ビニルフェノール、2−t−ブチル−5−エチル−4−ビニルフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−4−ビニルフェノール、2−t−ブチル−5−メチル−4−i−プロペニルフェノール、2−t−ブチル−5−エチル−4−i−プロペニルフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−4−i−プロペニルフェノール、2−t−ブチル−5−メチル−4−(メタ)アクリルオキシフェノール、2−t−ブチル−5−エチル−4−(メタ)アクリルオキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−4−(メタ)アクリルオキシフェノール等を挙げることができる。
【0026】
上記式(3)で表される化合物の好ましい具体例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。ここで具体的に例示した式(1)〜(3)で表される化合物は、他の化合物との共重合反応性、得られる硬化膜の耐光性向上の点から好ましい。
【0027】
化合物(a2)としては、上記の式(1)〜(3)に示される化合物を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。共重合体[A]は、化合物(a2)から誘導される繰り返し単位を、共重合体[A]を構成する繰り返し単位の合計に基づいて、好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは5〜50重量%含有している。共重合体[A]において、化合物(a2)から誘導される繰り返し単位を1質量%以上とすることによって、得られる層間絶縁膜の耐光性を十分確保することができる。一方、この繰り返し単位を60質量%以下とすることによって、得られる層間絶縁膜の透明性、耐熱性の低下を防止することができる。
【0028】
共重合体[A]を得るために用いられる化合物(a3)は、ラジカル重合性を有するエポキシ基を有する不飽和化合物である。ここでのエポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)を挙げることができる。
【0029】
オキシラニル基を有する不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。これらのオキシラニル基を有する不飽和化合物の中でも、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロへキシルメタクリレートなどが、共重合反応性の向上の観点から好ましく用いられる。
【0030】
また、オキセタニル基を有する不飽和化合物の具体例としては、3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等をそれぞれ挙げることができる。
【0031】
これらの化合物(a3)は、単独であるいは組み合わせて用いられる。共重合体[A]は、化合物(a3)から誘導される繰り返し単位を、共重合体[A]を構成する繰り返し単位の合計に基づいて、好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは30〜80質量%含有してもよい。共重合体[A]において、この繰り返し単位を10〜80質量%とすることによって、得られる層間絶縁膜の耐熱性及び耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0032】
化合物(a4)は、上記の化合物(a1)、(a2)及び(a3)以外であって、ラジカル重合性を有する不飽和化合物であれば特に制限されるものではない。化合物(a4)の例としては、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、水酸基を有するメタクリル酸エステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、下記式(4)で表される骨格を有する不飽和化合物、下記式(5)で表されるフェノール性水酸基含有不飽和化合物(但し、上記式(2)及び(3)で表される化合物を除く)、及びその他の不飽和化合物を挙げることができる。
【0033】
【化4】

(式(4)中、R19は水素原子又はメチル基であり、pは2〜10の整数である。)
【0034】
【化5】

(式(5)中、R20は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R21〜R25は同一もしくは異なり、水素原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Bは単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、qは0〜3の整数である、但し、R21〜R25の少なくとも1つはヒドロキシル基であり、かつヒドロキシル基に隣接する置換基はt−ブチル基ではなく、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。)
【0035】
化合物(a4)の具体例としては、
メタクリル酸鎖状アルキルエステルとして、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレートなど;
メタクリル酸環状アルキルエステルとして、シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレートなど;
水酸基を有するメタクリル酸エステルとして、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロキシエチルグリコサイド、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートなど;
アクリル酸環状アルキルエステルとして、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレートなど;
メタクリル酸アリールエステルとして、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなど;
【0036】
アクリル酸アリールエステルとして、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなど;
不飽和ジカルボン酸ジエステルとして、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなど;
ビシクロ不飽和化合物として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(t−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなど;
【0037】
マレイミド化合物として、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミドなど;
不飽和芳香族化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレンなど;
共役ジエンとして、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなど;
テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物として、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オンなど;
フラン骨格を含有する不飽和化合物として、2−メチル−5−(3−フリル)−1−ペンテン−3−オン、フルフリル(メタ)アクリレート、1−フラン−2−ブチル−3−エン−2−オン、1−フラン−2−ブチル−3−メトキシ−3−エン−2−オン、6−(2−フリル)−2−メチル−1−ヘキセン−3−オン、6−フラン−2−イル−ヘキシ−1−エン−3−オン、アクリル酸−2−フラン−2−イル−1−メチル−エチルエステル、6−(2−フリル)−6−メチル−1−ヘプテン−3−オンなど;
【0038】
テトラヒドロピラン骨格を含有する不飽和化合物として、(テトラヒドロピラン−2−イル)メチルメタクリレート、2,6−ジメチル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−オクト−1−エン−3−オン、2−メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オンなど;
ピラン骨格を含有する不飽和化合物として、4−(1,4−ジオキサ−5−オキソ−6−ヘプテニル)−6−メチル−2−ピラン、4−(1,5−ジオキサ−6−オキソ−7−オクテニル)−6−メチル−2−ピランなど;
上記式(4)で表される骨格を含有する不飽和化合物として、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
また、フェノール骨格を含有する不飽和化合物として、上記式(5)で表わされる化合物から、Bとqの定義により、下記式(6)〜(10)で表わされる化合物などが挙げられる。
【0040】
【化6】

(式(6)中、rは1から3の整数であり、R20、R21、R22、R23、R24及びR25の定義は上記式(5)における定義と同じである。)
【0041】
【化7】

(式(7)中、R20、R21、R22、R23、R24及びR25の定義は上記式(5)における定義と同じである。)
【0042】
【化8】

(式(8)中、sは1から3の整数であり、R20、R21、R22、R23、R24及びR25の定義は上記式(5)における定義と同じである。)
【0043】
【化9】

(式(9)中、R20、R21、R22、R23、R24及びR25の定義は上記式(5)における定義と同じである。)
【0044】
【化10】

(式(10)中、R20、R21、R22、R23、R24及びR25の定義は上記式(5)における定義と同じである。)
【0045】
その他の不飽和化合物の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルをそれぞれ挙げることができる。
【0046】
これらの化合物(a4)の例の中でも、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、マレイミド化合物、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、上記式(4)で表される骨格をもつ不飽和化合物、上記式(5)で表されるフェノール性水酸基含有不飽和化合物、不飽和芳香族化合物、アクリル酸環状アルキルエステルが好ましく用いられる。これらの中でも特に、スチレン、t−ブチルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート、p−メトキシスチレン、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン、4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレンが、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点から好ましい。
【0047】
共重合体[A]の各構成成分の好ましい具体例としては、メタクリル酸/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/2−メチルシクロヘキシルアクリレート/メタクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル、メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル/N−シクロヘキシルマレイミド/3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン/2,5−ジ−t−ブチル−4−i−プロペニルフェノール、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、メタクリル酸/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/テトラヒドロフルフリルメタクリレート/メタクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル、メタクリル酸/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/テトラヒドロフルフリルメタクリレート/メタクリル酸グリシジル/2,5−ジ−t−ブチル−4−i−プロペニルフェノール、メタクリル酸/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/テトラヒドロフルフリルメタクリレート/メタクリル酸グリシジル/2−t−ブチル−6−(3−t−ペンチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、メタクリル酸/トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート/テトラヒドロフルフリルメタクリレート/メタクリル酸グリシジル/2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
これらの化合物(a4)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。共重合体[A]は、化合物(a4)から誘導される繰り返し単位を、共重合体[A]を構成する繰り返し単位の合計に基づいて、好ましくは0〜60質量%、特に好ましくは5〜50質量%含有してもよい。共重合体[A]において、この繰り返し単位の量を60質量%以下とすることによって、ポジ型感放射線性樹脂組成物の現像性の低下を抑制することができる。
【0049】
共重合体[A]のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは2×10〜1×10、より好ましくは5×10〜5×10である。共重合体[A]のMwを2×10以上とすることによって、ポジ型感放射線性樹脂組成物の現像マージンを高め、得られる層間絶縁膜の耐熱性の低下を抑制することができる。一方、共重合体[A]のMwを1×10以下とすることによって、優れた放射線感度及び現像性を得ることができる。また、共重合体[A]の分子量分布(以下、「Mw/Mn」という。)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。共重合体[A]のMw/Mnを5.0以下とすることによって、得られる層間絶縁膜の高度な現像性を確保することができる。
【0050】
共重合体[A]を製造するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン類、他のエステル類等を挙げることができる。
【0051】
これらの溶媒としては、
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとして、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等;
ジプロピレングリコールジアルキルエーテルとして、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとして、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとして、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとして、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
ケトン類として、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等;
【0052】
他のエステル類として、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチル等を、それぞれ挙げることができる。
【0053】
これらの溶媒のうち、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、他のエステル類が好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチルを用いることが、特に好ましい。
【0054】
共重合体[A]の製造に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。
【0055】
共重合体[A]の製造においては、分子量を調整するために分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
【0056】
[B]1,2−キノンジアジド化合物
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物に用いられる[B]成分は、放射線の照射によりカルボン酸を発生する1,2−キノンジアジド化合物である。1,2−キノンジアジド化合物として、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下、「母核」という。)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を用いることができる。
【0057】
上記母核としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核を挙げることができる。
【0058】
これらの母核としては、
トリヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン等;
テトラヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン等;
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等;
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等;
【0059】
(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとして、例えばビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン等;
【0060】
その他の母核として、例えば2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、2−[ビス{(5−イソプロピル−4−ヒドロキシ−2−メチル)フェニル}メチル]、1−[1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−3−(1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。
【0061】
これらの母核のうち、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0062】
また、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを挙げることができる。この中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを使用することが特に好ましい。
【0063】
フェノール性化合物又はアルコール性化合物(母核)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物またはアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30〜85モル%、より好ましくは50〜70モル%に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は、公知の方法によって実施することができる。
【0064】
また、1,2−キノンジアジド化合物としては、上記例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0065】
これらの[B]成分は単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物における[B]成分の使用割合は、共重合体[A]100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。[B]成分の使用割合を5〜100質量部とすることによって、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が大きく、現像性が良好となり、また得られる層間絶縁膜の耐熱性及び耐溶剤性も良好となる。
【0066】
その他の任意成分
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物は、上記の[A]及び[B]成分に加え、所期の効果を損なわない範囲で必要に応じて、[C]感熱性酸生成化合物又は感熱性塩基生成化合物、[D]少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物、[E]界面活性剤、[F]密着助剤及び[G]ラジカル捕捉剤を含有することができる。
【0067】
[C]成分の感熱性酸生成化合物又は感熱性塩基生成化合物は、熱をかけることによって酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出することができる化合物であると定義される。このような感熱性酸生成化合物又は感熱性塩基生成化合物は、得られる層間絶縁膜の耐熱性や耐溶剤性を向上させるために、当該ポジ型感放射線性樹脂組成物に加えることができる。
【0068】
[C]成分の感熱性酸生成化合物としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、及び、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。
【0069】
ジフェニルヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホン酸等が挙げられる。
【0070】
トリフェニルスルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0071】
スルホニウム塩の例としては、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩などを挙げることができる。
【0072】
これらのスルホニウム塩としては、
アルキルスルホニウム塩として、例えば4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−3−クロロ−4−アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなど;
【0073】
ベンジルスルホニウム塩として、例えばベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなど;
【0074】
ジベンジルスルホニウム塩として、例えばジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなど;
【0075】
置換ベンジルスルホニウム塩として、例えば、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−ニトロベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどをそれぞれ挙げることができる。
【0076】
ベンゾチアゾニウム塩の例としては、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムテトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0077】
テトラヒドロチオフェニウム塩の例としては、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(5−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(6−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート等が挙げられる。
【0078】
これらの感熱性酸生成化合物の市販品としては、サンエイドSI−L85、同SI−L110、同SI−L145、同SI−L150、同SI−L160(三新化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0079】
これらの感熱性酸生成化合物の中でも、得られる層間絶縁膜の耐熱性向上の観点から、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、及びテトラヒドロチオフェニウム塩が好ましく用いられる。この中でも特に、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナートが好ましく用いられる。
【0080】
[C]成分の感熱性塩基生成化合物の例としては、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、[〔(2,6−ジニトロベンジル)オキシ〕カルボニル]シクロヘキシルアミン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ビス[〔(2−ニトロベンジル)オキシ〕カルボニル]ヘキサン−1,6−ジアミン、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシアミド、O−カルバモイルオキシム、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)等が挙げられる。これらの[C]成分の感熱性塩基生成化合物の中でも、得られる層間絶縁膜の耐熱性の向上の観点から、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート及びO−カルバモイルヒドロキシアミドが特に好ましい。
【0081】
[C]成分の感熱性酸生成化合物又は感熱性塩基生成化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において[C]成分を使用する場合の量は、共重合体[A]100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。[C]成分の使用割合を0.1〜10質量部とすることによって、良好な耐熱性及び耐溶剤性を有する層間絶縁膜を形成することができる。
【0082】
[D]成分の少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等を好適に用いることができる。
【0083】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等を挙げることができる。これらの単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばアロニックスM−101、同M−111、同M−114(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0084】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの2官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばアロニックスM−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0085】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの3官能以上の(メタ)アクリレートの市販品として、例えばアロニックスM−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0086】
これらの(メタ)アクリレート類のうち、3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。その中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0087】
これらの単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートは、単独であるいは組み合わせて用いられる。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において[D]成分を使用する場合の量は、共重合体[A]100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部であり、さらに好ましくは3〜30質量部である。[D]成分の使用割合を1〜50質量部とすることにより、得られる層間絶縁膜の耐熱性及び耐溶剤性をより向上させることができる。
【0088】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物には、塗膜形成時の塗布性をさらに向上させるため、[E]成分として界面活性剤を使用することができる。好適に用いることができる界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0089】
フッ素系界面活性剤の例としては、1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等を挙げることができる。
【0090】
これらのフッ素系界面活性剤の市販品としては、BM−1000、BM−1100(以上、BM Chemie社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−170C、FC−171、FC−430、FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)などが挙げられる。
【0091】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、市販されている商品名で、DC3PA、DC7PA、FS−1265、SF−8428、SH11PA、SH21PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、SH−190、SH−193、SZ−6032(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(以上、GE東芝シリコーン(株)製)等を挙げることができる。
【0092】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤の代表的な市販品としては、ポリフローNo.57、95(共栄社化学(株)製)が挙げられる。
【0093】
[E]成分の界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において[E]成分を使用する場合の量は、共重合体[A]100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.05〜2質量部である。[E]成分の使用割合を0.01〜3質量部とすることによって、基板上に塗膜を形成する際の塗布ムラの発生を抑制することができる。
【0094】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物においては、得られる層間絶縁膜と基板との密着性を向上させるために[F]成分である密着助剤を使用することができる。このような密着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用される。官能性シランカップリング剤の例としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0095】
[F]成分の密着助剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において[F]成分を使用する場合の量は、共重合体[A]100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.05〜15質量部である。[F]成分の密着助剤の配合量を0.01〜20質量部とすることによって、得られる層間絶縁膜と基体との密着性が最も良好となる。
【0096】
[G]ラジカル捕捉剤
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物には、さらに[G]ラジカル捕捉剤を加えることができる。[G]ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、アルキルホスフェート化合物及び硫黄原子を含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0097】
上記ヒンダードフェノール化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3”,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸等を挙げることができる。
【0098】
これらの市販品としては、例えば
アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(以上、(株)ADEKA製);
sumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP−S、sumilizerBBM−S、sumilizerWX−R、sumilizerGA−80(以上、住友化学(株)製);
IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1098、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330、IRGANOX 1726、IRGANOX 1425WL、IRGANOX 1520L、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 3114、IRGANOX 565、IRGAMOD295(以上、チバジャパン(株)製);
ヨシノックスBHT、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、ヨシノックスSS、ヨシノックスTT、ヨシノックス917、ヨシノックス314(以上、(株)エーピーアイコーポレーション製)等を挙げることができる。
【0099】
上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば
テトラキス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等を挙げることができ、これらの市販品として、例えばアデカスタブLA−52、アデカスタブLA57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(以上、(株)ADEKA製);
sumilizer9A(住友化学(株)製);
CHIMASSORB 119FL、CHIMASSORB 2020FDL、CHIMASSORB 944FDL、TINUVIN 622LD、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 765、TINUVIN 770DF(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0100】
上記アルキルホスフェート化合物としては、例えば
ブチリデンビス{2−tert−ブチル−5−メチル−p−フェニレン}−P、P,P,P−テトラトリデシルビス(ホスフィン)、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト 、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等を挙げることができる。
【0101】
これらの市販品として、例えば
アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、(株)ADEKA製);
IRGAFOS 168(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0102】
上記硫黄原子を含む化合物としては、例えば
ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジ(プロピオン酸−n−トリデカニル)スルフィド、チオジエチレン ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができるほか、値オエーテルの市販品として、例えばアデカスタブAO−412S、アデカスタブAO−503(以上、(株)ADEKA製);
sumilizerTPL−R、sumilizerTPM、sumilizerTPS、sumilizerTP−D、sumilizerMB(以上、住友化学(株)製);
IRGANOX PS800FD、IRGANOX PS802FD、IRGANOX 1035(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);
DLTP、DSTP、DMTP、DTTP(以上、(株)エーピーアイコーポレーション製)等を挙げることができる。
【0103】
[G]成分のラジカル捕捉剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。当該ポジ型感放射線性樹脂組成物において[G]成分を使用する場合の量は、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは1〜30質量部である。この使用量が0.1〜30質量部であるとき、形成される層間絶縁膜のパターン寸法の不安定化及び透明性の低下並びに層間絶縁膜形成の際の解像度の低下を抑制し、かつ感放射線性樹脂組成物の保存安定性の低下を防ぐことができる。
【0104】
ポジ型感放射線性樹脂組成物
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、上記の[A]及び[B]成分、並びに任意成分([C]〜[G]成分)を均一に混合することによって調製される。通常、ポジ型感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で保存され、使用される。例えば、溶媒中で、[A]及び[B]成分並びに任意成分を所定の割合で混合することにより、溶液状態のポジ型感放射線性樹脂組成物を調製することができる。
【0105】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶剤としては、上記の[A]及び[B]成分並びに任意成分([C]〜[G]成分)の各成分を均一に溶解し、かつ各成分と反応しないものである限り、特に限定されるものではない。このような溶媒としては、共重合体[A]を製造するために使用できる溶媒として例示した溶媒と同様のものを挙げることができる。
【0106】
このような溶媒のうち、各成分の溶解性、各成分との非反応性、塗膜形成の容易性等の点から、アルコール類、グリコールエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エステル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく用いられる。これらの溶媒のうち、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−又は3−メトキシプロピオン酸メチル、2−又は3−エトキシプロピオン酸エチルが特に好ましく使用できる。
【0107】
さらに、形成される塗膜の面内均一性を高めるため、前記溶媒と共に高沸点溶媒を併用することもできる。併用できる高沸点溶媒としては、例えばN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。これらの高沸点溶媒のうち、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0108】
当該ポジ型感放射性樹脂組成物の溶媒として、高沸点溶媒を併用する場合、その使用量は、溶媒全量に対して50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることができる。高沸点溶媒の使用割合を50質量%以下とすることにより、塗膜の膜厚均一性を高めると同時に、放射線感度の低下を抑制することができる。
【0109】
当該ポジ型感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、溶液中に占める溶媒以外の成分(すなわち、上記の[A]及び[B]成分、並びにその他の任意成分の合計量)の割合は、使用目的や所望の膜厚等に応じて任意に設定することができるが、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%である。このようにして調製されたポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液は、孔径0.2μm程度のミリポアフィルタなどを用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0110】
層間絶縁膜の形成
次に、当該ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて、本発明の層間絶縁膜を形成する方法について述べる。当該方法は、以下の工程を以下の記載順で含む。
(1)本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程。
【0111】
(1)ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程
上記(1)の工程において、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液を基板表面に塗布し、好ましくはプレベークを行うことにより溶剤を除去して、ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成する。使用できる基板の種類としては、例えば、ガラス基板、シリコンウエハー及びこれらの表面に各種金属が形成された基板を挙げることができる。
【0112】
組成物溶液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも特に、スピンコート法、スリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件としては、各成分の種類、使用割合等によっても異なるが、例えば、60〜110℃で30秒間〜15分間程度とすることができる。形成される塗膜の膜厚としては、プレベーク後の値として例えば2〜5μmが好ましい。
【0113】
(2)塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
上記(2)の工程では、形成された塗膜に所定のパターンを有するマスクを介して、放射線を照射する。このとき用いられる放射線としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。
【0114】
上記紫外線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等が挙げられる。遠紫外線としては、例えばKrFエキシマレーザー等が挙げられる。X線としては、例えばシンクロトロン放射線等が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば電子線等を挙げることができる。これらの放射線のうち、紫外線が好ましく、紫外線の中でもg線及び/又はi線を含む放射線が特に好ましい。露光量としては、50〜1,500J/mとすることが好ましい。
【0115】
(3)現像工程
(3)現像工程において、上記(2)の工程で放射線を照射された塗膜に対して現像を行って、放射線の照射部分を除去し、所望のパターンを形成することができる。現像処理に用いられる現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ(塩基性化合物)の水溶液を用いることができる。また、上記のアルカリの水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液、又は感放射線性樹脂組成物を溶解する各種有機溶媒を少量含むアルカリ水溶液を、現像液として使用することができる。さらに、現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、感放射線性樹脂組成物の組成によって異なるが、例えば30〜120秒間とすることができる。
【0116】
なお、従来知られている感放射線性樹脂組成物は、現像時間が最適値から20〜25秒程度超過すると形成したパターンに剥がれが生じるため、現像時間を厳密に制御する必要がある。それに対して、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、現像マージンが高いため、最適現像時間からの超過時間が30秒以上となっても良好なパターン形成が可能であり、製品歩留まり上の利点が大きい。
【0117】
(4)加熱工程
(4)加熱工程において、上記(3)の現像工程後に、パターニングされた薄膜に対して、好ましくは流水洗浄によるリンス処理を行い、続いて、好ましくは高圧水銀灯などによる放射線を全面に照射(後露光)することにより、薄膜中に残存する1,2−キノンジアジド化合物の分解処理を行う。次いで、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、この薄膜を加熱処理(ポストベーク処理)することによって、薄膜の硬化処理を行う。上記の後露光における露光量は、好ましくは2,000〜5,000J/m程度である。また、この硬化処理における焼成温度は、例えば120〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱処理を行う場合には5〜30分間、オーブン中で加熱処理を行う場合には30〜90分間とすることができる。この際に、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。このようにして、目的とする層間絶縁膜に対応するパターン状薄膜を基板の表面上に形成することができる。
【0118】
このようにして形成された層間絶縁膜は、後述の実施例から明らかにされるように、耐熱性、耐溶剤性、低誘電性、光線透過率、耐光性及び耐ドライエッチング性において優れたものである。
【0119】
このような層間絶縁膜を用いて液晶表示素子等の電子部品を作製する際には、必要に応じてドライエッチングが行われる。このようなドライエッチング工程において用いられるエッチングガスとしては、O、N、CF、SiFなどを挙げることができる。エッチングの方法としては、層間絶縁膜がパターニングされた基板と電極との間に電圧を印加することにより、イオンを基板に対して衝突させる反応性イオンエッチングと、ラジカルを基板に対して衝突させるプラズマエッチングの2種類が存在する。これらのガス種やエッチング方法は、層間絶縁膜の下地金属種によって適宜選択される。上述のように、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜は、ドライエッチングに対する優れた耐性を有する。
【実施例】
【0120】
以下に、合成例及び実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
以下において、共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804(昭和電工(株)製)を結合したもの
移動相:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0122】
共重合体の合成例及び比較合成例
[合成例1]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸18質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート12質量部、メタクリル酸グリシジル45質量部、メタクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル5質量部、及びα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し共重合体[A−1]を含む重合体溶液を得た。共重合体[A−1]のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は10,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度(重合体溶液に含まれる共重合体の質量が重合体溶液の全質量に占める割合をいう。以下同じ。)は、33.3質量%であった。
【0123】
[合成例2]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸18質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート12質量部、メタクリル酸グリシジル45質量部、2,5−ジ−t−ブチル−4−i−プロペニルフェノール5質量部、及びα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し共重合体[A−2]を含む重合体溶液を得た。共重合体[A−2]のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は10,200、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度は、33.5質量%であった。
【0124】
[合成例3]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸18質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート12質量部、メタクリル酸グリシジル45質量部、2−t−ブチル−6−(3−t−ペンチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート5質量部、及びα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し共重合体[A−3]を含む重合体溶液を得た。共重合体[A−3]のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は9,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度は、33.1質量%であった。
【0125】
[合成例4]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸18質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート12質量部、メタクリル酸グリシジル45質量部、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート2質量部、メタクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル3質量部、及びα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し共重合体[A−4]を含む重合体溶液を得た。共重合体[A−4]のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は9,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度は、32.8質量%であった。
【0126】
[比較合成例1]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸18質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート12質量部、メタクリル酸グリシジル45質量部、メタクリル酸メチル5質量部、及びα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し共重合体[a−1]を含む重合体溶液を得た。共重合体[a−1]のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は9,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また、得られた重合体溶液の固形分濃度は、33.1質量%であった。
【0127】
ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製
[実施例1]
[A]成分として合成例1で得られた共重合体[A−1]100質量部(固形分)、[B]成分として4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物(B−1)25質量部、[E]成分としてシリコーン系界面活性剤である東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の「SH−28PA」0.1質量部、及び[F]成分としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解させた後、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、ポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液(S−1)を調製した。
【0128】
[実施例2〜4及び比較例1]
[A]成分、[B]成分、及びその他の成分として、表1に記載のとおりの種類、量を使用した以外は、実施例1と同様に、ポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液(S−2)〜(S−4)および(s−1)を調製した。
【0129】
[実施例5]
固形分濃度が20質量%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(質量比6/4)に溶解したこと、及び[B]成分として1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物(B−2)20質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に、ポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液(S−5)を調製した。
【0130】
[実施例6〜12及び比較例2]
[A]成分、[B]成分、及びその他の成分として、表1に記載のとおりの種類、量を使用した以外は、実施例5と同様に、ポジ型感放射線性樹脂組成物の溶液(S−6)〜(S−12)および(s−2)を調製した。
【0131】
表1中、成分の略称は次の化合物を示す。
B−1:4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
B−2:1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
C−1:ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
D−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
D−2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
E−1:シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング・シリコーン(株)製の「SH−28PA」)
F−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
G−1:1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸((株)ADEKA製の「アデカスタブAO−20」)
G−2:ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト((株)ADEKA製の「アデカスタブPEP−8」)
【0132】
層間絶縁膜としての特性評価
上記のように調製したポジ型感放射線性樹脂組成物を使用し、以下のように層間絶縁膜としての各種の特性を評価した。
【0133】
[ポジ型感放射線性樹脂組成物の放射線感度の評価]
シリコン基板上に、実施例1〜4、比較例1については、スピンナーを用いて、上記組成物(S−1)〜(S−4)、(s−1)を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。実施例5〜12、比較例2については、スリットダイコーターを用いて、上記組成物(S−5)〜(S−12)、(s−2)の塗布を行い、0.5Torrにて真空乾燥を行った後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用い、3.0μmのライン・アンド・スペース(10対1)のパターンを有するパターンマスクを介して露光時間を変化させて露光を行った後、0.4質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、80秒間、液盛り法で現像した。次いで超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させてウエハー上にパターンを形成した。このとき、3.0μmのライン・アンド・スペース(10対1)のスペース・パターンが完全に溶解するために必要な露光量を測定した。この値を放射線感度として、表1に示す。この値が1,000J/m以下の場合に放射線感度が良好であると言える。
【0134】
[ポジ型感放射線性樹脂組成物の現像マージンの評価]
上記[ポジ型感放射線性樹脂組成物の放射線感度の評価]と同様に、シリコン基板上に塗膜を形成した。キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を使用し、3.0μmのライン・アンド・スペース(10対1)のパターンを有するマスクを介して、得られた塗膜に、上記[放射線感度の評価]にて測定した放射線感度の値に相当する露光量で露光を行い、0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて、25℃で、現像時間を変化させて液盛り法で現像した。次いで、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させてウエハー上にパターンを形成した。このとき、ライン線幅が3.0μmとなるのに必要な現像時間を最適現像時間として表1に示した。また、最適現像時間からさらに現像を続けた際に3.0μmのライン・パターンが剥がれるまでの時間を測定し、現像マージン(現像時間の許容範囲)として表1に示す。この値が30秒以上のとき、現像マージンは良好であると言える。
【0135】
[層間絶縁膜の耐溶剤性の評価]
上記[ポジ型感放射線性樹脂組成物の放射線感度の評価]において露光しなかった以外は同様に、シリコン基板上に塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を使用して、積算照射量が3,000J/mとなるように露光し、このシリコン基板をクリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱して硬化膜を得た。得られた硬化膜の膜厚(T1)を測定した。そして、この硬化膜が形成されたシリコン基板を70℃に温度制御されたジメチルスルホキシド中に20分間浸漬させた後、当該硬化膜の膜厚(t1)を測定し、浸漬による膜厚変化率{|t1−T1|/T1}×100〔%〕を算出した。耐溶剤性の評価結果を表1に示す。この値が5%以下のとき、耐溶剤性は良好であると言える。なお、耐溶剤性の評価においては、形成する膜のパターニングは不要のため現像工程は省略し、塗膜形成工程、放射線照射工程、及び加熱工程のみ行い評価に供した。
【0136】
[層間絶縁膜の耐熱性の評価]
上記[層間絶縁膜の耐溶剤性の評価]と同様にして硬化膜を形成し、得られた硬化膜の膜厚(T2)を測定した。次いで、この硬化膜が形成されたシリコン基板を、クリーンオーブン内にて240℃で1時間追加ベークした後、当該硬化膜の膜厚(t2)を測定し、追加ベークによる膜厚変化率{|t2−T2|/T2}×100〔%〕を算出した。耐熱性の評価結果を表1に示す。この値が1%以下のとき、耐熱性は良好であると言える。
【0137】
[層間絶縁膜の耐光性の評価]
上記[層間絶縁膜の耐溶剤性の評価]と同様にして硬化膜を形成し、フォトマスクを介さず310nmの光を200J/m露光した。このように露光された硬化膜について、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー/質量分析(ヘッドスペースサンプラ:日本分析工業(株)製、型式名「JHS−100A」;ガスクロマトグラフィー/質量分析装置:日本分析工業(株)製、「JEOL JMS−AX505W型質量分析計」)により分析を行った。パージ条件を100℃/10minとし、光重合開始剤由来の揮発成分の発生に関するピーク面積Aを求めた。標準物質としてn−オクタン(比重:0.701;注入量:0.02μl)を使用し、そのピーク面積を基準として、下記式からn−オクタン換算による光重合開始剤由来の揮発成分量を算出した。この揮発成分量が2μg以下のとき、硬化膜からの昇華物が少なく、耐光性が良好であると言える。耐光性の評価結果を表1に示す。
n−オクタン換算による揮発成分量の計算式
揮発成分量(μg)=A×(n−オクタンの量(μg))/(n−オクタンのピーク面積)
【0138】
[層間絶縁膜の耐ドライエッチング性の評価]
上記[層間絶縁膜の耐溶剤性の評価]と同様に硬化膜を形成し、得られた硬化膜に対して、ドライエッチング装置「CDE−80N」((株)芝浦メカトロニクス製)を用い、エッチングガスとしてCF50ml/分、O10ml/分、出力400mW、エッチング時間90秒の条件でドライエッチングを行い、処理前後の膜厚測定を行った。耐ドライエッチング性の評価結果を表1に示す。膜厚減少が0.70μm未満のとき、耐ドライエッチング性は良好であると言える。
【0139】
[層間絶縁膜の透明性の評価]
上記[層間絶縁膜の耐溶剤性の評価]において、シリコン基板の代わりにガラス基板「コーニング7059」(コーニング社製)を用いたこと以外は同様にして、ガラス基板上に硬化膜を形成した。この硬化膜が形成されたガラス基板の光線透過率を、分光光度計「150−20型ダブルビーム」((株)日立製作所製)を用いて、400〜800nmの範囲の波長で測定した。そのときの最低光線透過率の値を表1に示す。この値が90%以上のとき、透明性は良好であると言える。
【0140】
[層間絶縁膜の比誘電率の評価]
研磨したSUS304製基板上に、実施例1〜4、比較例1については、スピンナーを用いて各組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。実施例5〜12、比較例2については、スリットダイコーターを用いて各組成物を塗布し、0.5Torrにて真空乾燥を行った後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用い、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間焼成することにより、硬化膜を得た。この硬化膜上に、蒸着法によりPt/Pd電極パターンを形成し、比誘電率測定用サンプルを作成した。得られたサンプルにつき、横河・ヒューレットパッカード(株)製HP16451B電極及びHP4284AプレシジョンLCRメーターを用い、CV法により、周波数10kHzの周波数における比誘電率を測定した。比誘電率の測定結果を表1に示す。この値が3.9以下のとき、比誘電率は良好であると言える。なお、比誘電率の評価においては、形成する膜のパターニングは不要のため、現像工程は省略し、塗膜形成工程、放射線照射工程及び加熱工程のみ行い評価に供した。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示された結果から、実施例1〜12のポジ型感放射線性組成物は、高い感放射線感度及び現像マージンを有すると共に、当該組成物から形成された層間絶縁膜は、良好な耐熱性、耐溶剤性、低誘電性及び光線透過率を有し、さらには、比較例1及び2の組成物と比べて、耐光性及び耐ドライエッチング性において格段に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜は、上述のように諸特性において優れているため、TFT型液晶表示素子をはじめとして、磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ヒンダードアミン構造及び/又はヒンダードフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂、並びに
[B]1,2−キノンジアジド化合物
を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
[A]アルカリ可溶性樹脂が、(a1)不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物から選ばれる1種以上を含む単量体、並びに(a2)下記式(1)で表わされる化合物、下記式(2)で表わされる化合物又は下記式(3)で表わされる化合物から選ばれる1種以上を含む単量体から得られる共重合体である請求項1に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜Rは各々独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、mは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。
式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R〜R10は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRの少なくとも一方がt−ブチル基又はt−ペンチル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、nは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。
式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R11は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、tは1〜4の整数であり、R15〜R18は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R15及びR16の少なくとも一方がt−ブチル基又はt−ペンチル基であり、Bは、単結合、−COO−*又は−CONH−*であり、Bは、単結合、−CO−、−S−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−であり、kは0〜3の整数である。但し、−COO−*又は−CONH−*における各々の*の結合手は(CHの炭素と結合する。)
【請求項3】
[A]アルカリ可溶性樹脂が、上記(a1)及び(a2)で表される化合物に加えて、(a3)エポキシ基含有不飽和化合物を含む単量体から得られる共重合体である請求項2に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
層間絶縁膜形成用である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜。
【請求項6】
(1)請求項4に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程
を含む層間絶縁膜の形成方法。

【公開番号】特開2011−95433(P2011−95433A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248332(P2009−248332)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】