説明

ポジ型感放射線性樹脂組成物

【課題】スピンコート法の実施条件を変更することにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することが可能なポジ型感放射線性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する構造単位を有する重合体、(B)感放射線性酸発生剤、および(C)20℃、1気圧での飽和蒸気圧が3.0mmHg以下のエチレングリコール系有機溶媒を含む有機溶媒類を含有することを特徴とするポジ型感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプなどのメッキ造形物の製造に好適に用いることができるポジ型感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器において、大規模集積回路(LSI)の高集積化および多層化が急激に進んでいる。このため、LSIを電子機器に搭載するための基板への多ピン実装方法が必要とされ、例えば、テープオートメーテッドボンディング(TAB)方式やフリップチップ方式によるベアチップ実装などが注目されている。前記方式においては、接続用端子であるバンプと呼ばれる突起電極が、LSI上に高精度に配置されることが必要とされている。
【0003】
上記バンプなどの各種精密部品は、例えば、感放射線性樹脂組成物を加工物表面に塗布して樹脂膜を形成し、フォトリソグラフィー法により該樹脂膜をパターニングし、これをマスクとして、電解メッキなどを実施することにより製造される(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
上記のように、フォトリソグラフィー法を用いてバンプなどの各種精密部品を得るには、様々な膜厚の樹脂膜を形成する技術が必要とされる。一般的に、上記感放射線性樹脂組成物を基板などの加工物表面に塗布する方法として、スピンコート法が用いられている。
【0005】
スピンコート法により基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布して所定の膜厚の樹脂膜を形成する場合には、基板の回転速度、基板の回転時間、感放射線性樹脂組成物の濃度などの条件を厳密に設定する必要がある。
【0006】
例えば、膜厚が大きく異なる樹脂膜が必要な場合には、感放射線性樹脂組成物の塗布前後に上記条件を設定し直さなければならない。スピンコート法においては、一般的に基板の回転速度の変更が容易であるため、これを変更することにより、様々な膜厚の樹脂膜を得ている。また、基板の回転時間を変更することによっても、スピンコート終了時の膜厚が異なる樹脂膜を得ることができる。
【0007】
しかしながら、近年、歩留まり向上のため基板のサイズが大きくなってきているが、スピンコート法では、基板のサイズが大きくなると基板の回転速度の幅(レンジ)を大きくすることが困難であるという問題がある。このため、基板の回転速度を変更することにより、同一の感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が大きく異なる樹脂膜を得ることが難しくなってきている。
【0008】
また、上記特許文献1および2に記載された感放射線性樹脂組成物を用いて、膜厚が異なる樹脂膜を形成した場合であっても、スピンコート終了後にこれらの樹脂膜を焼成すると、同程度の膜厚となってしまうという問題がある。
【0009】
このように、従来の感放射線性樹脂組成物では、スピンコート法により膜厚が大きく異なる樹脂膜を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−058710号公報
【特許文献2】特開2008−039917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、同一の樹脂組成物を用いても、スピンコート法の実施条件を変更することにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することが可能なポジ型感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、ポジ型感放射線性樹脂組成物に特定の有機溶媒を配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[5]に関する。
【0013】
[1](A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する構造単位を有する重合体、(B)感放射線性酸発生剤、および(C)20℃、1気圧での飽和蒸気圧が3.0mmHg以下のエチレングリコール系有機溶媒を含む有機溶媒類を含有することを特徴とするポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0014】
[2]前記エチレングリコール系有機溶媒が、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類およびジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]に記載のポジ型感放射線樹脂組成物。
【0015】
[3]前記エチレングリコール系有機溶媒の20℃、1気圧での飽和蒸気圧が、1.0mmHg以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0016】
[4]前記重合体(A)が、下記式(2)で表される構造単位、下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位をさらに有することを特徴とする前記[1]〜[3]の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0017】
【化1】

[式(2)、(3)および(4)中、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は−(CH2j−(jは1〜3の整数)または単結合であり、R7は炭素数1〜4のアルキル基であり、R8は−(CH2CH2O)k−または−(CH2CH2CH2O)k−(kは1〜4の整数)であり、mは1〜4の整数である。]
[5]前記酸解離性官能基を有する構造単位が、下記式(1)で表されることを特徴とする前記[1]〜[4]の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0018】
【化2】

[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2〜R4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、またはこれらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R2〜R4の何れか2つがアルキル基または置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基または置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。]
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物を用いることにより、同一の樹脂組成物を用いても、スピンコート法の実施条件(例えば、基板の回転速度、基板の回転時間など)を変更することにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することが可能となる。
【0020】
従って、上記ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンを鋳型として用いることにより、種々の高さを有するバンプや配線などのメッキ造形物を精度よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物について詳細に説明する。なお、以下では前記樹脂組成物を用いて形成される露光前の樹脂膜を「感放射線性樹脂膜」、該樹脂膜をパターニングして得られる層を「レジストパターン」ともいう。
【0022】
〔ポジ型感放射線性樹脂組成物〕
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物は、(A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する構造単位を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)、(B)感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(B)」ともいう)、(C)20℃、1気圧での飽和蒸気圧が特定の範囲にあるエチレングリコール系有機溶媒を含む有機溶媒類(以下、「有機溶媒類(C)」ともいう)、および必要に応じてその他の成分を含有する。
【0023】
上記のように、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤(B)を含有する。このため、露光により発生した酸と重合体(A)が有する酸解離性官能基とが反応して、酸性官能基および酸解離物質を生じる。その結果、感放射線性樹脂膜の露光された部分のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するため、所望のレジストパターンを高感度(すなわち低露光量)かつ高解像度で形成することができる。なお、このような酸解離性官能基の分解反応は、露光後に加熱(Post Exposure Bake:以下「PEB」ともいう)することにより促進される。
【0024】
<重合体(A)>
本発明で用いられる重合体(A)は、酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基(以下、「酸解離性官能基」ともいう)を有する構造単位を有する重合体である。
【0025】
≪酸解離性官能基を有する構造単位≫
上記酸解離性官能基としては、酸により解離して酸性官能基を生じる限り特に限定されず、例えば、酸により解離してカルボキシル基やフェノール性水酸基を生じる官能基が挙げられる。
【0026】
上記酸により解離してカルボキシル基を生じる官能基を有する構造単位としては、例えば、下記式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(1)」ともいう)が挙げられる。
【0027】
【化3】

式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2〜R4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、またはこれらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R2〜R4の何れか2つがアルキル基または置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基または置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。
【0028】
上記炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状アルキル基および分岐状アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基が挙げられる。
【0029】
上記炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、および、上記R2〜R4の何れか2つのアルキル鎖が相互に結合して形成された炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのシクロアルカン類に由来する基;アダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどの有橋式炭化水素類に由来する基;これらのシクロアルカン類または有橋式炭化水素類に由来する基の水素原子を、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0030】
上記芳香族基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基が挙げられる。
【0031】
上記置換炭化水素基における、水素原子と置換可能な炭化水素基以外の極性基としては、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基(=O基);ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシル基;シアノ基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基などのシアノアルキル基が挙げられる。
【0032】
構造単位(1)は、下記式(1a)で表される単量体から誘導される。
【0033】
【化4】

式(1a)中、R1〜R4は、上記式(1)におけるR1〜R4と同義である。
上記式(1a)で表される単量体(以下,「単量体(1a)」ともいう)としては、例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−ブチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−ベンジルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレート、2−ベンジル−2−プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、2−ベンジル−2−プロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
上記酸により解離してフェノール性水酸基を生じる官能基を有する構造単位を誘導する単量体としては、例えば、p−1−メトキシエトキシスチレン、p−1−エトキシエトキシスチレンなどのアセタール基で保護されたヒドロキシスチレン類、t−ブトキシスチレン、t−ブトキシカルボニルオキシスチレンが挙げられる。
以上の単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
≪構造単位(2)〜(4)≫
重合体(A)は、下記式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(2)」ともいう)、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(3)」ともいう)および下記式(4)で表される構造単位(以下、「構造単位(4)」ともいう)から選択される少なくとも1種の構造単位をさらに有することが好ましい。
【0036】
【化5】

式(2)、(3)および(4)中、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は−(CH2j−(jは1〜3の整数)または単結合であり、R7は炭素数1〜4のアルキル基であり、R8は−(CH2CH2O)k−または−(CH2CH2CH2O)k−(kは1〜4の整数)であり、mは1〜4の整数である。但し、R8は、例えば−(CH2CH2O)k−(k=1)の場合、−O−CH2CH2−OCO−となるように結合される。
【0037】
重合体(A)が構造単位(2)、(3)および(4)から選択される少なくとも1種の構造単位を有することにより、レジストパターンの基板に対する密着性が良好になるとともに、メッキ工程において、メッキ液が基板とレジストパターンとの界面へしみ出すことを防ぐ効果がある。
【0038】
また、構造単位(2)が有するアミド基は塗膜中で弱アルカリとして作用するため、環境中にあるアミン成分による酸の失活を抑制する働きがある。さらに、構造単位(2)および(3)が有する置換基の種類および数を調整することにより、フェノール性水酸基の酸性度を変えることができるので、アルカリ現像液に対する感放射線性樹脂膜の溶解性を調整できる。
【0039】
構造単位(2)、(3)および(4)は、それぞれ下記式(2a)で表される単量体(以下、「単量体(2a)」ともいう)、下記式(3a)で表される単量体(以下、「単量体(3a)」ともいう)および下記式(4a)で表される単量体(以下、「単量体(4a)」ともいう)から誘導される。
【0040】
【化6】

式(2a)、(3a)および(4a)中、R5〜R8、mは、それぞれ上記式(2)、(3)および(4)におけるR5〜R8、mと同義である。
【0041】
単量体(2a)としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、m−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、m−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、p−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、p−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、o−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、o−ヒドロキシベンジルメタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル化合物が挙げられる。
【0042】
単量体(3a)としては、例えば、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、m−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0043】
単量体(4a)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0044】
単量体(2a)、(3a)および(4a)の中では、p−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシベンジルメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートが好ましい。また、単量体(2a)、(3a)および(4a)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
≪架橋構造≫
重合体(A)は、さらに架橋構造を有してもよい。前記架橋構造は、2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(以下、「単量体(I)」ともいう)を上述の単量体とともに共重合することによって形成することができる。
【0046】
メッキ造形物を形成する際、感放射線性樹脂膜をパターニングして形成された溝にメッキ工程を実施して金属柱を形成する。このメッキ工程において、金属成分が析出・堆積する段階で金属柱が横方向に成長する力が働くため、強度の弱いレジストパターンでは、溝の側壁が金属成分に押されて変形し、最終的に得られる金属柱が樽型になる。しかしながら、架橋構造を有する重合体(A)を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物を用いると、架橋構造を有するレジストパターンが形成されるため、該パターンは強固である。従って、側壁が垂直な金属柱を形成することができる。
【0047】
単量体(I)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルエーテル、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
これらの中では、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
また、単量体(I)として、市販されている化合物をそのまま用いることもできる。市販されている化合物としては、例えば、アロニックスM−210、同M−309、同M−310、同M−400、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−9050、同M−240、同M−245、同M−6100、同M−6200、同M−6250、同M−6300、同M−6400、同M−6500(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD R−551、同R−712、同TMPTA、同HDDA、同TPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同HX−220、同HX−620、同R−604、同DPCA−20、DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート#295、同300、同260、同312、同335HP、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)が挙げられる。
以上の単量体(I)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
≪その他の単量体からなる構造単位≫
重合体(A)は、酸解離性官能基を有する構造単位を誘導する単量体(例えば、単量体(1a)など)、単量体(2a)、(3a)、(4a)または単量体(I)と共重合可能なその他の単量体(以下、「単量体(II)」ともいう)に由来する構造単位をさらに有してもよい。
【0051】
単量体(II)としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのヘテロ原子含有脂環式ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;1.3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0052】
これらの中では、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。また、単量体(II)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
≪重合体(A)の構成≫
本発明で用いられる重合体(A)の上記酸解離性官能基を有する構造単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されるものではない。
【0054】
以下では、上記架橋構造を形成する構造単位(例えば、単量体(I)に由来する構造単位)以外の、重合体(A)を構成する構造単位の合計を「重合体(A)の全構造単位」ともいう。例えば、単量体(1a)、(2a)、(3a)、(4a)および(II)を用いて重合体(A)を合成した場合、前記重合体(A)の全構造単位とは、構造単位(1)、構造単位(2)、構造単位(3)、構造単位(4)および単量体(II)に由来する構造単位の合計である。
【0055】
上記酸解離性官能基を有する構造単位の含有量、具体的には構造単位(1)の含有量は、重合体(A)の全構造単位100重量%に対して、通常は5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。構造単位(1)の含有量が前記範囲よりも低いと、生じる酸性官能基の割合が低くなるため、重合体(A)のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、レジストパターンの形成が困難になることがある。
【0056】
重合体(A)が構造単位(2)を有する場合、構造単位(2)の含有量は、重合体(A)の全構造単位100重量%に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。
【0057】
重合体(A)が構造単位(3)を有する場合、構造単位(3)の含有量は、重合体(A)の全構造単位100重量%に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
【0058】
重合体(A)が構造単位(4)を有する場合、構造単位(4)の含有量は、重合体(A)の全構造単位100重量%に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
【0059】
重合体(A)が単量体(I)に由来する構造単位を有する場合(すなわち、架橋構造を有する場合)、単量体(I)に由来する構造単位の含有量は、重合体(A)の全構造単位100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。単量体(I)に由来する構造単位の含有量が前記範囲よりも低い、すなわち、単量体(I)の使用量が過小であると、架橋反応が効率よく進まず、レジストパターンのメッキ耐性が発現しないことがある。また、単量体(I)に由来する構造単位の含有量が前記範囲よりも高い、すなわち、単量体(I)の使用量が過大であると、重合反応の制御が困難となるとともに、重合体(A)のゲル化または高分子量化が進み過ぎ、レジストパターンの解像性が著しく低下することがある。
【0060】
≪重合体(A)の合成≫
重合体(A)は、上述の単量体を用いて、従来公知の重合方法によって合成することができる。例えば、単量体(1a)と、好ましくは単量体(2a)、(3a)および(4a)から選択される少なくとも1種の単量体と、必要に応じて単量体(I)や単量体(II)とを、直接共重合する方法によって合成することができる。
【0061】
重合はラジカル重合によって行うことができ、重合開始剤としては、有機過酸化物などの通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。また、重合方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法が挙げられるが、特に溶液重合法が好ましい。
【0062】
上記溶液重合法で用いられる重合溶媒は、上述の単量体と反応せず、重合体(A)を溶解する溶媒であれば特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
なお、重合体(A)が溶液重合法により製造された場合、得られる重合体溶液をそのままポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよく、重合体溶液から重合体(A)を分離してポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよい。
【0064】
重合体(A)の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常は30000〜150000、好ましくは50000〜100000である。重合体(A)のMwが前記範囲にあると、感放射線性樹脂膜の露光後のアルカリ溶解性が良好となり、微細なレジストパターンの形成が容易となる。また、レジストパターンの強度およびメッキ耐性が優れる。重合体(A)の分子量は、上述の単量体やラジカル重合開始剤の種類、必要に応じて用いられる分子量調節剤、重合温度などの重合条件を適切に選択することにより調節することができる。
【0065】
<酸発生剤(B)>
本発明で用いられる酸発生剤(B)は、露光により酸を発生する化合物である。この発生する酸の作用により、重合体(A)が有する酸解離性官能基が解離して、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基などの酸性官能基が生じる。その結果、ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された感放射線性樹脂膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、ポジ型のレジストパターンを形成することができる。
【0066】
酸発生剤(B)としては、例えば、オニウム塩化合物(チオフェニウム塩化合物を含む)、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。
【0067】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムピレンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートが好ましい。
【0068】
上記ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。具体的には、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタンや、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどの(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体が好ましい。
【0069】
上記ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物が挙げられる。具体的には、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化物、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル化物が好ましい。
【0070】
上記スルホン化物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物が挙げられる。具体的には、4−トリルフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタンが好ましい。
【0071】
上記スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートが挙げられる。具体的には、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジル−p−トルエンスルホネートが好ましい。
【0072】
上記スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファ−スルホニルオキシ)ナフチルイミドが挙げられる。
【0073】
上記ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル−1,1−ジメチルエチルスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。
【0074】
酸発生剤(B)の中では、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムピレンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートがより好ましく、特に、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートが好ましい。また、酸発生剤(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明に係るポジ型感放射線性組成物において、酸発生剤(B)の含有量は、レジストパターンとしての感度、解像性、パターン形状などを確保する観点から、重合体(A)100重量部に対して、通常は0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。酸発生剤(B)の含有量が前記範囲にあることにより、感度、解像性および放射線に対する透明性に優れ、かつ形状に優れたレジストパターンが得られる。
【0076】
<有機溶媒類(C)>
本発明で用いられる有機溶媒類(C)は、20℃、1気圧での飽和蒸気圧(以下、単に「飽和蒸気圧」ともいう)が特定の範囲にあるエチレングリコール系有機溶媒を含む。なお、本発明においてエチレングリコール系有機溶媒とは、下記式(5)で表される構造単位を有する有機溶媒を指す。
【0077】
【化7】

上記式(5)で表される構造単位を有する有機溶媒を用いることにより、重合体(A)や酸発生剤(B)などの上記各成分を良好に溶解させることができ、また、スピンコート法にて形成される感放射線性樹脂膜の膜厚の幅を、充分大きくすることが可能となる。
【0078】
上記エチレングリコール系有機溶媒の飽和蒸気圧は、3.0mmHg以下、好ましくは1.0mmHg以下、より好ましくは0.01〜1.0mmHgである。
上記エチレングリコール系有機溶媒の飽和蒸気圧が上記範囲にあると、スピンコート法にて形成される感放射線性樹脂膜の膜厚の幅を、充分大きくすることが可能となる。また、薄膜の感放射性樹脂膜を形成するには、基板の回転時間や基板の回転速度を大きくする必要があるが、上記エチレングリコール系有機溶媒の飽和蒸気圧が上記範囲であれば、これらの条件を調節することにより、所望の膜厚の樹脂膜を得ることができる。
【0079】
上記エチレングリコール系有機溶媒の飽和蒸気圧が上記範囲を超えると、スピンコート法にて形成される感放射線性樹脂膜の膜厚の幅を、充分大きくできないことがある。また、基板の回転時間がある一定の時間を超えると、それ以上当該作業を実施したとしても、樹脂膜を薄膜化することが困難となることがある。
【0080】
上記エチレングリコール系有機溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が挙げられる。これらの中では、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類およびジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましく、これらは1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0081】
上記ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(飽和蒸気圧:0.23mmHg)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(飽和蒸気圧:0.13mmHg)が挙げられる。これらのジエチレングリコールモノアルキルエーテル類は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記ジエチレングリコールジアルキルエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(飽和蒸気圧:3.0mmHg)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(飽和蒸気圧:0.94mmHg)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(飽和蒸気圧:0.38mmHg)が挙げられる。これらのジエチレングリコールジアルキルエーテル類は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(飽和蒸気圧:0.05mmHg)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(飽和蒸気圧:0.01mmHg)が挙げられる。これらのジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(飽和蒸気圧:1.09mmHg)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(飽和蒸気圧:0.3mmHg)が挙げられる。これらのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
また、上記エチレングリコール系有機溶媒の沸点は、1気圧において、好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは170〜230℃である。上記エチレングリコール系有機溶媒の沸点が前記範囲にあると、スピンコート法にて感放射線性樹脂膜を形成する際、面内均一性およびスピンコート可能な膜厚の範囲が広くなる点で優れている。
【0086】
本発明において、上記各成分の溶解性を向上させる目的で、有機溶媒類(C)として、上記エチレングリコール系有機溶媒とともにその他の有機溶媒を用いてもよい。
上記その他の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートが挙げられる。
【0087】
本発明における上記エチレングリコール系有機溶媒の使用量は、有機溶媒類(C)100重量%に対して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。有機溶媒類(C)として上記エチレングリコール系有機溶媒を前記範囲で用いることにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することがより容易となる。
【0088】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、有機溶媒類(C)の含有量は、該樹脂組成物の用途などにより適宜選択することが可能である。例えば、バンプなどのメッキ造形物を製造するために、膜厚5〜100μmの感放射線性樹脂膜を形成する場合には、重合体(A)100重量部に対して、通常は50重量部以上、好ましくは60〜300重量部、より好ましくは80〜200重量部である。
【0089】
<他のアルカリ可溶性樹脂(D)>
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、重合体(A)以外のアルカリ可溶性樹脂(D)(以下、「他のアルカリ可溶性樹脂(D)」ともいう)を配合してもよい。
【0090】
他のアルカリ可溶性樹脂(D)は、アルカリ現像液に対して親和性を示す官能基、例えば、フェノール性水酸基やカルボキシル基などの酸性官能基を1種以上有し、アルカリ現像液に可溶な樹脂である。このようなアルカリ可溶性樹脂を配合することにより、感放射線性樹脂膜のアルカリ現像液に対する溶解速度を制御することがより容易となるので、該樹脂膜の現像性をさらに向上することができる。
【0091】
他のアルカリ可溶性樹脂(D)としては、アルカリ現像液に可溶な樹脂である限り特に限定されず、例えば、酸性官能基を有する単量体を少なくとも1種用いて重合して得られる付加重合系樹脂(但し、重合体(A)を除く)、ノボラック樹脂に代表される酸性官能基を有する重縮合系樹脂が挙げられる。
【0092】
≪付加重合系樹脂≫
上記付加重合系樹脂は、上記酸性官能基を有する単量体の重合性不飽和結合が開裂した繰返し単位のみから構成されていてもよく、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限り、他の単量体(該酸性官能基を有する単量体以外の単量体をいう)の重合性不飽和結合が開裂した繰返し単位をさらに有してもよい。
【0093】
上記酸性官能基を有する単量体としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する単量体;p−ビニル安息香酸、p−カルボキシメチルスチレン、p−カルボキシメトキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸などのカルボキシル基を有する単量体が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
上記他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、無水マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルアニリン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
上記付加重合系樹脂としては、感放射線性樹脂膜を形成したときの放射線の透過性が高く、またドライエッチング耐性にも優れるという観点から、特に、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)およびp−イソプロペニルフェノールの共重合体が好ましい。
上記付加重合系樹脂の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常は1000〜200000、好ましくは5000〜70000である。
【0096】
≪重縮合系樹脂≫
上記重縮合系樹脂は、酸性官能基を有する縮合系繰返し単位のみから構成されていてもよく、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限り、他の縮合系繰返し単位をさらに有してもよい。
【0097】
このような重縮合系樹脂は、例えば、1種以上のフェノール類と1種以上のアルデヒド類とを、必要に応じて他の縮合系繰返し単位を形成しうる重縮合成分とともに、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、水媒質中または水と親水性溶媒との混合媒質中で(共)重縮合することによって製造することができる。
【0098】
上記フェノール類としては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノールが挙げられる。また、上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドが挙げられる。
【0099】
上記重縮合系樹脂の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常は1000〜100000、好ましくは2000〜50000である。
以上の他のアルカリ可溶性樹脂(D)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、他のアルカリ可溶性樹脂(D)の含有量は、重合体(A)100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、より好ましくは1〜200重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。
【0100】
<酸拡散制御剤>
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、酸発生剤(B)から発生する酸の感放射線性樹脂膜中における拡散を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制するために、酸拡散制御剤を配合することが好ましい。このような酸拡散制御剤を使用することにより、前記樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。また、レジストパターンとしての解像度がさらに向上するとともに、露光からPEBまでの引き置き時間の変動による該パターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れる。
【0101】
上記酸拡散制御剤としては、メッキ造形物の製造工程における露光や加熱により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。前記含窒素有機化合物としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。これらの中では、特に2,4,6−トリ(2−ピリジル)−s−トリアジンが好ましい。また、上記酸拡散制御剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、上記酸拡散制御剤の含有量は、重合体(A)100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。酸拡散制御剤の含有量が前記範囲内にあることにより、感度、現像性、パターン形状および寸法忠実度に優れたレジストパターンが得られる。
【0103】
<界面活性剤>
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、塗布性、現像性などを改良するために界面活性剤を配合してもよい。前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートが挙げられる。これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
また、界面活性剤として市販されている界面活性剤をそのまま用いることができる。市販されている界面活性剤の具体例としては、例えば、NBX−15、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D,FTX−218、FTX−220D、FTX−222D(以上、(株)ネオス製)、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)が挙げられる。これらの中ではNBX−15、FTX−216D、FTX−218、FTX−220Dが好ましい。
【0105】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、上記界面活性剤の含有量は、重合体(A)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下、より好ましくは0.001〜1重量部である。
【0106】
<他の添加剤>
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物に配合可能な他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、増感剤、分散剤、可塑剤、保存安定性を高めるための熱重合禁止剤、酸化防止剤が挙げられる。
【0107】
これらの中でも紫外線吸収剤は、露光時の散乱光が未露光部へ回り込むことによる光反応を阻止する作用があることから有用である。前記紫外線吸収剤としては、露光に使用される紫外線の波長域で、高い吸光係数を有する化合物が好ましい。また、有機顔料も同様の目的に使用することができる。
また、良好な形状のパターンを形成したり、塗膜のクラック発生を低減させるために、末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂や末端変性ポリエーテル樹脂を配合してもよい。
【0108】
≪末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂≫
上記末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂としては、下記式(6)で表される重合体またはオリゴマーが挙げられる。
【0109】
【化8】

式(6)中、R9およびR10は、それぞれ独立に水酸基またはカルボキシル基であり、好ましくはともに水酸基である。R11は炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基およびエチル基であり、特に好ましくはエチル基である。
【0110】
上記末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂は、重合度により室温で流動性を有するものから柔軟な樹脂状のものがあり、適宜選択して使用される。したがって、式(6)中のnは特に限定されないが、通常は1以上、好ましくは1〜100、より好ましくは10〜50の整数である。
【0111】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物に、上記末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂を配合することにより、良好な形状のパターンを形成することができるとともに、塗膜のクラック発生を低減させることができる。また、上記のように両末端が変性されている、末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂を用いることにより、末端が変性されていないビニルアルキルエーテル樹脂を用いた場合と比較して、他の樹脂成分との相溶性が向上するとともに、現像液に対する溶解性が改善され、解像性が著しく向上する。
【0112】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、上記末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂の含有量は、重合体(A)100重量部に対して、好ましくは2〜80重量部、より好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは5〜30重量部である。末端変性ビニルアルキルエーテル樹脂の含有量が前記範囲を超えると、現像の際、露光部と未露光部とのコントラストがとれず、パターン形状が悪化することがある。
【0113】
≪末端変性ポリエーテル樹脂≫
上記末端変性ポリエーテル樹脂としては、例えば、下記式(7a)、下記式(7b)で表される重合体またはオリゴマーが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
【化9】

上記末端変性ポリエーテル樹脂は、重合度により室温で流動性を有するものから結晶のものがあり、適宜選択して使用される。したがって、上記式(7a)および(7b)中のnは特に限定されないが、通常は1以上、好ましくは1〜30、より好ましくは10〜20の整数である。
【0115】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物に、上記末端変性ポリエーテル樹脂を配合することにより、良好な形状のパターンを形成することができるとともに、塗膜のクラック発生を低減させることができる。また、上記のように両末端が変性されている、末端変性ポリエーテル樹脂を用いることにより、末端が変性されていないポリエーテル樹脂を用いた場合と比較して、現像液に対する溶解性をある程度抑制することで、解像性を維持することができる。
【0116】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物において、上記末端変性ポリエーテル樹脂の含有量は、重合体(A)100重量部に対して、好ましくは2〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは5〜20重量部である。末端変性ポリエーテル樹脂の含有量が前記範囲を超えると、現像の際、露光部と未露光部とのコントラストがとれず、パターン形状が悪化することがある。
【0117】
<ポジ型感放射線性樹脂組成物の用途>
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物を用いることにより、同一の樹脂組成物を用いても、スピンコート法の実施条件(例えば、基板の回転速度、基板の回転時間など)を変更することにより、膜厚が大きく異なる感放射線性樹脂膜を形成できる。
【0118】
これにより、上記ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成されるレジストパターンを鋳型として用いることにより、種々の高さを有するバンプや配線などのメッキ造形物を精度よく製造することができる。
【0119】
〔メッキ造形物〕
メッキ造形物は、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンを鋳型として、電解メッキなどを用いて製造される。
【0120】
上記メッキ造形物は、例えば、(1)上述のポジ型感放射線性樹脂組成物からなる感放射線性樹脂膜を、バリアメタル層を有するウエハ上に形成する樹脂膜形成工程、(2)該樹脂膜を露光・現像してレジストパターンを形成する露光・現像工程、(3)該レジストパターンを鋳型として、電解メッキにより電極材料を析出させるメッキ工程、および(4)該レジストパターンを剥離した後、バリアメタルをエッチングにより除去する剥離工程を実施することにより製造することができる。
【0121】
−(1)樹脂膜形成工程−
樹脂膜形成工程でウエハ上に形成される感放射線性樹脂膜は、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物を、スピンコート法によりウエハ上に塗布して乾燥することにより得ることができる。
【0122】
−(2)露光・現像工程−
露光した感放射線性樹脂膜を現像するために用いるアルカリ性の現像液は、1種または2種以上のアルカリ性化合物を水などに溶解させることにより得られる溶液である。なお、アルカリ性の現像液による現像処理がなされた後、通常は水洗処理が施される。
【0123】
−(3)メッキ工程−
上記ウエハを電解メッキ用の各種メッキ液に浸漬し、所望のメッキ厚となるように電流値および通電時間を設定してメッキ処理を行う。
【0124】
−(4)剥離工程−
剥離工程において、メッキ処理したウエハからレジストパターンを剥離するには、例えば、50〜80℃にて攪拌中の剥離液に該ウエハを1〜30分間浸漬すればよい。剥離処理後、ドライエッチングやウェットエッチングによりバリアメタルを除去することによりメッキ造形物を得ることができる。
【0125】
上記剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどの水溶液、4級アンモニウム塩とジメチルスルホキシドと水との混合溶液が挙げられる。
上記のように、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物は、厚さが大きく異なる感放射線性樹脂膜を形成することができるため、様々な厚さのメッキ造形物を製造することができる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は重量部を意味する。
【0127】
〔合成例1:重合体A1の合成〕
窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(5.0g)、および重合溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(120g)を仕込み、該重合開始剤が溶解するまで攪拌した。
【0128】
この溶液に、単量体(1a)として2−ベンジル−2−プロピルアクリレート(20g)、単量体(2a)としてp−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド(10g)、単量体(II)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(20g)、イソボルニルアクリレート(20g)、およびp−イソプロペニルフェノール(30g)を仕込み、ゆるやかに攪拌を開始し、80℃まで昇温した。その後、80℃で6時間重合を行った。
【0129】
重合反応終了後、反応生成物を多量のシクロヘキサン中に滴下して凝固させた。この凝固物を水洗し、該凝固物を凝固物と同重量のテトラヒドロフランに再溶解した後、得られた溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して再度凝固させた。この再溶解および凝固作業を計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥し、目的とする重合体A1を得た。
【0130】
〔合成例2〜5:重合体A2〜A5の合成〕
合成例1において、下記表1に示した組成に従い単量体の量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、重合体A2〜A5を合成した。
【0131】
【表1】

[実施例1]
<感放射線性樹脂組成物の調製>
重合体(A)として重合体A1(80g)、酸発生剤(B)として4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート(5g)、有機溶媒類(C)としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(120g)、他のアルカリ可溶性樹脂(D)として4,4'−{1−[4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル]エチリデン}ビスフェノール(20g)、界面活性剤としてNBX−15((株)ネオス製)(0.2g)を混合し、攪拌により均一な溶液とした。この溶液を、孔径10μmのカプセルフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(1)を得た。
【0132】
<感放射線性樹脂膜の形成>
上記で得られた感放射線性樹脂組成物(1)を、スピンコーターを用いて、下記表2に記載の条件でプレ回転およびメイン回転を実施して直径4インチのシリコンウエハ基板上に塗布した。次いで、前記基板をホットプレート上で130℃、5分間加熱して、該基板上に感放射線性樹脂膜を形成した(以下、「塗布基板」ともいう)。
【0133】
<膜厚評価>
上記塗布基板について、光学式膜厚測定器を用いて上記感放射線性樹脂膜の膜厚を測定し、回転速度および回転時間による膜厚変動を調べた。
【0134】
<塗布特性評価>
上記塗布基板について、塗布特性(面内均一性)を評価した。この際、上記感放射線性樹脂膜にストリエーション、はじきなどの異常がない場合を「○」、それ以外を「×」とした。
【0135】
[実施例2〜3および比較例1〜2]
実施例1において、表3に記載の組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(2)〜(5)を調製した。次いで、実施例1と同様にしてシリコンウエハ基板上に感放射線性樹脂膜を形成し、該樹脂膜の膜厚および塗布特性を評価した。膜厚評価結果および塗布特性評価結果を表4に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

表4に示すように、実施例1〜3ではスピンコート法の実施条件を変更することにより、同一の樹脂組成物を用いて膜厚が大きく異なる樹脂膜が得られた。一方、比較例1〜2ではスピンコート法の実施条件を変更しても、同一の樹脂組成物を用いて膜厚が大きく異なる樹脂膜は得られなかった。
【0139】
具体的には、回転速度の差が1000rpm、回転時間の差が90秒の条件では、実施例の結果によれば膜厚10〜30μm程度の樹脂膜を同一の樹脂組成物を用いて形成することが可能であるが、比較例の結果によれば膜厚17〜33μm程度の樹脂膜しか得られていない。
【0140】
上記の差は、樹脂組成物の種類を変更することなくスピンコート法の実施条件を変更することにより、種々の膜厚を有する樹脂膜を形成可能であることを示し、特にμm単位の精度が要求される、種々の高さを有するバンプや配線などのメッキ造形物の製造において、本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物が好適に用いられることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する構造単位を有する重合体、
(B)感放射線性酸発生剤、および
(C)20℃、1気圧での飽和蒸気圧が3.0mmHg以下のエチレングリコール系有機溶媒を含む有機溶媒類
を含有することを特徴とするポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレングリコール系有機溶媒が、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類およびジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感放射線樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレングリコール系有機溶媒の20℃、1気圧での飽和蒸気圧が、1.0mmHg以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体(A)が、下記式(2)で表される構造単位、下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位をさらに有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【化1】

[式(2)、(3)および(4)中、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は−(CH2j−(jは1〜3の整数)または単結合であり、R7は炭素数1〜4のアルキル基であり、R8は−(CH2CH2O)k−または−(CH2CH2CH2O)k−(kは1〜4の整数)であり、mは1〜4の整数である。]
【請求項5】
前記酸解離性官能基を有する構造単位が、下記式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。
【化2】

[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2〜R4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、またはこれらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R2〜R4の何れか2つがアルキル基または置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基または置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。]

【公開番号】特開2013−54376(P2013−54376A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241707(P2012−241707)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2008−178853(P2008−178853)の分割
【原出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】