説明

ポストフォーム加工適性を付与したパール調の化粧紙及び熱硬化性樹脂化粧板

パール調意匠としても、ポストフォーム加工でブリスターやクラックが発生しない様なポストフォーム加工適性を付与した、パール調の化粧紙と熱硬化性樹脂化粧板とする。 パール調化粧紙10は、紙基材1上に、パール顔料を含有するパールインキ層3を有するパール調化粧紙について、パール顔料として、雲母の鱗状箔片が二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆され更にその表面を酸化ジルコニウム水和物で処理されたパール顔料を用いる。間に通常のインキによる絵柄インキ層2設ければ更に高意匠となる。そして、このパール調化粧紙にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸し、裏打ち基材4やオーバーレイ紙5等の被着体6と積層し熱圧成形して、樹脂を硬化させれば、樹脂硬化したパール調化粧紙10Aを含むパール調熱硬化性樹脂化粧板20となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、机、食卓、カンウター等の天板、或いは、家具、壁、床等の建築物内装材等、各種建材用途に用い得る、ポストフォーム加工適性を付与したパール調の化粧紙と熱硬化性樹脂化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン化粧板に代表される熱硬化性樹脂化粧板は、紙基材に絵柄を印刷した化粧紙に、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸し、これを、裏打基材やオーバーレイ紙等の被着体と共に、熱圧を加えて樹脂硬化させると共に積層一体化して製造されるのが一般的である。そして、前記化粧板乃至は化粧紙の意匠表現の一つに、パール調の意匠がある。この様なパール調を有する化粧紙乃至は熱硬化性樹脂化粧板は、化粧紙の絵柄印刷に、雲母等のパール顔料を添加したパールインキを用いることが知られている(特許文献1、特許文献2、等参照)。
【0003】
また、熱硬化性樹脂化粧板は、更に、加熱して曲げ加工するポストフォーム加工によって、木質板等の別の基材に対してその天面から小口面まで連続して貼り付けて、ポストフォーム加工製品を得ることができる。この様な製品も、やはり熱硬化性樹脂化粧板であるが、なかでも特に、メラミン化粧板のポストフォーム加工製品は代表的である。但し、ポストフォーム加工の際は、加熱が弱いとクラックが発生したり、一方、加熱が強いとブリスターが出来たりすることがある。そこで、ブリスター及びクラックが共に発生しない様に、紙基材の内容を工夫してポストフォーム加工適性を改善した化粧紙等も提案されている(特許文献3参照)
【0004】
しかしながら、ポストフォーム加工製品について、意匠をパール調にしようとすると、ポストフォーム加工の際に、通常の意匠の場合に比べてブリスターが出易く、特許文献3記載の如く、紙基材を工夫してもブリスター発生に改善が見られ無かった。また、このブリスター発生を抑制する為に該加工時の加熱を低めにすると、今度はクラックが出易いという問題が生じた。この様に、パール調意匠の場合は、ポストフォーム加工適性が劣る為に、製品化しずらいという問題があった。
【特許文献1】実公昭52−55514号公報
【特許文献2】特開昭53−56268号公報
【特許文献3】特開平6−136682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明の課題は、パール調意匠でも、ポストフォーム加工でブリスターやクラックが発生しない様なポストフォーム加工適性を付与した、パール調の化粧紙と熱硬化性樹脂化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明のポストフォーム加工適性を付与したパール調化粧紙は、紙基材上に、パール顔料を含有するパールインキ層を有するパール調化粧紙において、パール顔料として、雲母の鱗状箔片が二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆され更にその表面を酸化ジルコニウム水和物で処理されたパール顔料を含有する構成とした。
【0007】
この様な構成とすることで、意匠をパール調としても、パール顔料のバインダー樹脂との密着性が向上する為か、この化粧紙を用いて作製した熱硬化性樹脂化粧板を加熱して曲げるポストフォーム加工の際に、その熱や応力によってブリスターやクラックが発生し難くなる様なポストフォーム加工適性が得られる。
【0008】
また、本発明のポストフォーム加工適性を付与したパール調熱硬化性樹脂化粧板は、上記パール調化粧紙に熱硬化性樹脂を含浸、硬化させて成る層を含む構成とした。
【0009】
この様な構成とすることで、本パール調熱硬化性樹脂化粧板を製造する際に、上記パール調化粧紙で述べた効果を奏する。つまり、意匠をパール調としても、パール顔料のバインダー樹脂との密着性が向上する為か、ポストフォーム加工に起因するブリスターやクラックを回避した化粧板にできる。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明のパール調化粧紙によれば、意匠がパール調であるにもかかわらず、該化粧紙を用いて作製したパール調熱硬化性樹脂化粧板を、ポストフォーム加工する時にブリスターやクラックの発生を抑えられる様なポストフォーム加工適性が得られる。
(2)また、本発明のパール調熱硬化性樹脂化粧板によれば、ポストフォーム加工に起因するブリスター発生やクラック発生による品質低下を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
§1.概要:
先ず、図1は、本発明の、ポストフォーム加工適性を付与した、パール調化粧紙10〔図1(A)〕及びパール調熱硬化性樹脂化粧板20〔図1(B)〕について、各一形態を例示する断面図である。
【0013】
図1(A)に例示のパール調化粧紙10は、紙基材1上に、(パール顔料は含まない通常のインキによる)絵柄インキ層2、パール顔料として雲母の鱗状箔片が二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆され更にその表面を酸化ジルコニウム水和物で処理された特定のパール顔料を含むパールインキ層3が、この順に印刷等で形成された構成の化粧紙である。なお、パールインキ層3下の絵柄インキ層2は意匠次第では省略できるが、通常はより高意匠とする為に設ける。
【0014】
この様なパール調化粧紙10は、熱硬化性樹脂化粧板、代表的にはメラミン化粧板に好適には使用され、更に、ポストフォーム加工用途に好適には使用できる。そして、例えば、図1(B)の様なパール調熱硬化性樹脂化粧板20が得られる。
【0015】
すなわち、図1(B)の断面図としてその一形態を例示するパール調熱硬化性樹脂化粧板20は、裏打ち基材4とオーバーレイ紙5からなる被着体6に、表裏を挟まれる様に、上記の如きパール調化粧紙10に熱硬化性樹脂を含浸硬化したパール調化粧紙10Aが、その裏側には裏打ち基材4が表側にはオーバーレイ紙5が被着体6として積層一体化した構成の化粧板である。裏打ち基材4は代表的にはコア紙である。
【0016】
そして、上記の様な構成のパール調化粧紙及びパール調熱硬化性樹脂化粧板とすることで、意匠にパール調を含んでいても、ポストフォーム加工時のブリスター発生やクラック発生が改善する様な、ポストフォーム加工適性が付与される。
【0017】
§2.パール調化粧紙:
次に、本発明の、ポストフォーム加工適性を付与したパール調化粧紙について説明する。本発明の該パール調化粧紙は、紙基材上のパールインキ層のパール顔料に特定のパール顔料を用いる事で、ブリスター及びクラック発生が改善するポストフォーム加工適性を付与した点に特徴を有するものであり、その他の構成については、所謂熱硬化性樹脂化粧板に使用される従来公知の各種化粧紙の構成を用途に応じて適宜採用すれば良い。
【0018】
〔紙基材〕
例えば、紙基材1としては、代表的にはチタン顔料を含有させたチタン紙が用いられるが、この他の紙も用いられる。例えば、クラフト紙、上質紙、和紙等の紙である。また、紙基材の繊維は、通常はセルロース繊維であるが、この他、樹脂繊維或いはガラス繊維等も併用した混抄紙等でも良い。また、これらの紙に樹脂を含浸させた樹脂含浸紙等でも良い。また、紙基材の坪量は、50〜120g/m程度である。
【0019】
〔絵柄インキ層〕
また、絵柄インキ層2は、公知のインキを用いてグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷等の公知の形成方法・材料で形成したもので良い。なお、本発明に於ける絵柄インキ層2は、パールインキ層3の様にパール顔料を実質的に含まない層であり、通常のインキにより絵柄を表現した層である。なお、絵柄インキ層2のインキのバインダーの樹脂としては、カゼイン樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂等、公知の樹脂を、また、着色剤としては、弁柄、黄鉛、フタロシアニンブルー等、公知の着色剤を、用途に応じて適宜使用すれば良い。
【0020】
〔パールインキ層〕
パールインキ層3は、着色剤として少なくともパール顔料を含有し、しかもそのパール顔料として本発明固有のパール顔料を用いる他は、上記絵柄インキ層同様に、グラビア印刷等の従来公知の形成方法・材料で形成することができる。また、このパールインキ層には、従来公知の着色剤も含有させても良い。なお、パールインキ層及び前記絵柄インキ層の絵柄は、全面ベタも含めて、任意であり用途に応じたものとすれば良い。また、パールインキ層のインキのバインダーの樹脂としては、カゼイン樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂等、公知の樹脂を、用途に応じて適宜使用すれば良い。
【0021】
そして、本発明では、このパールインキ層のパール顔料として、従来から一般的である、雲母の鱗状箔片がただ単に二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆されたパール顔料は用いずに、該二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆したその表面を、更に酸化ジルコニウム水和物で処理したパール顔料を用いる。酸化ジルコニウム水和物で更に表面を処理したパール顔料を用いることで、おそらく、バインダーの樹脂との親和性が向上して該樹脂との密着性が向上すると考えられる。この為、熱や応力が加わったときに、パール顔料とバインダー樹脂との剥離を抑え、ポストフォーム加工時にブリスターが発生し難くなると思われる。また、ブリスターを回避する為に無理に加工温度を下げてクラック発生を招くこともなくなる。
【0022】
ここで、図2は、ポストフォーム加工時(或いは加工後のポストフォーム加工製品としてのパール調熱硬化性樹脂化粧板)の、クラックcとブリスターbの発生を状況を概念的に説明する断面図である。図2(A1)は、ポストフォーム加工でパール調熱硬化性樹脂化粧板20が、被着体6として角が丸みを持った基材7に、曲げて貼り付けられた時に、該化粧板20が曲げられた部分にクラックcが発生する状況を示す断面図である。また、図2(A2)は、ポストフォーム加工でパール調熱硬化性樹脂化粧板が加熱されたときに、パールインキ層のバインダー樹脂r中に分散保持されているパール顔料pによって、ブリスターbが発生する状況を示す。一方、図2(B1)はクラックが発生しなかった場合の断面図を示し、図2(B2)はブリスターが発生しなかった場合を示す。
【0023】
なお、酸化ジルコニウム水和物は水酸化ジルコニウムとも呼ばれる。ところで、この様な本発明で使用する特定のパール顔料は、例えば、メルク社の製品(「イリオジン」(登録商標)WIIグレードもしくはW−NTグレード)として入手できる。また、本発明で用いるパール顔料は、その酸化ジルコニウム水和物で処理された表面を、インキの分散安定性等の物性向上等の為に、更に有機シランカップリング剤等の公知の表面処理剤で被覆しても良い。
【0024】
なお、パール顔料の大きさは、意匠により適宜調整すれば良いが、通常、粒径(外接球半径或いは対角線長)の範囲が1〜100μm程度、なかでも5〜40μm程度である。また、パール顔料の添加量も意匠により適宜調整すれば良いが、通常、樹脂分に対して10〜200質量%程度である。
【0025】
〔その他の層〕
なお、本発明のパール調化粧紙は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記以外の層を適宜有しても良い。例えば、紙基材とパールインキ層、或いは紙基材と絵柄インキ層間に設ける、プライマー層やシーラー層等である。
【0026】
§3.パール調熱硬化性樹脂化粧板:
次に、本発明のポストフォーム加工適性を付与したパール調熱硬化性樹脂化粧板について説明する。本発明のパール調熱硬化性樹脂化粧板は、その化粧紙として、上記の如きパール調化粧紙を用いた構成に特徴を有するものであり、その他の構成については、所謂熱硬化性樹脂化粧板に於ける各種構成を用途に応じて適宜採用すれば良い。例えば、被着体6としては、図1(B)の熱硬化性樹脂化粧板20で例示した様に、裏打ち基材やオーバーレイ紙等が一般的である。
【0027】
〔パール調化粧紙〕
パール調熱硬化性樹脂化粧板に於けるパール調化粧紙10Aは、図1(B)の如く熱硬化性樹脂が含浸、硬化した層となっている。含浸する熱硬化性樹脂としては、用途に応じた公知の樹脂とすれば良い。例えば、代表的にはメラミン樹脂があり、この他、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂等が挙げられる。
【0028】
〔被着体:裏打ち基材〕
被着体6である裏打ち基材4は、化粧紙の裏側に積層し接着一体化して、所望の形状、厚み、力学的強度、更にポストフォーム加工用途ではそのポストフォーム加工適性等を熱硬化性樹脂化粧板に付与する為の基材である。この様な裏打ち基材4としては、ポストフォーム加工用途では、該ポストフォーム加工前の形態の熱硬化性樹脂化粧板では、そのポストフォーム加工適性等からコア紙等が一般的である。また、ポストフォーム加工後等の形態の熱硬化性樹脂化粧板では、コア紙等が積層された裏側に更に、木質板等の別の基材が裏打ち基材として更に積層された構成となる。なお、コア紙は、未硬化の熱硬化性樹脂(代表的にはフェノール樹脂、この他前記化粧紙への含浸樹脂等)を含浸した紙である。
【0029】
つまり、本発明のポストフォーム加工適性を付与したパール調熱硬化性樹脂化粧板としては、当然ながらポストフォーム加工用途が好適であるが、その場合に於いて、該加工前の化粧板の他に、該加工後の化粧板の両方のパール調熱硬化性樹脂化粧板を含む。
【0030】
〔被着体:別の基材〕
そこで、ポストフォーム加工の際に、パール調熱硬化性樹脂化粧板を該加工後に貼り付ける(或いはポストフォーム加工しない場合に使用し得る)別の基材としての裏打ち基材としては、該化粧板を曲げ加工するポストフォーム加工適性は考慮する必要がないので、例えば、木質基材、無機質基材、金属基材等を使用することができる。木質基材としては、例えば、単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等があり、金属基材としては、例えば、鉄、アルミニウム等の金属板等がある。なお、これら基材には、通常接着剤を介して積層する。
【0031】
〔被着体:オーバーレイ紙〕
オーバーレイ紙5としては、熱硬化性樹脂化粧板に用いられてきた従来公知の一般的なものを使用でき、代表的には、透明性を備えた紙にメラミン樹脂を含浸したメラミン樹脂含浸紙を用いることができる。オーバーレイ紙5の含浸樹脂としては、前記パール調化粧紙への含浸樹脂等が挙げられる。
【0032】
〔熱圧成形〕
なお、パール調熱硬化性樹脂化粧板の製造は、従来公知の方法で良いが、例えば、上記パール調化粧紙にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂液を含浸させて含浸化粧紙とした後、この含浸化粧紙を、コア紙、オーバーレイ紙等の他の被着体と共に積層して熱圧を加えて含浸樹脂を硬化させる熱圧成形によって製造される。熱圧成形は、メラミン化粧板等の各種熱硬化性樹脂化粧板に於ける熱圧成形法を適宜採用すれば良い。裏打ち基材やオーバーレイ紙等の樹脂含浸され(未硬化の)被着体を用いる場合は、この熱圧成形の時に通常同時に硬化される。
【0033】
〔用途〕
熱硬化性樹脂化粧板の用途(或いはひいては化粧紙の用途)は、特に限定されるものではないが、例えば、机、食卓、カンウター等の天板や側面板、扉等の建具や家具、或いは、壁、床等の建築物内装材、自動車、電車、船舶等の各種乗物の内装材、或いは、テレビ等の電化製品キャビネット、等である。
【0034】
なお、本発明のパール調化粧紙及びパール調熱硬化性樹脂化粧板は、ポストフォーム加工用途が好適ではあるが、必ずしも本用途に限定されず、それ以外の用途に使用しても良い。
【実施例1】
【0035】
図1(A)及び(B)の断面図の如き、ポストフォーム加工適性を付与した、パール調の化粧紙10及び熱硬化性樹脂化粧板20を作製した。先ず、紙基材1として酸化チタンを25質量%含有する坪量80g/mのチタン紙に、グラビア輪転印刷機によって、絵柄インキ層2と、下記パール顔料を用いたパールインキ層3を順次形成して、所望のパール調化粧紙10を作製した。
【0036】
上記絵柄インキ層2は、着色剤にキナクリドンを用いたベタ柄と、着色剤にイソインドリノンを用いたベタ柄の層を2色印刷して形成した。上記パールインキ層3のパール顔料には、雲母の鱗状箔片が二酸化チタンで被覆され更にその表面を酸化ジルコニウム水和物で処理された、メルク社製のパール顔料WIIグレードもしくはW−NTグレード(粒径分布10〜40μm、平均粒径17μm)を用いた。
【0037】
また、上記絵柄インキ層2のインキの樹脂、及び上記パールインキ層3のインキの樹脂としては、両方とも、アクリル樹脂とカゼイン樹脂との1:9質量比の混合樹脂を用いた。そして、パールインキ層のパール顔料の含有量は、インキのバインダー樹脂100質量部に対して150質量部とした。また、各層の厚みは塗工量(乾燥時)で、絵柄インキ層(2色分)4g/m、パールインキ層3g/mとした。
【0038】
そして、パール調熱硬化性樹脂化粧板を作製すべく、裏打ち基材4(被着体6)としてフェノール樹脂を含浸した4枚のコア紙上に、メラミン樹脂液を含浸した上記パール調化粧紙を載置し、更にその上に、メラミン樹脂を含浸(含浸率300%)した透明紙からなるオーバーレイ紙5(被着体6)を載置して、これらを熱プレス成形して、図1(B)の如き、所望のパール調熱硬化性樹脂化粧板20を作製した。なお、パール調化粧紙に対するメラミン樹脂含浸は、含浸率50%とした。含浸率は、〔(含浸後重量−含浸前重量)/含浸後重量〕×100の計算式による値である。また、熱プレス成形の条件は、圧力9〜10MPa(90〜100kgf/cm)で、加熱は室温(25℃)でプレス機に挿入し、加圧後昇温し、145℃で10分間加熱し、加圧のまま室温まで冷却後、圧開放し成形品を取り出した。
【0039】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、パールインキ層に用いたパール顔料を、酸化ジルコニウム水和物の処理を省略した、雲母の鱗状箔片を二酸化チタンで被覆した通常のパール顔料に変更した他は、実施例1と同様にして、パール調化粧紙及び熱硬化性樹脂化粧板を作製した。
【0040】
〔性能評価〕
ポストフォーム加工に対するポストフォーム加工適性の評価は、次の様にして行った。上記、パール調熱硬化性樹脂化粧板を、赤外線ヒータで加熱して加熱昇温させて行き、ブリスター(化粧板の膨れ)の発生が開始するときの該化粧板の温度で評価した。発生開始温度が高い程、加工適性が良好と判断した。その結果、発生開始温度が比較例の化粧板では196℃であったが、これに対してパール顔料のみを変更した実施例の化粧板では204℃と高くなっており、ポストフォーム加工適性の改善効果が確認された。なお、この評価方法は、本実施例と本比較例とでは、インキの樹脂の変更が無い為に、樹脂による曲げ易さは同一であり、従って、評価結果の差は、パール顔料変更による改善効果であると認められる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるポストフォーム加工適性を付与した、パール調化粧紙(A)とパール調熱硬化性樹脂化粧板(B)の各一形態を例示する断面図。
【図2】ポストフォーム加工時に起こり得る、クラック発生とブリスター発生とを概念的に説明する断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 紙基材
2 絵柄インキ層
3 パールインキ層
4 裏打ち基材
5 オーバーレイ紙
6 被着体
7 (別の)基材
10 パール調化粧紙
10A パール調化粧紙(樹脂含浸硬化済)
20 パール調熱硬化性樹脂化粧板
b ブリスター
c クラック
p パール顔料
r バインダー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、パール顔料を含有するパールインキ層を有するパール調化粧紙において、
パール顔料として、雲母の鱗状箔片が二酸化チタン及び、又は酸化鉄で被覆され更にその表面を酸化ジルコニウム水和物で処理されたパール顔料を含有する、ポストフォーム加工適性を付与したパール調化粧紙。
【請求項2】
請求項1記載のパール調化粧紙に熱硬化性樹脂を含浸、硬化させて成る層を含む、ポストフォーム加工適性を付与したパール調熱硬化性樹脂化粧板。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/025862
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513924(P2005−513924)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013249
【国際出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】