説明

ポックスベクターにおける新規の挿入部位

【課題】新規の挿入部位を含む改良ポックスベクターを提供する。
【解決手段】ポックスウイルスゲノム内の挿入部位に挿入された少なくとも1つの外来遺伝子を含み、発現することができる組換えポックスウイルスであり、挿入部位は、ポックスウイルスゲノムの2つの隣接する天然のオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域に位置し、該挿入部位への外来遺伝子の挿入は2つの隣接するオープンリーディングフレームの翻訳に影響しない、組換えポックスウイルス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、新規の挿入部位を使用する改良ポックスベクター、およびワクチンなどの免疫刺激剤としてのその使用に関する。この改良ポックスウイルスは、例えば、非経口免疫のために、ベクター系として、あるいは活性型もしくは不活化型のアジュバントとして、または免疫系の非特異的成分の調節因子として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、組換えポックスウイルス技術の開発が注目されてきている。このようなポックスウイルスをベースとするベクターは、ある特定の範囲の用途に(例えば、免疫応答の発生に(例えば、ワクチン)、新たなワクチンの開発に、所望のタンパク質の送達に、および遺伝子療法に)有用である。これらのベクターの利点として、(i)作製および産生が容易なこと、(ii)ゲノムサイズが大きく、複数遺伝子の挿入が可能なこと、(iii)抗原提示細胞を含む複数の細胞タイプに効率的に遺伝子送達すること、(iv)高レベルのタンパク質を発現すること、(v)免疫系へ最適に抗原提示すること、(vi)細胞性免疫応答および抗体応答を誘発できること、ならびに(vii)このベクターをヒトの痘瘡ワクチンとして用いることで得られた長年の経験が挙げられる。
【0003】
ポックスウイルスは、ウイルス複製能力を弱めて、またはウイルス複製能力を弱めることなく外来DNAを含有および発現するように遺伝子操作することができる。このような外来DNAは、広範囲のタンパク質(例えば、1種類もしくはそれ以上の感染因子からの保護を誘導する抗原、補助刺激分子などの免疫調節タンパク質、または酵素タンパク質))をコードすることができる。例えば、組換えワクシニアウイルスは、ヘルペスウイルス、B型肝炎、狂犬病、インフルエンザ、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、および他のウイルスの免疫用抗原を発現するように操作されており(Kieny et al.,Nature 312:163-6(1984)(非特許文献1);Smith et al.,Nature 302:490-5(1983)(非特許文献2);Smith et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:7155-9(1983)(非特許文献3);Zagury et al.,Nature 326:249-50(1987)(非特許文献4);Cooney et al.,Lancet 337:567-72(1991)(非特許文献5);Graham et al.,J.Infect.Dis.166:244-52(1992)(非特許文献6)、インフルエンザウイルス、デング熱ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、およびヒト免疫不全症ウイルスに対する免疫応答を誘発することが示されている。
【0004】
ポックスウイルスはまた、CEA、PSA、およびMUCなどの腫瘍関連抗原に対する免疫反応を発生させるのに用いられている。
【0005】
ポックスウイルスはまた、治療に用いられる細胞に遺伝物質を送達する遺伝子療法において使用するのに魅力的な候補である。米国特許第5,656,465号(特許文献1)を参照のこと。レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターなどの他の系と比較して、ポックスウイルスのゲノムは大きいので、大きな遺伝子をポックスベースのベクターに挿入することができる。だが、このウイルスは細胞質にとどまる性質があるので、外来DNAは宿主細胞染色体に組み込まれない。
【0006】
歴史的に見て、ポックスウイルスは痘瘡から身を守るためのワクチンとして用いられた。痘瘡ウイルスは痘瘡の発病因子である。痘瘡の時代、全死亡率は約30%であった。ワクシニアウイルスは世界的な痘瘡根絶を可能にした非常に有効な免疫用因子である。自然発生した最後の痘瘡症例は1977年にソマリアで認められた。1980年5月、世界保健総会は、世界から自然痘瘡が消滅したことを証明した。結果として、米国では、種痘は軍関係者および研究所勤務者を除いて行われていない。しかしながら、近年の世界の出来事から、可能性のある生物テロに対する対応として種痘への関心が再び向けられている。
【0007】
ワクシニアウイルスはオルソポックスウイルス属のプロトタイプである。ワクシニアウイルスは二本鎖DNA(デオキシリボ核酸)ウイルスであり、実験条件下で広範囲の宿主域を有するが、実験室外で動物から単離されるのはまれである(Fenner et al.Orthopoxviruses.San Diego,CA:Academic Press,Inc.,1989(非特許文献7);Damaso et ao.,Virology 277:439-49(2000)(非特許文献8))。ヒトおよび動物に対してビルレンスレベルが異なる複数のワクシニアウイルス株が存在する。例えば、テンプルオブヘブン(Temple of Heaven)およびコペンハーゲン(Copenhagen)ワクシニア株の病原性は動物の中で非常に高いが、ワイエス(Wyeth)ワクチン株が得られたNYCBOH株の病原性は比較的低い(Fenner et al.,Smallpox and its eradication.Geneva,Switzerland:World Health Organization,1988(非特許文献9))。ドリバックス(Dryvax)(登録商標)(米国で現在認可されているワクシニア(痘瘡)ワクチン)は、感染性ワクシニアウイルスの凍結乾燥された生ウイルス製剤である(ワイエスラボラトリーズ(Wyeth Laboratories,Inc.),Marietta,Pennsylvania)。しかしながら、ドリバックス(登録商標)は、小児、高齢者、および免疫抑制者において局所または全身のワクシニアウイルス複製による副作用と関連付けられている。
【0008】
NYVAC(米国特許第5,364,773号、特許文献2)および改変ワクシニアアンカラ(modified vaccinia ankara:MVA)などの弱毒オルソポックスに注目が向けられている。MVAは、痘瘡ワクチンとして1950年代に用いられたアンカラワクシニア株CVAから得られた1。1958年、アントン-メイヤー(Anton Mayr)博士の研究室(ミュンヘン大学)において弱毒実験が始められた。この実験は、CVAをニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞で終点希釈(terminal dilution)することを含み、最終的に、継代が500回以上行われた。結果として得られたMVAは、主に鳥類細胞での複製に限定された弱毒化複製欠損性ウイルスである2。MVAゲノムとその親であるCVAとの比較から、合計31,000塩基対の6つの主要なゲノムDNA欠失(欠失I、II、III、IV、V、およびVI)が明らかになった(Meyer et al.,J.Gen.Virol.72:1031-8(1991)(非特許文献10))。MVAは、局所副作用も全身副作用もなく、サル、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、およびゾウを含む非常に多くの動物種に投与されている1,3,4。MVAは、120,000人を超える人間に皮内注射、皮下注射、または筋肉内注射によって安全に接種されている3。MVAはまた、正常な動物および免疫抑制された動物の中で無毒であることも報告されている(Mayr et al.,Zentralb.Bakteriol.167:375-90(1978)(非特許文献11)。従って、これらの弱毒株は、痘瘡ワクチンとしての有用性に加えて、免疫調節および遺伝子療法用のベクターとして使用するのに特に魅力的なポックスウイルスである。
【0009】
ベクターとしてのポックスウイルスの主な利点の1つは、複数遺伝子を含む広範囲の遺伝物質の挿入(すなわち、多価(multivalent)ベクター)を可能にする大きなゲノムサイズである。しかしながら、組換えウイルスが生存するために遺伝物質はポックスゲノムの適切な部位に挿入しなければならない。従って、遺伝物質は、ウイルスDNAの重要でない部位に挿入しなければならない。
【0010】
従って、外来細胞に感染し、外来DNAを発現する能力を保持し、望ましい免疫原性および弱いビルレンスを維持しながらも、外来DNAの挿入に適応するポックスウイルスゲノム内の特定の部位を特定することが望ましい。様々なポックスウイルスにおいて、ある特定の挿入部位が知られている。例えば、前記のように、MVAは6つの天然欠失部位を含み、これらは挿入部位として働くことが証明されている。例えば、米国特許第5,185,146号(特許文献3)および米国特許第6,440,422号(特許文献4)を参照のこと。しかしながら、これらの挿入部位は1種類の特定のワクシニア株MVAにしか見られない。より広範囲に示される(すなわち、他の弱毒株、他のワクシニア株(例えば、CVA、ワイエス、およびMVA以外の他のワクシニア株)、ならびに他のポックスウイルスゲノムに存在する)挿入部位を特定することが望ましいだろう。
【0011】
従って、例えば、非経口免疫のために、ベクター系として、あるいは活性型もしくは不活化型のアジュバントとして、または免疫系の非特異的成分の調節因子として使用するための、新規の挿入部位を含む改良ポックスベクターが当技術分野において依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,656,465号
【特許文献2】米国特許第5,364,773号
【特許文献3】米国特許第5,185,146号
【特許文献4】米国特許第6,440,422号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kieny et al.,Nature 312:163-6(1984)
【非特許文献2】Smith et al.,Nature 302:490-5(1983)
【非特許文献3】Smith et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:7155-9(1983)
【非特許文献4】Zagury et al.,Nature 326:249-50(1987)
【非特許文献5】Cooney et al.,Lancet 337:567-72(1991)
【非特許文献6】Graham et al.,J.Infect.Dis.166:244-52(1992)
【非特許文献7】Fenner et al.Orthopoxviruses.San Diego,CA:Academic Press,Inc.,1989
【非特許文献8】Damaso et ao.,Virology 277:439-49(2000)
【非特許文献9】Fenner et al.,Smallpox and its eradication.Geneva,Switzerland:World Health Organization,1988
【非特許文献10】Meyer et al.,J.Gen.Virol.72:1031-8(1991)
【非特許文献11】Mayr et al.,Zentralb.Bakteriol.167:375-90(1978)
【発明の概要】
【0014】
本発明は、新規の挿入部位を含む改良ポックスベクターを提供する。この改良ポックスベクターは、例えば、非経口免疫のために、ベクター系として、あるいは活性型もしくは不活化型のアジュバントとして、または免疫系の非特異的成分の調節因子として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PANVAC-F組換えベクターの図を示す。PANVAC-Fを作製するために、2つのプラスミドベクターを使用した。第1のプラスミド(pT1154と呼ぶ)は、wCEA(6D)およびwMUC-1(6)コード配列を、鶏痘ウイルスゲノムのFP14領域に挿入する。第2のプラスミド(pT8150と呼ぶ)は、LFA-3、ICAM-1、およびB7.1コード配列(TRICOMと総称される)を、鶏痘ウイルスゲノムのBamHIJ領域に挿入する。wCEA(6D)遺伝子はワクシニア40Kプロモーターの転写制御下にある。wMUC-1(6)遺伝子は合成初期/後期(sE/L)プロモーターの転写制御下にある。LFA-3遺伝子はワクシニア30Kプロモーターの転写制御下にあり、ICAM-1遺伝子はワクシニアI3プロモーターの転写制御下にあり、B7.1遺伝子は合成初期/後期(sE/L)プロモーター転写制御下にある。さらに、pT1154は、組換え子孫のスクリーニングとして含められた大腸菌lacZ遺伝子(ワクシニア40Kプロモーターの制御下にある)を含み、pT8150は、組換え子孫のスクリーニングに用いられるGUS遺伝子(7.5プロモーターの制御下にある)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
今や、本発明者らは、外来核酸を挿入するための新規の挿入部位を含む改良ポックスベクターを発見している。この改良ポックスウイルスは、例えば、非経口免疫のために、ベクター系として、あるいは活性型もしくは不活化型のアジュバントとして、または免疫系の非特異的成分の調節因子として使用することができる。好ましいポックスとして、ワクシニアウイルス、アビポックス(例えば、鶏痘およびカナリア痘)、ならびに豚痘などのオルソポックスウイルスが挙げられる。好ましいワクシニア種の1つが、改変ワクシニアアンカラ(MVA)またはNYVACなどの弱毒ワクシニアである。MVAが好ましい。これらのベクターは実質的に任意の状況で使用することができる。
【0017】
ポックスウイルスは周知の細胞質ウイルスである。従って、このようなウイルスベクターによって発現される遺伝物質は一般的に細胞質にとどまり、特定の手順が取られない限り、宿主細胞遺伝子に不用意に組み込まれる恐れがない。組み込まれず、細胞質にとどまるポックスウイルスの性質の結果として、ポックスウイルスベクター系は他の細胞に長期間とどまらないだろう。従って、このベクターおよび形質転換細胞は、標的細胞から遠く離れた位置にある宿主動物細胞に悪影響を及ぼさないだろう。好ましくは、使用されるポックスは、哺乳動物細胞においてワクシニア(例えば、ワクシニアコペンハーゲン)と比較して弱毒化されている。これは、標的細胞に関連した複製型ポックスまたは複製欠損ポックスの両方を含む。例えば、哺乳動物細胞におけるアビポックス、ヒト細胞におけるスイポックスなど。
【0018】
本発明において有用な組換えポックスウイルスには以下を含む多くの特性がある:(i)APCおよび腫瘍細胞を含む複数の細胞タイプへ効率的に遺伝子送達すること、(ii)高レベルのタンパク質を発現すること、(iii)ゲノムが大きいので、複数遺伝子を含む広範囲の遺伝物質の挿入(すなわち、多価ベクター)が可能であること、(vi)免疫系へ最適に抗原提示すること、(v)細胞性免疫応答および抗体応答を誘発できること、(vi)細胞を恒久的ではなく一過的に遺伝子組換えすること、ならびに(vii)異なる属に由来するポックスウイルスは免疫交差反応しないので、これらの組み合わせを使用できること。
【0019】
本発明の好ましいポックスウイルスの1つはワクシニアウイルスであり、高度に弱毒化されたワクシニアウイルス(例えば、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、NYVAC(ワイエス株の誘導体)、vTBC33(機能的K1L遺伝子を欠く)などが挙げられる。特に好ましいワクシニアウイルスは、NYVACおよびMVAを含む弱毒ワクシニアである。より好ましくは、MVAである。
【0020】
本発明の別の好ましいポックスウイルスはアビポックスであり、鶏痘およびカナリア痘(ALVACを含む)が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、鶏痘である。
【0021】
挿入部位
本発明の新規の挿入部位は、既知の遺伝子(本明細書ではオープンリーディングフレームまたは単にORFと呼ばれる)の間にある遺伝子間領域に位置し、挿入部位への外来DNAの導入を可能にする。
【0022】
本発明は、ポックスウイルスの新規の挿入部位を同定する方法を提供する。新規の挿入部位は、以下の特徴を有する配列を同定するようにポックスウイルスゲノムを分析することによって同定することができる。第1に、挿入部位は遺伝子間空間(好ましくは、非必須遺伝子間)になければならない。第2に、挿入部位への外来DNAの挿入は、この領域のどの潜在性ORFも破壊してはならず、隣接する遺伝子のプロモーターも他の調節エレメントも破壊してはならない。
【0023】
どの必須遺伝子、非必須遺伝子、潜在性ORFも影響を受けなかったことを確認するために、本発明の方法を用いて同定されたどの推定挿入部位も、組換えポックスウイルスの試験が可能なように外来DNA(例えば、マーカー)が推定部位に挿入された組換えポックスウイルスを構築することによって試験することができる。
【0024】
例えば、新規の挿入部位を同定する方法は、ワクシニアの新規の挿入部位を同定するのに使用することができる。1つの態様において、新規の挿入部位は、前記の特徴(すなわち、挿入部位は遺伝子間空間(好ましくは、非必須遺伝子間)になければならない、および挿入部位への外来DNAの挿入はどの潜在性ORFも破壊してはならない)を有する配列を同定するようにMVAゲノム(Antoine et al.,1998を参照のこと)を分析することによって同定することができる。さらに、MVA遺伝子が必須であるかどうかの評価は、MVAとそのワクシニアホモログを比較することによって確かめることができる。さらに、40K、7.5K、およびI3プロモーターのネイティブな部位と挿入部位の間には必須遺伝子がなければならず、周囲遺伝子のT5NT配列は完全な状態のままにしなければならない。
【0025】
ワクシニアにおける本発明の3つの特に好ましい挿入部位は、挿入部位44/45、挿入部位49/50、および挿入部位124/125と示され、数字は挿入部位の両側にあるORFを示している。特に好ましいワクシニアウイルスとして、弱毒ワクシニアウイルス(例えば、MVA、NYVAC(弱毒)、およびワイエス株)ならびに非弱毒株(例えば、TROYVAC)が挙げられる。
【0026】
1つの好ましい態様において、ワクシニアの新規の挿入部位は挿入部位44/45と示される。MVAにおいて、挿入部位 44/45はORF O44LとO45Lの間にあり、MVAゲノム配列(GenBankアクセッション番号U94848)の位置37346-37357にある。この領域は、MVA 044Lの翻訳開始コドンの5'であり、MVA 045Lの翻訳停止コドンの3'である。ワクシニアコペンハーゲンでは、挿入部位44/45については、対応するORFはF14L (MVA 044Lのホモログ)およびF15L(MVA 045L)であり、挿入部位は、ワクシニアF14Lの翻訳開始コドンの5'であり、ワクシニアF15Lの翻訳停止コドンの3'である。この領域を含み、GenBankアクセッション番号M35027として利用可能なこの配列を有するワクシニアコペンハーゲンが好ましいワクシニアである。同様に、挿入部位44/45は、NYVAC(挿入部位が改変されていることが知られていない場合)およびTROYVACを含む他のワクシニア株でも使用することができる。この態様において、特定された挿入部位にある(すなわち、ヌクレオチド間の)DNA配列は、関心対象の配列に相当する特定のインサートを含み、両側の隣接するヌクレオチドは変わらない。
【0027】
別の好ましい態様において、ワクシニアの新規の挿入部位は挿入部位49/50と示される。MVAにおいて、挿入部位49/50はORF 049Lと050Lの間にあり、MVAゲノム配列(GenBankアクセッション番号U94848)の位置42687-42690にある。この領域は、MVA 049Lの翻訳開始コドンの5'であり、MVA 050Lの翻訳停止コドンの3'である。ワクシニアコペンハーゲンでは、挿入部位49/50については、対応するORFはE2L(MVA 049Lのホモログ)およびE3L(MVA 050L)であり、挿入部位は、ワクシニアE2Lの翻訳開始コドンの5'であり、ワクシニアE3Lの翻訳停止コドンの3'である。ワクシニアコペンハーゲンがプロトタイプワクシニアである。同様に、挿入部位49/50は、NYVAC(挿入部位が改変されていることが知られていない場合)およびTROYVACを含む他のワクシニア株でも使用することができる。この態様において、特定された挿入部位にある(すなわち、ヌクレオチド間の)DNA配列は組換えウイルスにおいて欠失され、関心対象の配列に対応する特定のインサートで置換される。
【0028】
さらに別の好ましい態様において、ワクシニアの新規の挿入部位は挿入部位124/125と示される。MVAにおいて、挿入部位124/125はORF 124Lと125Lの間にあり、MVAゲノム配列(GenBankアクセッション番号U94848)の位置118481-118482にある。この領域は、MVA 124Lの翻訳開始コドンの5'であり、MVA 125Lの翻訳停止コドンの3'である。ワクシニアコペンハーゲンでは、挿入部位124/125については、対応するORFはA13L(MVA 124Lのホモログ)およびA14L(MVA 125L)であり、挿入部位は、ワクシニアA13Lの翻訳開始コドンの5'であり、ワクシニアA14Lの翻訳停止コドンの3'である。同様に、挿入部位124/125は、NYVAC(挿入部位が改変されていることが知られていない場合)およびTROYVACを含む他のワクシニア株でも使用することができる。この態様において、特定された挿入部位にある(すなわち、ヌクレオチド間の)DNA配列は組換えウイルスにおいて欠失され、関心対象の配列に対応する特定のインサートで置換される。
【0029】
本発明の別の好ましいポックスウイルスはアビポックスであり、鶏痘およびカナリア痘(ALVACを含む)が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
特に好ましいアビポックスウイルスは鶏痘である。
【0031】
本発明の特に好ましい鶏痘挿入部位は、LUS挿入部位、FP14挿入部位、および43K挿入部位と示される。これらの部位は、時として、FPV006/FPV007(LUS挿入部位)、FPV254/FPV255(LUS挿入部位)、FPV060/FPV061(FP14挿入部位)、およびFPV107/FPV108(43K挿入部位)とも呼ばれる。
【0032】
1つの好ましい態様において、鶏痘の新規の挿入部位はLUS挿入部位と示される。鶏痘にはウイルスゲノム(GenBankアクセッション番号AF 198100)の両端に2つのLUS(long unique sequence)があり、従って、各ゲノムに2つのLUS挿入部位がある。ゲノムの左端にあるLUS挿入部位は鶏痘ゲノム配列の位置7470-7475にあり、FPV006の3'およびFPV007 125Lの5'にある。ゲノムの右端にあるLUS挿入部位は鶏痘ゲノム配列の位置281065と281070の間にあり、FPV254の5'およびFPV255の3'にある。この態様において、関心対象の配列に相当するインサートは、特定された挿入部位の中の任意の位置に挿入することができる。
【0033】
別の好ましい態様において、鶏痘の新規の挿入部位はFP14挿入部位と示される。この部位は鶏痘ゲノム配列の位置67080-67097にあり、FPV060の5'およびFPV061の3'にある。この態様において、特定された挿入部位にある(すなわち、ヌクレオチド間の)DNA配列は組換えウイルスにおいて欠失され、関心対象の配列に対応する特定のインサートで置換される。
【0034】
さらに別の好ましい態様において、鶏痘の新規の挿入部位は43K挿入部位と示される。この部位は鶏痘ゲノム配列の位置128178にあり、FPV107の5'およびFPV108の5'にある。これらの遺伝子は多岐にわたって転写され、挿入部位は、2つのORFの2つのプロモーターエレメントの間にある。この態様において、関心対象の配列に相当するインサートは、鶏痘ゲノムの中のこの位置に挿入することができる。
【0035】
ポックスウイルス
本発明において有用なポックスウイルスは複製型ベクターおよび非複製型ベクターを含む。このようなポックスウイルスとして、オルソポックス(例えば、ワクシニア、アライグマ痘(raccoon pox)、家兎痘など)、アビポックス(例えば、鶏痘、カナリア痘)、スイポックス(例えば、豚痘)、カプリポックス(例えば、ヒツジ痘)、レポリポックス、およびイリドウイルスが挙げられるが、これに限定されない。他のDNAウイルスとしてイリドウイルスなどが挙げられる。ポックスウイルスは、ワクシニア-MVA株、ワクシニア-コペンハーゲン、ワクシニア-ワイエス株、NYVAC、TROVAC;アビポックス(例えば、鶏痘またはカナリア痘)(例えば、ALVAC);スイポックス(例えば、豚痘)などからなる群より選択することができる。1つの態様において、組換えベクターはワクシニアウイルスである。好ましくは、MVAまたはNYVACなどの弱毒ワクシニアである。他の好ましいベクターとして、鶏痘またはカナリア痘などのアビポックスが挙げられる。
【0036】
本発明において有用な親ポックスウイルスとして、オルソポックスウイルス、例えば、高度に弱毒化されたワクシニアウイルス(例えば、改変ワクシニアアンカラ(MVA)(Sutter and Moss,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.,89:10847-10851;Sutter et al Virology 1994))、複製型ワクシニアウイルス(Perkus et al Science 229:981-984,1985;Kaufman et al Int.J.Cancer 48:900-907,1991,Moss Science 252:1662,1991)、ワイエス);アビポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス(例えば、ALVAC)など)(Baxby and Paoletti,Vaccine 10:8-9,1992;Rinns,M.M.et al(Eds)Recombinant Poxviruses CRC Press,Inc,Boca Raton 1992-Paoletti,E.Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 93:113491-11353,1996)、およびスイポックスウイルス、カプリポックスウイルスなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
1つの好ましい態様において、ワクシニアウイルスはワイエス株またはその誘導体である。ワイエス株の誘導体として、vTBC33(機能的K1L遺伝子を欠く)などが挙げられるが、これに限定されない。さらに別の態様において、ウイルスは、米疾病対策センター(Atlanta,GA)から痘瘡ワクチンとして入手可能なドライバックス(Dry-Vax)である。別の態様において、親ポックスウイルスは、鶏痘株(例えば、POXVAC-TC(シェーリングプラウ(Schering-Plough Corporation))などである。
【0038】
別の好ましい態様において、ワクシニアウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)またはその誘導体である。MVAは、ワクシニアウイルスアンカラ株(CVA)をニワトリ胚線維芽細胞において長期間連続継代することによって作製された(概説については、Mayr,A.,et al.,Infection,3:6-14(1975)を参照のこと)。MVAウイルス自体は多くの公的な寄託供給者から入手することができる。例えば、MVAは、ブタペスト条約の規定に従って、1987年12月15日に寄託番号I-721でCNCM(Institut Pasteur,Collection Nationale de Cultures Microorganisms,25,rue du Docteur Roux,75724 Paris Cedex 15)に寄託された(米国特許第5,185,146号)。MVAウイルスは、ブタペスト条約の規定に従って、1994年1月27日に寄託番号V94012707で、European Collection of Cell Cultures(ECACC)(CAMR,Porton Down,Salisbury,SP4 OJG,UK)に寄託された(米国特許第6,440,422号および米国特許公開番号第20030013190号)。同様に、米国特許公開番号第0030013190は、寄託番号99101431およびECACC仮アクセッション番号01021411でECACCに寄託された特定のMVA株をさらに開示している。前記の文書の全てはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。セリオン-MVA(Therion-MVA)(tm)、セリオンプリフリー(Therion Prifree)(tm)ベクター、およびセリオンMシリーズ(Therion M-Series)ベクター(tm)の商品名で特定される、セリオンバイオロジクス(Therion Biologics)ブランドのMVA製品はセリオンバイオロジクスコーポレーション(Cambridge,Massachusetts,United States)の製品である。
【0039】
本発明のポックスウイルスは、宿主において宿主細胞に感染するか、宿主細胞をトランスフェクトするか、または宿主細胞に形質導入することができる。宿主として、ヒトを含む哺乳動物、鳥類、魚類などが挙げられるが、これに限定されない。宿主細胞は、ポックスウイルスによる感染、トランスフェクション、または形質導入を受け入れ、機能的なレベルでポックスウイルス(ポックスウイルスに挿入された任意の外来遺伝子を含む)を発現することができる任意の細胞である。
【0040】
本発明のポックスウイルスは、時として、本明細書でウイルスベクターまたはベクター系または単にベクターと呼ばれる。
【0041】
本発明のポックスウイルスは、好ましくは、標的細胞における複製効率が低い。これは、好ましくは、細胞1個につき約1個以下の子孫が生じることを意味し、さらにより好ましくは、細胞1個につき0.1個以下の子孫が生じることを意味する。複製効率は、標的細胞の感染後にウイルス力価を測定することによって実験から容易に求めることができる。
【0042】
ベクターの複製効率が低く、組み込まれず、細胞質にとどまる性質の結果として、このベクター系は持続的な複製および他の細胞への感染をもたらさない。従って、ポックスベクターおよび形質転換細胞は、標的細胞から遠く離れた位置にある宿主動物細胞に悪影響を及ぼさない。
【0043】
本明細書に記載のポックスウイルス遺伝子送達系は任意の宿主に使用することができる。好ましくは、宿主は哺乳動物である。好ましい哺乳動物として、ヒトおよびチンパンジーなどの霊長類、ウマ、ウシ、ブタなどの家畜、ならびにイヌおよびネコなどのペットが挙げられる。より好ましくは、宿主動物は霊長類または家畜である。さらにより好ましくは、宿主動物はヒトなどの霊長類である。
【0044】
特定の宿主動物に用いられるポックスウイルスベクターが宿主動物において無毒であることをさらに確実にするために、前記の基準に加えて、ウイルスの宿主域および組織特異性を調べることによって、ウイルスベクターを容易にスクリーニングすることができる。例えば、1つの方法は、ウイルスの天然宿主域を調べることである。好ましくは、選択されるウイルスベクターは、遺伝子送達系を使用しようとする動物とは異なる宿主動物が主な感染範囲であるウイルスに由来する。例えば、宿主がヒトなどの霊長類である場合、ウイルスベクターとして豚痘を使用することができる。しかしながら、宿主がブタである獣医学目的の場合、豚痘は好ましくないだろう。しかしながら、改変オルソポックスウイルス(例えば、ワクシニアMVA株もしくはNYVAC株、または通常の宿主域もしくは望ましい宿主細胞において非病原性になるように遺伝子組換えもしくは選択された株)などの、ある特定の高度に弱毒化された株または改変株は使用することができる。感染性および複製効率を予備的にスクリーニングするために組織特異性も使用することができる。
【0045】
宿主がヒトである場合、好ましいベクターとして、ポックスベクター(例えば、スイポックス(例えば、豚痘)、アビポックス(例えば、鶏痘、カナリア痘、もしくは鳩痘)、およびカプリポックスウイルス)が挙げられる。さらに、イリドウイルス(例えば、カエル(frog)ウイルス)およびアフリカ豚コレラ(African swine fever)ウイルスも好ましい。ヒト細胞と使用するのに好ましいウイルスベクターは、非溶菌性の無毒のポックスウイルス(例えば、アビポックス[Taylor,et al.,Vaccine,6:497-503(1985)およびJenkins,et al.,AIDS Research And Human Retroviruses 7:991-998(1991)]、ならびにスイポックス[Feller,et al.,Virology 183:578-585(1991)])である。
【0046】
ポックスウイルスに挿入する遺伝子
関心対象の任意のDNAを、本発明のポックスウイルスベクターに挿入することができる。
【0047】
ポックスウイルスは大きなゲノムを有するので、複数遺伝子を含む広範囲の遺伝物質を送達するのに容易に使用することができる(すなわち、多価ベクターとして働く)。ポックスウイルスゲノムのサイズはウイルス株に応じて約130〜300kbpに及び、300個までの遺伝子を含む。従って、これらのウイルスに外来DNAの大きな断片を挿入してもなお、ウイルスゲノムの安定性を維持することができる。
【0048】
1つの態様において、遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸断片がポックスウイルスベクターに挿入される。別の態様において、異なる遺伝子をコードする少なくとも2種類から約10種類までの核酸がポックスウイルスベクターに挿入される。
【0049】
本発明の1つの態様において、組換えポックスウイルスは、関心対象の疾患関連抗原(例えば、病原因子に由来する抗原または疾患状態と関連する抗原)をコードするDNAが新規の挿入部位に挿入されており、その抗原を発現する。
【0050】
本発明の別の態様において、組換えポックスウイルスは、補助刺激分子をコードするDNAが新規の挿入部位に挿入されており、補助刺激分子を発現する。
【0051】
本発明の組換えベクターは、細胞性免疫反応を生じさせるのに特に有用である。細胞性免疫は、癌および疾患(例えば、病原性微生物、特に、ウイルスおよび他の細胞内微生物が原因となる癌および疾患)にとって非常に重要である。従って、本発明は、ウイルスゲノムまたはその一部に疾患状態の細胞に由来する抗原をコードする遺伝子が組み込まれた少なくとも第1の組換えウイルスを有する組成物を提供する。第1の組換えポックスウイルスはまた、1種類またはそれ以上の免疫促進分子または遺伝子をコードする1つまたはそれ以上の遺伝子を含んでもよい。1つの好ましい態様において、補助刺激分子は、CD4およびcd8アクチベーターの活性化を含む、B7(例えば、B7-1)、ICAM-1、およびLFA-3をコードする核酸の組み合わせ(TRICOMとしても知られる)である。別の態様は、1種類またはそれ以上の免疫促進分子または遺伝子をコードする1種類またはそれ以上の遺伝子を含む第2の組換えウイルスを有する組成物を提供する。両方の組換えウイルスに感染した宿主細胞は、病原因子に由来する1種類またはそれ以上の抗原を発現し、1種類またはそれ以上の免疫促進分子を発現する。抗原は感染宿主細胞の細胞表面で発現されてもよい。免疫促進分子は細胞表面で発現されてもよく、宿主細胞によって活発に分泌されてもよい。抗原および免疫促進分子の発現によって、必要なMHC拘束ペプチドが特異的T細胞に提示され、抗原特異的T細胞の抗原認識および増殖またはクローン増殖を助ける適切なシグナルがT細胞に送られる。全体的な結果は免疫系のアップレギュレーションである。好ましい態様において、免疫応答のアップレギュレーションは、病原因子または病原因子に感染した細胞の増殖を殺傷または阻害することができる、抗原特異的Tヘルパーリンパ球および/または細胞傷害性リンパ球の増加である。
【0052】
関心対象の疾患関連抗原は病原性微生物に由来する抗原でもよく、腫瘍関連抗原でもよい。これらの遺伝子は、細菌、寄生生物、正常細胞または形質転換細胞、ウイルスまたは他の微生物を含む任意の生物から得ることができる。好ましい遺伝子は形質転換細胞から得られる。例えば、ポックスウイルスをベースとした生ワクチンが望まれる任意の遺伝子。
【0053】
このような病原因子として、癌および病原性微生物が挙げられるが、これに限定されない。
【0054】
本発明の組換えポックスウイルスを用いて治療することができる癌として、原発性または転移性の黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、膀胱癌、結腸癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、および腺癌(例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌など)が挙げられるが、これに限定されない。
【0055】
前記の癌は、本願に記載の方法によって評価または治療することができる。癌の場合、癌に関連した抗原をコードする遺伝子は、1種類またはそれ以上の免疫促進分子をコードする遺伝子と共に、組換えポックスウイルスゲノムまたはその一部に組み込まれる。または、癌に関連した抗原をコードする遺伝および1種類またはそれ以上の免疫促進分子をコードする遺伝子は、別々の組換えポックスウイルスに組み込まれる。癌に関連した抗原は癌細胞の表面に発現されてもよく、内部抗原であってもよい。1つの態様において、癌に関連した抗原は腫瘍関連抗原(TAA)またはその一部である。本発明において使用することができるTAAの例として、黒色腫TAAが挙げられるが、これに限定されない。黒色腫TAAとして、MART-1(Kawakami et al.J.Exp.Med.180:347-352,1994)、MAGE-1、MAGE-3、GP-100(Kawakami et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:6458-6462,1994)、CEAおよびチロシナーゼ(Brichard et al.J.Exp.Med.178:489,1993)が挙げられるが、これに限定されない。別の態様において、TAAは、MUC-1、MUC-2、点変異ras癌遺伝子および点変異p53癌遺伝子(膵臓癌)、CA-125(卵巣癌)、PSA(前立腺癌)、c-erb/B2(乳癌)などである(Boon et al.,Ann.Rev.Immunol.12:337,1994)。癌に関連した他の抗原として、MN抗原、Jade、およびBZLF-1が挙げられる。本発明は前記のTAAをコードする遺伝子に限定されない。他のTAAは、当技術分野において周知の方法(例えば、U.S.Pat.No.4,514,506に開示される方法)によって同定、単離、およびクローニングすることができる。
【0056】
別の好ましい態様において、標的抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、および/または組織特異的抗原である。この態様において、抗原の少なくとも1つのエピトープが、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IFN-α、IFN-β、IFN-β17変異体、IFN-65、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11a、CD11b、CD11c、CD16、CD18、CD21、CD28、CD32、CD34、CD35、CD40、CD44、CD45、CD54、CD56、OX40L、4-1BBL、K2、K1、Pβ、Oα、Mα、Mβ2、Mβ1、ヘプシン、Pim-1、LMP1、TAP2、LMP7、TAP1、TRP、Oβ、IAβ、IAα、IEβ、IEβ2、IEα、CYP21、C4B、CYP21P、C4A、Bf、C2、HSP、G7a/b、TNF-α、TNF-β、D、L、Qa、T1a、COL11A2、DPβ2、DPα2、DPβ1、DPα1、DNα、DMα、DMβ、LMP2、TAPi1、LMP7、DOβ、DQβ2、DQα2、DQβ3、DQβ1、DQα1、DRβ、DRα、G250、HSP-70、HLA-B、HLA-C、HLA-X、HLA-E、HLA-J、HLA-A、HLA-H、HLA-G、HLA-F、神経成長因子、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、FSH、LH、EGF、TSH THS放出因子、HGH、GRHR、PDGF、IGF-I、IGF-II、TGF-β、GM-CSF、M-CSF、G-CSF1、エリスロポエチン、β-HCG、4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、GM2、GD2、GD3、JADE、MART、BAGE、GAGE、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、XAGE、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-18、ICAM-1、C-CAM、V-CAM、ELAM、NM23、EGFR、E-カドヘリン、N-CAM、LFA-3(CD58)、EpCAM、B7.1、CEA、DCC、PSA、Her2-neu、UTAA、黒色腫抗原p75、Kl9、HKer8、pMel17、TP10、チロシナーゼ関連タンパク質1および2、p97、p53、RB、APC、DCC、NF-1、NF-2、WT-1、MEN-I、MEN-II、BRCA1、VHL、FCCおよびMCC、ras、myc、neu、raf、erb、src、fms、jun、trk、ret、gsp、hst、bclおよびabil、C1q、C1r、C1s、C4、C2、D因子、B因子、プロパージン、C3、C5、C6、C7、C8、C9、C1Inh、H因子、G4b結合タンパク質、DAF、膜補因子タンパク質、アナフィラトキシン不活化Sタンパク質、HRF、MIRL、CR1、CR2、CR3、CR4、C3a/C4a受容体、C5a受容体、エプスタインバーウイルス抗原(EBNA)、BZLF-1、BZLF-1、および核マトリックスタンパク質、改変TAA、TAAのスプライスバリアント、機能エピトープ、エピトープアゴニスト、ならびにその縮重核酸バリエーションからなる群より選択される。
【0057】
病原性微生物(その病原因子の抗原をコードする遺伝子)として、ウイルス(例えば、HIV(GP-120、p-17、GP-160、gag、pol、qp41、gp120、vif、tat、rev、nef、vpr、vpu、vpx抗原)、痘瘡、インフルエンザ(NP、ヘマグルチニン(HA抗原)、ノイラミニダーゼ、PB1、PB2、PA、NP、M.sub.1、M.sub.2、NS.sub.1、NS.sub.2)、パピローマウイルス(E1、E2、E3、E4、E5a、E5b、E6、E7、E8、L1、L2)、アデノウイルス(E1A、E1B、E2、E3、E4、E5、L1、L2、L3、L4、L5)、HSV(リボヌクレオチド還元酵素、α-TIF、ICP4、ICP8、ICP35、LAT関連タンパク質、gB、gC、gD、gE、gH、gI、gJ、dD抗原)、ヒトパピローマウイルス、ウマ脳炎ウイルス、肝炎(HepB表面抗原(gp27.sup.S、gp36.sup.S、gp42.sup.S、p22.sup.c、pol、x)など))が挙げられる。病原性細菌として、炭疽菌、クラミジア、ミコバクテリア、レジオネラが挙げられるが、これに限定されない。病原性原生動物として、マラリア、バベシア属、住血吸虫症などが挙げられるが、これに限定されない。病原性酵母として、アスペルギルス属、深在性カンジタ属などが挙げられる。好ましい態様において、病原性微生物は細胞内生物である。
【0058】
ワクチンの目的で、関心対象の遺伝子は、病原性生物の免疫原性タンパク質をコードする遺伝子である。多くの場合、これらは細菌細胞壁またはウイルスエンベロープなどの表面構造のタンパク質成分である。適宜、タンパク質の免疫原性断片またはサブユニットを使用することができる。
【0059】
ポックスウイルスに挿入するための1つの好ましい核酸群として、補助刺激分子、アクセサリー分子、ならびに/またはサイトカインおよび/もしくは成長因子をコードする遺伝子が挙げられる。補助刺激分子の例として、B7-1、B7-2、ICAM-1、CD40、CD40L、LFA-3、CD72、OX40L(OX40を含む、または含まない)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
本発明に含まれるサイトカインおよび成長因子の例として、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNFαおよびTNFβ)、トランスフォーミング成長因子(TGFαおよびTGFβ)、上皮細胞成長因子(EGF)、幹細胞因子(SCF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来内皮細胞成長因子、神経成長因子(NGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インシュリン様成長因子(IGF-IおよびIGF-II)、成長ホルモン、インターロイキン1〜15(IL-1〜IL-15)、インターフェロンα、β、およびγ(IFN-α、IFN-β、およびIFN-γ)、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン3および4、肝細胞成長因子、エリスロポイクチン(erythropoictin)、EGF様マイトジェン、TGF様成長因子、PDGF様成長因子、メラノサイト成長因子、乳房由来成長因子1、前立腺成長因子、軟骨由来成長因子、軟骨細胞成長因子、骨由来成長因子、骨肉腫由来成長因子、グリア成長促進因子、初乳塩基性成長因子、内皮細胞成長因子、腫瘍血管形成因子、造血幹細胞成長因子、B細胞刺激因子2、B細胞分化因子、白血病由来成長因子、骨髄単球成長因子、マクロファージ由来成長因子、マクロファージ活性化因子、赤血球増強活性、ケラチノサイト成長因子、毛様体神経栄養成長因子、シュワン細胞由来成長因子、ワクシニアウイルス成長因子、ボンビキシン(bombyxin)、neu分化因子、v-Sis、グリア成長因子/アセチルコリン受容体誘導活性、トランスフェリン、ボンベシンおよびボンベシン様ペプチド、アンギオテンシンII、エンドセリン、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)およびANF様ペプチド、血管作動性腸ペプチド、ブラジキニンおよび関連する成長因子が挙げられるが、これに限定されない。好ましいサイトカインおよび成長因子として、IL-2、GM-CSF、TNFα、IFNγ、IL-12、RANTESなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
タンパク質全体をコードする遺伝子を使用する必要はなく、むしろドメインのみをコードする遺伝子が望ましい。例えば、免疫反応が所望される場合、免疫反応を刺激するのに必要な断片のみがコードされる必要がある。本発明の補助刺激分子、アクセサリー分子、およびサイトカインは生物学的アジュバントとして有用であり、これらをコードする核酸を同じ組換えポックスウイルスベクターまたは異なる組換えポックスウイルスベクターに挿入することによって宿主に全身投与することができる。1つの好ましい態様において、B7、LFA-3、およびICAM-1を含むポックスウイルスベクターが腫瘍関連抗原と共に投与される。さらに好ましい態様において、このポックスウイルスはOX40Lも含む。別の態様において、ポックスウイルスはOX40Lのみを含む。さらに別の態様において、ポックスウイルスは、OX40LまたはOX40細胞内発現抗体とOX40の両方をコードする。
【0062】
B7-1、ICAM-1、およびLFA-3(TRICOM(商標)としても知られる)を発現するポックスウイルスは、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の活性化を誘導する(米国特許第6,045,802号;Hodge et al.,J.Natl.Cancer Inst.92:1228-39(2000);Hodge et al.,Cancer Research 59:5800-07(1999))。OX40は、ナイーブT細胞ではなく抗原に遭遇したT細胞の主要な補助刺激分子であり、T細胞寛容が誘導された後のT細胞増殖を促進する(Bansal-Pakal et al.,Nature Med.7:907-12(2001))。OX40Lは、a)CD4+T細胞およびCD8+T細胞の長期増殖を持続させることによって、b)IL-4発現を変えることなく、CD4+T細胞およびCD8+T細胞からのTh1サイトカイン(例えば、IL-2、IGN-g、およびTNF-a)の産生を高めることによって、c)T細胞をアポトーシスから守ることによって、T細胞活性化の間に役割を果たしている。B7-1、ICAM-1、LFA-3、OX40Lの組み合わせによって最初の活性化が高まり、次いで、ナイーブT細胞およびエフェクターT細胞の持続的活性化がさらに増強される。
【0063】
ポックスウイルスに挿入するための別の好ましい核酸群は抗体をコードする。抗体は、バイオメディカルサイエンスにおいて、標的抗原の同定、精製、および機能操作のためのインビトロツールとして長い間用いられてきた。抗体は診断用途および治療用途の両方にインビボで利用されてきた。抗体工学における最近の進歩によって、現在、抗原結合ドメインも細胞内で発現できるように、抗体をコードする遺伝子を操作することが可能になっている。抗体の特異性および高親和性結合特性と、大きなヒト免疫グロブリンライブラリーを作製できること、およびライブラリーを哺乳動物細胞内の正確な細胞内位置で安定して発現できることによって、遺伝子療法用途の強力な新しい分子ファミリー(例えば、本願のポックスウイルスベクターを含む分子ファミリー)が得られるようになった。これらの細胞内抗体は「細胞内発現抗体」と呼ばれる(Marasco et al.Gene Therapy,4:11-15,1997;米国特許第5,965,371;5,851,829;6,329,173号;および第6,072,036号)。好ましくは、血管形成を調節する細胞内発現抗体をコードする核酸は、単鎖抗体をコードする。
【0064】
別の好ましい態様において、本発明のポックスウイルスベクターは、家禽産業にとって有用なポックスウイルスワクチンを作製するのに使用することができる。遺伝子の例は、家禽産業にとって重要であり、様々な効力のワクチンが既に存在する病原体(すなわち、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、レオウイルス、マレック病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、喉頭気管炎ウイルス、および鳥類脳脊髄炎ウイルス)を含む病原体から得られる。前記の遺伝子はまた、蔓延を制圧する必要があるのにもかかわらず、現在ワクチンが存在しない家禽病原体から得られる。このリストとして、コクシジウム症を引き起こすアイメリア属(Eimeria)の種、トリチフス菌、雛白痢菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌、黄色アスペルギルス、大腸菌、マイコプラズマ-ガリセプティクム、マイコプラズマ-ガリナルム、マイコプラズマ-シノヴィエ、RNAリンパ性白血病ウイルス、トリインフルエンザ、および出血性腸炎ウイルスが挙げられる。
【0065】
ポックスウイルスゲノムに遺伝子を挿入する方法
ポックスウイルスゲノムに発現可能な形で挿入する外来遺伝子は、望ましい遺伝子を単離する任意の従来法によって得ることができる。
【0066】
DNAゲノムを含む生物の場合、関心対象の抗原をコードする遺伝子はゲノムDNAから単離される。RNAゲノムを有する生物の場合、望ましい遺伝子はゲノムのDNAコピーから単離することができる。ゲノムの制限地図が利用できる場合、制限エンドヌクレアーゼ消化によってゲノムDNAを切断して、関心対象の遺伝子を含むDNA断片を得るストラテジーを設計することができる。場合によっては、望ましい遺伝子は予めクローニングされていることがあり、従って、遺伝子は、入手可能なクローンから得ることができる。または、遺伝子のDNA配列が既知である場合、遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応またはデオキシリボ核酸合成の任意の従来法(例えば、リン酸トリエステル法または亜リン酸トリエステル法)によって合成することができる。
【0067】
関心対象の抗原をコードする遺伝子は、遺伝子を細菌宿主にクローニングすることによって増幅することができる。この目的で、様々な原核生物クローニングベクターを使用することができる。例はプラスミドpBR322およびpEMBLである。
【0068】
ポックスウイルスベクターに挿入するための関心対象の抗原をコードする遺伝子は標準的な技法によって調製することができる。一般的に、クローニングされた遺伝子は、制限酵素消化によって原核生物クローニングベクターから切り出すことができる。ほとんどの場合、切り出された断片は遺伝子の全コード領域を含む。クローニングされた遺伝子を有するDNA断片は、必要に応じて(例えば、断片の末端をポックスウイルスベクターの挿入部位に合わせるように)改変し、次いで、下記のように、これらのベクターの制限エンドヌクレアーゼ切断部位(クローニング部位)に挿入する前に精製することができる。
【0069】
遺伝子をウイルスに挿入する基本的な技法は当業者に周知であり、例えば、ドナープラスミド内の遺伝子に隣接するウイルスDNA配列と、親ウイルスに存在する相同配列との組換えを含む(Mackett,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:7415-7419(1982))。例えば、遺伝子送達に使用する組換えウイルス(例えば、ポックスウイルス)は、当技術分野において周知であり、かつU.S.Pat.No.5,093,258(この開示は参照として本明細書に組み入れられる)に記載の鶏痘ウイルスの合成組換え体を作製する方法に類似した2つの段階で構築することができる。他の技法として、親ウイルスベクターに天然に存在する、または親ウイルスベクターに人工的に挿入された独特の制限エンドヌクレアーゼ部位の使用が挙げられる。
【0070】
第1に、ウイルスに挿入しようとするDNA遺伝子配列はプラスミド(例えば、大腸菌プラスミド構築物)に配置することができる。このプラスミドには、あるDNA部分(例えば、ポックスウイルスのあるDNA部分)と相同なDNAが挿入されている。別途、挿入しようとするDNA遺伝子配列はプロモーターに連結される。望ましい挿入領域であるポックスDNA領域に隣接するDAN配列に相同なDNAがプロモーター-遺伝子連結の両端に隣接するように、プロモーター-遺伝子連結はプラスミド構築物に配置される。次いで、結果として生じるプラスミド構築物は大腸菌細菌内での増殖によって増幅され、単離される。好ましくは、プラスミドは、複製起点(例えば、大腸菌複製起点)ならびにマーカー(例えば、大腸菌における選択および増殖のための抗生物質耐性遺伝子)も含む。
【0071】
第2に、挿入しようとするDNA遺伝子配列を含む単離されたプラスミドは、ポックスウイルスと共に、細胞培養物(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞)にトランスフェクトされる。プラスミドの相同なポックスDNAとウイルスゲノムの相同なポックスDNAとの組換えによって、ポックスウイルスゲノムのウイルス生存能力に影響を及ぼさない部位にプロモーター-遺伝子構築物が存在することで改変されたポックスウイルスが得られる。
【0072】
本発明の態様が1つを超える核酸(例えば、腫瘍抗原および補助刺激分子)を挿入する場合、第1の核酸は、前記のように本発明の新規の挿入部位に挿入され、1つまたはそれ以上のさらなる核酸は、本明細書に記載の新規の挿入部位または他の挿入部位に挿入することができる。
【0073】
遺伝子は、好ましくは、結果として得られる組換えウイルスのウイルス生存能力に影響を及ぼさない、ウイルスの部位または領域(挿入領域)に挿入される。新規の挿入部位は、既知遺伝子(好ましくは、非必須遺伝子)の間にある遺伝子間領域である。当業者であれば、例えば、組換え体のウイルス生存能力に重大な影響を及ぼすことなく組換え体形成を可能にする領域があるかどうかウイルスDNAセグメントを無作為に試験することによって、ウイルスのこのような領域を容易に特定することができる。容易に使用することができ、多くのウイルスに存在する領域の1つがチミジンキナーゼ遺伝子である。例えば、チミジンキナーゼ遺伝子は、調べられた全てのポックスウイルスゲノムにおいて発見されている[レポリポックスウイルス:Upton,et al.,J.Virology,60:920(1986)(ショープ線維腫ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershon,et al.,J.Gen.Virol.,70:525(1989)(ケニヤシープ(Kenya sheep)-1);オルソポックスウイルス:Weir,et al.,J.Virol.,46:530(1983)(ワクシニア);Esposito,et al.,Virology,135:561(1984)(サル痘および痘瘡ウイルス);Hruby,et al.,PNAS,80:3411(1983)(ワクシニア);Kilpatrick,et al.,Virology,143:399(1985)(ヤバサル腫瘍ウイルス);アビポックスウイルス:Binns,et al.,J.Gen.Virol.69:1275(1988)(鶏痘);Boyle,et al.,Virology,156:355(1987)(鶏痘);Schnitzlein,et al.,J.Virological Methods,20:341(1988)(鶏痘,ウズラポックス);エントモポックス(Lytvyn,et al.,J.Gen.Virol.73:3235-3240(1992)]。
【0074】
鶏痘では、TK領域の他に他の挿入領域として、例えば、BamHIJ[Jenkins,et al.,AIDS Research and Human Retroviruses 7:991-998(1991)]、EPO出願第0308220A1号で示されたEcoRI-HindIII断片、BamHI断片、EcoRV-HindIII断片、BamHI断片、およびHindIII断片[Calvert,et al.,J. of Virol.67:3069-3076(1993);Taylor,et al.,Vaccine 6:497-503(1988);Spehner,et al.,(1990)およびBoursnell,et al.,J. of Gen.Virol.71:621-628(1990)]が挙げられる。
【0075】
遺伝子が挿入部位に挿入される必要条件に加えて、改変ポックスウイルスによる1つまたはそれ以上の挿入遺伝子の発現の成功には、望ましい遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターが存在する(すなわち、挿入遺伝子と適切な関係にある)ことが必要である。プロモーターは、発現させようとする遺伝子の上流に位置するように配置しなければならない。プロモーターは当技術分野において周知であり、標的にしたい宿主および細胞タイプに応じて容易に選択することができる。例えば、ポックスウイルスでは、ワクシニア7.5K、40K、鶏痘(fowlpox)などのポックスウイルスプロモーターを使用すべきである。発現レベルを高めるために、エンハンサーエレメントも併用することができる。さらに、ある態様では、誘導性プロモーターの使用が好ましく、これも当技術分野において周知である。
【0076】
本発明において有用なプロモーターとして、ポックスウイルスプロモーター(例えば、エントモポックスプロモーター、アビポックスプロモーター、またはオルソポックスプロモーター(例えば、ワクシニアプロモーター、例えば、HH、11K、もしくはPi))が挙げられる。例えば、ワクシニアのAvaIH領域に由来するPiプロモーターは、Wachsman et al.,J.of Inf.Dis.155,1188-1197(1987)で述べられている。さらに詳細に述べると、このプロモーターはL-バリアントWRワクシニア株のAvaIH(XhoIG)断片に由来し、L-バリアントWRワクシニア株において右から左へ転写を指示する。このプロモーターの地図上の位置は、AvaIHの5'末端から約1.3Kbp(キロ塩基対)、ワクシニアゲノムの5'末端から約12.5Kbp、HindIIIC/N接合部の5'末端から約8.5Kbpである。HindIIIHプロモーター(本明細書で「HH」および「H6」とも呼ぶ)配列は、Rosel et al.,J.Virol.60,436-449(1986)によるオープンリーディングフレームH6の上流である。11Kプロモーターは、Wittek,J.Virol.49,371-378(1984)およびBertholet,C.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,2096-2100(1985)に記載の通りである。プロモーターが初期プロモーターでも後期プロモーターでも、特定の遺伝子の発現の時期を調節するのに利用することができる。さらに、下記のように、さらなるプロモーターを使用することができる。
【0077】
別の好ましい態様は、外部の因子または合図によってプロモーターが調節されるポックスウイルスベクターを提供する。外部の因子または合図を使用すると、これらを作動させることによってベクターにより産生されるポリペプチドのレベルを制御することができる。例えば、熱ショックタンパク質は、温度によってプロモーターが調節される遺伝子によってコードされるタンパク質である。金属含有タンパク質メタロチオニンをコードする遺伝子のプロモーターはCd+イオン応答性である。このプロモーターまたは外部合図の影響を受ける別のプロモーターを組み込むことによってタンパク質産生の調節も可能になる。
【0078】
別の好ましい態様において、ポックスウイルスゲノムは、「誘導性」プロモーターに作動可能に連結された関心対象の少なくとも1つの遺伝子をコードする核酸を有するように改変される。このような誘導系を使用すると、遺伝子発現を注意深く調節することが可能になる。Miller and Whelan,Human Gene Therapy,8:803-815(1997)を参照のこと。本明細書で使用する句「誘導性プロモーター」または「誘導系」は、外部から送達される薬剤を用いてプロモーター活性を調節することができる系を含む。このような系として、例えば、lacオペレーターを有する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する転写モジュレーターとして大腸菌由来lacリプレッサーを使用する系(Brown et al.Cell,49:603-612,1987);テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用する系(Gossen and Bujard,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551,1992;Yao et al.,Human Gene Ther.9:1939-1950,1998;Shokelt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6522-6526,1995)が挙げられる。他のこのような系として、FK506二量体、カストラジオール(castradiol)を使用するVP16またはp65、RU486/ミフェプリストン、ジフェノールムリステロン、またはラパマイシン(Miller and Whelan、前記、図2を参照のこと)が挙げられる。さらに別の例はエクジソン誘導系である(例えば、Karns et al,MBC Biotechnology 1:11,2001を参照のこと)。誘導系は、例えば、インビトロゲン(Invitrogen)、クロンテック(Clontech)、およびアリラド(Ariad)から入手することができる。リプレッサーとオペロンを使用する系が好ましい。哺乳動物プロモーターの代わりにポックスプロモーター部分を使用することによって、これらのプロモーターが適合される。
【0079】
本発明の1つの態様は、転写調節エレメントまたはエンハンサーなどの調節エレメントの使用を提供する。
【0080】
本発明の1つの好ましい態様において「転写調節エレメント」または「TRE」は、関心対象の遺伝子を調節するために導入される。本明細書で使用する「TRE」は、RNA形成のためのRNAポリメラーゼによる、作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の転写を調節(すなわち、制御)するポリヌクレオチド配列(好ましくは、DNA配列)である。本明細書で使用する「TRE」は、TREが機能する宿主細胞において、作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の転写を増大させる。TREはエンハンサーエレメントおよび/またはポックスプロモーターエレメントを含み、これらは同じ遺伝子に由来してもよく、由来しなくてもよい。TREのプロモーター成分およびエンハンサー成分は、望ましい転写活性が得られる限り、関心対象のコード配列からどの方向および/または距離にあってもよく、前述の多量体を含んでもよい。本明細書で説明したように、TREにはサイレンサーエレメントがなくてもよく、あってもよい。
【0081】
本発明の別の好ましい態様は、関心対象の遺伝子を調節する「エンハンサー」を提供する。エンハンサーは当技術分野において十分に理解されている用語であり、遺伝子に作動可能に連結された時にプロモーターそれ自体によってもたらされる転写活性化より大きな程度で、プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の転写を増大させる、遺伝子に由来するポリヌクレオチド配列である(すなわち、エンハンサーはプロモーターからの転写を増大させる)。「エンハンサー活性」を有するとは当技術分野において十分に理解されている用語であり、既に述べられていること(すなわち、エンハンサーが、遺伝子に作動可能に連結された時にプロモーターそれ自体によってもたらされる転写増大より大きな程度で、プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の転写を増大させること、すなわち、エンハンサーがプロモーターからの転写を増大させること)を意味する。
【0082】
TREまたはエンハンサーなどの調節エレメントの活性は、一般的に、転写調節因子の存在および/または転写調節阻害剤の非存在に左右される。転写活性化は、当技術分野において周知の(および下記に詳細に説明される)多くのやり方で測定することができるが、一般的に、調節エレメントの制御下にある(すなわち、調節エレメントに作動可能に連結された)コード配列のmRNAまたはタンパク質産物の検出および/または量子化(quantization)によって測定される。本明細書に記載のように、調節エレメントは、様々な長さ、様々な配列組成のものでもよい。転写活性化とは、転写が、標的細胞の基底レベルより少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍増大することを意味する。より好ましくは少なくとも約50倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約200倍、さらにより好ましくは少なくとも約400〜約500倍、さらにより好ましくは少なくとも約1000倍。基底レベルは、一般的に、非標的細胞での活性レベルがもしあれば、その活性レベルであり、または標的細胞タイプで試験された時に、関心対象のTREを欠くレポーター構築物の活性レベルがもしあれば、その活性レベルである。
【0083】
TREの「機能的に保存された」バリアントは、他のTREとは異なるが、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を増大させる能力(特に、細胞特異的転写活性)をなお保持するTREである。TREにおける違いは、例えば、塩基の1個または複数の塩基変異、付加、欠失、および/または変化に起因する直線配列における違いによるものでもよい。違いはまた、TREの1個または複数の糖、および/または塩基間の結合の変化に起因してもよい。
【0084】
TREの配列内のある点変異は、転写因子結合および遺伝子活性化を低下させることが示されている。当業者であれば、既知の転写因子結合部位における、および既知の転写因子結合部位の周囲にある塩基の変化の中には、遺伝子活性化および細胞特異性に悪影響を及ぼす可能性が高いものもあるが、転写因子結合に関与しない塩基の変化は、このような影響を及ぼす可能性は低いことを認識しているだろう。ある特定の変異はTRE活性を増大することもできる。塩基を変える影響の試験は、当技術分野において周知の任意の方法(例えば、移動度シフトアッセイ)によって、またはこれらの変化を含むベクターをTRE機能細胞およびTRE非機能細胞にトランスフェクトすることによってインビトロまたはインビボで行うことができる。さらに、当業者であれば、TRE配列の転写調節能力を変えることなく、点変異および欠失をTRE配列に加えることができることを認識しているだろう。
【0085】
本発明において、特定の標的細胞に向けられるポックスウイルスベクターは、標的腫瘍細胞において優先的に機能するTREを用いて作製することもできる。腫瘍細胞特異的異種TREの限定しない例、および個々の潜在的な標的細胞の限定しない例として、以下の遺伝子:α-フェトプロテイン(AFP)(肝臓癌)、ムチン様糖タンパク質DF3(MUC1)(乳癌)、癌胎児抗原(CEA)(結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、および肺癌)、プラスミノゲンアクチベーターウロキナーゼ(uPA)およびその受容体遺伝子(乳癌、結腸癌、および肝臓癌)、E2F1(細胞周期S期特異的プロモーター)(RB(retinoblastoma)遺伝子の機能が破壊された腫瘍)、HER-2/neu(c-erbB2/neu)(乳癌、卵巣癌、胃癌、および肺癌)に由来するTREが挙げられる。
【0086】
本発明において、腫瘍特異的TREは、以下の例示的な遺伝子(TREが特異的に機能する組織を括弧内に示す):低酸素反応性エレメント、血管内皮成長因子受容体(内皮)、アルブミン(肝臓)、第VII因子(肝臓)、脂肪酸合成酵素(肝臓)、フォン・ウィルブランド因子(脳内皮)、α-アクチンおよびミオシン重鎖(両方とも平滑筋)、シンセタスト(synthetastI)(小腸)、Na--K--Clトランスポーター(腎臓)に由来する組織特異的TREと共に使用することができる。さらなる組織特異的TREが当技術分野において周知である。
【0087】
従って、1つの態様において、細胞特異的異種TREは腫瘍細胞特異的である。好ましくは、異種TREは腫瘍細胞特異的であり、同じ細胞において機能する。別の態様において、第1の異種TREの1つは腫瘍細胞特異的であり、第2の異種TREは組織特異的であり、それによって両方のTREは同じ細胞において機能する。
【0088】
標的宿主細胞に送達しようとする遺伝子を有するウイルスベクターは、当業者に周知の任意の方法によって導入することができる。
【0089】
本発明の組換えポックスウイルスの投与は被検体に応じて「予防的」でもよく、「治療的」でもよい。予防的に投与される場合、本発明の組換えポックスウイルスは、症状に先立って被検体にリスクがあると思われた時に投与される。組換えポックスウイルスの予防的投与は、後の血管形成関連疾患を予防または寛解するように働く。治療的に投与された場合、組換えポックスウイルスは、感染症または疾患の発症時または発症後に投与される。従って、本発明は、病原因子への予想される暴露または疾患状態の前に投与されてもよく、感染症または疾患の発症後に投与されてもよい。
【0090】
接種物に関連する用語「単位剤形(unit dose)」は、哺乳動物への単位投与として適した物理的に別個の単位を意味し、それぞれの単位は、望ましい免疫効果を生じるように計算された予め決められた量の組換えポックスウイルスを、必要とされる希釈剤と共に含む。本発明の接種物の新規の単位剤形の仕様は、組換えウイルスの独特の特徴および実現しようとする特定の免疫効果によって決められ、これらに左右される。
【0091】
投与
被検体に投与するために、本発明のポックスウイルスは接種物として調製される。接種物は、水性薬学的組成物を形成するために、一般的に、食塩水、リン酸緩衝食塩水、または他の生理学的に容認される希釈剤などの容認される(許容される)希釈剤に溶解した溶液として調製される。
【0092】
接種経路は、病原因子に対して保護反応を誘発する、乱切法、静脈内(I.V.)経路、筋肉内(I.M.)経路、皮下(S.C.)経路、皮内(I.D.)経路、腹腔内(I.P.)経路、腫瘍内経路などでもよい。用量が少なくとも1回投与される。指示されるように、後の用量が投与されることがある。
【0093】
1つの態様において、異種プライム-ブースト法(heterologous prime-boost regimen)が用いられる。例えば、宿主を、少なくとも1回、第1のベクター(例えば、核酸をベースとするベクター)で免疫することができる。次の免疫は、ポックスウイルスベクターを用いて行われる。別の例では、宿主は、まず最初に、第1のポックスウイルスベクターで免疫され、次に、異なる属の第2のポックスウイルスベクターで免疫される。
【0094】
本発明の組換えポックスウイルスが哺乳動物(manual)(好ましくは、ヒト)に投与される際に、投与される組換えポックスウイルスの投与量は、哺乳動物の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、以前の病歴、疾患の進行、腫瘍負荷(tumor burden)などの要因に応じて変化する。
【0095】
一般的に、レシピエントに、約105〜約1010プラーク形成単位の投与量の組換えウイルスを投与することが望ましいが、それより低いまたは高い用量が投与されてもよい。
【0096】
関心対象の臓器においてタンパク質の血清中濃度が約1pg/ml〜20μg/mlとなるように十分な量のウイルスベクターが注射される。より好ましくは、約0.1μg/ml〜10μg/ml。さらにより好ましくは、約0.5μg/ml〜10μg/ml。
【0097】
哺乳動物に組換えポックスウイルスを投与する方法の例として、エクスビボでの組換えウイルスへの腫瘍細胞の暴露、またはウイルスの静脈内投与、皮下投与、皮内投与、もしくは筋肉内投与による罹患宿主への組換えポックスウイルスの注射が挙げられるが、これに限定されない。または、組換えポックスウイルスまたは組換えベクターの組み合わせは、癌病巣もしくは腫瘍に直接注射することによって、または薬学的に許容される担体に入れて局所塗布することによって局所投与することができる。投与しようとする1種類またはそれ以上の抗原の核酸配列と複数の種類の補助刺激分子をコードする核酸配列を有する組換えポックスウイルスの量は、ウイルス粒子の力価に基づいて決められる。投与しようとする免疫原の好ましい範囲は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)1個体あたり105〜1010ウイルス粒子である。免疫しようとする哺乳動物が既に癌または転移性癌に罹患している場合、他の治療処置と共にワクチンを投与することができる。
【0098】
本発明はまた、ポックスウイルス(組換えポックスウイルスを含む)および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0099】
送達される遺伝物質の効果は、この系を用いて注意深くモニタリングおよび調節することができる。豚痘などの好ましいポックスウイルスベクターは、約2週間、遺伝物質を発現することしかしない。従って、治療されている疾患がこの時間枠内で緩和すれば、このベクター系は自己制限するので、この期間の後に、不必要な物質は産生されない。さらなる投与量が必要とされる場合、注射を繰り返すことによって、物質を追加投与することができる。ある特定の場合では、これらのベクターを用いて、第2物質、第3の物質なども添加することができる。
【0100】
本発明の好ましい態様は、望ましい目標を達成するために免疫応答を調節する方法に関する。
【0101】
本発明の1つの態様は、必要とする被検体(例えば、癌を有する被検体)を、本発明のポックスウイルスと化学療法剤を用いて治療することを提供する。好ましくは、ポックスウイルスは、癌に関連する遺伝子を発現する。化学療法剤はどの抗癌剤でもよい。
【0102】
本発明の薬学的組成物および剤形およびキットを含む本発明の様々な態様において使用することができる抗癌剤の例として、以下が挙げられるが、これに限定されない:アシビシン(acivicin);アクラルビシン;塩酸アコダゾール(acodazole hydrochloride);アクロニン;アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);アルトレタミン(altretamine);アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン(ametantrone acetate);アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン(anthramycin);アスパラギナーゼ;アスペルリン(asperlin);アザシチジン;アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタト(batimastat);ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート(bisnafide dimesylate);ビゼレシン(bizelesin);硫酸ブレオマイシン;ブレキナール(brequinar)ナトリウム;ブロピリミン(bropirimine);ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カプシタビン(capsitabine);カラセミド(caracemide);カルベチメル(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン(carubicin hydrochloride);カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロラムブチル;シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン;クラドリビン(cladribine);クリスナトールメシラート(crisnatol mesylate);シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン(decitabine);ドキソルマプラチン(dexormaplatin);デザグアニン(dezaguanine);デザグアニンメシラート;ジアジクオン(diaziquone);ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン(droloxifene);クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドアゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート(edatrexate);塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン(enloplatin);エンプロメート(enpromate);エピプロピジン(epipropidine);塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin hydrochloride);エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール(etanidazole);エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール(fadrozole hydrochloride);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン(flurocitabine);フォスキドン(fosquidone);フォストリエシンナトリウム(fostriecin sodium);ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン(ilmofosine);インターロイキンII(組換えインターロイキンIIすなわちrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン(iproplatin);塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド(lanreotide acetate);レトロゾール(letrozole);酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール(liarozole hydrochloride);ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium);ロムスチン;塩酸ロソキサントロン(losoxantrone hydrochloride);マソプロコール(masoprocol);メイタンシン;メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、塩酸レタミン(rethamine hydrochloride);酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノグラリル(menogaril);メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン(metoprine);メツレデパ;メチンドミド(mitindomide);マイトカルシン(mitocarcin);マイトクロミン(mitocromin);マイトギリン(mitogillin);マイトマルシン(mitomalcin);マイトマイシン;マイトスペル(mitosper);ミトーテン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール(nocodazole);ノガラマイシン;オルマプラチン(ormaplatin);オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル;ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン(pentamustine);硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド(perfosfamide);ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン(piroxantrone hydrochloride);プリカマイシン;プロメスタン(plomestane);ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン(riboprine);ログレチミド(rogletimide);サフィンゴール(safingol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン(simtrazene);スパルフォセートナトリウム(sparfosate sodium);スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム(spirogermanium hydrochloride);スピロムスチン(spiromustine);スピロプラチン(spiroplatin);ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テコガランナトリウム(tecogalan sodium);テガフール;塩酸テロキサントロン(teloxantrone hydrochloride);テモポルフィン(temoporfin);テニポシド;テロキシロン(teroxirone);テストラクトン;チアミプリン(thiamiprine);チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン(tiazofurin);チラパザミン(tirapazamine);クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン(trestolone acetate);リン酸トリシリビン(triciribine phosphate);トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン(triptorelin);塩酸ツブロゾール(tubulozole hydrochloride);ウラシルマスタード;ウレデパ(uredepa);バプレオチド(vapreotide);ベルテポルフィン(verteporfin);硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン(vinepidine sulfate);硫酸ビングリシナート(vinglycinate sulfate);硫酸ビンロウロシン(vinleurosine sulfate);酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate);硫酸ビンロシジン(vinrosidine sulfate);硫酸ビンゾリジン(vinzolidine sulfate);ボロゾール(vorozole);ゼニプラチン(zeniplatin);ジノスタチン;塩酸ゾルビシン、インプロスルファン、ベンゾデパ(benzodepa)、カルボコン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)、クロルナファジン(chlornaphazine)、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、エステルムスチン(estermustine)、クロロゾトシン、ゲムザル(gemzar)、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アザセリン、ブレオマイシン、カルビシン(carubicin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6-ジアゾ-5-オキソ-1-ノルロイシン、ドキソルビシン、オリボマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ツベルシジン、ゾルビシン、デノプテリン、プテロプテリン、6-メルカプトプリン、アンシタビン、6-アザウリジン、カルモフル(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン、エノシタビン、プルモザイム(pulmozyme)、アセグラトン、アルドフォスファミドグリコシド、ベストラブシル(bestrabucil)、デフォファミド(defofamide)、デメコルチン(demecolcine)、エルフォルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニム(elliptinium acetate)、エトグルシド(etoglucid)、フルタミド、ヒドロキシウレア、レンチナン、フェナメト(phenamet)、ポドフィリニック酸、2-エチルヒドラジド、ラゾキサン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、タモキシフェン、タキソテール、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン(urethan)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよび関連薬剤、20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビタラテロン(abiraterone);アクラルビシン;アシルフルベン(acylfulvene);アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロウキン(aldesleukin);ALL-TKアンタゴニスト);アルトレタミン(altretamine);アムバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミフォスチン(amifostine);アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド(anagrelide);アナストロゾール;アンドログラフォリド(andrographolide);血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス(antarelix);ADMP(anti-dorsalizing morphogenetic protein)-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィディコリン;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン(atrimustine);アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン(azasetron);アザトキシン(azatoxin);アザチロシン(azatyrosine);バカチン(baccatin)III誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット(batimastat);BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン(benzochlorins);ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);βラクタム誘導体;β-アレチン(beta-alethine);ベータクラマイシン(betaclamycin)B;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン(bisantrene);ビスアジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド(bisnafide);ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン(bizelesin);ブレフラート(breflate);ブロピリミン(bropirimine);ブドチタン(budotitane);ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール(calcipotriol);カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン(capecitabine);カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン(carzelesin);カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン(castanospermine);セクロピンB;セトロレリックス(cetrorelix);クロルリン(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド(chloroquinoxaline sulfonamide);シカプロスト(cicaprost);cis-ポルフィリン;クラドリビン(cladribine);クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシン(collismycin)A;コリスマイシンB;コンブレタスタチン(combretastatin)A4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン(conagenin);クラムベスシジン(crambescidin)816;クリスナトール(crisnatol);クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;クラシン(curacin)A;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);サイペマイシン(cypemycin);シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン(cytostatin);ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン(decitabine);デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン(deslorelin);デキサメタゾン;デキシフォスファミド(dexifosfamide);デキシラゾキサン(dexrazoxane);デキスベラパミル(dexverapamil);ジアジクオン(diaziquone);ジデムニン(didemnin)B;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン(diethylnorspermine);ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン(dioxamycin);ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine);ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン(dolasetron);ドキシフルリジン;ドロロキシフェン(droloxifene);ドロナビノール;デュオカルマイシン(duocarmycin)SA;エブセレン(ebselen);エコムスチン(ecomustine);エデルフォシン(edelfosine);エドレコロマブ(edrecolomab);エフロルニチン;エレメン(elemene);エミテフル(emitefur);エピルビシン;エプリステリド(epristeride);エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール(etanidazole);リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール(flavopiridol);フレゼラスチン(flezelastine);フルアステロン(fluasterone);フルダラビン;塩酸フルオロダウノル
ニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride);フォルフェニメックス(forfenimex);フォルメスタン(formestane);フォストリエシン(fostriecin);フォテムスチン(fotemustine);ガドリニウムテキサフィリン(gadolinium texaphyrin);硝酸ガリウム;ガロシタビン(galocitabine);ガニレリックス(ganirelix);ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプサルファム(hepsulfam);ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン(idramantone);イルモフォシン(ilmofosine);イロマスタット(ilomastat);イミダゾアクリドン;イミキモッド;免疫賦活ペプチド;インシュリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン(iobenguane);ヨードドキソルビシン;イポメアノール(ipomeanol)、4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン(itasetron);ジャスプラキノリド(jasplakinolide);カハラリド(kahalalide)F;三酢酸ラメラリン-N(lamellarin-N triacetate);ランレオチド(lanreotide);レイナマイシン(leinamycin);レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール(letrozole);白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール(liarozole);線状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン(lobaplatin);ロンブリシン;ロメトレキソール(lometrexol);ロニダミン(lonidamine);ロソキサントロン(losoxantrone);ロバスタチン;ロキソリビン(loxoribine);ロルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin);リソフィリン(lysofylline);溶解性ペプチド;マイタンシン(maitansine);マンノスタチン(mannostatin)A;マリスタット;マソプロコール(masoprocol);マスピン(maspin);マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノグラリル(menogaril);メルバロン(merbarone);メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン(miltefosine);ミリモスチム(mirimostim);ミスマッチ二本鎖RNA;マイトグアゾン(mitoguazone);ミトラクトール(mitolactol);マイトマイシン類似体;マイトナフィドマイトトキシン(mitonafide mitotoxin)線維芽細胞成長因子-サポリン(saporin);ミトキサントロン;モファロテン(mofarotene);モルグラモスチン(molgramostim);モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール(mopidamol);多剤耐性遺伝子阻害剤;multiple tumor suppressor 1に基づく治療;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシド(mycaperoxide)B;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン(myriaporone);N-アセチルジナリン(N-acetyldinaline);N-置換ベンズアミド;ナファレリン(nafarelin);ナグレステプ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルピン(naphterpin);ナルトグラスチム;ネダプラチン(nedaplatin);ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸;天然エンドペプチダーゼ;ニルタミド(nilutamide);ニサマイシン(nisamycin);酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド酸化防止剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド;オナプリストン(onapristone);オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン(oracin);経口サイトカインインデューサー;オルマプラチン(ormaplatin);オサテロン(osaterone);オキサリプラチン(oxaliplatin);オキサウノマイシン(oxaunomycin);タキセル(taxel);タキセル類似体;タキセル誘導体;プラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin);パルミドン酸;パナキシトリオール(panaxytriol);パノミフェン(panomifene);パラバクチン(parabactin);パゼリプチン(pazelliptine);ペグアスパルガーゼ;ペルデシン(peldesine);ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン(perflubron);ペルホスファミド(perfosfamide);ペリリルアルコール;フェナジノマイシン(phenazinomycin);フェニル酢酸塩;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム(piritrexim);プラセチン(placetin)A;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベーター阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルbis-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAをベースとする免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤,微細藻類(microalgal);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン(pyrazoloacridine);ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン結合体(pyridoxylated hemoglobin polyoxyethylene conjugate);rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチルレテリプチン(retelliptine demethylated);エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン(rhizoxin);リボザイム;RIIレチナミド(retinamide);ログレチミド(rogletimide);ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキイニメックッス(roquinimex);ルビギノン(rubiginone)B1;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴール(safingol);サイントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトール(sarcophytol)A;サルグラモスチン;Sdi1ミメティック;セムスチン;老化由来阻害剤(senescence derived inhibitor)1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン(sobuzoxane);ボロカプテイトナトリウム(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルフォシン酸(sparfosic acid);スピカマイシン(spicamycin)D;スピロムスチン(spiromustine);スプレノペンチン(splenopentin);スポンギスタチン(spongistatin)1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド(stipiamide);ストロメライシン阻害剤;サルフィノシン(sulfinosine);過剰活性型血管作用性腸ペプチドアンタゴニスト(superactive vasoactive intestinal peptide antagonist);スラジスタ(suradista);スラミン;スウェインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン(tazarotene);テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン(tetrazomine);サリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン(thiocoraline);トロンボポエチン;トロンボポエチンミメティック;チマルファシン;サイモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン(tin ethyl etiopurpurin);チラパザミン(tirapazamine);二塩化チタノセン(titanocene bichloride);トプセンチン(topsentin);トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン(triptorelin);トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン(tyrphostins);UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド(vapreotide);バリオリン(variolin)B;ベクター系,赤血球遺伝子療法;ベラレゾール(velaresol);ベラミン(veramine);ベルジン(verdin);ベルテポルフィン(verteporfin);ビノレルビン;ビンキサルチン;バイタクシン(vitaxin);バロゾール(vorozole);ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー。好ましいさらなる抗癌剤は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、カプシタビン(capsitabine)、シクロホスファミド、およびゲムシタビンである。固形腫瘍を有する患者の治療における各活性成分の予防量または治療量の大きさは、一般的に、特定の活性成分、腫瘍の重篤度および種類、ならびに投与経路によって変化する。用量および投与回数は、患者の年齢、体重、応答、および過去の病歴に応じて変化することがある。転移再発の可能性も考慮に入れなければならない。当業者は、このような要因を十分に考慮して、文献で報告され、Physician's Desk Reference(登録商標)(54th ed.,2000)で推奨される投与量に従うことで、適切な投与計画を容易に選択することができる。特別の定めのない限り、本発明の態様において用いられる各医薬品の予防量または治療量の大きさは、当業者に安全かつ有効であることが知られており、法的に認可された大きさである。
【0103】
1つの態様において、本発明による治療方法は、必要とする被検体(例えば、癌(例えば、乳癌、卵巣癌、または前立腺癌)を有する被検体)を、外来遺伝子に対して細胞傷害性T細胞応答を誘発するように設計された第1のポックスウイルスを用いて治療することを含む。癌患者の場合、遺伝子は、PSA、PSAM、BRCA1、ras、CEA、またはMUCなどの腫瘍関連抗原でもよい。感染症にかかっている個体または感染症にかかりやすい個体を治療するために、1種類またはそれ以上のウイルス抗原(好ましくは、ウイルスエンベロープタンパク質)をコードする外来遺伝子を使用することもできる。望ましい癌関連抗原に特異的な細胞傷害性T細胞は、腫瘍関連抗原をコードする配列を有する約105〜109pfuの組換えポックスウイルスを、腫瘍を有する個体に投与することによって生じることができる。このようなベクターの詳細な構築については、例えば、米国特許第5,656,465号を参照のこと。好ましくは、サイトカイン(例えば、IL-2)または補助刺激分子(例えば、B7.1もしくはB7.2)を生物学的アジュバントとして使用するなどの免疫モジュレーターも用いられ、このような免疫モジュレーターをコードする核酸を同じまたは異なる組換えポックスウイルスベクターに挿入することによって宿主に全身投与することができる。1つの好ましい態様において、B7、LFA-3、ICAM-1、およびOX40Lと外来遺伝子を含むポックスウイルスベクターが投与される。
【0104】
本発明は、本発明の例示を目的とする以下の実施例によってさらに特徴付けられる。
【実施例】
【0105】
実施例1:ワクシニア挿入部位の研究
MVAには定義されている挿入部位が比較的少ないために、外来遺伝子が挿入可能なMVAゲノム内の新たな部位の調査が急がされた。公表されたMVA配列(Antoine et al.,1998)の分析によって、他のいくつかの可能性のある挿入部位(以下、MVA44/45、MVA49/50、およびMVA124/125と呼ぶ)が特定された。番号は挿入部位の両側にあるORFを示している。
【0106】
いくつかの基準が満たされているかどうかを確かめる配列の調査の後に、適切な部位が選択された。第1に、挿入部位は遺伝子間空間(好ましくは、非必須遺伝子間)になければいけない。MVA遺伝子が必須であるかどうかの評価は、MVA遺伝子とそのワクシニアホモログを比較した後に確かめられた。第2に、40K、7.5K、およびI3プロモーターのネイティブな部位と挿入部位の間に必須遺伝子がなければいけない。第3に、提案された挿入部位は、この領域の潜在性ORFも、隣接する遺伝子のプロモーターも破壊してはならない。同様に、周囲の遺伝子のT5NT配列は完全な状態のままにしなければならない。
【0107】
新たなベクターの5'隣接領域(flanker)および3'隣接領域に対応する領域を、Pfuポリメラーゼを用いてゲノムDNAから増幅した。これらの断片をプラスミドベクターに挿入し、配列決定した。配列を確認した後、40Kプロモーター下にあるSHIV89.6P env遺伝子とC1-lacZカセットをこれらのベクターに挿入して、IVR用の試験プラスミド:pT5158、pT5164、pT5172を作製した。抗原の選択は、免疫原性比較試験用の利用可能なMVA試薬に合わせられた。
【0108】
部位44/45
MVAにおいて、部位44/45はORF 044Lと045Lの間にあり、MVAゲノム配列(GenBankアクセッション番号U94848)の位置37346-37357にある。これらのヌクレオチド間のDNA配列は組換えウイルスにおいて欠失され、定義されたインサートで置換された。この領域は、MVA 044Lの翻訳開始コドンの5'であり、MVA 045Lの翻訳停止コドンの3'である。この領域はワクシニアコペンハーゲン配列(GenBankアクセッション番号M35027)に存在する。対応するワクシニアORFはF14L(MVA 044Lのホモログ)およびF15L(MVA 045L)である。NYVACのDNA配列はGenBankでは入手できないが、NYVACゲノムのこの領域が改変されたことを示す文献は全くない。
【0109】
部位49/50
MVAにおいて、挿入部位49/50はORF 049Lと050Lの間にあり、MVAゲノム配列の位置42687-42690にある。この領域は、MVA 049Lの翻訳開始コドンの5'であり、050Lの翻訳停止コドンの3'である。この領域はコペンハーゲン配列に存在し、ホモログはE2L(MVA 049L)およびE3L(MVA 050L)である。この領域はNYVACゲノムにおいて改変されていない。
【0110】
部位124/125
MVAにおいて、挿入部位124/125はORF 124Lと125Lの間にあり、MVAゲノム配列の位置118481-118482にある。この領域は、MVA 124Lの翻訳開始コドンの5'であり、125Lの翻訳停止コドンの3'である。この領域はワクシニア配列に存在し、ホモログはA13L(MVA 124L)およびA14L(MVA 125L)である。文献によれば、この領域はNYVACゲノムにおいて改変されていない。
【0111】
実施例2:鶏痘挿入部位の研究
組換え鶏痘の作製は、一般的に、外来遺伝子およびlacZプロモーター-遺伝子カセットを鶏痘ゲノムの独特の領域に挿入することを伴う。組換えウイルスは、bluo-galによる比色スクリーニングに基づいて選択される。複数の遺伝子-プロモーターカセットをウイルスに挿入できるように、鶏痘ゲノムの代替挿入部位を同定することが望ましい。
【0112】
3つの可能性のある新たな挿入部位を特定し、43K、FP14、およびLUS(Long Unique Sequence)と名づけた。43K挿入部位は、ワクシニアΔ37Kの研究と同様のやり方のプラーク選択に基づいた別の独立した研究の対象である。
【0113】
このプロジェクトの全体的な目的は、外来遺伝子およびlacZがBamHIJ領域に挿入されたものと少なくとも同じくらい安定な挿入部位を同定することである。さらに、これらの新たな部位に挿入を有する組換えウイルスの免疫原性は、BamHIJに挿入を有するものと同じでなければならない。新たなウイルスおよび比較研究に使用できる対照の構成を表1に示す。

表1:鶏痘ゲノムにおける代替挿入部位を試験するために設計されたウイルス組換え体の構造
【0114】
43K挿入部位
鶏痘43K遺伝子は、ワクシニア37Kの主要なエンベロープ抗原遺伝子F13Lと相同性を有する。Calvert et al(1992)は、この遺伝子が、細胞外エンベロープのあるビリオンの生成に重要な主要な膜タンパク質をコードすることを証明した。43Kの発現に基づいて組換えプラークを選択する代わりとして、本発明者らは、43Kコード領域のすぐ3'側にある領域を鶏痘ゲノムの挿入部位として使用することができるベクターを設計した。この場合、組換えプラークは、比色スクリーニングを用いてlacZ発現についてスクリーニングすることができる。
【0115】
利用可能な43K遺伝子配列(GenBankアクセッション番号M88587)の調査から、43K遺伝子の3'末端とP74遺伝子の5'末端との間に短い遺伝子間空間があることが明らかになった。5'隣接領域が43K遺伝子配列のnt282-1753に対応するプラスミドを設計した。この配列は、43K遺伝子の338bpの5'非翻訳配列および全コード領域を含む。5'隣接領域に存在する43K遺伝子の最後の12コドンと、74K遺伝子プロモーターの一部である3'隣接領域に存在するネイティブな配列との組換えの可能性を最小限にするために、これらのコドンにゆらぎ(wobble)を作製した。3'隣接領域は43K遺伝子配列のnt1718-2233に及び、43Kコード領域の末端12コドン、p74プロモーター、およびp74コード領域の最初の442bpからなる。43Kコード領域の末端部分は、ポックスウイルス転写配列に対応するいくつかのモチーフを含み、p74の機能に必要とされると予想される。試験ベクターpT5104は、これらの隣接領域の間に40K-BH10 envおよびC1-lacZプロモーター-遺伝子カセットを挿入することによって構築した。
【0116】
現在、鶏痘は完全に配列決定されており、そのゲノム配列はGenBankアクセッション番号AF198100で入手することができる。このゲノム配列内で、43K挿入部位は鶏痘(fowlfox)ゲノム配列の位置128178にあり、FPV107の5'およびFPV108の5'にある。これらの遺伝子は多岐にわたって転写され、挿入部位は、2つのORFの2つのプロモーターエレメントの間にある。
【0117】
FP14挿入部位
この挿入部位は、ワクシニアウイルスのHindIIID領域と一定の相同性を有する10.5kb HindIII断片に対応する、Tartaglia et al(1990)によって作製された配列(アクセッション番号X17202)から同定された。この領域は、ウイルスゲノムの左末端から約70kbの位置にマッピングされた。この領域の一部もBinns et al.(1990)によって配列決定された。Binns et al.は、この領域にある特定の遺伝子にlacZを挿入することによって、いくつかの安定した組換えウイルスを作製した。Tartaglia et al(1990)の配列の1つの特定の領域は、新たな挿入部位に重要であることが以前に突き止められた基準:遺伝子間の距離が十分な遺伝子間空間であること;隣接する遺伝子のプロモーター領域を破壊しないこと;および潜在性オープンリーディングフレーム(ORF)がこの領域に無いこと、の多くを満たしている。
【0118】
この新たな挿入部位の領域はFP14の終わりとFP18の始まりの間にある。これらの遺伝子はどちらもゲノムの右側に向かって転写され、遺伝子間空間は447bpである。ワクシニアD遺伝子の鶏痘ホモログは、この領域の両側にある。これらの遺伝子はワクシニアにおいてウイルス複製に必須のものであることが分かっている。この遺伝子間空間の詳細な分析によってDNAの両鎖に潜在性のマイナーなORFが同定されたが、可能性のある挿入部位がFP18翻訳開始の160bp上流に同定された。この部位は、どの潜在性ORFの部分でもない。プラスミドトランスファーベクターの隣接領域は、TBC-FPVのゲノムDNAからPCRによって作製した。5'隣接領域は、Tartagliaの配列のnt1344-1949の配列に対応し、3'隣接領域はnt1964-2462の配列に対応する。試験ベクターpT5105は、これらの隣接領域の間に40K-BH10 envおよびC1-lacZプロモーター-遺伝子カセットを挿入することによって構築した。
【0119】
GenBankに寄託された鶏痘ゲノム配列内で、FP14挿入部位は鶏痘ゲノム配列の位置67080-67097にあり、FPV060の5'およびFPV061の3'にある。
【0120】
LUS挿入部位
ポックスウイルスゲノムのITR(Inverted Terminal Repeat)は外来遺伝子を挿入するための魅力的な選択肢である。ゲノム末端間で組換えが起こると、遺伝子がゲノムの一方の末端に挿入されて重複が起こる可能性があり、従って、挿入された抗原の発現レベルが増大し、結果として組換えウイルスの免疫原性が高まる可能性がある。鶏痘ITR領域の配列を述べた2つの文献報告がある:Boursnell et al(1990)およびTomley et al(1988)。鶏痘ゲノムの左端のITR領域は約10kb長であり、2種類の配列:約4kbのタンデム反復配列および約6kbのLUS(Long Unique Sequence)配列を含む。Boursnell et al(1990)は、ニューカッスル病ウイルスとlacZコード領域の融合遺伝子を、LUSの遺伝子に挿入できることを証明し、2コピーの挿入遺伝子を有する安定した組換え体を作製した。
【0121】
Tomley et alの配列(GenBankアクセッション番号D00295)の調査から、2つの同定されたORFの間に410bpの大きな遺伝子間空間があることが分かっている。この配列には潜在性ORFがあるが、これらの反対方向に転写されるORFのプロモーター間に、可能性のある挿入部位が同定された。隣接領域に対応するDNAの断片をTBC-FPVからPCR増幅し、隣接領域の間に40K-BH10 envおよびC1-lacZカセットを挿入することによって、試験ベクターを構築した。5'隣接領域および3'隣接領域は、それぞれ、Tomley配列のnt1322-1954および1961-2660に対応する。
【0122】
GenBankの鶏痘ゲノム配列内にはウイルスゲノムの各末端に2つのLUS配列があり、従って、各ゲノムに2つのLUS挿入部位がある。ゲノムの左端にあるLUS挿入部位は鶏痘ゲノム配列の位置7470-7475にあり、FPV006の3'およびFPV007 125Lの5'にある。ゲノムの右端にあるLUS挿入部位は鶏痘ゲノム配列の位置281065と281070の間にあり、FPV254の5'およびFPV255の3'にある。
【0123】
組換え体の選択および分析
IVRはCEDにおいて行われ、10個の独立したプラークが7回の精製にかけられる。これらの分離株のBH10 env発現は暫定的なバックプラークプラーク(back plaque)分析で試験され、4個の独立した分離株が選択および増幅されて、小さなシードストック(それぞれ、2〜3×15cmプレート)が得られる。力価測定の後、安定性を観察するために、これらは、CEDにおいてmoi=0.1で2回継代される(それぞれの分離および増幅用に1×15cmプレート)。
【0124】
3回の独立したIVRを独立して行うことができるが、継代は同時に行われ、vT155も含む。これらの組換え体ならびにその継代1(P1)および継代2(P2)の収率が求められた後、安定性がブラックプラーク(black plaque)アッセイにって評価され、envの発現がELISAによって評価され、それぞれの挿入部位について最良の分離株が免疫原性研究のために選択される。
【0125】
免疫原性研究
小規模の免疫原性研究から、envがFPVのBamHIJ断片に挿入されたvT155と同じくらい良好に、新たな挿入部位がHIV-1 BH10 envに対する免疫応答を誘発するかどうかが確かめられる。5種類のウイルスに対応する5つのマウス群(それぞれ5匹)に、106または107pfuのウイルスが3週間間隔で4回注射され、それぞれの注射の前に採血が行われる。全ての血液試料のHIV-1 env抗体がELISAによって試験される。
【0126】
実施例3:挿入物を含むワクシニアおよび鶏痘組換えベクター
特定された遺伝子間部位に試験抗原を含むMVA組換えベクターを首尾よく作製し、評価した。すなわち、これらを使用し、適切なタンパク質を発現させた。これらのベクターに挿入されたDNAは、以下のエレメント:40Kポックスウイルスプロモーターの制御下にあるSHIV 89.6P env遺伝子、およびC1ポックスプロモーターの制御下にある大腸菌マーカー遺伝子LacZを含んでいた。SHIV 89.6Pエンベロープ遺伝子は、キメラサル/ヒト免疫不全症ウイルス1型分離株である(Reimann,K.A. et al.,1996.J Virol.70:6922-6928;Yao Q.et al.,AIDS Res Hum Retroviruses.2000 Feb 10;16(3):227-36)。以下の模式的な組換えウイルス構造は、a)MVAのMVA44/45;b)MVAのMVA49/50;およびc)MVAのMVA124/125への、このインサートの挿入を示す:
a)---5'隣接領域44/45-40K-SHIV 89.6P env-C1-LacZ-44/45 3'隣接領域---
b)---5'隣接領域49/50-40K-SHIV 89.6P env-C1-LacZ-49/50 3'隣接領域---
c)--5'隣接領域124/125-40K-SHIV 89.6P env-C1-LacZ-124/125 3'隣接領域-。
【0127】
試験抗原を含む鶏痘組換えベクターも首尾よく作製し、評価した。挿入された外来DNAは、以下のエレメント:40Kポックスウイルスプロモーターの制御下にあるHIV BH-10エンベロープ遺伝子、およびC1ポックスプロモーターの制御下にある大腸菌マーカー遺伝子LacZを含んでいた。HIV BH-10遺伝子は以前に説明されている(Muesing,M.A.et al.,1985 Nature.313:450-8;Yao Q.et al.,AIDS Res Hum Retroviruses.2000 Feb 10;16(3):227-36)。以下の模式的な組換えウイルス構造は、a)FPVのFPV 43K;b)FPVのFP14;およびc)FPVのFP LUSへの、このインサートの挿入を示す:
a)---5'隣接領域43K-40K-BH10 env-C1-LacZ-43K 3'隣接領域---
b)---5'隣接領域FP14-40K-BH10 env-C1-LacZ-FP14 3'隣接領域---
c)---5'隣接領域 LUS-40K-BH10 env-C1-LacZ-LUS 3'隣接領域---。
【0128】
MVAおよびFPVのこれらの挿入部位を用いて、さらなる組換えベクターが今日まで作製されている。
【0129】
例えば、新規の鶏痘挿入部位FP14に挿入物を有する組換えベクターのさらなる例は、組換えワクチンベクターPANVAC-Fである。PANVAC-Fは2つのプラスミドベクターを用いて構築した。このベクターの構築を図示した図を図1に示す。pT1154と名付けた第1のプラスミドは、wCEA(6D)およびwMUC-1(6)コード配列を、鶏痘ウイルスゲノムのFP14領域に挿入する。pT8150と名付けた第2のプラスミドは、LFA-3、ICAM-1、およびB7.1コード配列(TRICOMと総称される)を、鶏痘ウイルスゲノムのBamHIJ領域に挿入する。wCEA(6D)遺伝子はワクシニア40Kプロモーターの転写制御下にある。wMUC-1(6)遺伝子は合成初期/後期(sE/L)プロモーターの転写制御下にある。LFA-3遺伝子はワクシニア30Kプロモーターの転写制御下にあり、ICAM-1遺伝子はワクシニアI3プロモーターの転写制御下にあり、B7.1遺伝子は合成初期/後期(sE/L)プロモーターの転写制御下にある。さらに、pT1154は、ワクシニア40Kプロモーターの制御下にある大腸菌lacZ遺伝子(組換え子孫のスクリーニングとして含まれる)を含み、pT8150は、7.5プロモーターの制御下にあるGUS遺伝子(組換え子孫のスクリーニングに用いられる)を含む。POXVAC-TC鶏痘ウイルスワクチン株からプラーク精製された分離株が、この組換えベクターの親ウイルスとして用いられた。このプラスミドベクターとウイルスDNAとの間でインビボ組換えが起こると、図1に図示したように、pT1154がFP14に組み込まれ、pT8150がBamHIJ領域に組み込まれた組換えウイルスが形成した。
【0130】
新規の鶏痘挿入部位FP14に挿入物を有する組換えベクターのさらなる例は、rF-OX40Lと名付けられた組換え鶏痘ウイルスである。このベクターは、40kプロモーターの制御下にあるマウスOX40L遺伝子を、rF-CEAゲノムのFP14部位に挿入することによって作製された。OX40L cDNAは、抗CD40/抗IgM活性化マウスB細胞から、オープンリーディングフレームの末端である

および

に特異的なプライマーを用いてRT-PCRによって増幅された。cDNAをポックスウイルストランスファーベクターにクローニングした。配列分析から、このクローニングプロセスにおいて変異は導入されなかったことが確認された。
【0131】
新規の鶏痘挿入部位FP14に挿入物を有する組換えベクターのさらなる例は、rF-MUC-1-TRICOM/OX40Lと名付けられた組換え鶏痘ウイルスである。このベクターは、40kプロモーターの制御下にあるマウスOX40L遺伝子を、rF-TRICOMゲノムのFP14部位に挿入することによって作製された。OX40Lを発現する組換え鶏痘ウイルスは両方とも以前に述べられた方法(Gritz,L.,Destree,A.,Cormier,N.,Day,E.,Stallard,V.,Caiazzo,T.,Mazzara,G. and Panicali,D.,J Virol 64,5948-57,1990)によって作製された。これらのウイルスもヒトMUC-1遺伝子および細菌β-ガラクトシダーゼ遺伝子を発現する。
【0132】
参考文献

本明細書において引用される参考文献は、全て参照として本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポックスウイルスゲノム内の挿入部位に挿入された少なくとも1つの外来遺伝子を含み、発現することができる組換えポックスウイルスであり、挿入部位は、ポックスウイルスゲノムの2つの隣接する天然のオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域に位置し、該挿入部位への外来遺伝子の挿入は2つの隣接するオープンリーディングフレームの翻訳に影響しない、組換えポックスウイルス。
【請求項2】
オルソポックス、スイポックス、アビポックス、カプリポックス、レポリポックス、およびイリドウイルスからなる群より選択される、請求項1記載の組換えポックスウイルス。
【請求項3】
アビポックスである、請求項2記載の組換えポックスウイルス。
【請求項4】
アビポックスが鶏痘であり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、FPV107/FPV108、FPV060/FPV061、FPV006/FPV007、およびFPV254/FPV255からなる群より選択される、請求項3記載の組換えポックスウイルス。
【請求項5】
オルソポックスウイルスである、請求項1記載の組換えポックスウイルス。
【請求項6】
オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスである、請求項5記載の組換えポックスウイルス。
【請求項7】
ワクシニアウイルスがワクシニアコペンハーゲン(Copenhagen)であり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、F14L/F15L、E2L/E3L、およびA13L/A14Lからなる群より選択される、請求項6記載の組換えポックスウイルス
【請求項8】
ワクシニアウイルスが弱毒ワクシニアウイルスである、請求項6記載の組換えポックスウイルス。
【請求項9】
弱毒ワクシニアウイルスが改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara:MVA)またはNYVACである、請求項8記載の組換えポックスウイルス。
【請求項10】
弱毒ワクシニアウイルスがMVAであり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、MVA44/45、MVA49/50、およびMVA124/125からなる群より選択される、請求項9記載の組換えポックスウイルス。
【請求項11】
外来遺伝子がマーカー、治療剤、または抗原決定基をコードする、請求項1記載の組換えポックスウイルス。
【請求項12】
外来遺伝子が、病原性ウイルス、細菌、他の微生物、寄生生物、および腫瘍細胞からなる群より選択される抗原決定基をコードする、請求項11記載の組換えポックスウイルス。
【請求項13】
外来遺伝子が、病原体において発現される抗原決定基をコードし、病原体が、プラスモディウム、ミコバクテリア、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎、およびHIVからなる群より選択される、請求項11記載の組換えポックスウイルス。
【請求項14】
外来遺伝子が、ホルモンをコードする遺伝子、成長因子をコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、サイトカインをコードする遺伝子、受容体をコードする遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群より選択される、請求項1記載の組換えポックスウイルス。
【請求項15】
被検体において免疫応答を誘導するために用いられる、請求項1記載の組換えポックスウイルス。
【請求項16】
被検体における免疫応答が体液性免疫応答である、請求項15記載の組換えポックスウイルス。
【請求項17】
被検体における免疫応答が細胞性免疫応答である、請求項15記載の組換えポックスウイルス。
【請求項18】
体細胞治療または遺伝子治療に用いられる標的細胞に外来遺伝子を遺伝子送達する方法であり、以下の段階を含む方法:
標的細胞に請求項1記載の組換えポックスウイルスを導入する段階。
【請求項19】
標的細胞が体細胞治療に用いられる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
標的細胞が腫瘍浸潤リンパ球である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
遺伝子が、ホルモンをコードする遺伝子、成長因子をコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、サイトカインをコードする遺伝子、受容体をコードする遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の組換えポックスウイルスを含む、薬学的組成物。
【請求項23】
ワクチンである、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項24】
アジュバントである、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項25】
免疫系の活性化剤、抑制剤、および/または安定剤である、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項26】
有効量の請求項23記載の組成物を、免疫を必要とする被検体に投与する段階を含む、免疫方法。
【請求項27】
有効量の請求項25記載の組成物を投与する段階を含む、必要とする被検体の非特異的免疫系を活性化、抑制、および/または安定化する方法。
【請求項28】
請求項24記載の組成物を投与する段階を含む、ワクチン中の抗原決定基に対する特異的免疫応答を増強する方法。
【請求項29】
哺乳動物において少なくとも1種類の抗原に対する免疫学的応答を誘導する方法であり、以下の段階を含む方法:
ポックスウイルスゲノム内の部位に挿入された該抗原をコードする遺伝子を少なくとも含み、発現することができる少なくとも第1の組換えポックスウイルスを哺乳動物に接種する段階を含み、挿入部位が、ポックスウイルスゲノムの2つの隣接する天然のオープンリーディングフレームの間に位置する、段階。
【請求項30】
組換えポックスウイルスが、少なくとも1種類の免疫促進分子をコードする遺伝子をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのさらなる遺伝子を含み、発現することができる第2のベクターを哺乳動物に接種する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
第2のベクターが、少なくとも1種類の免疫促進分子をコードする遺伝子を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
第1の組換えベクターが、オルソポックス、スイポックス、アビポックス、カプリポックス、レポリポックス、およびイリドウイルスからなる群より選択されるポックスウイルスを含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
第1の組換えベクターがアビポックスを含む、請求項29記載の方法。
【請求項35】
第1の組換えベクターが組換えワクシニアウイルスベクターを含む、請求項29記載の方法。
【請求項36】
組換えワクシニアウイルスが弱毒ワクシニアウイルスであり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、ワクシニアコペンハーゲンのF14L/F15L、E2L/E3L、およびA13L/A14Lに対応する群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
組換えワクシニアウイルスがMVAであり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、MVA44/45、MVA49/50、およびMVA124/125からなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項38】
第1の組換えベクターが組換え鶏痘ウイルスベクターを含む、請求項29記載の方法。
【請求項39】
第1の組換えベクターが鶏痘ベクターであり、挿入部位が一対の隣接するオープンリーディングフレームの間に位置し、この対が、FPV107/FPV108、FPV060/FPV061、FPV006/FPV007、およびFPV254/FPV255からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
第2のベクターがアデノウイルスベクターを含む、請求項29記載の方法。
【請求項41】
第2のベクターが組換えワクシニアウイルスベクターを含む、請求項29記載の方法。
【請求項42】
第2の組換えベクターが組換え鶏痘ウイルスベクターを含む、請求項13記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−252797(P2010−252797A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120319(P2010−120319)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【分割の表示】特願2006−532294(P2006−532294)の分割
【原出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(507325046)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】