説明

ポット型飲料用水素水の生成器

【課題】家庭用のポット型の容器に水素ガスを効率良く、且つ支障なく溶存させ、健康のための飲料用電解水素水をその容器内に生成する装置を提供する。
【解決手段】電解前に原水を貯留して電解後に該原水に水素ガスを生成溶存する生成水用ポット部1と、該生成水用ポット部1を受けて通電を行う台座部2とから成る。該生成水用ポット部1は、水槽室3の底部に反応室5を配し、該水槽室3と該反応室5の間には連通口6を配設し、該反応室5には水平状態に維持した高分子膜11を配すると共に、該高分子膜11の上下を、有孔の金属板で形成された電極板12,13で挟み、該電極板12,13と電極端子との間に電導性を備えたスプリング14,15を介して成る。上記台座部2は、輪状電極コネクタ21と点状電極コネクタ24とを設けて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用電解水素水を生成するポット型生成器に関し、更に詳細には、家庭用のポット型飲料用容器に水素を溶存させて飲料用水とし、健康のために日常的に飲用することのできるポット型生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
人が肺から生体内に取り込んだ酸素は、活性酸素として人の生命を維持するために無くてはならないものである。しかし、この有用な活性酸素にあっても生体内に過剰に存在すると、生体内の細胞は酸化して損傷を受け、癌や生活習慣病など現代病の一因になることが分かってきた。そこで、生体内の過剰な活性酸素を中和して水にし、体外に排出する作用を行う水素の存在が重要視されている。つまり、人は水素水を飲用し、溶存する水素ガスを生体内に導き、生体内の抗酸化酵素と共に、過剰で余分になった活性酸素に還元反応を起こさせ、中性の水を生成して、活性酸素を分解除去する作用を行わせることにある。
【0003】
ところで、上記飲料用の水素水に関し、従来の高分子膜に向けて原水を流入供給しながら電解水素水を生成する装置の提案がある。すなわち、原水が導入される電解室と、該電解室内と該電解室外を区画する隔膜と、この隔膜を挟設する電極板対を有し、該電解室外の電極板が隔膜に接触または僅かな隙間を設けて成る電解装置としている。この装置の導入口から導入された原水は該隔膜にて電解され、導出口から飲料水として電解水素水を取出す提案である(特許文献1)。
【0004】
一方、電解水生成装置の二つ目に、電解酸性水生成装置として、その電解槽内に設置するイオン交換膜とその膜に密着する電極によって電解槽を陰極室と陽極室に区画し、該陰極室側と該陽極室側それぞれに設けた原料水の供給ノズルより供給しながら電解する装置としている。該陰極室と該陽極室にてそれぞれ電解水素水とオゾンを含む電解酸性水が生成され、各室に設けた取出ノズルより該電解槽外部に取出す提案である(特許文献2)。
【0005】
更に、陽極電極と陰極電極との間に陽イオン交換膜が狭持されてなる触媒電極に水を供給すると共に、該陽極電極と該陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成するオゾン水生成装置がある。該陽極電極と該陰極電極に水を供給する原料水供給路を設け、互いに連通する連通穴を両電極に設けて、該陽極電極でオゾン水を生成した後に、該連通穴を介して原水を該陰極電極に供給して陰極水を生成する提案である(特許文献3)。
【0006】
しかし、上記技術は、主に業務用の比較的大型の装置を対象としたものであり、家庭用に向けたものではなく、家庭で簡単に水素水を生成でき、日常の生活の中で頻繁且つ気軽に利用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3349710号
【特許文献2】特開平7−214063号
【特許文献3】特開2008−279341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、家庭用のポット型の容器に水素ガスを効率良く、且つ支障なく溶存させ、健康のための飲料用電解水素水をその容器内に生成する装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1記載のポット型飲料用水素水の生成器は、原水を貯留する生成水用ポット部と、該生成水用ポット部を受けて通電を行う台座部とから成り、
該生成水用ポット部は、a)縦長とした水槽室を設けると共に、その底部に比較的容積の小さな反応室を配し、b)該水槽室と該反応室の間には連通口を形成し、c)該反応室には該水槽室に臨んでほぼ水平状態に維持した高分子膜を配すると共に、該高分子膜の上下を有孔の金属板または金属網体で形成した電極板で挟み、該電極板と上下に配した電極端子との間に電導性を備えたスプリングを介設し、d)該上下に配した電極端子を台座部の電極コネクタに対峙配設して成り、
上記台座部は、輪状電極コネクタと点状電極コネクタとを設けて成る、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載のポット型飲料用水素水の生成器は、上下電極板のうち下部電極板と下部スプリングとの間に、内側に空間領域を形成するカップ型の有孔の金属板または金属網体で形成した金属体を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載のポット型飲料用水素水の生成器は、反応室に生じたガスを一時貯留させるための生成ガス待機室を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載のポット型飲料用水素水の生成器は、台座部に、オゾン発生のための陰極陽極切替スイッチを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載のポット型飲料用水素水の生成器は、生成水用ポット部と台座部とを分離可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポット型飲料用水素水の生成器は、生成水用ポット部を成しているので、原水を貯留し、生成する水素ガスを電解水素水として原水に溶存することができる。すなわち、生成水用ポット部のうちの水槽室を縦長とし、その水槽室の底部に反応室を配しているので、生成する水素ガスが底部から原水面までの最大距離を浮き上がるに従って溶解し、その溶解する時間を保持でき、溶存が最大となる。
更に、該水槽室と該反応室とは連通口を介して原水が連通状態となっているので、両室の水圧が等しい。水圧が等しいので、高分子膜に掛かる負荷が軽減され、反応への障害や損傷が起き難い。該高分子膜は該水槽室に臨んで、ほぼ水平状態に配しているので、該反応室を薄小化することができ、且つ該水槽室もそれに合わせて適度な縦長にすることができ、容器が倒れる心配がない。
上記高分子膜は有孔の金属板または金属網体から成る電極板で挟まれ、且つ、スプリングの線形弾性により該電極板を柔軟に挟着されているので、水の揺動があっても該高分子膜と該電極板との間の高分子膜が破れることはない。
【0015】
請求項2の構成とすれば、下部電極板は、カップ型金属体で下方より覆われるように支えられているので、カップ型金属体に通電されると、上記水槽室内の水素ガス溶存濃度が増大する作用効果が生まれる。その理由は、下部電極板とカップ型金属体の間の空間に電界領域が形成され、その空間内にある水に電界が作用して何らかの電解が惹起され、この空間内に水素イオンが増量するものと推察される。同時に、該空間内には、水素イオンだけでなくオゾンガスも発生し、且つ増量するので、該水槽室より飛散するオゾンガスも増量する。
【0016】
請求項3の構成とすれば、上記反応室にて副反応としてオゾンガスが生成されるが、一時的に溜まる構造にした生成ガス待機室を設けているので、その待機室中でオゾンガスの小さな気泡同士が吸引し、容積と圧力の大きいオゾンガス溜を形成する。すなわち、生成ガス待機室は連通口に付設する下がり壁を設けているので、オゾンガスが一時的に溜まり易い構造であり、容積と圧力の大きいオゾンガスになるまでは、連通口から抜け出ることがない。従って、容積と圧力の大きいオゾンガスが上記水槽室の底部から原水面までの最大距離を浮き上がっても、その途中で原水に溶存することなく、一気に原水面に到達し、空気中に飛散させることができる。
【0017】
請求項4の構成とすれば、陰極と陽極を逆転させることができ、水槽室に電解オゾン水を得ることができる。同時に両電極の清掃ができる。
【0018】
請求項5の構成とすれば、生成水用ポット部のみを持って任意に移動することができ、また、ポット側の電極端子に対峙した嵌合型受け部としているので、再接続時には容易に接続位置が決められ、且つ導通が面接触で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のポット型生成器の生成水用ポット部と台座部の全体斜視図である。
【図2】ポット型生成器の生成水用ポット部と台座部の嵌合状態を示す一部断面図である。
【図3】ポット型生成器の生成水用ポット部と台座部の嵌合部の拡大断面図である。
【図4】生成水用ポット部底部に配設する電極部の斜視図である。
【図5】同電極部の電極ケース蓋を外した状態の斜視図である。
【図6】網体状電極の斜視図である。
【図7】カップ型金属体を示し、(A)全体斜視図、(B)正面図、(C)側面図である。
【図8】電極部内の反応室から生成ガス待機室への生成ガスの排出経路を示す一部断面図である。
【図9】電極部内の生成ガス待機室から水槽室への生成ガスの排出経路を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図1〜図9に基づき、説明する。
【0021】
本発明のポット型生成器100は、図1に示す如く、生成水用ポット部1と台座部2から成り立っている。図2は、本発明のポット型生成器100の生成水用ポット部1と台座部2を、電極端子を介して嵌合させたことを示す一部断面図を示す。図3は、本発明のポット型生成器100の生成水用ポット部1と台座部2の嵌合部の拡大断面図を示す。
生成水用ポット部1は、ピッチャーと呼ばれる縦長の水槽室3と、その底部で該水槽室3を伺える位置にある電極部4の最深部に存する反応室5と、該水槽室3と該反応室5の間の連通口6と、反応後の気体いわゆる生成ガスを一時貯留するための生成ガス待機室7とから成る。
以下に、その各部を詳述する。
【0022】
最初に、水槽室3について、図2で説明すると、水槽室3は、一般にピッチャーと呼ばれる縦長の形状とし、飲料水として日常的に飲用する水を貯留できる容量とし、一般的には1.0〜1.5リットル程度とするのが好ましい。
【0023】
次いで、電極部4について、図4および図5で説明すると、電極部4は、上記水槽室3の直下に位置し、電極ケース9で囲まれて電極等を保護する構造としている。該電極ケース9の上面は電極ケース蓋10を設け、その中央部は水素ガスの流出口として常時開口している。また、該電極ケース蓋10の外周付近に連通口6を設け、原水の上記反応室5への給水口であり、且つ生成されるオゾンガスの排出口として使用する。更に、該電極ケース蓋10を開放した内部において、後述する高分子膜11に電極12、13を配し、スプリング14、15で該電極12、13を挟着して、上部電極側は水槽室3を上に臨み、下部電極側は反応室5として原水の電解が行われる。
【0024】
次に、上記反応室5について、図2および図3で説明すると、反応室5は、上記に示すとおり、電解作用を成す高分子膜11を境にして下部側に配設すると共に、導入された原水の電解により水素イオンとオゾンガスを発生するに充分な容積を備えた室体とする。この室体は、具体的には、例えば一辺25〜50mm、高さ15〜40mm程度としている。
この室体の一部を形成する該高分子膜11はデュポン社製ナフィオン115あるいはナフィオン117(厚さ127〜183μm)とする。該高分子膜11に密着する上記電極12、13は、陰極電極12と陽極電極13とから成る金属板または金属網体で、その材質はチタン基材に白金メッキを施している。その形状は図6で示す。
陰極電極用スプリング14は、陰極電極12を上面から固定すると共に、通電を兼ねて押着し、一方、陽極電極用スプリング15は、同様に陽極電極13と、その下面を支持するカップ型金属体16とを更に下方から固定すると共に、通電を兼ねて押着する。該カップ型金属体16の材質は厚さ0.3mmのステンレス鋼とし、その形状は図7で示す。この図で、(A)は該カップ型金属体の全体斜視図を示し、(B)、(C)はそれぞれ該カップ型金属体の正面図、側面図を示している。
また、該スプリング14、15は、上記高分子膜11と上記電極12、13を挟着させ、且つ該高分子膜11に通電できる電導性を有し、100〜300gの荷重範囲において線形弾性を保有する。
更に、該陰極電極用スプリング14の上方に陰極電極スプリング接続用端子17を設け、これと生成水用ポット部1の底部に位置するネジ状陰極電極連結用端子18との間に、陰極電極用リード線19を設けてその両端を接続し、該ネジ状端子18に付設の陰極電極通電自在接触ノブ20を介して、外部の台座部2の輪状電極コネクタ21と導通する。一方、同様に該スプリング15の下方にネジ状陽極電極連結用端子22を設け、これに付設の陽極電極通電自在接触ノブ23を介して、外部の台座2の点状電極コネクタ24と導通する。
本発明の電極端子とは、生成水用ポット部1の底部に位置する陰極電極スプリング接続用端子17、ネジ状陽極電極連結用端子22など該陰極電極用スプリング14、陽極電極用スプリング15以降の各部位を総じた導通材をいう。
【0025】
次いで、生成ガス待機室7について、図2および図3で説明すると、生成ガス待機室7は、上記反応室5で生成されたオゾンガスが一時的に貯留する場である。ここに集まったオゾンガスは次第に大きい容積と圧力を保持するようになり、大きなオゾンガス溜となって連通口6より上記水槽室3に排出され、該水槽室3の原水面より外気に排気される。
本発明のオゾンガスとは、電解にて生じたオゾンガスと酸素ガスが混合された気体をいう。
【0026】
次に、台座部2について、図1、図2および図3で説明すると、台座部2は、上記水槽室3および反応室5等を備えた上記生成水用ポット部1を下から支えると共に、該反応室5に係る電極12、13に直流電力を供給するために、陰極陽極切替スイッチ25を含む電源制御部にて家庭用交流電源を低電圧に変圧し、交流−直流アダプタで直流電源に変換して、該電極12、13に対応して輪状に設けた電極コネクタ21、点状に設けた電極コネクタ24をそれぞれに導通させている。
上記に示す通り、上記輪状電極コネクタ21は上記生成水用ポット部1の裏面に埋設する上記陰極電極通電自在接触ノブ20に対峙導通し、上記ネジ状陰極電極連結用端子18に接続し、上記陰極電極用リード線19を介して上方の上記陰極電極スプリング接続用端子17に接続し、上記陰極電極12にて電解の働きを成す。一方、上記点状電極コネクタ24も同様に、上記生成水用ポット部1の裏面に埋設する上記陽極電極通電自在接触ノブ23に対峙導通し、上記ネジ状陽極電極連結用端子22に接続して、カップ型金属体16にて電解増強の働きを成し、陽極電極13における電解の働きを支援する。
【0027】
次いで、電源切替部について、図1、図2および図3で説明すると、電源切替部は特に陰極陽極切替スイッチ25で、陰極と陽極を逆転させて上記生成水用ポット部1の上記水槽室3に電解オゾン水を供給する働きを成すもので、上記電極部4下部に配設する上記反応室5に水素ガスを発生させて外気に排気するものとなる。
【0028】
最後に、生成水用ポット部1と台座部2の分離構造について、図1、図2および図3で説明すると、上記生成水用ポット部1に原水を供給する場合、該生成水用ポット部1と台座部2とを分離させ、該生成水用ポット部1のみを持って水道蛇口に向かうことになる。更に、電解完了後においても同様に、該生成水用ポット部1と台座部2とを分離させ、該生成水用ポット部1のみを持って電解水素水をコップなどに注いで飲むことになる。このように、原水の供給や生成水の飲用を容易に成すことができる構造としている。
【0029】
上記構成に基づく本発明の電解水素水生成器の作用および効果を説明する。
先ず、水槽室3について説明すると、ポット型生成器100の一部断面図を示した図2に示す如く、ポット型生成器100の生成水用ポット部1に原水となる水道水を水槽室3に供給すると、該水槽室3内に水道水が満たされると同時に、その水は該水槽室3の底部にある電極部4の連通口6に向かい、自重で反応室5内に流入する。
上記生成水用ポット部1にあって、その水槽室3を縦長とし、且つ該水槽室3の底部に反応室5を配しているので、後述する該反応室5で生成した水素イオンは高分子膜11を通過して水素ガス化し、この水素ガスが該水槽室3の底部から原水面まで浮き上がるときに、縦方向の最大距離を移動することとなり、溶解する時間を保持でき、水素水として原水に効率良く溶存させることができる。
【0030】
次に、反応室5における電解作用を説明すると、上述の如く、水槽室3および連通口6を経て、水道水は反応室5に流入し、これを満たすと、その時点で水槽室3の水面の下降がなくなる。この下降が無視できることを確認した時点で、ポット型生成器100の入力スイッチをONとする。
入力スイッチONにより、陰極電圧12と陽極電圧13とにそれぞれ直流電圧13ボルト、直流電流1050ミリアンペアが印加されると、次第に、該反応室5にある陽極電圧13面において原水の電解が起こり、化1および化2の化学反応が惹起される。
【化1】

【化2】

上記の該化1にて生成した水素イオンと電子は高分子膜11を通過して陰極電極側に移行し、陰極電極12面において化2の化学反応式に従って水素ガスが生成され、原水に溶解して電解水素水を生成する。
該化1にて生成したオゾンガスは、前記生成ガス待機室7、連通口6、水槽室3を順に経由して外気に排気される。
【0031】
上記電解条件、すなわち直流電圧12.68ボルト、直流電流1050ミリアンペアを印加して得られた電解水素水の水素ガス溶存濃度は、通電時間10分で300ppb、15分で340ppbであった。
ところが、上記反応室5内に存する陽極電極13と陽極電極用スプリング15の間にカップ型金属体16を配設して、上記同条件で、且つ上記化1に従う電解を行うと、得られた電解水素水の水素ガス溶存濃度は、通電時間10分で490ppb、15分で515ppbと、それぞれ63%および51%の向上を観測した。この向上の要因は、陽極電極13面に接触する水の電解だけではなく、陽極電極13とカップ型金属体16の間の1〜2mmの空間にも電界領域が形成され、その空間内にある水に電界が作用して何らかの電解が惹起され、この空間内に水素イオンが増量し、この水素イオンが高分子膜11を通過して水素ガス化し、上記水槽室3内の水素ガス溶存濃度が増大したものと推察される。
一方、陰極陽極切替スイッチ25を使用して陰極と陽極を逆転させると、生成水用ポット部1の水槽室3に電解オゾン水を生成する。このときの直流電圧12.50ボルト、直流電流1250ミリアンペアを印加して得られた電解オゾン水のオゾンガス溶存濃度は、通電時間10分で0.07mg/L、15分で0.1mg/Lであった。次いで上記同条件となるカップ型金属体16を配設して、前記化1に従った電解を行うと、得られた電解オゾン水のオゾンガス溶存濃度は、通電時間10分で0.8mg/L、15分で1.2mg/Lと、それぞれ11.4倍および12倍の向上を観測した。オゾンガス溶存濃度については、上記水素ガス溶存濃度と同様に、陽極から陰極に逆転した電極13面に接触する水の電解と、該陰極電極13面とカップ型金属体16面の間の1〜2mmの空間に電界領域の形成による水の電解が惹起され、上記水素ガス発生機構と同様の原理が働いてオゾンガス溶存濃度が大きくなるものと思料される。
【0032】
このような電解により、水素ガスは該水槽室3内を上昇しながら原水に溶解して、該水槽室3、いわゆる該生成水用ポット部1に電解水素水を生成するが、縦長の該水槽室3が効率良く水素を溶解させるのは上述したとおりである。
また、高分子膜11は、該水槽室3に臨んでほぼ水平状態に配しているので、該反応室3を横長の扁平状とすることができ、該高分子膜11を縦長とした場合に比して、該水槽室3を肉薄の状態として全体の背高を低くすることができ、卓上に置いた場合にポット型生成器100が倒れる等の危険を回避する。
【0033】
一方、該高分子膜11を水平としたことで、該水槽室3内の水の自重を受けることとなり、更にピッチャータイプの生成水用ポット部1を持ち歩いた場合には、水面に上下方向に揺動が起こり、該高分子膜11には大きな負荷が生じる恐れがある。
しかし、該高分子膜11には、有孔の金属板または金属網体から成る電極板で上下に挟着すると共に、スプリング14、15の線形弾性により該電極板を柔軟に押着状態に接合されているので、水の揺動があっても該高分子膜11と該電極12、13との間の接触が断たれることはない。
【0034】
次に、生成ガス待機室7における作用について説明すると、図8中の反応室5から生成ガス待機室7への矢印xで表示するように、反応室5にて上記化1の化学反応式に従ってオゾンガスが生成され、生成ガス邪魔板8の配設によりオゾンガスの流出経路を長くしている。すなわち、オゾンガス同士の衝突回数を増やしてオゾンガス溜を形成し、オゾンガスが連通口6から直ぐに排出することなく、オゾンガス溜が生成ガス待機室7へ移動し易くし、そこにおいて待機し易くしている。この流れに次いで、図9中の該生成ガス待機室7に待機中のオゾンガス溜は次第に大きなガス溜を形成し、該生成ガス待機室7の容積を超えると連通口6を経て水槽室3に流出することとなる。この流出経路を示す矢印y表示は、該生成ガス待機室7に充満したオゾンガスの流れを示す。
すなわち、該反応室5で発生したオゾンガスは該生成ガス待機室7に移動して一時待機し、オゾンガスが該生成ガス待機室7に充満すると、その容積と圧力により該連通口6を経由し、水槽室3を通って大気中に排気される。
該生成ガス待機室7は容積と圧力の大きいオゾンガスを形成する矩形状の室体で、且つこの室体には、直径が3mmで、高さが1〜2mmの円形状の下がり壁を付設したオゾンガスの該連通口6が1箇所配設されている。該生成ガス待機室7に一時待機したオゾンガスは水素ガスよりも大きい気泡を形成し、且つ気圧が大きくなって、該水槽室3中の上昇流速が大きくなる。従ってオゾンガスは原水面までの移動距離が水素ガスと同じであっても、該水槽室3の水に溶解することなく素早く上昇し、原水面より大気中に排気される。
【0035】
更に、陰極陽極切替スイッチ25を用いれば、陰極と陽極を逆転させることで、生成水用ポット部1の水槽室3に電解オゾン水を得ることができる。即ち、陰極陽極切替スイッチ25で陰極と陽極を逆転させると、これまで水槽室3側に生成していた水素が電極部4下部の反応室5側に、反応室5側に生成していたオゾンが水槽室3側に生成される。
該水槽室3に発生したオゾンが水に溶解して電解オゾン水が得られる一方で、反応室5に発生した水素ガスは、生成ガス待機室7を経て連通口6を経由し、水槽室3を通って大気中に排気される。同時に、両電極の清掃ができる。
得られた電解オゾン水は、食器の洗浄や各種器具等の除菌殺菌に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、健康用電解水素水の生成器を成し、生成された電解水素水を飲むことで健康の維持に努めることができると共に、日常的に気軽に用いることができ、家庭用のポット型生成器として具現される。
【符号の説明】
【0037】
1 生成水用ポット部
2 台座部
3 水槽室
4 電極部
5 反応室
6 連通口
7 生成ガス待機室
8 生成ガス邪魔板
9 電極ケース
10 電極ケース蓋
11 高分子膜
12 陰極電極
13 陽極電極
14 陰極電極用スプリング
15 陽極電極用スプリング
16 カップ型金属体
17 陰極電極スプリング接続用端子
18 ネジ状陰極電極連結用端子
19 陰極電極用リード線
20 陰極電極通電自在接触ノブ
21 輪状電極コネクタ
22 ネジ状陽極電極連結用端子
23 陽極電極通電自在接触ノブ
24 点状電極コネクタ
25 陰極陽極切替スイッチ
100 ポット型生成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留する生成水用ポット部と、該生成水用ポット部を受けて通電を行う台座部とから成り、
該生成水用ポット部は、
a)縦長とした水槽室を設けると共に、その底部に比較的容積の小さな反応室を配し、
b)該水槽室と該反応室の間には連通口を形成し、
c)該反応室には該水槽室に臨んでほぼ水平状態に維持した高分子膜を配すると共に、該高分子膜の上下を有孔の金属板または金属網体で形成した電極板で挟み、該電極板と上下に配した電極端子との間に電導性を備えたスプリングを介設し、
d)該上下に配した電極端子を台座部の電極コネクタに対峙配設して成り、
上記台座部は、輪状電極コネクタと点状電極コネクタとを設けて成る、
ことを特徴とするポット型飲料用水素水の生成器。
【請求項2】
上下電極板のうち下部電極板と下部スプリングとの間に、内側に空間領域を形成したカップ型の金属板または金属網体で形成した金属体を設けて成る請求項1記載のポット型飲料用水素水の生成器。
【請求項3】
反応室に生じたガスを一時貯留させるための生成ガス待機室を設けて成る請求項1または2記載のポット型飲料用水素水の生成器。
設けたことを特徴とするポット型飲料用水素水の生成器。
【請求項4】
台座部に、オゾン発生のための陰極陽極切替スイッチを設けて成る請求項1〜3のうちいずれか1項記載のポット型飲料用水素水の生成器。
【請求項5】
生成水用ポット部と台座部とを分離可能にして成る請求項1〜4のうちいずれか1項記載のポット型飲料用水素水の生成器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−217868(P2012−217868A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82463(P2011−82463)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(597073807)株式会社日省エンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】