説明

ポテトペプチド混合物の製造方法

【課題】乾燥ポテトプロテインの酵素分解時に生成する乾燥ポテトプロテイン由来の無機成分、色素を効率的に除去するペプチド混合物の製造方法を製造する方法を提供する。
【解決手段】乾燥ポテトプロテインを濃度の薄い塩酸溶液及び又は酢酸溶液で処理し、処理液から得られた固形分を酵素分解してポテトペプチド混合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテインとを酵素分解して、ポテトペプチドを含む混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポテトプロテインは、馬鈴薯由来のタンパク質であり、良質な植物性タンパク質として利用が期待されている。しかし、大豆たんぱくに比べ、味の点で劣り、また、難消化性であること及び外観が灰褐色で見栄えが悪いため、単独で食品として活用されることはほとんどない。しかし、タンパク質のアミノ酸組成で大豆タンパクに劣ることがないので、補助食品やポテト以外の食材の旨み(うまみ)成分等との混合調味料とすることが提案されている。例えば、特許文献1には、ポテトプロテインを加水分解して、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチド混合物を製造することが開示されている。また、特許文献2には、ポテトプロテインの加水分解物にビートアミノ酸を配合して調味料を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3373156号公報
【特許文献2】特許第2967121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示すように、ポテトプロテインは、馬鈴薯を磨砕して粗デンプンを抽出した残液に含まれるたんぱく質を加熱して凝固沈殿し、乾燥させることにより製造される。
【0005】
乾燥ポテトプロテインの加水分解には塩酸を用いる方法と酵素を用いる方法とがある。塩酸を用いた加水分解は酵素分解に比べ、ペプチドへの変換速度が速い。しかし、動植物性プロテインを塩酸で加水分解すると、3−モノクロロ−プロパン1,2−ジオール(以下、MCPという)という発がん性の疑いのある物質が生成することが知られているため、塩酸で動植物性プロテインを加水分解して、ペプチドあるいはアミノ酸を含有する食品とすることは好まれていない。
【0006】
乾燥ポテトプロテインの酵素分解を効率的に行うためには、酵素分解の前に水と十分に親和させ、水に懸濁させる必要がある。しかし、ポテトプロテインは水中での分散性が悪く、懸濁が困難であるため、酵素分解効率が低いという問題がある。また、乾燥プロテイン中には馬鈴薯の磨砕時に生成する褐色のポリフェノール酸化物やチロシナーゼによって生成するメラニン色素がタンパク質と結合して存在しているため、乾燥プロテインは灰褐色を呈している。灰褐色成分(以下、色素という)は、タンパク質の酵素分解後に水溶液中に溶出し、ペプチド含有溶液が黒褐色を呈するため、得られるタンパク質分解物が着色し、商品価値に影響を及ぼすので取り除く必要がある。
【0007】
また、ポテトペプチドをポテト以外の食材の旨み成分等と混合した場合、混合物中に含まれる無機成分が苦味を呈し、混合物の味を悪くする原因になるので、食品又は補助食品とするために無機成分を取り除く必要がある。
【0008】
色素や無機成分を除去するため、酵素分解後にキレート樹脂や多孔性樹脂等による処理が行われているが、ポテトプロテインには色素や無機成分が多く含まれるため、樹脂等への負荷が大きく、色素や無機成分の除去処理の負荷を軽減することが求められている。
【0009】
また、前述したように、ポテトペプチドとポテト以外の食材の旨み成分を配合する場合、ポテト以外の食材中の無機成分や鉄分をあらかじめ取り除いておくことが望ましく、特許文献2のように、あらかじめイオン交換樹脂による脱塩、脱色処理が施されたビートアミノ酸をポテトペプチド混合物に配合して調味料とすることが提案されている。
【0010】
ポテトペプチドをポテト以外の食材の旨み成分と配合するにあたり、ポテトペプチドとポテト以外の食材に対し、それぞれ別々に脱塩、脱色処理を行わずに、乾燥ポテトプロテインとポテト以外のプロテイン含有物とを混合して酵素分解して、脱塩、脱色処理を行うことも考えられる。しかし、(1)乾燥ポテトプロテインの酵素分解効率が低いことに加え、(2)乾燥ポテトプロテインとある種のプロテイン(例えば魚粉)とを混合する場合、乾燥ポテトプロテインに含まれる鉄分と、魚粉等のプロテインに含まれる鉄分とがポテト由来のポリフェノールと反応して色素を生成するため脱色処理の負荷量が大きくなってしまう。したがって、脱塩、脱色処理を施していない乾燥ポテトプロテインとポテト以外のプロテイン含有物とを混合して酵素分解する場合には、イオン交換樹脂処理やイオン交換膜処理等に過剰な負荷をかけることになり、精製工程のメンテナンス、ランニングコストの観点から好ましくないことが指摘されていた。
【0011】
本発明は、乾燥ポテトプロテインの酵素分解時に生成する黒褐色の色素量を少なくし、かつ酵素分解の効率を改善し、ペプチドの収率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、乾燥ポテトプロテインを希酸溶液に浸漬し、処理液から分離した固形分にポテトプロテイン以外のプロテイン含有物を混合して酵素処理することを特徴とする、ポテトペプチド混合物の製造方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とを希酸溶液に浸漬した後、酵素処理することを特徴とする、ポテトペプチド混合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥ポテトプロテインやポテトプロテイン以外のプロテイン含有物に含まれる無機成分や色素又はポリフェノール等の着色成分を効率的に除去することができるので、精製工程における脱塩・脱色処理の負荷を少なくすることができる。また、乾燥ポテトプロテインが希酸溶液中で膨潤するため、酵素分解の効率が良くなり、ペプチド混合物の収率を向上させることが可能となる。さらに、無機成分が効率よく除去されるのでポテトペプチド混合物の味の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のポテトペプチド混合物の製造方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】本発明の乾燥ポテトプロテインの製造方法の別の実施形態を示すフロー図である。
【図3】公知のポテトプロテインを製造する工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を幾つかの実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0017】
「第一実施形態」
乾燥ポテトプロテインを希酸溶液に浸漬し、処理液から分離した固形分にポテトプロテイン以外のプロテイン含有物を混合して酵素処理することを特徴とするポテトペプチド混合物の製造方法の一つの実施形態を図1に示す。この実施形態は、乾燥ポテトプロテインを希酸溶液に浸漬する工程と、溶液区分と固形分を分離する工程と、得られた固形分にポテトプロテイン以外のプロテイン含有物を混合して酵素処理する工程とを含む、ポテトペプチド混合物の製造方法である。
【0018】
本明細書中において、ポテトペプチド混合物とは、乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物との酵素分解によって生じるジペプチド、オリゴペプチド又は低分子量ポリペプチドやアミノ酸を含む混合物を意味する。
【0019】
乾燥ポテトプロテインは水に懸濁し難く、かえって固まりやすいため、乾燥ポテトプロテイン中に含まれるカリウム、カルシウム、鉄等の無機成分、色素成分やタンパク質に結合したポリフェノールと鉄分とが水溶液中に溶出し難いという特性がある。
【0020】
希酸が塩酸や硫酸のような鉱酸である場合、乾燥ポテトプロテインを希酸溶液に十分に浸漬すれば、無機成分や色素が希酸溶液中に溶出する。鉱酸の濃度は0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%、さらに好ましくは1.5〜2.5重量%の範囲である。鉱酸が塩酸の場合、濃度が0.5%より低くなると無機成分や色素の溶出率が低くなるので好ましくない。
【0021】
希酸が酢酸に代表される有機酸である場合、乾燥ポテトプロテインは希酸溶液中で膨潤して分散し易くなるため、無機成分や色素が希酸溶液中に溶出しやすくなる。有機酸の濃度は2〜5重量%、好ましくは3〜5重量%である。有機酸が酢酸である場合、濃度が2重量%より低いと膨潤効果が低くなるので好ましくない。
【0022】
希酸溶液を鉱酸や有機酸の単独溶液としてもよいが、それらの混合溶液とすることが望ましい。この場合、乾燥ポテトプロテインが有機酸により膨潤されるので無機成分や色素が希酸溶液中に溶出されやすくなる。組み合わせる鉱酸と有機酸は、塩酸と酢酸が望ましい。塩酸と酢酸との混合溶液を用いる場合は、塩酸が0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%、さらに好ましくは1.5%、酢酸が2〜5重量%、好ましくは3重量%である。酢酸濃度が2重量%よりも低いと膨潤効果が低くなり、塩酸濃度が0.5より低くなると無機成分や色素の溶出率が低くなるので好ましくない。
【0023】
塩酸と酢酸との混合溶液による処理は、1〜2時間程度、60℃以上、好ましくは80℃の温度条件で静置して行ってもよいが、緩やかに攪拌することが好ましい。温度が90℃以上になると、タンパク質が低分子化して収率の低下につながるので好ましくない。
【0024】
次に、処理液を溶液区分と固形分とに分離する。膨潤したポテトプロテインを含む希酸溶液は、静置することにより、ポテトプロテインが沈降する。この沈降物を濾過することにより、固形分を分離する。さらに分離して得られた固形分を洗浄してもよい。また、固形分の分離に遠心分離等を行ってもよい。
【0025】
この分離操作により、ポテトプロテインから溶出した無機成分、色素成分、ポリフェノールや鉄分を容易にポテトプロテインから取り除くことができる。
【0026】
次いで、得られた固形分にポテトプロテイン以外のプロテイン含有物を混合して酵素処理を行う。この操作により、ポテトペプチド混合物を得ることができる。
【0027】
ポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とは、馬鈴薯由来のタンパク質以外のタンパク質を含む食品素材であればよく、好ましくは、ポテトペプチドを構成するアミノ酸成分を補うことのできるアミノ酸を含有するタンパク質素材やポテトペプチド混合物の味の欠点を補うことのできるうまみ成分、特にイノシン酸やその前駆体を含む素材が望ましい。具体的には、ビール酵母、脱脂大豆、魚粉、小麦タンパク等の乾燥食品を例示することができる。好ましくは、ビール酵母や脱脂大豆、小麦タンパクのような植物性タンパク質を含む食品素材である。
【0028】
酵素は、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ等のエンド型プロテアーゼを使用すればよく、さらにエキソ型ペプチダーゼを組み合わせて使用することができる。さらに、プロテアーゼやペプチダーゼ以外の酵素、例えば酵母細胞壁溶解酵素、核酸分解酵素や糖質分解酵素等を併用してもよい。酵素処理条件は、使用する酵素の至適pH、至適温度等により適宜条件を選択して行うことができる。酵素処理後は定法に従って、加熱し失活処理を行うことが好ましい。
【0029】
ポテトペプチド混合物は、さらに濾過や樹脂処理等の精製を行ってもよく、また乾燥させて粉末としてもよい。
【0030】
本実施形態の方法は、ポテトプロテインに含まれる無機成分や色素又はポリフェノール等の着色成分を効果的に除去することができるので、ポテトペプチドの精製工程における脱色、脱塩処理の負担を少なくすることができる。
【0031】
「第二実施形態」
乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とを希酸溶液に浸漬した後、酵素処理するポテトペプチド混合物の製造方法の他の一つの実施形態を図2に示す。この実施形態は、乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とを希酸溶液に浸漬する工程と、溶液区分と固形分を分離する工程と、得られた固形分を酵素処理する工程とを含む、ポテトペプチド混合物の製造方法である。この実施形態2は、乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とを希酸溶液で処理する点で、実施形態1と異なる。
【0032】
本実施形態に適するポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とは、前記した、馬鈴薯以外のタンパク質を含む食品素材であればよいが、好ましくは魚粉のように動物性の油分やタンパク質を多く含むものである。これは、動物性の油分やタンパク質を希酸に浸漬することにより取り除かれるためである。なお、浸漬工程、分離工程及び酵素処理工程の操作条件は第一実施形態と同じである。本第二実施形態の方法は、第一実施形態と同様、ポテトプロテインに含まれる無機成分や色素又はポリフェノール等の着色成分を効果的に除去することができるので、ポテトペプチドの精製工程における脱色、脱塩処理の負担を少なくすることができ、さらに、動物性の油分やタンパク質由来の臭みを取り除くことができるので、匂い及び味の観点から、ポテトペプチド混合物をより食品に適したものとすることができる。
【0033】
以下、実施例に沿って本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0034】
ポテトプロテイン10gを塩酸又は塩酸と酢酸の混合溶液に加え、2時間、79〜80℃に保ちながら、緩やかに攪拌してから30分間静置し、沈降物の沈降嵩と上澄み液の鉄イオン濃度及び色の比較を行った。結果を表1に示す。なお、鉄イオン濃度は、ドイツ、E.メルク社の鉄イオン試験紙を上澄み液に浸し、同試験紙に添付された色度表と比較して得られた数値である。
【0035】
【表1】


表1中の膨潤度は、実験例1〜5の沈降嵩を対照の沈降嵩で割った値である。
実験例1より、ポテトプロテインは希塩酸溶液で処理することにより膨潤することがわかる。塩酸単独溶液の場合、濃度2.5重量%で膨潤していることが分かる。
実験例2と実験例4との比較で、塩酸と酢酸が存在することにより、膨潤度が上がることがわかる。混合溶液の場合、塩酸2.5重量%〜5重量%、酢酸0.2重量%〜1重量%で膨潤効果があることがわかる。
上澄み液に溶出した鉄イオンも対照に比べ増加し、上澄み液の色も対照に比べ濃くなっており、希酸溶液に溶出していることがわかる。
【実施例2】
【0036】
実施例2は、実施例1より塩酸濃度を低くした他は、実施例1と同じ条件で処理したものであり、実験例6〜11として表2に示す。
【0037】
【表2】


実施例1同様、ポテトプロテインは希塩酸溶液で処理することにより膨潤することがわかる。また酢酸単独でも、ポテトプロテインが膨潤することがわかる。酢酸濃度は単独溶液の場合、3重量%でも膨潤効果があることがわかる。塩酸と酢酸の混合溶液の場合、塩酸濃度は1重量%〜2重量%でも膨潤効果があることがわかる。上澄み液に溶出した鉄イオンも対照に比べ増加し、上澄み液の色も対照に比べ濃くなっており、希酸溶液に溶出していることがわかる。
【実施例3】
【0038】
ポテトプロテイン50gと魚粉50gに1.5%塩酸500ミリリットルと氷酢酸30ミリリットルとを加え、2時間、79〜80℃に保ちながら、緩やかに攪拌した後、30分間静置した。このときの沈降物の沈降嵩は約170ミリリットルであった。
沈降物を濾過し、水洗して得られた固形分に水600ミリリットルを加え、水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し、アルカラーゼ2.4L(ノボノルディスク社製)0.45gを添加し、57〜60℃で反応させた。なお、沈降物水洗時の洗浄液は褐色を呈していた。反応終了後、水酸化ナトリウム溶液でpH6.8に調整し、ペプチダーゼR(天野エンザイム社製)0.5g及びグルタミナーゼ(大和化成社製)0.3gを添加して55〜60℃で20時間反応させた。
反応液を90℃に加熱して、酵素を失活させてから約30℃に冷却し、パーライト30g及び活性炭6gを加えて15分間攪拌した後濾過した。ろ液は淡黄赤色を呈していた。
ろ液を減圧濃縮した後、60℃で減圧乾燥し、淡黄褐色の乾燥物を43g得た。乾燥物は、水分3.2%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)76.9%、食塩9.7%、鉄分20mg/1000gであり、回収タンパク量は33.1gであった。
【0039】
比較のため、塩酸と酢酸を加えずに処理を行い、ペプチドを製造する実験を行った。ポテトプロテイン50gと魚粉50gに水を加え、2時間攪拌後、濾過し、水洗して固形分を得た。水洗時の洗浄液は淡黄褐色であり、塩酸と酢酸で処理した場合に比べ、薄い色を呈していた。固形分を前述と同じ条件で酵素分解した。得られた乾燥物(31g)は、淡褐色を呈し、塩酸と酢酸混合液により処理をしたものに比べ、薄汚れた感じを与えるものであった。また、水分は2.9%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)72.8%、食塩9.2%、鉄分150mg/1000gであり、回収タンパク量は22.6gであった。比較例の乾燥ペプチドは塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、鉄分を多く含み、回収たんぱく量も低かった。
【0040】
味や匂いの点においても、比較例の乾燥ペプチドは塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、生臭い不快臭があり、旨味が少なかった。
【実施例4】
【0041】
ポテトプロテイン50gに1.5%塩酸250ミリリットルと氷酢酸15ミリリットルとを加え、2時間、79〜80℃に保ちながら、緩やかに攪拌してから30分間静置した。このときの沈降物の沈降嵩は約220ミリリットルであった。
沈降物を濾過し、水洗して得られた固形分に乾燥ビール酵母50gと水600ミリリットルを加え、90℃に加熱して殺菌してから25℃に冷却した。なお沈降物水洗時の洗浄液は淡赤褐色を呈していた。次いで、水酸化ナトリウム溶液でpH9.1に調整し、アルカラーゼ2.4L(ノボノルディスク社製)0.45gを添加し、57〜60℃で反応させた。
塩酸でpHを5.5に調整し、ヌクレアーゼ(天野エンザイム社製)0.1g、プロテアーゼM(天野エンザイム社製)0.3g及びデアミザイム(天野エンザイム社製)0.05gを添加し、47〜50℃で18時間反応させた。
反応液を90℃に加熱して、酵素を失活させてから約30℃に冷却し、パーライト30g及び活性炭6gを加えて15分間攪拌した後濾過した。ろ液は淡黄褐色を呈していた。
ろ液を減圧濃縮した後、60℃で減圧乾燥し、黄褐色の乾燥物を59g得た。乾燥物は、水分3.0%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)52.3%、食塩6.2%、鉄分20mg/1000gであり、回収タンパク量は30.9gであった。
【0042】
比較のため、ポテトプロテインを塩酸及び酢酸で処理せずにペプチドを製造する実験を行った。ポテトプロテイン50gに水を加え、室温で2時間攪拌後30分間静置した。沈降嵩は約75ミリリットルであった。
【0043】
沈降物を濾過して水洗して固形物を得た。水洗時の洗浄液は淡黄褐色であり、塩酸と酢酸で処理した場合に比べ、薄い色を呈していた。得られた固形物に乾燥ビール酵母50g及び水600ミリリットルを加え、前述同様、酵素処理して暗褐色の乾燥物43gを得た。乾燥物は、塩酸と酢酸混合液による処理をしたものに比べ、薄汚れた感じを与えるものであった。また、水分は3.1%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)54.9%、食塩7.3%、鉄分250mg/1000gであり、回収タンパク量は23.6gであった。比較例の乾燥物は塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、鉄分を多く含み、回収たんぱく量も低かった。
【0044】
味の点においても、比較例の乾燥物は、塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、旨味が乏しかった。
【実施例5】
【0045】
ポテトプロテイン50gに1.5%塩酸250ミリリットルと氷酢酸15ミリリットルとを加え、2時間、79〜80℃に保ちながら、緩やかに攪拌してから30分間静置した。
沈降物を濾過し、水洗して得られた固形分に脱脂大豆50gと水600ミリリットルを加え、90℃に加熱して殺菌してから25℃に冷却した。なお、沈降物水洗時の洗浄液は淡赤褐色を呈していた。次いで、水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し、アルカラーゼ2.4L(ノボノルディスク社製)0.5gを添加し、57〜60℃で反応させた。
塩酸でpHを5.5に調整し、プロテアーゼM(天野エンザイム社製)0.6g及びグルタミナーゼ(天野エンザイム社製)0.3gを添加し、50〜55℃で18時間反応させた。
反応液を90℃に加熱して、酵素を失活させてから約30℃に冷却し、パーライト30g及び活性炭8gを加えて15分間攪拌した後濾過した。ろ液は淡黄褐色を呈していた。
ろ液を減圧濃縮した後、60℃で減圧乾燥し、淡黄褐色の乾燥物51gを得た。乾燥物は、水分3.2%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)56.2%、食塩9.0%、鉄分20mg/1000gであり、回収タンパク量は28.7gであった。
【0046】
比較のため、ポテトプロテインを塩酸及び酢酸で処理せずにペプチドを製造する実験を行った。ポテトプロテイン50gに水を加え、室温で2時間攪拌後30分間静置した。
【0047】
沈降物を濾過して水洗して固形物を得た。水洗時の洗浄液は淡黄褐色であり、塩酸と酢酸で処理した場合に比べ、薄い色を呈していた。得られた固形物に脱脂大豆50g及び水600ミリリットルを加え、前述同様、酵素処理して、僅かに黒ずんだ淡褐色の乾燥物44gを得た。乾燥物は、塩酸と酢酸混合液による処理をしたものに比べ、薄汚れた感じを与えるものであった。また、水分は3.6%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)55.8%、食塩9.7%、鉄分350mg/1000gであり、回収タンパク量は24.6gであった。比較例の乾燥物は塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、鉄分を多く含み、回収たんぱく量も低かった。
【0048】
味の点においても、比較例の乾燥物は、塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、えぐ味が強く、旨味に乏しかった。
【実施例6】
【0049】
ポテトプロテイン50gに1.5%塩酸250ミリリットルと氷酢酸15ミリリットルとを加え、2時間、79〜80℃に保ちながら、緩やかに攪拌してから30分間静置した。
沈降物を濾過し、水洗して得られた固形分に小麦タンパク50gと水600ミリリットルを加え、90℃に加熱して殺菌してから25℃に冷却した。なお、沈降物水洗時の洗浄液は淡赤褐色を呈していた。次いで、水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し、アルカラーゼ2.4L(ノボノルディスク社製)0.5gを添加し、57〜60℃で反応させた。
塩酸でpHを5.5に調整し、プロテアーゼM(天野エンザイム社製)0.6g及びグルタミナーゼ(天野エンザイム社製)0.3gを添加し、50〜55℃で18時間反応させた。
反応液を90℃に加熱して、酵素を失活させてから約30℃に冷却し、パーライト30g及び活性炭8gを加えて15分間攪拌した後濾過した。ろ液は淡黄褐色を呈していた。
ろ液を減圧濃縮した後、60℃で減圧乾燥し、淡褐色の乾燥物を68g得た。乾燥物は、水分3.5%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)70.3%、食塩7.8%、鉄分20mg/1000gであり、回収タンパク量は47.8gであった。
【0050】
比較のため、ポテトプロテインを塩酸及び酢酸で処理せずにペプチドを製造する実験を行った。ポテトプロテイン50gに水を加え、室温で2時間攪拌後30分間静置した。
【0051】
沈降物を濾過して水洗して固形物を得た。水洗時の洗浄液は淡黄褐色であり、塩酸と酢酸で処理した場合に比べ、薄い色を呈していた。得られた固形物に小麦タンパク50g及び水600ミリリットルを加え、前述同様、酵素処理して、暗褐色の乾燥物51gを得た。乾燥物は、塩酸と酢酸混合液による処理をしたものに比べ、薄汚れた感じを与えるものであった。また、水分は3.6%、タンパク質(全窒素×6.25で算出)70.6%、食塩8.2%、鉄分180mg/1000gであり、回収タンパク量は36gであった。比較例の乾燥物は塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、鉄分を多く含み、回収たんぱく量も低かった。
【0052】
味の点においても、比較例の乾燥物は、塩酸と酢酸混合物による処理を行ったものに比べ、グルタミン酸特有の旨みが少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ポテトプロテインを希酸溶液に浸漬し、処理液から分離して得られた固形分にポテトプロテイン以外のプロテイン含有物を混合して酵素処理することを特徴とする、ポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項2】
前記希酸溶液が塩酸と酢酸の混合溶液である、請求項1記載のポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項3】
乾燥ポテトプロテインとポテトプロテイン以外のプロテイン含有物とを希酸溶液に浸漬した後、酵素処理することを特徴とする、ポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項4】
前記希酸溶液が塩酸と酢酸の混合溶液である、請求項3記載のポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項5】
前記希酸溶液が濃度0.5〜5%の塩酸溶液又は酢酸溶液である、請求項1又は請求項3記載のポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項6】
前記希酸溶液が塩酸を1〜3%、かつ、酢酸を2〜5%含有する塩酸と酢酸の混合溶液である、請求項2又は4記載のポテトペプチド混合物の製造方法。
【請求項7】
前記ポテトプロテイン以外のプロテイン含有物が食品乾燥物である、請求項1〜6のいずれかに記載のポテトプペプチド混合物の製造方法。
【請求項8】
前記食品乾燥物がビール酵母、脱脂大豆、魚粉及び小麦タンパクから選ばれる1以上の乾燥粉である、請求項7記載のポテトペプチド混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−45342(P2011−45342A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198848(P2009−198848)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(393017535)コスモ食品株式会社 (18)
【Fターム(参考)】