説明

ポリアクリルアミド及びその製造方法

【課題】高品質なポリアクリルアミドの製造方法の提供。
【解決手段】糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり0.1〜100mg含み、かつ40〜60質量%のアクリルアミド含量を有するアクリルアミド水溶液を原料として用いて、アクリルアミド重合化を行うことにより、ポリアクリルアミドを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質なポリアクリルアミド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミド系重合体は、高分子凝集剤、製紙用薬剤、土壌改良剤、石油回収用薬剤、掘削泥水用増粘剤、高分子吸収体等の多くの分野において使用されている。これらの用途に使用するには、非常に高分子量でかつ重合体を水に溶解した場合に水不溶物が少ない等の特性が求められる。
【0003】
このような高分子量かつ溶解性の良好なアクリルアミド系重合体を得る方法として、異常な高分子量の重合体の生成を防止する連鎖移動剤や乾燥時の架橋を防ぐ効果を有する物質を使用する方法等、種々提案されているが、アクリルアミドの品質によるところも大きいとされる。例えば、アクリルアミドの製造において、アクロレインやオキサゾール等の不純物を取り除く方法が、特開平8-157439や特開平10-7638等、種々提案されていることからもそのことが覗える。
【0004】
しかしこれまで、アクリルアミド重合体物性への糖類が及ぼす影響を検討した例は報告されていない。
【0005】
アクリルアミドの製造方法は、従来アクリロニトリルから還元状態の銅を触媒として製造されてきたが、近年銅触媒に代えて微生物酵素を用いる方法が開発され実用化されている。微生物酵素を用いる方法は、その反応条件が温和で副生成物も殆ど無く極めてシンプルなプロセスが組めることから工業的製法として極めて有効である。
【0006】
また不純物が少ないためか、微生物酵素を用いて製造したアクリルアミドは、非常に高分子量でかつ不溶性不純物のない高品質なポリアクリルアミドを製造できる(特開平9-118704)という利点から、近頃ではアクリルアミド製造のメインプロセスとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクリルアミドは、劇物に指定されている毒性の高い物質である。一般的には、高濃度のアクリルアミド水溶液を用いる方が、より高分子量の重合体が形成され、高粘度のポリアクリルアミド水溶液が得られる。昨今では、環境問題、エネルギー問題への関心から、各種産業において利用されるポリアクリルアミドを製造するために用いられるアクリルアミドの使用量を低減することが望ましく、低濃度のアクリルアミドから高い粘度を有するポリアクリルアミドを製造することへの要望が高まっている。即ち、本発明の課題は、低濃度のアクリルアミド溶液から、より高粘度を示すポリアクリルアミドを製造できるアクリルアミド溶液、およびこのようなアクリルアミド溶液から製造されるポリアクリルアミドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を克服するために鋭意検討した結果、糖類が含まれるアクリルアミド水溶液を原料としてポリアクリルアミドを製造すると、糖を含まない等濃度のアクリルアミド水溶液から得られるポリアクリルアミドに比べてより高粘度のポリアクリルアミド水溶液が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下を包含する:
(1)糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり0.1〜100mg含み、かつ40〜60質量%のアクリルアミド含量を有するアクリルアミド水溶液を原料として用いて、アクリルアミド重合化を行うことにより、ポリアクリルアミドを製造する方法;
(2)前記アクリルアミド水溶液が1L当たり1.0〜50mgの糖類を含む、上記(1)記載の方法;
(3)前記アクリルアミド水溶液が1L当たり3.0〜19mgの糖類を含む、上記(1)記載の方法;
(4)前記アクリルアミド水溶液が、微生物から調製した糖類含有液をアクリルアミド水溶液に添加して得られるものである、上記(1)〜(3)のいずれか記載の方法;
(5)微生物がニトリルヒドラターゼ酵素を発現するものである上記(4)記載の方法;
(6)微生物がロドコッカス属細菌である、上記(5)記載の方法;
(7)ロドコッカス属細菌がロドコッカス・ロドクロウスである上記(6)記載の方法;
(8)ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒により製造される上記(1)〜(7)のいずれか記載の方法;
(9)前記アクリルアミド水溶液が、ニトリルヒドラターゼ活性を有し糖類を含有する生体触媒を用いて産生されたものである、上記(1)〜(8)のいずれか記載の方法;
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法により製造されるポリアクリルアミド。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高品質なアクリルアミド水溶液、および低濃度で高性能なポリアクリルアミド溶液を原料として用いて、物性に優れた高性能なポリアクリルアミドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうアクリルアミド水溶液とは、アクリルアミドを40〜60質量%、好ましくは50質量%含有する水溶液である。該アクリルアミド水溶液に過硫酸アンモニウム等の重合開始剤を添加することにより、アクリルアミドが重合してポリアクリルアミド水溶液となる。
【0012】
本発明でいう糖類とは、フェノール硫酸法で検出できる糖類であり、硫酸によりフルフラールおよびフルフラール誘導体を生成する、単糖、多糖、およびその混合物であり、多糖においては、糖タンパクや糖脂質など糖複合体も含まれる。糖類は、酵素などの生体触媒などを用いる方法または化学合成法により製造されたものでもよく、また生物体により産生されたものでも、生物材料から分離したものでもよい。
【0013】
本発明で「生物体を用いて糖類含有液」とは、生物体が産生した糖類を含有する液体をいう。生物体を用いて調製した糖類含有液として、例えばin vitroで培養した微生物等の生物体の懸濁液の遠心上清そのもの、または該遠心上清から精製操作等により調製したものが挙げられる。生物体から調製した糖類含有液をアクリルアミド水溶液に添加することにより、本発明の糖類含有液を含むアクリルアミド水溶液を得ることができる。この場合、生物体により産生された糖類の濃度が低いときは、適宜糖類を添加してアクリルアミド水溶液中の糖類の濃度を調整することができる。
【0014】
本明細書中に記載する生物体とは、単離された動物、植物、微生物など、あらゆる生物を包含し、さらに動物または植物から単離された細胞、および動物または植物に由来する樹立細胞株、単離された微生物、およびこれらの細胞小器官を含む。また、これらの生物体は、自然界に存在するものそのものでもよく、人為的に遺伝子工学的な改変を加えたものでもよい。
【0015】
本発明でいう糖類の濃度は、フェノール硫酸法で測定されるグルコース換算値で示している。フェノール硫酸法については、例えば、日本生化学会編「基礎生化学実験法」第5巻118頁に詳細な測定法が記載されている。即ち、グルコースを用いてグルコース濃度と吸光度により検量線を作成し、その検量線に基づいて求められた値である。尚、本明細書中でいうフェノール硫酸法は、前述の日本生化学会編「基礎生化学実験法」第5巻118頁に則って実施したものであり、その詳細を以下に示す。
【0016】
(1)特級フェノールと蒸留水を使用して5質量%のフェノール水溶液を作成する。(2)直径16.5mmの試験管に、試料溶液1mLを採取し、それに(1)の溶液1mLを加え、よく混和する。(3)これに特級濃硫酸5mLを速やかに加え、10分間混和しながら振盪する。(4)室温に20分間放置後、490nmの吸光度を測定する。この吸光度の値とグルコースを用いて作成した検量線を用いて、試料溶液中の糖類のグルコース換算濃度を算出する。
【0017】
本発明において、アクリルアミド水溶液中の糖濃度の下限値はアクリルアミド水溶液中0.1mg/L以上が好ましく1mg/L以上がより好ましく、特に好ましくは3mg/L以上である。また上限値は100mg/L以下が好ましく50mg/L以下がより好ましく、特に好ましくは19mg/L以下である。該糖濃度は、十分に粘度向上効果を発揮させるという観点からは高いほうが好ましく、生産コストの観点からは低いほうが好ましい。
【0018】
本発明のニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒には、天然または人為的にニトリルヒドラターゼ酵素活性を含有する生物体およびその処理物、ならびにニトリルヒドラターゼ酵素自身が包含される。この場合、生物体は微生物であることが好ましい。ニトリルヒドラターゼ酵素を発現しうる微生物としては、例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacteridium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属およびノカルジア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属およびミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ロドコッカスロドクロウス(Rhodococcusrhodochrous)種、ロドコッカス(Rhodococcus)属菌株等の微生物を挙げることができる。
【0019】
また、近年天然のあるいは人為的に改良したニトリルヒドラターゼ遺伝子を人為的に組込んで発現させた生物体、またはこれらから単離したニトリルヒドラターゼ酵素(精製したものでも粗精製のものでもよい)もまた、本発明に使用可能である。
【0020】
生物体およびその処理物には、必要に応じて洗浄や薬剤処理を行った生物体そのものおよびこれらの破砕物、ならびにこれらを包括法、架橋法、担体結合法等で固定化したものなどが挙げられる。
【0021】
本明細書中における「生体触媒」は、上述の微生物等の生物体そのもの、または該生物体またはその処理物を含む懸濁液や、これを固定化した担体を液体に浸漬させた生体触媒系をも含む。
【0022】
ニトリルヒドラーゼ活性を有する生体触媒を用いることにより、還元状態の銅を触媒として使用する必要が無く、その反応条件が温和で副生成物も殆ど無く、極めてシンプルなプロセスで工業的規模でアクリルアミドを製造することができる。
【0023】
本発明の「糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり1〜100mg含むアクリルアミド水溶液」は以下のようにして製造することができる。
【0024】
アクリルアミド500gを蒸留水を用いて1Lに溶解し、フェノール硫酸法でグルコース換算糖類濃度がアクリルアミド水溶液1L当たり1〜100mgとなるように糖類の水溶液を添加することで上記アクリルアミド水溶液が得られる。この際、溶解するアクリルアミドの量は、400〜600gの範囲で変えて最終的に得られる水溶液のアクリルアミド含量を40〜60重量%としてもよい。また、ここで添加される糖類は、精製されたものでも、未精製のものでもよい。用いるアクリルアミドは、市販のものでもよく、またはアクリロニトリルから生体触媒を用いて製造したアクリルアミド水溶液を、精製し、または精製せずに、アクリルアミド濃度が40〜60重量%となるように調製したものでもよい。
【0025】
また、上記糖類を含むアクリルアミド水溶液を、生体触媒を用いてアクリロニトリルから製造する場合は、生体触媒中の糖類の濃度を測定し、その濃度が反応終了後のアクリルアミド水溶液1L当たり1〜100mgとなるように生体触媒を添加し、アクリロニトリルを生体触媒に接触させて反応させることもできる。ここで、生体触媒中の糖類とは、微生物等の生体触媒そのものを懸濁させた液体または担体などに固定化した生体触媒を浸漬している液体中の糖類をいう。より具体的には原料であるアクリロニトリルと水、および糖類を含んだ生体触媒を0から90℃、好ましくは5から50℃で反応槽内で接触させることにより得ることができる。必要に応じて重合防止作用を持つ薬剤や触媒の安定性向上に寄与する薬剤等を反応液あるいは生体触媒懸濁液に添加することも可能である。反応様式としては、固定層、移動層、流動層、撹拌槽等の何れでもよく、また回分反応でも連続反応でも良い。また、反応槽にフェノール硫酸法でグルコース換算糖類濃度が反応終了後のアクリルアミド水溶液1L当たり1〜100mgとなるように糖類水溶液を添加して、生体触媒とアクリロニトリルを該反応槽内で反応させてもよい。
【0026】
さらに、糖類を産生し得る、ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒に、アクリルアミドの産生と同時に糖類を産生させることも可能である。
【0027】
この様にして得られたアクリルアミド水溶液は、その用途に応じて精製工程を経ることも可能である。精製方法としては、フィルターによる濾過(特公平05−49273)や気泡による精製(特願平11−254151)等があげられる。
【0028】
このようにして得られたアクリルアミド水溶液を原料として、公知のアクリルアミド重合化法と同様の方法により、ポリアクリルアミド水溶液を得ることができる。このようにして本発明のアクリルアミド水溶液から得られるポリアクリルアミド水溶液は、アクリルアミド濃度が同一の糖類を含まないアクリルアミド水溶液から得られたポリアクリルアミド水溶液に比べて、粘度が上昇している。該ポリアクリルアミド水溶液は、アクリルアミド系重合体として、高分子凝集剤、製紙用薬剤、土壌改良剤、石油回収用薬剤、掘削泥水用増粘剤、高分子吸収体等などに利用することができる。従って、本発明のアクリルアミド水溶液から得られるポリアクリルアミド重合体も本発明の範囲に包含される。
【0029】
得られたポリアクリルアミド水溶液の物性評価は、例えば、粘度計を用いて重合体の粘度を測定して行うことができる。具体的には、B型粘度計を用いて公知の方法で測定することにより評価することができる。
【0030】
本発明は、(1)糖類を含むアクリルアミド水溶液、(2)糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり0.1〜100mg含むアクリルアミド水溶液、(3)糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり1.0〜50mg含むアクリルアミド水溶液、(4)糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり3.0〜19mg含むアクリルアミド水溶液、(5)in vitroで培養した生物体を用いて調製した糖類含有液を添加した、上記1〜4のいずれかに記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(6)生物体がニトリルヒドラターゼ酵素を発現するものである、上記5記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(7)ニトリルヒドラターゼ酵素を発現するものが微生物である、上記6記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(8)微生物がロドコッカス属細菌である、上記7記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(9)ロドコッカス属細菌がロドコッカス・ロドクロウスである、上記8記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(10)ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒により製造される、上記1〜9のいずれか1項に記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液、(11)上記1〜10のいずれか1項に記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液であって、該アクリルアミド水溶液から得られるポリアクリルアミド溶液の粘度が、該アクリルアミド水溶液と等濃度になるようにアクリルアミドのみを水に溶解させたアクリルアミド水溶液から得られる重合体の粘度より高い、糖類を含むアクリルアミド重合体、(12)上記1〜11のいずれか1項に記載の糖類を含むアクリルアミド水溶液から得られるポリアクリルアミド重合体、(13)ニトリルヒドラターゼ活性を有し糖類を含有する生体触媒を用いてアクリルアミドを産生することを含む、糖類を含むアクリルアミド水溶液の製造方法にも関する。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
実施例1、比較例1に、市販のアクリルアミド水溶液から調製したポリアクリルアミドの場合、実施例2、比較例2にアクリロニトリルから糖類を含む生体触媒を用いて製造したアクリルアミドから調製したポリアクリルアミドの場合を記載した。
【0033】
〔実施例1〕
(糖類含有液の調製)
ロドコッカス・ロドクロウスRhodococcus rhodochrous J1(受託番号FERM BP-1478で、工業技術院生命工学工業技術研究所(現在は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1丁目1番1中央第6)に寄託されている)を、グルコース2%、尿素1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、塩化コバルト0.05%(何れも質量%)を含む培地(pH7.0)により30℃で好気的に培養した。これをポリスルホン性の孔径0.1μmのメンブランフィルター(クラレ社製)を用いて、培養液の5倍量の50mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて連続的に洗浄した後、菌濃度を乾燥菌体重量で10%となるまで濃縮し菌体懸濁液を得た。
これを50mLの遠心チューブにとり、遠心分離機により15,000×gで30分遠心し、その遠心上清を糖類含有液とした。
【0034】
(糖類含有液中の糖濃度の測定)
得られた糖類含有液中の糖濃度をフェノール硫酸法で以下の通り測定した。
(1)特級フェノールと蒸留水を使用して5質量%のフェノール水溶液を作成した。(2)直径16.5mmの試験管に、1000倍に希釈した溶液1mLを採取し、それに(1)の溶液1mLを加え、よく混和した。(3)これに特級濃硫酸5mLを速やかに加え、10分間混和しながら振盪した後、室温に20分間放置後、490nmの吸光度を測定した。一方同様の操作を、2,10,50,100mg/Lに調整したグルコース水溶液を用いて検量線を作成し、その検量線から糖類含有液中の糖濃度を算出したところ、15000mg/Lとなった。該糖類含有液中の糖類は、理論に拘束されることはないが、菌体により産生された多糖類であると推測される。
【0035】
(糖類含有アクリルアミド水溶液の調製)
50質量%アクリルアミド水溶液(三菱レイヨン社製)1Lに、調製した糖類含有液0.2mLを添加して糖類含有アクリルアミド水溶液を作成した。
【0036】
(ポリアクリルアミド水溶液の調製)
得られた糖類含有アクリルアミド水溶液を、アクリルアミドの濃度が15質量%となるように蒸留水を用いて希釈し、pH6.1に調整後、フラスコを30℃の水槽にて攪拌しながら保温した。気相部を窒素置換しながら、過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウムが各々180mg/Lとなるよう加えて重合を開始すると同時に、水槽の温度を80℃にした。約1時間後、25℃まで氷冷した。
【0037】
(ポリアクリルアミド水溶液の物性評価)
得られた水溶液の粘度を、B型粘度計にて測定した(No.4ロータ、6rpm、25℃)。その結果を表1に示す。
【0038】
〔比較例1〕
ポリアクリルアミド水溶液の調製を、糖類含有液を添加していない50質量%アクリルアミド水溶液(三菱レイヨン社製)を用いて実施例1同様に行い、得られたポリアクリルアミド水溶液の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
〔実施例2〕
(微生物酵素によるアクリロニトリルからアクリルアミドへの反応)
内容積5Lのジャケット付きセパラブルフラスコに0.2g/Lのアクリル酸ナトリウム水溶液を3130g入れ、これに実施例1の(糖類含有液の調製)時に得られた菌体懸濁液10g(糖類を約10000mg/L含む)を添加した。これをpH7.0、温度20℃に制御しながら翼長120mm、翼幅20mmの平板の撹拌翼を2枚にて80rpmで攪拌した。アクリロニトリル濃度が常に2質量%となるようにアクリロニトリル(三菱レイヨン社製)を連続的にフィードし、アクリルアミドの濃度が47%となった時点でアクリロニトリルのフィードを停止し、その後アクリロニトリルが0.005%以下になるまで反応を継続した。この液から孔径0.1μmのポリエチレン製中空糸膜(三菱レイヨン製ステラポア−H)にて菌体を分離しアクリルアミド濃度50質量%の反応液5kgを得た。
【0041】
(50質量%アクリルアミド中の糖濃度の測定)
実施例1の(糖類含有液中の糖濃度の測定)と同様に、得られた50質量%アクリルアミド水溶液の糖濃度を測定した。ただしグルコース濃度への換算に際しては、既知量のグルコースを市販のアクリルアミド粉末(和光純薬社製)にて作成した50質量%アクリルアミド水溶液に溶解させたものを使用した。その結果、糖濃度は19mg/Lであった。
【0042】
(ポリアクリルアミド水溶液の物性評価)
得られたアクリルアミド水溶液を用いて、実施例1同様にポリアクリルアミド水溶液を調製しその物性を測定した。
その結果溶液粘度190000mPa・sであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類をアクリルアミド水溶液1L当たり0.1〜100mg含み、かつ40〜60質量%のアクリルアミド含量を有するアクリルアミド水溶液を原料として用いて、アクリルアミド重合化を行うことにより、ポリアクリルアミドを製造する方法。
【請求項2】
前記アクリルアミド水溶液が1L当たり1.0〜50mgの糖類を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アクリルアミド水溶液が1L当たり3.0〜19mgの糖類を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アクリルアミド水溶液が、微生物から調製した糖類含有液をアクリルアミド水溶液に添加して得られるものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
微生物がニトリルヒドラターゼ酵素を発現するものである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
微生物がロドコッカス属細菌である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ロドコッカス属細菌がロドコッカス・ロドクロウスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ニトリルヒドラターゼ活性を有する生体触媒により製造される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記アクリルアミド水溶液が、ニトリルヒドラターゼ活性を有し糖類を含有する生体触媒を用いて産生されたものである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造されるポリアクリルアミド。

【公開番号】特開2007−277563(P2007−277563A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119365(P2007−119365)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【分割の表示】特願2002−81512(P2002−81512)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】