説明

ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料とその顔料表面処理方法、被覆顔料を含む分散体、インク、インクカートリッジ及びインクジェットプリンタ

【課題】安定した流動特性や保存安定性を実現可能な高い分散性を有する顔料とその製法及び顔料分散体、インク、インクカートリッジ及びインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】ポリアクリロイルモルホリン(例えば、重量平均分子量1000乃至1,000,000)と溶媒を混合した液中に顔料(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、白色等の顔料)を分散した後、前記溶媒を除去し、前記顔料の表面に前記ポリアクリロイルモルホリンを被覆してポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を得る。この被覆顔料と分散媒(例えば、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート)を用いて分散体とし、さらに適宜必要な成分(界面活性剤、重合禁止剤等)を加えてインクとする。このインクを収容したインクカートリッジを構成し、印刷ユニット(1,5,6,7)に装着してインクジェット法により記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料とこれを含む分散体及び該顔料分散体を用いて調整されたインクに関し、特にはポリアクリロイルモルホリン被覆顔料、この被覆顔料と分散媒を含む分散体及び分散体を用いたインクジェット用インクと、これを使用したインクカートリッジ、インクカートリッジを収容したインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方式に用いるインクとしては、各種の水溶性染料を水単体もしくは水と水溶性溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要に応じて各種添加剤を添加したものが主流であった。しかし、染料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上での記録画像の耐水性が悪く、水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料のにじみが生ずるという問題や、耐光性が悪いため、記録部分に光が当ると色調変化や濃度低下が発生するという問題があった。染料系インクにおける問題を改良するため、着色剤として顔料系インク(カーボンブラックや各種有機顔料)をインクジェット記録方式に適用することが知られている。顔料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上で乾燥したインクは水がかかっても染料のように溶解してにじみが発生することはなく耐水性は良好であり、また、光に対する反応性が低く安定しているため、耐光性は染料系インクに較べ優れている。
【0003】
このような顔料系インクは、一般に顔料と分散媒(例えば、液媒体、分散剤等)からなる混合物をボールミルやサンドミル等の分散機で分散処理を行なって製造した顔料分散体(顔料分散液)を用い、これに必要に応じて各種添加剤を添加して製造される。
顔料分散体を得る際、顔料表面と分散媒との親和性が低いと、顔料間で凝集力が強く作用するために分散は難しく、このような顔料分散体を用いてインクを調製すれば、インクとしての安定した流動特性や保存安定性などを実現することが困難となる。
このため、例えば、保存安定性と吐出安定性を有するインクとするため、ポリアクリロイルモルホリン及びアクリロイルモルホリンと他のモノマーとの共重合体を顔料分散剤として使用する手法が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、アクリロイルモルホリンと顔料を水性媒体に配合した分散系を、撹拌等により顔料分散状態で重合反応を進めてポリアクリロイルモルホリンを合成している。このようなプロセスでは、アクリロイルモルホリンの重合反応のために熱などの多大なエネルギーが製造工程で必要となるほか、重合反応を行う際に系に重合開始剤を配合する必要があることから、光重合性インクの製造などにおいて光重合性の材料(例えば、ラジカル反応性基を有する化合物)を同時に含むような場合には適用が困難となる問題がある。
また、ペンを静置した状態でもインクが漏れ出さず、経時変化がなく、安定な筆記性能を有する筆記具用水性インクとするため、ポリアクリロイルモルホリン、着色剤、水を組成分とする手法が提案されている(特許文献2参照)。あるいは、顔料を凝集させず良好な分散性と流動性を有し、光透過性の優れた顔料分散剤として、グラフト共重合体(主鎖に窒素原子を有する繰り返し単位を持ち、側鎖にアミド基及び酸性基から選択される1種の官能基を有する繰り返し単位を有する。)を用いる手法が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、特許文献2及び特許文献3に記載の高分子分散剤を顔料分散剤として単にインク中に混合しただけでは、顔料と高分子分散剤及び分散媒間のそれぞれの相互作用に影響されて、顔料表面に高分子分散剤が吸着しにくかったり、あるいは顔料表面に高分子分散剤が一定量吸着しても十分な顔料分散効果が得られない場合があり、安定した流動特性や保存安定性などが得にくいという問題がある。
以上のように従来、インクジェット記録用インクに使用する顔料あるいは顔料分散体(顔料分散液)において、インクとしての流動特性や保存安定性などを十分満足できるものはなく、簡便、且つ環境に配慮した製造により得られる顔料あるいは顔料分散体が要望されていた。
なお本出願人は、水、水溶性有機溶剤、水分散性樹脂(ポリウレタン樹脂エマルジョンまたはアクリル−シリコン樹脂エマルジョン)、着色剤(顔料)、界面活性剤(フッソ系及び/又はシリコン系界面活性剤)を組成分とするインクを提案した(特許文献4参照)。このインクは特定インクジェット記録メディアに適した顔料インクであり、選択的な組み合せの採用により、印字品質、濃度、光沢に優れ、商業印刷物に近い印字物を得ることができるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、インクに用いられた場合に、高い分散効果を有し、インクとしての安定した流動特性や保存安定性などを実現することが可能な顔料(ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料)、及び顔料と分散媒からなる顔料分散体(ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体)、顔料分散体を用いて調製されたインクジェット用インク、インクジェット用インクを収容したインクカートリッジ、インクカートリッジを装着したインクジェットプリンタを提供すると共に、簡便、且つ環境に配慮した方法によりポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を効率的に製造できる顔料表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔13〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0006】
〔1〕:上記課題は、顔料の表面がポリアクリロイルモルホリンで被覆されてなることを特徴とするポリアクリロイルモルホリン被覆顔料により解決される。
【0007】
〔2〕:上記〔1〕に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料において、前記顔料表面のポリアクリロイルモルホリン被覆が、溶媒中にポリアクリロイルモルホリンと顔料を含有する溶液中に顔料を分散した後、前記溶媒を除去する処理によりなされたことを特徴とする。
【0008】
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料において、前記ポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量が、1000乃至1,000,000であることを特徴とする。
【0009】
〔4〕:上記課題は、〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料と分散媒からなることを特徴とするポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体により解決される。
【0010】
〔5〕:上記〔4〕に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体において、前記分散媒が、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを含むことを特徴とする。
【0011】
〔6〕:上記〔4〕または〔5〕に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体において、重合開始剤を含まないことを特徴とする。
【0012】
〔7〕:上記課題は、〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料、もしくは〔4〕乃至〔6〕のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体を用いて調製されたことを特徴とするインクジェット用インクにより解決される。
【0013】
〔8〕:上記〔7〕に記載のインクジェット用インクにおいて、前記インクが光重合性を有することを特徴とする。
【0014】
〔9〕:上記課題は、〔8〕に記載のインクジェット用インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジにより解決される。
【0015】
〔10〕:上記課題は、〔9〕に記載のインクカートリッジを装着したことを特徴とするインクジェットプリンタにより解決される。
【0016】
〔11〕:上記課題は、ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料の顔料表面処理方法であって、ポリアクリロイルモルホリンと溶媒を混合した液中に顔料を分散した後、前記溶媒を除去し、前記顔料の表面に前記ポリアクリロイルモルホリンを被覆することを特徴とする顔料表面処理方法により解決される。
【0017】
〔12〕:上記〔11〕に記載の顔料表面処理方法において、前記溶液における顔料の含有量(重量)が、ポリアクリロイルモルホリンの含有量(重量)の0.1倍乃至10倍であることを特徴とする。
【0018】
〔13〕:上記〔11〕または〔12〕に記載の表面処理方法において、前記溶媒が水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料は、ポリアクリロイルモルホリンと顔料を溶媒中で分散・混合した液から溶媒を除去する簡便で効率的な環境に配慮した方法により得られ、且つ、顔料分散体(顔料分散液)やインクジェット記録用インク(インクジェット用インク)に使用した場合に高い分散効果を有する。本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を用いて顔料分散体とし、インクを調製すればインクジェット用インクとしての安定した流動特性や保存安定性などを実現することができる。
上記インクジェット用インクを収容したインクカートリッジ、インクカートリッジを装着したインクジェットプリンタを構成すれば、長期保存(例えば、高温や低温環境下)においてもインクの経時変化が少なく安定した状態が維持され、品質の高い画像が安定して得られる。また、インクカートリッジとすれば、保存、搬送等が容易であり、交換を短時間に行うことができるなど取扱性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るインク(光重合性を有する場合)を収容したインクカートリッジを印刷ユニットとして装着したラインヘッド型プリンタの要部概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述のように本発明におけるポリアクリロイルモルホリン被覆顔料(以降「被覆顔料」と略称することがある。)は、顔料の表面がポリアクリロイルモルホリンで被覆されてなることを特徴とするものである。そして、本発明の被覆顔料は、溶媒中にポリアクリロイルモルホリンと顔料を含有する溶液から該溶媒を除去する顔料表面処理により好適に得られる。
すなわち、顔料の表面をポリアクリロイルモルホリンで被覆することにより、顔料間の凝集を抑制すると共に、分散媒(例えば、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート等)との親和性を向上させることができる。このため、本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を用いることにより、インクジェット用インク(以降、「インク」と略称することがある。)としての安定した流動特性や保存安定性などを実現することができる。
ここで、前記ポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量が、1000乃至1,000,000であることが好ましい。このような範囲とすることにより、溶媒に対する溶解性が維持されて顔料表面への良好な被覆が行われ、また、被覆顔料の良好な分散性が発揮される。
【0022】
本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体(以降、「顔料分散体」と略称することがある。)は、前記ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料(被覆顔料)と分散媒からなることを特徴とするものであり、被覆顔料が分散媒中において良好な顔料分散状態にあるため、安定した流動特性や保存安定性などが得られる。
ここで、前記分散媒として、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートは好ましく用いられる。すなわち、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートは、良好な光重合特性を有し、低毒性であることから光重合性のインク材料として適した材料である。
ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを分散媒の成分の一つとして用いた場合、一般の顔料を分散するのは困難である。しかし、本発明の被覆顔料を用いることにより、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを分散媒の成分として含む系においても良好な顔料分散性を得ることができる。
【0023】
また、ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体(顔料分散体)に重合開始剤を含まないことが好ましい。すなわち、顔料分散体中に重合開始剤を含まないことによって、顔料分散処理時に付与されるせん断力や熱等のエネルギーに対しても、含有される原料(例えば、ラジカル重合性を有する分散媒)の化学変化(重合等)を起生することなく安定に処理できる。
【0024】
以下に、本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料(被覆顔料)、及びポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体(顔料分散体)等に使用する材料の一例について示す。ただし、下記材料に限定するもではない。
【0025】
ポリアクリロイルモルホリンとしては、市販のアクリロイルモルホリンを常法にて重合することで得られるものが使用できる。
また、ポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量としては限定するものではないが前述のように、重量平均分子量が、1000乃至1,000,000であることが好ましい。つまり、重量平均分子量が1000よりも小さい場合には、表面処理顔料作成の際に用いる溶媒への溶解性が高まって作業性は向上するが、顔料分散体とした場合に、分散媒に対する溶解性が高くなり、顔料表面に被覆されたポリアクリロイルモルホリンが分散媒へ溶出しやすくなる傾向が増大し、顔料分散体としての保存安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、一方、重量平均分子量が1,000,000を超える場合には、顔料分散体としての保存安定性は向上するが、表面処理顔料作成の際に用いる溶媒への溶解性が悪くなって作業性に問題を生じる可能性がある。
【0026】
前記顔料としては、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料などが用いられる。
以下に具体例を示すが、下記以外にも、必要に応じて物理特性などを考慮して、種々の無機顔料や有機顔料が使用できる。
【0027】
ブラック顔料としては、ファーネス法あるいはチャネル法で製造されたカーボンブラック等が使用できる。
【0028】
イエロー顔料としては、Pig.Yellow系の顔料、例えば、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー129、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180等が使用できる。
【0029】
マゼンタ顔料としては、Pig.Red系の顔料、例えば、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57(Ca)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメントレッド184、ピグメントレッド202,ピグメントバイオレット19等が使用できる。
【0030】
シアン顔料としては、Pig.Blue系の顔料、例えば、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、バットブルー4、バットブルー60等が使用できる。
【0031】
白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が使用できる。
【0032】
顔料分散体の分散媒としては、前述のようにポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートが好ましく用いられるが、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートと同時に、光重合性モノマー/オリゴマーや、必要に応じて光重合性開始剤を配合することも可能である。これらの光重合性モノマー/オリゴマー及び、必要に応じて用いることができる光重合性開始剤について以下に例示する。
【0033】
光重合性モノマー/オリゴマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加ジ(メタ)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6―ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレンオキサイド変性テトラメチロールメタンテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルペンタ(メタ)アクリレート、ポリエステルヘキサ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ポリウレタンヘキサ(メタ)アクリレートなどから1種類もしくは2種類以上を併用して使用できる。
【0034】
光重合性開始剤としては、ベンゾフェノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン−〔4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)〕、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、〔4−(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などから1種類もしくは2種類以上を併用して使用できる。
【0035】
前記溶媒としては、例えば、アセトンなどの有機溶媒や、水が用いられる。溶媒として水を用いれば、有機溶媒を使用するよりもさらに環境負荷を低減することができる。また、溶媒を除去する際に加熱などのエネルギーを付与せずに自然蒸発させれば、エネルギーの使用を抑制できてさらに環境負荷を低減することができる。ただし、自然蒸発により溶媒がわずかに残存することで、インク原料の顔料(被覆顔料)として用いた場合に何らかの不具合が生じる場合には不適であるが、これが許容される場合には有効である。
【0036】
前述のように本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料は、前記溶媒にポリアクリロイルモルホリンを混合し、これに上記顔料を分散して溶液を調製した後、前記溶媒を除去して顔料の表面に前記ポリアクリロイルモルホリンを被覆する簡便で効率的な表面処理方法により得ることができる。
上記表面処理の際、前記溶液におけるポリアクリロイルモルホリンの含有量(重量)1に対して、顔料は0.1倍乃至10倍の重量で用いることが好ましい。ここで、顔料の含有量(重量)が0.1倍よりも少ない場合には、顔料分散体もしくはインクにおける顔料の分散性は良好であるものの、被覆顔料中の顔料分率が少なくなるため顔料成分の多い濃厚な顔料分散体もしくはインクを作成することが難しくなる。また、10倍を超える場合には、顔料成分の多い濃厚な顔料分散体を作成(もしくはインクの粘度増加が)できるものの、十分な顔料分散性を得にくい。すなわち、上記範囲とすることにより、顔料が持つ機能を十分に発現できる顔料分散体もしくはインク作成でき、かつ高い顔料分散効果が得られる。
【0037】
本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を得る場合の具体例を示す。
例えば、アクリロイルモルホリンと過硫酸カリウムを加えた水溶液を加熱反応(90℃程度)させてポリアクリロイルモルホリンとする。その際、ポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量を1000乃至1,000,000に制御する、分子量は、連鎖移動剤(例えば、β―メルカプトプロピオン酸)を反応系に加えて制御することもできる。
得られたポリアクリロイルモルホリンをアセトンや水などの溶媒に溶解した溶液中に顔料を添加した後、撹拌により顔料を均一、微細に分散して表面処理する。撹拌には超音波ホモジナイザ等を使用することができる。顔料の配合量は、ポリアクリロイルモルホリンの0.1倍乃至10倍の重量とする。なお、環境負荷の観点から溶媒として水を用いるのが好ましい。分散処理後、溶媒を除去(自然蒸発または加熱蒸発)することにより、ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料とする。
【0038】
上記顔料分散体及び適宜必要な成分を選択して用い、インクジェット用インクを調製することができる。
適宜必要な成分としては、例えば、界面活性剤、重合禁止剤などが挙げられる。なお、必要成分としてはこれらに限定されるものではない。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、フルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、フルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物、アルキルシロキサンエチレンオキサイド付加物、アルキルシロキサンプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メトキノン、p−ベンゾキノン、ジ−t−ブチルジフェニルアミン、2,2−ジヒドロキシ−3,3−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5−ジメチルジフェニルメタン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノンなどが挙げられる。
【0039】
本発明に係るインクカートリッジは、前述のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料、もしくはポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体を用いて調製したインクジェット用インク(略、インク)を収容したことを特徴とするものであり、本発明に係るインクジェットプリンタは該インクカートリッジを装着したことを特徴とするものである。
被覆顔料分散体の分散媒として、例えば、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを使用すれば光重合性を有するインクとすることができる。
図1(A)、(B)に本発明に係るインク(光重合性を有する場合)を収容したインクカートリッジを印刷ユニットとして装着したラインヘッド型プリンタ(カラープリンタ)の要部概略構成図を示す。
図1(A)は、イエロー印刷ユニット1、マゼンタ印刷ユニット5、シアン印刷ユニット6、ブラック印刷ユニット7のそれぞれによる各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷毎に、用紙8((図の左から右へ搬送))に吐出されたインクを硬化用光源9から光照射(UV光)して硬化し、カラー画像を形成する構成例を示している。
図1(A)において、各印刷ユニット(1、5、6、7)は、インクカートリッジ2とインク流路3及びヘッド4から構成されており、各色インクが各インクカートリッジから各インク流路を経由して各色ヘッドのそれぞれに供給され、各色ヘッドからインクが液滴として吐出される。
図1(B)は、4色印刷ユニット10による各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷後、用紙8((図の左から右へ搬送))に吐出されたインクを一括して硬化用光源9から光照射(UV光)して硬化し、カラー画像を形成する構成例を示している。
図1(B)において、4色印刷ユニット10は、各色に対応するインクカートリッジとインク流路及びヘッドから構成(イエローインクカートリッジ11・インク流路3・イエローヘッド16、マゼンタインクカートリッジ12・インク流路3・マゼンタヘッド17、シアンインクカートリッジ13・インク流路3・シアンヘッド18、ブラックインクカートリッジ14・インク流路3・ブラックヘッド19)されている。このような構成で各色インクが各インクカートリッジから各インク流路を経由して各色ヘッドのそれぞれに供給され、各色ヘッドからインクが液滴として吐出される。
本発明の高い分散効果を有するポリアクリロイルモルホリン被覆顔料を含有するインクを装着したインクジェットプリンタを用いて画像形成を行えば、インクの安定した流動特性や保存安定性により、画像乱れがなく、安定した高画像品質の印刷物が得られる。また、 上記のように本発明におけるインクジェットプリンタはインクの補充をインクカートリッジ単位で取り替えることが可能であり、インクの交換を容易とすることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
実施例と比較例で使用するポリアクリロイルモルホリンを下記により合成した。
市販のアクリロイルモルホリン(興人社製)15%と過硫酸カリウム5%を加えた水溶液を試験管に封入して90℃で6時間振とうすることで重量平均分子量46000のポリアクリロイルモルホリンを得た。
また、さらに連鎖移動剤としてβ―メルカプトプロピオン酸を3%添加して同様の実験操作を行うこと以外は上記と同様にして、重量平均分子量12000のポリアクリロイルモルホリンを得た。
実施例と比較例で使用するカーボンブラック、ピグメントイエロー155、ピグメントレッド122、ピグメントブルー15:3はいずれも市販の汎用品を使用した。
また、分散媒に用いるポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートは市販品(新中村工業化学社製)を使用した。
【0042】
以下に記載する各実施例に使用したポリアクリロイルモルホリンにて表面処理した顔料(ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料)は、上記で合成した各ポリアクリロイルモルホリンの5%水溶液中に、ポリアクリロイルモルホリンの1.5倍もしくは3倍の重量の顔料を配合して超音波ホモジナイザにて30分間分散処理を行った後、溶媒を加熱蒸発させることにより得た。
【0043】
[実施例1〜9、比較例1〜10]
〔顔料分散体の作成〕
実施例の分散体は、下記表1〜3に示す組成で、ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを配合し、ホモジナイザにて毎分10000回転で10分間分散処理して顔料分散体(顔料分散液)とした。
なお、表1に実施例1〜4、表2に実施例5、6、表3に実施例7〜9を示す。
比較例の分散体は、下記表1〜3に示す組成のポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート、顔料、ポリアクリロイルモルホリンを配合し、ホモジナイザにて毎分10000回転で10分間分散処理して顔料分散体(顔料分散液)とした。
なお、表1に比較例1〜5、表2に比較例6、7、表3に比較例8〜10を示す。
【0044】
上記で得た実施例と比較例に示す各顔料分散体の顔料分散性を、せん断速度20(1/s)の粘度と、せん断速度200(1/s)の粘度を測定して、次式により評価した。
顔料分散性=[せん断速度20(1/s)の粘度]/[せん断速度200(1/s)の粘度]
ここで示す顔料分散性は1に近いほど分散性が良好であることを示し、数値が大きいほど分散性が悪いことを示す。
すなわち、分散性が良好であれば分散液はニュートン流体に近づき、せん断速度によらず粘度はあまり変わらないため粘度の比は1に近づくが、分散性が乏しければせん断速度が小さいほど高粘度となる構造粘性のため粘度の比は増大する。
実施例と比較例に示す各顔料分散体の顔料分散性を下記表1〜3に併せて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表1の実施例1〜4では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート75重量部または80重量部に、それぞれポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラック〔ポリアクリロイルモルホリン1(重量)に対して、1.5倍もしくは3倍(重量)の顔料を配合〕を20重量部または25重量部配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。
また、表1の比較例1〜4では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート75重量部または80重量部に、それぞれ表面処理を施さないカーボンブラックを15重量部、ポリアクリロイルモルホリン10重量部または5重量部を配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。比較例5では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート85重量部に、表面処理を施さないカーボンブラックを15重量部配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。
表1の結果から、予めカーボンブラックの表面をポリアクリロイルモルホリンにて被覆処理したポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラック(顔料)を用いることで、カーボンブラックの分散性が向上していることが確認できた。一方、分散液に同量のポリアクリロイルモルホリンを単純に配合するだけではカーボンブラックの分散性を向上しにくいことが確認できた。
上記の結果において、ポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラックにおけるポリアクリロイルモルホリンに対するカーボンブラックの重量比を1.5倍とした場合でも3倍とした場合でもカーボンブラックの分散性向上の傾向が見られた。このことから、ポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラックにおけるポリアクリロイルモルホリンに対するカーボンブラックの重量比としては少なくともこの範囲で良好な効果を示し、さらに大きい場合でも小さい場合でも良好な効果を示すものと考えられるが、顔料の比率が少なすぎる場合には、顔料分散体もしくはインクにおける顔料の分散性は良好であるものの、被覆顔料中の顔料分率が少なくなるため顔料成分の多い濃厚な顔料分散体もしくはインクを作成することが難しくなる一方、多すぎる場合には、顔料成分の多い濃厚な顔料分散体もしくはインクの粘度増加を作成できるものの、十分な顔料分散性を得にくい。そのため、用途など必要に応じて適切な重量比としたものを用いればよい。
また、いずれにおいてもポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量が12000でも46000でも同様の傾向が見られた。このことから、表面処理に使用するポリアクリロイルモルホリンの分子量としては、少なくともこの範囲内で分散性向上に良好な効果を示し、さらに分子量が大きくてもあるいは小さくても分散性向上に良好な効果を示すものと考えられるが、分子量が小さすぎると、表面処理顔料作成の際に用いる溶媒への溶解性が良好で作業性は向上するが、顔料分散体とした場合に、分散媒に対する溶解性が高くなり、顔料表面から分散媒へ溶出しやすくなることが考えられ、顔料分散体としての保存安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。また分子量が大きすぎると逆に顔料分散体としての保存安定性は向上するが、表面処理顔料作成の際に用いる溶媒への溶解性が悪くなり、作業性に問題が生じる可能性がある。そのため、用途など必要に応じて適切な分子量に制御したものを用いればよい。
【0049】
表2の実施例5、6では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート83.3重量部または66.7重量部に、それぞれポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラック〔ポリアクリロイルモルホリン1(重量)に対して、1.5倍(重量)の顔料を配合〕を16.7重量部または33.3重量部配合した顔料分散体(顔料分散液〕の分散性について示した。
また、表2の比較例6、7では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート90重量部または80重量部に、それぞれ表面処理を施さないカーボンブラックを10重量部または20重量部を配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。
つまり、表2では表1で示した配合条件よりも顔料(ポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラック、及びカーボンブラック)の配合比を増減した分散液の分散性について示した。
ポリアクリロイルモルホリン被覆カーボンブラックの配合が表1に示した配合よりも少ない場合(16.7重量部)でも多い場合(33.3重量部)でも、ポリアクリロイルモルホリンで表面処理したカーボンブラックを用いることにより、分散性が向上することが確認できた。
顔料配合比を少なくすることでより、容易に良好な分散性を得ることができ、例えば、保存安定性などを向上しやすいが、一方で顔料配合比を多くすることでより濃いインクを作成できたり、濃度向上による体積減で輸送効率などを高めたりさまざまな長所が見込める。すなわち、用途に応じて適切な顔料配合比を選択すればよい。
【0050】
表3にカーボンブラック以外の顔料の分散液について顔料分散性を示した。
表3の実施例7〜9では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート75重量部に、それぞれポリアクリロイルモルホリン被覆ピグメントイエロー155、ピグメントレッド122、ピグメントブルー15:3〔各、ポリアクリロイルモルホリン1(重量)に対して、1.5倍(重量)の顔料を配合〕を25重量部配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。
また、表3の比較例8〜10では、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート85重量部に、それぞれ表面処理を施さない前記各顔料を15重量部配合した顔料分散体(顔料分散液)の分散性について示した。
実施例7〜9では、一般的に使用される顔料であるピグメントイエロー155、ピグメントレッド122、ピグメントブルー15:3においても、ポリアクリロイルモルホリンで表面処理することにより、前記表1、2の被覆カーボンブラックの場合と同様に分散性が向上することが確認できた。
【0051】
上記評価結果から、本発明のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料は、簡便、且つ環境に配慮した表面処理方法により効率的に製造でき、高い顔料分散効果を有していることから、インクに用いられた場合にインクとしての安定した流動特性や保存安定性などを実現することができる。このようなインクを用いれば、長期保存においても安定した状態が維持され、搬送、交換が容易なインクカートリッジを構成することができ、インクカートリッジを装着したインクジェットプリンタとすれば、繰り返し画像形成においても品質の高い画像が安定して得られる。
【符号の説明】
【0052】
1 イエロー印刷ユニット
2 インクカートリッジ
3 インク流路
4 ヘッド
5 マゼンタ印刷ユニット
6 シアン印刷ユニット
7 ブラック印刷ユニット
8 用紙
9 硬化用光源
10 4色印刷ユニット
11 イエローインクカートリッジ
12 マゼンタインクカートリッジ
13 シアンインクカートリッジ
14 ブラックインクカートリッジ
16 イエローヘッド
17 マゼンタヘッド
18 シアンヘッド
19 ブラックヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特許第3387610号公報
【特許文献2】特開平8−225764号公報
【特許文献3】特開2002−47441号公報
【特許文献4】特開2008−95089号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料の表面がポリアクリロイルモルホリンで被覆されてなることを特徴とするポリアクリロイルモルホリン被覆顔料。
【請求項2】
前記顔料表面のポリアクリロイルモルホリン被覆が、溶媒中にポリアクリロイルモルホリンと顔料を含有する溶液中に顔料を分散した後、前記溶媒を除去する処理によりなされたことを特徴とする請求項1に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料。
【請求項3】
前記ポリアクリロイルモルホリンの重量平均分子量が、1000乃至1,000,000であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料と分散媒からなることを特徴とするポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体。
【請求項5】
前記分散媒が、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートを含むことを特徴とする請求項4に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体。
【請求項6】
重合開始剤を含まないことを特徴とする請求項4または5に記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料、もしくは請求項4乃至6のいずれかに記載のポリアクリロイルモルホリン被覆顔料分散体を用いて調製されたことを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項8】
前記インクが光重合性を有することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット用インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のインクカートリッジを装着したことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項11】
ポリアクリロイルモルホリン被覆顔料の顔料表面処理方法であって、ポリアクリロイルモルホリンと溶媒を混合した液中に顔料を分散した後、前記溶媒を除去し、前記顔料の表面に前記ポリアクリロイルモルホリンを被覆することを特徴とする顔料表面処理方法。
【請求項12】
前記溶液における顔料の含有量(重量)が、ポリアクリロイルモルホリンの含有量(重量)の0.1乃至10倍であることを特徴とする請求項11に記載の顔料表面処理方法。
【請求項13】
前記溶媒が水であることを特徴とする請求項11または12に記載の表面処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184659(P2011−184659A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54563(P2010−54563)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】