説明

ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法

【課題】剛性・靭性等の機械的特性に優れ、かつ溶融状態での滞留変色性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)5〜50質量部と、
炭素数が12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、
炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、
脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、
脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、
を含有し、
前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪酸(III−I)と前記脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)が0.020〜0.050であり、前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する前記脂肪酸(III)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(IV)が3〜15であり、前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)の質量比(V)/(II)が0.03〜0.15である、ポリアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに射出成形体及び歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその加工性が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器、電気機器の歯車等の機構部品、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。特に、ポリアセタール樹脂は、電気機器、自動車部品、ギア及びカムといった精密機構部品に用いられることが多い。その場合、ポリアセタール樹脂に対して、摺動性のみならず、剛性、強度、靭性といった機械的物性のバランス、並びに、ギアに用いられたときに歯のたわみ及び歯こぼれがないといったような長期耐久性も要求される。
そこで、従来、一般的な手法として、ガラス繊維、タルク、ワラストナイト、炭素繊維等といった無機フィラーをポリアセタールに配合する手法が用いられており、これにより、ポリアセタール樹脂の各種の性能の向上が図られている。しかしながら、ポリアセタール樹脂に対して、ガラス繊維又は無機フィラーを配合した場合、剛性、強度といった機械特性の改良には効果があるものの、ポリアセタール樹脂本来の特徴である摺動性や耐クリープ寿命、耐疲労性といった長期的な特性、並びに、靭性が著しく損なわれる場合があり、必ずしも効果的な手法とはいえなかった。また、ガラス繊維や無機フィラーを多量にポリアセタール樹脂に配合した場合、ポリアセタール樹脂の熱安定性を低下させる場合があり、成形性若しくは耐熱エージング性等に悪影響を及ぼす可能性があり問題となる場合がある。
【0003】
また、上記のような機構部品は、射出成形機を用いた射出成形法によって製造されるのが一般的であり、得られた成形品は、OA機器の機構部品等の用途で使用される。その際、複雑な形状を得たり、リサイクル性を高めるためにホットランナー成形が行われる場合があり、熱安定性の低い組成物の場合には熱分解や変色が起こり、得られる成形品に悪影響を及ぼすため、歩留まりが悪化する。したがって、上記ホットランナー成形のような厳しい条件下での成形においても剛性、強度が高く、熱分解や変色のない成形品が得られることが重要であり、このような要求がますます高まってきているのが現状である。
【0004】
これらの要求に対応するために、炭酸カルシウムに代表される粉粒状の無機充填材に対して脂肪酸及びその金属塩で表面処理を施して、その表面処理後の無機充填材をポリアセタール樹脂に溶融混練する方法(特許文献1、2)や、特定のアスペクト比を有する炭酸カルシウムと有機酸、脂肪酸エステルを含むポリアセタール樹脂組成物であって、該組成物中のCaに対するNaの量比とSrの量比が特定の比率である組成物(特許文献3)が開示されている。
また、ポリアセタール樹脂に無機充填剤とシリコン化合物と潤滑剤とを添加することにより、剛性と摺動性に優れた組成物が得られることが開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2140744号公報
【特許文献2】特許第3140502号公報
【特許文献3】再表2005−071011号公報
【特許文献4】特開2002−060585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された方法によると、剛性・靭性・耐クリープ性等の機械物性のバランスに優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができるものの、溶融状態での滞留変色性に関しては十分でなく、実用に耐えられないのが現状である。
また、上記特許文献4に記載された方法によると、靭性と溶融状態での滞留変色性に関しては十分な効果が得られない。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、剛性・靭性等の機械的特性に優れ、かつ溶融状態での滞留変色性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、特定の平均粒径及びpHを有する、特定量の軽質炭酸カルシウム(II)5〜50質量部と、特定の2種の脂肪酸(III−I)、(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、特定のエステル化合物(V)とを含有し、上記軽質炭酸カルシウム(II)に対する脂肪酸(III−I)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比が特定の範囲にあり、上記脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する脂肪酸(III−I)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比が特定の範囲にあり、かつ上記軽質炭酸カルシウム(II)に対するエステル化合物(V)の質量比が特定の範囲にあるポリアセタール樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)5〜50質量部と、
炭素数が12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、
炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、
脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、
脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、
を含有し、
前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪酸(III−I)と前記脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)が0.020〜0.050であり、前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する前記脂肪酸(III)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(IV)が3〜15であり、前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)の質量比(V)/(II)が0.03〜0.15である、ポリアセタール樹脂組成物。
[2]
前記脂肪酸(III−II)に対する前記脂肪酸(III−I)の質量比(III−I)/(III−II)が1〜5である、上記[1]記載のポリアセタール樹脂組成物。
[3]
前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)を構成する脂肪酸が前記脂肪酸(III−I)と同種である、上記[1]又は[2]記載のポリアセタール樹脂組成物。
[4]
水銀圧入法による空隙半径の測定において、前記軽質炭酸カルシウム(II)の最多確率空隙半径が0.12μm以上0.16μm以下である、上記[1]〜[3]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物。
[5]
前記ポリアセタール樹脂(I)は、164℃以上173℃以下の融点を有するポリアセタールコポリマーを含む、上記[1]〜[4]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物。
[6]
前記ポリアセタール樹脂(I)は、167℃以上173℃以下の融点を有するポリアセタールコポリマーを含む、上記[1]〜[5]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物。
[7]
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量部に対して、(VI)ポリアミド樹脂を0.01〜3質量部さらに含有する、上記[1]〜[6]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物。
[8]
上記[1]〜[6]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法であって、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)と、炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、を固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、
前記混合物と、ポリアセタール樹脂(I)と、を、それぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給して溶融混練して溶融混練物を得る工程と、
前記溶融混練物を前記押出機のダイから連続的に押し出す工程と、
を有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
[9]
上記[7]記載のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法であって、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)と、炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、ポリアミド樹脂(VI)と、を、固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、
前記混合物と、前記ポリアセタール樹脂(I)と、を、それぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給し溶融混練して溶融混練物を得る工程と、
前記溶融混練物を前記押出機のダイから連続的に押し出す工程と、
を有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
[10]
前記ポリアミド樹脂(VI)は、前記ポリアセタール樹脂(I)との溶融マスターバッチとして配合される、上記[9]記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
[11]
上記[1]〜[7]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物を含む射出成形体。
[12]
上記[1]〜[7]のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物を含む歯車。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、剛性、靭性等の機械的特性のバランスに優れ、さらに溶融状態での滞留変色性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例で得られたJIS1A号ダンベル片の模式図を示す。
【図2】実施例で用いた2軸押出機の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)5〜50質量部と、
炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、
炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、
脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、
脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、
を含有し、
前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪酸(III−I)と前記脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)が0.020〜0.050であり、前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する前記脂肪酸(III−I)と前記脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(IV)が3〜15であり、前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)の質量比(V)/(II)が0.01〜0.15である。
【0014】
[ポリアセタール樹脂(I)]
本実施形態におけるポリアセタール樹脂(I)としては、従来知られているものであれば特に限定されず、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる、実質的にオキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマーが挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーとしては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるポリアセタールコポリマー等が挙げられる。さらに、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも挙げられる。
【0015】
また、ポリアセタール樹脂(I)は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーであってもよい。同じく、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。上述のとおり、本実施形態においては、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーのいずれも用いることが可能であるが、好ましくはポリアセタールコポリマーである。ポリアセタール樹脂(A)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
トリオキサンと上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーとのポリアセタールコポリマーである場合、一般的には、トリオキサン1molに対してコモノマーの共重合割合は、好ましくは0.001〜0.6mol、より好ましくは0.001〜0.2mol、更に好ましくは0.0013〜0.1molの範囲である。ポリアセタールコポリマーの好適な融点は164℃〜173℃であり、より好ましくは167℃〜173℃、更に好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃であるポリアセタールコポリマーは、トリオキサン1molに対して0.0013〜0.0035mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
【0017】
ポリアセタールコポリマーを共重合により得る際に用いられる重合触媒としては、特に限定されないが、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。これらのカチオン活性触媒の中でも、取扱性に優れ、かつ適度な重合活性が得られるという観点から、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0018】
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358号明細書、独国特許第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、特開平7−70267号公報に記載の方法が挙げられる。
【0019】
上記重合で得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕が存在するため、その実用性を向上させるために、下記に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を施すことが好ましい。
【0020】
特定の不安定末端部の分解除去処理(以下、単に「不安定末端部除去処理」ともいう。)とは、例えば、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーに対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施すことを言う。
[R1234+n-n 式(1)
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。)
【0021】
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に制限はないが、一般式(1)におけるR1、R2、R3及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、更に、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物(Xn-=OH-);塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸(Xn-=HSO4-、SO42-)、硝酸、燐酸、炭酸(Xn-=HCO3-、CO32-)、ホウ酸(Xn-=B(OH)4-)、塩素酸、ヨウ素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩等が挙げられる。上記の中でも、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩の中では、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用してもよい。
【0022】
上記熱処理する方法に用いる第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q 式(2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0023】
第4級アンモニウム化合物の使用量が、第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05質量ppm未満であると、不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部の分解除去処理後のポリアセタールコポリマーの色調が悪化する傾向にある。
【0024】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部除去処理は、そのポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理することにより達成される。このとき熱処理に用いる装置としては、特に制限はないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、分解により発生したホルムアルデヒドは、通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法等が挙げられる。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が添加されていればよい。例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。或いは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合,ポリアセタールコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
【0025】
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なってもよく、重合触媒を失活させずに行なってもよい。重合触媒の失活処理としては特に制限されないが、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。また、重合を失活させずに、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により低減した後、該不安定末端部の分解除去処理を行なうことも有効な方法である。
【0026】
上述のような不安定末端部の分解除去処理を行うことで、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0027】
[軽質炭酸カルシウム(II)]
本実施形態で用いられる軽質炭酸カルシウム(II)は、平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウムである。
【0028】
軽質炭酸カルシウム(II)の粒子の形状は特に限定されるものではなく、具体的には、球形、立方形、紡鍾形、薄片形、不定形等が挙げられる。これらのうち、射出成形品の異方性低減、機械的強度向上の観点から、立方形のものが好ましく、粒子の平均長径(L)と平均短径(D)の比であるアスペクト比(L/D)が3以下であるものがより好ましい。
【0029】
また軽質炭酸カルシウム(II)の結晶形態としては、一般的に知られているカルサイト型、アラゴナイト型、パテライト型のいずれであってもよく、これらのうちポリアセタール樹脂との界面密着性、樹脂組成物の機械的物性のバランス等の観点から、カルサイト型のものが好ましい。軽質炭酸カルシウム(II)は、人工的に合成される軽質炭酸カルシウム(コロイド状炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、活性炭酸カルシウムと呼ばれることもある。)が好ましい。これらの中でも、炭酸カルシウム粒子の形状と径を精密に制御できるという観点から、スラリー状の水酸化カルシウムに二酸化炭素を反応させて製造されたものが特に好ましい。軽質炭酸カルシウム(II)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
軽質炭酸カルシウム(II)の平均粒径は50nm以上500nm以下であり、好ましくは80nm以上300nm以下であり、より好ましくは80nm以上200nm以下である。軽質炭酸カルシウム(II)の平均粒径が50nm未満であると、樹脂組成物の熱安定性が不十分となり、500μmを超えると、樹脂組成物の高温下における摺動性が不十分となる。
【0031】
ここで、軽質炭酸カルシウム(II)の平均粒径、平均長径及び平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定対象となる炭酸カルシウム粒子のサンプリングを行い、その粒子を倍率1千倍から5万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の炭酸カルシウムの粒子からそれぞれの径を測定し、その相加平均として求めたものである。
【0032】
また、軽質炭酸カルシウム(II)のJIS K5101試験法に準拠したpHは、9.2以上10.0以下であり、好ましくは9.4以上9.7以下である。軽質炭酸カルシウム(II)のpHが9.2以上10.0以下であることは、本発明の目的を達成するための1つの要件となる。
【0033】
さらに、軽質炭酸カルシウム(II)の水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法による最多確率空隙半径は0.12μm以上0.16μm以下であることが好ましい。最多確率空隙半径が0.12μm以上であることにより、樹脂組成物中に炭酸カルシウムの凝集体が生成し難く良分散体が得られる傾向にあり、0.16μm以下であることにより、樹脂組成物の高温化における摺動性が十分に得られる傾向にある。
【0034】
本実施形態における軽質炭酸カルシウム(II)は、表面処理されていないものである。ここでいう「表面処理」とは、炭酸カルシウムの製造工程において、粒子の凝集を防止する目的で、公知の表面処理技剤、付着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤の少なくとも1種が添加され、その結果、該物質によって炭酸カルシウム表面が被覆されていることをいう。ここで、表面処理技剤、付着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤とは、例えば「分散・凝集の解析と応用技術、1992年」(北原文雄監修・(株)テクノシステム発行)の232〜247ページに記載されているようなアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。また、アミノシラン、エポキシシラン等のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸)、脂肪族カルボン酸、樹脂酸及び金属セッケンが例示される。軽質炭酸カルシウム(II)が上記表面処理を施されていないことは、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が本発明の目的を達成することの1つの要件となる。
【0035】
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物における軽質炭酸カルシウム(II)の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して5〜50質量部であり、好ましくは10〜50質量部である。この配合量が5〜50質量部であることは、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が本発明の目的を達成することの1つの要件となる。
【0036】
[脂肪酸(III−I)及び(III−II)]
炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)及び炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)とは、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が結合した構造の脂肪酸であり、分子内の合計炭素原子数が、脂肪酸(III−I)は12〜27のもの、脂肪酸(III−II)は28以上のものである。これらの脂肪酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。脂肪酸(III−I)としては、具体的には、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸等が挙げられる。また、脂肪酸(III−II)としては、具体的には、モンタン酸、メリシン酸、ドトリアコンタン酸、テトラトリアコンタン酸等が挙げられる。
【0037】
なお、脂肪酸(III−I)及び脂肪酸(III−II)は、天然のものであっても合成されたものであってもよく、天然のものを用いた場合、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が、その脂肪酸(III−I)及び脂肪酸(III−II)と他の天然成分との混合物を含んでいてもよい。これらの脂肪酸は、ヒドロキシ基等の官能基で置換されていてもよい。また、これらの脂肪酸は、合成脂肪族アルコールであるユニリンアルコールの末端をカルボキシル変性した合成脂肪酸であってもよい。上述の1価の脂肪酸(III−I)の中では、樹脂組成物中における炭酸カルシウムの凝集を抑えるという観点から、ステアリン酸及びパルミチン酸並びにそれらの任意の割合の混合物が特に好ましく、脂肪酸(III−II)の中では、モンタン酸が特に好ましい。
【0038】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)に対する炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)の質量比(III−I)/(III−II)は1〜5であることが好ましい。また、上述の軽質炭酸カルシウム(II)に対する炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)は0.020〜0.050であり、好ましくは0.025〜0.050である。この質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)の値が0.020〜0.050であることは、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が本発明の目的を達成するための1つの要件である。
【0039】
脂肪酸のカルシウム塩(IV)を構成する脂肪酸は、1価の脂肪酸であり、樹脂組成物により良好な摺動性を付与するという観点から、好ましくは(III−I)と同種の脂肪酸である。中でも、脂肪酸(III−I)がパルミチン酸であり、脂肪酸のカルシウム塩(IV)がパルミチン酸カルシウムである組み合わせ、脂肪酸(III−I)がステアリン酸であり、脂肪酸のカルシウム塩(IV)がステアリン酸カルシウムである組み合わせ、脂肪酸(III−I)がベヘン酸であり、脂肪酸のカルシウム塩(IV)がベヘン酸カルシウムである組み合わせが好ましく、脂肪酸(III−i)がステアリン酸であり、脂肪酸のカルシウム塩(IV)がステアリン酸カルシウムである組み合わせが特に好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する脂肪酸(III−I)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(IV)は、本発明の目的の性能を発揮するという観点から、3〜15であり、好ましくは5〜13である。
【0041】
本実施形態の(V)成分の脂肪族アルコールと脂肪酸のエステルとは、脂肪族アルコールと脂肪酸のモノエステル、及び脂肪族アルコールと脂肪族ジカルボン酸とのエステルのことを指す。脂肪族アルコールとしては、1価アルコール、及び多価アルコールが挙げられる。
【0042】
1価アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール等の飽和又は不飽和アルコールが挙げられる。
【0043】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0044】
脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が挙げられる。また、上記成分を含有する天然に存在する脂肪酸又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの脂肪酸は一部がヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0045】
これら、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステルの中でも、脂肪族アルコールと脂肪酸のモノエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪族アルコールと脂肪酸のモノエステルがより好ましく、炭素数10以上の脂肪族アルコールと炭素数12以上の脂肪酸とのモノエステルが更に好ましく、炭素数10〜30の脂肪族アルコールと炭素数12〜30の脂肪酸とのモノエステルが更により好ましい。中でも、組成物の熱安定性を保つという観点から、セチルミリステートとステアリルステアレートが特に好ましい。
【0046】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、軽質炭酸カルシウム(II)に対する脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)の質量比(V)/(II)は本発明の目的の性能を発揮するという観点から、0.03〜0.15であり、好ましくは0.05〜0.13である。
【0047】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂(I)から発生し得るホルムアルデヒドを捕捉するために、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、ポリアミド樹脂(VI)を0.01〜3質量部さらに含有することが好ましい。ポリアミド樹脂(VI)としては、例えば、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6,6/6,10、ナイロン6/6,12が挙げられる。ポリアミド樹脂(VI)の配合の形態としては特に制限されないが、ポリアミド樹脂組成物中における分散性の観点から、ポリアミド樹脂(VI)をポリアセタール樹脂(I)とのマスターバッチとして配合する形態が特に好ましい。
【0048】
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物は、さらに必要に応じて、酸化防止剤、ホルムアルデヒドとの反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、潤滑剤、離型剤を本発明の目的達成を損なわない範囲で、好ましくは、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、各々0.01〜1.0質量部の範囲で添加されていてもよい。
【0049】
酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダートフェノール系酸化防止剤の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4− ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル −5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。上記の中でも、好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
ホルムアルデヒドとの反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。より具体的には、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。その他に、上記重合体又は化合物として、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物が挙げられる。
【0051】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミド等の多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4 −ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N− フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N, N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6− ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンが挙げられる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基に置換されたメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントインが挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントインが挙げられる。ヒドラジン誘導体の具体例としてはヒドラジド化合物が挙げられる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。イミド化合物の具体例としては、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
【0052】
ギ酸捕捉剤としては、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシドが挙げられる。より具体的には、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩が挙げられる。これらのギ酸捕捉剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤並びにヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0054】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の具体例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル− 2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、好ましくは2−[2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、N,N',N'',N'''−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
潤滑剤及び離型剤としては、アルコール、アルコールとジカルボン酸のエステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物が好ましく使用される。
【0057】
また、潤滑剤として、ポリアセタールに対する潤滑性を高めるための種々の添加剤を配合してもよい。そのような潤滑剤としては、具体的にはシリコン化合物によってグラフト化されたポリオレフィン系樹脂(以下、「シリコングラフト化ポリオレフィン系樹脂」と略記する場合がある。)、シリコン化合物、及びポリオレフィン樹脂を配合することができる。
【0058】
シリコングラフト化ポリオレフィン系樹脂とは、好ましくは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン及びテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂(これらは必要に応じて酢酸ビニル等の少量のビニル系単量体を含有していてもよい。)に、以下の式(3)で示されるポリジメチルシロキサン等のシリコン化合物がグラフト化したものである。
【0059】
【化1】

(3)
【0060】
式(3)中のメチル基(CH3)は、水素、アルキル基、フェニル基、エーテル基、エステル基や反応性置換基であるヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基、ビニル基、アリル基、ポリエーテル基、フッ素含有アルキル基等を有する置換基で置換されていてもよく、グラフト化のためにはビニル基又はアリル基を有する置換基を有することが好ましい。また、シリコン化合物の平均重合度nは1000〜10000の範囲であることが好ましい。
【0061】
シリコン化合物とは、上記ポリオレフィン系樹脂へのグラフト化に用いられるシリコン化合物と同一のものでも、異なるものでもよいが、式(3)で表されるような架橋構造を有していないシリコン化合物(シリコンガム)であることが好ましい。また、本実施形態においては、2種以上のシリコン化合物を用いることもできる。シリコングラフト化ポリオレフィン系樹脂においては、各ポリマー鎖同士が互いに架橋しておらず、独立のポリマー鎖として存在していることが必要である。したがって、シリコングラフト化ポリオレフィン系樹脂の主鎖同士がグラフトしているシリコン化合物を介して互いに架橋したゴム弾性を有する架橋構造型(三次元構造型)の樹脂は、本実施形態のシリコングラフト化ポリオレフィン系樹脂には含まれない。
【0062】
ポリオレフィン樹脂とは、一般式(4)で表されるオレフィン系不飽和化合物のホモ重合体、又は共重合体、或いはその変性体である。
【0063】
【化2】

(4)
【0064】
〔式(4)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキルカルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を示す。〕
【0065】
ポリオレフィン樹脂としては、具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。それらの変性体としては、他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体が挙げられる。
【0066】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的達成を損なわない範囲で、更に公知の添加剤を必要に応じて含有してもよい。そのような添加剤として、具体的には、無機充填材、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマー及び顔料が挙げられる。
【0067】
無機充填剤としては、例えば、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状のものが用いられる。繊維状充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、無機充填剤として、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカーを用いてもよい。なお、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質を含有してもよい。
【0068】
粉粒子状充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。板状充填剤としては、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。中空状充填剤としては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーンが挙げられる。
【0069】
これらの充填剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの充填剤は表面処理されたもの及び未表面処理のもののいずれであってもよいが、成形表面の平滑性、機械的特性の点から、表面処理されたものの方が好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。表面処理剤として、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤を使用することができる。具体的には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネートが挙げられる。
【0070】
結晶核剤としては、例えば、窒化ホウ素が挙げられる。
【0071】
導電剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末及び金属繊維が挙げられる。
【0072】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、及び未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物を熱可塑性樹脂として用いてもよい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
【0073】
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。ここで、無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に用いられているものが挙げられ、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックが例示される。また、有機系顔料としては、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系の顔料が挙げられる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物への顔料の添加割合は、求められる色調により大幅に変化するため明確に規定することは難しいが、一般的には、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
【0074】
次に、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の好適な製造方法について説明する。なお、ここでは説明の簡略化のために、ポリアセタール樹脂(I)、軽質炭酸カルシウム(II)、脂肪酸(III)、脂肪酸のカルシウム塩(IV)、及び脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)を、それぞれ、単に成分(I)、成分(II)、成分(III)、成分(IV)、及び成分(V)と表記する場合がある。
【0075】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いられる装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。その装置としては、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサーが挙げられる。それらの中でも、減圧装置とサイドフィーダーとを装備した2軸押出機が特に好ましい。このような装置を用いて、上記各成分を溶融混練することにより本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が得られる。溶融混練の方法は、全成分を同時に溶融混練する方法、予備的に混合した混合物を溶融混練する方法、更に押出機のバレルの途中から、逐次、サイドフィーダーを使用することによって各成分を供給し、溶融混練する方法が挙げられる。
【0076】
その製造方法は、具体的には、
〔A〕ポリアセタール樹脂(I)と、軽質炭酸カルシウム(II)と、脂肪酸(III−I)と、脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)とを混合して混合物を得る工程と、その混合物を溶融混練する工程とを有する方法、
〔B〕予め、軽質炭酸カルシウム(II)と、脂肪酸(III−I)と、脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)とを混合して予備混合物を得る工程と、その予備混合物とポリアセタール樹脂(I)とを溶融混練する工程とを有する方法、並びに
〔C〕上記成分(I)〜(V)のうちの2種又は3種の成分を予め混合又は溶融混練して予備混合物を得る工程と、その予備混合物と、混合していない残りの成分とを溶融混練する工程とを有する方法が挙げられる。
ただし、成分(I)〜成分(V)の混合順序及び溶融混練順序は特に制限されない。これらのうち、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、成分(I)の加熱溶融物又は固体状態物に成分(II)と、成分(III−I)と、成分(III−II)と、成分(IV)と、成分(V)との混合物を添加して溶融混練する方法が好ましい。
【0077】
より詳細には、本発明の目的を更に有効かつ確実に達成できるポリアセタール樹脂組成物を得る観点から、好ましい製造方法は、成分(II)と、成分(III−I)と、成分(III−II)と、成分(IV)と、成分(V)とを固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、その混合物と成分(I)とを、それぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給し溶融混練して溶融混練物を得る工程と、その溶融混練物を押出機のダイから連続的に押し出す工程とを有する。この製造方法は、脂肪酸(III−I)及び脂肪酸(III−II)等を用いて炭酸カルシウム(II)に対して加熱ヘンシェルコーティング等により予め表面処理又はコーティングを施す工程を経ることがない製造方法である。
【0078】
また、ポリアセタール樹脂組成物がポリアミド(VI)を含む場合、より好ましい製造方法としては、成分(II)と、成分(III−I)と、成分(III−II)と、成分(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、ポリアミド樹脂(VI)とを、固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、その混合物と、成分(I)と、をそれぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給し溶融混練して溶融混練物を得る工程と、その溶融混練物を押出機のダイから連続的に押し出す工程と、を有する製造方法である。この場合、特に好ましくは、上記ポリアミド樹脂(VI)は、ポリアセタール樹脂(I)との溶融マスターバッチとして配合される。
【0079】
押出機の減圧度は特に限定されないが、0〜0.07MPaが好ましい。また、溶融混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂(I)のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には、160℃〜240℃であると好ましい。また、混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、30秒間〜1分間が好ましい。
【0080】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形して成形品を得る方法については、特に制限するものではなく、従来公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)が挙げられる。
【0081】
上述の成型方法によって本実施形態のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形品は、剛性、靭性等の機械的特性バランスに優れ、さらに高温下における対金属摺動性に優れている。従って、その成形品は、複雑な形状を有する部品として用いた場合に有用であり、様々な用途の成形品として使用することが可能である。そのような成形品として、例えば、歯車(ギア)、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品が挙げられる。
【0082】
また、その成形品は、自動車用の部品等としても用いることが可能であり、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台並びに排水口及び排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター及びボタン、散水用のノズル及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に用いられる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例よって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0084】
(物性及び特性の測定及び評価方法)
〈融点の測定方法〉
示差熱量計(パーキンエルマー社製、商品名「DSC−2C」)を用いて、ポリアセタール樹脂の融点を測定した。その際、まず、室温から一旦200℃まで昇温し、融解させた試料を100℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温し、その時の発熱スペクトルのピークの温度を融点とした。
【0085】
〈引張特性の測定方法〉
東芝機械(株)製の射出成形機(商品名「EC75NII射出成形機」)を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度90℃に設定、射出圧力73MPa、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件でポリアセタール樹脂組成物を射出成形し、評価用のISOダンベルを試験片として得た。得られたISOダンベルについて、ISO527に準じて引張弾性率、引張伸度を測定した。
【0086】
〈滞留熱変色性の評価方法〉
東芝機械(株)製の射出成形機(商品名「EC75NII射出成形機」)を用いて、温度205℃に設定されたシリンダー内に溶融状態の組成物を滞留させた。一定時間経過後、金型温度を90℃に設定し、射出圧力73MPa、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件で90℃に設定された金型(評価用ISOダンベルを得た金型と同じもの)に射出して成形片(JIS1A号ダンベル片)を得た。得られた成形片の図1に黒丸で示す部分の色調を色彩色差計(コニカミノルタ(株)製、商品名「CR−200」)用いてLab表色系にて測定した。このとき、ブランク(同成形機での通常成形によって得られる成形片)の色彩色差計の測定値をL,a,bとし、滞留後の成形片の測定値をL*,a*,b*として下記式(5)により色差ΔEを算出し、この値が3.5を超えるシリンダー内での
滞留時間を求めた。

【0087】
(ポリアセタール樹脂組成物の製造)
ポリアセタール樹脂組成物を、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−26SS押出機」、L/D=48、ベント付き)を用いて製造した。この押出機の概略図を図2に示す。図2中、1〜12は押出機のバレルゾーン(個々に独立している)、13はダイヘッド、14は押出機モーター、15は定量フィーダー(トップ1)、16は定量フィーター(トップ2)、17は定量フィーター(サイド)、18は脱気ベントをそれぞれ示す。
【0088】
<製造方法A>
押出機のバレルゾーン1を冷却水により冷却し、バレルゾーン2及び3を210℃に、バレルゾーン4〜11を215℃に、ダイヘッド15を210℃に設定した。この温度条件で、ポリアセタール樹脂(I)を定量フィーダー15から、軽質炭酸カルシウム(II)と1価の脂肪酸(III−I)と1価の脂肪酸(III−II)と脂肪酸のカルシウム塩(IV)と脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)とポリアミド樹脂(VI)の固相状態での混合物を定量フィーダー16から供給して、脱気ベント18より真空ポンプを用いて脱気しながら、スクリュー回転数150rpm、押出量14kg/hの条件で混合物を溶融混練し、ダイヘッド13でダイから溶融混練物を押し出してポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0089】
<製造方法B>
軽質炭酸カルシウム(II)と1価の脂肪酸(III−I)と1価の脂肪酸(III−II)と脂肪酸のカルシウム塩(IV)と脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)とポリアミド樹脂(VI)との固相状態での混合物をサイドの定量フィーダー17から供給した以外は製造方法Aと同様にして、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0090】
<製造方法C>
ポリアセタール樹脂(I)と軽質炭酸カルシウム(II)と1価の脂肪酸(III−I)と1価の脂肪酸(III−II)と脂肪酸のカルシウム塩(IV)と脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)とポリアミド樹脂(VI)との固相状態での混合物を定量フィーダー15から供給した以外は製造方法Aと同様にして、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0091】
実施例、比較例には下記成分を用いた。
(ポリアセタール樹(I))
〈ポリアセタール樹脂I−i〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、そこにトリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/h(トリオキサン1molに対して、0.013mol)、連鎖移動剤としてメチラール(水分量1.3%、メタノール量0.99%)の添加量を重合後のポリアセタール樹脂のJIS K7210に基づくメルトフローレートが13g/10分となるように調整した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molとなる量で、連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、上記式(2)で表される窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間の条件で、その不安定末端部分の分解除去処理を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、押出機のダイス部よりストランドとして押し出され、ペレット化された。ペレット化したポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.35質量部を添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(I−i)の融点は169.5℃であった。
【0092】
〈ポリアセタール樹脂I−ii〉
1,3−ジオキソランの添加量を128.3g/h(トリオキサン1molに対して、0.039mol)に代え、メチラールの添加量を、重合後のポリアセタール樹脂のJIS K7210に基づくメルトフローレートが10g/10分となるような量に変更した以外はポリアセタール樹脂(I−i)の重合と同様にして、ポリアセタール樹脂のペレット化を行った。ペレット化されたポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.35質量部を添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂を(I−ii)の融点は164.5℃であった。
【0093】
(ポリアセタール樹脂(I−iii))
攪拌羽根の付いた連続式にモノマー等を供給できるタンクに、脱水したホルムアルデヒドガス100質量部、触媒としてジメチルジステアリルアンモニウムアセテート0.1質量部を投入した。次いで、そこに、分子量調節剤として無水酢酸を、重合後のポリアセタール樹脂のメルトフローレートが10g/10分となるような量で連続的に供給しながら、58℃で重合した。得られた粗ポリアセタール重合体をヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒に入れ、140℃で2時間、末端基を化学処理した。得られた重合体を120℃、3時間、1mmHgの条件で真空乾燥した。次に、乾燥したポリアセタール重合体100質量部に対して、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.35質量部添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂ペレットを得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(I−iii)の融点は175.0℃であった。
【0094】
〈炭酸カルシウム(II)〉
(II−i):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.4、最多確率空隙半径0.13μm)
(II−ii):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.7、最多確率空隙半径0.14μm)
(II−iii):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.2、最多確率空隙半径0.12μm)
(II−iv):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=10.0、最多確率空隙半径0.13μm)
(II−v):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.4、最多確率空隙半径0.10μm)
(II−vi):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.4、最多確率空隙半径0.17μm)
(II−vii):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.1、最多確率空隙半径0.12μm)
(II−viii):白石工業(株)製、商品名「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=10.2、最多確率空隙半径0.14μm)
(II−ix):白石工業(株)製、商品名「Vigot−15」(平均粒径150nm、表面脂肪酸処理、pH=9.0、最多確率空隙半径0.12μm)
(II−x):白石工業(株)製、商品名「白艶華O」(平均粒径30nm、表面ロジン酸処理、pH=8.5、最多確率空隙半径0.02μm)
(II−xi):白石工業(株)製、商品名「PC−700」(平均粒径1.2μm、表面
未処理、pH=9.9)
なお、上記(II−i)〜(II−viii)の炭酸カルシウムは、下記に示す(A)、(B)及び(C)の3段階の工程を経た石灰乳・炭酸ガス反応法により製造されたものである。
(A)緻密質石灰石を焼成炉で焼成し、二酸化炭素と生石灰とに分解した。
(B)得られた生石灰に水を加えて水化精製し、スラリー状の消石灰とした。
(C)(A)で得られた二酸化炭素を(B)で得られたスラリー状の消石灰に吹き込んで反応させ、炭酸カルシウムを生成した。
【0095】
(炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I))
(III−I−i):川研ファインケミカル(株)製ステアリン酸、商品名「F−3」(融点64℃)
(III−I−ii):ベヘン酸(融点82℃)
【0096】
(炭素数28以上の脂肪酸(III−II))
(III−II−i):クラリアントジャパン(株)製モンタン酸、商品名「Licow ax−S」(融点84℃)
(III−II−ii):メリシン酸(融点94℃)
【0097】
(脂肪酸のカルシウム塩(IV))
(IV−i):日東化成(株)製ステアリン酸カルシウム
(IV−ii):ベヘン酸カルシウム
【0098】
(脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V))
(V−i):セチルミリステート(北広ケミカル(株)製)
(V−ii):ステアリルステアレート
(V−iii):エチレングリコールジステアレート
【0099】
(ポリアミド樹脂(VI))
(VI−i):ナイロン6,6(10%)−コポリマーアセタール
メルトフローレートが30g/10分のポリアセタールコポリマーと、ギ酸相対粘度VRが22のポリアミド6,6を質量比9:1で混合し、シリンダー温度が260℃に設定された二軸押出機でそれらの混合物の溶融混練を行った。押し出されたストランドはストランドカッターでペレット化し、これをポリアミド樹脂(VI−i)とした。
【0100】
[実施例1〜64]
各成分を表1及び2に示す割合で配合し、それぞれ表1及び2に示された製造方法により溶融混練を行った。押し出されたポリアセタール樹脂組成物をストランドカッターでペレット化した。得られたペレットについて上述の方法により引張弾性率、引張伸度を測定し、また滞留熱変色試験を行った。結果を表1〜4に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
[比較例1〜39]
各成分を表5に示す割合で配合し、それぞれ表5に示された製造方法により溶融混練を行った。押し出されたポリアセタール樹脂組成物をストランドカッターでペレット化した。得られたペレットについて上述の方法により引張弾性率、引張伸度を測定し、滞留熱変色試験を行った。結果を表5及び6に示す。
なお、比較例2、3、24、25については、脂肪酸(III−I)をポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して1.5質量部配合し、比較例4、5、26、27については脂肪酸(III−II)をポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して1.5質量部配合し、比較例17,18,37,38については、脂肪酸のカルシウム塩(IV)をポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して0.15質量部配合した。
【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
上記試験結果から明らかなように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物(実施例1〜64)は、剛性、靭性等の機械的特性のバランスに優れ、さらに溶融状態での滞留変色性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は上述のとおり、剛性・靭性等の機械的特性に優れているため、歯車に代表される自動車、電機電子機器の精密部品、その他工業等の分野における産業上利用可能性を有する。さらに本発明のポリアセタール樹脂組成物は、溶融状態での滞留変色性に優れているため、ホットランナー成形を代表とする厳しい成形加工方法にも対応できる。
【符号の説明】
【0110】
1〜12:バレルゾーン
13:ダイヘッド
14:押出機モーター
15〜17:定量フィーダー
18:脱気ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(I)100質量部と、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)5〜50質量部と、
炭素数が12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、
炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、
脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、
脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、
を含有し、
前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪酸(III−I)と前記脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(II)が0.020〜0.050であり、前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)に対する前記脂肪酸(III)と脂肪酸(III−II)の合計の質量比[(III−I)+(III−II)]/(IV)が3〜15であり、前記軽質炭酸カルシウム(II)に対する前記脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)の質量比(V)/(II)が0.03〜0.15である、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸(III−II)に対する前記脂肪酸(III−I)の質量比(III−I)/(III−II)が1〜5である、請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸のカルシウム塩(IV)を構成する脂肪酸が前記脂肪酸(III−I)と同種である、請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
水銀圧入法による空隙半径の測定において、前記軽質炭酸カルシウム(II)の最多確率空隙半径が0.12μm以上0.16μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアセタール樹脂(I)は、164℃以上173℃以下の融点を有するポリアセタールコポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアセタール樹脂(I)は、167℃以上173℃以下の融点を有するポリアセタールコポリマーを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量部に対して、(VI)ポリアミド樹脂を0.01〜3質量部さらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法であって、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)と、炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、を固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、
前記混合物と、ポリアセタール樹脂(I)と、を、それぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給して溶融混練して溶融混練物を得る工程と、
前記溶融混練物を前記押出機のダイから連続的に押し出す工程と、
を有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法であって、
平均粒径が50nm以上500nm以下であり、JIS K5101試験法によるpHが9.2以上10.0以下であり、かつ表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム(II)と、炭素数12〜27の1価の脂肪酸(III−I)と、炭素数28以上の1価の脂肪酸(III−II)と、脂肪酸のカルシウム塩(IV)と、脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル(V)と、ポリアミド樹脂(VI)と、を、固相状態でブレンダーにより混合して混合物を得る工程と、
前記混合物と、前記ポリアセタール樹脂(I)と、を、それぞれ異なるフィーダーから押出機のバレル内に連続的に供給し溶融混練して溶融混練物を得る工程と、
前記溶融混練物を前記押出機のダイから連続的に押し出す工程と、
を有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂(VI)は、前記ポリアセタール樹脂(I)との溶融マスターバッチとして配合される、請求項9記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を含む射出成形体。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を含む歯車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184551(P2011−184551A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50932(P2010−50932)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】