説明

ポリアセタール樹脂組成物及び成形品

【課題】 ホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制でき、かつ添加剤に由来するモールドデポジットやブリードアウトを抑制できるポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、(B)特定のヒドラゾン化合物0.01〜5.0重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制でき、かつ成形における金型への付着物(モールドデポジット)の発生や成形品におけるブリードアウトを抑制できるポリアセタール樹脂組成物及びこの樹脂組成物で形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び成形性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、その他の精密機械部品、建材・配管部材、生活・化粧用部品、医用部品などの分野において広く利用されている。
【0003】
しかしながら、その用途の拡大及び多様化に伴って、より熱安定性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量が極めて少ないポリアセタール樹脂が求められている。一般にホルムアルデヒドは化学的に活性であり、酸化によりギ酸となりポリアセタール樹脂の耐熱性や周辺に存在する他樹脂の特性に悪影響を及ぼしたり、ホルムアルデヒドが発生する樹脂を電気・電子機器の部品などに用いると、金属製接点部品が腐蝕したり有機化合物の付着により変色し、接点不良を生じる要因になる場合がある。また、通常の使用条件下においてポリアセタール樹脂成形品から発生するホルムアルデヒドは極めて微少量であるが、部品組立工程での作業環境や最終製品の使用周辺の生活環境を汚染する要因の1つとなる。さらに、成形における多量のホルムアルデヒドの発生は金型表面でパラホルムアルデヒドを生成させ、モールドデポジットの原因となる。ホルムアルデヒドの発生量を極限まで低減したポリアセタール樹脂材料が要望される理由として、これらのことが挙げられる。
【0004】
従来、ポリアセタール樹脂の化学的構造を安定化するため、ホモポリマーについては、重合体の末端をアセチル化などによりエステル化する方法、コポリマーについては、重合時にトリオキサンと環状エーテル、環状ホルマールなどの隣接炭素結合を有するモノマーとを共重合した後、不安定な末端部分を分解除去して不活性な安定末端とする方法などが知られている。しかし、加熱時にはポリマーの主鎖部分での解裂分解も起こり、その防止には、上記処理のみでは対処できず、実用的には安定剤(酸化防止剤、その他の安定剤など)の添加が必須とされている。
【0005】
例えば、ポリアセタール樹脂に添加する酸化防止剤としては、立体障害を有するフェノール化合物(ヒンダードフェノール)、立体障害を有するアミン化合物(ヒンダードアミン)が知られており、その他の安定剤として、メラミン、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、有機酸塩及び無機酸塩など知られている。また、通常、酸化防止剤は他の安定化剤と組み合わせて用いられる。しかし、このような安定剤を用いても、ポリアセタール樹脂の成形品から発生するホルムアルデヒドを大幅に抑制することは困難である。
【0006】
特許文献1には、ポリアセタールコポリマーとジカルボン酸ジヒドラジド(炭素数3〜10の脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド、芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、脂環族ジカルボン酸ジヒドラジドなど)とを含む組成物が開示されている。このようなカルボン酸ジヒドラジドを用いると、ある程度は、熱安定性が向上し、ホルムアルデヒドの発生を抑制できるものの、成形性が低く、モールドデポジットが発生したり、成形品からカルボン酸ヒドラジドの染み出しが発生する。
【特許文献1】米国特許3152101号公報(第1欄及び第3欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制でき、かつ添加剤に由来するモールドデポジットやブリードアウトを抑制できるポリアセタール樹脂組成物及び成形品を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ホルムアルデヒドの発生量を低レベルに抑制できるとともに、長期安定性、耐熱性、加工特性、耐候(光)性、耐衝撃性、摺動性などの物性が改善されたポリアセタール樹脂組成物及び成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に特定のヒドラゾン化合物を配合すると、ホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制できるだけでなく、添加剤に由来するモールドデポジットやブリードアウトを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、
(B)下記式(1)で表されるヒドラゾン化合物及び下記式(2)で表されるヒドラゾン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物0.01〜5.0重量部
を含んでなるポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R1〜R3は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。nは1または2の整数を示し、nが1の場合、Aは−R4、−CONHまたは−COR4(R4は炭素数1〜30の1価の炭化水素基)、nが2の場合、Aは−R−または−CO−R−CO−(Rは炭素数1〜30の2価の炭化水素基)を示す。)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R〜Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ポリアセタール樹脂に特定のヒドラゾン化合物を添加しているので、ホルムアルデヒドの発生量を極めて低レベルに抑制できる。さらに、添加剤であるヒドラゾン化合物に由来するモールドデポジットや、成形品におけるブリードアウトを著しく抑制できるため、成形性及び成形品の品質を改善できる。本発明で用いる特定のヒドラゾン化合物によるホルムアルデヒド発生の抑制効果は、他の添加物の存在によっても損なわれることのない特異的なものであり、さらに他の添加剤(酸化防止剤、耐熱安定剤、加工安定剤、耐候(光)安定剤、耐衝撃性改良剤、摺動性改良剤、光沢制御剤、充填剤、着色剤など)を添加することにより、各添加剤に応じた諸特性(長期安定性、耐熱性、加工特性、耐候(光)性、耐衝撃性、摺動性など)も改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、(B)特定のヒドラゾン化合物0.01〜5.0重量部を含んで構成されている。
(A)ポリアセタール樹脂
本発明で用いるポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(−OCH2−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を有するポリアセタールコポリマーがその代表例であり、基本的には直鎖の分子構造を有する。さらに、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入されたポリアセタール共重合体、オキシメチレン基の繰返し単位と他の重合体単位とを有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。中でも、直鎖のポリアセタール樹脂と少量の分岐又は架橋ポリアセタール樹脂の組み合わせは好ましい例の1つである。
【0017】
一般に、ポリアセタールホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドやトリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)の重合により製造され、通常、その末端をエステル化することにより、熱分解に対して安定化されている。
【0018】
ポリアセタールコポリマーは、一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを主モノマーとし、環状エーテルや環状ホルマールから選ばれた化合物をコモノマーとして共重合させることによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。特に、主モノマーとしてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的に、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させた後、蒸留などの方法で精製して得られる。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸などの不純物を実質的に含まないのが好ましい。
【0019】
また、コモノマーである環状エーテル及び環状ホルマールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどが挙げられる。
【0020】
さらに、分岐構造や架橋構造を形成可能なコモノマー成分としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなどのアルキル又はアリールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのアルキレン又はポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのコモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
本発明においては、ホルムアルデヒドの発生をより低いレベルに抑制する観点から、特に、このようなポリアセタールコポリマーが好適に使用される。中でも、トリオキサン(a-1)と環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれた化合物(a-2)の1種以上とを、前者(a-1)/後者(a-2)=99.9/0.1〜80.0/20.0の割合(重量比)で共重合させてなるものが好ましく、さらに好ましくは前者/後者=99.5/0.5〜90.0/10.0の割合(重量比)で共重合させてなるものである。
【0022】
また、環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれる化合物としては、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールが特に好ましい。
【0023】
上記の如きポリアセタールコポリマーは、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタールコポリマーの末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0024】
本発明で使用するポリアセタール樹脂の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が10,000〜400,000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM−D1238に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1〜100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜80g/10分である。
(B)ヒドラゾン化合物
本発明の特徴は、ポリアセタール樹脂に特定のヒドラゾン化合物を添加することにより、ホルムアルデヒドの発生を著しく抑制できる点にある。また、別の特徴は、かかるヒドラゾン化合物を用いることにより、当該化合物に由来するモールドデポジットやブリードアウトが抑えられ、ポリアセタール樹脂の加工安定性が著しく向上する点にある。
【0025】
本発明において用いられるかかる特定のヒドラゾン化合物とは、前記式(1)で表されるヒドラゾン化合物及び前記式(2)で表されるヒドラゾン化合物である。
【0026】
式(1)において、R1〜R3は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖又は分岐状アルキル基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びこれらの環上に置換基を有する芳香族基、芳香族基の結合したアルキル基などが挙げられる。R1〜R3は不飽和基を有していてもよい。
【0027】
また、式(1)において、nは1または2の整数を示し、nが1の場合、Aは−R4(R4は炭素数1〜30の1価の炭化水素基)、−CONHまたは−COR4(R4は炭素数1〜30の1価の炭化水素基)、nが2の場合、Aは−R−または−CO−R−CO−(Rは炭素数1〜30の2価の炭化水素基)を示す。
【0028】
Aが−R4または−COR4の場合、R4の炭化水素基としてはアルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香族基、芳香族基の結合したアルキル基が例示される。また、Aが−R−または−CO−R−CO−の場合、Rの炭化水素基としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族基、芳香族基の結合したアルキレン基が例示される。前記R4及びRは不飽和基を有していてもよい。
【0029】
また、式(2)において、R〜Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜30の炭化水素基としては、式(1)のR1〜R3において例示したものが挙げられる。
【0030】
このような構造を有するヒドラゾン化合物(1)の具体例としては、2−プロパノン=ヒドラゾン、ベンズアルデヒド=ヒドラゾン、ジフェニルエタンジオン=ビス(フェニルヒドラゾン)、1,4−[(3−フェニルエチリデン)ヒドラジノ]ベンゼン、1,4−[(3−フェニルプロピリデン)ヒドラジノ]ベンゼン、2−(1−メチルエチリデン)ヒドラジンカルボキサミド、2−(1−エチルエチリデン)ヒドラジンカルボキサミド、モノカルボン酸ヒドラジドのホルムアルデヒド付加体、ジカルボン酸ヒドラジドのホルムアルデヒド付加体、モノカルボン酸ヒドラジドのアセトアルデヒド付加体、ジカルボン酸ヒドラジドのアセトアルデヒド付加体などが挙げられる。
【0031】
また、ヒドラゾン化合物(2)の具体例としては、2−プロパノン=(1−メチルエチリデン)ヒドラゾン、2−プロパノン=(1−エチルエチリデン)ヒドラゾン、シクロヘキサノン=(1−メチルプロピリデン)ヒドラゾン、シクロヘキサノン=(1−メチルブチリデン)ヒドラゾンなどが挙げられる。
【0032】
これらのヒドラゾン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
これらのヒドラゾン化合物(B)の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部、好ましくは0.03〜3.0重量部、さらに好ましくは0.05〜2.0重量部である。ヒドラゾン化合物(B)の割合が少なすぎるとホルムアルデヒド発生量を効果的に低減するのが困難となり、多すぎると成形性を損ねたり、機械的強度が低下し易くなる。
【0034】
本発明では、このような特定のヒドラゾン化合物(B)を用いることにより、ホルムアルデヒド発生量を大幅に低減するとともに、成形加工性(モールドデポジットの抑制)、成形品からの染み出し特性(ブリードアウトの抑制)に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
(C)酸化防止剤
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、樹脂の酸化分解を抑えることにより短期及び長期の諸特性を保持すると共に、分解に伴うホルムアルデヒドの発生を抑制するため、酸化防止剤を配合するのが好ましい。
【0035】
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒドロキノン系化合物、キノリン系化合物などが含まれる。これらの酸化防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物が好ましく、特に好ましくはヒンダードフェノール系化合物である。
【0036】
ヒンダードフェノール系化合物としては、単環式ヒンダードフェノール化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど;炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など;エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物、例えば、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N′−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N′−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N′−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N′−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N′−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0037】
前記ヒンダードアミン系化合物としては、エステル基含有ピペリジン誘導体、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートなど;エーテル基含有ピペリジン誘導体、例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなど;アミド基含有ピペリジン誘導体、例えば、[4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメートなど、が挙げられる。また、高分子量のピペリジン誘導体重縮合物なども含まれる。
【0038】
これらの酸化防止剤(C)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。酸化防止剤(C)を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0重量部、特に好ましくは0.03〜2.0重量部である。
(D)耐熱安定剤
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、押出加工や成形加工の際の樹脂の熱分解を抑えることにより樹脂の諸特性を保持すると共に、樹脂の分解に伴うホルムアルデヒドの発生を抑制するため、耐熱安定剤を配合するのが好ましい。
【0039】
耐熱安定剤には、有機カルボン酸金属塩、塩基性窒素含有化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ホスフィン化合物などが含まれる。
【0040】
有機カルボン酸金属塩を形成する金属としては、Li,Na,Kなどのアルカリ金属、Mg,Caなどのアルカリ土類金属、Znなどの遷移金属が挙げられる。また、有機カルボン酸金属塩を形成する有機カルボン酸としては、炭素数が1〜34程度の各種の脂肪族カルボン酸が使用可能であり、飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのオキシ酸などが挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、ヒドロキシル基を有するものであってもよい。また、有機カルボン酸金属塩を形成する有機カルボン酸は、重合性不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルなど)とオレフィンとの共重合体などであってもよい。このような有機カルボン酸の具体例を挙げると、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムなどのアルカリ金属有機カルボン酸塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属有機カルボン酸塩、アイオノマー樹脂などである。これらの有機カルボン酸金属塩のうち、安定化効果の点で、クエン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0041】
また、前記塩基性窒素含有化合物としては、アミノトリアジン化合物、グアニジン化合物、尿素化合物、アミノ酸化合物、アミノアルコール化合物、イミド化合物、アミド化合物、ヒドラジン化合物などが挙げられる。
【0042】
アミノトリアジン化合物には、メラミン又はその誘導体、グアナミン又はその誘導体、アミノトリアジン樹脂などが含まれる。メラミン誘導体としてはメラム、メレムなどが例示され、グアナミン誘導体としてはアセトグアナミン、ステアログアナミンなどのアルキル置換グアナミン類、アジポジグアナミンなどのアルキレン−ビスグアナミン類、シクロヘキサンカルボグアナミンなどの脂環族グアナミン類、ベンゾグアナミン、フェニルベンゾグアナミン、ヒドロキシベンゾグアナミンなどの芳香族グアナミン類、フタログアナミン、ナフタレンジグアナミンなどのポリグアナミン類、CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなどのヘテロ原子含有グアナミン類などが例示され、アミノトリアジン樹脂としてはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンーホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂などが例示される。また、メラミン誘導体、グアナミン誘導体には、そのアミノ基の水素がメチロール基やアルコキシメチル基で置換された化合物(例えば、モノ〜ヘキサメチロールメラミン、モノ〜ヘキサメトキシメチルメラミン、モノ〜テトラメトキシメチルベンゾグアナミンなど)も含まれる。
【0043】
グアニジン化合物には、非環状グアニジン(グリコシアミン、グアノリン、グアニジン、シアノグアニジンなど)、環状グアニジン(グリコシアミジン、クレアチニン、オキサリルグアニジン、2,4−ジイミノパラバン酸など)、イミノ基置換ウラゾール化合物(イミノウラゾール、グアナジンなど)、イソシアヌール酸イミド類(イソアンメリド、イソアンメリンなど)、マロニルグアニジン、タルトロニルグアニジン、メソキサリルグアニジンなどが挙げられる。
【0044】
尿素化合物としては、非環状尿素化合物[尿素、アルキル基などの置換基が置換したN−置換尿素、非環状の尿素縮合体(ビウレット、ビウレア、メチレン二尿素、ホルム窒素など)など)、環状尿素化合物[アルキレン尿素、アリーレン尿素、ジカルボン酸のウレイド、β−アルデヒド酸のウレイド、α−オキシ酸のウレイド(ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−フェニルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5−メチル−5−フェニルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン、5,5−ジベンジルヒダントイン、ペンタメチレンビスヒダントイン、アラントイン又はその金属塩など)、尿酸、アルキル置換尿酸、アセチレン尿素(グリコールウリル)又はその誘導体、クロチリデンジウレア、α−オキシ酸のジウレイド、ジウレア、ジカルボン酸のジウレイドなど]などが例示できる。
【0045】
アミノ酸化合物としては、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸などが例示できる。アミノ酸化合物は、D−体、L−体、DL体の何れであってもよく、さらに、カルボルキシル基が金属塩化、アミド化、ヒドラジド化、エステル化されたアミノ酸誘導体も含む。
【0046】
アミノアルコール化合物には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミノ脂肪族モノ又はポリオールが挙げられる。
【0047】
イミド化合物としては、フタル酸イミド、トリメリット酸イミド、ピロメリット酸イミドなどの芳香族多価カルボン酸イミドなどが使用できる。
【0048】
アミド化合物には、脂肪族カルボン酸アミド類、環状カルボン酸アミド類、芳香族カルボン酸アミド、ポリアミド系樹脂[例えば、ポリアミド3、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド6−10、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド6−66−610、ポリアミド9Tなど]、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル酸アミド単独又は共重合体、ポリ(ビニルラクタム)単独又は共重合体、ポリ(N−ビニルカルボン酸アミド)、N−ビニルカルボン酸アミドと他のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0049】
ヒドラジン化合物には、脂肪族又は脂環族カルボン酸ヒドラジド(ラウリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ソルビン酸ヒドラジドなどの飽和又は不飽和脂肪酸ヒドラジド、α−オキシ酪酸ヒドラジド、グリセリン酸ヒドラジドなどのオキシ脂肪酸ヒドラジドなど)、芳香族カルボン酸ヒドラジド(フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなど)などが含まれる。
【0050】
アルカリ又はアルカリ土類金属化合物には、金属酸化物(CaO、MgOなど)、金属水酸化物(LiOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2など)、金属無機酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3などの金属炭酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩など)などが含まれ、特に、アルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物が好ましい。
【0051】
ハイドロタルサイトとしては、例えば、下記式で表されるハイドロタルサイト化合物などが使用できる。
【0052】
[M2+1−X3+(OH)X+[An−X/n・mHO]X−
(式中、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+などの2価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+などの3価金属イオンを示す。An−はCO2−、OH、HPO2−、SO2−などのn価(特に1価又は2価)のアニオンを示す。xは、0<x<0.5であり、mは、0≦m<1である)
ゼオライトとしては、最小単位セルがアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩であるゼオライト、例えば、A型、X型、Y型、L型、及びZSM型ゼオライト、チャバザイト、モルデン沸石、ホージャサイトなどの天然ゼオライトなどが使用できる。
【0053】
ホスフィン化合物には、アルキルホスフィン類(トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィンなど)、シクロアルキルホスフィン類(トリシクロヘキシルホスフィンなど)、アリールホスフィン類(トリフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(o−、m−又はp−トリル)ホスフィンなど)、アラルキルホスフィン類(トリ(o−、m−又はp−アニシル)ホスフィンなど)、アリールアルケニルホスフィン類(ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィンなど)、アリールアラルキルホスフィン類(p−アニシルジフェニルホスフィン、ジ(p−アニシル)フェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィンなど)、ビスホスフィン類(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなど)などのホスフィン化合物などが例示できる。
【0054】
耐熱安定剤を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0重量部、特に好ましくは0.03〜2.0重量部である。
(E)加工性改良剤
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、押出加工や成形加工の際の加工性を改善することによって樹脂の諸特性、特に成形品の寸法精度や表面性など、を良好に保持すると共に、押出あるいは成形加工の際の剪断による樹脂の分解とそれに伴うホルムアルデヒドの発生を抑制するため、加工性改良剤を配合するのが好ましい。
【0055】
かかる加工性改良剤には、長鎖脂肪酸又はその誘導体、ポリアルキレングリコール、シリコーン化合物、各種ワックス類などが含まれる。
【0056】
このような長鎖脂肪酸としては、炭素数10以上の一価の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸など)、炭素数10以上の二価の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ドデセン二酸など)が例示できる。長鎖脂肪酸には、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換された脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸など)も含まれる。
【0057】
長鎖脂肪酸の誘導体には、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドなどが含まれる。長鎖脂肪酸エステルを構成するアルコールは一価アルコール及び多価アルコールの何れでもよいが、多価アルコールとのエステルが好ましい場合が多い。
【0058】
長鎖脂肪酸と一価アルコールとのエステルの例としては、ステアリルステアレート、ステアリルパルミテートなどが挙げられる。
【0059】
また、長鎖脂肪酸と多価アルコールとのエステルの例としては、エチレングリコールモノ又はジパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジベヘン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジモンタン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラモンタン酸エステル、ポリグリセリントリステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノウンデシル酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のモノ又はジラウレート、モノ又はジパルミテート、モノ又はジステアレート、モノ又はジベヘネート、モノ又はジモンタネート、モノ又はジオレート、モノ又はジリノレートなどが挙げられる。
【0060】
脂肪酸アミドとしては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどの飽和脂肪酸の第1級酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸の第1級酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミドなどの飽和及び/又は不飽和脂肪酸とモノアミンとの第2級酸アミド、エチレンジアミン−ジパルミチン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジベヘン酸アミド、エチレンジアミン−ジモンタン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどが挙げられる。さらにエチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどのアルキレンジアミンのアミン部位に異なるアシル基が結合した構造を有するビスアミドなども使用できる。これらの脂肪酸アミドのうち、特にビスアミド化合物が好ましい。
【0061】
前記ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダム又はブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルなどの共重合体などが挙げられる。これらのうち、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などが好ましい。
【0062】
前記シリコーン系化合物には、オルガノシロキサン及びポリオルガノシロキサンが含まれる。オルガノシロキサンとしては、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、ジフェニルシロキサンなどが例示され、ポリオルガノシロキサンとしては、前記オルガノシロキサンの単独重合体(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)及び共重合体が例示できる。なお、ポリオルガノシロキサンは、オリゴマーであってもよい。また、オルガノシロキサンやポリオルガノシロキサンには、分子末端や主鎖にエポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基又は置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有する変性体も含まれる。
【0063】
また、ワックス類としては、低分子量のポリオレフィン(例えば、低分子量ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの低分子量共重合体など)、酸化型ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0064】
これらの加工性改良剤を配合する場合の割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0重量部、特に好ましくは0.03〜2.0重量部である。
(F)耐候(光)安定剤
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、耐候(光)性を付与するためにさらに耐候(光)安定剤を配合してもよく、かかる耐候(光)安定剤の配合によってもなお、特定ヒドラゾン化合物(B)によるホルムアルデヒド発生の抑制効果が損なわれることがない。
【0065】
耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。
【0066】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ(t−ブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ(t−アミル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジイソアミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′,5′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0067】
ベンゾフェノン系化合物としては、複数のヒドロキシル基を有するベンゾフェノン類(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノンなど)、ヒドロキシル基及びアルコキシ基を有するベンゾフェノン類(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなど)などが挙げられる。
【0068】
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどのアルキルアリールサリシレート類が挙げられる。
【0069】
シアノアクリレート系化合物としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノ基含有ジアリールアクリレート類などが挙げられる。
【0070】
シュウ酸アニリド系化合物としては、N−(2−エチルフェニル)−N′−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N′−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミドなどの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0071】
ヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジン系化合物としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(p−トリル又は2′,4′−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ−p−トリル−6−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0072】
ヒンダードアミン系化合物としては、酸化防止剤の項で例示されたヒンダードアミン系化合物などが使用できる。
【0073】
これらの耐候(光)安定剤は、単独で用いてもよく、また、同種又は異種の耐候(光)安定剤を二種以上組み合わせて用いてもよい。特に、ベンゾトリアゾール系化合物とヒンダードアミン系化合物とを併用するのが好ましく、両者を併用する場合には、両者の割合(重量比)をベンゾトリアゾール系化合物/ヒンダードアミン系化合物=99.5/0.5〜0.5/99.5とするのが好ましく、さらに好ましくは90/10〜30/70、特に好ましくは80/20〜40/60である。
【0074】
本発明において耐候(光)安定剤を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3.0重量部、特に好ましくは0.1〜2.0重量部である。
(その他の添加剤)
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに、耐衝撃性改良剤、摺動性改良剤、光沢制御剤、充填剤、着色剤などから選択された一種または二種以上の添加剤が含まれていてもよい。
【0075】
耐衝撃性改良剤としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、アクリル系コアシェルポリマー、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ゴム成分(天然ゴムなど)などが挙げられる。耐衝撃性改良剤を配合する場合の割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。
【0076】
摺動性改良剤としては、オレフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、これらの酸無水物などによる変性体など)、ワックス類(ポリエチレンワックスなど)、シリコーン系樹脂(前記加工性改良剤の項で例示されたシリコーン系化合物など)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)、脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの摺動性改良剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。摺動性改良剤を配合する場合の割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜10重量部、さらに好ましくは0.05〜5重量部である。
【0077】
光沢制御剤としては、アクリル系コアシェルポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド系エラストマー、アルキル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、AES樹脂など)、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンや環状ポリオレフィンなど)などが挙げられる。光沢制御剤を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0078】
充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、アラミド繊維などの無機又は有機繊維状充填剤、ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの板状充填剤、ミルドファイバー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラスナイト、アルミナ、フッ化黒鉛、炭化ケイ素、窒化ホウ素、金属粉などの粉粒状充填剤などが挙げられる。充填剤を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜150重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜80重量部である。
【0079】
着色剤としては、各種染料及び顔料が使用できる。染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、ナフトキノン系染料などが挙げられる。顔料としては無機顔料及び有機顔料のいずれも使用でき、無機顔料としては、チタン系顔料、亜鉛系顔料、カーボンブラック、鉄系顔料、モリブデン系顔料、カドミウム系顔料、鉛系顔料、コバルト系顔料及びアルミニウム系顔料などが例示でき、有機顔料としては、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料及びスレン系顔料などが例示できる。これらのうち、光遮蔽効果の高い着色剤であるカーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料を用いると、耐候(光)性も向上できる。着色剤を配合する場合の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.03〜2重量部である。
【0080】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、必要に応じて、他の慣用の添加剤、例えば、離型剤、核剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、界面活性剤、抗菌剤、抗カビ剤、芳香剤、香料などが含まれていてもよい。
(ポリアセタール樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法、(4)ポリアセタール樹脂のペレット又は粉砕物に所定量の配合成分を混合するか、ポリアセタール樹脂のペレット又は粉砕物の表面に所定量の配合成分をコーティングして所定の組成物を得る方法などが採用できる。
【0081】
押出機を用いた組成物の調製においては、一カ所以上の脱揮ベント口を有する押出機を用いるのが好ましく、さらに、主フィード口から脱揮ベント口までの任意の場所に水や低沸点アルコール類をポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度供給し、押出工程で発生するホルムアルデヒド等を水や低沸点アルコール類と共に脱揮ベント口から脱揮除去するのが好ましい。これにより、ポリアセタール樹脂組成物およびその成形品から発生するホルムアルデヒド量をさらに低減することができる。また、ヒドラゾン化合物をサイドフィードする場合、脱揮ベント口の後にフィードするのが好ましい。
(成形品)
本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形品も含まれる。本発明のポリアセタール成形品は、特定のヒドラゾン化合物が配合されていることにより、ホルムアルデヒド発生量が大幅に抑制される。具体的には、湿式条件下において、ホルムアルデヒド発生量が成形品の単位重量当たり2μg/g以下、好ましくは1μg/g以下である。また、乾式条件下において、ホルムアルデヒド発生量が成形品の単位重量当たり2μg/g以下、好ましくは1μg/g以下である。湿式条件下及び乾式条件下におけるホルムアルデヒド発生量は、(1)温度60℃で飽和湿度の密閉空間に厚さ2mmの成形品を3時間保存したときに発生するホルムアルデヒド量、及び(2)温度80℃の密閉空間に厚さ2mmの成形品を24時間保存したときに発生するホルムアルデヒド量であり、より具体的には実施例の項で記載した測定法によるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形などの公知の成形方法により成形可能である。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、その成形品としての利用分野に制約はないが、ホルムアルデヒド発生量の低減が強く求められる用途、例えば自動車部品、電気・電子部品、精密機械部品、建材・配管部品、日用品、化粧品用部品、医療用機器部品などに好適に使用できる。
【0084】
より具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーターやコネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品が例示できる。
【0085】
電気・電子部品としては、金属接点が多数存在する機器の構成部品又は部材、例えば、カセットテープレコーダ、CD・DVDプレイヤーなどのオーディオ機器、VTR、8mmビデオカメラ、デジタルビデオカメラなどのビデオ機器、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器などの構成部品又は部材が例示できる。これらの構成部品又は部材の具体例としては、シャーシ、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。さらに、少なくとも一部がポリアセタール樹脂成形品で構成された光及び磁気メディア部品、例えば、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、デジタルビデオカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジ、DVDディスクカートリッジなどの部品にも適用可能である。
【0086】
さらに、本発明のポリアセタール樹脂成形品は、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医療用関係部品に好適に使用される。
【0087】
特に自動車分野においては、車内が閉じられた環境下に置かれる場合が多く、また、車内が相当の高温に達する場合もあり、ホルムアルデヒド発生量の少ない本発明の樹脂組成物はかかる分野の成形品に特に好適に用いられるものである。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0089】
なお、実施例及び比較例において、成形品からのホルムアルデヒドの発生量、成形性(モールドデポジット)、及び成形品からの染み出し性(ブリードアウト)について、以下のようにして評価した。
[湿式での成形品からのホルムアルデヒド発生量]
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、射出成形(成形温度190℃)により平板状試験片(100mm×40mm×2mm)を成形した。この平板状試験片2枚(総重量約22gを精秤)を蒸留水50mlを含むポリエチレン製瓶(容量1L)の蓋に吊下げて密閉し、恒温槽内に温度60℃で3時間放置した後、室温で1時間静置した。平板状試験片から発生し、ポリエチレン製瓶中の蒸留水に吸収されたホルムアルデヒド量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、試験片単位重量当たりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
[乾式での成形品からのホルムアルデヒド発生量]
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、射出成形(成形温度190℃)により角柱状試験片(2mm×2mm×50mm)を成形した。この角柱状試験片10個(総重量約2.7gを精秤)を容量20mlの容器に入れて密閉し、温度80℃の恒温槽内で24時間加熱した後、恒温槽から取り出して室温になるまで空冷した。次に、容器内に蒸留水5mlをシリンジにて注入し、試験片から発生したホルムアルデヒドを蒸留水に吸収させた。この水溶液のホルムアルデヒド量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、試験片単位重量当たりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
[成形性(モールドデポジット)]
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、30t射出成形機(成形温度200℃)で円板形状の成形品(径20mm×厚さ1mm)を連続成形(500ショット)し、金型付着物(モールドデポジット)の程度を以下の基準で評価した。
【0090】
○:全くモールドデポジットが見られない
△:わずかにモールドデポジットが見られる
×:著しいモールドデポジットが見られる。
[成形品からのブリードアウト]
湿式での成形品からのホルムアルデヒド発生量の評価(上記)において、恒温槽内での加熱処理後に取り出した平板状試験片の成形品の表面を目視で観察し、染み出し物(ブリードアウト)の程度を以下の基準で評価した。
【0091】
○:全くブリードアウトが見られない
△:僅かなブリードアウトが見られる
×:著しいブリードアウトが見られる。
実施例1〜21
ポリアセタール樹脂100重量部に、ヒドラゾン化合物、酸化防止剤、耐熱安定剤、加工性改良剤、耐候(光)安定剤、及び他の添加剤を表1〜3に示す割合で混合した後、1ヶ所のベント口を有する30mm径の二軸押出機(シリンダー温度200℃)の主フィード口に供給し、溶融混練して押出すことによりペレット状の組成物を調製した。得られたペレット状の組成物を用いて、前記評価法によりホルムアルデヒド発生量、モールドデポジット、ブリードアウトの評価を行った。結果を表1〜3に示す。
比較例1〜10
比較のために、ヒドラゾン化合物を添加しない例について、前記と同様にして評価した。結果を表1〜3に示す。
【0092】
実施例および比較例で使用したポリアセタール樹脂、ヒドラゾン化合物、酸化防止剤、耐熱安定剤、加工安定剤、耐候(光)安定剤、他の添加剤は以下の通りである。
A.ポリアセタール樹脂
(a−1):ポリアセタール樹脂コポリマー(トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体、1,3−ジオキソランを3.8重量%共重合、メルトインデックス=9g/10分)
(a−2):ポリアセタール樹脂コポリマー(トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体、1,3−ジオキソランを3.6重量%共重合、メルトインデックス=27g/10分)
尚、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じ、温度190℃、荷重2.16kgf(21.2N)の条件下で求めた値である。
B.ヒドラゾン化合物
(b−1):1,4−[(3−フェニルプロピリデン)ヒドラジノ]ベンゼン
(b−2):2−(1−メチルエチリデン)ヒドラジンカルボキサミド
(b−3):ペンタデカン二酸ジヒドラジドのホルムアルデヒド付加体
(b−4):シクロヘキサノン=(1−メチルブチリデン)ヒドラゾン
C.酸化防止剤
(c−1):トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(c−2):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]。
D.耐熱安定剤
(d−1):ステアリン酸カルシウム
(d−2):12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
(d−3):酸化マグネシウム。
E.加工性改良剤
(e−1):エチレンビスステアリルアミド
(e−2):ポリエチレンオキシド[分子量:35000]
F.耐候(光)安定剤
(f−1):2−[2′−ヒドロキシ−3′,5′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール
(f−2):ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート。
G.他の添加剤
(g−1):アクリル系コアシェルポリマー[武田薬品工業(株)製、スタフィロイドPO]
(g−2):熱可塑性ポリウレタン[日本ミラクトロン(株)製、ミラクトランE]
(g−3):カーボンブラック(アセチレンブラック)
(g−4):ガラス繊維(直径9μm、長さ3mmのチョップドストランド)。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
表より明らかなように、比較例に比べて、実施例の樹脂組成物は、ホルムアルデヒドの発生量が極めて少ない。さらに、モールドデポジットの発生を抑制して成形加工性を向上できるとともに、染み出しを防止して、成形品の品質を向上できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、
(B)下記式(1)で表されるヒドラゾン化合物及び下記式(2)で表されるヒドラゾン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物0.01〜5.0重量部
を含んでなるポリアセタール樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1〜R3は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。nは1または2の整数を示し、nが1の場合、Aは−R4、−CONHまたは−COR4(R4は炭素数1〜30の1価の炭化水素基)、nが2の場合、Aは−R−または−CO−R−CO−(Rは炭素数1〜30の2価の炭化水素基)を示す。)
【化2】

(式中、R〜Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアセタール樹脂(A)が、トリオキサン(a-1)と、環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれた化合物(a-2)の1種以上とを、前者(a-1)/後者(a-2)=99.9/0.1〜80.0/20.0の割合(重量比)で共重合させてなるポリアセタールコポリマーである請求項2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、酸化防止剤(C)をポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5.0重量部の割合で含む請求項1〜3の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
酸化防止剤(C)がヒンダードフェノール系化合物である請求項4記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、耐熱安定剤(D)をポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5.0重量部の割合で含む請求項1〜5の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
耐熱安定剤(D)が、有機カルボン酸金属塩、塩基性窒素含有化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物、ハイドロタルサイト、ゼオライト及びホスフィン系化合物から選択された少なくとも一種である請求項6記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、加工性改良剤(E)をポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5.0重量部の割合で含む請求項1〜7の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
加工性改良剤(E)が、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸誘導体、ポリアルキレングリコール、シリコーン系化合物及びオレフィン系ワックスから選択された少なくとも一種である請求項8記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、耐候(光)安定剤(F)をポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5.0重量部の割合で含む請求項1〜9の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項11】
耐候(光)安定剤(F)が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジン系化合物及びヒンダードアミン系化合物から選択された少なくとも一種である請求項10記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項12】
耐候(光)安定剤(F)が、ベンゾトリアゾール系化合物及びヒンダードアミン系化合物を前者/後者=99.5/0.5〜0.5/99.5の割合(重量比)で含むものである請求項11記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、耐衝撃性改良剤、摺動性改良剤、光沢性制御剤、充填剤及び着色剤から選択された少なくとも一種を含む請求項1〜12の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物で形成されている成形品。
【請求項15】
(1)温度60℃で飽和湿度の密閉空間に厚さ2mmの成形品を3時間保存したときに発生するホルムアルデヒド量が、成形品の単位重量当り2μg/g以下、及び/又は
(2)温度80℃の密閉空間に厚さ2mmの成形品を24時間保存したときに発生するホルムアルデヒド量が、成形品の単位重量当り2μg/g以下である請求項14記載の成形品。
【請求項16】
自動車部品、電気・電子部品、建材・配管部品、生活・化粧品用部品又は医用部品である請求項14又は15記載の成形品。

【公開番号】特開2007−70574(P2007−70574A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262311(P2005−262311)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】